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2017年4月26日水曜日

【復興相辞任】「#東北でよかった」 失言逆手…自慢ハッシュタグに共感広がる―【私の論評】今村が「身の丈知らず」の愚か者に成り果てた理由(゚д゚)!

【復興相辞任】「#東北でよかった」 失言逆手…自慢ハッシュタグに共感広がる

今村雅弘
 「#東北でよかった」。東日本大震災を巡る今村雅弘前復興相の「まだ東北で良かった」発言を逆手に取り、「東北に生まれて良かった」「東北を訪れて良かった」という趣旨のつぶやきや画像がツイッターに続々と投稿されている。

ツイッターは「#」を付けた単語をハッシュタグと呼び、これを付けて投稿すると、キーワードとして検索しやすくなる。

「#東北でよかった」のハッシュタグが付いた投稿には、東北各地で撮影された桜や紅葉の景色や、仙台七夕や青森ねぶた祭など東北の夏祭りなどの写真が「誇れる故郷」「東北の景色がすき」などのつぶやきとともに投稿されている。東北以外からエールを送る声も書き込まれている。

「失言が、#をつけたことで郷土愛に変わった。 失言する人がいる一方で、その失言を『東北の魅力を発信するハッシュタグ』にして、東北を盛り上げよう、応援しようとする人もいる。そんな国でよかった。こんなに泣けるハッシュタグは初めて」と書いた人もいる。

【私の論評】今村が「身の丈知らず」の愚か者に成り果てた理由(゚д゚)!

今回の今村雅弘の失言は、さすがにあり得ないと思います。マスコミが一部を切り取って報道をするのはよくあることで、今村雅弘の前回の失言はその要素が強く、あれでは激高するのも無理はなく、あれで辞任になるとは思いませんでした。

何しろ、テレビの画面では本の数分でしたが、実際には記者と今村氏のやりとりは、27回にも及んでいました。今村氏は当初、自主避難者の扱いについて国の考えを淡々と説明していたのですが、21回目のやり取りで、フリー記者が「責任持って回答してください」と迫ると、今村氏は「なんて君は無礼なことを言うんだ。ここは公式の場だ。撤回しなさい!」「人を中傷、誹謗(ひぼう)するようなことは許さない」などと怒りを爆発させたのです。

2人のやり取りは、何と27回も続いたのです。今村氏は4日夕方、復興庁でぶら下がり取材に応じ、「ちょっと感情的になってしまった。改めておわび申し上げ、今後はこういうことがないよう冷静、適切に対応していきたい」と語っていました。

しかし、今回の発言に関しては、いくらマスコミが切り取ったにしても、「まだ東北で良かった」などという発言はどう考えても不適切です。

以下に問題となった今村雅弘の発言の動画を以下に掲載します。


火消しに走ったというか、その場で素直に詫びた安倍総理の対応は良かったと思います。もし、あの場で、総理が何も発言をしなければ、後々かなり問題になったかもしれません。

この動画を見ていて、唖然としましたが、言い方をもっと変えるべきだったと思います。東京などで被害が起こるととんでもないことになるということを言いたければ、現在や過去の話ではなく、未来の話として、英文法でいうところ未来形で話をすべきだったと思います。

「東京で同じような地震や津波が発生した場合、さらに甚大な被害が起こることになるかもしれません」などと発言すれば、復興に関して広くアピールできたし、問題になることはなかったと思います。

しかし、「東北だから良かった」というのでは、どう考えても問題発言になるのは必至です。今村は、天変地異とはいえ、無辜の同胞二万が無念のうちに亡くなったあの大地震をなんと心得ているのでしょうか。大臣をやめるだけではなく、議員辞職し、被災地に対して謝罪行脚をすべきです。

到底まともな人の心を持っているとは思えない鬼畜の発言としか言いようがありません。

そもそも、今村といえば、2005年の郵政国会で郵政民営化法案に反対したことを原因に自由民主党から離党処分が下された政治家のうちの一人です。このときに離党処分になった多くの議員が復党しています。

2005年 08月 08日  参議院本会議 郵政民営化関連6法案採決

2005年、第44回衆議院議員総選挙において衆議院本会議で郵政民営化法案に反対票を投じた自民党議員は党議拘束に造反したとして、自由民主党の公認が与えられませんだした。党から公認されない中で衆議院議員となるには党の公認候補(または支援候補)に対立する候補として立候補するしかありませんでした。

離党勧告となった造反議員は将来における復党を目指し、その後の議員活動も政府案に賛成するなど自民党に賛同する行動をとっていました。

2006年9月26日、総理総裁が小泉純一郎から安倍晋三に交代し、造反無所属議員12人は首班指名でも安倍に投票し、自民党に賛同する行動をとり続けました。

そんな中、青木幹雄など自民党参議院幹部を中心に、造反組を復党させる案が浮上しました。10月に自民党の有力者の会合で造反無所属議員12人を復党させる案に賛成する意見が多数出たため、造反議員の復党が現実味を帯びてきました。以下が造反無所属議員のリストです。無論、今村雅弘の名前も掲載されています。


