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2020年1月13日月曜日

【日本の解き方】韓国・文政権が「反日」を強めるしかない事情 経済失政で苦境続き…中国・北朝鮮に頭上がらず―【私の論評】経済悪化や、社会構造まで日本のせいにする韓国とは関係を避けよ(゚д゚)!


日本製品不買運動など「反日」はエスカレートするのか

2017年5月に就任した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は任期5年の折り返しを過ぎた。任期の残りで悪化した経済を立て直せるのか。そして対日関係を改善させる可能性はあるのだろうか。

 結論からいえば、反日政策が強まる可能性が高い。

 文政権の本質は典型的な左派だ。雇用を作るより賃金にこだわり最低賃金を過度に引き上げ、結果として失業を増大させたことなどは日本の左派政党と極めて似ている。

 左派政党の常として共産主義への憧憬がある。これは左派の理論基盤であるので仕方ない。そのため中国や北朝鮮に対して精神的に頭が上がらない。文政権の韓国は形式的には民主主義・資本主義の西側諸国の一員であるが、実質は中国・北朝鮮の友好国なのだ。

 もともと韓国は半島国家として中国の大きな影響を受けてきた。「事大主義」といわれるように、強い中国と争わないことが国益にもなっていた。こうした複雑な歴史や地政学的な半島国家の宿命から、保守政権であっても、「反日」は常に韓国政府の有効な逃げ道だった。

 特に左派の文政権にとって、中国と北朝鮮への配慮は必要だ。中国に対しては経済依存度が高いからやむを得ないという側面もあるが、北朝鮮に対しては、はたから見ても異様だ。

 北朝鮮から全く相手にされていないのにかかわらず、文大統領は金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長にラブコールを送り続けている。正恩氏は直接トランプ米大統領との対話チャンネルを持ったので文氏の仲介は必要ないのだが、仲介したいと言う。これでは押し売りだ。これに対し、日本は気兼ねなくはけ口として批判できるので便利な存在だろう。

 文政権は、経済政策を失敗して苦境に陥っている。対日政策でも、日本側の輸出管理見直しへ適切な対応ができず、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を言い出しては撤回するなど独り相撲を行い、日本製品ボイコットを黙認したあげく、韓国観光業への大打撃を与えて自爆状態になっている。

 米中貿易戦争で中国経済がダメージを受けていることも、中国依存の韓国経済には痛手だ。そうした経済苦境により、文政権への支持率は就任以降、総じて低下傾向だ。よほどのファンを除くと、経済がよければ支持するが経済が悪ければ支持しないというライトな層が離れる。経済政策の巧拙によって支持率は動くのだ。

 それでもコアな層は支持し続ける。そしてこうした時に、政治対応としてはコアの支持者固めをする。となると、文政権のコアな支持者は中国と北朝鮮にシンパシーを持つ人が多いので、反日政策は強くなることはあっても決して弱まることはないだろう。

 むしろ、経済苦境の原因を日本に求めて、日本に責任転嫁する可能性が高い。そもそも政治的に考えると、これまでの反日を方向転換することは有り得ない。そうなると、コアの支持者まで失ってしまい、文政権の崩壊になるからだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】経済悪化や、社会構造まで日本のせいにする韓国とは関係を避けよ(゚д゚)!
上の高橋洋一氏の記事には「経済苦境の原因を日本に求めて、日本に責任転嫁する可能性が高い」としていますが、まさにそのとおりです。実際韓国はすでにそれを実行しています。

たとえば、韓国の経済悪化の原因の一つとして、日本による韓国への「輸出管理の強化」が挙げられていますが、これは完璧な誤りまです。

輸出管理が強化されたにしても、
輸出不可ということでは全くない

「韓国に対する輸出規制」に関しては、韓国メディアは『半導体材料を“事実上の禁輸”』『対韓輸出規制を発動』などと、勇ましく報道しています。それと同時に、記事では、『自由貿易を掲げてきた日本へ各国から批判が集まる懸念もある』『各国に恣意的なルール変更ともとられかねない』といった指摘もしています。

果たしてそうなのでしょうか。

まずそもそもこれは、韓国に対して新たに「輸出規制を発動」するものではありません。韓国向けの輸出について、2004年から特別に優遇して簡略化していた手続きを、2003年までの普通の手続きに戻すものです。

簡略化した手続きとは、3年間有効な「包括許可」を得れば、いつでも輸出できるというものです。本来は、輸出の契約ごとに「個別許可」が必要です。2003年当時は、韓国への輸出は個別許可が必要でしたた。まさにこの時の手続きに戻したというだけのことです。

また、輸出に際して「個別許可」が必要なのは、輸出管理の世界では国際的な原則で、特別に信頼できる相手国についてのみ、「包括許可」による手続きの簡略化が認められていました。この対象国を、日本の制度では「ホワイト国」と呼んでいます。2004年にこの「ホワイト国」に韓国が追加されたのです。

なお、この個別許可について、一部の報道では「出荷ごと」に許可が必要となり、日々、工場から韓国に製品を出荷しているようなビジネスが停滞してしまうというような報道によって、輸出企業の現場は混乱しているようです。

これは誤解で、個別許可は”契約ごと”に必要で、一契約で何回にも出荷を分ける通常のビジネスは当然、一度個別許可を得ていれば出荷ごとに許可を得る必要はありません。
特別に信頼できる「ホワイト国」とは、あくまでも輸出管理の観点で信頼できるかどうかです。国際的には欧米主導で長い歴史を有する輸出管理の枠組みが、分野ごとに4つあります。詳細は省きますが、ホワイト国の対象にするには、相手国がこれらに参加していて、しかも国内で厳格に輸出管理をしていることが必要となります。

1990年代、韓国はまだ国際的な輸出管理の枠組みのメンバーではありませんでした。日本は韓国がそのメンバーに参加できるよう、各国に働きかけ、韓国にも関係者が再三足を運んで、韓国が輸出管理をしっかりできるように全面的に支援していました。

その結果、韓国も国際枠組みのメンバーになることができ、韓国からも日本のそれまでの協力、働きかけに感謝されていました。それが2004年に、韓国をホワイト国に追加して特別に優遇することにつながっていったのです。
ホワイト国として特別優遇するためには、相手国が厳格に輸出管理をしているかどうかを確認するための協議をするのが通常です。

そうした協議を、日本は欧州など他のホワイト国と実施してきています。しかし近年、韓国だけはどういうわけか、日本との輸出管理の協議に応じていませんでした。

政府が、「優遇した手続きの前提になる輸出管理の信頼関係が崩れている」としていることから想像するに難くないです。しかし、これを「安全保障の友好国でなくなった」と理解するのは、明らかに行き過ぎです。

安全保障の友好国が「ホワイト国」であると解説している報道もありますが、そうではありません。例えば、インド太平洋戦略を共有するインドや海上共同訓練をするインドネシアなどもホワイト国ではなく、個別許可が必要です。

また欧州連合(EU)が輸出管理のうえで特別優遇しているのは日本を含めて8カ国で、これに韓国は入っていません。多少の細かい点を無視すれば、EU並みの手続きに戻したとも言えます。それでどうして「自由貿易に逆行する」との批判が各国から出るのでしょうか。

この措置の背景に、対韓強硬の声があるのは事実でしょう。韓国人元徴用工の訴訟問題を巡る韓国の対応に、韓国への強硬措置を求める声が自民党内や官邸内で高まっていました。事態打開のために対抗措置を模索していたのも事実です。そうした中で、打ち出された措置を「事実上の対抗措置」と受け止めるのも自然な成り行きです。

しかし中国によるレアアースの禁輸措置と同列に論じるのは的外れです。日本は法治国家だ。政治的な道具として法律運用を自由に利用できるものではありません。

報道の中には個別許可について、「基本的に輸出を許可しない方針で、事実上の禁輸措置」だとするものもあります。しかし、法治国家としてこうした恣意的運用はあり得ず、明らかに間違いです。

仮にそうした運用をすれば、国が輸出者から訴えられたら負けるのは明らかです。韓国への対抗措置を強く求める立場からは、そうした運用を強く期待したいのは分からないでもないですが、法制度としては無理があります。それにもかかわらず、そうした声に引きずられて報道するのはいただけません。

あくまでこの措置は、手続きを「包括許可から個別許可へ」と、元に戻す変更を行うものです。基準を原則不許可にするよう変えるものではありません。それでは対抗措置として生ぬるい、不十分だというのならば、米国のような原則不許可にするような法律を議員立法で作るしかありません。

また、逆に反対の立場から対抗措置の連鎖になると懸念する向きもありますが、この措置の中身を見れば、およそ対抗措置と言えるものではなく、そうした懸念は的外れであることも分かるでしょう。

「世界貿易機関(WTO)協定違反の疑いもあるグレーな措置」とする、ある日本の識者のコメントまであります。であれば、2003年まで日本はWTO違反をしていたとでも言うのでしょうか。

とても日本の輸出管理法制を理解してコメントしているとは思えません。EU並みの手続きにすること、対インドネシア並みの手続きにすることが、どうしてWTO協定違反になりえるのでしょうか。韓国側の過剰反応に引っ張られ過ぎではないでしょうか。

いずれの立場であっても、まずは冷静に事実に基づいて論じるべきです。

ただし、韓国は、あくまでこの措置により、韓国は経済的不振に陥っていると強弁するでしょう。しかし、その真の原因は、日本の貿易などとは全く関係なく、韓国政府の近年経済対策に問題があるのです。


最も悪化させたのは、金融緩和をしないで最低賃金を単純にあげたことです。韓国の文政権が最低賃金引上げと時短を実施したため、失業率が上がったのです。金融緩和で先に雇用を作らず賃金を上げると雇用が失われる典型的な失敗政策で、これは日本の民主党時代の政策と瓜二つです。

立憲民主党の枝野氏など、韓国でこの政策が完璧に大失敗であることがはっきりしたにも関わらず、金融緩和はせずに再分配をすぺきと主張しています。

さらに、韓国経済は典型的な輸出依存型で、国内総生産(GDP)の約37%を輸出が占めます。半導体は輸出の20%余りに上り、韓国経済を牽引(けんいん)する数少ない分野です。これも、輸出に依存しすぎであり、昨今の韓国経済を悪化させている原因の一つでもあります。


