2018年6月17日日曜日

【田村秀男のお金は知っている】国連制裁ルールを守れ 強欲な対北朝鮮投資家に警告せよ―【私の論評】無制限の対北投資は、北を小中国にするという結果を招くことに(゚д゚)!

【田村秀男のお金は知っている】国連制裁ルールを守れ 強欲な対北朝鮮投資家に警告せよ

 「今や世界全体はお前がバカだと知ることになったぞ」-。シンガポール在住の著名投資家、ジム・ロジャース氏は12日、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が握手するや、ただちに日本の市民団体「アジア調査機構」の加藤健さんに対して、子供じみた電子メールを送り付けてきた。(夕刊フジ)

アジア調査機構の加藤健代表

 加藤さんは長年にわたって対北朝鮮国連制裁破りを調べ、各国政府や議会、国連に告発活動を続けてきた。対北投資を推奨するロジャース氏については、国連安保理、米財務省、さらに米上下院議員百数十人に不当だと訴えた。加藤さんは本人にも直接、警告した。

 ロジャース氏はかなりのプレッシャーを感じていたようだ。米朝首脳が「非核化で合意」したなら、今後は国際社会の対北経済制裁が緩和され、西側からの対北投資のチャンスになる。どうだ、俺の投資判断は正しい、とうれしさ爆発というわけだ。

ジム・ロジャーズ 写真はブログ管理人 挿入

 軍事国家北朝鮮の国民生活は犠牲にされ、インフラ、産業設備も老朽化が激しい。しかし、戦前に日本の朝鮮総督府が調べたデータによると、北朝鮮の鉱物資源は極めて豊富である。金、ウランなど希少金属にも恵まれている。それに着目した有象無象の投資家や企業が対北投資のチャンスを狙ってきた。

 ロジャース氏の他にもっと「大物」の仕掛け人が西側にいる。最近は鳴りを潜めているが、英国の投資家、コリン・マクアスキル氏が代表例だ。英海軍情報将校上がりの同氏は1970年代から北朝鮮産の金塊をロンドンで商い、87年には対外債務不履行を引き起こした北朝鮮の代理人となって西側民間銀行と交渉した。2006年からは北朝鮮の隠し口座のあるマカオの銀行BDAを対象とする米国の金融制裁解除に向けマカオとワシントンの当局と交渉、解決した。

 08年にブッシュ政権(当時)が北に対するテロ支援国家指定解除に踏み切ると、大型の対北投資ファンドを準備したが、その後の情勢緊迫化とともに休眠に追い込まれた。昨年には韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に接触を試みるなど、活動再開の様子だ。

 米欧系投資ファンドに対し、対北投資の主役の座を狙うのは韓国と中国だろう。中国は、地政学的利益の点からも北への開発投資での主導権に固執する。グラフは中国の対北投資と貿易の推移だが、投資面では12年をピークに急減している。金正恩氏が亡父、金正日(キム・ジョンイル)氏の権力を継承したのが11年末で、13年12月には中国資本の導入に熱心だった叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を粛清した。


 米朝首脳会談開催決定後、中国の習近平国家主席が停滞してきた対北投資の再活性化をめざすとの期待が中朝国境地帯に高まっている。遼寧省の丹東市の不動産価格はこの数カ月で2倍になったという。

 核・ミサイルばかりでなく、横田めぐみさんら拉致問題の全面解決を最優先すべき日本は毅然として、ムード先行の強欲な対北投資・貿易には、国連制裁ルール厳守を求めるべきだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】無制限の対北投資は、北を小中国にするという結果を招くことに(゚д゚)!