2007年の第21回参議院議員通常選挙において、地方に強固な支持基盤を持つ議員が多い造反組の協力が必要とする考えからです。造反議員としても復党となれば、自民党議員として自民党の会合に参加できることや政党助成金が受け取れるなど復党のメリットを享受できます。

一方、自民党内部からは造反組の選挙区に「刺客」として当選してきた議員や郵政民営化を訴えて初当選した新人議員を中心に復党に反対する意見も出ました。

2007年9月には誓約書を提出していなかった平沼赳夫元経産相も誓約書を提出せずに復党することが内定していると報道されました。そのため、離党勧告を受けた無所属造反組は全員復党が可能となる見込みとなりました。

8月の第1次安倍改造内閣・自民党役員人事において自民党選対総局長に就任した菅義偉は「私の仕事は首を切ること」と発言していること、また、麻生太郎自民党幹事長なども、片山さつきや佐藤ゆかりを党の主要ポスト(それぞれ党広報局長、幹事長補佐)から外すなどしています。

安倍政権は閣僚が不祥事を連続させるためガタガタの状態であり、このままでは衆院選に敗北することに危機感を覚えた自民党執行部は「次の衆院選では勝てる候補しか公認しない」「まぐれ当選の人物より、実力・実績のある人物を公認したほうが確実」という方針をとったため、いわゆる小泉チルドレンは次期衆院選においていっそう厳しい立場に立たされました。

しかし、安倍首相が9月12日に辞任し、後継首相に福田康夫がなり、事態は急変。後任幹事長である伊吹文明が平沼の求めている落選造反議員との同時復党は難しいとの趣旨の発言を行っています。結局、平沼は復党から「自民党でも民主党でもない第三極の結集」を掲げて2008年に落選した造反組らを中心とする「平沼グループ」を旗揚げし、復党にこだわらない方針へ転換しました。

このように、今村雅弘は郵政造反して自民党から離党を余儀なくされたのち、第一次安倍の時に温情で自民党に再度拾われた身です。にもかかわらず、居丈高になり、第二次安倍内閣で閣僚となり安倍総理に砂をかけるとは、とんでもないことです。今村は、第一次安倍の時に復党していなかったら今頃国会議員ですらないということも十分考えられました。

このようなことを考えると、安倍総理は今村の今回の失言に関しては、内心烈火の如く怒ったことでしょう。

今村は、二階派(志帥会)所属の議員ですが、二階氏は今村擁護発言をしています。今村復興相が26日、辞任しましたが、安倍首相は自らの任命責任を認め、国民に陳謝しました。
問題の発言から半日という異例の早さで更迭された今村復興相。安倍首相は政権へのダメージを最小限に抑えたい考えなのでしょう。

安倍首相は、「任命責任はもとより内閣総理大臣たる私にあります。こうした結果となりましたことに対しまして、国民の皆様に心からおわびを申し上げます。結果を出すことによって国民の皆様の信頼を回復したいと考えています」

現状では残念ながら与党自民党も、大半の議員は民進党と同レベルです。こういう愚か者を大臣にしてはいけません。共感能力を言語化でき、なおかつ政策センス主体で選んでほしいです。それにしても、人材が不足しているということがわかります。

吉野正芳新復興相
後任には「被災地に寄り添える人物」ということで、福島県選出の吉野正芳衆議院議員が就任しました。政府・与党内にもほとんど、今村復興相の発言に擁護論はないのですが、今村復興相が所属する派閥の会長、二階幹事長は「多少の思い上がりがあった」とする一方で、大臣辞任の必要性については懐疑的な見方を示しました。

自民党・二階俊博幹事長「言葉の誤解はない方がいいに決まっているけど、そういうことがあった場合にはいちいち首を取るまで張り切っていかなくてもいいんじゃないか」

今村復興相の発言は単なる「言葉の誤解」なのでしょうか。二階幹事長のこの発言も今後、波紋を広げそうです。

乾杯する自民党二階派の代議士ら。自民党の二階俊博幹事長(前列左から2人目)
から離れた場所で乾杯する今村雅弘復興相(右から2人目)=25日午後
そもそも、今村雅弘復興相辞任への引き金となった発言は、所属する自民党二階派が25日に開いたパーティーで飛び出したものです。東京電力福島第1原発事故をめぐる失言で窮地に陥った今村氏の「名誉挽回のチャンス」として、二階派が用意したひのき舞台がかえってあだになったのです。同派を率いる二階俊博幹事長の面目も潰れ、年に1度の華々しいパーティーは一気に暗転しました。

今村氏は、二階派所属の鶴保庸介沖縄北方相とともに、パーティーの行事として講演に臨みました。演題は「荒海を航(い)く! 強いニッポンを創ろう」。二階派の配慮に対し、勇んで約20分間、復興や防災への取り組みを語った今村氏でしたが、その中で東日本大震災の被害に関し「東北で良かった」と語ったのでした。

