中国の2016年9月の輸出入 輸出は6ヶ月連続で前年割れ、輸入も再度、前年割れに |
共産党の一党独裁で社会主義国の中国では、統計はあてにならないと筆者はかねてより主張している。国営企業が経済の中心である社会主義国では、経済統計が産業を所管する役人の成績に関わるので、改竄(かいざん)がしばしば行われる。
だが、貿易統計はその中でも信頼できる統計である。というのは、貿易は相手国があり、中国で貿易統計を改竄すると、相手国の統計からばれる確率が高まるからだ。
輸出減の中身をみると、地域別では欧州や東南アジア向けが中心である、品目では衣料品や半導体、自動車部品などだ。輸出減の原因は、世界経済の低迷によって中国製品の需要が落ち込んだことであるが、従来型の輸出では競争力が弱まっているという見方もできる。
ここで2008年のリーマン・ショック以降の人民元のレートを見よう。人民元は管理されており、基本的にはドルにペッグ(連動)している。リーマン・ショック以降2年間はほぼ完全にドルペッグしたが、その後3年間はやや人民元高に誘導、その後3年間逆に人民元安に誘導し、現在はほぼリーマン・ショック時と同じ水準に戻っている。
円に対しては、リーマン・ショック後の円独歩高の結果、大幅な人民元安となったが、アベノミクスの金融緩和で円安になったため今度は人民元高になった。ここ1年では再び人民元安となって、ドルと同じようにリーマン・ショック時の水準に戻っている。
対ユーロでは、ユーロ安なので、結果として人民元高傾向である。リーマン・ショック時と比べて、人民元はユーロに対し25%高くなっている。このため、中国のユーロ向け輸出は、欧州経済の低迷もあって減少した。
輸入は、基本的には可処分所得の動向で決まるので、その動向は国内総生産(GDP)の動きと連動している。輸入が対前年同月比でマイナスというのは、中国のGDPが伸び悩んでいることをまさに示している。
輸出が外需、輸入が内需の動きを示すので、輸出、輸入ともに減少しているのに、GDPが伸びているというのは、どこかに無理がある説明だ。
外需が芳しくない要因は、短期的には改善しない。また内需も中国国内の過剰生産が解消されない限り解消しないだろう。こうした意味で、中国貿易は当分の間、低迷するだろう。
中国の統計で貿易統計だけが信頼できるものである以上、貿易の低迷はまさに中国経済そのものの低迷を意味していると筆者は見ている。
中国経済不振の中で、習近平体制がどこまで持ちこたえ得るか、不満のはけ口として日本たたきに走る恐れもあり、注意深く見守る必要がある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】長期の調整期に突入した中国でいずれ大規模な政変が(゚д゚)!
上の記事で、高橋洋一氏が指摘するように、比較的信用に足る、貿易統計からみても中国の経済はかなり危険な状況にあるのは間違いないようです。
他のソースからも、中国経済の危険な兆候を読み取ることができます。
国際決済銀行(BIS) |
国際決済銀行(BIS)は9月18日、GDP(国内総生産)の2.5倍に膨れあがった中国の債務総額が、「今後3年間で深刻な問題を引き起こす兆候である」との警告を発しいますた。
7月にもIMFが同様の警鐘を鳴らし、中国政府に企業債務に対処するよう要請しているものの、中国経済の崩壊への懸念はますます高まるばかりです。
7月にもIMFが同様の警鐘を鳴らし、中国政府に企業債務に対処するよう要請しているものの、中国経済の崩壊への懸念はますます高まるばかりです。
中国社会科学院は歯止めがきかなくなった中国の負債総額が、2015年末にGDPの249%に値する25兆6000億ドル(約2602兆2400億円)に達したと発表しました。
BISの統計からも、発行債券額が2015年第4四半期から2016年第1四半期のわずか半年間で7兆8929億ドル(約802兆3132億円)と、1475億ドル(約14兆9933億円)増えていることが判明しています。
またゴールドマン・サックスを含む欧米の金融機関も、シャドーバンキング(正規の融資システムを通さない影の融資)の実態などを根拠に、実際の数字がさらに巨大化している可能性を指摘しています。
最近では中国人民銀行による景気刺激策が、結果的には企業負債と個人負債を押しあげるきっかけとなったという見方が強いのですが、その根本には他国の経済危機の影響を最小限にとどめる意図で、中国政府が与信を拡大しすぎたという背景があるようです。
総与信とGDPの差を算出した場合、一般的な経済危機レベルが10%であるのに対し、中国が30.1%に達している点にBISは強い懸念を示しているのです。
米国では総与信対GDP比率の差が10%を突破した後、サブプライム住宅ローン危機が訪れました。
サブプライム住宅ローン危機が起こり、住宅ローンが 払えなくなった住民の強制差し押さえを執行中の武装警官。 |
しかし中国自体は、周囲の懸念もまったく他人ごとといった様子という印象を受けます。
今年8月の銀行による融資は7月の2倍。その多くが住宅ローンの借り入れだったといいます。中国の銀行は2008年の金融危機以来最高の気前のよさで住宅ローンの申請に応じており、不良債権問題の影は微塵も感じられません。
またUBSも今年上旬、中国経済の行く末に関して、国内貯蓄率の高さや資本市場の成長の可能性を理由に、比較的楽観的な見解を示すレポートを発表しています。
