まとめ
- 国連は「連合国」体制の延命装置であり、1945年の構造を今も引きずっている。常任理事国の拒否権が紛争解決を麻痺させ、戦後秩序の惰性だけが残った。
- 理念の裏で資金と承認をめぐる政治が肥大化している。「人権」「ジェンダー」「多様性」などの旗印の下で、実効よりも象徴を優先する構造が国連機関に広がった。
- UNRWAの不祥事は理想を掲げる国連の腐敗を象徴する事件だった。職員の一部がハマス攻撃に関与した疑惑を受け、米・英・豪など主要国が拠出を停止した。
- 米国はトランプ政権期に国連への資金依存を見直し、実効性を問う路線へ転換した。UNRWA拠出打ち切りや人権理事会離脱は、理念より現実を重視する判断だった。
- 国連の「先住民族」政策は日本にもねじれを生んだ。アイヌをめぐる国際的枠組みは定義が曖昧なまま政治化・利権化し、国際承認が目的化している。
| 国連ビル |
国際連合(United Nations)は第二次大戦の惨禍を繰り返さないために生まれた。だが“United Nations”の原義は「連合国」、つまり戦勝国連合である。常任理事国と拒否権という設計は、その性格を今も露骨に残す。世界の重心は移り、冷戦も終わった。それでもひとつの拒否権で紛争対応が止まり、会議と声明だけが積み上がる。理念の看板は色あせ、現実の戦火の前で手足が止まる──この構図こそ国連の病巣である。
戦後の専門機関でも力学は変わった。国連食糧農業機関(FAO)は2019年以降、中国の屈冬玉がトップに就き、組織運営を主導してきた。国際電気通信連合(ITU)は2015〜2022年の間、中国出身の趙厚麟が事務総長を務め、その後は米国出身のボグダン=マーティンに交代した。国連機構の舞台は、価値の普遍を競う場ではなく、現実の影響力を取り合う場へとすっかり様変わりしたのだ。(FAOHome)
2️⃣理想の仮面と資金の流路──アイデンティティー政治の装置化
「人権」「ジェンダー」「先住民族」。美しい言葉は、資金と承認をめぐる政治の標語にもなる。国連や関連機関のプログラムは各国の拠出金を梃子に、無数のNGO・実施団体へと再配分される。成果よりも“国際的承認”の獲得が目的化するとき、事業は延命し、報告書は増える。理想は掲げる。だが、現場で何が変わったのか──そこが薄い。
| UNRWA職員を装ったテロリスト・ハマスを象徴する画像 |
象徴的なのがUNRWAである。2024年1月、イスラエルの指摘を受けて、国連はUNRWA職員の一部が10月7日のハマス攻撃に関与した疑いを調査し、職員の解雇に踏み切った。米国、英国、豪州、カナダ、フィンランド、オランダ、イタリアなど複数の国が相次いで資金拠出を停止・凍結した。理想の看板を掲げる機関が、信頼の根幹でつまずいた現実は重い。(Reuters)
国連の紛争関与は“中途半端”になりがちだ。シリア停戦の仲介は決定打にならず、南スーダンや他地域でも平和維持はしばしば後追いになった。ルワンダ、スレブレニツァでの失敗は歴史に刻まれた。介入しても遅く、介入しなくても弱い(存在感や影響力がない)──この矛盾は、機構と権限の設計の古さから来ている。
米国の態度は、ここを鋭く突いた。トランプ政権は2018年に国連人権理事会から脱退し、同年UNRWAへの拠出を打ち切った。価値観ではなく実効、象徴ではなく費用対効果を問うという宣言である。その後、米政府は一部の国連関連拠出を段階的に見直し、国益と整合しない分野にブレーキをかけた。(Reuters)
3️⃣日本への波紋──「先住民族」枠組みと政策のねじれ
| 国連を批判するトランプ大統領 |
国連は2007年に「先住民族の権利宣言(UNDRIP)」を採択し、各国に尊重を求めた。日本政府は2008年、アイヌを先住民族と認める立場を表明した。だが国連は法的に硬い定義を持たず、運用は幅が広い。学術的にも起源と文化形成は多層で、先住性の評価には議論が残る。要するに、“先住民族”と断じ切れるほど定義が固いわけではないのに、国際的承認と国内制度化が先に走った。この順序が、国内の議論を細らせ、政策を利権と補助の回路へと滑らせたのである。
ここで大切なのは、文化の尊重と政策の実効を分けて考えることだ。歴史と地域の実相を丁寧に見ないまま、上から「先住民族」ラベルを貼ると、現場は硬直し、検証は甘くなる。国際勧告に合わせること自体が目的化すると、税金は理念の看板に吸い込まれ、暮らしの改善はおざなりになる。
結論は明快である。国連は、戦勝国体制の設計を引きずったまま、拒否権というおもしで身動きが取れず、専門機関も影響力ゲームに巻き込まれている。理想を語りながら、資金の流路は政治を肥やし、失策は現場に落ちる。UNRWAの一件は、看板と実態のずれを白日にさらした。米国が拠出や関与を減らしたのは、感情ではなく計算の結果である。(Reuters)
日本はどうするか。答えは簡単だ。国連中心主義から距離を取り、主権と同盟を基軸に、必要な協力は二国間・小多国間で組む。文化は自分たちで守り、政策は自分たちで検証する。戦後の記念碑を守るために金を注ぎ込む時代は終わった。これからは、結果を出す仕組みに金を使うべきだ。
UNRWA職員によるハマス攻撃関与疑惑を取り上げ、国連の機能不全と偏向を明確に批判。日本の拠出停止措置の背景にある現実的判断を分析する。
中国が国連機関を掌握し、自国の権威強化に利用している実態を解説。戦勝国体制を脱し、民主主義国家主導の新秩序を提唱する内容。
独裁国家・中国が常任理事国にいる異常… 日本を「敵国」として扱う国連を“再編”せよ! G7参加国ベースに民主主義国主導で「新国連」を―【私の論評】中国ウイルス蔓延が暴いた、新国連の必要性(゚д゚)!2020年4月27日
中国が常任理事国である異常性と、国連の「敵国条項」問題を指摘。コロナ禍を契機に、民主主義国による「新国連」構想を訴える。
中国が国際秩序再構築を公然と宣言した動きを分析。中華思想の危険性を指摘し、先進国が「巻き込まれない戦略」を取るべきだと説く。
【国連女子差別撤廃委】日本の国柄・伝統を無視し、「男系継承は女性差別」と勧告しようとした裏でやはりあの国が暗躍していた…―【私の論評】反日国連に日本が大金を拠出すのは不条理(゚д゚)! 2016年3月9日
国連女子差別撤廃委員会が日本の皇位継承制度に干渉した問題を解説。背後で暗躍する国際政治の構図を暴き、国連拠出の不条理を糾弾する。
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