事態は直後に急変しました。講演後の懇親会に駆け付けた安倍晋三首相があいさつの冒頭で今村氏の発言を陳謝したのです。パーティーでの異例の首相の発言に会場の空気が凍りつきました。

にもかかわらず、二階氏の擁護発言です。このような甘やかしが、今村のような「身の丈」を知らない愚かな議員を生んでいるのではないでしょうか。

そもそも、造反議員を復党させたのは、選挙対策でした。そうして、今村が造反議員であるにもかかわらず、大臣になれたのは、今村に能力があったとか、功績があったなどということではなく、派閥の力学によるところです。

このようなことで、大臣になった人間はやはり、「身の丈」知らずの驕り高ぶりが生まれるのだと思います。まともな人が彼の立場であったら、日々感謝の気持ちを忘れることなく、とくかく自分に与えられた職責に日々邁進し、余計なことはしゃべらないと思います。

以前このブログではいわゆる「身の丈」を知らない人間について、掲載していた時期があります。最近は、掲載することもなくなりましたが、再度「身の丈」という言葉の重みを知る機会を得ることのできた出来事でした。

この「身の丈」という言葉、最近は死語に近いものがあります。あまりピンとこない方は、最近文筆家の古谷経衡氏が『意識高い系の研究』という書籍を出版しましたのでこの書籍を読んでいただけるとわかりやすいかもしれません。

この「意識高い系」とは「意識の高い人」のことではありません。あくまで、「意識高い系」です。これは、昔の言葉でいえば、「身の丈」を知らない人ということになると思います。

私は、この書籍を読んでそのように解釈しました。古谷氏は、Yahooニュースで安倍昭恵さんのことを典型的な「意識高い系」と評していました。昔風の言葉でいえば、安倍昭恵さんは「身の丈知らず」ということになると思います。

今村雅弘も典型的な「意識高い系」なのかもしれません。今村については、古谷はかなり痛烈に批判していました。今村についても「意識高い系」という観点から分析してもらえたら、結構興味深いものになるかもしれません。

いずれにせよ、現在は「身の丈」という言葉が死語になったためもあってか、あるいはそういう風潮があったからこそ、死語になったのかはわかりませんが、多岐にわたる分野で「身の丈」を知らない人が増えたようです。

今回は、たまたま、自民党の閣僚だった人についての話を掲載しましたが、民進党の議員にも総統「身の丈知らず」が存在します。官僚にも、大勢います。それだけに限らず、多くの分野でみられます。とにかく私自身は、自分の「身の丈」はいかほどのものか、良く点検して、今村のようにドツボにはまるようなことは避けたいと思います。

それにしても、世の中には「身の丈」を知らない人が大きな問題を起こしているようです。それについては、以下の【関連記事】のところに関連した記事を掲載します。

【関連記事】






2016年9月5日月曜日

実質賃金6カ月連続プラス 7月、2.0%増 ―【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!



 厚生労働省が5日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.0%増加した。伸び率は6月の確報値と同じで、6カ月連続で前年を上回った。ボーナスの増加などで名目賃金が増えたほか、消費者物価指数(CPI)の下落傾向が実質賃金を押し上げている。

 名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は37万3808円と、前年同月比1.4%増加した。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万1518円。ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は4.2%増の11万3150円だった。

 実質賃金の増加は給与の伸びが物価の伸びを上回っていることを示す。7月のCPI(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比0.5%下落し、実質賃金の伸び幅が名目より大きくなった。実質賃金は6年ぶりに2カ月連続で2%台となった。ただ所定内給与の伸びは依然小幅で、物価下落の影響も大きいことから、所得環境の改善が続くかどうかは見通せない状況だ。

【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!

ここしばらく、「実質賃金が~」と叫ぶ人があまりいないと思ったら、7月は、年間は前年同月比で2%増であり、しかも過去6ヶ月韓連続のプラスということで、これでは「実質賃金が〜」と叫びようもないわけで、だから最近あまり聞かれなくなったのだと合点がいきました。

これも完璧に、金融緩和の成果であるということです。そういわれてみれば、民進党も「実質賃金が〜」と表だって声を上げることもなくなりました。

民主党政権時代と比較してほとんどの経済指標がよくなっているが、唯一と言っていい例外が実質賃金でした。そもそもデフレ脱却過程では実質賃金が下がるのは当然だし、消費増税があったからなおさらのことなのですが、民進党にはそれが全く理解できないようです。
半年前までは、実質賃金の低下が民進党の心のよりどころだったのだが・・・・・?

