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2019年3月16日土曜日

【日本の解き方】波紋呼ぶ…二階氏「小池支持」の点と線 知事選前倒し&増税延期で「衆参とのトリプル選」視野か―【私の論評】「リーマン級」は増税回避の常套句になった?

【日本の解き方】波紋呼ぶ…二階氏「小池支持」の点と線 知事選前倒し&増税延期で「衆参とのトリプル選」視野か

小池百合子都知事(右)と自民党の二階俊博幹事長

次の東京都知事選をめぐり、自民党の二階俊博幹事長が小池百合子氏支持を打ち出し、波紋を広げている。小池氏と自民党、東京五輪・パラリンピックの力学が都知事選にどう影響するのか。

 今後の日程を整理しておこう。2020年東京五輪は7月24日~8月9日まで17日間。同パラリンピックは8月25日~9月6日に開かれる。小池都知事の任期は20年7月30日まで。

 普通なら、都知事選は任期切れ前の1カ月以内の20年7月中に実施されるが、これは誰が考えてもちょっと無理な日程だ。五輪直前の追い込みの時に選挙となると、どんな不測の事態があるともかぎらない。

 そこで、特例法を作り、都知事選を前倒しするという話が出てきている。

 特例法は東日本大震災などの国家的重大事案に際し、特例を作ってでも選挙日程変更などの必要がある場合に検討、制定される。

 20年東京五輪が選挙日程を変更するほどの国家的重大事案かどうかは判断が分かれるかもしれない。今のところ、特例法制定の具体的な動きはないものの、政治判断によっては今後大いにありうる話だ。

 そこで、冒頭の二階氏の発言だ。1年以上先の選挙であれば、今の段階で支持を表明することはありえない。発言は、都知事選前倒しの特例法を前提としたものだろう。

 特例法をいつ出すかといえば、今国会だろう。秋の臨時国会はまだ先で、不確かな話になるからだ。今国会は、3月末までに今年度予算と予算関連法案を通すが、4月以降めぼしい法案もなく、国会審議はスカスカの状態だ。

 一方、経済状況は芳しくない。足元の国内景気については、景気動向指数が3カ月連続マイナスで、景気判断も下方修正された。海外でも中国や英国でリーマン・ショック級の激動が懸念される。改元後の5月以降、消費増税をぶっ飛ばして解散総選挙になっても不思議ではない。この場合、7月の参院選とのダブル選挙になるだろう。

 となると、解散総選挙のタイミングを都合よく取れるような、国会運営上のいい「タマ」が必要だ。都知事選挙前倒しの特例法は、その候補の一つとなるだろう。

 こうした政局絡みであれば、通常、与党は特例法だけを出し、小池氏支持を言わないものだが、そこは小池氏の老獪(ろうかい)さで、二階発言を引き出したのだろう。二階氏としても小池氏を都知事に封じ込めておくほうが得策と考えているのではないか。

 特例法による具体的な都知事選の日程を考えてみると、任期を1年残した今年7月となる可能性が高い。つまり、参院選と衆院選のダブルでなく、都知事を巻き込みトリプルになるかもしれない。そうであれば、候補者選定の都合から、小池氏支持になるのはやむを得ないだろう。

 二階氏の発言は、こうした政局絡みの背景で出てきたとみたほうがいい。だからこそ、波紋を呼んでいるのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】「リーマン級」は増税回避の常套句になった?

昨年安倍内閣の菅義偉官房長官がNHK番組で2019年10月に予定されている消費税増税について、「リーマンショックのようなことがない限り実施する」と述べてました。このフレーズは、消費税増税を延期するために過去にも用いられてきたものでした。

菅官房長官

2016年5月の伊勢志摩サミットで、安倍首相は当時の状況がリーマンショック前の状況に似ているとの主張を展開しました。

2015年半ばから2016年初頭にかけて、中国株価が下落して、主要国の株価が下落しました。しかし、2016年2月の上海G20会合で、世界経済の下方リスクが認定され、各国が政策総動員することで合意が成立しました。

中国が5兆円規模の減税を決定するなど、政策対応が示され、危機が回避されました。中国株価が急落したのは事実ですが、中国株価は急落の直前に暴騰しており、株価下落の影響を過大評価することはできませんでした。

2014年夏に2000ポイントだった上海総合指数は2015年6月に5178ポイントに暴騰しました。その、暴騰した株価が反落し、2016年1月に2683ポイントに達しました。暴騰後は急落ですが、暴騰前と比較すれば3割高の水準でした。

