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2019年5月22日水曜日

【国家の流儀】日本企業の多くが中国に買収され、中国人経営者のもとで日本人が働き… それでいいのか? 今こそデフレ脱却に全力を―【私の論評】過去20年にもわたって世界で日本だけが経済成長しなかったことに国民はもっと怒りを顕にすべき(゚д゚)!


安倍総理は消費税増税を強行するのか

「10月に予定されている消費税率引き上げを実施すれば、デフレ脱却が難しくなるだけでなく、日本発のリーマン・ショック級の危機誘発になりかねず、増税凍結が適切だ」

 国際金融の専門家である本田悦朗前スイス大使は16日、ロイターとのインタビューの中でこう述べた。

 たった2%でも消費税増税は、景気に大きなダメージを与える。

 日本自動車工業会の豊田章夫会長(トヨタ自動車社長)は昨年9月20日、「消費税を3%から5%に引き上げた際は国内需要が101万台ほど減り、二度とそれ以前のレベルに戻っていない」と指摘したうえで、今年の消費税増税によって30万台の需要減、経済効果マイナス2兆円、9万人の雇用減につながる可能性があると訴えた。

 買い物をするたびに“罰金”を科すような消費税という制度は、日本のGDP(国内総生産)の6割を占める個人消費を縮小させてきたのだ。しかも、この個人消費の縮小とデフレが地方の衰退を加速させてきた。

 2014年の時点で、国内の企業数は382万社を数えるが、大企業は1万1000社に過ぎない。これまで380万社に及ぶ中小企業が地方経済を支えてきたのだが、このままだと、その3分の1にあたる127万社が25年までに廃業し、約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われると言われている。実に、就業者の10人に1人が失業する計算だ。

 そこで、政府も事業承継に伴う税負担の軽減など、中小企業対策に力を入れている。アベノミクスに伴う緩やかな景気回復とともに廃業率は低下する一方、開業率は上昇して17年には5・7%と、1992年以来、25年ぶりの高水準に達した(2019年度版『中小企業白書』)。

 ところが、ここで消費税増税に踏み切ると、再びデフレ、つまり「消費税増税→個人消費の縮小→売り上げ減少→雇用や設備投資の縮小と中小企業の減少→地方経済の衰退→失業率の上昇」という悪循環が再発することになりかねない。

 しかも、このデフレの再発は「日本没落への道」なのだ。

 民主党政権の末期の12年4月、日本経団連は「グローバルJAPAN~2050年 シミュレーションと総合戦略」という報告書を出した。この中で、日本経済が今後も低迷するならば、50年時点で「中国、米国、次いでインドが世界超大国の座につく一方で、日本のGDPは中国・米国の6分の1、インドの3分の1以下の規模となり、存在感は著しく低下する」と指摘した。

 日本がデフレ脱却に成功しなければ、いずれ中国の6分の1の経済規模になりかねない。それは「日本の香港化」、つまり日本企業の多くが中国に買収され、中国人経営者のもとで多くの日本人が働くようになることを意味する。

 果たしてそれでいいのか。いまはデフレ脱却に全力を傾けるべきである。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。他の著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『天皇家 百五十年の戦い』(ビジネス社)など多数。

【私の論評】過去20年にもわたって世界で日本だけが経済成長しなかったことに国民はもっと怒りを顕にすべき(゚д゚)!

世界は過去20年で平均2.4倍の経済成長をしています。その中で20年以上全く経済成長をしなかった唯一の国が日本です。その結果、日本は世界の中で著しく存在感を低下させました。他国と比して国力を維持して行くためには、他国並みの経済成長は絶対に必要です。日本人は国力と経済成長の関係を軽視しているのではないでしょうか。以下国力と経済成長の関係を考えてゆくことにします。

国力とは

国力とは国際関係において、その国が持つ様々な要素を総合したものをいいます。要素として考えられるものは、自然、国民、軍事力、経済力、技術力等であると、ジョージタウン大学のレイ・クライン教授は次のような式を提唱しています。
国力=[(人口、領土)+(経済力+軍事力)×(戦略目的+国家意思)]
これら諸要素の中で経済力が最も重要であると私は思います。なぜなら軍事力の内訳を見ると軍の戦闘能力(兵員数、兵器の性能、兵站基盤等)は経済力と不可分です。最近、チャイナが軍事大国になっていますが、それはチャイナのGDPが急速に拡大し、その経済力が強大な軍事力を生み出していることからも分かります。