いずれにしても、現在でも実質賃金が上昇したとはいいながら、まだ弱含みで、今後また下がるようなことがあれば、民進党は「実質賃金が〜」と金切り声を上げることでしょう。しかし、過去において実質賃金が下がっていたのにはそれなりの理由があります。

まず実質賃金と、名目賃金の違いについて掲載しておきます。

「名目賃金」は、私たちが手にする賃金のナマの金額を現した数値でとても私たちの実感に近い賃金に関する数値です。

次に、「実質賃金指数」は先ほどの「名目賃金」から物価の上がり下がりを計算して影響した分を取り除いた数値になります。

物価が上がるとその影響分が「名目賃金」から差し引かれますので、実質賃金は下がる傾向に、また物価が下がっているときは賃金指数に低下分の影響が上乗せされますので上がる傾向になります。もう、これだけで、過去においては「実質賃金」が下がっていた理由はおわかりになると思います。

他にも実質賃金が下がる合理的な理由はあるのですが、結果として半年前くらいまでは実質賃金の数値が民主党政権時代より全般に低くかったことはは間違いありません。この数値だけが民主党政権時と比較して低下していました。そのためでしょうか、彼らはいつまでもこれにすがるしかなかったのですが、それすらもここ半年は、良くなっているので、民進党もこれにすがり続けるわけにはいかなくなりました。

そのせいでしょうか、民進党の代表戦では「実質賃金」などの雇用を政策論争にあげる候補は一人もいませんでした。そうして、全員増税賛成ということで、まるで財務省のスポークスマンのような有様です。

下のグラフは昨年11月の国会で民主党が使ったパネルです。いまだにツイッターのタイムラインにこれが表れてくることがあります。


変化を強調したグラフになっているからでしょうか、これを見た有権者の中には「民主党政権は実質賃金の面では頑張っていた」などと勘違いをする人が結構いました。だから、岡田代表はつい最近まで「実質賃金が〜」と喚いていました。

デフレ脱却とはインフレになることだから、物価が上がり、その分だけ実質賃金が下がります。所費税を上げればその分だけ一気に下がります。それは当たり前のことですが、人によっては、なぜ実質賃金を下げる結果になるインフレにわざわざする必要があるのか疑問に思うことでしょう。

さらに、安倍政権になって実質賃金を下げる要因になった物価以外の大きな要因が雇用者数の増加です。景気回復に伴いパートやアルバイトが増え定年退職者の再就職が増え、賃金の平均値を引き下げたのです。

実際、安倍政権下では一般労働者、パートタイム労働者ともに名目賃金は増えているのに、それを加重平均した全体では減少していました。


一般労働者の詳細な内訳データがあれば、賃金の高い人が退職して新人やパート・アルバイトが増えたことによる影響などもわかるはずです。しかし、このような分析は政策に反映するには有効かもしれないが、誤解している有権者に説明するのは困難だったかもしれません。

やはり、安倍総理が国会などで繰り返し説明していたように、「景気回復で雇用者数は増えている」「その結果、雇用者全体の賃金の総額である『雇用者報酬』は増えている」と言う方が分かりやすいです。それをグラフにしたのが下です。




経済無策の民主党政権がアベノミクスの安倍政権に代わってから雇用者数が増え、その結果、国民の雇用者所得は名目でも実質でも増加しました。これを考えれば、パートや定年後の再就職などが増えて平均値である実質賃金が下がったことは理解しやすいです。

これは、何も国単位で考えなくても、ある程度大きな企業のことを考えればおのずと理解できます。

皆さんが、ある程度大きな企業に勤めていると想像してみてください。そうして、景気が良くなって、会社が業容拡大のために、新人やパート・アルバイトを大量に雇ったとします。そうなると、平均賃金はどうなるでしょう。業績が拡大した場合、個々の従業員の賃金も上げるということも考えられますが、そこまでいかず、賃金の低いパート・アルバイトの数が増えた場合どうなるでしょう。そうして、さらに物価が上昇しているとしたら、当然のことながら実質賃金の平均は下がることになります。

逆に景気が悪くなって、会社の業容が縮小している場合はどうなるでしょうか。まずは、パート・アルバイトの新規採用は避けます。新人もあまり雇用しないようにします。業績があまりにも悪化すれば、社員の賃金を全体的に下げることになるので、一概にはいえませんが、業績がそこまで悪化せず、賃金水準はそのままで、賃金の低い新人や、パート・アルバイトが減れば、当然のことながら、平均賃金は上がります。さらに、景気低迷で物価が下がれは、実質賃金の平均は上昇します。

こんなことを考えれば、半年前くらいまでは、実質賃金が低下していたことの説明は十分につきます。

さて、ここ半年は、確かに実質賃金は上昇気味なのですが、それにしてもあまり上昇せず、弱含みです。どうして、そうなるかといえば、やはりまだ金融緩和の余地があるということです。

実際、日銀の黒田東彦総裁は本日、9月の金融政策決定会合で実施する「総括的な検証」について都内で講演した。検証は「あくまで2%の『物価安定の目標』の早期実現のため」と強調し、「市場の一部で言われているような緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べています。政策の中核とする予想物価上昇率を押し上げるため「2%目標をできるだけ早期に実現するというコミットメントを堅持していくことが重要」と述べました。
本日都内で講演した日銀黒田総裁
金融政策の限界論に対しては「マイナス金利の深掘りも、『量』の拡大もまだ十分可能」など否定的な考えを改めて示し、「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としました。また「それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)からはずすべきではない」と述べました。