2016年初、世の中では「中国経済崩壊」の声が圧倒的多数を占めていましたが、中国経済は2016年初に底入れし、世界経済は緩やかな改善傾向をたどりました。日本の株価は、2016年に円高傾向が残存したため、低迷したが、2月と6月に安値を記録して、反発に転じていきました。

したがって、2016年5月の状況は、リーマンショック後に株価が安値を記録し、各国の政策対応を背景に、緩やかに事態が改善に向かい始めた局面と類似していました。

「リーマンショック前の状況と似て」はいませんでた。状況認識は間違っていたかもしれませんが、安倍内閣が2016年4月の消費税増税を先送りしたことは正しいです。とても増税を行うべき局面ではありませんでした。

安倍内閣は2014年度に消費税率を5%から8%に引き上げて窮地に追い込まれました。財務省と日本経済新聞が「消費税増税の影響軽微」という大キャンペーンを展開し、それに追随して他の大手新聞、テレビ、識者が同様の大キャンペーンを行いました。安倍内閣はこの言葉に抗えず消費税増税を実行しました。

しかし、実際に蓋を開けてみると消費税増税の影響は軽微ではありませんでした。甚大な影響が広がり、日本経済はまた落ち込み、デフレからの完全脱却は遠のきました。この教訓があり、安倍内閣は消費税増税に極めて慎重になりました。

「リーマンショックのようなことがない限り」という言葉は、消費税増税を延期または中止するための大義名分に過ぎないものです。大義名分であろうが、何であろうが、日本の実体経済をみれば、増税に慎重になるのは正しいです。

その意味では、「リーマンショックのようなことがない限り」というフレーズは、場合によつては増税を回避するというサインと受け取るべきでしょう。経済状況が増税を十分に許すどころか加熱してきつめのインフレになりそうなときには、最初から何も言わずに増税することでしょう。

安倍首相も昨年末のテレビ報道番組で「リーマン級なければ増税」と明言

2014年11月、2016年6月に、安倍首相は消費税増税を二度延期しましたが、いずれも国政選挙直前でした。安倍首相は選挙に勝つためにも、消費税増税延期が得策であると考えれば、消費税を延期するでしょう。選挙に負けてまえば、選挙後の政局運営は難しいし、さらに念願の憲法改正も叶わぬことになり、何よりも安倍政権がレイムダック化してしまう恐れがあります。

さらに、世界情勢をみてみるとブログ冒頭の記事にもあるように、2016年当時と比較すれば、足元の国内景気については、景気動向指数が3カ月連続マイナスで、景気判断も下方修正されましたし、中国経済は16年当時より明らかに悪化しいますし、ブレグジットありでリーマン・ショック級もしくはそれを超える激動が懸念されています。

2月8日に行われた衆院予算委員会で答弁する安倍総理

次の消費税増税の時期は2019年10月とされています。したがって、2019年度予算編成では、2019年10月の消費税増税実施を組み込むことになるでしょう。

しかし、そのことが直ちに、消費税増税実施を意味するわけではありません。2019年の通常国会が終了した段階で、安倍首相は三たび、消費税増税の延期を発表するでしょう。そうしなければ、2019年夏の参院選を乗り切ることはできないからです。投票日は7月21日(日)が有力です。

安倍内閣が消費税増税を再々々延期することを前提に選挙戦術を構築することが必要になります。そして、安倍内閣が消費税増税を再々々延期する場合には、ブログ冒頭の記事のように、衆参ダブル選プラス都知事選に突き進む可能性が高いです。

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2016年6月4日土曜日

【日本の解き方】増税延期の深謀遠慮 経済成長と政治日程の妥協点 サミット議長国の年は解散の経験則が…―【私の論評】参院選後は増税派失脚!次の衆院選では、機動的財政・金融政策が争点に?

【日本の解き方】増税延期の深謀遠慮 経済成長と政治日程の妥協点 サミット議長国の年は解散の経験則が…

1日の記者会見で消費税増税の延期を発表した安倍晋三首相
 安倍晋三首相は1日の記者会見で消費増税の2年半延期を発表する一方、衆参同日選は回避するとした。

 民進党は消費増税を延期する法案まで出したのだから、安倍首相の方針に賛同するのが道理だが、なぜ批判したいのかさっぱりわからない。

不可思議な発言をする民主党岡田代表
 参院選では「アベノミクスの失敗」を争点に掲げるというのだが、アベノミクスの柱で、民進党が批判的な金融緩和政策は、雇用の改善という形で結果を出している。

 ちなみに、4月の有効求人倍率は1・34倍と24年5カ月ぶりの高水準だ。沖縄県、鹿児島県以外の45都道府県で有効求人倍率が1を超えている。民主党政権時代、最大8都県しかなかったのと好対照だ。

