2024年11月3日日曜日

米戦争研究所、北朝鮮のウクライナ派兵で報告書 実戦経験を将来の紛争に応用 対中依存脱却の狙いも―【私の論評】北・露軍事協力の脅威と石破政権の対応不足が招く地域安定リスク

米戦争研究所、北朝鮮のウクライナ派兵で報告書 実戦経験を将来の紛争に応用 対中依存脱却の狙いも

まとめ
  • 北朝鮮の兵力派遣目的: 北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻を支援するために部隊を派遣し、最新の戦闘経験を得ることで、韓国など将来的な紛争への備えを強化しようとしている。この参戦は北朝鮮軍にとって重要な学習の機会、特に近代戦の舞台での実戦経験を積む狙いがある。
  • ロシアとの連携強化: 北朝鮮はロシアとの関係を強化することで、中国への依存を減らそうとしており、これにより朝鮮半島の不安定化やアジア太平洋地域への影響が懸念される。ロシアからの見返りとして、北朝鮮は核開発計画の進展や軍事的支援の確保を期待している。
  • 軍事的影響とリスク: 北朝鮮の部隊が実戦で得る教訓は、ロシア軍の指導方法次第で大きく変わる。北朝鮮が「弾除け」として利用された場合、実質的な学習の機会が失われる可能性がある
同レポートの10月25日までに報告されいる北朝鮮軍のロシアに向けての配置状況図 クリックすると拡大します

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、北朝鮮がロシアを支援するために部隊を派兵した背景について分析した報告書を発表した。北朝鮮は、ウクライナ戦争を通じて得られる戦闘経験を将来の紛争、特に韓国との戦闘に活かす狙いがあると指摘されている。また、ロシアとの連携を強化することで中国への依存を減らし、朝鮮半島及びアジア太平洋地域の安定を脅かす可能性もあると警告している

報告書は、北朝鮮軍が現代戦の経験を欠いていることを指摘し、ウクライナ軍との交戦を通じて指揮統制や無人機操縦のスキルを向上させることを目指していると分析している。しかし、北朝鮮軍の実際の戦場での教訓が得られるかは、ロシア軍が北朝鮮兵をどのように利用するかに依存する。

さらに、北朝鮮はロシアからの支援を受けることで核開発を進め、将来的に朝鮮半島での紛争時にロシアの軍事的関与を期待しているとも述べている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】北・露軍事協力の脅威と石破政権の対応不足が招く地域安定リスク

まとめ
  • 北朝鮮はロシアを支援するため部隊を派遣し、ウクライナ戦争での最新戦闘経験を将来の紛争に活用しようとしている。
  • 北朝鮮とロシアの連携が、朝鮮半島やアジア太平洋地域の安全保障バランスに長期的な影響を及ぼす可能性がある。
  • 北朝鮮はロシアとの協力を通じて中国依存を減らし、独立性を高めようとしており、これにより、地域全体の安定に新たなリスクが生じている。
  • 北朝鮮はロシアの支援を得て、韓国に対する威圧力を高めようとしており、安全保障バランスに影響を与える可能性がある。
  • 各国が北朝鮮の動向に懸念を示す中、日本政府は現時点で具体的な対応を示しておらず、外交政策が不透明である。
金正恩と北朝鮮人民解放軍

上の記事に示されている、米シンクタンクの戦争研究所(ISW)のレポートは、以下のリンクからご覧いただけます。

North Korea Joins Russia's War Against Ukraine: Operational and Strategic Implications in Ukraine and Northeast Asia

このレポートより、概要と主なポインのみ、以下に日本語訳を掲載します。

概要

北朝鮮はロシアのウクライナ戦争を支援するために部隊をロシアに派遣した。これは、2022年2月のロシアの全面的なウクライナ侵攻以降、両国間の協力が強化されているを示すもの。 
クレムリンは、北朝鮮の人材を利用して進行中の攻勢を支援し、ロシアの国内部隊を生成する能力の要求を補うことを考えている可能性が高い。ただし、北朝鮮の部隊がウクライナの作戦地域に配備される影響は、ウクライナの戦場をはるかに超えている。 
平壌は、北朝鮮の軍人が現代戦の条件の下で戦闘経験を得ることを期待している可能性があり、その経験を将来の戦争に応用できることを望んでいる。北朝鮮とロシアの連携は、朝鮮半島や広範なアジア太平洋地域の長期的な安定を脅かす可能性を内包している。