さらに、GDPに占める個人消費の割合は、1970年代はじめは70%台だったのが、2000年に53.8%に低下し、2015年に初めて50%を割り込んだあと3年連続で低下しています。2017年のGDPに占める個人消費の割合は48.1%と、前年に比べて0.6ポイント低下し、韓国銀行が統計を取り始めた1970年以降ではもっとも低くなっています。

ちなみに、日米のGDPに占める個人消費の割合は、米国70%を超え、日本は60%を超えます。このように内需が大きければ、国際経済から受ける悪影響は、比較的少ないですが、韓国のように内需が小さければ、国際経済の影響をもろにうけてしまいます。

このような経済構造にしてしまったのは、あくまで韓国の責任であり、日本とは全く関係ありません。

     統計庁が先月31日発表した「12月及び年間消費者物価動向」によると、
     昨年の消費者物価指数は前年より0.4%上昇に止まった。

昨今の韓国の経済の悪化は、もともと韓国経済が脆弱であったことに加え、金融緩和をせずに、最低賃金をあげるという、まるで日本の民主党政権のときのようなトンデモ経済理論を実行したことによるものです。

さらに、最近の韓国情勢を見ていると、文大統領の政策で韓国国内が二分されていることがわかるります。GSOMIAに関する世論調査を見ても、文政権の当初の廃止の決定に対する賛否は割れていた。その後の政府の姿勢転換についても、国民の意識は大きく割れているように見えます。

国内世論が大きく割れる背景の一つに、韓国の経済環境が悪化する中、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がしゃにむに“南北統一”を目指していることがありそうです。

南北統一に関して、一部の世論調査では約53%が賛成でした。それは見方を変えると、約半数の国民は南北統一に慎重であることの裏返しともいえます。特に、シニア世代と若年層では、南北統一への見解が大きく異なっているといわれています。

世代間で世論が分かれる要因として、朝鮮戦争による家族離散などの要因があるとみられます。動乱を経験したシニア世代が、家族がともに生活できる環境を希望することは想像に難くないです。韓国映画でもそうしたシーンが描かれています。

一方、若年層は、冷静に経済環境を直視しているケースが多いのでしょう。中国経済の減速などによって韓国の所得・雇用環境は悪化し、将来をあきらめる若者もいるといわれています。その中で南北統一が目指されれば、韓国は北朝鮮に資金援助などを行わなければならなくなります。

「これ以上の生活環境の悪化には耐えられない」というのが彼らの本音なのでしょう。

ただ、南北統一を期待する市民団体などの支持を得てきた文大統領は、これまでの政策理念を撤回することはできない。そうした状況が続くと、韓国の世論は分断された状況が続き、社会・経済の不安定感は高まりやすいと懸念されます。

こうした社会の変容にともない、当然のことながら、国民の中には不満が鬱積しています。本来なら、韓国政府がこの不満の鬱積を解消すべきなのですが、これに対して韓国政府は何もせず、国民の爆発寸前の憤怒のマグマを反日により、日本に向けて爆発させようと画策するばかりです。

日本としては、何でも日本のせいにする韓国はまともに相手にしても仕方ないので、国際社会に丁寧に説明して、韓国とはなるべく関わり合いにならないすることが得策だと思います。

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2019年12月14日土曜日

北朝鮮はICBMを射つのか!? CIAが水面下で陽動作戦も… GSOMIA破棄騒動の韓国はいまや「カヤの外」 ―【私の論評】日本が「敵基地攻撃能力」を持つことは現実的な対処法(゚д゚)!

北朝鮮はICBMを射つのか!? CIAが水面下で陽動作戦も… GSOMIA破棄騒動の韓国はいまや「カヤの外」 
北朝鮮のミサイル発射実験=10月2日

 北朝鮮が「非常に重大な実験」を行ったと発表するなど、米国との交渉期限を年末に設定するなかで、米国などへの牽制(けんせい)を続けている。再び大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験など強硬手段に踏み切れば、日本への影響も大きい。

 米朝首脳会談は膠着(こうちゃく)状態だ。初の会談は2018年6月にシンガポールで、2回目は19年2月にベトナムのハノイで開かれた。ハノイでは協議が決裂した。6月には両首脳が板門店で面会したが、米朝両国とも首脳会談ではないとしている。

 その後、年内の首脳会談を模索していたが、実務者協議で難航している。米国は、柔軟姿勢を示すためにボルトン大統領補佐官を9月に解任し、10月に北朝鮮との実務者協議をストックホルムで行ったが決裂した。その後、北朝鮮は一方的に交渉期限を年内に設定した。

 北朝鮮は北西部・東倉里(トンチャンリ)にある「西海(ソヘ)衛星発射場」で「非常に重大な実験が行われた」と8日、発表した。ICBMに使われるエンジン燃焼実験とみられている。これは、北朝鮮から米国への催促である。「年末」という期限の設定が本気であることを示すために「重大な実験」を行ったのだろう。次には、人工衛星と称しつつICBMの発射をほのめかしている。

 この発表を受けて、トランプ米大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対し、米国に対する敵意は、「全て」を失うことになると警告した。その直前には、トランプ氏は正恩氏との良好な関係を強調していた。

 正恩氏にとっても、トランプ氏との特別な関係を失うのは得策でないだろう。トランプ氏は軍歴も政治家経験もない民間人出身なので、軍事オプションよりもディール(取引)を望んでいるはずだ。米朝の緊張関係は、両首脳の個人的な関係でもっているので、もしこの個人的な関係が崩れたら、米朝首脳会談が行われていない2年前のように、ひょっとしたら軍事衝突もあり得るというくらいの緊張関係に戻るかもしれない。

 両首脳はまだお互いに信頼関係があるようだが、具体的な非核化プロセスについては両国でこれといった妙案もない。

 こうなると、北朝鮮はICBM発射に突っ走るのか、それともトップ級が会って仕切り直し、期限先延ばしを行うことも考えられる。あるいは米中央情報局(CIA)などが水面下で陽動作戦を行い、北朝鮮もサイバー攻撃を仕掛けるなど、表面上は軍事オプションに見えないまま水面下で攻撃するという可能性も出てくる。いろいろな展開が考えられるので、今のところ、米朝関係の先行きについて予測は難しい。

 日本としては、警戒態勢を取りながら、米国との連携をとるしかない。

 ここに至って、韓国は先般の日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄騒動が尾を引き、日米からの信頼は得られていない。米朝関係をめぐっても、「あまり関係のない国」になりつつある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)


【私の論評】日本が「敵基地攻撃能力」を持つことは現実的な対処法(゚д゚)!

北朝鮮のミサイルへの備えとしては、日本が「敵基地攻撃能力」持つことが最優先でしょう。

小西洋之参議院議員の「専守防衛」に関する質問主意書に対する平成27年10月6日付け政府答弁書(安倍晋三内閣総理大臣)では、

「専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、又、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛政策の姿勢をいうものであり、我が国の防衛の基本的な方針である。」
と言っています。


この「専守防衛」に関する政府答弁書の見解によれば、要するに、「専守防衛」とは、日本は受動的な「自衛」に徹し、他国に対して「侵略戦争」をしない防衛戦略に過ぎないと解すべきです。なぜなら、「専守防衛」は、「侵略戦争」を放棄した憲法9条1項2項に基づく理念であり防衛戦略だからです。
したがって、侵略戦争のためではなく、「専守防衛」即ち自衛のための兵器の保有や自衛権の行使は禁止されないのです。
この政府の立場は、最高裁判例の立場とも完全に適合しています。砂川事件最高裁大法廷判決は、
「憲法9条は我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定したものではなく、憲法9条の平和主義は無防備無抵抗を定めたものではない。我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得ることは国家固有の権能の行使であって、憲法は何らこれを禁止するものではない。9条1項はいわゆる侵略戦争を放棄したものである。」(昭和34・12・16刑集13・13・3225)
と判示しているからです。

このように、「専守防衛」とは、要するに、日本が、受動的な「自衛」に徹し、他国に対して侵略戦争をしない防衛戦略に過ぎないと解されますから、侵略戦争のためではなく、もっぱら、自衛のための「敵基地攻撃」や「敵基地攻撃能力」の保有は専守防衛とは矛盾せず、上記政府見解及び上記最高裁判例に照らして、憲法上も禁止されないことは明らかです。

即ち、「座して死を待つのが憲法の趣旨ではなく、攻撃を防御するため、他に手段がない場合にミサイル基地をたたくこと(敵基地攻撃)は、法理的に自衛の範囲である」(1956年鳩山一郎内閣)と言えるからです。

現在の政府見解では、第一撃を受けたり、ミサイルに燃料を注入するなど、敵が攻撃に着手した時点で敵基地攻撃が可能であるとしている。

以上の通り、「敵基地攻撃」及び「敵基地攻撃能力」の保有が「専守防衛」に反せず、憲法上も禁止されないから、近年の緊迫する北東アジアの安全保障環境の変化を考えれば、日本は、対中・対北朝鮮への抑止力を一層強化するため、「敵基地攻撃能力」を速やかに保有すべきです。

日本は、現在、海上配備型イージス艦及び地上配備型迎撃システムPAC3のミサイル防衛システムを保有していますが、ミサイル防衛にはかねてより技術的限界が指摘されており、弾道ミサイルの迎撃は決して完璧とは言えないからです。


地対空誘導弾ペトリオット PAC-3

日本が、抑止力として、「敵基地攻撃能力」を保有するためには、(1)高性能軍事偵察人工衛星の開発導入(2)イージス・アショアを含む高性能レーダー基地の増設整備(3)長距離巡航ミサイルの導入(4)長距離ステルス戦闘機の導入(5)多用途防衛型空母の保有(6)原子力潜水艦の保有(7)弾道ミサイルの保有(8)無人偵察機及び無人爆撃機の保有(9)宇宙・サイバー・電磁波を含む多次元統合防衛力強化(10)レーザー兵器等新兵器の開発促進(11)速やかな憲法9条解釈の変更もしくは改正、などが必要です。

前記の通り、「専守防衛」は、憲法9条に基づき、他国から攻撃されない限り攻撃しない防衛戦略です。しかし、核ミサイル技術が飛躍的に進歩した現代では、核保有国から先制核攻撃をされてから反撃するのでは最早手遅れです。

なぜなら、日本全土に対する同時数百発の核ミサイルによる先制核攻撃を受けた場合は、1憶2000万日本国民の多数が犠牲になり、日本国自体の人的物的消滅も否定できないからです。したがって、「専守防衛」を貫くためには、他国からの攻撃をあらかじめ抑止することこそが最も重要です。その意味で、「専守防衛」と抑止力強化は決して矛盾しないのでです。