この記事の冒頭の田村氏の記事のように、このブログでも昨日無制限に北に投資をすることを懸念する記事を掲載しました。

その懸念とは、民間だろうが、日本政府のものであろうが、無制限に投資を続ければ、北は拉致問題はもとより、核廃棄やその他の約束を破る可能性があることです。

さらにその先にあるのは、民主化も、政治経済の分離も、法治国家化も不十分なまま、国家資本主義的に経済だけが肥大してしまうことです。

そうして、これは人口等の規模は違うものの、現在の中国のような体制です。まかり間違って、北がまともな体制をとらないまま、韓国なみの経済をもしくはそれを上回るような経済を身につければ、それはまさに小中国です。

これは、全く荒唐無稽な話ということもないと思います。半島の歴史を振り返ると、北朝鮮と、韓国が独立したばかりの頃は、北のほうが多く日本の産業基盤を引き継ついだ一方、韓国の当時の主要産業は農業であり、北のほうがGDPは大きかったということがあります。

韓国のほうが、北の経済を上回るようになったのは、1970年代からのことです。そうして、これは日韓基本条約による日本からの韓国への大規模な支援によるものが大きいです。さらに、北には鉱物資源がかなり豊富です。このようなことから、北が再び韓国の経済を上回るということはあり得ることです。

そうして、その小中国は現在の中国のようなことを実行する可能性もあります。

中国の場合は、広大な陸に囲まれていてまわりにたまたま蒙古や東トルキスタン、チベットなどの軍事的には強くない国々があったので、これらの国々の領内に侵攻しました。

北の場合は、北は中国に、南には韓国が控えており、西東は海です。そうなると、はやい時期から、海洋進出をする可能性があります。まずは、延坪(ヨンピョン)島砲撃事件で有名になった延坪島に侵攻するかもしれません。

延坪(ヨンピョン)島砲撃事件

その後は日本の南西諸島や、台湾などにも目をつけるかもしれません。そうすると、日本は小中国による第二の尖閣列島事件に巻き込まれるかもしれません。また、台湾本島は無理にしても、台湾の領海内には金門砲戦でも有名になった金門島などの島々もあります。

ただし、このようなことが起こったとしても、無論来年や再来年ということではなく、10年後かもっと先ということになるかもしれません。

その頃には、現在の中国は、米国からの貿易戦争や、国内経済の低迷で、かなり力を落としていて、それでも台湾は中国の一部と主張していても、結局何もできず、北の好き放題にされるということもあり得ます。

北朝鮮に無制限に民間企業などが、投資を実施するということにでもなれば、いずれこのようなことになりかねないのです。

とにかく、何が何でも半島に小中国ができることは、避けなければなりません。これを防ぐためには、北が経済成長をしたいというのなら、昨日も述べたように、まずは北が自身で民主化、経済と政治の分離、法治国家化を実施することにより、中間層の社会活動を活発化させる必要があります。

そこである程度経済を自力で大きくすることができれば、海外からの北への投資もある程度自由にできるようにするというような措置が必要です。

しかし、そのようなことをすれば、北の社会は、現在の金王朝体制とは相容れない社会となります。そうなれば、金正恩体制は崩壊せざるを得ません。国民が許せば、イギリス王朝のような形で残る可能性もありますが、歴史の短い金王朝にはそれは困難であると考えられます。おそらくは、ソ連への亡命ということにかもしれません。

現在は、19世紀ではなく、21世紀なのですから、これは当然といえば当然なのかもしれません。

とにかく、現在の金王朝体制は、金正恩が米国側につき、米国の対中国戦略の駒として北が動いている限りは暫くは持ちこたえることでしょう。米国から見れば、毒を持って毒を制するということです。

金王朝を象徴する金日成と金正日の巨大像

それにしてもそのまま続くことはなく、数十年のスパンでみれば、必ず崩壊することになります。

現在の米国においては、過去の米国の対中国戦略は間違いであったことが明らかになっています。過去の戦略の前提は、中国が経済発展さえすれば、いずれ米国や他の先進国なみに、民主化、政治と経済の分離、法治国家化するであろうというものでした。しかし、それは、数十年の年月を経ても成就しませんでした。

そうして、それは今日ではすっかり間違いであったことが明らかになりました。現在の中国は、南シナ海を実効支配したり、一対一路で中国の価値観を世界におしつけようとしたりで、米国の価値観と真っ向から対決するようになりました。

こうした苦い経験を持っている米国政府は、北朝鮮が小中国になることは絶対に許容しないでしょう。比較的はやい段階で、北にある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を迫ることになるでしょう。

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