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2019年6月28日金曜日

トランプ氏「安保破棄」発言で“憲法改正”後押し!? G20前に衝撃発言「日本に米国守る義務ない…不公平だ」 識者が分析「防衛・安全保障のあり方を熟考する契機に」―【私の論評】トランプ氏は、警告の意味もこめ、日本が自主的に憲法改正に踏み切るよう促した(゚д゚)!


トランプ氏(左)は、安倍首相の悲願成就に協力したのか

ドナルド・トランプ米大統領が、「日米同盟の根幹」に関わる衝撃発言を放った。米テレビのインタビューで、日米安全保障条約に基づく防衛義務は一方的だとの強い不満を表明したのだ。米ブルームバーグ通信が直前、トランプ氏が「日米安保条約の破棄」に言及したと報じていただけに、この発言は深刻といえる。大阪で28日から開催されるG20(20カ国・地域)首脳会合に合わせた日米首脳会談の主要テーマにもなりそうだ。左派陣営の中には「日米同盟廃棄だ」などと小躍りする向きもあるが、識者の中には「自国の防衛・安全保障のあり方を熟考する契機になる」「安倍晋三首相の憲法改正を後押しする発言では」といった分析もある。

 「日本が攻撃されたら米国は第3次世界大戦を戦うだろう。米国はいかなる犠牲を払っても日本を守る。それなのに米国が攻撃されたとき、日本はその状況をソニーのテレビで見ていられる」

 トランプ氏は26日、FOXビジネステレビの電話インタビューで、こう語り、米国の同盟国への負担が重すぎるという持論を展開した。

 この直前、さらに踏み込んだトランプ発言が報じられていた。ブルームバーグ通信は24日、トランプ氏が私的な会話で「日米安保条約は不平等だ」として、「破棄」に言及したと報じたのだ。

 日米当局は強く否定したが、トランプ氏は2016年の大統領選中にも「米国が攻撃されても、日本は何もしない」「在日米軍は撤退してもいい」などと発言したことがある。

 米国民の中にも、自国が「世界の警察官」の役割を担って、多額の軍事費を支出していることに不満を感じる声は多い。

 だが、日米同盟はそれほど単純ではない。

 1960年に改定された日米安保条約は、日本の施政権下における武力攻撃について、日米が「共通の危険」に対処すると定めている。一方、日本側は米軍への基地提供義務を負っている。「非対称ながらも双務的」な同盟関係である。

 日米安保は米国にとっても重要だ。

 神奈川県横須賀市に司令部がある米海軍第7艦隊は、太平洋だけでなく、インド洋も管轄し、地球の半分を活動範囲としている。沖縄の米空軍嘉手納基地は、羽田空港の約2倍の広さがあり、極東最大の米空軍基地である。在日米軍撤退となれば、米国は世界の覇権を失うことになる。

 自由主義国家のナンバー1と2による日米同盟は、アジア太平洋や世界の平和・秩序維持に重要な役割を担っている。共産党独裁の中国による覇権拡大を阻止する強固な防波堤でもある。

 トランプ氏がG20への出発直前、衝撃発言を放った真意について、「来年の大統領選挙を見据えた選挙対策」とか、「日米貿易交渉で譲歩を迫る狙い(ディール)」「在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)などの増額要求」といった見方が出ている。

 ネット上では、左派陣営を中心に「安倍首相の外交的敗北だ」「日米安保廃棄」「沖縄・米軍普天間飛行場の辺野古移設は中止すべきだ」「米国への依存体質から抜け出そう」などと盛り上がっている。

 夕刊フジは26日午後、ブルームバーグ通信の報道を受けて、東京・新宿で街頭演説を終えた共産党の志位和夫委員長を直撃した。

 志位氏は「トランプ氏は『日本はもっと(米軍の駐留経費を)負担しろ』という文脈で言っており、とんでもない話だ。そこで(日本側が)『日米安保条約は止めないでください。何でも負担しましょう』となると、トランプ氏の言うがままになる」と述べた。

 そのうえで、「私たち(=共産党)の考えは、日米安保条約は国民多数の合意で破棄をし、対等で平等の日米友好条約に変え、本当の独立国をつくることだ」と強調した。同党は党綱領に「自衛隊の解消」「日米安保条約の廃棄」を堂々と掲げている。

 ■日米安保破棄なら防衛コスト23兆円?