主なポイント
  • ロシアと北朝鮮との長期的な連携は、ウクライナの戦場を超え、朝鮮半島やアジア太平洋地域の安定性に長期的な影響を及ぼす可能性がある。ウクライナの戦争は、これからのすべての戦争の性質を変えるだろう。そして、平壌はこの事実を自軍にとって重要な学びの機会と考えているようだ。北朝鮮軍は1953年以降、大規模な従来型戦闘を経験しておらず、特に韓国のような洗練された相手と現代戦を戦う準備が整っていないことを理解している。
  • 北朝鮮は、自国の部隊が攻撃的な戦略を磨き、西側が備えた敵に対して武器システムを試し、指揮統制の経験を得て、最新の戦場でドローンや電子戦システムを運用する方法を学ぶ機会を持つことを望んでいると思われる。平壌は、ウクライナ戦争で得たスキルが、韓国半島を含む未来の紛争で攻撃的な優位をもたらすことを期待しているだろう。
  • 北朝鮮軍が戦場で学んだ教訓を吸収し、広め、制度化する実際の能力は、ロシア軍が北朝鮮の人材をどのように活用するかに完全に依存する。もしロシアが北朝鮮の人員を「弾除け」として使用する場合、北朝鮮の部隊が避けがたい被害を受けることで、平壌が学びたいと思っている戦場の教訓が台無しになってしまうだろう。
  • 北朝鮮は、ロシアとの連携を深めることで中華人民共和国(PRC)への依存を減らそうとしており、その結果、北京の北朝鮮政権に対する影響力を軽減しようとしている可能性がある。PRCの北朝鮮に対する影響力の低下は、朝鮮半島の安定を減少させ、アジア太平洋地域全体を危険にさらすだろう。というのも、PRCはその影響力を利用して北朝鮮の侵略を抑制しているからだ。
  • 北朝鮮の最近のパートナーシップ協定とロシアとの関係強化は、たとえロシアの支援がプログラムへの直接的な技術援助の形であっても、北朝鮮の核兵器プログラムの発展を助けるのに役立つかもしれない。平壌は、ロシアとの大規模な兵力を完全に外国の紛争に投入するための見返りとして、朝鮮半島での紛争発生時にロシアの防衛コミットメントを確保しようとしている可能性がある。ただし、2024年のロシアと北朝鮮の相互防衛協定は、ロシアが南北間の戦争に軍隊を派遣することを回避する可能性がある。
  • 北朝鮮のロシアとの防衛協定は、韓国に対する脅威や威圧の信頼性と効果を高めることになる。
本レポートでは、中国が北朝鮮の侵略を抑制していることに関する具体的なエビデンスも示めされている。北朝鮮は経済的に中国(PRC)に大きく依存しており、その貿易の90%以上が中国に依存しているため、中国は北朝鮮に対して重大な影響力を持つ。例えば、中国は北朝鮮の主要な食料援助の供給国であり、エネルギーの原油供給者でもある。また、中国は朝鮮戦争以降、北朝鮮の重要な安全保障の担保者として機能し、北朝鮮政権の存続を支えているのだ。

金正恩と習近平

ところが、中国と北朝鮮の関係には常に不信感が存在する。北朝鮮は中国の行動制限に対して反発することがあり、特に2017年の核開発問題ではその限界が露呈した。中国の公式メディアは、北朝鮮が米国に攻撃を行った場合、中国は介入しないという立場を示した。このように、中国は北朝鮮の行動を抑えるために様々な制約を課しており、時には北朝鮮が直接的な対立を望んでいるような行動に対しても手をこまねくことがある。

最近の情勢では、北朝鮮がロシアとの関係を深めており、これが中国の影響力を削ぐ可能性が指摘されている。特に、北朝鮮とロシアが共同で核技術や軍事協力を進めることで、中国の制約から解放されるリスクがある。このような背景から、中国は北朝鮮の安定を保つために影響力を強める一方で、北朝鮮がより冒険的な行動を取る恐れが高まっているという状況が浮かび上がっているのだ。

このレポートは、北朝鮮と中国の複雑なダイナミクスを理解する上で重要である。北朝鮮の独立性の向上は、朝鮮半島やアジア太平洋地域の安定に新たなリスクを引き起こし、国際社会に広範な影響を及ぼす可能性があることを覚えておくべきだ。

北朝鮮がロシアへの派兵を行う背景には、中国や米韓に対する戦略的な意図が潜んでいる。北朝鮮はロシアとの関係を深めることで、依存度を減少させ、北京の影響力を削ぐことを目指しているのだ。これにより、経済的および軍事的に安定する可能性が高まる。

次に、米韓連携の脅威を軽減するために、ロシアの支持を受けた防衛力を強化し、地域の安全保障バランスを変えようとしている。具体的には、北朝鮮はロシアからの軍事的支援を通じて、自国の軍事的威圧を強化し、韓国に対する影響力を高めることを企図している。北朝鮮のロシアへの派兵は、自己防衛と影響力の拡大を図るための重要な戦略として位置づけられるのだ。

金正恩とプーチン

各国政府は、北朝鮮がウクライナに派兵する動きに対して注目している。米国は、ホワイトハウスの声明を通じ、北朝鮮がロシアに派遣する兵士に対して強い懸念を表明した。国家安全保障担当者のジョン・カービーは、これがウクライナの軍事的抵抗力を強化する要因となると指摘しているのだ。

韓国の国家情報院は、北朝鮮が約12,000人の兵士をロシアに派遣する計画があると報告し、自国の安全保障への影響に懸念を示している。また、ウクライナの軍事情報部門は、北朝鮮兵がロシア側で訓練を受けており、今後の軍事的圧力が増す可能性について警告を発している。このように、北朝鮮の派兵に対する国際的な懸念が高まり、各国はその動向を注視せざるを得ないのだ。

だが、日本政府は現時点では何らのコメントも発していない。石破総理大臣の外交や安全保障に関するビジョンの欠如は、彼の政権が直面する重要な課題の一つであろう。北朝鮮の核開発やロシアの軍事行動が地域の安全保障に脅威をもたらす中で、明確な外交戦略が求められている。しかし、石破総理は具体的な政策や行動計画を示しておらず、国際社会との連携強化や信頼構築の観点からも評価されない状態だ。

さらに、外交政策において近隣諸国との対話を重視する一方で、国益を守るための具体的なアプローチが不透明であり、国民や専門家からの信頼を得るには至っていない。この状況は、大国との関係を形成する際に、意思決定や情報の透明性を欠き、政権の信用をさらに低下させる要因となる。

