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2019年11月23日土曜日

日本政府高官「ほとんどパーフェクトゲーム」 米国が韓国に圧力かける構図に GSOMIA失効回避―【私の論評】とうとう韓国のバランス外交の失敗が表沙汰になった。日本も習近平を国賓として招けば同じような目をみることに(゚д゚)!

日本政府高官「ほとんどパーフェクトゲーム」 米国が韓国に圧力かける構図に GSOMIA失効回避

記者団からGSOMIAの継続について記者団の質問に答える安倍首相=22日午後、首相官邸

 日本政府は、韓国からの輸出管理厳格化の撤回要求を拒否し続けた上、米国が韓国に圧力をかける構図を作り上げたことが、韓国政府の今回の決定につながったとみている。日本政府は貿易管理をめぐる当局間の協議再開には応じるものの、「一切妥協はしない」(政府高官)方針だ。

 「ほとんどこちらのパーフェクトゲームだった」

 韓国政府の突然の方針転換に日本政府高官はこう語った。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄通告を改めさせ、日米韓の安全保障協力が維持されるからだけではない。日本側の予想を超え、韓国が輸出管理の厳格化をめぐる世界貿易機関(WTO)への提訴手続きまで見合わせたからだ。

 韓国側は8月下旬、日本政府による対韓輸出管理厳格化への対抗措置としてGSOMIAの破棄を決定し、破棄撤回の条件として輸出管理厳格化の見直しを求めていた。

 韓国側の態度が変化したのは「ここ2、3日」(政府筋)だったという。

 日本政府は「GSOMIAと輸出管理は次元が違う」として韓国側が設定した土俵には乗らず、「賢明な対応」(菅義偉官房長官)を促し続ける戦術を徹底した。政府高官によると、米国は「トランプ米大統領は安倍晋三首相側に立つ」と韓国側に伝えており、日本政府は米国の韓国に対する圧力が非常に強かったとみている。

 日本政府は、日韓共通の同盟国である米国と課題意識を共有してきた。外交・安保関係者の間では、GSOMIAの破棄で最も影響を受けるのは米国だとの見方が強いからだ。外務省関係者は「首相はトランプ氏に対し、いかに韓国の対応がおかしいかを繰り返し説明してきた」と明かす。

 さまざまなレベルでの働きかけの結果、GSOMIAの破棄は米韓の問題でもあるとして「米国から韓国にガンガン言ってもらう」(外務省関係者)形に持ち込むことに成功した。

 文在寅政権は強気の言動を繰り返していたが、日本側のぶれない姿勢と米国の強い圧力を前に、実際は「追い詰められていた」(官邸関係者)とみられる。

 首相は22日夜、森喜朗元首相らと東京都内で会食した。出席者によると、首相はGSOMIAの失効回避について「よかった」と話していたという。(産経新聞 原川貴郎)


【私の論評】とうとう韓国のバランス外交の失敗が表沙汰に!日本も習近平を国賓として招けば同じような目をみることに(゚д゚)!

今回のGSOMIAの失効回避は、韓国のいわゆるバランス外交が失敗したことが露呈したと捉えるべきと思います。このバランス外交とは、なにかといえば、米と中国の間をうまくバランスをとり自国に有利になるようにする外交という言う意味です。

無論このバランス外交は成功事例もあるのですが、なかなかうまくいかないという現実があります。

韓国がいつからバランス外交的妄想に憑りつかれたのかといえば、後で述べるように髄分昔からですが、最近では記憶する限り盧武鉉大統領時代ではないかと思います。

それまで韓国は米国の忠実な同盟国として振る舞ってきたのですが、盧武鉉は強烈な反日、反米論者として登場しました。その親北姿勢は米国をハラハラさせる傍ら、彼が断固として宣言した外交路線は「韓国が北東アジアの米・中のバランサーの役を果たす」という壮大なものでした。

バランサーというのは米中とも韓国を敵に廻しては不利になるほど強力である必要があります。盧武鉉はイラク戦争に3260人もの軍隊を派遣したのですが、軍事同盟国の米国側からすれば、韓国が引き揚げれば困るほどの数ではありませんでした。