技術力について見ると、日本は従来から技術大国でしたが、これを支えていたのは経済力でした。20年間経済成長をしなかった日本は急速に技術力を低下させています。一例を挙げれば各大学への基礎研究費は文科省が決めるのですが、日本が20年間経済成長をしなかったため、その間日本の各大学の基礎研究費は増えることなくむしろ減少しています。

研究開発費の推移 国際比較

上のグラフは「主要国の研究開発費総額の推移:名目額(OECD 購買力平価換算)」を示しています。1996年から2016年までの推移を見ると、米国は35兆円から50兆円と約1.4倍、チャイナは3兆円から45兆円と実に15倍です。EU、ドイツ、フランス、イギリスも着実に増やしています。その中で日本のみが15兆円で殆ど増えていません。10年前の2006年と比べると減少していることがわかります。

この結果、基礎的な研究、例えば、国際的な論文数、特許件数等、国際的技術力評価で日本は劣勢となっています。


分かり易いのが上の表です。引用される頻度の高い論文数の推移ですが、2002年ごろまで日本は世界第4位であったのが、10年後チャイナだけでなくイタリアやスペインにまで抜かれ10位に転落しています。おそらく最近はもっと順位を落としているのではないかと、情けない気分になります。

論文の数に代表される日本の基礎的な技術力は急速に落ちているようです。精神力だけではどうにもならないのです。世界は平均で約2.4倍の経済成長をしており、各国の研究費は数倍に増えている。日本も他国並みに経済成長をして研究費を増やしていかなければ、早晩技術力を失い、先進国から脱落することになるでしょう。

国力とは経済力

誤解を恐れずに言えば、技術力の例でも分かるように、国力=経済力と言っても間違いはないと思います。政治力、外交力、軍事力、技術力、文化力もその根底には経済力があるのです。

つまり国力の最も基盤のところにあるのが経済力なのです。その大事な経済力が日本の場合、20年以上にわたり停滞していたのです。この責任は政治にあるのは当然ですが、一方で国民にもその責任があるのではないかと思います。

日本は民主主義国です。国民に主権があるのだから、政治が間違っていれば国民が声を上げそれを正さねばならないです。経済の本質を国民が理解していれば政府・財務省・日銀や誤れる経済学者らの誤りに気付いて、これを正すことが出来た筈です。

無論、一部の人たちは、これに対して意見を述べたり、抗議をしていました。私はそれを否定するつもりはありません。しかし多くの国民は20年以上声を上げませんでした。国民も経済の本質が分かっていなかったようです。それこそが本当の問題なのでしょう。

豊かさを取り戻そう

経済の目的は経世済民、即ち国民を豊かに幸せにすることです。憲法第13条にすべての国民は幸福追求の権利があり、政治はこれを最大限尊重すべしとあります。その観点から過去20年間の日本の政治を見ると、完全に失敗だったと言えます。

20年間経済成長をしなかったと言うことは、20年間日本国民の所得が増えなかったと言うことなのです。安倍政権になり多少持ち直していますが、それでもピークの時より国民の所得は減少しています。言い換えれば国民は貧乏になっているのです。このことを指摘する識者は少ないです。

国民が幸せに感じるのは、今日より明日、明日より明後日、所得が増えることで実感するのです。日本の政治は20年間、国民からこの豊かさを奪ってきたのです。今からでもよいプライマリーバランスの達成・緊縮財政などと言うインフレ対策をやめ日銀がさらなる金融緩和を実施し、財務省が財政支出を増やし需要を喚起するという正しいデフレ対策を実行すべきなのです。

今年の10月に増税などやっている場合ではありません。そうしてデフレを脱却すれば他国並みに経済成長が可能となります。国力の元は経済力、経済力の指標は経済成長・GDPの増加であることを認識し、財務省や経済学者のいう「国の財政赤字で財政破綻」という大嘘に騙されることなく、正しいデフレ対策を早く実施すべきなのです。一日も早く政治家は勿論のこと国民が目を覚ますことを願ってやまないです。

以下のグラフは世界主要国が過去20年間にどれだけ経済成長をしたか示したものです。チャイナは13倍、インドは5.7倍、イタリア、ドイツは1.4倍、日本は1.0倍であることが分かります。日本だけ全く成長していないのです。このグラフを見て怒りを感じない日本人が多いのには驚きです。