私自身は、黒田総裁の金融緩和は「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としているのですが、特に「量」的緩和は、必ず実施すべきものと思います。

それは、以前もこのブログで述べたように、我が国の構造的失業率は2.7%程度であるにもかかわらず、最新の統計では未だ完全失業率が3.0%であり、これは、まだ「量」的緩和が不十分であり、少なくとも、完全失業率が2.7%になるまでは、必要だと考えられるからです。

これを是正して、さらに実質賃金をさらに上昇させるためにも、「量的緩和」は必須です。黒田総裁と、日銀政策決定委員会の英断を望みます。

そうして、民進党のように単純に「実質賃金が〜」と喚き、雇用に関するまともな認識のない人たちの声に振り向く必要は全くありません。なぜなら、彼らは雇用というおおよそ、国民にとって最も重要なことに関してあまりにも無頓着だからす。

【関連記事】






2016年7月3日日曜日

英EU離脱、金融パニックでも安倍叩き!「アベノセイダーズ」の正体 田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)―【私の論評】左右双方に存在する正統保守主義を理解できない愚か者どもの戯言(゚д゚)!

英EU離脱、金融パニックでも安倍叩き!「アベノセイダーズ」の正体 田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

5月5日、ロンドンで英国のキャメロン首相(左)と会談した安倍晋三首相

EU離脱か否かを問う国民投票がイギリスで行われ、賛成派がわずかに上回ったことで、同国のEUからの離脱が決定的になった。これから数年かけてイギリスはEUから離脱する手続きを進めていくことになるだろう。英紙『エコノミスト』を中心にして、様々な経済研究機関はイギリスのEU離脱は同国の経済成長率を押し下げ、しかもそれが長期間に及ぶと予測している。(総合オピニオンサイト iRONNA

筆者が見たところでも、2016年の直近で公表された経済成長予測ではマイナス成長は当たり前で、深刻なケースではマイナス5%以上にもなるとの試算がある。この数字はリーマンショック時をはるかに上回る。また出ていくイギリスだけではなく、EUにとっても経済的衝撃は深刻だろう。エコノミストの安達誠司氏は、むしろイギリスよりもEU側の損失の方が大きいだろうと指摘している(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48985)。

あるイギリスのジャーナリストは、「もう連合王国とはいえない」とTwitterに書いていた。これはイギリスでの投票結果をみると、EU残留はスコットランド、北アイルランドが圧倒的で、またEU離脱はイングランド、ウェールズに圧倒的(ただしロンドン市のシティなどは抜かす)であることを示唆している。実際にスコットランド、北アイルランドともに連合王国からの離脱が、今後加速化していくことは避けられない情勢だろう。

この「イギリスの終焉のはじまり」とでもいうべき状況は、つい先日までのEU残留の可能性の高まりをうけて、株価が上昇傾向にあった各国市場を直撃した。もっとも深刻だったのが、開票の時間帯にオープンしていた東京株式市場であり、日経平均株価は1286円33銭安の1万4952円2銭に下落した。下落幅、下落率ともに史上最大級に属するものだった。また為替レートの変動幅は7円以上をしめし、その乱高下幅はかってない大きいものであった。一時は1ドル99円台をつける円高になったが、現在でも円高域の中で不安定な動きを続けている。今後、米国やヨーロッパ市場にも同様の経済不安定化の波が押し寄せていくだろう。

EU離脱が経済に深刻なリスクをもたらす可能性を、安倍首相は伊勢志摩サミット前のイギリス訪問時に、キャメロン首相にその旨を伝えていた。また同様のEU離脱による深刻な経済リスクを(おそらく安倍首相の要求で)サミットの各国首脳宣言に明記することにもなった。だが、アベノミクスに批判的なマスコミや政党はこれを冷笑とともに受け取ったのは記憶に新しい。筆者はそのような「サミットやアベノミクスの失敗」を事実とは違う形で扇動する人たちを、本連載でも厳しく批判した。そのような政治的なスタンスに過度に立脚した扇動は、単純な事実や明瞭な論理を不透明にしてしまい、我々の経済や社会問題に対する判断を曇らせてしまうからだ。

例えば、なにか経済的問題や社会問題が発生すると、安倍首相の責任にする珍妙な現象を目にすることがある。通常は単なるネットでの奇怪な現象にしかすぎない。冗談もふくめて、そういうなんでもかんでも安倍政権のせいにする人たちのことを「アベノセイダーズ」と呼ぶ風潮もある。

写真・挿絵はブログ管理人が挿入 以下同じ
アベノセイダーズだけではなく、EU離脱問題を契機にしたアベノミクス批判は盛んである。安倍首相がイギリス訪問時に「キャメロン首相にEU残留を熱心に説いたのがイギリス国民の気質に逆らって、むしろEU離脱を促すことにもなりかねない」仮説を説いた著名経済学者もいた。安倍首相もイギリス世論を動かすほどの存在だとは驚きである。