中国に対しては経済的接近を図る反面、米・日とは距離を置く路線を採りました 。米・中間のバランサーというからには当然の路線かもしれません。この路線を引き継いだのが朴槿恵大統領であり、盧泰愚政権時代に、民情首席を努めた現在の文在寅大統領です。


文在寅(左)と盧泰愚(右)

朴槿恵は、韓国がバランサーであるためには、近辺の日本ごときは「歴史を顧みない不道徳国家である」と欧米に“告げ口”して廻ることからバランス外交を始めました。しかし中韓は別にして首脳が悪口を言って廻る国家が尊敬されるはずもありません。

朴槿恵氏は外交路線として「安全保障は米国と手を携え」、「経済は中国を重視する」と称しました。メディアは「安米経中」と名付けましたが、朴氏は自らが引けば米も中も困ると考えたのでしょう。

「自らを小国と考えてはいけない。それは敗北主義だ」と強調しました。米欧と一回りしたあと15年、中国のコケ脅しのような軍事パレードに参加を強行しました。たまたま米韓の間で「高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備するのが懸案となっていました。

渋る韓国に米国が怒り、はっきり断れない韓国に中国が怒ったのです。この兵器は北朝鮮の攻撃に対して極めて有効ですが、同時に中国の攻撃をも防ぐことができます。防衛兵器の配備一つを巡っても、韓国のバランス外交は成り立たないのです。

韓国外交のどこが間違ったかは明瞭です。どこかの国と防衛条約を結んだら、敵と見做す相手国との付き合いには不都合が起こるということです。

告げ口外交を展開した朴槿恵韓国大統領(左)と、オバマ米大統領(右)

朴槿恵の弾劾・罷免の後、大統領になったのが文在寅であり、分在寅の外交路線は「韓国が北東アジアの米・中のバランサーの役を果たす」という壮大な、盧泰愚のそれを引き継いだものでした。

そのためか、朴槿恵よりもさらに大きなレベルで、バランス外交を推し進めようとしました。日本に対しても朴槿恵のような告げ口外交どころか、GSOMIA破棄を大統領選の選挙公約とし、その後も海自の哨戒機に対するレーザー照射、慰安婦問題の蒸し返し、徴用工裁判なとで、日本に対する対立姿勢を顕にしました。

挙げ句の果に、本当にGSOMIAを破棄しようとしたのですが、日本からは無視され、米国からはとてつもない圧力をかけられました。そのため、破棄はやめたのですが、これは韓国外交の完全敗北であるにもかかわらず、今回破棄は撤回するがいつでも破棄できると国内に宣伝中という有様です。

これは、結局のところ、韓国のバランス外交の失敗が表沙汰になったということです。いままでも、失敗は数多あるのですが、それでもなんとなく隠すことができました。特に、韓国内では隠蔽することができました。しかし、今回ばかりはさすがに隠蔽できないようです。

韓国のバランス政策は、最近始まったものではありません。李氏朝鮮第26代国王、後に大韓帝国初代皇帝となった高宗の政策は、外国を利用して他の国を抑え、自国は戦わずに安全を図る「以夷制夷(いいせいい)」というものでした。これは、現在でいえばバランス外交です。

清国の勢力が優勢となると対ロ接近を図り、第1、2次朝露密約(85、86年)を結びました。日清戦争(94年)後には再びロシアに接近しました。これは清国に代わり勢力を拡大した日本のけん制が狙いでした。しかし、これは結局失敗したのは、周知の通りです。

李氏朝鮮第26代国王、後に大韓帝国初代皇帝となった高宗

朝鮮半島では、古代にもバランス外交をしていたという史実が残っています。しかし、バランス外交はいずれの時代も成功を収めた事例はありません。にもかかわらず、現在の韓国でもなぜバランス外交を信奉しようとするのでしょうか。理解し難いところがあります。

しかし、文在寅氏、盧武鉉氏や朴槿恵氏を笑ってはいけないです。日本の政権与党である自民党にも、かつては日米、日中と“等距離外交”をすると豪語していた三木武夫首相がいました。

福田赳夫首相は“全方位外交”と称していました。その後も中国と太い人脈を繋げておけば、いざという時に役に立つと信じる党首脳がいたものでした。谷垣禎一氏や岸田文雄外相が属する宏池会は経済重視主義で中国側を向いていましたた。