この期に及んで、未だに増税しようなどと言っている政治家や官僚に対して私達はもっと怒るべきなのです。多くの人々が、幸福をなかなか実感できないとすれば、そのほとんどは自己責任ではなく、実はデータが示すように、少なくとも過去20年間については、大部分が政府の責任なのです。日本人は奥ゆかしいところがあり、なかなかそのようなことはいいませんが、現実はそうなのです。

それは以下のグラフ自殺者数の推移からみてもうかがえます。


最近は、安倍政権が成立してから、自殺者数は2万人台ですが、デフレが深刻だった時期は、毎年の自殺者数のが3万人台で推移していました。

経済政策のまずさは、科学技術の発展を遅らせるだけではなく、人の命まで奪うです。これについては、以前このブログにも詳細に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
“安倍辞めろ”の先にある「失われた20年」とデフレの再来 雇用悪化で社会不安も高まる―【私の論評】安倍首相が辞めたら、あなたは自ら死を選ぶことになるかも(゚д゚)!
自民党候補の応援演説を行った安倍晋三首相=17年7月1日午後
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、ソ連崩壊後のロシア政府の経済政策がまずすぎて、いっとき男性の平均寿命が、57.6歳にまで落ち込んだことがあります。これは、自殺者やアルコール依存症が増えたためです。経済政策のまずさは、人を殺すこともあるのです。

先に、国力=経済力と言っても間違いはないと書きましたが、経済はいっとき悪くなったにしても、極端に悪くならなければ、優秀な人が存在すれば、いずれ復活することはできます。しかし、人がいなくなれば、それもかないません。

ちなみに、冒頭の記事の江崎氏は、日本経済が今後も低迷するならば、50年時点で「中国、米国、次いでインドが世界超大国の座につく一方で、日本のGDPは中国・米国の6分の1、インドの3分の1以下の規模となり、存在感は著しく低下する」という事実をしてきしています。

この中にロシアはでてきません。どうしてかといえば、現在のロシアの経済規模は、かなり縮小して、GDPは日本の東京都を若干下回っているからです。これは、韓国を下回る水準です。このロシアが今後日本をしのぐような経済大国になることはないです。

やはり、人を大事にしなかったつけがまわって来たのではないかと思います。人を大事にするためにも、経済を落ち込ませせるとか、デフレにしてはいけないのです。

なにやら、日本では、デフレが当たり前になってしまっていますが、日本が過去にデフレでさえなけば、日本も他の国々の平均くらいの成長ができたはずなのです。デフレは、通常の経済循環を逸脱した経済の病です。

通常の経済循環では、良い時と悪い時が交互に訪れます。常時良い状態を保つことはできません。しかし、デフレは悪い状態ではなく、明らかに異常な状態なのです。デフレになっても、物価が下がるのは緩慢なので、多くの人々はなかなか気づきませんが、これは人間の病気でいえば癌のようようなものです。放置しておば、徐々に病気が進行して、取り返しがつかないことになります。

放置することは許されません。しかし、過去には放置するどころか、増税したり、金融引き締めをするというとんでもない対処法してきたのです。これは、病人や老人に対して、休みを与えないどころか、過度な運動を続けさせるようなものです。

こんなことをすれば、経済が伸びることはありません。もし少なくとも、日本が他国のような政策をとらなくても、増税や、金融引き締めなどの余計なことをせずに何もしなければ、日本はまだまだ成長していたはずです。日本はデフレから脱却さえできれば、これからかなり伸びるのは確実です。

これらのデータをみれば、これだけ、日本では過去の経済政策の失敗が明々白々なのに、また増税などと誤った政策を実行すれば、日本はまたデフレから脱却できず、同じことの繰り返しになってしまうことは明らかです。そのようなことをさせて良いはずはありません。

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【日本の解き方】令和にデフレ脱却できるのか…最大の課題は消費税と財務省! 健全な経済感覚を持つべきだ―【私の論評】安倍総理はなぜ財務省に面と向かって逆らえないのか?

2016年6月4日土曜日

【日本の解き方】増税延期の深謀遠慮 経済成長と政治日程の妥協点 サミット議長国の年は解散の経験則が…―【私の論評】参院選後は増税派失脚!次の衆院選では、機動的財政・金融政策が争点に?