したがって、抑止力、特に核抑止力を強化するためには、米国との同盟関係の一層の強化が不可欠であり、日本独自の核保有が当面困難であるとすれば、次善の策として、米国との「核共有」は必須です。

そして、抑止力を強化するため憲法9条の解釈の変更もしくは改正を急ぎ上記「敵基地攻撃能力」の保有は日本にとって強固な抑止力になります。日本が「敵基地攻撃能力」を持つことになれば、金正恩は今まで想定しなくても良かった日本の自衛隊の攻撃を想定しなければならなくなります。

北朝鮮の戦闘機

北朝鮮の防空能力は、何十年も前から更新されおらず、日本の航空機はステルスであろうが、なかろうが、北朝鮮のどこにでも行って爆撃をすることができます。時代遅れの航空機や、防空兵器しか持たない北朝鮮に迎撃されることは、滅多にありません。

対戦哨戒能力はゼロに近く、日本の潜水艦は北朝鮮の海域で自由に行動し、いずれの港にも妨害されることなく入ることができます。北朝鮮の海域の好きな場所から、北朝鮮のミサイル基地などを思い通りに攻撃することができます。その他の艦船にも、北は全く歯がたたないでしょう。

自衛隊の隊員や、戦車等も思いのままに送ることができるでしょう。北朝鮮の陸軍も自衛隊の敵ではありません。そもそも、北朝鮮の兵士らは、給料は無論のこと、食料ですら、まともに配給されていません。そのため、平均身長も日本や韓国に比較すると随分低いです。おそらく、まともな戦闘には耐えることができないでしょう。

左から米兵士,北兵士,韓国兵士

現在の北朝鮮は、核ミサイル開発のために、他のことをすべて犠牲にしています。ここが、北朝鮮の最大の弱点であり、ミサイル発射の兆候が見られた場合、すぐに行動して、発射基地などをピンポイント的に攻撃することは、十分可能です。決して夢物語でもなんでもなく、かなり現実的な対処法といえます。

そうして、これが北朝鮮に対する最大の抑止力なることはいうまでもありません。

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2019年11月23日土曜日

日本政府高官「ほとんどパーフェクトゲーム」 米国が韓国に圧力かける構図に GSOMIA失効回避―【私の論評】とうとう韓国のバランス外交の失敗が表沙汰になった。日本も習近平を国賓として招けば同じような目をみることに(゚д゚)!

日本政府高官「ほとんどパーフェクトゲーム」 米国が韓国に圧力かける構図に GSOMIA失効回避

記者団からGSOMIAの継続について記者団の質問に答える安倍首相=22日午後、首相官邸

 日本政府は、韓国からの輸出管理厳格化の撤回要求を拒否し続けた上、米国が韓国に圧力をかける構図を作り上げたことが、韓国政府の今回の決定につながったとみている。日本政府は貿易管理をめぐる当局間の協議再開には応じるものの、「一切妥協はしない」(政府高官)方針だ。

 「ほとんどこちらのパーフェクトゲームだった」

 韓国政府の突然の方針転換に日本政府高官はこう語った。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄通告を改めさせ、日米韓の安全保障協力が維持されるからだけではない。日本側の予想を超え、韓国が輸出管理の厳格化をめぐる世界貿易機関(WTO)への提訴手続きまで見合わせたからだ。

 韓国側は8月下旬、日本政府による対韓輸出管理厳格化への対抗措置としてGSOMIAの破棄を決定し、破棄撤回の条件として輸出管理厳格化の見直しを求めていた。

 韓国側の態度が変化したのは「ここ2、3日」(政府筋)だったという。

 日本政府は「GSOMIAと輸出管理は次元が違う」として韓国側が設定した土俵には乗らず、「賢明な対応」(菅義偉官房長官)を促し続ける戦術を徹底した。政府高官によると、米国は「トランプ米大統領は安倍晋三首相側に立つ」と韓国側に伝えており、日本政府は米国の韓国に対する圧力が非常に強かったとみている。

 日本政府は、日韓共通の同盟国である米国と課題意識を共有してきた。外交・安保関係者の間では、GSOMIAの破棄で最も影響を受けるのは米国だとの見方が強いからだ。外務省関係者は「首相はトランプ氏に対し、いかに韓国の対応がおかしいかを繰り返し説明してきた」と明かす。

 さまざまなレベルでの働きかけの結果、GSOMIAの破棄は米韓の問題でもあるとして「米国から韓国にガンガン言ってもらう」(外務省関係者)形に持ち込むことに成功した。

 文在寅政権は強気の言動を繰り返していたが、日本側のぶれない姿勢と米国の強い圧力を前に、実際は「追い詰められていた」(官邸関係者)とみられる。

 首相は22日夜、森喜朗元首相らと東京都内で会食した。出席者によると、首相はGSOMIAの失効回避について「よかった」と話していたという。(産経新聞 原川貴郎)


【私の論評】とうとう韓国のバランス外交の失敗が表沙汰に!日本も習近平を国賓として招けば同じような目をみることに(゚д゚)!

今回のGSOMIAの失効回避は、韓国のいわゆるバランス外交が失敗したことが露呈したと捉えるべきと思います。このバランス外交とは、なにかといえば、米と中国の間をうまくバランスをとり自国に有利になるようにする外交という言う意味です。

無論このバランス外交は成功事例もあるのですが、なかなかうまくいかないという現実があります。

韓国がいつからバランス外交的妄想に憑りつかれたのかといえば、後で述べるように髄分昔からですが、最近では記憶する限り盧武鉉大統領時代ではないかと思います。

それまで韓国は米国の忠実な同盟国として振る舞ってきたのですが、盧武鉉は強烈な反日、反米論者として登場しました。その親北姿勢は米国をハラハラさせる傍ら、彼が断固として宣言した外交路線は「韓国が北東アジアの米・中のバランサーの役を果たす」という壮大なものでした。

バランサーというのは米中とも韓国を敵に廻しては不利になるほど強力である必要があります。盧武鉉はイラク戦争に3260人もの軍隊を派遣したのですが、軍事同盟国の米国側からすれば、韓国が引き揚げれば困るほどの数ではありませんでした。

中国に対しては経済的接近を図る反面、米・日とは距離を置く路線を採りました 。米・中間のバランサーというからには当然の路線かもしれません。この路線を引き継いだのが朴槿恵大統領であり、盧泰愚政権時代に、民情首席を努めた現在の文在寅大統領です。


文在寅(左)と盧泰愚(右)

朴槿恵は、韓国がバランサーであるためには、近辺の日本ごときは「歴史を顧みない不道徳国家である」と欧米に“告げ口”して廻ることからバランス外交を始めました。しかし中韓は別にして首脳が悪口を言って廻る国家が尊敬されるはずもありません。

朴槿恵氏は外交路線として「安全保障は米国と手を携え」、「経済は中国を重視する」と称しました。メディアは「安米経中」と名付けましたが、朴氏は自らが引けば米も中も困ると考えたのでしょう。

「自らを小国と考えてはいけない。それは敗北主義だ」と強調しました。米欧と一回りしたあと15年、中国のコケ脅しのような軍事パレードに参加を強行しました。たまたま米韓の間で「高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備するのが懸案となっていました。

渋る韓国に米国が怒り、はっきり断れない韓国に中国が怒ったのです。この兵器は北朝鮮の攻撃に対して極めて有効ですが、同時に中国の攻撃をも防ぐことができます。防衛兵器の配備一つを巡っても、韓国のバランス外交は成り立たないのです。

韓国外交のどこが間違ったかは明瞭です。どこかの国と防衛条約を結んだら、敵と見做す相手国との付き合いには不都合が起こるということです。

告げ口外交を展開した朴槿恵韓国大統領(左)と、オバマ米大統領(右)

朴槿恵の弾劾・罷免の後、大統領になったのが文在寅であり、分在寅の外交路線は「韓国が北東アジアの米・中のバランサーの役を果たす」という壮大な、盧泰愚のそれを引き継いだものでした。

そのためか、朴槿恵よりもさらに大きなレベルで、バランス外交を推し進めようとしました。日本に対しても朴槿恵のような告げ口外交どころか、GSOMIA破棄を大統領選の選挙公約とし、その後も海自の哨戒機に対するレーザー照射、慰安婦問題の蒸し返し、徴用工裁判なとで、日本に対する対立姿勢を顕にしました。

挙げ句の果に、本当にGSOMIAを破棄しようとしたのですが、日本からは無視され、米国からはとてつもない圧力をかけられました。そのため、破棄はやめたのですが、これは韓国外交の完全敗北であるにもかかわらず、今回破棄は撤回するがいつでも破棄できると国内に宣伝中という有様です。

これは、結局のところ、韓国のバランス外交の失敗が表沙汰になったということです。いままでも、失敗は数多あるのですが、それでもなんとなく隠すことができました。特に、韓国内では隠蔽することができました。しかし、今回ばかりはさすがに隠蔽できないようです。

韓国のバランス政策は、最近始まったものではありません。李氏朝鮮第26代国王、後に大韓帝国初代皇帝となった高宗の政策は、外国を利用して他の国を抑え、自国は戦わずに安全を図る「以夷制夷(いいせいい)」というものでした。これは、現在でいえばバランス外交です。

清国の勢力が優勢となると対ロ接近を図り、第1、2次朝露密約(85、86年)を結びました。日清戦争(94年)後には再びロシアに接近しました。これは清国に代わり勢力を拡大した日本のけん制が狙いでした。しかし、これは結局失敗したのは、周知の通りです。

李氏朝鮮第26代国王、後に大韓帝国初代皇帝となった高宗

朝鮮半島では、古代にもバランス外交をしていたという史実が残っています。しかし、バランス外交はいずれの時代も成功を収めた事例はありません。にもかかわらず、現在の韓国でもなぜバランス外交を信奉しようとするのでしょうか。理解し難いところがあります。

しかし、文在寅氏、盧武鉉氏や朴槿恵氏を笑ってはいけないです。日本の政権与党である自民党にも、かつては日米、日中と“等距離外交”をすると豪語していた三木武夫首相がいました。

福田赳夫首相は“全方位外交”と称していました。その後も中国と太い人脈を繋げておけば、いざという時に役に立つと信じる党首脳がいたものでした。谷垣禎一氏や岸田文雄外相が属する宏池会は経済重視主義で中国側を向いていましたた。

