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2020年8月8日土曜日

WTO提訴の韓国に米の鉄槌! 「安全保障上の利益を保護するために何が必要か判断できるのは日本だけだ」 識者「韓国に歩み寄る国はない」— 【私の論評】米国も安倍総理も韓国等眼中になく、中国との対峙の邪魔し続けるなら黙らせるだけ!(◎_◎;)

WTO提訴の韓国に米の鉄槌! 「安全保障上の利益を保護するために何が必要か判断できるのは日本だけだ」 識者「韓国に歩み寄る国はない」

スイス・ジュネーブのWTO本部

 日本政府が韓国向けの輸出管理を強化したことで世界貿易機関(WTO)に提訴した韓国に大逆風が吹いている。米国が日本の判断に理解を示し、韓国の姿勢を痛烈に批判したのだ。WTO事務局長の座も狙う文在寅(ムン・ジェイン)政権だが、もくろみは外れそうだ。

 WTOは3日、先月末に設置された紛争解決機関(DSB)のパネル(案件を審理する小委員会)での会議の要約を発表した。それによると、日本は輸出管理強化は「安全保障上の措置」だとして、韓国の提訴に深い失望を示した。

 日本以上に韓国に強く反発したのは米国だった。「安全保障上の利益を保護するために何が必要か判断できるのは日本だけだ」と見解を示し、このような訴訟はWTOに深刻なリスクをもたらし、国家安全保障問題に組織を巻き込む恐れがあると警鐘を鳴らした。

 米国から何ひとつ賛同を得られなかったことで、韓国メディアは「事実上、日本側の論理を後押しする」「日本の肩を持った米国」などと悲観的に伝えている。

 今後はパネリストの選定や意見書の提出、口頭審理などの訴訟手続きが本格的に進められ、最終判定までには、10~13カ月を要するとみられる。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「米政府が中国に圧力をかけることを最優先に行動している中、アジアで最大の同盟国である日本の足を引っ張っているのが韓国だ。米国は韓国に警戒心を抱き、隊列を乱されていると感じているに違いない。英・仏なども脱中国の動きをみせており、韓国に歩み寄る国などほとんどないだろう」と分析する。

 日本の外務省は3日付で国際法局に経済紛争処理課を新設した。経済局にあった国際経済紛争処理室を課に格上げし、WTOの訴訟などへの対応を強化する狙いがある。昨年4月にWTO上級委員会で、韓国が福島など8県産の水産物の輸入制限措置を取っていることが妥当と判断されたことを受け、設置に至った。

 一方の韓国は、産業通商資源部の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長がWTOの次期事務局長選に立候補しており、図々しくも日本に支持を呼び掛けている。

 前出の島田氏は「ある外務省幹部は『韓国がWTOのトップを務めるのは論外で、日本をつぶすためだけに行動している』と憤っている。WTOの事務局長選は前哨戦で、経済協力開発機構(OECD)のトップを狙って動いているという見方もある。そのためには中国が鍵を握っており、米国は韓国が中国とともに動いているとみている」と指摘した。

【私の論評】米国も安倍総理も韓国等眼中になく、中国との対峙の邪魔し続けるなら黙らせるだけ!(◎_◎;)

麻生太郎副首相兼財務相が強制徴用賠償判決を受けた日本企業に対する資産現金化措置がなされる場合「韓国との貿易を見直したり、金融制裁に踏み切ったり、やり方は色々ある」と話していました。

麻生太郎
麻生副首相は昨年12月9日発売の「文藝春秋」2020年1月号で、「万が一、韓国側が徴用工判決で差押えしている民間企業の資産の現金化などを実行したら」「厳しい例をあえて言えば」と前提を付けてこのように話しました。

その上で「いずれにしても、日本より経済規模の小さい韓国が先に疲弊するのは間違いない。その上で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がどういう判断をするのか、ということ」と話しました。

麻生副首相は「最大の懸案は韓国との関係」としながら「問題は、韓国という国家そのものよりも、国際法を蔑ろにし続ける文在寅政権の姿勢」と主張しました。続けて「1965年の日韓請求権協定で、日本は韓国に対し、無償3億ドル・有償2億ドルの経済支援を行った。結果、『漢江の奇跡』と呼ばれる韓国の経済発展に繋がったわけだ。それを今さら『なかったこと』にすると言われたら、ちょっと待ってくれと言うしかない」とも話しました。