 日米安保を廃棄すれば、日本は自主防衛に踏み切るしかなくなる。その防衛コストについて、「年に22兆3000億~23兆8000億円かかる」との防衛大学校教授の試算もある。年金どころではない。日本の社会保障費が吹っ飛んでしまう。

 そこで、防衛コストについて指摘すると、志位氏は「(試算には)どんな根拠があるんですかねえ」と語った。

 まったく違う見方もある。

 トランプ氏は「日本人に『自分の国は自分で守る』という覚悟を持たせ、憲法改正を後押しする意図があったのでは」と分析するものだ。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は当初、「フェイクニュースか?」と首をひねったが、大阪G20の隠れテーマが「対中包囲網の構築」であることから、次のように深読みした。

 「米国は長く、日本の軍事大国化を防ぐため、平和憲法と日米同盟で押さえ付ける『瓶のフタ論』をとってきた。だが、トランプ氏は以前から『経済大国の日本が米国頼りなのはおかしい』という疑問を明言してきた。米中対立が激化するなか、トランプ氏は『日本も憲法を改正して、自分の国は自分で守る国になるべきだ』『米国とともに共産党独裁の中国と対峙(たいじ)してほしい』とのメッセージを込めた可能性がある」

 トランプ流で、安倍首相の憲法改正を激励したのだろうか。

【私の論評】トランプ氏は、警告の意味もこめ、日本が自主的に憲法改正に踏み切るよう促した(゚д゚)!

最近の報道では、トランプ大統領が日米安保破棄について語ったことが報道されていますが、その背景には米国ではすてに、オバマ政権の頃から日本は改憲すべきであるとの声が議会で高まっていたことがあります。

それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派に―【私の論評】憲法を改正するか、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になるか、あなたはどの道を選択しますか?
 GHQによる日本国憲法草案
1946年(昭和21)2月13日、外相官邸で行われた日米会談の席で、政府の「憲法改正要綱」は、あまりに保守的内容であるとして拒否され、GHQ起草の案(マッカーサー草案)が提示された。この草案は、GHQ民政局部内で極秘裏に起草されたもので、主権在民・象徴天皇・戦争放棄などを規定していたため、政府側に大きな衝撃を与えた。

この記事は2010年のものです。詳細はこの記事をごらんいただくものとして、もうすでにこの頃からら、米議会では日本は改憲すべきという勢力のほうが、護憲勢力よりも大きくなっていたのです。

この記事の冒頭部分を以下に引用します。
米国議会が日本の憲法第9条を日米共同防衛への障害と見なし、改憲を望むようになった――。 
この現実は日本の護憲派にはショックであろう。だが、米国議会上下両院の一般的な認識として、日本側の憲法9条の現行解釈による集団的自衛権の行使禁止は、「より緊密な日米共同防衛には障害となる」というのである。
同じく以下のこの記事から私による結論部分を引用します。
憲法を改正して、パランス・オブ・パワーの一角を担う覚悟がなけば、いずれ選択できる道は二つしかありません。それは、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になることです。いますぐ、ということはないでしょうが、今後10年以内には、おそらくどちらかの道を選ばざるをえない状況に追い込まれます。あなたは、どの道を選びますか? 
しかし、私達としても、当然のこととして、どらの道も選びたくはありません。であれば、憲法を改正して、バランス・オブ・パワーの一角を担うしかありません。
この動きは近年さらに強まっていました。それについても以前このブログで取り上げたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声―【私の論評】米国大統領は平時には世界“最弱”の権力者である理由とは?
米国・ワシントンD.C.の国会議事堂。米国議会で日米同盟の片務性を批判する声が高まってきた
この記事は2017年3月4日のものです。トランプ氏が大統領に就任して間もない頃です。
 米国のトランプ政権は日米同盟の堅持と尖閣諸島の共同防衛を確約している。その一方でこのほど、民主党の有力議員が米国議会で“日本は憲法を改正しない限り米国の公正な同盟パートナーにはなれない”“現状では米国は尖閣を防衛すべきではない”という主張を表明した。 
 日本側の憲法が原因とされる日米同盟の片務性は、これまで米国側から陰に陽に批判されてきた。だが、これほど真正面からの提起も珍しい。日本側としても真剣に受け止めざるをえない主張だろう。
・・・・・・・・・・・・一部省略・・・・・・・・・・・

 公聴会ではまず議長のヨホ議員が、中国の南シナ海での人工島造成や軍事基地建設を膨張主義だとして非難し、中国による東シナ海での日本の尖閣諸島領域への侵入も米国の同盟国である日本への不当な軍事圧力だと糾弾した。