日本は中国と太い人脈を繋げておいたはずなのに、その後ごく最近まで、日中関係表向きも、裏でもかなり悪化していました。

さらに、最近では中国は表では、日本に対する擦り寄り試製をみせています。これは、当然のことながら、米国から直接冷戦を挑まれていることや、香港問題が激化しているため、この時期に対日関係まで悪くはしたくないからでしょう。

とはいいながら、裏では尖閣に対する示威行動を未だに継続しているどころかさらに激化させています。これが共産主義の本質なのです。

にもかかわらず、日本は、来年習近平を国賓として迎えることを約束しています。こんなことをすれば、米国は当然反発するでしょうし、世界に日本が中国の蛮行を認めたという誤ったメッセージを与えてしまうことになりかねません。

ただし、自民党の保守系有志議員のグループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」(代表幹事・青山繁晴参院議員)は13日、国会内で会合を開き、中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域への公船の侵入行為や香港市民に対する弾圧姿勢を改めない限り、来春予定される習近平国家主席の国賓としての来日に反対する決議文をまとめています。

しかし、これは無論与党の中でも、一部の動きであり、自民党そのものが来日に反対しているわけではありません。

日本が、来年習近平を国賓で迎え、天皇陛下に謁見することにでもなれば、日本も米国や米国の同盟国などから、今日の韓国のような扱いを受けるようになることは必定です。韓国のように米国から大きな圧力を受けてから、迎えることをやめるよりは、自らとりやめるようにすべきです。そうすれば、中国に対してより大きな衝撃を与えることになりまり、米国や他の同盟国に好印象を与えられることになります。


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2019年11月16日土曜日

文在寅、北の亡命希望者を「強制送還」で地獄送りに―【私の論評】GSOMIA破棄と人権問題で、米国は超党派で韓国を制裁するようになる(゚д゚)!


金正恩への阿りか?秘密裏の強制送還が露見し内外から非難囂々

11月4日、ASEAN首脳会議・関連会合での文在寅大統領

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は11月7日、海上で拿捕していた北朝鮮船員2人を北朝鮮に強制送還した。この韓国政府の対応について今、韓国内からはもちろん、国際社会からの非難が殺到している。

 7日、韓国統一部がある発表を行った。

 「11月2日、東海(日本海)上でNLLを越えて南下した北朝鮮住民2人を拿捕した。関係機関合同調査の結果、彼らが同僚の船員らを殺害して逃走したことが分かった」

 「開城工業連絡事務所を通じて2人を北朝鮮へ追放する意思を伝え、北朝鮮側が受け入れる意思を明らかにしたので、本日午後3時10分ごろ、板門店を通じて彼らを北朝鮮に追放した」

 というものだ。ちなみにNLLとは「北方限界線」の略称で、海洋上の韓国と北朝鮮の境界線のことだ。


偶然によって発覚した「強制送還」

 この日の発表によると、追放された2人の乗組員はともに20代の男性。2人はイカ釣漁船の乗組員だったが、もう1名の同僚と共謀して日本海での操業中に洋上で16人の同僚を殺害、逃走資金を調達するためいったん北朝鮮の金策港に戻った後、NLL付近まで逃走していたが、そこで韓国海軍によって拿捕されたという。韓国政府は、彼らが殺人など重大な非政治的犯罪によって「北朝鮮離脱住民法」上の保護対象ではない点、韓国国民の生命と安全に脅威となる凶悪犯罪者であり国際法上の難民として認められない点などから判断し、関連省庁間の協議結果によって追放を決定したのだという。

 ところが、この追放過程における数々の疑惑がメディアの取材によって浮かび上がり、文在寅政権が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権の機嫌を取るために、脱北者の人権を蹂躙したのではないかと、韓国中が騒然となっているのだ。


 韓国メディアが疑いを向ける第一点目は、韓国政府が今回の事件を隠蔽しようとしていたことだ。

 「強制送還」が発覚したのは、7日午前、国会予算決算委員会全体会議に出席していた金有根(キム・ユグン)国家安保室第1次長が共同警備区域(JSA)の大隊長である某中佐から受け取った文字メッセージを、報道機関のカメラに撮られたことがきっかけだった。「本日15時、北朝鮮住民2人を板門店で送還する」という内容だった。記事が公開され、国会でこの事件をめぐって大きな騒ぎが起きると、統一部が急いでブリーフィングを準備、当日午後3時40分に「強制送還」の事実を公表したのだった。

 その一方で、鄭京斗(チョン・キョンドゥ)国防部長官が国会で「報道を見て追放を知った」と証言したことで、大統領府が国防長官をスルーして報告を受けている実態も明らかになり、職権乱用の問題も指摘されている。


統一部長官による「死んでも北朝鮮に戻る」の説明は虚偽?

 疑惑の第二点は金錬鐵(キム・ヨンチョル)統一部長官の「うそ疑惑」だ。国会に出席した金長官は、事件の経緯を説明する中、「(彼らは)調査を受ける過程で様々な相反する供述をしていたが、確かに『死んでも(北朝鮮に)戻る』と陳述した」「これらの行動などを総合的に判断し、亡命の意思はないという最終結論を下した」と答えていた。

 しかしその後、韓国メディアが匿名の統一部担当者の証言をもとに、「『死んでも北朝鮮に戻る』という発言は、海上殺人事件後にいったん(北朝鮮の)金策港へ戻る途中で出た言葉で、逃避資金を用意するために金策港に戻るという意味だった」と暴露。さらに、2人が合同調査における供述書に自筆で「亡命する」という明白な意思を示していたことも明らかになった。

 そして最大の疑惑は、全長15mほどの17t級の小型木造船の上で、わずか3人(統一部によると共犯のもう1人はすでに北朝鮮で逮捕されたという)で16人もの同僚乗組員を殺害することが可能かという点だ。しかも殺害の道具は斧とハンマーだけというから、犯行の規模と釣り合いがとれない。

 韓国政府は、事件の実相をこう説明している。

「船長の過酷行為に不満を抱いた彼らは斧1本とハンマー2本だけで16人を殺した。まず、共犯の1人が40分間隔で就寝中の船員を2人ずつ起こして甲板の上に誘導する。すると船頭と船尾で待っていた2人の共犯が、甲板に上がってくる船員の頭をハンマーなどで殴り殺す。殺害後は死体を海に遺棄し、40分後、再び2人ずつ起こして甲板上に誘導した。結局、4時間で16人が殺害された」

 しかし、いくら就寝時間だったとしても、小さな船の中で長時間にわたり殺人が繰り返されていることを同僚の船員が全く気づかなかった点、「特殊要員」でもない一般の船員が「虐殺」に近い犯行をたった4時間で実行したという点、虐殺現場である船を血痕鑑識もせずに急いで消毒してしまった点など、不可解な点がいくつも残されているのだ。


目隠しされ縛られたまま板門店に連れていかれた漁船員

 また送還過程における問題点も提起されている。東亜日報は送還過程について、政府関係者から聞いた話を次のように報じた。

 「呉某氏(22)と金某氏(23)の北朝鮮住民2人は7日、中央合同調査本部で目隠しをされ、縛られたまま車に乗せられて、板門店の自由の家に直行した。彼らが強制送還の事実を知ると自害などの突発行動を起こす恐れがあるので、目的地を隠して、警察特攻隊が車両を護衛した。彼らの抵抗に備え、猿ぐつわも準備していた。

 彼らは、板門店の軍事境界線に到達して目隠しを取られて、初めて自分たちが北朝鮮に追放されることを知った。送還は、まず呉氏が軍事境界線から北朝鮮軍に引き渡され、次いで待機室で隔離されていた金氏が引き渡される形で進められた。目隠しを外した呉氏は、境界線の向こう側に北朝鮮軍3人が立っているのを見て、思わず腰を抜かして座り込んでしまった。その後に外へ出てきた金氏は、北朝鮮軍兵士を見るや愕然とし、軍事境界線を越えていった」

 北朝鮮に強制送還された脱北者は、その後、想像を絶する拷問を受けることになる。例外はない。板門店で北朝鮮軍の兵士に引き渡された彼らの絶望は察するに余りある。

批判浴びる「人権派弁護士」の人権感覚

 韓国の主要メディアは、韓国憲法3条に基づき、「北朝鮮住民も韓国国民の範囲に属する」と強調している。つまり、亡命意思を表明した北朝鮮住民に対しては、彼らがたとえ凶悪な殺人犯としても、韓国司法当局の裁判によって処罰を受けるべきだと主張しているのだ。さらに、文在寅政権がたったの5日間の調査によって、亡命を希望した北朝鮮住民を、残酷な拷問や極刑が予想される北朝鮮に送り返したことは「国際人権法違反」と非難している。

 国際社会からも非難が絶えない。英BBC放送は、「デービッド・アルトン英国上院議員が自身のホームページに、『韓国は一体どういう考えで、難民を北朝鮮に送ったのか』というタイトルの文章を掲載して、韓国政府が難民に対する義務を果たしていないと批判した」と伝えた。

 国際人権団体のアムネスティは、「今回の事件を国際人権規範違反と見なす」という立場を示した。米国の人権監視機関のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)も声明を発表し、「韓国政府の措置に違法の素地がある」「(韓国政府の)迅速な送還措置は、拷問等禁止条約を黙殺(disregard)した」と批判した。

 国連の人権業務を総括する国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)も「2人が、送還によって拷問と処刑をうける深刻な危険に直面していることを懸念する」と明らかにした。朝鮮日報は、「今月末に訪韓予定のトマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権特別報告官は、『(今後の)措置について、関連(南北)政府と接触中』と明らかにした」と伝え、国連が近々韓国外交部に今回の送還事件についての懸念メッセージを伝え、事実関係を問い合わせる見通しだと解説した。まさに国際社会や人権団体から非難囂々なのだ。

 「人権ファースト」を掲げた公約で政権を握った「人権弁護士」出身の文在寅大統領、OHCHR副代表の経歴を自慢する康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は、「反人権的な送還」という国際社会の非難をどう受け止めるだろうか。


【私の論評】GSOMIA破棄と人権問題で、米国は超党派で韓国を制裁するようになる(゚д゚)!