麻生副首相は昨年3月にも強制徴用問題と関連し韓国に対する対抗措置として送金中断、ビザ発給停止などに言及したことがあります。彼の発言そのままではないですが、昨年7月に半導体材料3品目に対する輸出規制、ホワイト国排除措置などの措置を取離ました。今回も実際の措置につながる可能性はかなり高くなってきました。

麻生副首相はまた、「よく『隣国だから韓国と仲良くしよう』と言うような一部の論調があるが、世界中で隣国と仲の良い国などあるのか。そういうことを言うのは、外国に住んだことがない人」と主張しました。

その上で「隣の国とは利害がぶつかるもの。友好は単なる手段に過ぎない。友好を築いた結果、損をしたら意味がない」とも話しました。

今後、日本は韓国に対して、韓国によるWTOへの提訴並びに、日本企業に対する資産現金化措置が実行に移された場合、何らかの厳しい措置をとるのは間違いないです。

日本がなんらかの措置をすれば、韓国は、日本が戦争責任を果たしていない等と主張し始めるでしょうが。そのようなことは、気にせず、黙って『事実上の報復』をすれば良いだけです。

具体的な制裁方式としては、韓国企業に対する日本銀行の保証回収などが挙げられている。元外務副大臣の佐藤正久自民党議員は、先月ある番組に出演し、「サムスン電子の海外資金のうち、大部分は日本のメガバンクから借りたものだ。韓国企業は金融の相当部分を日本に依存している」として金融分野の制裁が最も効果的だと話しました。

 こうした中、自民党内保守系議員の集まりである「保守団結の会」は前日、会議を開き、韓国側が日本企業の資産を現金化する場合、経済制裁の発動を政府に求める方針を決めたと読売新聞がこの日、伝えました。

恒常的にドル資金不足の韓国は、ドルが枯渇するとキャッシュフローが回らず、国家破綻に陥る状況にあります。それに、ドルが枯渇すれば、国際決済もできなくなります。ドル資金に余裕のある日本の銀行は、韓国の銀行に貸し付けて運用していますが、日本の金融機関が超短期のドル資金を融通しなくなるだけで、一日にして韓国の銀行はデフォルト(債務不履行)に陥ってもおかしくありません。

韓国の銀行がデフォルトに陥れば、国家債務が返済できないとみなされ、韓国全体のデフォルト懸念も顕在化することになるでしょう。 

この措置はあくまでも日本の金融機関の与信判断によるもので、日本が制裁の形を取らないことが重要でしょう。例えば日本のメガバンクが韓国の銀行の信用状取引を停止すれば、韓国は貿易ができなくなり、大打撃です。日本政府が直接実施したということなれば、韓国にまた、上げ足を取られ、日本が国際社会で悪者にするでしょう。

そうは言いながら、実質的には韓国を制裁しなければならないです。 しかし、米国の協力が得られれば、そのようなことも気にせずに、すぐにできるでしょう。冒頭の記事のように、韓国がWTOに日本を提訴したことに対して、米国はかなり怒っています。この状況だと、日本が韓国に対して、金融制裁をしたとしても、米国はそれを支持をしたとしても、反対しないでしょう。

8月は韓国の反日を一段とエスカレートさせる日程が目白押しです。 14日には韓国政府が指定した「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」、15日には独立を記念する「光復節」、そして24日には、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長期限を迎えます。

韓国の光復節

世界貿易機関(WTO)の紛争処理機関(DSB)は日本の韓国に対する半導体材料の輸出管理強化がに対して韓国が求めた「一審」に相当する紛争処理小委員会(パネル)の設置を承認しました。

8月以降、パネルが設置される見通しです。 日本としては粛々とカードを切るしかなさそうです。

米政府が対中国冷戦を最優先に行動している中、アジアで最大の同盟国である日本の足を引っ張っている韓国に対して、日本がどのような制裁措置をしても米国は歓迎するだけです。

米国は、中国との対峙を最優先にしています。北朝鮮や韓国、その他の問題は、中国と対峙するにおいては、単なる制約条件に過ぎないと見ているでしょう。

上で、一つ書き忘れていたことがありますが、韓国の対日赤字の大部分は工作機械の輸入によるものです。工作機械とは、製品を製造する機械のことであり、サムスンのスマホも、現代の自動車もこれ無しでは製造できません。