このような環境下で、石破政権が今後どのように国際社会と連携し、具体的なビジョンを描いていくのかが注目される。明確な外交政策や安全保障のビジョンがなければ、権力基盤の脆弱性とあいまって、政権全体の信頼性にも影響を与えるだろう。 

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2024年11月2日土曜日

西尾幹二氏、日本の危険に警鐘鳴らす「カナリア」 誇り奪う自虐史観と戦う―【私の論評】西尾幹二氏の業績とその影響力:日本の歴史教育と文化を守るために

西尾幹二氏、日本の危険に警鐘鳴らす「カナリア」 誇り奪う自虐史観と戦う

まとめ
  • 西尾幹二氏は、自虐史観や不当な歴史教育に反対し、「新しい歴史教科書をつくる会」を設立し、日本の誇りを守るために警鐘を鳴らした。
  • 彼は安易な移民受け入れにも反対し、1980年代からその問題に疑問を投げかけていた。
  • 情報収集や勉強会を通じて鋭敏な感覚を持ち続け、エネルギッシュな活動を行ったが、最近亡くなったことは多くの人々にとって大きな損失である。
西尾幹二氏

 「炭坑のカナリア」という表現は、危険をいち早く知らせる存在を指し、特に冷戦期には文学者がその役割を担っていた。故人、西尾幹二氏は日本にとっての「カナリア」として、自虐史観など日本を衰弱させる危険を警告し続けていた。

 具体的には、「新しい歴史教科書をつくる会」を立ち上げた際、中学生向けの教科書には「従軍慰安婦」や「南京大虐殺」といった不当な記述が広がっていたが、こうした自虐的な歴史教育は、日本人の誇りを奪い、国防にも悪影響を及ぼすと警告していた。

 また、西尾氏は安易な移民受け入れにも反対し、1980年代には「労働力不足解消」という名目で移民問題が語られていたが、彼はこの流れに早くから疑問を呈しさまざまな識者を招いての勉強会を病を得るまで続けた。西尾氏は「カナリア」のような脆弱さとは無縁で、非常にエネルギッシュな人物であり、彼の活動は今も影響を与えている。

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【私の論評】西尾幹二氏の業績とその影響力:日本の歴史教育と文化を守るために

西尾幹二氏の業績は、実に広範で奥深いため、すべてを紹介するのは至難の業である。しかし、現代を生き、未来を切り拓く人々にとって、以下の動画は必見である。これは、Xなどのプラットフォームで広く流布しているもので、一部を切り取った内容ではありながら、彼の業績を的確に示すものである。


西尾氏は、日本の歴史教育や文化批評、教育改革において計り知れない影響力を持つ業績を残した。1997年に設立した「新しい歴史教科書をつくる会」は、戦後の歴史教育における自虐史観を徹底的に批判する目的で活動を開始し、2001年に発行された「新しい歴史教科書」はその思想を色濃く反映している。この教科書は、「従軍慰安婦」や「南京大虐殺」に関する記述が大きな議論を呼び、教育界での重要な論争を引き起こした。

彼は、自虐史観に対する批判を著作や講演を通じて広め、多くの人々に影響を与えた。代表的な著作には『歴史教科書の真実』や『自虐史観の正体』があり、戦後教育が日本の歴史をどのように歪めているかを具体的に論じている。西尾氏は、日本人の誇りを取り戻すためには正確な歴史認識が不可欠であると主張し、戦争に関する記述が日本を悪者にする形で強調されることが、国防や国家意識に悪影響を及ぼすと警告した。

2020年10月13日、ドイツ・ベルリン市ミッテ区に設置された少女像前で、設置許可取り消しに抗議する人々

また、彼は1980年代から移民政策に対する反対の声を上げており、労働力不足解消を名目にした移民受け入れが日本の文化や社会に与える影響を深く懸念していた。移民政策に関する著作や講演を通じて、彼はこの問題の危険性を訴え続けた。

さらに、西尾氏は日本文化の独自性やアイデンティティを守ることの重要性を強調し、著書『日本文化の行方』では現代日本文化が直面する課題について考察した。彼は、グローバル化の中で日本文化が失われる危機感を抱き、文化的自立の必要性を訴えた。

教育に関する提言も多く行い、特に道徳教育の重要性を力説した。彼は教育が国民のアイデンティティ形成に寄与することを重視し、歴史教育において正確な歴史認識を持つことが不可欠であるとし、教科書の内容見直しを求める声を上げた。また、教育現場における自由な議論を促進する必要性も主張した。

入管法改正に反対する人々

西尾氏はテレビやラジオ、講演会を通じて自身の考えを広く発信し、多くのメディアに取り上げられた。彼の発言は一般市民への啓蒙活動として機能し、彼の思想はより広範な層に浸透していった。西尾幹二氏の業績は、歴史教育や文化認識、教育改革において非常に重要な意義を持ち、彼の考え方は今後も議論され続けることは間違いない。彼の活動は、歴史を正しく理解し、文化を守るための大きな一歩と評価され、その影響は日本社会に深く根付いている。

先の動画は、西尾氏の精神を如実に現している。西尾氏の魂の声が多くの人達の心を打った瞬間である。私たちは、彼の精神を引き継ぎ、未来へとつなげていくべきである。日本の誇りを取り戻し、文化を守るために、彼の教えを胸に刻み、共に立ち上がろうではないか。 

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2024年11月1日金曜日

「ミサイルを前線へデリバリー」アメリカ海軍 洋上航行中の軍艦で史上初の“再装填”を実施―【私の論評】潜水艦とミサイル巡洋艦の海上補填能力:日本の海自が抱える課題と未来への展望

