2019年1月6日日曜日

本物のシビリアン・コントロール 「マティス氏退任」は米の民主主義が健全な証拠 ―【私の論評】トランプ大統領は正真正銘のリアリスト(゚д゚)!

本物のシビリアン・コントロール 「マティス氏退任」は米の民主主義が健全な証拠 


トランプ大統領とマティス氏

ジェームズ・マティス氏は昨年12月31日付で、ドナルド・トランプ政権の国防長官を退任した。マティス氏は退役海兵隊大将であり、米国統合戦力軍司令官、NATO(北大西洋条約機構)変革連合軍最高司令官、米国中央軍事司令官などの要職を歴任した人物だ。

 2017年1月20日のトランプ政権発足と同時に、第26代国防長官に就任した。本来は「シビリアン・コントロール(文民統制)」の観点から、元軍人は退役後7年経過しないと国防長官になれない。だが、上院が承認すれば就任できる。議決は「賛成98票、反対1票」だった。

 マティス氏は間違いなく米国のヒーローであり、世論やメディアの評価はいまなお高い。私自身、彼のキャラクターが大好きだし、尊敬している。

 だが、生粋の軍人であるマティス氏と、ビジネスマン出身のトランプ氏は、価値観に大きな食い違いがあったと感じる。

 トランプ氏がビジネスで成功を収めた要因の1つは、「合理主義の追求」である。人事面では、有能な人材を年齢や社歴と関係なく抜擢(ばってき)し、能力給と成功報酬を与える。逆に、無能と判断した人間は過去と関係なく解雇する。いわば人間関係も「損切り」するのだ。

 一方、マティス氏が人生を捧げた海兵隊では、戦場で傷付いた戦友を見捨てることは許されない。米軍でも、特に海兵隊は日本的な「義理人情」に厚いという印象がある。

 今回、シリアからの米軍完全撤退という決定を契機に、マティス氏は辞意を固めた。米軍が撤退すれば、IS(過激派組織・イスラム国)掃討作戦に全面協力したクルド人勢力は、再びアサド政権下で弾圧されるだろう。この厳しい「損切り」の責任者になることが、マティス氏にはとても許容できなかったのだと思う。

 私は、クリスマス前から年始まで米国で過ごしてきた。今回、信頼が厚くて人気の高いヒーローの退任に、多くの米国人が強いショックを受けたかといえば、実はそうでもない。トランプ支持者が愛想を尽かしたかといえば、それもなかった。

 なぜなら、米国民が選挙を通じて自ら選んだのはトランプ大統領だからだ。マティス氏は大統領が選んだ人物に過ぎない。

 大統領の方針に異議があり、説得したが失敗した。健全な民主主義国なら、方針に従うか、退任しか選択肢はない。それが本物の「シビリアン・コントロール」である。

 ちなみに、シリア国内にISの残党がいたら、すぐたたけるように、米軍はシリアからは撤退しても、イラクには残る。この文章の「シリア」が「韓国」に、「イラク」が「日本」になる日は、そう遠くないのかもしれない。

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】トランプ大統領は正真正銘のリアリスト(゚д゚)!

冒頭の記事で、ケント・ギルバート氏は以下のように述べています。
トランプ氏がビジネスで成功を収めた要因の1つは、「合理主義の追求」である。人事面では、有能な人材を年齢や社歴と関係なく抜擢(ばってき)し、能力給と成功報酬を与える。逆に、無能と判断した人間は過去と関係なく解雇する。いわば人間関係も「損切り」するのだ。
トランプ大統領のイラク撤退の考えが合理的であることは以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
もう“カモ”ではない、トランプの世界観、再び鮮明に―【私の論評】中東での米国の負担を減らし、中国との対峙に専念するトランプ大統領の考えは、理にかなっている(゚д゚)!
昨年末電撃的イラク訪問をしたトランプ大統領
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事からシリアから撤退することを決断したトランプ大統領の考え方が、合理的であると説明した部分を引用します。
この判断には、合理性があります。アサド政権の後ろにはロシアが控えていますが、そのロシアは経済的にはGDPは東京都より若干小さいくらいの規模で、軍事的には旧ソ連の技術や、核兵器を受け継いでいるので強いですが、国力から見れば米国の敵ではありません。