この工作機械の製造技術こそが<先端技術>であり、世界市場を日本とドイツが席巻していますが、その中でも繊細・微細な製品製造のための工作機械は日本の独壇場と言ってよいです。

世界に冠たる日本の工作機械
だから韓国は日本に「工作機械を売っていただいている」立場にあります。もし、日本が工作機機械の禁輸を行ったら、韓国経済の将来は無くなります。

米国によるサムスンに対するファーウェイのような制裁と、日本からの工作機械の禁輸措置を同時に行えば非常に効果的です。

このように考えると、韓国はかなり日本に依存しているにも関わらず、態度だけは大きいです。

しかし、もう米国も、日本も、日本国民も堪忍袋の緒が切れています。米国も、安倍総理もとにかく、中国との対立を最優先に考えたいので、韓国など早く大人しくなって、何もしないで欲しい、特に中国との対峙の邪魔はしないで欲しいと思っているでしょう。

安倍総理も、トランプ大統領も、韓国が邪魔し続けるなら、かなりきつい報復も厭わないでしょう。日本や米国がその気なれば、中共崩壊の前に、文政権が崩壊することになるかもしれません。

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2019年1月3日木曜日

もう“カモ”ではない、トランプの世界観、再び鮮明に―【私の論評】中東での米国の負担を減らし、中国との対峙に専念するトランプ大統領の考えは、理にかなっている(゚д゚)!

もう“カモ”ではない、トランプの世界観、再び鮮明に

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

 トランプ米大統領が先の電撃的なイラク訪問で行った演説は中東政策ばかりか、同氏の描く世界戦略をあらためて鮮明にした。「米国はもはや(金をむしり取られる)“カモ(suckers)”ではない」。こう宣言した大統領の狙いはずばり、「軍事資源」の再配置と同盟国に対する防衛費の公平分担要求だ。

昨年末電撃的イラク訪問をしたトランプ大統領

トランプ節全開

 大統領は12月26日、イラク西部アンバル州のアルアサド空軍基地に到着、約100人の兵士の歓迎を受けた。大統領の紛争地への訪問は就任以来これが初めて。歴代の大統領は何度も紛争地の米部隊を慰問しており、紛争地入りを渋るトランプ大統領を「臆病呼ばわり」する向きもあった。今回の訪問はそうした批判に応えるためでもある。

 大統領の演説は批判にさらされているシリアやアフガニスタンからの軍撤退方針を正当化する内容であったが、自らの世界観を強く印象付けるものでもあった。

 「われわれは世界の警察官であり続けられない」
 「ほとんどの人が聞いたこともない国に軍を派遣するのは馬鹿げている」
 「米国1人が重荷を背負うのは公平でない」
 「金持ちの国々がその防衛に米国を利用することはもうできない」

 ニューヨーク・タイムズによると、大統領のこうした世界観は何年も前から思い描いてきたことだ。例えば、大統領は2012年2月27日のツイッターで「アフガニスタンから出ていく時だ。われわれを憎悪する人々のために道路や学校を作っているのは国益に沿わない」とつぶやいている。

 大統領はイラク演説でこの持論の世界観を披歴した上で、「元々シリアへの軍派遣は3カ月限定だった」と撤退決定を擁護。ペンタゴンの将軍たちが「撤退の半年延期を提案したが、私は即座に拒絶した」と自らの決断だったことを誇示した。

対中国向けに転換か

 この決定について、ホワイトハウスの黒幕といわれたバノン元首席戦略官は「孤立主義への回帰ではなく、国際主義者の“人道的派遣症”からのピボット(転換)」との分析を米紙に明らかにしている。

 バノン氏によると、トランプ大統領は中国との経済的、地政学的な戦いに集中できるよう、シリアなどの軍駐留を終わらせたいのだという。限定的な軍事資源を最大の脅威と見なす中国向けに転換するということだ。こうした「アジアシフト」はトランプ氏が敵視するオバマ前大統領の主張「リバランス政策」と基本的に同じ考えだろう。

 大統領は中東政策についても(1)シリア撤退の一方でイラクからは撤退しない(2)イラクをイランと戦い、過激派組織「イスラム国」(IS)を叩く「出撃基地」にする(3)シリアのISの監視と掃討作戦はトルコのエルドアン大統領に任せる(4)シリアの復興資金はサウジアラビアなどに拠出させる――などの考えを明らかにした。イラクには現在約5200人が駐留している。