「ミサイルを前線へデリバリー」アメリカ海軍 洋上航行中の軍艦で史上初の“再装填”を実施


まとめ
  • アメリカ海軍が初めて洋上でミサイル巡洋艦「チョーシン」の垂直発射システムへの再装填を実施。
  • TRAM(海上移転再装填)装置を用いて、輸送艦「ワシントン・チェンバーズ」からミサイルを再装填。
  • この実験は迅速な船舶護衛を可能にし、海上での持続的な運用に向けた重要な進展とされている。

ミサイル巡洋艦「チョーシン」(右)と「ワシントン・チェンバース」

アメリカ海軍は2024年10月15日、初めて洋上でミサイル巡洋艦「チョーシン」の垂直発射システム(VLS)への再装填を実施した。

この実験は、商船を狙ったミサイル攻撃への対策として行われ、迅速な船舶護衛を可能にするためのTRAM(海上移転再装填)装置が使用された。

ミサイルコンテナを搭載した輸送艦「ワシントン・チェンバーズ」から、ケーブルと滑車を使って再装填を行ったのです。冷戦後に実用化が進まなかった技術が復活し、海軍長官はこの実験を海上での持続的な運用の重要なマイルストーンと位置づけている。

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【私の論評】潜水艦とミサイル巡洋艦の海上補填能力:日本の海自が抱える課題と未来への展望

まとめ
  • 米国のミサイル巡洋艦は初めて海上でのミサイル装填が可能になったが、米潜水艦は潜水母艦を用いて従来からこの能力を持っている。
  • 潜水母艦は潜水艦の再装填や物資補給、乗員交代を行い、作戦の持続性と柔軟性を高める重要な役割を果たしている。
  • 日本の海上自衛隊は、ミサイル巡洋艦の海上でのミサイル補填能力や潜水母艦を持っていない現状がある。
  • 日本の潜水艦は魚雷発射管を使用してミサイルを発射するが、将来的には垂直発射型のミサイル搭載が検討されている。
  • 日本は海洋国家として、潜水母艦やミサイル巡洋艦の能力強化が必要である。

米ミサイル巡洋艦(イージス艦)

米国のミサイル巡洋艦におけるミサイルの海上での装填は、従来できなかった。しかし、今回は初めてその実現が可能になったのだ。この進展は、潜水艦の運用においても重要な意味を持つ。実は、潜水艦は以前から海上での装填が可能であり、これが米潜水艦の強みとなっていたことは、当ブログでも何度か取り上げてきたテーマである。

だが、なぜ攻撃型原潜が圧倒的な強みを持つのか、明確には説明していなかったと思う。そこで、今回はその反省を踏まえ、詳しく解説しよう。

まず、従来のミサイル巡洋艦は海上でミサイルの装填ができない。これに対し、潜水艦には潜水母艦が存在し、ミサイルや魚雷の洋上での装填が可能だ。この事実は、ミサイル巡洋艦がミサイルを使い尽くすと、どれほど優れた索敵能力や破壊力を持っていても戦力として機能しなくなることを意味する。もちろん、魚雷や「5インチ(127mm)艦砲」といった防御兵器は搭載しているが、ミサイルの代替にはならない。

ミサイルを使い果たした場合、特に敵のミサイル飽和攻撃を受ければ、自らを守ることすら困難になる。この状況を回避するためにも、ミサイルの海上での装填は不可欠だ。

一方、米海軍には潜水母艦(Submarine Tender)が存在し、これは潜水艦の運用を支援するために特化した艦艇である。潜水母艦は、潜水艦が洋上で必要な補給や再装填を行う役割を果たしている。

潜水母艦の最大の機能の一つは、魚雷やミサイルの再装填である。潜水艦が作戦中にこれらの兵器を使用する際、通常は基地に戻って再装填を行う必要がある。しかし、潜水母艦が洋上で再装填を行うことで、潜水艦は任務を中断することなく、連続的に作戦を遂行できる。これにより、海上での戦略的な柔軟性が大幅に向上するのだ。

また、潜水母艦は食糧や水、燃料といった物資の補給も行う。潜水艦は長期間の任務を遂行するために、十分な物資を必要とする。潜水母艦がこれらを供給することで、潜水艦の任務継続能力が向上し、長期にわたる作戦の実施が可能となる。例えば、米海軍の「USS McKee」や「USS Holland」は、潜水艦に対して物資補給を行う能力を持っている。

手前の潜水艦に洋上補給するUSS McKee (AS-41)

さらに、潜水母艦は乗員の交代も可能だ。潜水艦は長時間の潜航任務を行うため、乗員の疲労が蓄積しやすい。潜水母艦が交代を行うことで、乗員の疲労を軽減し、戦闘能力を維持できる。これにより、潜水艦は常に最適な状態で任務を遂行できるのだ。

このように、潜水母艦は潜水艦の運用を支援し、海上での作戦能力を向上させるための重要な艦艇である。再装填、物資補給、人員交代の機能を通じて、アメリカ海軍は潜水艦の戦略的役割を最大限に活かしている。これにより、潜水艦はより効果的に、持続的に作戦を展開することが可能となる。

一方、日本の海上自衛隊(海自)のミサイル巡洋艦は、現時点で洋上でのミサイル補填を実施していない。「いずも」型や「むらさめ」型の艦艇は先進的なミサイルシステムを搭載しているが、洋上での再装填能力は持っていない。ミサイルが尽きた場合、陸上基地や補給艦に戻って再装填を行う必要があり、これが海自の運用スタイルに影響を与えている。