韓国政府が、北の亡命希望者を「強制送還」したことは、完全な違法行為です。そもそも、韓国は北朝鮮と犯罪者引き渡し条約を結んでいません。

引き渡し条約がなくても、引き渡しできる場合もありますが、それには幾つかの手続きが定められています。

まず、相手国から韓国に逃避してきた犯罪者の引き渡し要請があった場合、外交部からの要請によりソウル高等検察が、ソウル高等法院において審理します。この手続きが完全に抜け落ちていたのです。

教戦争缶された二人北朝鮮籍の男らが乗船していた船

韓国の脱北者に対する、人権侵害は今に始まったことではありません。米国はこれに対してすでに警告を発していました。

トランプ米政権が、「従北」の文在寅(ムン・ジェイン)大統領率いる韓国の「人権侵害」問題に警告を発していました。米国務省が発表した人権報告書で、「脱北者への圧力」を明記していました。米国では、韓国の政権与党による米記者への非難を、リベラル系の有力紙まで問題視し始めました。米国全体が韓国に厳しい目を向けているとの指摘もあります。

「われわれの友好国、同盟国、パートナー諸国ですら、人権侵害を行っている」

マイク・ポンペオ国務長官は今年3月月13日、こう述べました。国務省が公表した2018年の「各国の人権報告書」に関する記者会見での発言でした。

マイク・ポンペオ長官

報告書では、同盟国の1つである韓国・文政権による脱北者への圧力を取り上げ、「北朝鮮との対話に乗り出すと、北朝鮮への批判を抑制するよう求める直接的、間接的な圧力が脱北者組織にかけられたとの報告があった」と指摘しました。

具体的圧力としては、20年続いていた脱北者団体への資金援助打ち切りや、風船を使った北朝鮮へのビラ散布阻止、警察が団体を訪れて財務情報などを出すよう要請した-ことが挙げられました。

2月にベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談が決裂し、米朝の「仲介者」を自任していた文政権へのトランプ政権の不信は高まっていました。そのなかで、人権侵害までが問題となったのです。

外国メディアの視線も厳しくなっていました。

文大統領を「金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の首席報道官」と報じた米ブルームバーグ通信の記者を、与党「共に民主党」の報道官が非難したことに、各国メディアが猛反発したのです。

報道官が同月13日、記者を名指しして「米国国籍の通信社を隠れみのにして国家元首を侮辱した売国に近い内容」との論評を出したところ、批判が相次ぎました。同党は同月19日、論評から実名を削除すると発表しました。


まさに、ポンペオ長官の警告を正鵠を射たものになったようです。今回の、北の亡命希望者を「強制送還」するようなことは、起こるべくして起こったのかもしれません。

米国の保守系メディアには以前から、文政権を懐疑的にみる報道がありましたが、ブルームバーグの問題では、ワシントン・ポストや、ニューヨーク・タイムズといったリベラル系の主流メディアも「言論弾圧ではないか」と批判しました。米国では「韓国が民主国家といえるのか?」という議論になってきており、オールアメリカで文政権への問題意識が高まっています。


いずれ、韓国も米国内で中国等と同列の扱いを受ける日が刻々と近づいているような気がします。

文大統領は15日、マーク・エスパー米国防長官とソウルの大統領府(青瓦台)で会談し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の維持を拒否しました。23日午前0時の失効期限を前に、同盟国・米国の要請を拒んだのは、事実上、共産党独裁の中国寄りの姿勢(=レッドチーム入り)を宣言したも同然といえます。

5日午後、青瓦台本館接見室でマーク・エスパー米国防長官(左)と握手する文在寅(右)

このまま、文政権がGSOMIAを破棄すれば、政府高官や軍幹部を大量に送り込んで説得したトランプ大統領はバカにされたことになります。今後、トランプ氏の逆襲が注目されることになるでしょう。

韓国は日米にとっては、かつて中国・北朝鮮に対する反共の砦でした。しかし、韓国がGSOMIAを破棄したとなると、もう反共の砦をやめてしまったと観るのは当然のことです。

韓国がGSOMIAを破棄した場合、人権問題ともあいまって、米国内では韓国に対する批判、それも超党派による批判がかなり高まることでしょう。いずれ、中国等と同列の扱いを受けることになるかもしれません。

韓国が中国寄りの政策を鮮明にとるようになったにしても、これはうまくいかない可能性がかなり高いです。そもそも、金正恩は中国の干渉を極度に嫌っています。結果として、北朝鮮とその核が中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。

韓国が中国寄りの姿勢を顕にすれば、北朝鮮もこれを黙って見過ごすことはないでしょう。中国と韓国に挟まれた北朝鮮は、危機感を募らせることになります。

中国は、米国と冷戦の真っ最中です。先日もこのブログに掲載したように、今後米国は対中国貿易戦争から、中国共産党そのものを弱体化させる方向に軸足を移していくことになるでしょう。

そのような最中に、韓国が中国にすり寄ってきたところで、地政学的にも韓国の前に、核武装をした北朝鮮が立ちはだかっていて、文は北に親和的でもあります。このような状況で、自己保身に必死な中国が韓国にどれだけのことをできるのか、疑問です。あからさまに、中国が韓国を取り込むような姿勢をみせれば、米国の対中国冷戦はますます苛烈なものになることでしょう。

韓国は、日米は無論のこと、北からも中国からも疎まれる存在になるだけです。そうして、米国からは超党派で批判され、直接制裁にさらされることになります。そのことを文は全く認識していないようです。愚かだとしか言いようがありません。

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2019年11月13日水曜日

【国家の流儀】韓国と連動して中国、ロシア、北朝鮮による「日本海」争奪戦が始まる…安倍政権はどう対応するか―【私の論評】二正面作戦不能の現在の米軍では、日本を守りきれないという現実にどう向き合うか(゚д゚)!


海自のイージス艦「あたご」

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、数年前から日本の防衛費を上回る軍拡を推進しており、このままだと対馬海峡をめぐって日韓「紛争」が起こることになりかねない。

 もちろん、同盟国・米国は、韓国の「暴走」を必死で押さえ込もうとしている。日韓が紛争を引き起こせば、北朝鮮や中国、ロシアを喜ばせるだけだからだ。

 しかし、残念ながら文政権は、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定するなど、米韓同盟を空洞化させる方向に進んでいる。しかも厄介なことに、この文政権の背後には中国共産党政権がいる。

 2017年12月に訪中した文氏は、習近平国家主席から、(1)米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)の追加配備はするな(2)米国のミサイル防衛に参加するな(3)日米韓の安保協力を軍事同盟に発展させるな-の「3つのNO」(三不の誓い)を突き付けられた。この指示通りに、文政権は「離米・反日」を強化しているわけだ。

 この韓国と連動して、今年に入って中国、ロシア、北朝鮮による「日本海」争奪戦が始まった。

 日本海の「大和堆(たい)」という豊かな漁場で違法操業を続けている北朝鮮は、日本の排他的経済水域(EEZ)周辺に連続してミサイルを発射しているが、日本政府は「遺憾の意」を示すだけだ。そうした弱腰に付け込んで、中国やロシアも日本海での活動を活発化させており、7月には中ロ両国の爆撃機が空中集合したうえで、対馬海峡を抜けて東シナ海まで編隊飛行する合同パトロールを実施した。

 東シナ海では、沖縄県・尖閣諸島を含む南西諸島沖に連続で60日以上にわたって、中国海軍の軍艦や海警局の巡視船が出没し、領海「侵入」事件が続いている。中国軍機による挑発行為も深刻で、自衛隊機によるスクランブル発進は過去最多になりそうだ。

 私が知る米軍関係者も「日中両国は、東シナ海で事実上の『戦争状態』にある」と憂慮を隠さない。そうした危機感を背景に、マイク・ペンス米副大統領も10月24日、「米中関係の将来」と題する演説で、東シナ海における「親密な同盟国である日本」に対する中国の軍事的挑発を激しく非難した。

 安倍晋三政権は、海上保安庁第11管区海上保安本部の定員を大幅に増員し、600人を超える「尖閣警備専従部隊」を創設するなど、尖閣を含む東シナ海を必死で守ろうとしているが、劣勢だ。しかも、「紛争」は今年に入って、日本海にも波及しつつあるが、自衛隊と海上保安庁の現有能力で対応できるとはとても思えない。

 南シナ海が奪われ、東シナ海も風前の灯、そして、今度は日本海だ。中国、ロシア、韓国、そして北朝鮮による連携「攻勢」にどう対応するか。大局を見据えた国家戦略の見直しが急務だ。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。他の著書に『天皇家 百五十年の戦い』(ビジネス社)、『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』(PHP新書)など多数。

【私の論評】二正面作戦不能の現在の米軍では、日本を守りきれないという現実にどう向き合うか(゚д゚)!

冒頭の記事で、江崎氏が指摘するように、日本海の争奪戦がはじまるかもしれない可能性は確かにありますが、ではすぐにそれが実行されるかといえば、すぐにはないというのが正解だと思います。なぜなら、日本には現在世界で唯一の超大国である、米軍が駐留しているからです。

韓国、中国、ロシア、北朝鮮等が日本海をいずれ我がものしようとしても、米軍が駐留している日本に対しては、挑発くらいしかできません。本格的に奪うことなどできません。

しかし、争奪戦が始まり実際に奪われる可能性も、否定できません。それはどのような場合かといえば、このブログでも以前指摘させていただいたように、中東などで大規模な戦争がはじまり、それに米軍が介入したときなどです。

現在の米軍は、残念ながら世界の警察官として、大規模な二正面、三正面作戦などできません。米国も関与する本格的な戦争が世界で、一箇所にとどまらず二箇所、三箇所と起こってしまえば、米軍は一箇所だけを優先的に選択して戦争するしかなくなります。

米軍の海外配置の状況(グァムは米国領なので含まず)

中東などで米軍が大規模な作戦を遂行しているときに、日本海で同時大規模な作戦を遂行する能力は今の米軍にはありません。

これについては、以前のブログにも掲載したことですが、最近米国のシンクタンクが、これについて研究した結果を発表しています。

中露や中東の軍事的脅威に対応する米軍の能力が「限界」にあるという厳しい評価が下されたのです。これは、米軍事専門シンクタンクによるもので、「現在の姿勢では、米軍は重要な国益を守るとの要求に、わずかしか応えられない」と強調しています。

問題なのは、特に海軍において、この相対的弱体化に即効性のある解決策がないことです。「世界最強」のはずの米軍に何が起こっているのでしょうか。

評価は著名な米保守系シンクタンクのヘリテージ財団によるものです。同財団が10月末に発表した「2020年 米軍の軍事力指標」と題する年次報告書は、米陸海空軍と海兵隊の軍事的対処能力を、非常に強い▽強い▽限界▽弱い▽非常に弱い-の5段階で評価しています。ただ、基準は「2つの主要な戦争を処理する能力」などとしており、2正面作戦を行うにおいての評価であるあたりが超大国米国らしいです。