ただし中国はあくまで「短期負債で長期負債資金を回転させている」との指摘もあり、経済市場自体が景気刺激策に依存しきっているリスクは打ち消せません。
銀行による不良債権比率が政府の発表している2%をはるかに上回っていた場合、中国には銀行システムの資本再編が必須と予想されているのですが、中国政府がどこまで現実を受けいれすみやかに対処するかにすべてがかかっています。
「借金で国を豊かにする」という発想はけっして中国にかぎったことではありません。経済成長が鈍化し、借金とともに国民の資産が増えるという悪循環は、多くの先進国が経験しています。
今年8月の銀行による融資は7月の2倍。その多くが住宅ローンの借り入れだったといいます。中国の銀行は2008年の金融危機以来最高の気前のよさで住宅ローンの申請に応じており、不良債権問題の影は微塵も感じられません。
またUBSも今年上旬、中国経済の行く末に関して、国内貯蓄率の高さや資本市場の成長の可能性を理由に、比較的楽観的な見解を示すレポートを発表しています。
ただし中国はあくまで「短期負債で長期負債資金を回転させている」との指摘もあり、経済市場自体が景気刺激策に依存しきっているリスクは打ち消せません。
銀行による不良債権比率が政府の発表している2%をはるかに上回っていた場合、中国には銀行システムの資本再編が必須と予想されているのですが、中国政府がどこまで現実を受けいれすみやかに対処するかにすべてがかかっています。
「借金で国を豊かにする」という発想はけっして中国にかぎったことではありません。経済成長が鈍化し、借金とともに国民の資産が増えるという悪循環は、多くの先進国が経験しています。
中国の統計は出鱈目なので、結局ところこのような当て推量をするしかないのですが、やはり高橋洋一氏がブログ冒頭の記事で指摘しているように、輸出入は相手があることから、あまりごまかしもしにくいし、たとえ中国が貿易統計をごまかしたにしても、中国の輸出入の相手国の統計から、現実にかなり近い数字を類推できます。
その輸出入からの数字でみても、特に輸入が著しく減っているということは、常識的に家は、中国はすでにデフレに陥っている可能性が高いということです。
この状態だと、雇用状況も悪くなっている可能性があります。中国では、ずい分前から大学の新卒の就職率などかなり落ちていましたから、若者の就職率の悪さだけでは特に悪くなったかどうかは推定することはできません。しかし、最近このブログでも掲載したように、退役軍人が中国国防省の前でデモをしたという珍事が発生しています。おそらく、退役軍人の雇用状況は最悪なのでしょう。
さらに、1-6月期の中国の投資において、民間投資はわずかに対前年同期比2・8%の増加に過ぎませんでした。代わりに、国有企業が対前年同期比23・5%と、投資全体を下支えしています。
要するに、現在の中国は民間が投資意欲を喪失し、政府の公共投資を国有企業が受注することで、何とかGDPが維持されている状況になっているのです。
投資ではなく、消費を見ても、やはり「政府」の影響力が強まっています。1-6月期の中国の個人消費は対前年同期比10・3%と、GDP成長に貢献しました。しかし、消費の主役が何かといえば、自動車購入でした。
要するに、現在の中国は民間が投資意欲を喪失し、政府の公共投資を国有企業が受注することで、何とかGDPが維持されている状況になっているのです。
投資ではなく、消費を見ても、やはり「政府」の影響力が強まっています。1-6月期の中国の個人消費は対前年同期比10・3%と、GDP成長に貢献しました。しかし、消費の主役が何かといえば、自動車購入でした。
長期の調整期に入った中国経済 |
実は、中国共産党政府は景気の急激な失速を受け、自動車販売を下支えすべく、小型車やエコカー向けの減税や補助金といった政策を打ったのです。結果的に、自動車販売が増え、消費総額が拡大したわけなのですが、投資同様に「政府の政策主導」になってしまっているのです。
このような状況のなかで、今回の貿易統計の結果です。これだけ輸入が激減したということはは、もう完璧にデフレに入ったとみなすべきでしょう。
デフレに入ったのであれば、金融緩和をすれば良いということになりそうですが、そのような常識的な判断は中国には当てはまらないです。中国経済のより本質的な問題は、設備投資が盛り上がらないことではなく、逆に設備が過剰であることにあるからです。
中国の場合、他国にない優れた技術力を保有しているという訳でもない訳ですし、それに賃金も上がり続けているので、安い労働力を武器とした輸出に頼るのも限界です。
ということで、中国の経済は調整期に突入したと言えるのです。そして、その調整のためには相当の時間を要すると考えるべきでしょう。
このような長期の調整期に入るのは、中国としては初めての経験です。そのため、習近平政権に対する風当たりもかつてないほど強くなります。おそらく、習近平体制は近いうちに崩れることでしょう。
しかし、ポスト習近平の後の体制も経済をすぐには好転させることはできないでしょう。しばらく、政権交代が比較的短期におこる可能性があります。そうして、それが繰り返されることになる可能性があります。かつての中国なら考えられないことですが、今後の中国では多いにあり得ることです。そうなると、中国共産党の統治の正当性は地に堕ちることになり、いずれ大規模な政変に結びついていく可能性が大きくなりそうです。
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