潜水母艦についても、日本の海自は保有していない。ただし、潜水艦の支援能力を持つ艦艇として「潜水艦支援艦」や「補給艦」が存在し、これらは物資補給や人員交代を行う役割を担っている。

海自の潜水艦救難母艦「ちよだ」

現在、日本の潜水艦は主に魚雷発射管を利用してミサイルを発射しているが、これにはいくつかの制約がある。魚雷発射管から発射されるミサイルは艦対艦ミサイルや対地ミサイルが中心で、発射管のサイズに制約されるため、威力や種類に限界がある。また、ミサイルは空気中での飛行を前提としているため、水中からの発射に適した設計が求められ、性能にも影響が出る。

しかし、将来的には垂直発射型のミサイルを搭載できる潜水艦の構築が検討されており、これにより攻撃能力や運用の柔軟性が向上することが期待されている。

今のところ、日本の海自がミサイル巡洋艦における洋上補填能力や潜水母艦の導入について具体的な計画を発表しているわけではない。しかし、海自は近年、海上での持続的な運用能力を強化するための取り組みを進めている。

米海軍の垂直発射型のミサイルの発射管

ミサイル巡洋艦の洋上補填能力については、米海軍など他国の事例を参考にする可能性があるが、具体的な導入計画は確認されていない。また、潜水母艦についても、現在は潜水艦の支援を行う補給艦や支援艦が存在するが、専用艦艇の建造計画は発表されていない。

しかし、日本の安全保障環境の変化や技術の進展に伴い、今後の運用方針が見直される可能性はある。海自は国際的な連携や自衛能力の向上を図っているため、将来的にこれらの能力の導入が検討されることも考えられる。

日本は海洋国家であり、海洋での強みを失えば、安全保障上の脅威が増すことになる。かつての帝国海軍には潜水母艦が存在した。やはり、海自もこれを持つべきだ。また、ミサイル巡洋艦の海上でのミサイル補填も可能にする必要がある。 

これらの情報を参考にしました。

[1] Yahoo!ニュース - 「ミサイルを前線へデリバリー」アメリカ海軍 洋上航行中の ... (https://news.yahoo.co.jp/articles/fe7916f4f33cffea9916bcd268bd6b1f9ea8ff22)
[2] 防衛省 情報検索サービス - アジア太平洋地域の軍事情勢 第3節 (http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2003/2003/pdf/15130000.pdf)
[3] uMap - OpenStreetMap - ウクライナ戦争 地図 | |世界情勢 (https://umap.openstreetmap.fr/tr/map/map_906231)
[4] 日本安全保障戦略研究所 SSRI - ウクライナ情勢 2024 (https://www.ssri-j.com/MediaReport/BlackSea/Ukrine_2024.html

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2024年10月31日木曜日

西側諸国、北朝鮮を甘く見るなら我が身の危険を覚悟すべし――ギデオン・ラックマン―【私の論評】北朝鮮のウクライナ派兵とロシア連携がもたらす脅威 - 日本が取るべき対策とは

西側諸国、北朝鮮を甘く見るなら我が身の危険を覚悟すべし――ギデオン・ラックマン

(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年10月29日付)

まとめ
  • ウクライナのゼレンスキー大統領は、北朝鮮兵士がロシア・ウクライナ紛争に参加する可能性を懸念している。
  • 西側諸国は、ロシア、北朝鮮、イラン、中国から成る敵対国の協力が強まっていることに警鐘を鳴らしている。
  • 金正恩は米国との関係改善を放棄し、韓国を敵視し、戦争への突入を決断したと専門家が警告している。
  • 北朝鮮は130万人の現役軍人を持ち、核兵器の開発に成功しており、その軍事力は過小評価されている。
  • 西側の選択を迫られている。ロシアが北朝鮮の支援を受けてウクライナを制圧するのを許すか、対抗措置を講じるかの難しい選択が迫られている。

ゼレンスキー大統領

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、北朝鮮兵士がロシア・ウクライナ紛争に参加する可能性について強い懸念を表明しており、これが西側諸国にとって新たな安全保障上の脅威となると警告している。西側の安全保障担当高官たちは、数カ月にわたり、ロシア、北朝鮮、イラン、中国から成る「敵対国の枢軸」が協力を深めていることに警鐘を鳴らしてきた。特に北朝鮮は、米国との関係改善を放棄し、韓国を和解不能な敵国として明確に位置付ける方針を採っている。

 北朝鮮問題の専門家たちは、金正恩が戦争に突入する戦略的な決断を既に下したと警告しており、彼の最近の行動は、北朝鮮が保有する核弾頭を軍事的解決策として使用する可能性を示唆している。専門家の中には、北朝鮮が持つ核兵器庫が50発から60発に及ぶとする見解もあり、これが地域の安定に与える影響は計り知れない。また、北朝鮮はロシアに対して大量の武器供給を行い、ウクライナとの戦争におけるロシアの優位性を高める役割を果たしている。

 金正恩はロシアからの技術移転や資金を期待しており、それが将来的に朝鮮半島における紛争に対する準備である可能性も指摘されている。北朝鮮の軍事力は過小評価されがちだが、130万人の現役軍人を擁し、世界第4位の規模を誇る。ただし、その大多数は訓練不足の新兵であり、プーチン大統領はこうした兵士を「ミートグラインダー」作戦に利用することで、戦局を有利に進めることができると考えている。