日本は中国と太い人脈を繋げておいたはずなのに、その後ごく最近まで、日中関係表向きも、裏でもかなり悪化していました。

さらに、最近では中国は表では、日本に対する擦り寄り試製をみせています。これは、当然のことながら、米国から直接冷戦を挑まれていることや、香港問題が激化しているため、この時期に対日関係まで悪くはしたくないからでしょう。

とはいいながら、裏では尖閣に対する示威行動を未だに継続しているどころかさらに激化させています。これが共産主義の本質なのです。

にもかかわらず、日本は、来年習近平を国賓として迎えることを約束しています。こんなことをすれば、米国は当然反発するでしょうし、世界に日本が中国の蛮行を認めたという誤ったメッセージを与えてしまうことになりかねません。

ただし、自民党の保守系有志議員のグループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」(代表幹事・青山繁晴参院議員)は13日、国会内で会合を開き、中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域への公船の侵入行為や香港市民に対する弾圧姿勢を改めない限り、来春予定される習近平国家主席の国賓としての来日に反対する決議文をまとめています。

しかし、これは無論与党の中でも、一部の動きであり、自民党そのものが来日に反対しているわけではありません。

日本が、来年習近平を国賓で迎え、天皇陛下に謁見することにでもなれば、日本も米国や米国の同盟国などから、今日の韓国のような扱いを受けるようになることは必定です。韓国のように米国から大きな圧力を受けてから、迎えることをやめるよりは、自らとりやめるようにすべきです。そうすれば、中国に対してより大きな衝撃を与えることになりまり、米国や他の同盟国に好印象を与えられることになります。


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2019年2月9日土曜日

【日本の解き方】ベネズエラめぐり米中が分断…冷戦構造を想起させる構図に 「2人の大統領」で混迷深まる―【私の論評】社会主義の実験はまた大失敗した(゚д゚)!

【日本の解き方】ベネズエラめぐり米中が分断…冷戦構造を想起させる構図に 「2人の大統領」で混迷深まる

ワシントンの在米中国大使館でスピーチする崔天凱駐米中国大使=6日

 南米のベネズエラで政情不安が続いている。マドゥロ現政権を中国とロシアが支持する一方、暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長を米国が支援する構図だ。

 かつては世界一の石油埋蔵量を誇り、豊かな大自然と莫大な富を抱え、「地上の楽園」といわれたベネズエラだが、昨年のインフレ率は100万%を超え、今年中には1000万%に達すると国際通貨基金(IMF)は警告している。食料や医薬品などが不足し、300万人ほどの難民が発生、コロンビアやブラジルなどの周辺国に逃げているようだ。

 経済学では、月率50%、年率1万3000%を超えるインフレをハイパーインフレと定義しているので、ベネズエラは正真正銘のハイパーインフレになっている。過去のハイパーインフレは五十数例とされるが、その多くはインフレ目標がないまま金融政策を行い、共産・社会主義体制の崩壊に伴って生じたもので、ベネズエラもその一例といえる。

グアイド暫定大統領(左)とマドゥロ現政権大統領(右)

 1999年に誕生したチャベス政権は、格差是正を目標にして「新しい社会主義国」を目指した。豊富な石油収入を財源とした医療、教育の無償化のほか、各種交付金など猛烈なバラマキ政策を実施した。

 2013年にがんでチャベス氏が死亡し、マドゥロ副大統領が引き継いだ。社会問題が解決できないまま、チャベス政権時代からの財政赤字が膨らみ、そのあげく中央銀行がカネを刷りすぎるという典型的なハイパーインフレになった。

 昨年5月に行われた大統領選挙でマドゥロ氏は再選されたが、その際、野党有力指導者を逮捕するなど対抗馬に妨害工作を行ったといわれている。これに対して反政府派や米国をはじめ諸外国が選挙の無効を主張、大統領不在だとしてグアイド国会議長を暫定大統領とした。

 この結果、ベネズエラには、チャベス前政権派のマドゥロ氏と反チャベス派のグアイド氏という「2人の大統領」がいるという異常事態になっている。

 「2人の大統領」に世界も割れている。マドゥロ大統領を支持しているのは、中国、ロシア、シリア、イラン、キューバ、トルコなど。グアイド暫定大統領を支持しているのは、米国、英国、欧州連合(EU)、カナダ、オーストラリア、ブラジルなど欧米諸国と南米諸国が中心だ。この分断は、かつての冷戦構造を想起させる。