【日本の解き方】増税延期の深謀遠慮 経済成長と政治日程の妥協点 サミット議長国の年は解散の経験則が…

1日の記者会見で消費税増税の延期を発表した安倍晋三首相
 安倍晋三首相は1日の記者会見で消費増税の2年半延期を発表する一方、衆参同日選は回避するとした。

 民進党は消費増税を延期する法案まで出したのだから、安倍首相の方針に賛同するのが道理だが、なぜ批判したいのかさっぱりわからない。

不可思議な発言をする民主党岡田代表
 参院選では「アベノミクスの失敗」を争点に掲げるというのだが、アベノミクスの柱で、民進党が批判的な金融緩和政策は、雇用の改善という形で結果を出している。

 ちなみに、4月の有効求人倍率は1・34倍と24年5カ月ぶりの高水準だ。沖縄県、鹿児島県以外の45都道府県で有効求人倍率が1を超えている。民主党政権時代、最大8都県しかなかったのと好対照だ。

 国内総生産(GDP)が低迷しているのは、民主党政権時代に成立した消費増税法によって2014年4月から消費税率を5%から8%に引き上げたためである。3党合意があったので、自民党と公明党の責任も免れないが、10%への再増税先送りは、やる場合とやらない場合のメリット・デメリットを合理的に判断した結果であろう。

 GDP低迷を放置しておくと、雇用まで悪くなる。理論的には、8%から5%に減税するのが経済政策の筋だが、消費税は社会保障目的税とされているので、実際に減税する場合、社会保障関係予算の組み替えなどが必要で、実務的・政治的に困難だ。

 そこで、消費増税を延期した上で、消費減税と実質的に同じ経済効果となるような財政支出増を行うのが現実的な解となる。

 筆者の試算では、消費増税スキップと30兆円程度の財政支出を行えば、20年度の名目GDPは630兆円程度になり、財政再建も容易に達成するだろう。逆に消費増税を強行すれば、名目GDP600兆円も財政再建も達成は不可能だ。

 経済成長と財政再建を同時に達成するには、再増税を中止することがベストであるが、ギリギリの政治折衝の末、経済成長にダメージを与えない期間として、19年10月までの「2年半」が出てきたのだろう。20年の東京五輪を控えて景気過熱を予防する役割もある。

 もちろん、19年4月の統一地方選、同年7月の参院選の後という政治日程も考慮されているはずだ。18年9月の安倍首相の自民党総裁任期を1年超えているという点も注目に値する。

 また、今の衆議院議員の任期は18年12月までであり、19年10月までのことに責任が取れない。ということは、今回は盟友の公明党の意向で衆院解散を見送ったが、そのうち解散するという手も残っている。

 過去に日本がサミット(主要国首脳会議)議長国を務めたのは1979年、86年、93年、2000年、08年と5回ある。このうち、政権交代の不安があった08年以外はすべて衆院選が行われた。ひょっとしたらサミット議長国の年に衆院解散という経験則は今年もあてはまるかもしれない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】参院選後は増税派失脚!次の衆院選では、機動的財政・金融政策が争点に?

消費税増税に関しては、見送られて本当に良かったと思います。今回の消費税増税の見送りか、予定通りに増税するかに関しては、財務省はほとんどかかわらなかったそうです。いわゆる「動くな作戦」プロジェクトを実行していたそうです。それに関しては、以下の動画をご覧いただければ、よくお分かりになると思います。



財務省が増税に関して、何も動かなかったということは、当たり前といえば当たり前です。以下のグラフをご覧ください。


8%増税の災厄のすさまじさはグラフを見れば一目瞭然です。国内総生産(GDP)の6割を占める家計消費は1997年4月の消費増税時、2008年9月のリーマン・ショック時よりもはるかに大きく落ち込み、2年経っても再浮上していません。

まさにL字型不況であり、再増税どころではありません。増税延期に加えて財政出動を金融緩和に組み合わせる政策は当然の選択です。こんなときに、さすがの財務省も大増税キャンペーンをすることはできなかったのでしょう。