 さらに、この状況は米国やEU、韓国にとって極めて困難な課題を提示している。これまで彼らは、ウクライナと朝鮮半島の双方でエスカレーションを避ける努力をしてきたが、今後は選択を迫られる可能性が高まっている。具体的には、ロシアが北朝鮮の支援を受けてウクライナを制圧するのを許すのか、それとも敵対国との対峙において、ウクライナへの支援を強化し、リスクを取る意欲を増すのかという難しい判断をしなければならない。

 このように、北朝鮮の動向は国際情勢における新たな複雑性をもたらしており、ウクライナと朝鮮半島の情勢は今後さらに緊迫化する可能性が高いと考えられている。このような背景を理解することは、今後の国際安全保障戦略を考える上で極めて重要だ。

 上の記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】北朝鮮のウクライナ派兵とロシア連携がもたらす脅威 - 日本が取るべき対策とは

まとめ
  • 防衛省は、本日北朝鮮がICBM級ミサイルを発射し、日本のEEZ外の日本海に落下したと発表した。
  • 北朝鮮の事実上のウクライナ派兵は、単なる派兵以上の大きな脅威となり得ることを認識すべきである。
  • 経済悪化や食糧不足、内部の社会不安が北朝鮮の体制を弱体化させており、国際的な孤立も影響している。
  • ウクライナ戦争を背景に、北朝鮮はロシアとの関係を強化し、軍事技術の向上を図る機会を得ている。連携強化された北とロシアの不安定化は、さらに大きな脅威になり得る。
  • 日本は米国や韓国との安全保障協力を強化し、防衛力の向上や国際的な外交努力を進める必要がある。

北朝鮮のミサイル発射を伝えるテレビ画面

防衛省は31日午前、北朝鮮からICBM=大陸間弾道ミサイル級のミサイルが発射され、北海道の奥尻島の西およそ200キロの日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したとみられると発表した。

飛行時間はこれまでで最も長く、防衛省は新型のICBMだったかどうかも含め詳しい分析を進めている。

北朝鮮の脅威は、ミサイルだけではなく、事実上のウクライナ派兵もある。これは単なる派兵以上のもっと大きな脅威になり得る。


北朝鮮の事実上のウクライナ派兵については、このブログでも既に取り上げている。そのリンクを以下に記載する。
詳細はこの記事を参照してほしいが、以下に結論部分を引用する。
北朝鮮はこれまで中国からの経済支援を受けてきたが、一方で中国の干渉や浸透を強く警戒している。金正恩は金王朝を守るため、中国の介入を嫌い、親中派の金正男やその後見人であった張成沢を粛清するなど、国内統制に腐心してきた。そのため、金正恩はロシアとの友好関係を模索しており、2019年にはロシアを訪問したものの、目ぼしい成果は得られなかった。

ロシア・ハサン駅に到着した正恩氏=2019年4月24日

しかし、ウクライナ戦争が状況を一変させた。戦局が長期化する中、ロシアは北朝鮮から砲弾やミサイルを求めるようになり、金正恩はこれを好機と捉えた。ロシアとの関係を強化し、核技術やミサイル技術の向上を図ることで、中国の影響力を削ぐチャンスが見えてきた。中短距離ミサイルの技術向上により、韓国、米国、日本を含む近隣諸国への対抗手段も強化できると考えたようだ。しかし、自国の命運をウクライナ戦争に賭け、未だに戦争目的を果たせないどころか、その目的すら曖昧になっているロシアに賭けざるを得ない北朝鮮の体制は、実際にはかなり弱体化していると見るのが妥当だ。
北朝鮮の体制が最近弱体化している理由はいくつかある。まず、経済状況の悪化が挙げられる。コロナウイルスの影響で国境が閉鎖され、貿易が減少し、食糧不足が深刻化している。国連の報告によれば、2023年には約410万人が食糧援助を必要としており、これは人口の約16%に相当する。また、北朝鮮の経済成長率は2020年に-4.5%、2021年には-0.1%と、連続してマイナス成長を記録している。

さらに、内部の社会不安が高まっている。食糧不足や物価上昇により、民衆の不満が増し、抗議行動が発生している。2023年には地方で食糧を求める抗議が報告され、これが体制への信頼を揺るがす要因となっている。

また、国際的な孤立も影響している。北朝鮮は核開発による制裁を受け、外貨収入が制限されている。特に、2023年には国連の制裁決議が強化され、石油の輸入制限や貿易の制約が厳しくなっている。加えて、指導部の不安定さも懸念されている。経済政策の失敗に対する批判が高まり、幹部の粛清が行われている。例えば、2022年には経済政策を担当していた幹部が処罰されたとの報道があり、これは権力闘争の一環とされている。

最後に、外部からの圧力も増加している。特に米国や韓国との緊張が続く中、北朝鮮は軍事的挑発を繰り返しているが、これが逆に国際社会の圧力を強めている。韓国は防衛力を強化し、米国との共同演習を拡大する動きを見せており、北朝鮮にとっての脅威が増している。

これらの要因が重なり、北朝鮮の体制は脆弱化の兆しを見せており、さらなる不安定化が懸念されている。元々ロシアからの支援を期待していた金正恩はますますロシアに傾倒し、ウクライナ戦争を継続するプーチンは、武器庫、さらには「ミートグラインダー」作戦における兵力源としての北朝鮮の役割を再認識したと言える。

プーチン

ロシアと北朝鮮の連携が強まることで、両国の不安定化は個々の不安定化よりもさらに脅威となる可能性がある。軍事協力の強化により、北朝鮮の軍事力が増大し、韓国や日本、米国に対する脅威が高まる。2023年の報告では、北朝鮮がロシアからの武器供与を受ける可能性が指摘されている。