また今回の株価の下落と円高によって、「アベノミクスの“化けの皮”がはがれた」などと非科学的な発言をいう人たちも多い。問題はイギリスのEU離脱という海外発の衝撃であり、アベノミクスがどうこうという問題ではないだろう。仮にアベノミクス以外の政策スタンスをとっていても今回の出来事は、株価下落や急激な円高をもたらしただろう。仮に安倍政権発足前の株価水準と為替レートの水準だったとしたら、日経平均は1万円台、ドル円は85円。株価は9千円台を割りかねず、また為替レートは1ドル70円台にまでになるだろう。「化けの皮」がはがれるどころか、日本経済の危機的状況はさらに深まったに違いない。


さて、不毛な議論に付き合うのはこれぐらいにして、今後の対策はどうすべきだろうか? まず日本だけに限って言えば、株価も為替レートもともに落ち着きを多少とも取り戻すと考えるのが無難だろう。もちろん今後、イギリスの経済情勢は不安定化し、また連合王国の分断が進んだり、他のEU諸国にも追随する動きがでればさらに世界経済の不安定化は増していく。そうなってくると今回のイギリスのEU離脱は、長期的な世界経済の押し下げ要因になっていくだろう。また中国、ロシアなどの新興国経済の低迷、米国経済の性急な利上げショックなど、世界経済の不確実性が急速に高まってしまう。

率直にいえば、日本は消費増税などにかかずらっている場合ではないのだ。政策的にできるベストの選択を行い、海外の経済リスクに備えるべきだ。例えば、消費増税は二年半の先送りではなく、事実上の「凍結」を目指すべきだ。またベストは5%への消費税減税である。

これに加えて、日本銀行は追加緩和を行うべきである。マイナス金利はマネーの量的な拡大とともになら明瞭な政策効果を発揮するだろう(マイナス金利だけの効果は限定的)。また最低賃金の引き上げを継続していき、労使ともにベアの引き上げを行うように政府も率先して調整することも必要だろう。もてる政策資源をフルに活用すべきだ。

もしアベノミクス以前(あるいは以下)の政策に戻ることを国民や政治家たちが選ぶとしたら、それは日本社会を分断していく深刻なショックをもたらすだろう。イギリスの問題は、日本の将来の問題にもなりかねない。

田中秀臣

【私の論評】"アベノセイダーズ"は正統保守主義を理解できない愚か者の所業(゚д゚)!

"アベノセイダーズ"とは、分野を問わずあらゆる出来事の責任を安倍晋三首相に求め「安倍のせいだ!」と叫ぶリベラル派等を揶揄する、ネットスラングです。

パリで同時多発テロが発生すると、「安倍のせいで次は日本がテロの標的になる」。北朝鮮が核実験を強行すると、「これは危機を煽って憲法改正を推し進めるための、安倍政権の陰謀だ!」と何でも安倍首相のせいになってしまいます。

2016年2月3日、元野球選手の清原和博容疑者が覚醒剤取締法違反容疑で逮捕されたのは、皆さんの記憶にも新しいと思います。このときは、同時期に持ち上がった甘利明経済再生相の辞任騒動と結び付けて「清原逮捕は、甘利辞任という政治的失点を覆い隠すための、安倍政権の陰謀だ!」との声がリベラル派から上がりました。もちろん、これがなんら根拠のない陰謀論にすぎないことはいうまでもありません。このように芸能ネタまで、安倍首相のせいになってしまいます。

何でも安倍首相のせいにしてしまうのは、簡単なことです。普段頭を使わない人が、何でも陰謀論や、安倍首相のせいにしてしまい、自分の頭で納得できないことを無理やり納得して、それですませるというのはありがちなことだと思います。アベノセイダーズもその類なのだと思います。

しかし、こうも頻繁にしかも何もかも「安倍のせい」とするリベラル派が多いのは、何か背景があるのだと思います。
その背景としては、安倍首相は現状の日本のいわゆる、リベラルや保守からみれば、保守なのかリベラルだかわかららず、ヌエ的のようにみえてしまうということではないかと思います。ただし、いわゆる保守層は"アベノセイダーズ"的な発言をあまりしないので、リベラルの"アベノセイダーズ的"な発言が著しく目立つようになっているのだと思います。

ちなみに、ここで私が使っているリベラルとか、保守という言葉は、言葉も本来の意味での「リベラル」や「保守」ではありません。現在の日本でいわれている「リベラル」や「保守」のことです。実はこの事自体が、「アベノセイダーズ」現象の背景にあるのではないかと思います。しかし、それは後で述べることにします。

「京都 鵺 大尾」(「木曽街道六十九次」の
内、歌川国芳画、嘉永5年(1852年)10月)
安倍政権の最大の特徴として、大胆な金融緩和を伴った「アベノミクス」が挙げられます。しかし、雇用が悪化したときに、大胆な金融政策をすべしと主張するのは西欧ではリベラルや左派です。