 中国がマドゥロ氏を支持しているのは、07年から12年間で500億ドル(約5兆5000億円)以上の融資をつぎ込んでいるからだ。ここでマドゥロ政権が倒れれば、融資の返済に支障が出る恐れがある。

 一方、欧州諸国はグアイド暫定大統領を承認するだろう。中国などが内政干渉だと批判しても、ベネズエラの「2人の大統領」による政治経済の混迷がさらに深まることは避けられない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】社会主義の実験はまた大失敗した(゚д゚)!

活気ある新興市場経済を崩壊の危機に追い込むのに必要なものは、汚職と革命、そしてインフレーションの3つです。ベネズエラの国民は、これら全ての影響が時間をかけて国内に広がっていくさまを目の当たりにしてきました。

さらに国民は、カルロス・アンドレス・ペレスからウゴ・チャベス、そしてニコラス・マドゥロまで、何人もの「革命家」たちの数々の政策の失敗を目にしてきました。彼らはいずれも、天然資源も人的資源も豊富なこの国が崩壊寸前の状態に陥ったことに対する責任を負っています。

ドイツの社会学者で歴史学者でもあるライナー・ツィテルマンによれば、失敗した政策ばかりが並ぶベネズエラの「プレイブック」が採用されたのは、1970年代後半です。問題は国有化と労働市場に関する規制の波から始まったといいます。それは、「チャベスが政権の座に就き、事態を一層悪化させるよりずっと以前のことだ」。

労働市場の規制に大きな問題があったとするツィテルマンは、「賃金を除いた労働者1人当たりの人件費は、1972年には賃金5.35カ月分だった。それが1992年には同8.98カ月分にまで大幅に上昇した」と指摘します。ちなみに、人件費の中には、賃金の他、福利厚生費、厚生年金などが含まれます。

このプレイブックは、2度にわたって大統領となり(1969~74年、1994~99年)、価格統制や手厚い補助金の提供などを行ったラファエル・カルデラ・ロドリゲスと、その「奇妙な仲間たち」によって使われ続けました。彼らは原油価格を水より安くし、財政赤字をますます拡大させました。それだけではありません。外国の製造業者に有利になる為替管理制度も導入しました。

キューバのカストロ主義と、チェ・ゲバラやサルバドール・アジェンデの反米主義の一部を借りた現代版ボリバル主義(社会主義)は、ベネズエラ経済にさらなる問題を引き起こしました。

2013年に死去したウゴ・チャベス

2013年にチャベスが死去した後には、その後継者とされていたニコラス・マドゥロが新大統領に就任。酪農やコーヒー、肥料、靴などの生産、スーパーマーケットの事業などを相次ぎ国営化しました。だが、多くはその後、「縮小または完全に停止」しています。

原油価格が下落すると、事態は一層悪化しました。価格は2013年後半の1バレル当たり111ドルから、1年後には同57.60ドルまで急落。さらにその1年後には同37.60ドルとなり、2016年には同27.10ドル~57.30ドル(約2900~6200円)の水準で推移しました。

ツィテルマンによれば、「これにより、チャベスの社会主義政策の致命的な影響が決定的なものとなった。(ベネズエラの)システム全体が崩壊した。その他の国々でも明らかにされてきたとおり、価格統制はインフレと闘うための効率的な手段にはなり得ないだけでなく、事態を悪化させるだけだ」。

ベネズエラの急激なインフレはこうして始まり、「インフレ率は2016年、225%に達した。南スーダンを除いて、世界中のどこよりも高い水準となった」。

「中央銀行の内部報告書によると、2016年は国内総生産(GDP)が前年比マイナス19%となっていた。実質的なインフレ率は、恐らく800%近くになっていたと考えられる」