さらに、ウクライナ戦争は地域の安全保障に影響を与えている。ロシアの軍事行動が国際秩序に対する挑戦と見なされる中、北朝鮮は核開発やミサイル発射を強化する機会を得るかもしれない。国連の報告によると、ウクライナ戦争の影響でロシアは北朝鮮との関係を強化し、武器取引が進む可能性があるとされている。

このように、ロシアと北朝鮮の連携が進むことで、地域の不安定化が加速し、ウクライナ戦争が再び朝鮮戦争のような脅威を引き起こす可能性が高まっている。各国はこの状況を注視し、適切に対応するための戦略を見直す必要がある。

ロシアと北朝鮮の連携が進む中で、日本が取るべき具体的な対策についても考えるべきだ。まず、日本は米国や韓国との安全保障協力を一層強化する必要がある。具体的には、共同軍事演習や情報共有を通じて、北朝鮮の動向に対する備えを強化し、迅速な対応が可能な体制を構築することが重要である。

次に、日本は防衛力の向上を図るべきだ。新たな脅威に対応するため、自衛隊の能力を向上させ、より効果的なミサイル防衛システムの導入や、サイバーセキュリティの強化を検討することが求められる。

さらに、国際的な外交努力にも積極的に関与し、北朝鮮に対する制裁や国際的な圧力の維持を支持することが重要である。国連や多国間の枠組みを通じて、北朝鮮の核開発や軍事行動に対する国際的な合意を形成する努力を強化する必要がある。最後に、北朝鮮の人権問題にも目を向け、国際社会と連携して人権状況の改善を促進する姿勢を示すことが、日本の国際的な立場を強化する上で有益である。

これは、無論北の国内の問題もそうだが、ウクライナに送られる北の兵士達の人権問題もある。北朝鮮が正規軍としてウクライナ戦争に参加するのではなく、兵士をロシアに送り込むことは、ロシアの「弾除け」としての役割をさせる可能性が高い。

この行動は、兵士たちの生命を著しく危険にさらすものであり、明らかに人権侵害と捉えられるだろう。特に、北朝鮮の軍人は自由意志で参加することが少なく、強制的な動員が行われることが多いため、彼らの人権が著しく侵害されることになる。国際社会は、このような状況に対して強い懸念を持つべきだ。

これらの対策を講じることで、日本は地域の安定に寄与し、ロシアと北朝鮮の連携による脅威に効果的に対応できる体制を整えることができる。日本の未来は、今まさにこの選択にかかっているのだ。 

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2024年10月30日水曜日

【解説】首相は誰に? 1回目の投票で過半数「233議席」獲得へ…国会議員の間に浮上する“3つの案”とは?―【私の論評】4つ目の案自民党総裁選の可能性とは?石破総裁辞任と高市氏新総裁待望論の背景と展望

【解説】首相は誰に? 1回目の投票で過半数「233議席」獲得へ…国会議員の間に浮上する“3つの案”とは

まとめ
  • 特別国会の首相指名選挙に向け、過半数を目指す3つの案が検討されている。
  • 1つ目は「与党+一本釣り」で、自民・公明党が野党無所属議員を取り込み、石破首相続投を狙う案。
  • 2つ目は「野党大連合」で、複数野党が協力して立憲民主党の野田氏を首相に推す案。
  • 3つ目は「与党+国民民主党」で、国民民主党の玉木氏を首相に据える案が浮上している。
  • 現段階での実現可能性は不明であり、決選投票に持ち込まれる可能性が高い。
日テレの報道

 来る特別国会での首相指名選挙をめぐり、与党が過半数を割る中で、政界に緊張が走っていることが、日テレニューで報道された。日テレでは、11月11日に召集される見込みの特別国会で行われる首相指名選挙において、1回目の投票から過半数の議席を獲得するための3つの案が浮上している。

 第一の案は「与党+一本釣り」で石破首相の続投を図るものだ。自民党と公明党の議席に加え、非公認や無所属の議員、さらには野党議員に個別に働きかけて233議席の確保を目指すというものだ。

 第二の案は「野党の大連合」で、立憲民主党を中心に維新、国民民主党、れいわ新選組、共産党、参政党、社民党といった野党勢力を結集させ、235議席を確保するというものだ。この場合、最大野党である立憲民主党の野田代表が首相に就任する可能性が高い。

 そして第三の案として、「与党+国民民主党」で国民民主党の玉木代表を首相に据えるという、いわゆる「ウルトラC」的な案も密かに浮上している。この案が実現すれば243議席となり、過半数を確保できる。しかし、玉木代表は現在、連立入りを否定しており、この提案を受け入れるかどうかは「究極の選択」となるだろう。

 これらの案は、1994年に自民党が長年対立してきた社会党と手を組み、村山富市氏を首相に担ぎ上げた過去の例を想起させる。しかし、現時点ではいずれの案も実現可能性は不確実でだ。そのため、各党がノーガードで首相指名選挙に臨み、結果として決選投票に持ち込まれる可能性が高い。

 この状況下で、国民民主党の玉木代表の動向が注目されている。玉木代表は現在、石破内閣との連立や閣僚就任を否定しているが、首相の座を提示された場合、政策実現の絶好の機会と批判を浴びるリスクの間で難しい判断を迫られることになるだろう。