 そのうえで同議員は、オバマ政権下の米国のこれまでの対応が中国をまったく抑えられなかったと指摘し、日本などの同盟国と連帯して対中抑止態勢を構築することを提唱した。その前提には、トランプ政権が日米で尖閣を共同防衛する意思を表明していることがもちろん含まれていた。

 ところがこの委員長発言の直後、民主党を代表して発言したブラッド・シャーマン議員が驚くほど強硬な語調で日本を批判したのである。

ブラッド・シャーマン民主党議員 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 「トランプ政権が日本の施政下にある尖閣諸島の防衛を約束したことには反対する」 
 中国の海洋進出を非難する前にトランプ新政権の対日安保政策に反対を唱える発言に、私は驚かされた。シャーマン議員はさらにショッキングな発言を続けた。 
「日本は憲法上の制約を口実に、米国の安全保障のためにほとんど何もしていない。それなのに米国が日本の無人島の防衛を膨大な費用と人命とをかけて引き受けるのは、理屈に合わない。日本側はこの不均衡を自国の憲法のせいにするが、『では、憲法を変えよう』とは誰も言わない」 
 「2001年の9.11同時多発テロ事件で米国人3000人が殺され、北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国は集団的自衛権を発動し、米国のアフガニスタンでの対テロ戦争に参戦した。だが、日本は憲法を口実に、米国を助ける軍事行動を何もとらなかった。その時、『日本はもう半世紀以上も米国に守ってもらったのだから、この際、憲法を改正して米国を助けよう』と主張する政治家が1人でもいただろうか」 
 シャーマン議員は公聴会の満場に向けてそんな疑問を発すると同時に、日本やアジアに詳しい専門家の証人たちにも同じ質問をぶつけた。
 シャーマン議員はカリフォルニア州選出、当選11回のベテランである。民主党内でもかなりのリベラル派として知られる。そんなベテラン議員が、日米同盟が正常に機能するためには日本の憲法改正が必要だと主張しているのである。
シャーマン議員は以下のような発言もしました。

「2001年9月の9.11同時多発テロ事件では米国人3000人が殺され、北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国は集団的自衛権を発動し、米国のアフガニスタンでの対テロ戦争に参戦しました。しかし、日本は憲法を口実に、米国を助ける軍事行動を何もとらなかった。その時、『日本はもう半世紀以上も米国に守ってもらったのだから、この際、憲法を改正して米国を助けよう』と主張する日本の政治家が1人でもいたでしょうか」

トランプ政権からでもなかなか出てこない過激な主張であり、日本に対する手厳しい批判でもありました。

しかし、この主張には無理な側面もあります。なぜなら、日本国憲法は日本が自主的に定めたものではなく、当時の米国によって作成されたものだからです。それは、バイデン元副大統領もそのように発言していました。そのため、日本が米国の要請に従い憲法を変えるというのなら、米国もそれ相当のことをしなければならないです。

まずは、極東軍事裁判の一方的な判決、さらには、その後のGHQの統治などの誤りを認めるべきです。そうすれば、日本は自主的に憲法改正をしやすい状況を醸成できます。

以下にこの記事の【私の論評】の結論部分を掲載します。
日本が米国の要請よって、憲法を変えるなどということになれば、日本としてもただ変更するというのではなく、当然のことながら、米国と日本の関係を大東亜戦争前の日米が戦争するなどとは思いもよらかなった頃の関係に近いものに戻すことを条件とすべきです。 
このようなことをいうと、そんなことは全く不可能と思われるかもしれませんが、私はそうでもないと考えます。なぜなら、米国の保守本流派とされる人々は、そもそもソ連の防波堤となって戦っていた日本と米国が戦争したは間違いだったと考えているからです。 
そもそも、ルーズベルトが全体主義のソ連と手を組んだことが間違いの始まりだったとしています。こういう米国保守本流の考え方からすれば、米国と日本の関係を大東亜戦争前の日米が戦争するなどとは思いもよらなかった頃の関係に戻すという考えは受け入れやすいかもしれません。
スターリン(左)とルーズベルト(右)
ただし、大東亜戦争前と現在とでは国際情勢が違いますから、全くその頃と同じということてはできません。しかし、日本としてはまずは国連の常任理事国入りは当然の前提条件とすべきです。
そうして、日本が自主防衛をするようになってにしても、日米の同盟関係は維持するという条件も前提条件とすべきでしょう。そうして、日米同盟の双務性を堅持すことも条件とすることは当然のことです。
その上でなら、米国による要請も受け入れて良いと思います。ただし、自分の国を自分で守ること、すなわち防衛戦争をできるようにすることや実際にすること自体は、米国とは関係なく、本来独立国としては、当然のことです。これができないというのは、日本は未だ独立国ではないという証です。
ただし、米国議会の日本に対して憲法改正圧力は、日本にとって憲法改正にはずみをつけるということから、日本政府は大いに利用すべきものと思います。
上にでできたブラッド・シャーマン議員は、最近も日本を鋭く批判しています。ご存知のように、米国連邦議会では2018年11月の選挙で野党の民主党が下院の多数を制しました。多数党は議会の全委員会の長ポストを握り、議題や審議の手続きを仕切ることができます。下院で共和党と民主党の勢力が逆転したことで、2019年初頭からは民主党議員たちが議事進行の先頭に立つようになりました。