 国内総生産(GDP)が低迷しているのは、民主党政権時代に成立した消費増税法によって2014年4月から消費税率を5%から8%に引き上げたためである。3党合意があったので、自民党と公明党の責任も免れないが、10%への再増税先送りは、やる場合とやらない場合のメリット・デメリットを合理的に判断した結果であろう。

 GDP低迷を放置しておくと、雇用まで悪くなる。理論的には、8%から5%に減税するのが経済政策の筋だが、消費税は社会保障目的税とされているので、実際に減税する場合、社会保障関係予算の組み替えなどが必要で、実務的・政治的に困難だ。

 そこで、消費増税を延期した上で、消費減税と実質的に同じ経済効果となるような財政支出増を行うのが現実的な解となる。

 筆者の試算では、消費増税スキップと30兆円程度の財政支出を行えば、20年度の名目GDPは630兆円程度になり、財政再建も容易に達成するだろう。逆に消費増税を強行すれば、名目GDP600兆円も財政再建も達成は不可能だ。

 経済成長と財政再建を同時に達成するには、再増税を中止することがベストであるが、ギリギリの政治折衝の末、経済成長にダメージを与えない期間として、19年10月までの「2年半」が出てきたのだろう。20年の東京五輪を控えて景気過熱を予防する役割もある。

 もちろん、19年4月の統一地方選、同年7月の参院選の後という政治日程も考慮されているはずだ。18年9月の安倍首相の自民党総裁任期を1年超えているという点も注目に値する。

 また、今の衆議院議員の任期は18年12月までであり、19年10月までのことに責任が取れない。ということは、今回は盟友の公明党の意向で衆院解散を見送ったが、そのうち解散するという手も残っている。

 過去に日本がサミット(主要国首脳会議)議長国を務めたのは1979年、86年、93年、2000年、08年と5回ある。このうち、政権交代の不安があった08年以外はすべて衆院選が行われた。ひょっとしたらサミット議長国の年に衆院解散という経験則は今年もあてはまるかもしれない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】参院選後は増税派失脚!次の衆院選では、機動的財政・金融政策が争点に?

消費税増税に関しては、見送られて本当に良かったと思います。今回の消費税増税の見送りか、予定通りに増税するかに関しては、財務省はほとんどかかわらなかったそうです。いわゆる「動くな作戦」プロジェクトを実行していたそうです。それに関しては、以下の動画をご覧いただければ、よくお分かりになると思います。



財務省が増税に関して、何も動かなかったということは、当たり前といえば当たり前です。以下のグラフをご覧ください。


8%増税の災厄のすさまじさはグラフを見れば一目瞭然です。国内総生産(GDP)の6割を占める家計消費は1997年4月の消費増税時、2008年9月のリーマン・ショック時よりもはるかに大きく落ち込み、2年経っても再浮上していません。

まさにL字型不況であり、再増税どころではありません。増税延期に加えて財政出動を金融緩和に組み合わせる政策は当然の選択です。こんなときに、さすがの財務省も大増税キャンペーンをすることはできなかったのでしょう。

それと、次期財務次官の人事の問題も絡んでいました。官邸が霞が関に対して強大な権力を持つ理由の1つに官僚人事の掌握があります。安倍政権は14年5月、内閣人事局を発足させ、審議官級以上の幹部約600人の人事に官邸が関わる制度を作りました。現財務事務次官の田中一穂氏は第一次政権で首相秘書官を務めました。1979年度入省組の中で3人目で、事務次官は1期1人を通例としてきた同省では異例の人事です。
【日本の解き方】経済成長なくして財政再建なし 歳出カットのみ主張なら財務省の術中―【私の論評】財務省・内閣府の嘘吐き官僚には、徹底した報復人事を行い、政治主導を達成せよ(゚д゚)!
霞が関人事は、安倍首相(左)、菅官房長官の官邸サイドの意向が強く働くようにはなったが・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 内閣人事局(ないかくじんじきょく)は、内閣官房に置かれる内部部局の一つです。2014年(平成26年)5月30日に設置されましたが、実際に人事に関与するのは、2015年6月がはじめてでした。その結果、現財務事務次官の田中一穂氏が誕生しました。田中一穂は第一次政権で首相秘書官を務めていました。1979年度入省組の中で3人目で、事務次官は1期1人を通例としてきた同省では異例の人事でした。

ちなみに、財務省は、田中一穂事務次官(60)の後任に、佐藤慎一主税局長(59)が就く人事を固めました。首相官邸の人事検討会議を経て、6月中旬にも発令します。財務次官には予算編成を担う主計局長が昇格することが多く、主税局長が次官に直接昇格するのは1981年以来35年ぶりのことです。今年も、昨年に引き続き異例の人事が行われました。やはり、官邸サイドの意向が強く働いた結果であると思います。

