中国の独善的な海洋開発に、日本がついに反撃に転じた。中国が東シナ海の日中中間線の自国側海域で、海洋プラットホームを急速に増設させている問題で、日本政府は22日、航空写真や地図などの公開に踏み切ったのだ。日中合意に反する資源強奪の疑惑があるうえ、軍事基地化も懸念される安全保障上の緊急事態といえる。日米連携による警戒強化や、資源開発が求められそうだ。
「指摘はまったく当たらない。建設的な問題解決を期待したい」
菅義偉官房長官は23日午前の記者会見で、中国外務省が、日本の写真公開を批判したことを受け、こう反論した。菅氏は前日の会見で、中国の南シナ海の岩礁を埋め立てに続く、東シナ海での権益強化を「極めて遺憾だ」と猛批判していた。
中国が2013年6月以降に新設したプラットホームや土台は12基に上り、既設の4基を加えて16基。うち5基はこの1年間で増設されていた。
東シナ海のガス田は、地下で日中中間線の両側に広がっている可能性が高い。このため、日中両政府は08年6月、ガス田の共同開発で合意していたが、中国によるプラットホーム増設は合意違反といえる。これを放置すれば、日本の資源が奪われる恐れがある。
加えて、プラットホーム上に、レーダーや水中音波探知機(ソナー)、弾道ミサイル発射装置などが配備されれば、沖縄本島や南西諸島すべてが射程内に入る。ソ連が1962年、キューバにミサイルを持ち込もうとした「キューバ危機」に匹敵する、わが国の安全保障上の危機といえる。
安倍晋三首相は昨年11月、北京で行った習近平国家主席との日中首脳会談で、この問題を強く抗議した。だが、中国が共同開発の交渉に応じず、増設を加速化させる姿勢を続けたため、中国に自制を促すためにも情報公開に踏み切った。
現在、国会で安全保障関連法案が審議されているなか、国民に日本を取りまく安全保障環境の大きな変化を理解してもらうとともに、浮世離れした安保議論を続ける一部野党を目覚めさせる意図もあったとみられる。
これに対し、中国外務省の陸慷報道官は22日、「日本のやり方はことさらに対立をつくる意図があり、両国の関係改善に何ら建設的な意義を持たない」と反発した。盗人猛々しいと言わざるを得ない。
ラッセル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は21日、ワシントンで講演し、中国の南シナ海などでの軍事的拡張路線に対し、「(米中間に)深刻な緊張を引き起こしている」と警告。米国務省のカービー報道官は22日、中国の東シナ海でのプラットホーム増設に「地域を不安定にする活動は停止すべきだ」と中国を批判し、「平和的かつ外交的に解決するべきだ」と語った。
日本は今後、どうすべきか。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「日本は戦略的に動くべきだ。安全保障だけでなく、ガス田開発にも米国を巻き込むことだ」といい、続けた。
「日米で東シナ海の警戒・監視活動を強化するのは当然だ。加えて、日本側海域のガス田鉱区を米国企業に開放してはどうか。米エクソンモービルなどは以前、関心を持っていたはず。米国と連携すれば中国は動きづらくなる。安全保障と経済が一体化した、集団的安全保障ともいえる」
【私の論評】中国による軍事的脅威はキューバ危機に匹敵するものになる可能性も(゚д゚)!