それと、次期財務次官の人事の問題も絡んでいました。官邸が霞が関に対して強大な権力を持つ理由の1つに官僚人事の掌握があります。安倍政権は14年5月、内閣人事局を発足させ、審議官級以上の幹部約600人の人事に官邸が関わる制度を作りました。現財務事務次官の田中一穂氏は第一次政権で首相秘書官を務めました。1979年度入省組の中で3人目で、事務次官は1期1人を通例としてきた同省では異例の人事です。
【日本の解き方】経済成長なくして財政再建なし 歳出カットのみ主張なら財務省の術中―【私の論評】財務省・内閣府の嘘吐き官僚には、徹底した報復人事を行い、政治主導を達成せよ(゚д゚)!
霞が関人事は、安倍首相(左)、菅官房長官の官邸サイドの意向が強く働くようにはなったが・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 内閣人事局(ないかくじんじきょく)は、内閣官房に置かれる内部部局の一つです。2014年(平成26年)5月30日に設置されましたが、実際に人事に関与するのは、2015年6月がはじめてでした。その結果、現財務事務次官の田中一穂氏が誕生しました。田中一穂は第一次政権で首相秘書官を務めていました。1979年度入省組の中で3人目で、事務次官は1期1人を通例としてきた同省では異例の人事でした。

ちなみに、財務省は、田中一穂事務次官(60)の後任に、佐藤慎一主税局長(59)が就く人事を固めました。首相官邸の人事検討会議を経て、6月中旬にも発令します。財務次官には予算編成を担う主計局長が昇格することが多く、主税局長が次官に直接昇格するのは1981年以来35年ぶりのことです。今年も、昨年に引き続き異例の人事が行われました。やはり、官邸サイドの意向が強く働いた結果であると思います。

財務省は、弱くなったのは事実ですが、まだまだ粘り腰で様々な活動をしています。財務省は早くもポスト安倍を視野に入れた動きもみせていました。その1人が自民党の稲田朋美政調会長です。

「財政再建に関する特命委員会」の委員長も務める稲田氏は女性初の首相候補として話題に上っていました。昨年の骨太の方針の策定時には歳出キャップの明記を主張し、甘利明前経済再生相と対立。また、上の動画にもあるように、ごく最近まで増税にこだわっていました。稲田氏の元には同省関係者が足しげく通っていました。

そうして、稲田政調会長は、先月30日午前、官邸での安倍晋三首相との会談後、首相から消費税増税を延期したいとの話があったとし、これに対して「延期するなら前回選挙との整合性で国民の信を問うべきと申し上げた」と述べていました。選挙については、首相といろいろ話したと明かしましたが、「ここで申し上げることではない」と述べるにとどめました。

消費増税については、稲田政調会長から、来年4月から1%ずつ上げるべきと提言したそうです。

自民党「屋台村」、被災地名物に舌鼓 谷垣コック、牛タンカレー振る舞う。牛たんカレーをよそって配る
谷垣禎一幹事長(右)と稲田朋美政調会長(左から2人目)3月12日日午後、東京・永田町の自民党本部
このようなことから、稲田氏の初の女性首相の見込みは、上の動画にもあったように、参院選の後におそらく行われるであろう、内閣改造で断たれる可能性も高いです。それから、当然のことながら、谷垣さんも危ないです。その他にも、自民党内であまり増税、増税と騒いでいた人は淘汰されるかもしれません。

民進党の岡田代表も、あまりにも与党の消費税増税延期に対する対応が、不味すぎるので、参院選挙の後で岡田おろしの嵐が吹き荒れるかもしれません。特に、参院選が惨敗になったらその責任を問われるのは間違いないです。

それにしても、財務省は負けたふりがうまいです。そもそも、10%への消費増税は選挙を経ずに決めたのに、増税延期には信を問わなければいけない現状はまさに、「民主主義に対する官僚支配の構図」以外の何ものでもありません。「衆参同日選挙で消費増税の延期」という発想自体が財務省の「わな」です。