財務省は、弱くなったのは事実ですが、まだまだ粘り腰で様々な活動をしています。財務省は早くもポスト安倍を視野に入れた動きもみせていました。その1人が自民党の稲田朋美政調会長です。

「財政再建に関する特命委員会」の委員長も務める稲田氏は女性初の首相候補として話題に上っていました。昨年の骨太の方針の策定時には歳出キャップの明記を主張し、甘利明前経済再生相と対立。また、上の動画にもあるように、ごく最近まで増税にこだわっていました。稲田氏の元には同省関係者が足しげく通っていました。

そうして、稲田政調会長は、先月30日午前、官邸での安倍晋三首相との会談後、首相から消費税増税を延期したいとの話があったとし、これに対して「延期するなら前回選挙との整合性で国民の信を問うべきと申し上げた」と述べていました。選挙については、首相といろいろ話したと明かしましたが、「ここで申し上げることではない」と述べるにとどめました。

消費増税については、稲田政調会長から、来年4月から1%ずつ上げるべきと提言したそうです。

自民党「屋台村」、被災地名物に舌鼓 谷垣コック、牛タンカレー振る舞う。牛たんカレーをよそって配る
谷垣禎一幹事長(右)と稲田朋美政調会長(左から2人目)3月12日日午後、東京・永田町の自民党本部
このようなことから、稲田氏の初の女性首相の見込みは、上の動画にもあったように、参院選の後におそらく行われるであろう、内閣改造で断たれる可能性も高いです。それから、当然のことながら、谷垣さんも危ないです。その他にも、自民党内であまり増税、増税と騒いでいた人は淘汰されるかもしれません。

民進党の岡田代表も、あまりにも与党の消費税増税延期に対する対応が、不味すぎるので、参院選挙の後で岡田おろしの嵐が吹き荒れるかもしれません。特に、参院選が惨敗になったらその責任を問われるのは間違いないです。

それにしても、財務省は負けたふりがうまいです。そもそも、10%への消費増税は選挙を経ずに決めたのに、増税延期には信を問わなければいけない現状はまさに、「民主主義に対する官僚支配の構図」以外の何ものでもありません。「衆参同日選挙で消費増税の延期」という発想自体が財務省の「わな」です。

消費税凍結とならず、増税の先延ばしということは、結局まだ財務省が立ちはだかっているいるということです。 
財務省はこのまま力を失っていくのか、それとも負けたふりをしているのかわかりません。しかし、政治家には寿命がありますが、財務省の寿命は無限大です。本当はだからこそ、国の財政は政治主導であるべきなのです。
なぜなら、財政に失敗すれば、政治家は選挙で、国民から信を問われることになり、その失敗の原因が国民に納得できないものであれば、次の選挙で国民の審判を受けて政権交代ということになります。
しかし、財務省の官僚はそんなことはありません。官僚には選挙なるものはないので、失敗しても、成功しても関係なくよほどのことがない限り、官僚のまま定年になるまで財務官僚であり続けることができます。それどころか、先程述べたように財務省という組織の寿命は無限大です。
だからこそ、現在のように、財務省が国の財政の方向に大きく影響を及ぼすようなことがあってはならないはずです。本来は、政府が国の財政政策の方針を定めて、財務省の官僚は専門家的立場から、その方針を実現するために、様々な方法を模索して、実行するというのが本来のあり方です。

そうして、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事でもっとも気になったのは、以下のところです。
 GDP低迷を放置しておくと、雇用まで悪くなる。理論的には、8%から5%に減税するのが経済政策の筋だが、消費税は社会保障目的税とされているので、実際に減税する場合、社会保障関係予算の組み替えなどが必要で、実務的・政治的に困難だ。

本来ならば、財務省は政府が消費税を減税するというのなら、社会保障関係予算の組み替えの作業をすみやかに行うべきです。それこそ、官僚の本来の仕事です。私は、高橋氏が上の記事で掲載したような経済対策よりも、官僚に仕事をさせ、5%減税を実施すべきと思います。

なぜなら、経済対策は長期にわたっては続けられないからです。一方、8%増税も含めて、消費税増税は一度増税されると、それは不可逆的で永遠につづくものと見られています。

実際、過去には消費税は、上がる一方で、下がることはありませんでした。だから、経済情勢はどうであれ、一度決まった消費税率は下がることはないと思われています。

これでは、結局大規模な経済対策を行っても、それは一時のことであり、一度あげられた消費税率は、永遠に下がらないものと多くの国民は、思っているため一時の経済対策を行っても、長期的には消費が冷え込む恐れがあります。