このような状況になれば何が起きるか、経済学者たちは嫌というほどよく知っている。ツィテルマンはさらに、次のように指摘します。

「人々は非常に安価で売られているものを買い、それらをため込み始める。また、繰り返し何時間も行列に並んでモノを買い、ずっと高い値段でそれらを闇市で売る」

「要するに、社会主義の実験が再び行われ、再び失敗したということだ。過去100年のほど間に行われたその他の全ての実験がそうだったように──」

国が崩壊の危機にひんする中で、ベネズエラの国民は多大な犠牲を払っています。

ベネズエラの現体制は堅固であり、指導者たちの顔ぶれを変える方が、体制を変革するよりも現実味があります。キューバはベネズエラにおけるキューバの覇権をより持続可能なものにするために、マドゥロよりは少しはましなリーダーに置き換えるかもしれないです。

しかしそれが民主主義への回帰を意味することはなく、外国が支配する、より安定した石油資源に巣くう泥棒政治をもたらすに過ぎないです。

たとえ野党勢力、あるいはアメリカ主導の軍事介入によって、全く新しい体制の政権が誕生しても、彼らが直面する課題は途方もなく大きいはずです。公共部門のあらゆる領域で、軍が果たしている大きな役割を縮小し、医療や教育、法執行の基本サービスをゼロから再構築しなければならないです。

石油産業を再建するとともに、他の経済部門の成長を刺激する一方で、麻薬ディーラー、刑務所で運営される恐喝ビジネス、略奪的な鉱山業者、金持ちの闇金融業者、そして国のあらゆる部分を食い物にしてきた略奪者を排除しなければならないです。しかもこうした改革のすべてを、無政府状態に近い政治環境と、深刻な経済危機のなかで遂行する必要があるのです。

こうした問題の大きさを考えると、ベネズエラは今後も長期にわたって不安定であり続けるでしょう。市民と指導者、そして国際社会にとっての目先の課題は、この国の衰退の余波を封じ込めることです。

悲惨な事態に直面しつつも、ベネズエラ民衆が失政に対する闘いをやめたことはありません。2018年夏の時点でも、人々は、依然として月に数百件の抗議行動に繰り出していました。

マドゥロ政権に反対するカラカスでのデモ参加者

その大部分は地域密着型の草の根運動で、政治的リーダーシップはほとんどないですが、それでも、これはベネズエラの民衆が、自分のために立ち上がる意志を強くもっていることを示しています。

だが、これだけで、ベネズエラが現在の厳しい状況から抜け出すのに十分でしょうか。おそらくそうではありません。絶望ゆえに、トランプが求める軍事介入を心待ちにする人は増える一方です。たしかにそれは、長い間苦しんできた人々が熱望するデウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)かもしれないですが、まともな戦略ではなく、報復という妄想に過ぎないです。

ベネズエラにとって最善の希望は、軍事介入ではなく、抗議行動や社会の反対意見の炎が完全に消えないようにし、独裁体制に対する抵抗が維持されることです。その見通しは絶望的に思えるかもしれないです。

しかしベネズエラの抗議の伝統が、いつか市民制度と民主的慣行を回復する基盤を提供するでしょう。簡単ではないし、短期間では実現しないでしょうが、これまでも、国家を破綻の瀬戸際から救い出すことが、簡単だったことは一度もありません。


2016年7月1日金曜日

【痛快!テキサス親父】グローバリズムは「エリート集団が富独占」の構図 英国民は「ノー」明確にした―【私の論評】国民国家を蔑ろにする国々の衰退が始まる!英国EU離脱はその序曲(゚д゚)!

【痛快!テキサス親父】グローバリズムは「エリート集団が富独占」の構図 英国民は「ノー」明確にした

写真・図表はブログ管理人掲載 以下同じ
ハ~イ! みなさん。

犬や猫がマーキングで自分の縄張りを主張することは、みなさんもよく知っていると思う。野生動物の群れに他の群れが近づくと、自分の群れを守るために命がけで排除しようとする。すべての生物にはテリトリーがあり、それを本能的に守ろうとするものだ。

英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票で、離脱派が勝利した。これは単に主権国家(=英国)が主権を侵害する連合体(=EU)から身を引くことではない。際限のないグローバリズムに対し、英国民が「ノー」を明確にしたのだ。簡単に言えば、国境を撤廃しようとしたのは間違いで、自分たちのテリトリーは自分たちで守るということだぜ。