なかでも活発なのは外交委員会です。外交委員会のなかで日本についての政策を審議するのが「アジア太平洋・不拡散小委員会」(Subcommittee on Asia, the Pacific and Nonproliferation)です。この小委員会の委員長に新たにブラッド・シャーマン議員が就任しました。

現在、下院外交委員会のメンバーは民主党26議員、共和党20議員です。この委員会は活動がきわめて活発です。この5月に入ってからでも、中国、ロシア、北朝鮮、イラン、人権、大量破壊兵器などに関する問題を幅広く取り上げて、12回も公聴会を開催しました。

そのなかでもとくに活発に動くメンバーが、カリフォルニア州選出のブラッド・シャーマン議員です。同議員は1997年以来、当選7回、外交委員会全体において民主党側議員のなかで委員長に次ぐ筆頭議員の立場にあります。また、民主党リベラル派としてトランプ政権への反発も激しく、トランプ大統領への弾劾決議案の提出を何度も試みてきました。

そのシャーマン議員が、下院外交委員会の「アジア太平洋・不拡散小委員会」委員長に就任したのです。下院外交委員会では、地域別、主題別に6つの小委員会を設けています。そのなかで日本や中国などアジア関連の課題を専門に扱うのがアジア太平洋・不拡散小委員会です。

このような意見の持ち主が、米国連邦議会のなかで日本への関わりが最も大きい小委員会委員長ポストに就いたのです。このことは日本側でも銘記しておくべきでしょう。そうして、米国においては平時には米国の大統領の権限は世界最弱であることも銘記しておくべきでしょう。ただし、米国では超党派で中国に対峙していて、こと中国に関することでは、大統領に権限が集まりつつあることも事実です。

米国の保守本流派とされる人々は、そもそもソ連の防波堤となって戦っていた日本と米国が戦争したは間違いだったと考えていることは、上でも述べましたが、米国のリベラル派である民主党のシャーマン議員にはそのような歴史観はないようです。

現状のまま、米国が日米同盟を断ち切るようなことがあれば、喜ぶのは中国です。米軍が日本からひきあげれば、中国は嬉々として、日本を占領しにやってくるでしょう。ロシアや北朝鮮、もしかすると韓国もそうするかもしれません。

そうして、日本の富と技術力を簒奪して、冷戦や制裁を勝ち抜くことでしょう。それどころか、日本の無能な官僚などは追い出し、自ら財政・金融政策などを抜本から変え、日本経済を成長させ、さらに莫大な富を得て、経済力で米国を追い抜き、世界を手にいれるかもしれません。そうなれば、世界は闇です。

そんなことは、日米双方にとって良いことは一つもありません。日米は互いに協力しつつ中国と対峙するために、やはり日本が自主的に憲法を変えやすい状況を醸成していくべきです。

トランプ発言の背景には、このようなことがあるのです。トランプ氏としては、警告の意味もこめ、日本が自主的に憲法改正に踏み切るよう促したとみるべきです。

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2019年6月13日木曜日

習近平氏“失脚”危機!? 香港流血デモ、負傷者70人超…中国共産党は“内紛”状態 専門家「G20前にヤマ場」―【私の論評】習近平が、かつての華国鋒のような運命をたどる可能性がかなり高まった(゚д゚)!