しかし、ここで消費税を5%に減税したらどういう効果があるでしょうか。無論、8%増税の悪影響を取り除くことができます。しかし、これは一つの効果でしかありません。もう一つ大きな効果があります。

それは、一時上がった消費税は下がることもあり得ると多く国民に理解してもらえることになります。これは、マクロ経済学では当たり前のど真ん中です。増税、減税は政府がその時々で採用する財政政策の一つすぎないのです。

財務省の意向などとは全く無関係に、政府はその時々の経済情勢に対応して、景気が悪ければ、積極財政を行い、景気が良ければ、緊縮財政を行うというのが正常な姿です。

積極財政とは、減税、公共工事を増やす、給付金を増やすなどの政策です。緊縮財政とは、増税、公共工事を減らす、給付金を減らすなどの政策です。

これこそ、安倍総理が伊勢志摩サミットで共同宣言に盛り込んだ「機動的な財政政策」です。

マスコミは機動的財政政策の意味を曲解しているかもしれない
この「機動的財政政策」という言葉をマスコミは、ドイツ首相や、イギリスの首相が財政出動に慎重な姿勢を崩さなかったためであると、判断しているようですが、私はこの判断は妥当ではないと思います。

要するに、「機動的財政政策」とは、マクロ経済学でいうところの当たり前のど真ん中を指しているのです。これなら、いくら直近の財政出動に慎重姿勢のドイツ首相や、イギリス首相でも「ノー」とは絶対に言えないはずですし、それに経済政策としても正しいです。

過去の日本のように景気が悪いのに、緊縮財政を実施しているのは全くの誤りだし、景気が加熱しているときに積極財政をするのも全くの誤りです。ドイツ、イギリスだって、直近では財政出動に慎重であったにしても、さらに景気が悪くなれば、当然積極財政に転ずるべきです。

このまともな「機動的な財政政策」を実行するための第一歩として、消費税を5%に戻すという政策は望ましい政策であると考えます。

安倍総理には、日本が「機動的な財政政策」ができるようになるため、次の衆院選挙で減税は無論のこと「機動的な財務政策」を公約に入れて、選挙に臨んで大勝していただきたいものです。

そうして、日本では政府主導による「機動的な財政政策」が当たり前になるようにしていただきたいものです。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は「サミット議長国の年に衆院解散という経験則は今年もあてはまるかもしれない」としていますから、ひよっとして年内に衆院解散総選挙があるかもしれません。

その時に「機動的な財政政策」が公約に盛り込まれればベストですが、それができないというなら、まずは「消費税を5%」に減税でも良いと思います。そうして、その後に「機動的財政政策」としても良いと思います。

それと、最近は、日銀がまがりなりにも、金融緩和を実施しているので、雇用も改善していますが、日銀法改正もいずれかの選挙で公約に盛り込み、是が非でも日銀法を改正して、現状の誤った日銀の独立性をただしい、正しい中央銀行の独立性を導入して頂きたいものです。

中央銀行の独立性とは目標ではなく、手段の独立性であるという本来の姿にすべきです。金融政策の目標はあくまで政府が設定し、中央銀行は、その目標を達成するため、専門家的立場から、手段を自由に選ぶことができるという本来の姿に戻すべきです。

これも、政府による「機動的な金融政策」である、政府がその時々の経済状況にあわせて、目標を定めて、景気が悪ければ、金融緩和、景気が加熱すれば金融引き締めを日銀に実行させることのできる体制を整えるべきです。

日銀の政策決定会合で決まるなど、とんでもありません。日銀も、財務省のように政府の一下部機関に過ぎません。日本国の金融政策の目標はあくまで、民主的な手続きで定めらた政治家による日本政府が定めるべきものです。

とにかく不況になったときや景気が加熱した場合には、政府が財務省や日銀とは全く関係なしに、政治主導によって、財政政策や金融政策の目標を定め、その目標を財務省や日銀の官僚が実行する体制にすべきです。

そうでないと、今後も失われた20年などのような、馬鹿げた事態が再発することは防ぐことができません。

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2014年11月21日金曜日

クルーグマン氏が決定的役割-安倍首相の増税延期の決断で―【私の論評】ブルームバーグ日本語版記事から抜け落ちた部分の意味を理解せよ!今回の安倍総理の増税見送り、解散・総選挙は、財務省に挑戦状を叩きつけたのだ(゚д゚)!