これは、このブログにも以前掲載したのですが、左派の経済学者の松尾匡さんは、「左派の立場こそ本来、金融緩和を重視するべき」と主張しています。松尾さんは朝日新聞のインタビュー記事において、以下のように述べていました。
欧米では左派は金融緩和に賛成という色分けが普通だ。金融緩和は雇用を拡大させる効果があり、それは左派が重視するものだからだ。一方、物価が上がってインフレになれば資産が目減りするから、お金持ちの階級が金融緩和に反対する。こういった人々の支援を受けた右派の政治家は普通、金融緩和については否定的だ。
朝日新聞デジタル 2015年2月16日
西欧の認識からすれば、安倍政権はなんと(欧米基準での)左派ということになってしまいます。そうして、安倍政権は、自らの支持層である保守派から反発を受けても、それに抗って政策を推し進めるという傾向があります。この傾向は、金融政策だけではありません。

2015年10月、日米をはじめとするアジア・太平洋地域の12ヶ国は、環太平洋経済連携協定(TPP)締結交渉で大筋合意に達しました。TPPに関しては、自民党の支持基盤のひとつである農業団体が「日本の農業が破壊される」として、これに反対してきました。安倍政権は、支持基盤からのそうした反対の声を押し切って、TPP批准にむけて進んでいます。

日韓関係においても同様のことが言えます。2015年12月、日本と韓国は「最終的かつ不可逆的に」慰安婦問題を解決することで合意しました。この合意に対し、日本の保守派からは「日本の名誉が傷ついた」として強い反発の声が上がっていました。

安倍首相の国家観にも注目する必要がありそうです。2015年に安保法制が成立した際、これに反対するリベラル派の間では、安倍首相をヒトラーになぞらえる言説が多く見られました。


しかし、評論家の古谷経衡さんは、安倍首相が意外にも多民族・多人種社会を肯定していることを指摘しています(『愛国ってなんだ 民族・郷土・戦争』 PHP新書)。安倍首相が著書『美しい国へ』のなかで、1998年サッカーW杯においてアルジェリア系のジダン選手はじめ移民の選手たちが活躍してフランスを優勝へと導き、フランス国家の英雄となったことを称賛しているからです。

安倍政権を積極的に支持している保守派も、こうした国家観を必ずしも肯定はしないでしょう。

このように、現状の日本のいわゆるリベラルや保守からすれば、安倍首相は憲法改正を推進する保守のようでありながら、リベラルでもありどっちつかずに見えるに違いありません。彼らからみれば、理解できない、きわめてヌエのような存在に見えるに違いありません。
安倍首相を既存の「保守」のカテゴリーに括ることができないからこそ、リベラル派や一部保守はこの得体のしれない安倍首相に、ほとんど生理的と言っていいほどの強い嫌悪と恐怖を抱いてしまうのではないでしょうか。ただし、保守層はアベノセイダーズ的な振る舞いはしないので、リベラル派の「アベノセイダーズ」がかなり目立ってしまうことになっているのだと思います。

宮崎哲弥氏は日本のリベラルを徹底的に批判している
おそらく現代日本において「リベラル派」とされてる人たちのことは本当は「新左翼」「ニューレフト」と呼ぶべきでしょう。従来の意味での新左翼は学生運動や成田闘争といったものに代表されるように、暴力的革命運動をする人々でした。ここに「言葉の暴力」という概念を持ち込むと、現代日本において「リベラル派」と呼ばれる人たちを新左翼と呼ぶのに値することに気づきます

彼らのネットの活動を見ていると「安倍のせい」どころか、「あべしね」というワードがちらほら出てきます。今の総理大臣安倍晋三氏に対して「死ね」という言葉を投げつけているわけです。暴言以外のなにものでもないでしょう。

「日本のリベラル」を「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」と定義付けてしまえば、彼らはもはやリベラルではなくなります。スタンダードな意味での自由主義、中道左派を真のリベラルと呼ぶことができるでしょう。

いわゆる「アベノセイダーズ」は、「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」もしくはそれに近いシンパであることが理解できます。

さて、私自身は安倍首相は保守的であると思います。それは、良くいわれる◯◯と、☓☓に賛成して、△△と□□に反対だから保守というような浅薄な見方による保守ということではありません。