グローバリズムの初期は、国家間の貿易障壁を取り除くものだった。それが、いつの間にか多くの国家を1つの政府でコントロールするようになった。ベルギーの首都ブリュッセルにある欧州委員会(=EUの行政執行機関、EUの政府)は、加盟国国民の細々な生活まで取り仕切り始めた。

加えて、EUは域内の人々の移動を緩和し、中東からの大量の難民を加盟国に引き取らせた。英国の国民は、移民や難民による急激な犯罪率の上昇や、彼らの社会保障に多額の税金が使われることを目の当たりにして、これらを止めようと決意したわけだ。

「反グローバリズム」の流れは、わが米国にもあるぜ。米大統領選で、共和党の候補者指名を確実にした不動産王のドナルド・トランプ氏は、グローバリズムについて以下のように語っている。


「われわれが、こうなってしまったのは、国民にとって何が最もいいのかを考えてきた米国精神から、グローバリズムに切り替えたからだ。いかに大企業が金銭的に潤うかに焦点を当て、富や仕事を外国に移し、すべての経済的損失を米国に押し付けたからだ。グローバリズムの波が、米国の中流階級を絶滅させる」

その通りだぜ。

グローバリズムは、真面目な人々が一生懸命に働いて得た富を、働く意欲のない「タカリ屋」たちに分け与えるようなものだ。「世界は1つの家族」なんて耳当たりのいい言葉でダマしているが、善良な人々から搾取して生活レベルを下げさせたうえで、世界を支配する一部のエリート集団だけが富を独占する構図といえる。

本来の意味でのグローバリズムが実現するのは、映画「インデペンデンス・デイ」のように、地球外生命体が侵略を仕掛けてきて、人類が一致団結して戦わざるを得なくなったときだけだぜ。まあ、そんなときも、地球外生命体側に寝返る、裏切り者の民族もいるだろう。日本のみなさんには、その民族は大体察しがつくだろうな。

親愛なるみなさんと、日本と米国に神のご加護がありますように。

では、また会おう!

トニー・マラーノ 

【私の論評】国民国家を蔑ろにする国々の衰退が始まる!英国EU離脱はその序曲(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、トニー・マラーノ氏はグローバリズムとはエリート集団が富を独占するシステムであるとしています。

英国のEU離脱を、英国民の多くが国境を撤廃しようとしたのは間違いであると悟り自分たちのテリトリーは自分たちで守るために、EUから離脱したとしています。

私自身は、この動きはいずれくるものと思っていましたが、英国EU離脱ということで、やはり来るべきものが来たかという思いがしました。

なぜ私がそう思ったかについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「英国に続け」と気勢=各地で反EU投票の動き―【私の論評】英国のEU離脱は、EU崩壊の序曲(゚д゚)!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、EUがうまくいかなくなる理由として、まずはEUの個々の国々の経済・文化・言語などがあまりにも異なることをあげました。これは、いつでもEU崩壊の圧力となり続けることでしょう。

さらに、ヨーロッパには、古代にはローマ帝国が存在しており、このローマ帝国にヨーロッパの人々は強い憧れをもっており、ローマ帝国のように昔から一つにまとまって強くなろうと試みられてきたのですが、それらはどれも長続きせず、破綻しているということもあげました。

実際、古くは神聖ローマ帝国から、ナポレオンによる統一、ヒトラーの野望などがありましたが、いずれもことごとく水泡に帰しています。EUだけが例外であるとは思えません。

以下に過去のこれらの国々の版図を示す地図を掲載します。

神聖ローマ帝国の版図
フランス第一帝政時代の最大版図 濃い青:領土、薄い青:衛星国
薄い緑:同盟国(プロイセン、オーストリア)

ヒトラーのナチスドイツの最大版図

これらを見ると、EUもいずれ似たような運命をたどるか、比較的緩い共同体組織になるとしか思えません。歴史は、繰り返すのです。

この記事では、EUがドイツをはじめとして、地球温暖化への対処の先進地区となっていることも理由にあげましたが、これは意見の別れるところでしょう。これについては、詳細はこの記事をご覧になって下さい。