消費税凍結とならず、増税の先延ばしということは、結局まだ財務省が立ちはだかっているいるということです。 
財務省はこのまま力を失っていくのか、それとも負けたふりをしているのかわかりません。しかし、政治家には寿命がありますが、財務省の寿命は無限大です。本当はだからこそ、国の財政は政治主導であるべきなのです。
なぜなら、財政に失敗すれば、政治家は選挙で、国民から信を問われることになり、その失敗の原因が国民に納得できないものであれば、次の選挙で国民の審判を受けて政権交代ということになります。
しかし、財務省の官僚はそんなことはありません。官僚には選挙なるものはないので、失敗しても、成功しても関係なくよほどのことがない限り、官僚のまま定年になるまで財務官僚であり続けることができます。それどころか、先程述べたように財務省という組織の寿命は無限大です。
だからこそ、現在のように、財務省が国の財政の方向に大きく影響を及ぼすようなことがあってはならないはずです。本来は、政府が国の財政政策の方針を定めて、財務省の官僚は専門家的立場から、その方針を実現するために、様々な方法を模索して、実行するというのが本来のあり方です。

そうして、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事でもっとも気になったのは、以下のところです。
 GDP低迷を放置しておくと、雇用まで悪くなる。理論的には、8%から5%に減税するのが経済政策の筋だが、消費税は社会保障目的税とされているので、実際に減税する場合、社会保障関係予算の組み替えなどが必要で、実務的・政治的に困難だ。

本来ならば、財務省は政府が消費税を減税するというのなら、社会保障関係予算の組み替えの作業をすみやかに行うべきです。それこそ、官僚の本来の仕事です。私は、高橋氏が上の記事で掲載したような経済対策よりも、官僚に仕事をさせ、5%減税を実施すべきと思います。

なぜなら、経済対策は長期にわたっては続けられないからです。一方、8%増税も含めて、消費税増税は一度増税されると、それは不可逆的で永遠につづくものと見られています。

実際、過去には消費税は、上がる一方で、下がることはありませんでした。だから、経済情勢はどうであれ、一度決まった消費税率は下がることはないと思われています。

これでは、結局大規模な経済対策を行っても、それは一時のことであり、一度あげられた消費税率は、永遠に下がらないものと多くの国民は、思っているため一時の経済対策を行っても、長期的には消費が冷え込む恐れがあります。

しかし、ここで消費税を5%に減税したらどういう効果があるでしょうか。無論、8%増税の悪影響を取り除くことができます。しかし、これは一つの効果でしかありません。もう一つ大きな効果があります。

それは、一時上がった消費税は下がることもあり得ると多く国民に理解してもらえることになります。これは、マクロ経済学では当たり前のど真ん中です。増税、減税は政府がその時々で採用する財政政策の一つすぎないのです。

財務省の意向などとは全く無関係に、政府はその時々の経済情勢に対応して、景気が悪ければ、積極財政を行い、景気が良ければ、緊縮財政を行うというのが正常な姿です。

積極財政とは、減税、公共工事を増やす、給付金を増やすなどの政策です。緊縮財政とは、増税、公共工事を減らす、給付金を減らすなどの政策です。

これこそ、安倍総理が伊勢志摩サミットで共同宣言に盛り込んだ「機動的な財政政策」です。

マスコミは機動的財政政策の意味を曲解しているかもしれない
この「機動的財政政策」という言葉をマスコミは、ドイツ首相や、イギリスの首相が財政出動に慎重な姿勢を崩さなかったためであると、判断しているようですが、私はこの判断は妥当ではないと思います。

要するに、「機動的財政政策」とは、マクロ経済学でいうところの当たり前のど真ん中を指しているのです。これなら、いくら直近の財政出動に慎重姿勢のドイツ首相や、イギリス首相でも「ノー」とは絶対に言えないはずですし、それに経済政策としても正しいです。

過去の日本のように景気が悪いのに、緊縮財政を実施しているのは全くの誤りだし、景気が加熱しているときに積極財政をするのも全くの誤りです。ドイツ、イギリスだって、直近では財政出動に慎重であったにしても、さらに景気が悪くなれば、当然積極財政に転ずるべきです。

このまともな「機動的な財政政策」を実行するための第一歩として、消費税を5%に戻すという政策は望ましい政策であると考えます。

安倍総理には、日本が「機動的な財政政策」ができるようになるため、次の衆院選挙で減税は無論のこと「機動的な財務政策」を公約に入れて、選挙に臨んで大勝していただきたいものです。

そうして、日本では政府主導による「機動的な財政政策」が当たり前になるようにしていただきたいものです。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は「サミット議長国の年に衆院解散という経験則は今年もあてはまるかもしれない」としていますから、ひよっとして年内に衆院解散総選挙があるかもしれません。