クルーグマン氏が決定的役割-安倍首相の増税延期の決断で

ボールクルーグマン博士
11月21日(ブルームバーグ):ノーベル経済学賞受賞者、ポール・クルーグマン氏の訪日予定を耳にした際、本田悦朗内閣官房参与は、再増税をめぐる議論を慎重派に有利な方向に導く好機が到来したと思った。

安倍晋三首相にとって、消費税率を2015年10月に10%に引き上げることの是非を決断する期限が近づきつつあった。今年4月の8%への引き上げの影響で、日本の景気は四半期ベースとして世界的な金融危機以降で最も深刻 な落ち込みに見舞われ、その後の回復の足取りもおぼつかない状況だった。

安倍首相と30年来の知己である本田氏(59)は、4月の増税反対に続き、15年の増税延期を首相に助言。そこに登場することになったのが、自身のコラムで日本の増税延期が必要な理由を説いていたクルーグマン氏だった。

本田氏は20日、オフィスを構える首相官邸でインタビューに応じ、「あれが安倍総理の決断を決定づけたと思う。クルーグマンはクルーグマンでした。すごくパワフルだった。歴史的なミーティングと呼べるものだった」と、首相とクルーグマン氏の会談を振り返った。

助っ人

帝国ホテルから官邸への高級車の車内で本田氏は、安倍首相との会談がいかに重要かをクルーグマン氏(61)に説明した。増税延期で首相を説得する手助けをクルーグマン氏にしてもらえる可能性があった。  クルーグマン氏は今月6日の首相との会談について、自身が首相の決断に及ぼした役割の大きさには控えめな態度を示す。同氏は20日の電話インタビューで「首相の質問には明確に答えられたと願う。私がこれまで書いてきたようなことうまく説明できたと思うが、首相の考えにどこまで影響があったかは分からない」と話した。その上で、増税延期の決定を「歓迎する」と語った。

海外の著名経済学者の助けを借りたいと考えていた本田氏は、クルーグマン氏が東京での講演のため訪日することを偶然知った。「クルーグマンならと思っていたが、ミーティングのためにわざわざ日本に来てれくれないと思っていたら、たまたま日本に来ることを聞いてこれを使わない手はないと思った」と明かす本田氏は、首相とクルーグマン氏の20分間の会談のお膳立てに成功。会談は予定時間の倍近くに及んだ。

会談に同席した本田氏によると、クルーグマン氏は冒頭、アベノミクスを高く評価。唯一の問題は消費増税だと訴えた。会談が終わるまでには、首相は延期を決めるだろうと本田氏は確信を持ったという。

官邸での会談

やはり会談に臨んだ浜田宏一内閣官房参与は18日のインタビューで、「安倍首相はクルーグマン氏の説明をとても注意深く聞いていた」と振り返り、「恐らく首相の決断を手助けしたのではないか」との認識を示した。

安倍首相はNHKで「先般、ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン教授と話した」と言明。「彼の意見は、アベノミクスを支持する。しかし今度の消費税引き上げは慎重にいくべきだ。そうしなければ景気が腰折れしてしまう。となればデフレから脱却できず、経済再生、財政再建もおぼつかないという話だった。私もその通りだと思う」と述べた。

クルーグマン氏は17年4月の10%への引き上げをめぐっては、「ある時点で歳入の拡大を図る必要がある点は理解する」とした上で、「私としては『インフレ率が2%程度に達してから引き上げる』といった条件付きの延期の方が望ましいと考えるが、そうした可能性がないことも理解している」と語った。

原題:Abe Listening to Krugman After Tokyo Limo Ride on Abenomics Fate(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 藤岡 徹tfujioka1@bloomberg.net;ロンドン Simon Kennedyskennedy4@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Christopher Ansteycanstey@bloomberg.net Brett Miller更新日時: 2014/11/21 13:21 JST

【私の論評】ブルームバーグ日本語版記事から抜け落ちた部分の意味を理解せよ!今回の安倍総理の増税見送り、解散・総選挙は、財務省に挑戦状を叩きつけたのだ(゚д゚)!

さて、このブルームバーグの記事の英語の元文には、実は日本語版には掲載されていないことが盛り込まれていた。

それに関しては、前田敦司氏が、ツイートしていますので、そのツイートを以下に掲載します。
確かに、英語版をみると、リフレ派頭脳集団の前に、増税させじと財務省の官僚らが、たちはだかっていたことが掲載されています。

日本語版の最後に(抜粋)とことわってありますし、記者・編集者は英語版も抜粋日本語も同じ人たちによるものです。

さて、これを私達は、どのように解釈すれば良いのでしょうか。これは、昨日のこのブログをご覧いただければ、良くご理解いただけると思うので、その記事のURLを以下に掲載します。
【衆院選】首相はなぜ解散を決断したのか 幻となった4月総選挙 決断を早めたのは…―【私の論評】産経新聞ですらのってしまった昨年の総理増税決断の虚偽報道!今年は破壊的革命集団財務省が、安倍総理の解散時期をはやめた、その意味するところは?