とはいえ、中東ではイランの核開発、南シナ海では中国の軍事的膨張、さらに北朝鮮の核ミサイル開発と、地域紛争が偶発的に発生しかねない「火薬庫候補」は複数あり、2正面を基準にするのは米国としては当然の条件です。

この5段階で「限界」とは、乱暴な言い方をすれば「戦争になっても勝てるとは言えず、苦い引き分けで終わりかねない」、あるいは「軍事的目標を達成するのは容易ではない」ということです。

同報告書では欧州や中東、アジアの3地域での軍事的環境を分析。例えば中国については「米国が直面する最も包括的な脅威であり、その挑発的な行動は積極的なままであり、軍事的近代化と増強が継続している」などと、それぞれの地域の脅威を明らかにしたうえで、対応する陸海空軍などの米軍の能力を個別評価しています。ところが驚くことに、その内容は、「限界」ばかりなのです。


米陸軍女性兵士

まず陸軍は、昨年に引き続き「限界」のまま。訓練や教育など多大な努力により旅団戦闘団(BCT)の77%が任務に投入できる状態となった点は高く評価されたのですが、兵力を48万人から50万人に増強する過渡期にあり、その準備や訓練に加え、陸軍全体の近代化が課題となっています。

米海軍女性兵士 ネイビー・シールズ隊員

さらに問題なのは海軍です。前年同様「限界」ですが、内容は厳しいです。まず艦艇の数で、「中国海軍300隻と(海軍同様の装備を持つ)175隻の中国沿岸警備隊」(米国海軍協会)に対し米海軍は290隻。トランプ政権は「2030年代までに海軍の保有艦艇を355隻に増やす」との構想を持っています。一部には予算面から、この構想の無謀さを指摘する声があるのですが、本当の問題は355という数字をクリアすることではなく、艦艇の運用面、いわばクリアした後にあるのです。

海軍艦艇は整備と修理や改修、耐用年数延長工事や性能アップのため、定期的にドック入りして「改善」を行う必要があります。一般的に、全艦艇の3分の1はこうした「整備中」にあり、訓練中も含めれば、即時に戦闘行動に投入できるのは半数程度とされます。

ところが米海軍には、大型艦艇に対応するドックが足りないのです。全長300メートルを超える原子力空母ともなれば、ドック入りしなければならないのに他の艦船が入渠(にゅうきょ)しているため、順番待ちが生じている状態なのです。

米国海軍協会などによると、米海軍原子力空母11隻のうち現在、任務として展開しているのはロナルド・レーガン▽ジョン・C・ステニス▽エイブラハム・リンカーン-の3隻のみ。ニミッツをはじめほか8隻はドックで整備や部分故障の対応中といった状態なのです。

しかも空母に限らず米海軍艦艇がドック入りした際の整備の工期は、予定を大幅に超える事態が頻発しているというのです。

過去のオバマ政権時の軍事予算削減が響き、ドックも足りず、整備できる人間の数も足りないのです。このような状況でなお艦艇数を増やしても、整備や修理待ちの列が長くなるだけです。また原子力空母の多くが建造後20年が経つということに代表される、各種艦艇の老朽化、さらには新型艦の不足も海軍を悩ませています。

報告書では「資金不足と利用可能な造船所の一般的な不足により、艦艇のメンテナンスが大幅に滞り、配備可能な船舶と乗組員に追加の負担がかかっている」と指摘されています。

確かに、このような状態で中東と南シナ海、あるいは朝鮮半島で緊迫した事態が発生したらと考えると「限界」の評価はうなずけます。ベトナム戦争の際、米海軍はベトナム近海に常時数隻の空母を展開していたのですが、現状の3隻、訓練中を含めても5~6隻の稼働では「2正面の展開」は困難です。

米空軍女性パイロット

一方で空軍は前年の「弱い」から「限界」にランクアップという、とても素直には喜べない状態です。

戦闘機と攻撃機の数が必要数の8割にとどまっているほか、パイロットの不足などをこの評価の理由にあげています。また海兵隊も「限界」で、近接支援を行う武装ヘリなど海兵隊配備の航空機の維持や保守要員の不足などがマイナスとなりましたた。

報告書は「(米軍は)現在の作戦と準備レベルの維持に人的・物的資源が振り向けられているため、近代化プログラムは苦戦している」としたうえで、「現在の姿勢では、米軍は重要な国益を守るとの要求に、わずかしか応えられない」と結んでいます。

なかでも海軍には「水平線の向こうに警告を示す不吉な雲が見えている」との表現で、“進路”を変えるなら今だとの警鐘を鳴らしていますが、まずはドックから作らねばというのは、「おいしいおにぎりを食べたいから、まず水田を作ろうや」という状態ともとれます。トランプ米大統領が北大西洋条約機構(NATO)や日本に軍事的対処能力の向上を求めるのも当然といえば当然なのです。

このようなお寒い状況では、確かに米軍大規模な二正面作戦などできません。中東で米軍が大規模作戦を実行し始めた場合、日本海で大規模な侵略があった場合、米国はこレに十分に対処できない可能性が大です。

かといって、米国ではシェール・オイルの採掘によって、石油は自国で賄えるようになったため、米軍が中東から引き揚げ、現在中国の台頭に悩まされているアジアに主力を置くようにすれば、日本にとっては一見良いようにみえるかもしれません。それで、今まで通り、日本は米国に守ってもらえると安堵するかもしれません。

しかしそれだけでは、日本自体は、安全が確保されるかもしれません。しかし、米軍が引き揚げた中東は不安定化するでしょう。原油の輸入を頼っている日本とししては、これは死活問題です。中東に原油を頼る、他先進国とも協調しつつ、中東に大規模な軍隊を派遣して、中東の安全保障を確保しなくてはならなくなります。

いずれにしても、日本の安全保障は今のままでは、脅威にさらされることになります。まずは、現行の憲法や法律でできることはすべて実行するべきです。防衛予算は、現行のままでも増やすことはできます。無意味な1%枠など捨て去り、少なくとも2%に増額して、同盟国である米国等とも協調しつつ、アジアと中東の安全を確保すべきです。

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2019年11月10日日曜日

GSOMIA「日本との問題」米韓同盟とは無関係と韓国高官―【私の論評】焦土化に突き進むことを止められない韓国(゚д゚)!


10日、ソウルの韓国大統領府で記者団と懇談する(左から)鄭義溶国家安保室長、盧英敏秘書室長

 韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長は10日、韓国が破棄を決め、失効が迫る日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)について「韓日両国が解決すべき問題で、韓米同盟とは全く関係ない」と強調した。大統領府で記者団と懇談した。

 鄭氏は「韓日関係が正常化されれば延長を検討する用意がある」と述べ、日本側に輸出管理厳格化の撤回を求める立場を表明。一方、失効しても韓国の安全保障への影響は限定的だとの見方も示した。

 協定は23日午前0時(日本時間同)に失効する。エスパー米国防長官が今週訪韓し、韓国政府を説得するとみられるが、奏功するかどうかは一層不透明になった。鄭氏は「韓国の立場から見れば、最近の韓日関係悪化の根本原因は日本がつくった」と強調した。

【私の論評】焦土化に自ら歩むことを止められない韓国(゚д゚)!

韓国の日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄によって「コレグジット」が決定的になりました。これは韓国の旧西側諸国(自由主義陣営)からの離脱を意味するもので、「KOREA+EXIT」からなる造語です。

KOREXITについて報道するテレビ番組

昨年から今年にかけて、韓国は元徴用工訴訟や従軍慰安婦問題、海上自衛隊へのレーダー照射問題など、日本に対して嫌がらせともいえる対応を繰り返してきた。そこで、日本政府は戦略を切り替え、これまでの甘い対応から「戦略的放置」に徹してきました。

韓国に対して批判すべき部分は批判するのですが、直接的に対応するのはやめたのです。これは特に首脳外交において顕著であり、韓国側は文在寅大統領が前面に立っていますが、日本側は所轄の大臣どまりの対応を行っています。そして、首相どころか副総理すら前面に出ない戦略をとっています。

たとえば、輸出管理の問題では経済産業大臣が、徴用工訴訟などの外交問題では外務大臣が対応しており、それぞれを個別の問題として扱っていまい。基本的に大臣は省庁の責任者であり、省庁の管轄をまたぐような決定は首相以外はできないことになります。その上で、安倍晋三首相は「約束を守ってほしい」という総括的な発言こそするものの、各省庁の決定には口出ししない方針を堅持しています。

今後、徴用工問題などで日本企業に実害が発生した場合の対応に関しては、麻生太郎財務大臣が「外為法による送金停止もできる」と匂わせましたが、これも一般論として持っているカードを示したにすぎません。

一方、韓国はGSOMIAの破棄について、日本の不誠実な態度が原因だとしています。韓国青瓦台(大統領府)は、光復節の演説で文大統領が日本への対話と協力を求めたことや国際会議の場での対応に関して、「日本の対応は単純な拒否を超え、『国家的自尊心』を喪失させるほど無視した」「外交的な礼を欠いた」と指摘しているのです。これは、日本は何もしていないのに韓国が勝手に自滅していることの表れでしょう。

最近韓国大統領府が公表した安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領による面談の写真(下)は、韓国側が日本側に無断で撮影、公開していたことが判明。両首脳は4日に約10分間、約1年1カ月ぶりに着席で対話。ただし、前準備がなされていなかったため、両国とも英語の通訳を介しての対話であったため、実質5分にも満たない会談だったされます。



これまで、日本は韓国の不当な要求に対して「日本側が折れる」という間違った選択肢をとってきました。一方、韓国はそれを成功体験として捉え、あらゆる問題において「こちらが強く出れば日本側が折れるだろう」という姿勢を示してきました。

しかし、今回ばかりは違ったわけです。いわば、韓国は威嚇のつもりで振り上げた拳を下ろす先を失ってしまい、国民を煽ったために、そのまま振り下ろせば自らに跳ね返るかたちになっています。

GSOMIA の破棄に関しては、米国からも強い圧力がかかっています。韓国政府は事前に米国の合意を得ていると発表しましたが、米側の反応は違っており、国務省と国防総省はそれぞれ強い懸念と失望を表明しています。また、朝鮮日報によると、「米国が理解を示した」という韓国側の説明について米国側が「嘘だ」と否定しており、駐米韓国大使館と韓国外交部に抗議をしました。