その時に「機動的な財政政策」が公約に盛り込まれればベストですが、それができないというなら、まずは「消費税を5%」に減税でも良いと思います。そうして、その後に「機動的財政政策」としても良いと思います。

それと、最近は、日銀がまがりなりにも、金融緩和を実施しているので、雇用も改善していますが、日銀法改正もいずれかの選挙で公約に盛り込み、是が非でも日銀法を改正して、現状の誤った日銀の独立性をただしい、正しい中央銀行の独立性を導入して頂きたいものです。

中央銀行の独立性とは目標ではなく、手段の独立性であるという本来の姿にすべきです。金融政策の目標はあくまで政府が設定し、中央銀行は、その目標を達成するため、専門家的立場から、手段を自由に選ぶことができるという本来の姿に戻すべきです。

これも、政府による「機動的な金融政策」である、政府がその時々の経済状況にあわせて、目標を定めて、景気が悪ければ、金融緩和、景気が加熱すれば金融引き締めを日銀に実行させることのできる体制を整えるべきです。

日銀の政策決定会合で決まるなど、とんでもありません。日銀も、財務省のように政府の一下部機関に過ぎません。日本国の金融政策の目標はあくまで、民主的な手続きで定めらた政治家による日本政府が定めるべきものです。

とにかく不況になったときや景気が加熱した場合には、政府が財務省や日銀とは全く関係なしに、政治主導によって、財政政策や金融政策の目標を定め、その目標を財務省や日銀の官僚が実行する体制にすべきです。

そうでないと、今後も失われた20年などのような、馬鹿げた事態が再発することは防ぐことができません。

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2016年5月11日水曜日

中国は「中所得国の罠」を抜けられない 今後の経済成長は線香花火に―【私の論評】中国の分析でも、中国は罠にどっぷりとはまり込むことになる(゚д゚)!

中国は「中所得国の罠」を抜けられない 今後の経済成長は線香花火に

中所得国の罠
一国の経済発展は対外取引が起爆剤になっている。鎖国したまま経済発展することは不可能であり、自由貿易体制が欠かせない。それは経済学の歴史でもある。しかし、今の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)には、中国が参加できない理由がある。

TPPには貿易だけでなく投資の自由化も含まれている。しかし、中国は社会主義なので、生産手段の私有化を前提とする投資の自由化は基本的に受け入れられない。

また、TPPでは国有企業が大きな障害になる。国有企業が大半を占める中国は、民営化などを迫られるだろうが、国有企業改革は国家体制を揺るがす事態につながりかねないのだ。

「1人当たり国内総生産(GDP)1万ドル」の水準は、「中所得国の罠」といわれ、なかなか突破できない。突破には対外取引自由化などが必要となるが、中国にはそれができない。

別の観点からもこの現象が説明できる。第2次産業が十分成熟しないうちに消費主導へ脱工業化シフトを急ぐと、成長が息切れしてしまうのだ。1980年以降の1人当たりGDPと第2次産業就業者比率の推移を見ると、安定成長国は成長停滞国に比べその比率が高い傾向にある。1人当たりGDPが1万ドルを超えてからは、第2次産業就業者のシェアが低下傾向にあり、安定成長国でも成長力の屈折の時期と重なっている。

一方、成長停滞国はその段階に達する前に第2次産業が頭打ちとなり、「早すぎる脱工業化」の現象が生じる。中国は製造業拡大による成長段階の途上にあり、第2次産業のシェア拡大がこれまでの高い成長を支えてきたことが分かる。

李克強首相らは「最近は消費経済にシフトしつつある」と強調している。だが、現段階ではまだ、脱工業化できるほど第2次産業のシェアは十分に高くない。中国では30%程度までしか上がっておらず、成長停滞国と同じレベルだ。成長国は35%以上になっている。この段階で中国の第2次産業シェアが頭打ちになると、成長停滞国の二の舞いになるだろう。

これは中国当局の「中国経済は消費経済に移行しているので、経済成長は心配ない」という説明が当てにならないことを示している。

一般には可処分所得があって国内品を買えば消費、海外品を買えば輸入なので、両者は同じ方向に変化するのに、中国では消費と輸入が違いすぎる。さらに、中国がこの段階で消費経済に移行すると、「早すぎる脱工業化」で尻すぼみとなり、「中所得国の罠」は抜けられなくなる。