習近平氏“失脚”危機!? 香港流血デモ、負傷者70人超…中国共産党は“内紛”状態 専門家「G20前にヤマ場」

香港で、学生らと警官隊が激しく衝突した。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求め、立法会(議会)を包囲していた学生らに対し、警官隊が12日、多数の催涙弾やゴム弾などを撃ち込んだのだ。負傷者は79人に上ったという。30年前の「天安門事件」の悪夢は繰り返されるのか。香港は13日朝も緊迫している。「自由」と「法の支配」を守ろうとする学生らの抗議運動に対し、中国共産党幹部が香港入りしたとの報道もある。米国務省は、学生らの行動に理解を示した。今後の展開次第では、習近平国家主席の政権基盤が揺らぐ可能性もありそうだ。

「学生らの自発的行動(デモ)は『雨傘革命』以上だ」「香港の良さ(=自由や権利の保障、公平な裁判など)を、破壊しているのは、今の香港政府と中国共産党政権だ」

香港の民主化を求めた2014年の「雨傘革命」で学生団体幹部だった周庭(アグネス・チョウ)氏(22)は12日、東京・神田駿河台の明治大学での講演で、こう語った。その内容は後述するとして、香港の現状は深刻だ。

2018年12月に来日した周庭(アグネス・チョウ)氏

「逃亡犯条例」改正案の成立を阻止するため、立法会周辺の道路を占拠していた学生らに対し、12日午後、盾や警棒などを持った警官隊が出動し、催涙弾やゴム弾を発射した。頭から血を流して倒れ込む学生。SNSでは、無抵抗の学生らに襲いかかる警官隊の動画も拡散されている。

催涙弾の発射は「雨傘革命」以来で、市民や民主派らが強く反発するのは確実だ。緊張が高まっており、さらなる衝突が起きる懸念も強まっている。改正案は当初、立法会で20日にも採決される予定だったが、今回の衝突を受けて、不透明な状況になった。

中国共産党政権が支持する香港政府トップ、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は12日、地元テレビ局のインタビューで、改正案を撤回しない方針を改めて表明した。同日夜には声明を発表し、デモについて「公然と暴動を起こした」と非難し、催涙弾の発射などを正当化した。

これに対し、国際社会の見方は違う。

米国務省のモーガン・オルタガス報道官は12日の記者会見で、「根源的な権利をめぐって中国の支配下に入りたくないから抗議している」といい、若者らの行動に理解を示した。香港政府に対しては表現や集会の自由を守るよう求めた。

 EU(欧州連合)の欧州対外活動庁(外務省に相当)の報道官も同日、多くの負傷者が出たことを受けて、「平和的で自由に集まり、意見を表現する権利は尊重されなければならない」「香港市民の多くの懸念を共有する」とする声明を発表した。

香港は1997年に中国へ返還された後も、「一国二制度」に基づく「高度な自治」を約束されてきた。ところが、共産党独裁の習政権による強権支配が強まっており、「自由」や「司法の独立」が奪い取られようとしている。

前出の周氏は、明治大学での講演で「中国は法治国家でもなく、人権の保証もない」と訴え、続けた。

「香港は法治社会だったが、(『逃亡犯条例』改正案の可決で)身の安全すら保障されなくなる可能性がある。国際金融都市としての『特別な地位』もなくなる。社会や経済にも悪影響を及ぼす」「香港に来る外国の観光客や記者が逮捕されて、中国本土に引き渡される可能性がある。日本にも無関係でない法案だが、日本政府は意見を言っていない。日本の政府や政治家も、改正案に(反対の)意思をはっきり示してほしい」

共産党独裁国家にのみ込まれる危機に直面した、切実な訴えというしかない。

中国事情に詳しいノンフィクション作家の河添恵子氏は「学生たちは、香港にあったはずの『人権』と『自由』と『民主』がなくなってきていることを実感している。ここ数年、(共産党に批判的な)出版社店主などが次々と拘束されている。香港が監視社会になってきている」と語る。

習氏は今月末、大阪市で開かれるG20(20カ国・地域)首脳会合に出席するため来日する予定だが、激化するデモの展開次第で、どうなるか。

河添氏は「現在、中国共産党は内紛状態にある。習氏がデモ制圧のために軍を動かす判断をしなくても、反習派によって動く軍はたくさんある。万が一、軍が動いて大きな被害が出れば、国際社会は習政権を厳しく批判することになる。そのなかで、習政権の責任論が浮上する可能性もある。国内でクーデターが起こる可能性もある。G20前にヤマ場が来るのではないか」と分析している。

【私の論評】習近平が、かつての華国鋒のような運命をたどる可能性がかなり高まった(゚д゚)!