この記事では、さらに国民国家に関するドラッカーの言葉もあげました。以下にそれも引用します。
産業革命の初期以来、経済的相互依存は政治的情熱を凌駕するだろうと主張され続けてきた。これを最初に語ったのはがカントだった。南北戦争の直前、1860年の穏健派も、サムター砦で最初に銃声が轟くまでそう考えていた。オーストラリア=ハンガリー帝国の自由主義者たちも、最後の瞬間まで、分裂するには経済的な結びつきが強すぎると考えていた。明らかに、ミハイル・ゴルバチョフも同じように考えていた。 
しかし、この200年を見る限り、政治的な情熱と国民国家が、経済的な合理性と衝突したときには政治的な情熱と国民国家のほうが勝利してきている。
1997年、フォーリン・アフェアーズ」 

ドラッカーは、過去の歴史や、この言葉を寄稿する前の、ソ連の崩壊やユーゴスラビアの崩壊などが頭にあったのだと思います。世界は、これらの直前まで、グローバリズムが時代の流れであり、いずれ国民国家は消滅するだろうと考えていました。

しかし、ドラッカーはそうした見方に、警鐘を鳴らしました。この言葉は正しいです。これから未来永劫にわたって、グローバル化が進行して、国民国家は消え去ることはないとは言い切れないとは思いますが、当面の間は国民国家はなくならないどころか、それを求める情熱は高まるばかりです。

そうして、EUも今回のイギリスの離脱では、それ例外ではなくなったようです。

イギリス国民はEU離脱を選んだ
さて、グローバル化は他の面でも、あまりうまくはいかないようです。それは、韓国や中国の例をみればわかります。

現代の「グローバリズム」の柱の1つは、中国経済が永続的に成長するという幻想です。これが、単なる幻想に過ぎなかったという事実が誰の目にも明らかになったのが、昨年でした。当然ながら、資源国を中心に、経済を対中輸出に依存している国が、そろって不況に陥ってしまいました。

さらに、資源国ではないにも関わらず、対中依存度を極端に高めてしまった韓国もまた、経済が失速しています。対中ビジネスが高かった大手輸出企業は、軒並みリストラクチャリングを余儀なくされています。

韓国経済が現在の苦境に陥ってしまったのは、対中のみならず、全体での輸出依存度が4割強(14年)と、極端にグローバル市場に依存する構造になってしまったためです。現在、世界は貿易の成長率が経済成長率を下回る、スロートレードという問題を抱えてしまっています。

さらに悪いことに、韓国の個人消費がGDPに占める割合は、50%にすぎません。日本を含むまともな先進国では60%台が普通です。米国は70%です。中国は何と、35%に過ぎません。やはり、グローバル化を極端に推し進めて、国民国家の基本である内需を疎かにした国は、結局のところいずれまともに、経済成長できなくなるのです。

このままだと、中国も韓国もいわゆる中所得国の罠(中進国の罠)にどっぷりとはまり、先進国の仲間入りする前に、経済が伸びなくなってしまうことでしょう。

IMF(国際通貨基金)のデータによると、1990年代は世界の実質GDP(国内総生産)成長率が平均3・1%だったのに対し、貿易量は6・6%も拡大しました。貿易の成長率が、実質GDPの2倍以上に達していたのです。

それが、2000年から11年までは、GDP4%成長に対し、貿易量が5・8%成長と、倍率が下がってしまいました。ところが、直近のデータでは、世界のGDP成長率2・2%に対し、貿易成長率は2%に過ぎなくなっています。

もう、グローバルに輸出を増やすことで国民経済を成長させるという手法は、維持困難になりつつあるのです。それにも関わらず、韓国はスロートレードに突入する以前に、あまりにも輸出依存度を高めてしまったのです。しかも、今回のスロートレード化の発端となった対中依存をかなり深めてしまったのです。 下図の通り、韓国の対中依存度は、日本はもちろんのこと、タイやベトナムなど東南アジア諸国と比べてすら大きいです。


今年の韓国経済は、中国経済の停滞に引きずられる形で失速し、「グローバリズムに過度に依存した国」の末路をわたしたちに示すことになることでしょう。

以上のことから推察するに、今年は「グローバリズム」の終焉の序曲となる年なのかもしれません。国民国家を蔑ろにする国々の衰退が始まる元年なのかもしれません。英国のEU離脱はその象徴的出来事であるといえるのかもしれません。

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