 大統領の撤退方針に対しては「賢い選択」(元駐シリア米大使)と評価する声もあるが、撤退した後に米国益をいかに守るのか、全体的な中東政策にシリア撤退をどう反映させて組み立てていくのか、戦略が見えないという指摘が多い。

 ただ、大統領の演説で忘れてはならない発言の1つは防衛費の公平分担という指摘だ。すでにトランプ政権は在韓米軍の駐留分担で具体的な提案を韓国側に行ったとされており、日本や北大西洋条約機構(NATO)にも早々に分担増を突き付けてくるのは間違いないところだろう。

見捨てられたクルド人の選択

 今回の軍撤退決定で最大の敗者はIS壊滅作戦で米国に翻弄された末に切り捨てられたシリアのクルド人だ。米国の説得を受けてシリア民主軍(SDF)の中核として最も厳しい地上戦を主導し、多くの戦死者を出した。だが、トランプ政権は「クルド人を見限った上、トルコのエルドアンに差し出した」(ベイルート筋)。

 クルド人勢力の民兵組織「クルド人民防衛部隊」(YPG)は米軍の支援の下、ISを駆逐してシリア北東部を支配下に置いた。支配地域はシリア全土の3分の1弱に相当するが、これを自国の安全保障上の脅威と見なす隣国のトルコのエルドアン大統領は容認できなかった。

 同大統領は国境に大規模部隊や戦車を集結させ、すぐにでも侵攻すると恫喝する一方、「トランプ大統領と裏取引し、米軍の撤退と引き換えにクルド人の勢力拡大を食い止める“裁量権”を獲得した」(同)。まさに大国のエゴに弄ばれる少数民族の悲劇を感じさせる展開だ。

 だが、クルド人もしたたかだ。この窮地に、トルコと敵対するアサド・シリア政権に庇護を求め、手を結んだのだ。砂漠の風紋のように変化する中東の離合集散を見る思いだが、シリア側の発表によると、シリア政府軍が28日、YPGの招きでクルド人支配下の北部の要衝マンビジュに進駐したという。トルコをけん制する動きに他ならない。

 これに対し、エルドアン大統領は「シリア側の心理作戦」と一蹴している。だが、トルコ軍がシリア領に侵攻する事態になれば、シリア政府軍との交戦の恐れも出てこよう。アサド政権の背後にはロシアとイランの存在があり、米軍が撤退する「力の空白」をめぐってシリア情勢は一段と複雑な様相を呈している。

【私の論評】中東での米国の負担を減らし、中国との対峙に専念するトランプ大統領の考えは、理にかなっている(゚д゚)!

冒頭の記事には、「見捨てられたクルド人の選択」と記されていますが、これは予め予想されたことです。

イラク情勢については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
アメリカの2度目のシリア攻撃は大規模になる―【私の論評】今後の攻撃はアサド政権を弱体化させ、反政府勢力と拮抗させる程度のものに(゚д゚)!
シリアの首都ダマスカス。アサド大統領のポスターの前で警備に当たるロシア軍とシリア軍兵士。
米軍が大規模な攻撃を仕掛ければ、ロシアとぶつかる危険がある
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事にはルトワック氏の主張する米国のあるべきシリア政策を掲載しました。

ルトワック氏によれば、米国のあるべき戦略は、シリアのアサド政権と、反政府勢力を拮抗させるというものです。

アサド政権が強くなれば、米国が反政府勢力に軍事援助を与えるなどして、反政府勢力を強化して、アサド政権を弱らせるます。逆に、反省勢力が強くなりアサド政権が弱体化すれば、今度は反政府勢力に対する軍事援助などを減らし、相対的にアサド政権を強くするというものです。

米国にとって望ましいと思える結末は「勝負のつかない引き分け」であるというのです。

なぜこれが望ましいかといえば、 まず第一に、もしシリアのアサド政権が反政府活動を完全に制圧して国の支配権を取り戻して秩序を回復してしまえば、これは大災害になるからです。