局所的な戦闘には勝つことはできるかもしれませんが、本格的な戦争となれば、どうあがいても、米国に勝つことはできません。シリアやトルコを含む中東の諸国も、軍事的にも、経済的にも米国の敵ではありません。

一方中国は、一人あたりのGDPは未だ低い水準で、先進国には及びませんが、人口が13億を超えており、国単位でGDPは日本を抜き世界第二位の規模になっています。ただし、専門家によっては、実際はドイツより低く世界第三位であるとするものもいます。

この真偽は別にして、現在のロシアよりは、はるかに経済規模が大きく、米国にとっては中国が敵対勢力のうち最大であることにはかわりありません。

トランプ政権をはじめ、米国議会も、中国がかつてのソ連のようにならないように、今のうちに叩いてしまおうという腹です。

であれば、トルコという新たな中東のプレイヤーにシリアをまかせ、トルコが弱くなれば、トルコに軍事援助をするということで、アサド政権を牽制し、中東での米国の負担を少しでも減らして、中国との対峙に専念するというトランプ大統領の考えは、理にかなっています。 
物事には優先順位があるのです、優先順位が一番高いことに集中し、それを解決してしまえば、いくつかの他の問題も自動的に解決してしまうことは、優れた企業経営者や管理者なら常識として知っていることです。
無論、このような論評の前提には、そもそもシリアにはアサド政権を含めて、クルド人勢力などの反政府勢力も元々反米的という前提があります。クルド人勢力が反政府勢力となったのは、一時的に米国と利害が一致していたに過ぎません。その証左として、米軍引き上げという 窮地に、トルコと敵対するアサド・シリア政権に庇護を求め、手を結んでいます。

結局、シリアには、アサド政権は無論のこと、クルド人勢力のような反政府勢力も反米的なのです。

だとすれば、いずれが勝利したとしても、米国の勝利にはならないのです。だから、米国の戦略家であるルトワック氏は、米国の対シリア政策は、アサド政権と反政府勢力を拮抗させておくべきというものでした。

であれは、新たな拮抗勢力として、トルコが名乗りをあげたのです。これからトルコがシリアを攻撃して、勝利を収めたとしても、米国としてはアサド政権よりははるかにましです。であれば、シリアから撤退すべきと考えるのが合理的です。

トランプ氏の考え方は、どこまでも合理的なのです。そうして、トランプ大統領はリアリストなのかもしれません。

日本で「リアリスト」というと、あえて大雑把にいえばいわゆる「現実派」というイメージになります。汚い仕事からも目をそらさず実行するという「実務派」という意味でとらえられがちです。

これは米国でも同じであり、時と場合によっては政治信条などを度外視して、生臭い権力闘争や、利権の力学で政治をおこなう実務派たちを「リアリスト」と呼ぶことがあります。例えば、チェイニー元副大統領などがその代表的な人物であり、血の通わない冷酷な人物である、とみられがちです。トランプ氏はそのような側面があることは否めないと思います。

しかし、「リアリスト」にはもう一つの意味があります。それは、「国際関係論」(International Relations)という学問の中の「リアリズム」という理論を信じる人々のことも意味します。

「リアリズム」というと、美術などの分野では「写実主義」のような意味になりますが、
国際政治を理論的に分析しようとする「国際関係論」という学問では、「国際関係を、主に『権力(パワー)』という要素にしぼって分析、予測する理論」です。

ハイパーリアリズムの絵画 もはや写真にしか見えない

つまり、「リアリズム」とは、「国際政治というのはすべて権力の力学による闘争なのだ!」と現実的(realistic)に考える理論です。よってリアリズム(現実主義)となるのです。