日本のマスコミや、多くの政治家、官僚などほとんどこの問題には臭いものに蓋という感じて、ほとんど話題にしてきませんでしたが、これは尖閣問題と同じく日本にとって脅威です。
南シナ海のスプラトリー環礁などの中国による強引な埋め立ては、誰が考えても不自然だし、軍事転用は明白なので、アメリカはこれに反発し警告を出しましたし、日本でも報道され中国の脅威として話題ともなりました。
スプラトリー環礁の中国による埋め立て |
しかし、中国が東シナ海の日中中間線の自国側海域で、海洋プラットホームを急速に増設させていることに関しては、日本国内でも当初は報道されましたが、その後はほとんど報道されなくなりました。
しかし、これは日本にとって、上の記事でも述べているように、資源問題としても、安全保障問題としても、見逃すことのできない脅威です。
ところが、日本では中国のこの2つの脅威のうち、資源問題としてとりあげられることが多いようですし、それも中国側が報道するように、プラットフォームが日本の領海の外に位置しているため、その意味するところが良く理解されていないようです。
上の記事にも一部指摘されていますが、東シナ海のガス田は、地下で日中中間線の両側に広がっている可能性が高いというか、過去の調査では実際にそのようになっているからこそ、当初は日中共同開発の話をすすめていたわけです。
中国は、プラットフォームをストローにたとえると、ストローを自分の領域に刺して、あたかも自分の領域のガスだけ吸い取るような形にしてみせて、その実ストローを水面下では横に伸ばして、日本の領域の分まで吸い取っている形になります。当然このようなことは、日本は承服できないわけです。
長いストローでオレンジジュースを飲む人 |
そうして、もう一つの安全保障上の危機については、日本ではメディアも、政治家や官僚などもほとんど言及しませんが、本来は資源問題よりもこちらのほうが余程大きな問題です。
スプラトリー諸島では、環礁を無理やり埋め立てて陸地を拡大して、滑走路を作ってみたり、大砲を揚陸してみたりで、これはどうみても軍事利用であることが誰の目にもわかります。しかし、東シナ海の日中中間線あたりは、水深が深く、環礁などは存在せず、ここは埋め立てることはできないので、ガス掘削のプラットフォームを構築しています。
しかし、このブラットフォームでも、ヘリポートは設置できるし、その他武装も可能です。多数のプラットフォームにヘリの燃料を備蓄すれば、ここを中継基地として、中国本土から日本の沖縄あたりにヘリを飛ばして、また中国に戻ることもできます。
さらに、ここに実際に核ミサイルなど設置されたりすれば、本当にキューバ危機なみの危機に陥ることになります。
そんなことをさせないためにも、上の記事で藤井厳喜氏が主張していたように、日米で東シナ海の警戒・監視活動を強化するのは当然ですし、加えて、日本側海域のガス田鉱区を米国企業に開放すべきものと思います。
それにしても、以前のこのブロクでは、安保法制の議論においては、仮定の話や、ホルムズ海峡の話などをするよりも、具体的な今そこにある危機である中国の脅威についてもっと語るべきであるとの主張を掲載しましたが、政府もどうやらその方向に転じたようです。
しかし、まだまだ、甘いです。中国に対する抗議でも、日本国内においても資源問題とともに安全保障問題の側面ももっとはっきりと、わかりやすく訴えるべきものと思います。核ミサイルを配備されたら、日本と世界にとってキューバ危機に匹敵するものにります。
キューバ危機 ソ連の輸送船を監視する米航空機 |
それに、中国が侵略国家であることも訴えるべきです。チベット自治区、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区などは、建国時の中国の領土ではなく、建国してから後に侵略して中国の自治区にしたことなど、はっきりと訴えるべきです。その結果国交断絶にでもなれば、今のような中途半端な状況よりも、そちらのほうが良いと思います。
そうなれば、中国は困るかもしれませんが、日本への影響は軽微です。もし甚大な影響があるとしても、今となってはそれは中国幻想に酔っている一部の愚か者だけが影響を被るのであって、多くの人々が思っているほど、日本は中国にはほとんど依存していません。
むしろ、中国のほうが日本にかなり依存しています。ソ連が崩壊したときに、日本ではほとんど影響がありませんでした。中国が崩壊したとしても、日本の大方の人にはほとんど影響がありません。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
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戦後左翼、リベラルは、結局終戦直後から何も変わっておらず、デジャブーのようです。そうして、それがまともな安保論議の妨げになっています。そうして、中国の脅威には目をつぶっています。中国の脅威を実感していただくための書籍を以下に三冊チョイスさせていただきました。
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