 最終的な結果は依然として不透明であり、特別国会までの間に様々な政治的駆け引きや交渉が行われると予想される。この首相指名選挙の行方は、日本の政治の今後を大きく左右する可能性があり、国民の関心も高まっている。政治家たちの決断と、それに伴う政局の展開が注目されるところだ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。


【私の論評】4つ目の案
自民党総裁選の可能性とは?石破総裁辞任と高市氏新総裁待望論の背景と展望

まとめ
  • 自民党内の不満が増大し、石破総裁の辞任を求める声が強まっている。
  • 党内保守派は、石破総裁の辞任を求めるため、両院議員総会を開催するのは現実的な案である。
  • 過去の敗北時には、総裁が責任を取って辞任するのが自民党の慣例である。
  • 石破氏辞任後に、総裁選が行われれば、党内保守層の支持を得る高市氏が有力候補として浮上する可能性が高い。
  • 高市氏が総裁になれば、自民党内外の支持基盤強化や、経済・外交・安全保障政策の推進につながる可能性が高まる。

過去の自民党両議院総会

上の記事の三つの案以外に、第四の案が存在する。それは自民党が両院議員総会を開き、石破総裁を辞任に追い込むというものだ。これは単なる勢力争いにとどまらず、党内の存亡をかけた試練である。総裁辞任後には総裁選が行われ、新たな総裁が選出される。その後、首班指名選挙に臨む形になるが、この案はマスコミや自民党リベラル派議員が最も忌避される案だろう。

だが、彼らがどう考えようと、党内の保守派や選挙戦略上の危機感を持つ議員たちにとって、これこそが「選択肢の一つ」として現実味を帯びつつあるのである。

そもそも、石破総裁が辞任を表明していないこと自体が、党内の反発と不満を増幅させている。自民党の歴史を振り返っても、大敗を喫した総裁が責任を取って辞任することは、ある種の伝統であり、例外はない。

2012年、衆院選で民主党が歴史的な敗北を喫した際、当時の代表であった野田佳彦氏は潔く辞任した。この時の潔い決断は、政治の世界で責任を取るという厳格な姿勢を象徴していた。

野田佳彦氏

同じく自民党においても2007年、参院選で大敗を喫した安倍晋三総理が辞任し、その直後には福田康夫総理が支持率低迷を受けて辞任を決意している。また、2021年においては、菅義偉総理が衆院選で自民党の議席を大幅に減少させたことを受け、事実上の辞任を表明。岸田総理も次期総裁選に出馬しないと発表し、総裁交代の波が続いている。

こうした過去の流れを見れば、今回もまた、党内で石破総裁の辞任を求める声が高まるのは当然の帰結である。

さらに、2025年の参院選が迫る中、特に参院議員たちは石破総裁のもとで戦うことに不安を抱いている。国民の間では支持率低迷に対する不満が根強く、このままでは選挙戦で大敗するリスクがあるため、新たなリーダーシップを求める声が党内で強まっているのだ。

両院議員総会は、こうした危機的状況に対応するために、党内の重要な意思決定の場であり、必要に応じて臨時に開催されることもある。過去の選挙結果を受けて緊急の対応を行い、迅速に方向性を定める場としても機能してきた。万が一、今回石破総裁辞任が両院議員総会で決議されるならば、それは前例のない一大事であり、党史に刻まれる出来事となろう。

仮に総裁選が行われるとすれば、前回次点であった高市氏が有力候補として浮上するが、彼女の勝利が確実であるとは言えない。しかし、もし高市氏が総裁となれば、自民党の内外での支持基盤が強化される可能性が高い。

高市氏は今年の総裁選においても第一回投票で多くの票を得ており、党内の保守層からは強い支持を受けている。また、高市氏は自民党初の女性総裁候補として女性の政治参加を象徴する存在である。これにより、女性有権者の支持を集めるのみならず、党内における女性活躍の推進という課題にも応えられるという利点があるのだ。


高市氏は経済政策においても、積極財政と金融緩和を基盤とした成長戦略が打ち出されている。経済の低迷に苦しむ現状において、こうした政策は日本経済の復活の糸口となるだろう。実際、高市氏は経済政策において「デフレからの脱却」を掲げており、そのための具体策を提示してきた。

たとえば、財政支出の拡大と同時に地域経済の活性化に力を入れることで、都市と地方の格差解消にもつながるとされる。加えて、彼女の外交・安全保障政策も堅実であり、台湾有事や北朝鮮の脅威に対する対策が盛り込まれている。これらの対策は、アジア地域の安全保障情勢を踏まえたものであり、日米同盟を基軸とした防衛強化にも資するものである。このような高市氏の政策の堅実さは、国民の安全を第一に考えたものであり、幅広い層からの支持を集めやすい。

さらに、高市氏のリーダーシップの下であれば、国民民主党との連携もスムーズに進む可能性がある。国民民主党もまた積極財政を掲げており、経済政策において方向性が一致する部分が多い。これにより、連立政権を組む際にも、両党が協調して政策実行に向かうことが期待される。

高市氏が新総裁となることで、自民党内の結束が強化されるのみならず、新たな支持層の開拓にもつながる。自民党は今、大きな転機を迎えているが、この歴史的な場面で、高市氏というリーダーを迎えることで、真の変革を果たす機会を得ることができるのだ。

結論として、高市氏を総裁に迎えることは、経済再生から外交・安全保障の安定まで、多岐にわたる政策課題に対応する上で最も効果的である。経済、外交、安全保障において確かなビジョンと実行力を持つ彼女こそが、党内外から信頼され、次世代のリーダーとして国を牽引するにふさわしい存在であろう。

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