第二に、 もしこれらの反政府勢力が勝利するようなことになれば、彼ら(クルド人勢力を含む)は米国に対して敵対的な政府をつくることになるのはほぼ確実だからです。これは、反政府勢力が、アルカイダであろうが、非宗教的なマルクス主義/アナーキスト組織的でもあるクルド人勢力であろうが、他の勢力であろうと同じことです。

クルディスタン地域政府の軍隊「ペシュメルガ」のクルド人女性隊員=2016年3月30日

米国に対して親和的な勢力など、アサド政権を含めて、シリアには存在しないのです。クルド人勢力もたまたま一時的に米国と利害が一致しただけのことです。実際、トランプ氏が米軍引上げを宣言すると、トルコと敵対するアサド・シリア政権に庇護を求め、手を結んだではありませんか。

さらにいえば、イスラエルはその北側の国境の向こうのシリアにおいてジハード主義者たちが勝利したとなれば、平穏でいられるわけがないです。

非スンニ派のシリア人は、もし反政府勢力が勝てば社会的な排除か虐殺に直面することになるし、非原理主義のスンニ派の多数派の人々は、もしアサド政府側が勝てば新たな政治的抑圧に直面することになります。

そして反政府勢力(アサド政権と手を結ぶ前のクルド人勢力)が勝てば、穏健なスンニ派は非宗教的なマルクス主義/アナーキスト組織的な支配者たちによって政治的に排除され、国内には激しい禁止条項が次々と制定されることになります。

シリアの人々にとっても、いずれが勝利しても良いことはないのです。そうして、これでは、いずれが勝利したとしても、米国に勝利はないのです。だからこそ、ルトワック氏は米国はアサド政権と反政府勢力を拮抗させておくのが、最上の策としたのです。

ただし、ルトワック氏がこの主張をしたときには、トルコはシリア内の紛争に関して機能停止状態でした。国内のクルド人勢力の対応に追われていたのでしょう。

そのトルコがシリア問題に介入すると、トランプ大統領に確約したのです。これは、ルトワック氏の戦略の枠組みからみれば、アサド政権と国内の反政府勢力と拮抗させることから、アサド政権と、トルコ政府との拮抗へとシフトすることを意味しています。

これは、反政府勢力よりもさらに頼もしい存在です。トルコが介入すれば、シリア情勢はかなり変わります。

エルドアン・トルコ大統領

トランプ大統領は、アサド政権と、トルコのエルドアン政権とを拮抗させ、米軍をシリアからひきあげ、対中国向けに集中する道を選んだのです。

そうして、これはバノン元首席戦略官が分析しているように、「孤立主義への回帰ではなく、国際主義者の“人道的派遣症”からのピボット(転換)」に他ならないのです。

そうして、この判断には、合理性があります。アサド政権の後ろにはロシアが控えていますが、そのロシアは経済的にはGDPは東京都より若干小さいくらいの規模で、軍事的には旧ソ連の技術や、核兵器を受け継いでいるので強いですが、国力から見れば米国の敵ではありません。

局所的な戦闘には勝つことはできるかもしれませんが、本格的な戦争となれば、どうあがいても、米国に勝つことはできません。シリアやトルコを含む中東の諸国も、軍事的にも、経済的にも米国の敵ではありません。

一方中国は、一人あたりのGDPは未だ低い水準で、先進国には及びませんが、人口が13億を超えており、国単位でGDPは日本を抜き世界第二位の規模になっています。ただし、専門家によっては、実際はドイツより低く世界第三位であるとするものもいます。

この真偽は別にして、現在のロシアよりは、はるかに経済規模が大きく、米国にとっては中国が敵対勢力のうち最大であることにはかわりありません。

トランプ政権をはじめ、米国議会も、中国がかつてのソ連のようにならないように、今のうちに叩いてしまおうという腹です。

であれば、トルコという新たな中東のプレイヤーにシリアをまかせ、トルコが弱くなれば、トルコに軍事援助をするということで、アサド政権を牽制し、中東での米国の負担を少しでも減らして、中国との対峙に専念するというトランプ大統領の考えは、理にかなっています。

物事には優先順位があるのです、優先順位が一番高いことに集中し、それを解決してしまえば、いくつかの他の問題も自動的に解決してしまうことは、優れた企業経営者や管理者なら常識として知っていることです。

しかし、優先順位の高い問題を放置して、他のことに取り組んでも、結局モグラたたきになることも、昔からよく知られていることです。

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