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、昨年の増税政局においては、新聞は安倍総理が、「増税決断」を正式に発表する前から、どの新聞も例外なく各紙一斉に「安倍総理、増税決断」と報道する異様な自体が発生していました。

そうして、政治家のほとんどが増税推進派となり、識者も増税一色という異様な状況のなかで、安倍総理は増税を決断せざるをえなかったことを掲載しました。そうして、日本のほとんどの勢力が「増税一色」で固まった背景には、財務省の増税キャンペーンがあったことを掲載しました。

これを掲載した後で、この記事は、以下のように結びました。
今から、思えば、安倍総理は8%増税も本当はやりたくなかったということが良くわかります。それは、今年の動きを見れば、はっきりしています。そうして、本当は、去年の9月でも増税は阻止できたはずです。法律の条文など、一日もあればかえられます。
しかし、昨年は財務省の木下康司を筆頭にする、増税推進派の恐喝により、特に自民党の幹部をはじめとする、政治家が徹底的に「増税容認」を固めてしまいました。身動きがとれなくなってしまった安倍総理は、長期政権や、まだまだやり残したことを成就するためにも、「増税の決断」をセざるを得なかったのです。
その木下氏は、実は強大な権力を持つ、財務省の権化のような存在であり、これについては、上念司氏が、わかりやすく解説していますので、その動画を以下に掲載します。

木下氏は、財務次官だったときには、繰越予算など、憲法解釈上認められないはずなのに、つるの一声でそれを実現してしまいました。この動画でも、上念氏が述べているように、このようなことは、総理大臣でも出来ないことです。日本には、このような国民の選挙で選ばれた議員による国会や、政府の他に、財務省の一部の人間や、一部のOBなどによる大きな影の強力な権力集団があるということです。
その影の権力集団が、昨年に続き、今年も増税恐喝を続け、他省庁の官僚はもとより、政治家やマスコミを「増税容認」で固めてしまおうとしたのですが、さすがに、そうはいかなかったというのが、今年の流れです。
そもそも、世論が7割がた、増税に反対なのに、無理に増税に踏切るという事自体が、異常です。昨年は、安倍総理としては、解散総選挙というわけにもいかず、増税に踏み切らざるを得ませんでした。ゆくゆくは、20%増税も視野に入れている財務省は最早、政府の一下部機関とはいえません。破壊的革命集団とでも呼ぶのが相応しいと思います。
20%増税などしてしまえば、日本経済も国民も疲弊してどうしようもなくなることははっきりしています。しかし、そんなことはお構いなしに、財務省はいずれそれを実現しようとしています。これでは、破壊的革命集団と呼ぶ以外に適切な名称などありません。
これは、見方を変えてみれば、単なる日本経済や財政、デフレに関することだけではなく、安倍総理の第二の権力への挑戦とみてとるべきです。 
そうして、この挑戦は、すぐに結果がでるものではありません。長きにわたって、展開されることになると思います。 
さて、あなたは、どちらに与しますか。正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側ですか、それとも影の権力ですか。 
私としては、無論のこととして、正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側にたちます。
それにしても、安倍総理の増税見送り、解散・総選挙宣言!ようやっと、日本でも正当ではない権力に立ち向かう総理大臣がでてきたということで、この部分では財務省に一矢報いたということで、勝利と見て良いのではないでしょうか。 
ただし、これからも戦いは長く続きます。影の権力が日本よりなくならない限りこの戦いは終わりません。 
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
このように、今回の安倍総理の増税見送り、解散総選挙は、財務省に対する宣戦布告でもあったのです。それを昨日も掲載したのですが、これでは憶測にすぎなかったものです。しかし、本日の上のブルームバーグの記事、それに日本語版などで、掲載されなかった部分があるというこの事実。

なぜ、英語版では掲載して、多くの英語圏の人々に読んでもらっても良いものが、日本国内版ではカットされるのかということの裏を読んでいただければ、ご理解いただけるのではないかと思います。

なぜか日本では、財務省現役とOBの一部の人間が、全部とはいいませんか、選挙で選ばれた国会議員や、内閣よりも、多方面にわたって、強力な権力を持っています。

たとえば、上の動画でも上念氏が説明しているように、財務省は今年の春に、予算の繰越をできるようにしましたが、法解釈上これは本来なら安倍総理でも一存ではできません。しかるべき正当な手続きの後でないとできることではありません。しかし、当時の木下康司財務次官は、鶴の一声でこれをやってのけました。