そもそも、アメリカは事前に韓国政府抜きで韓国の財界人にGSOMIAの延長を政府に働きかけるよう求めていた。ハリー・ハリス駐韓アメリカ大使が大企業14社の関係者と非公開懇談会を開き、アメリカ側の立場やGSOMIAの重要性について説明した上で、GSOMIAの延長について役割を果たしてほしい旨を伝えたという。

ハリー・ハリス駐韓アメリカ大使

日韓間でもめている輸出管理における米国政府の一番の懸念は、韓国を通じて半導体やバイオテクノロジーなどの先端技術が中国に渡ることです。韓国政府との信頼関係が崩壊しつつある今、米国としては企業側への圧力を強めることで、そうした流出を防ぎたい意向もあるでしょう。

具体的には、まずパテント(特許権)の保有会社をつくらせ、各企業のパテントだけでも米国に移転させることで、米国の輸出管理のネットワークにとどめておくという方策が考えられます。

いずれにしろ、GSOMIAの破棄で日米韓の安全保障上の連携に亀裂を入れた韓国がすり寄るのは、中国や北朝鮮です。しかし、米国は次代の覇権国の地位を狙う中国と貿易や5Gをめぐって激しい衝突を繰り返しています。そのため、中国側についた国の末路がどうなるかということを、世界中に見せつける必要があります。言い換えれば、今後は日米が連動して“韓国潰し”に動くということになるでしょう。

その行き着く先は、このブログにも掲載したように、韓国の経済焦土化ということになるでしょう。

経済を焦土化し、経済的にも金融的にも無価値な国にすることは、日米ならすぐにできることです。日米が韓国に対する様々な恩恵をやめたり、韓国にある資産や技術をひきあげるようにすれば、それですぐに焦土化は可能です。

焦土化された韓国は、経済的にも技術的にも無意味になります。そうなれば、このブログに掲載してきたように、金正恩はもともと韓国との統一を望んでいませんでしたが、ますますその気を失うことでしょう。

それどころか、経済焦土化された韓国から難民などがやってこないように、38度線の警備を強めるでしょう。

さらに韓国は、中国とさらに接近しようとするでしょうが、それも困難でしょう。なぜなら、中国との間には北朝鮮があり、その北朝鮮は中国に干渉されるのを嫌っており、北の核がそれを保証しています。

北朝鮮の核は中国にとっても脅威であり、北朝鮮とその核の存在が、朝鮮半島に中国が浸透するのを防いでいます。北がこの姿勢を崩さない限り、韓国が中国に接近しようとしても、北朝鮮がこれを阻むため、なかなかできないでしょう。

そうなると、韓国は北と中国と接近することはなかなかできません。北は韓国を統一する気はなく、米中冷戦で疲弊しつつある中国は、かつてのように北とともに、韓国に侵攻するなど、思いもよらないことです。無論、GDPが現在の韓国なみのロシアも、北が韓国に侵攻するのを手助けするなどのことも思いもよらないことです。

そうなるとどうなるかといえは、38度線は従来と同じく固定され、韓国は、北も中国も興味のない発展途上国になるだけの話です。

安全保障上は、日米、中露、北があまり関心を持たず、ただそこに空き地として存在していれば良いだけの存在になります。ただし、この空き地を手に入れようとする試みは、日米が排除するでしょう。

この状態が長く保たれる状態になるでしょう。結局、韓国の経済・技術が低迷し、後は何変わらないという状況になるでしょう。今のままだと、そうなります。そのような未来を目指して韓国は自らの歩みを止められないようで、ますます深みにはまりつつあるようです。

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2019年9月29日日曜日

韓国を2段階“格下げ” 河野太郎氏率いる防衛省、白書で決然姿勢 「国益を守る」強い意思示す―【私の論評】韓国への毅然とした対応は、すでに政府と大多数国民の意思になっている(゚д゚)!

韓国を2段階“格下げ” 河野太郎氏率いる防衛省、白書で決然姿勢 「国益を守る」強い意思示す

河野太郎防衛大臣

河野太郎防衛相率いる防衛省が決然とした姿勢を示した。2019年版の防衛白書で、安全保障協力を進める国・地域の記載順で、韓国を前年版の2番目から4番目に「格下げ」したのだ。輸出管理の優遇対象国「グループA(『ホワイト国』から改称)」から同国を除外したことに続き、安倍晋三政権による、文在寅(ムン・ジェイン)政権への失望感がにじんだ対応となった。

 「日韓関係は非常に重要だ。それだけに、韓国には賢明な判断をしていただきたい」

 河野氏は27日の記者会見で、こう強調した。

 同日閣議決定された防衛白書は、韓国についての記述量も内容も減り、日韓の距離がこの1年で離れたことを反映していた。

 同盟国の米国を除いて、防衛交流が活発な順に書かれる「安全保障協力」の章でも、韓国は昨年2番目だったが、今年は「オーストラリア」「インドなど」「東南アジア諸国連合(ASEAN)」に続く、4番目に後退した。

防衛白書表紙

 白書は、昨年10月の国際観艦式で韓国側が自衛艦旗「旭日旗」を降ろすよう求めたために参加を見送ったことや、韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への危険なレーダー照射事件、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定など、「韓国側の否定的な対応が、日韓の防衛協力・交流に影響を及ぼした」と指摘した。

 河野氏は外相時代にも、いわゆる徴用工問題をめぐり、文政権が煮え切らない態度を取るのを「極めて無礼だ」と駐日韓国大使に強く出たことで評価を上げた。今回は、防衛省トップとして「国益を守る」という強い意思を示した白書となった。

【私の論評】韓国への毅然とした対応は、すでに政府と大多数国民の意思になっている(゚д゚)!

読売新聞は8月21日、2019年版防衛白書草案に日本が唯一の軍事同盟国である米国以外の国家との安全保障協力に関し叙述する内容で、韓国の登場順位がオーストラリア、インド、東南アジア連合(ASEAN)に次ぐ4番目に記述されていると伝えていました。

また、昨年12月に発生した韓国海軍艦艇の「射撃統制レーダー照射」論議と関連して「再発防止を強力に要求する」という内容が草案に含まれました。日本は昨年、韓国軍の艦艇が東海で自衛隊の哨戒機に向けて射撃統制レーダーを照準したとし抗議したのですが、韓国軍はそうした事実はないと反論しました。韓国軍は、その後日本の哨戒機が逆に海軍艦艇を相手に威嚇的な低空飛行をしたと反論しました。

新内閣が組閣されたのは、9月11日ですから、それ以前に韓国を防衛白書の中で2段階“格下げ”ということは決まっていたということです。

無論、最終的に河野防衛大臣は、この防衛白書に関して、依存がなかったので、正式に公表されたということです。

そうして、ここで私が何を言いたいかというと、日本の韓国に対する毅然とする態度は河野防衛大臣がどうのこうのというレベルを超えて、日本政府の意思となったということです。

これは、すでに1月の時点では、すでに明白になっていたものと考えられます。

安倍首相が施政方針演説(1月28日)で、「戦後日本外交の総決算」として長い時間を割きながら、韓国について触れませんでした。同月29日付の韓国各紙は「韓国外し」などと1面で報じました。

朝鮮日報は、徴用工訴訟での「韓国最高裁による確定判決や、日本の哨戒機の威嚇飛行などをめぐり韓日関係が悪化の一途をたどるなか、意図的に言及を避けたとみられる」と指摘しました。

また、中央日報は「安倍、施政演説から韓国の部分をまるごと省いた」との見出しで、「これまで韓国関連は安倍首相の演説で外交分野に欠かさず登場していたが、今回は近隣外交の対象として具体的に韓国には触れなかった」と報じました。

韓国経済にとって、日本との経済連携は不可欠だ。予想される対韓対抗策=下表=には、「韓国製品の関税上乗せ」や、「TPPへの韓国の参加申請拒絶」「日本からの部品・素材提供の停止(フッ化水素など)」といった、韓国経済を破滅させかねない項目が並んでいました。相当警戒していました。


この中で実際に実行されているものはいまのところありません。ただし、日本からの部品・素材提供の停止(フッ化水素)などについては、貿易管理がなされるようになったというだけです。

日本が対抗措置を次々と取らなければ、事態はますます悪化するでしょう。韓国政府は徴用工問題では『司法を尊重する』と言ったきりです。レーダー照射問題も、未だうやむやにしています。

これは、すでに多くの国民もそのように感じているのではないでしょうか。日本人の怒りを韓国に『痛み』を伴うかたちで理解させるべきです。日本は堂々と、かつ、毅然(きぜん)とした態度で反論すべきは反論し、分かりやすく行動で示すときがきたのです。

【産経・FNN合同世論調査】徴用工にレーダー照射問題…韓国批判高まる

韓国に対して政府制裁など発動しても、大多数(少なくとも八割 方)の国民は賛同するでしょう。ほんの少し前のマスコミならこれに大反対したかもしれません。しかし、そのようなことをすれば、今や大多数の国民に批判されるようになりました。

一部の野党だけがそれに反対するかもしれません。しかし、ほとんどの国民がこれに賛成している中で、どうして一部の野党だけが抗うのか全く理解できません。

米国では、米国の対中冷戦に関しては、トランプ政権がどうのこうのという次元ではなく、議会では超党派で、中国に対抗しようとしています。

日本も超党派で韓国に対抗すべきときがやってきていると思います。

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2019年9月27日金曜日

韓国・文大統領“驚愕の正体”!? 朝鮮労働党・秘密党員の誓詞文に「文」の名…内容に沿うような動き多数 月刊誌『Hanada』報じる―【私の論評】北が狙うのは南北統一ではなく、韓国の衛星国化である(゚д゚)!