米国は、今回の香港の流血デモの直前に、習近平を追い詰める措置をとっていました。それは、事実上台湾を国として認めたことです。

米国防総省が最近発表した「インド太平洋戦略報告書」で、台湾を協力すべき対象「国家(country)」と表記しました。これは、米国がこれまで認めてきた「一つの中国(one China)」政策から旋回して台湾を事実上、独立国家と認定することであり、中国が最も敏感に考える外交政策の最優先順位に触れ、中国への圧力を最大限引き上げようという狙いがうかがえます。

ちなみにこの報告書では、昨日もこのブログに掲載したように、「北朝鮮による日本人拉致事件の解決への支援」も明記しています。トランプ政権の日本人拉致事件解決への支援はすでに広く知られてきましたが、政府の公式の文書で明記されたことはこれが初めてだといいます。

また同文書は同時に北朝鮮を「無法国家」と断じ、米朝間で非核化交渉を進めているにもかかわらず、同国が相変わらず日米両国にとって軍事脅威であることを強調していました。

インド太平洋戦略報告書の表紙

国防総省は報告書で、「インド太平洋地域の民主主義国家として、シンガポール、台湾、ニュージーランド、モンゴルは信頼でき、能力がある米国のパートナー」とし、「4国は世界で米国のミッション遂行に貢献しており、自由で開かれた国際秩序を守護するために積極的な措置を取っている」と強調しました。

これらの国は、米国のインド太平洋戦略のパートナー国家として、既存の同盟国家である韓国、日本、オーストラリア、フィリピン、タイに触れ、追加で協力を拡大・強化する対象国として言及されました。

米国は1979年、中国との国交を正常化した後、「一つの中国」政策に基づいてこれまで台湾を国家と認定しませんでした。その米国が事実上、米国に対抗する公式報告書で台湾を国家と表記したのです。

香港サウスチャイナ・モーニン・ポストは7日、関連内容を報じ、「米国が一つの中国政策を事実上、廃棄した」と指摘しました。同紙は、「これは中国を狙った最近の米国の挑発的な措置の一つ」とし、「米中両国が貿易、セキュリティ、教育、ビザ、技術だけでなく『文明』競争を行う過程でトランプ政権が出した奇襲攻撃」と強調しました。

これに先立ち、ロイター通信によると、米国は台湾に対戦車兵器など20億ドル規模の兵器販売も推進しています。台湾との外交関係修復と協力強化、軍事的支援を通じて、台湾を中国封鎖政策に参加する域内プレーヤーに引き込むということです。米中間の覇権競争が激化する状況で、中国の激しい反発が予想されます。

トランプ米大統領は6日(現地時間)、今月末の大阪での主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議で、中国の習近平国家主席と首脳会談を行った後、中国製品に追加関税をするかどうか決めると明らかにしました。ロイター通信によると、欧州を歴訪中のトランプ氏は同日、フランスのマクロン大統領との昼食前に記者団に、中国に3千億ドル(約354兆ウォン)規模の新たな関税を課す時期を問われ、「G20の後、2週間以内に決定する」と話しました。

米国が、中国の世界貿易機関(WTO)内の開発途上国の地位剥奪を推進中という報道もあります。7日、「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)の中国語版によると、米下院外交委員会所属のテッド・ヨーホー議員(共和党・フロリダ州)は同日、米外交政策委員会(AFPC)の主催で開かれた中国関連会議で、「米議会は政府とともに中国の開発途上国地位の剥奪を推進しており、ポンペオ長官と議論した」と明らかにしました。


今回の混乱により、香港立法会(議会)の梁君彦議長は、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を13日に審議しないことを決めました。立法会がウェブサイトで発表しました。改正案は当初、12日に審議が再開される予定でしたが、13日に延期されていました。審議日程は議長が決定し次第、発表されるとしています。

混乱がさらに続き、「逃亡犯条例」改正の審議が長引き、米国により対中国冷戦が発動されるとともに、台湾が事実上米国に国家として認められたことなどから、習近平は相当追い詰められています。

上の記事にあるように、今回の出来事ですぐにクーデターが起きて、習近平がすぐに失脚ということもあり得るとは思いますが、もしそうならなくても、習近平がかつての華国鋒のような運命をたどる可能性は、今回の一連の出来事でかなり高まっ

華国鋒

1976年10月、毛沢東の後継者として中国の最高指導者の地位に就いた華国鋒は、自らに対する個人崇拝の提唱や独断的な経済政策を推進したため、当時の党内の実力者、鄧小平ら長老派と対立しましたた。

78年末に開かれた党の中央総会で華が推進する政策が実質的に否定されたあと、影響力が低下し始めました。華はその後も党内から批判され続け、側近が次々と失脚するなか、約3年後に自らが辞任する形で政治の表舞台から去りました。

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