日本では、まだ、こうした権力の二重構造があるのです。こうした二重構造に挑戦しようとしたのが、故中川氏でした。

中川氏は、財務省の特別予算というおそろしく複雑怪奇な仕組みに切り込み、財務省の埋蔵金ということをいいだしました。中川氏も財務省の権力に挑戦しようとしたのでしょうが、その志は誠に残念ながら中途でついえてしまいしまた。この志を引き継いでいるのが、安倍総理です。

左より、高橋はるみ北海道知事、安倍晋三氏、在りし日の中川一郎氏
安倍総理の今回の増税見送り、解散・総選挙は、こうした二重権力廃止への挑戦を宣言をしたということです。いかに財務省とはいえども、官僚が表だって、10%増税を実行することはできません。それに、選挙によって正式な手続きを経た後に、民主的な手続きよって、誕生している総理に対して、あれこれ指図もできません。

財務省の権力は、あくまでも間接的なものです。日本国の財布の紐を握っているということで、それを利用して、ありとあらゆる手段を使って、他省庁や、政治家に圧力をかけ、自分たちにとって都合のよいように政治を動かしていくというのが彼らのやり方です。

それは、増税政局もそうでした。財務省は、昨年も今年も同じく、ご説明資料を持って、政治家やマスコミを回っていました。とはいいながら、その内容は、まさに恐喝でした。増税しないと、あれはできないぞ、これもできないぞという脅しです。安倍総理が何らかの行動にも出なければ、今年も昨年と同じように、増税が決まっていたことでしょう。

でも、今年は、いろいろな人が、財務省の増税推進の間違いについて、新聞は報道しなくても、徹底的にサイトなどのメディアに掲載するなどのことで、その真相ははっりきとはわからなくても、間違いであること、自分たちにとっても、良くないことであることが、理解され、多くの人達が増税に反対でした。

ここを突いたのが、安倍総理です。解散総選挙して、圧倒的多数を勝ち得ることができば、財務省とて、これを無視するわけにはいきません。そうして、安倍総理は無論、こんなことは見通していましたし、10%増税など実行すれば、経済がかなり落ち込み、安倍政権どころか、自民党政権も危うくなるということに気づいていました。

だから、クルーグマン氏の訪問と、安倍総理に対するアドバイスは、あくまでコーチング的なものであったと思います。コンサルティングなどとは異なり、コーチングでは、コーチングを受ける側に、考えて自ら問題を解決する力をつけさせるのが最終的なゴールです。クルーグマン氏も、すでに安倍総理が持っている答えを後押ししたということです。

それに、こうしたノーベル学者のアドバイス内容を公表することにより、対外的なアピールに使うという目的もあったでしょう。そもそも、クルーグマン氏は学者です。日本の経済について、経済的な観点からアドバイスはできても、日本に政局に対するアドバイスはできません。

アメリカの政局なら、それなりに理解していて、特にブッシュ政権に対する批判は、かなり辛口で辛辣でしたが、日本の政局についてはそんなに詳しくないし、他国の財務省を手ひどく批判するわけにもいきません。それに、ここ最近の増税論議などは、経済理論や、理屈など完璧に脇においた次元であり、政局そのものでした。

ただし、今回の安倍総理の挑戦は、これから長く続くであろう、最初の一回です。しかし、安倍総理には、今回のことを忘れてほしくはありません。それは、民意が自分の側についていれば、財務省も手出しはできないし、出せば大やけどをするということです。

以上のようなことは、全く表には出ないので、多くの人が知らないですし、マスコミも報道しません。水面下での戦いです。ただし、いずれ財務省の敗北が濃厚になった場合は、報道されるようになるかもしれません。しかし、今のところは、財務省がまだまだ優勢なので、しばらくは表には出てこないでしょう。

いずれにせよ、日本のような先進国において、権力の二重構造があってはならないはずです。この二重構造を廃することが、本当の意味での政治主導です。民主党がやろうとした、政治主導など、最初から間違っていました。事業仕分けや、官僚の天下りばかり追求したとしても、元を絶たなけれは、政治主導はいつまでたっても成就しません。

このような観点や背景から、増税政局、マスコミの報道姿勢、政治家の行動をみると、様々なことが浮かび上がってきます。しかし、このような観点がなければ、日本の政治、政局は全くみえてきません。今回の選挙の大義は何かなどと、まだ馬鹿なことを言っている政治家や、マスコミ関係者が大勢いますが、かれらは政局もまともに、見ることができない大馬鹿者だと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どうおもわれますか?

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