韓国・文大統領“驚愕の正体”!? 朝鮮労働党・秘密党員の誓詞文に「文」の名…内容に沿うような動き多数 月刊誌『Hanada』報じる

月間Hnada 表紙

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮の朝鮮労働党の秘密党員ではないのか-。こんな驚くべき疑惑を、月刊誌『Hanada』が報じ、日本だけでなく韓国でも波紋を広げている。26日発売の同誌最新号にも、疑惑の続報が掲載された。文氏は同日、国連総会出席のために訪れていた米国から帰国するが、最側近の「タマネギ男」ことチョ国(チョ・グク)法相周辺の疑惑に加え、自らにも疑念を突き付けられて大丈夫なのか。衝撃記事を執筆した元日本共産党国会議員団秘書で、ジャーナリストの篠原常一郎氏を直撃した。


 「文政権は『いったん始めた革命をやり切るしかない』と考えているようだ。国家の支配体制を破壊するのではないか。実に恐ろしいことだ」

 篠原氏はこう語った。

 『Hanada』10月号に掲載された「文在寅に朝鮮労働党 秘密党員疑惑 スクープ!」という記事に、ネット以外の他メディアはほぼ沈黙している。だが、初版も増刷分も完売という、驚異的注目を集めている。

 記事の肝は、韓国内に潜む朝鮮労働党の秘密党員が2014年6月15日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(当時、第一書記)に忠誠を誓う「誓詞文」を送っていたというものだ。同誌には、篠原氏が独自入手したハングルの誓詞文と、翻訳が掲載されている。


 正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記は2000年6月、韓国の金大中(キム・デジュン)大統領(当時)と、北朝鮮の平壌(ピョンヤン)で首脳会談を行い、平和統一を目指す南北共同宣言を締結した。

 誓詞文は、共同宣言から14年を祝ったもので、《(韓国の)自由民主主義体制をたたき潰し、全朝鮮半島に主体(チュチェ)思想化を実現するのに、一命を藁(わら)のようにささげます》《駐韓米軍を南半分から完全に追い払う》《南側政府の警察、検察など司法部と行政部に浸透し、政府の行政機能をマヒさせ》《革命戦士として名誉と自負心を胸深く刻み、主体的な祖国統一の先頭に立つ》(抜粋)など、10カ条の誓約が記されていたという。

 主体思想とは、北朝鮮や朝鮮労働党の政治思想で、正恩氏の祖父、金日成(キム・イルソン)主席によって唱えられた。誓詞文の最後には、40の個人・団体名があり、何と、そこに文氏も名を連ねていたというのだ。

 にわかに信じがたいが、この誓詞文は本物なのか? 韓国版モリカケ騒動ではないのか?

 篠原氏は「以前から、韓国内の一部では文書の存在は噂されていた。文政権のメディア統制が進むなか、元左派活動家らのグループが『まず、日本で発表してほしい』と持ち込んだ原本を入手した。複数の関係者らと真偽を確認した。韓国の国家保安法による取り締まりを恐れてか、文氏など、個人名のハングルのつづりが一部変えてあった。かえって信憑(しんぴょう)性の高さを裏付けた」と語った。

 同誌が先月末に疑惑を報じたところ、韓国メディアは無視したが、覆面姿で誓詞文を紹介するハングルの動画がユーチューブなどに流され、一気に拡散したという。

 最初の報道から1カ月たつが、韓国政府から同誌や篠原氏に抗議はないという。

 経済低迷やチョ氏の疑惑を受けて、韓国内では「反文政権」デモも激化しているが、同誌の影響か、最近では「金正恩と文在寅、両方とも打倒しよう!」というスローガンも出始めたという。

 ■日本国内にも浸透、主体思想十分な警戒を

 26日発売の『Hanada』11月号では、誓詞文などを再録したうえで、チョ氏の疑惑や実像などに迫っている。産経新聞や読売新聞、毎日新聞の同日朝刊には、同誌の広告も掲載されている。

 「反日・離米・従北・親中」の文政権は、米国の警告を無視して、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したばかりか、在韓米軍基地の撤退も米国に要求している。誓詞文の内容に沿うような動きといえる。

 篠原氏は「保守の朴槿恵(パク・クネ)前政権時代から、韓国の政財官界には主体思想が浸透していた。ドナルド・トランプ米政権は、文政権に『失望』を抱きつつも放置しているが、いざというときは締め付けに入るだろう。在韓米軍は『北朝鮮は非核化できない』とみて、最高度の攻撃態勢を整え始めている」と明かした。

 東アジアの安全保障環境の激変に対し、日本はどう備えるべきか。

 篠原氏は「文政権は『反日』で火が付いた以上、決して妥協しないだろう。わが国は毅然(きぜん)と対応するしかない。韓国内の保守派に『味方』をつくり、対抗するのも手段だ。沖縄など、日本国内にも主体思想が浸透している。正恩氏を礼賛する左翼グループが、日本の安全保障政策を攪乱(かくらん)している。主体思想は日本人拉致問題などにも絡んでいる。十分警戒すべきだ」と語っている。

篠原常一郎氏

【私の論評】北が狙うのは南北統一ではなく、韓国の衛星国化である(゚д゚)!

上の記事にもあるように、「月刊Hanada」10月号にジャーナリストの篠原常一郎さんが「文在寅に朝鮮労働党秘密党員疑惑」という論文を書いています。

篠原さんが入手した金正恩への誓詞文の分析で、「敬愛する金正恩将軍様に謹んで捧げます」というタイトルで始まり、金正恩への忠誠と自分たちが南朝鮮革命を起こすことを誓う内容。その最後には40の個人・団体名が書き連ねてあります。

韓国の場合国家保安法(スパイ防止法)があり、実名だと文書が流出して逮捕され裁判になったとき証拠になるということで文在寅(ムンジェイン)を「ムンジェイム」とか、ソウル市長の朴元淳(パクウォンスン)をパクウォンスムとか、名前の一部を変えてありますが、明らかにその人と特定できるようにはしてあります。

ここに出てくる名前は最近話題の曹国(チョゴク)・元秘書官はいないものの、「なるほど、やはり」と思うような人ばかりです。篠原さんは脱北者など様々な関係者から裏を取っているそうです。

彼らが秘密党員であると考えた場合、日韓関係の破壊、GSOMIA破棄、そしておそらくその後にやってくる米韓同盟の破綻はまさに北朝鮮の方針そのものと言えるでしょう。私たちはそれを覚悟しておく必要があります。

ただし、北朝鮮の「赤化(共産化)統一」という国家目標は、最後はあくまで武力を使うことが原則です。韓国と日本の関係を断ち切り、米軍を撤退させた上で騒乱状態を作り出し、「南朝鮮民衆の熱望に応えて」人民軍が南侵するということですが、今の人民軍はミサイルの打ちすぎで一般部隊には食料もろくに回らない状態です。とても戦争どころではありません。

それに以前もこのブログに掲載したように、金正恩は南北を統一してしまえば、南朝鮮から北朝鮮に多数の、元韓国人が入り込んでくることを許容しなくてはならくなります。

しかし、チュチェ思想で鍛えられた生粋の北朝鮮人とは異なる大多数の元韓国人は、金王朝に対して、ほとんど尊敬の念などもっていません。一部のそれこそ、文在寅のような人間は別にして大多数の韓国人にとっては、金王朝の存続など気にもかけていません。

そうした、元韓国人が南北統一の後には、元北朝鮮の領域にまで多数入り込むことになり、それは金王朝の統治の正当性を著しく毀損することになります。

それを、金正恩は許容することはできないです。ですから、南北統一がされることはないでしょう。ただし、北朝鮮が韓国を衛星国にするという可能性は十分にあります。

韓国を語る時は、常に北朝鮮の意向を見なければならないです。なぜなら、北朝鮮は自分の手を汚さず、韓国に日本への嫌がらせをさせているからです。

そもそも、先に述べたように、北朝鮮は韓国を併合したいとは思っていません。それは、経済的にも、金王朝の統治の正当性守るためにも、それは避けたいでしょう。ただし、あえて言うなら、ソ連が東欧諸国を衛星国にしたような形にはしたいはずです。そのイメージを以下に示します。
  ソ連共産党→ソ連(直轄領)
  ↓
  ーーー形式的国境ーーー
  ↓
  衛星国共産党→衛星国
つまり、ソ連も衛星国もソ連共産党の支配を受けていました。あるのは形式的な国境。あった方が何かと都合が良いと、当時のソ連は判断しました。

では、今の北朝鮮の構想はどうかといえば、以下にイメージを掲載します。
  朝鮮労働党→北朝鮮(直轄領)
  ↓
  ーーー形式的国境ーーー
  ↓
  韓国政府→大韓民国(衛星国)
これは、帝国主義時代の基本戦略であり、親分は自分では手を出さずに子分を使うのです。そういう時に子分の方を叩く返し技もありますが、昨今の日韓関係の場合は、向こうの親分の北朝鮮が日韓両国を喧嘩させようとしているのですから、むざむざと乗って韓国だけを叩くのはやめるべきです。

金正恩は、現状の韓国が北朝鮮の衛星国的な存在になっているのをさらに推し進め、韓国を完璧に北朝鮮の衛星国にしようと企んでいるとみるべきです。
そうして、文在寅は金正恩のその手に乗って、韓国を北朝鮮の衛星国にしようと日々行動しているとみるべきです。

かつての、ソ連の東欧諸国はソ連の衛星国でしたが、なぜそうなったかといえば、ソ連の圧倒的な軍事力には逆らえなかったということが最大の要因です。
現在の北朝鮮は通常兵器では、韓国にも及びもつかない脆弱さですが、核兵器を有しているということでは圧倒的に有利です。これで、韓国を衛星国にすることは可能です。特に、文在寅のような協力者がいれば、なおさらです。
しかし、そう簡単に韓国が北朝鮮の衛星国になるかどうかは、まだ未知数のところがあります。
71年前の朝鮮戦争開戦のとき、金日成は二つの大きな判断ミスを犯しました。一つは米国が参戦しないということ、もう一つは韓国に攻めていけば民衆が共に立ち上がって李承晩政権を打倒しようとするということでした。
しかし米国は直ちに参戦を決め、さらに国連軍まで組織してしまいました。韓国の人々は明確な敵ができたことで自由民主主義国家大韓民国というアイデンティティを強固にしてしまいました。これから先も金正恩にとって、文在寅にとって、そして私たちにとっても想定外のことが起きるかもしれません。

文在寅大統領が秘密党員(あるいは「共に民主党」が、実は「共に労働党」なのか)で元々の北朝鮮の方針を忠実に守ってやってきたとしても、今の金正恩には南に攻めていく能力も関心もありません。かつてのように、中国やソ連がそれを支援するということもあり得ません。

韓国の中では反文在寅の声が日増しに高まっており、それは同時に「日本との関係を重視せよ」という声にもなってきています。

文在寅の暴走が、あるいは金正恩体制すら揺るがせることになるかもしれません。北の最大の危機は、南北統一に向けての、文の過激な行動かもしれません。少なくともチャンスがやってくる可能性はあり、それを掴む努力だけはし続けなければならないです。

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