さて、この理論の中核にある「権力=パワー」というコンセプトがまずクセものです。「リアリズム」学派では、伝統的に、「権力=パワー」というのは、主に「軍事力」によって支えられると考えられています。

よって、彼らにとってみれば、国際政治を動かす「パワー(power)」というのは、
「軍事力による脅しや実際の行動(攻撃)によって、相手の国を自国の意思にしたがわせる能力」ということなのです。

究極的にいえば、「リアリズム」では、この「パワー」こそが国際社会を動かす唯一最大の要素なのです。ですから、ここに注目してさえいれば、概ね相手の動きは読めてしまう、ということなのです。

このような考え方は、平和信仰の強い日本人にしてみれば、「なんとえげつない理論だ」と思われるかもしれません。

ところが欧米の国際関係論の学界では、この「リアリズム」という概念が一番説得力のある強い理論だとされており、あえて刺激的な言い方をしますと、これを知らない、いや、知っていても認めないし、知ろうともしないアカく染まった日本の学者や知識人たちだけとも言える状況なのです。

国際関係学においては、「リアリズム(現実主義派)」と「リベラリズム(自由主義)」
がメジャーな存在ですが、その他にも、「マルクス主義」や、「コンストラクティビズム」などがあります。


リアリストたちが「国際社会はパワーの闘争によって動かされている!」と考えていることはすでに述べたとおりですが、その彼らにすれば、「平和」というのは単なる「闘争の合間の小休止」、もしくは「軍事バランスがとれていて、お互いに手出しできない状態」ということになります。

よって、軍事バランスがくずれれば、世界の国々はいつでも戦争を始める、というのが彼らの言い分なのです。

では、国際社会を「平和」に保つためにはどうしたらいいのか?彼ら「リアリスト」に言わせれば、そんなことは単純明快であり、「軍事バランスを保つこと」なのです。

より具体的に言えば、世界中のライバル国家たちに軍事力でバランスをとらせて、お互いに手出しさせないようにする、ということなのです。

そうして、現在トランプ政権は、軍事パランスを崩そうとする中国に対して、武力ではなく経済制裁を中心とした、冷戦Ⅱ(ペンス副大統領の言葉)を挑んでいます。

こうしてみると、トランプ氏は、正真正銘の「リアリスト」なのかもしれません。すくなくと「マティス流」の「義理人情」で動くのではなく、あくまでも合理的な判断で政治を行い、「国際関係を、主に『権力(パワー)』という要素にしぼって考えて行動しているのではないでしょうか。

そうなると、トランプ氏は、「リアリスト」と考えるのが妥当だと思います。

最近の韓国 レーダー照射問題においては、言い訳がコロコロ変わっています。これは、軍としては致命的です。 自衛隊記録動画に反証する動画を公表しましたが反証証拠を出せず、レーダー照射そのものは認めざるえなくなっています。

韓国の反証動画。サムネイルに「自衛隊機の低空飛行」を見せかける加工がなされている。

自衛隊はデータリンクを通じて、他国(特に米国)とも情報共有しているわけで、いくらでも証明できるでしょう。特に米国は、日本海で艦船を恒常的に航行させていますから、その一部始終をすでに分析していることでしょう。

韓国の今回の対応は、まさに最悪のクレーム対応の見本のようなものです。これをリアリストのトランプ氏が見れば、韓国の信用度はますます低下したに違いありません。慰安婦問題や、徴用工問題における韓国の妄想による捻じ曲げられた理屈など、トランプ氏には通用しません。

これは、冒頭の記事の最後で、ケント・ギルバート氏が"この文章の「シリア」が「韓国」に、「イラク」が「日本」になる日は、そう遠くないのかもしれない"と語ったように、米軍韓国撤退の日は近いかもしれません。

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