言葉の本来の意味での保守ということです。それは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。


金慶珠(キム・キョンジュ)東海大学教授
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から真の保守について引用します。
保守派というと、自民党が保守で野党は革新などという人もいますが、ご存知のように、このような分類は今や無意味になりました。さらに、人によっては、このような主張をする人が保守で、あのような主張をする人が革新やリベラルなどという人もいます。 
しかし、このような考えは根本的に間違いだと思います。主義主張そのものは、保守であるかないかを明確に区分するものではありません。 
それよりも、世の中の仕組みをどうするかというときに、「ステップを踏むなんてもどかしい」と「ウルトラCに賭ける」のが急進派、革命派であり、「ウルトラCなんかない」から「ステップを踏んでいくしかない」と考えるのが(反動ではない正しい意味での)保守派であり、中庸派であるということです。
コマネチ、オリンピックで10点満点。機械のように、
正確に技をこなすところはある意味怖いくらいだった。
そうして、民主主義の根本理念はケント・ギルバート氏が語るように「是々非々」であることを忘れるべきではないのです。世の中の仕組みを変えるときに、極端に走らず「是々非々」の民主主義というステップを踏む中庸主義が、保守主義と言えるでしょう。 
そういうステップを踏まずに、「誰の主張か」で物事を判断して、事を進めようとする人はそもそも保守ではないのです。 
それは、結局のところ真の保守ではないのです。世の中には、本当は保守はではないにもかかわらず、あたかも保守であるように振る舞う偽装保守などといわれる人々もいますし、そうではないまでも、主義主張がいわゆる保守派といわれる人々に似ているので、自分を保守とする自称保守という人もいます。 
偽装保守、自称保守の見分け方は簡単です。一見保守のように振る舞いながらも、「誰の主張か」にもとづき物事を考え、変化や進歩に対応するのに、ステップを踏まずに一挙に「変革」を求めるようなことをする人です。特に、この変革に際しては、社会や現実をよく確かめもせずに「制度設計」等で性急に対応しようとします。 
私たちは、このようなことにならないように、頭を使うべきです。そうでないと、「安倍死ね」と語る人々と大差がなくなってしまいます。
いずれにしても、"アベノセイダーズ"的発言は、真のリベラルや真の保守からは起こらないのであり、これらを発言する人たちは、 「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」と一部の「偽装保守」及びそれらのシンパということになると思います。

イデオロギーに固まった、これらの人たちから見れば、確かに安倍総理はヌエのような存在にしか見えないでしょう。しかし、安倍総理はマネジメントの大家ドラッカー氏のいうところの「改革の原理としての保守主義」を実践しているのだと思います。


これについて、ドラッカー氏は以下のように語っています。
保守主義とは、明日のために、すでに存在するものを基盤とし、すでに知られている方法を使い、自由で機能する社会をもつための必要条件に反しないかたちで具体的な問題を解決していくという原理である。これ以外の原理では、すべて目を覆う結果をもたらすこと必定である。 
ドラッカー名著集(10)『産業人の未来』
改革のためのドラッカーの方法論は、“保守主義”です。しかし、昔がよいとして昔を懐かしみ、昔に戻せという思想ではありません。

英語では、保守主義は、コンサーバティズムです。しかし、この英語にも、昔に戻せ、という保守反動的なニュアンスがあります。そこで、“活力ある保守主義”という言い方がされたりします。ドラッカーも、これには困り、あるときは“正統保守主義”と言い、あるときは米国と英国の“伝統としての保守主義”という言い方をします。

本当の意味での保守主義は、第1に、過去のためのものではありません。正統保守主義とは、「明日のため」のものです。あくまでも未来志向のものです。

正統保守主義とは、第2に、なんらかの青写真に沿って社会を形成しようとするものではありません。なんらかの万能薬を服さしめようとするものでもありません。

それは、ケース・バイ・ケースで問題を解いていこうとするものです。医学にしても、万能薬を求めているあいだは進歩しませんでした。風邪には風邪、腹痛には腹痛の治療を求めてから急速な進歩が見られくました。したがって、それは、「具体的な問題を解決していくものです」。

正統保守主義とは、第3に、手持ちの道具、役に立つことが実証ずみの道具を使って問題を解こうとするものです。理想的な道具を新たに発明しようとしても無理です。「それは、既に存在するものを基盤とし、既に知られているものを使うものです」。

かくしてドラッカーは、改革のための原理は、保守主義たるべしととし以下のように語っています。
第一に、過去は復活しえないことを認識することが必要である。第二に、青写真と万能薬をあきらめ、目前の問題に対する有効な解決策をみつけるという、控え目で地味な仕事に満足することを知ることが必要である。第三に、使えるものは既に手にしているものだけであることを知ることが必要である。 
『産業人の未来』
安倍総理はまさにドラッカーのいうところの、「改革の原理としての保守主義」を実践しているのです。たとえば、金融緩和策です。これは、ドラッカーのいうところの「既に手にしているもの」です。金融緩和策は新しいもてのではなく、昔からマクロ経済学でも教えられているように既に実証された使えるものです。

何のことはない、リベラルな正統保守主義者も成り立つということです。正統保守主義者によるリベラルな発言や行動も成り立つのです。そもそも、社会を本当に変革するのは、すでに手にしているものによってだけです。これは、イノベーションも同じです。唯一の例外は、まだ手にしていない技術などを開発しつつ進めた巨大ブロジェクトであるアポロ計画だけです。

このような正統保守主義を理解できない人たちが、"アベノセイダーズ"に堕落しているというのが真相なのです。

結局彼らは、過去のニューレフトと同じく、破壊することはできても、創造することはできないのです。


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