また、中国の第2次産業は国有企業が中心なので、技術の進歩などの成果を取り込めない。自由主義国の第2次産業は、貿易自由化、資本自由化を通して全国あるいは世界の市場に打って出られるが、中国の場合、一党独裁が完全な貿易・資本自由化を許さず、第2次産業を十分に発展させる邪魔になるという構造である。功に逸(はや)った中国だが、今後の経済成長は“線香花火”の恐れ大だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国の分析でも、中国は罠にどっぷりとはまり込むことになる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事は、高橋洋一氏の分析です。中国人はどのように分析しているのか、楼継偉財政相の分席を以下に掲載します。

楼継偉(ロウ・ジーウェイ)中国財政相

楼継偉(ロウ・ジーウェイ)財政相は昨年4月下旬、北京の清華大学で開催された「清華中国経済ハイレベルフォーラム」の講演で「中国は今後5年から10年の間に50%以上の可能性で『中所得国の罠』に陥る」と発言して大きな波紋を呼んでいました。

具体的には、人口1人当たりの国内総生産(GDP)がほぼ3000ドル(約37万3000円)に近づくと、急速な経済発展によって蓄積された矛盾が集中的に爆発し成長が止まり、社会が混乱し争乱状態に陥る場合もあります。例えば、ブラジル、アルゼンチン、チリ、マレーシア、フィリピンなどの国々です。いずれも3000ドルから5000ドル(約62万2000円)の発展段階でもがいており、一時的にせよ、治安が不安定だった時期もありました。

世界第2の経済大国である中国の財政相が、中国も同じような状態になる可能性があると自ら語ったのですから、事態はかんり深刻です。

しかも、習近平(シー・ジンピン)国家主席は昨年末から中国が高度成長期を過ぎてなだらかな成長が続く「新常態(ニューノーマル)」に入ったと宣言しましたが、「中国は中所得国の罠には陥らない」と断言していました。ところが、習氏の経済ブレーンでもある楼氏が、罠に落ちる確率は5分5分以上だと悲観的な見方を明らかにしているのだから驚くべきことです。

楼氏は続けて、罠を乗り越えるには、「年間5〜7%の経済成長を実現し、今後5〜7年の間に全面的な改革を行い、中国市場に依然として存在する『ひずみ』を解決しなければならない」と対応策を提起しました。

その「ひずみ」について、楼氏は1・農業改革、2・戸籍改革、3・労働・雇用改革、4・土地改革、5・社会保険改革―の5点を挙げていました。いずれの問題も新中国建国以来の難問ばかりです。

ちなみに、中所得国の罠の一般的な10大特徴は次の通りです。1・経済成長の低下あるいは停滞、2・民主の混乱、3・貧富の格差、4・腐敗の多発、5・過度の都市化、6・社会公共サービスの不足、7・就職難、8・社会の動揺、9・信仰の欠如、10・金融体制の脆弱さ。驚くべきことに現在の中国にはこれが、すべて当てはまっています。

実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も

習近平指導部は1つでも対策を誤れば、奈落の底に落ちるような極めて厳しい状況に置かれていました。

このような状況のなかで、習氏が打ち出したのが、アジアインフラ投資銀行(AIIB)でした。習氏は中央アジアを中心とする陸の「シルクロード経済ベルト」と、東南アジアやインド洋沿海の国々を対象とした「21世紀海のシルクロード」という「2つのシルクロード」構想を打ち上げ、中央アジアの「絹の道」に高速鉄道という「鉄の道」を敷設。と同時に、インド洋のシーレーンに多数の港湾を建設しようとしています。AIIB創設の目的は、これらのインフラ建設プロジェクトのために資金を提供することにありました。

さらに、これらのプロジェクトで中国内の余剰鋼材やセメントを使用すれば、中国に資金が還流します。その結果、「年間5〜7%の経済成長」も可能になり、中所得国の罠に陥らない可能性が大きくなります。

習主席も出席した1月のAIIB開業式。金立群総裁は革新性を強調したが…
AIIBには昨年57カ国以上もの国々が名乗りを上げていましたが、それでも、このような壮大なトリックを現実化しようと、中国が執拗に誘っているのが日本でした。

昨年、4月には安倍晋三首相と習氏による2回目の日中首脳会談が行われました。習氏は一昨年11月の初の首脳会談での仏頂面とは打って変わって笑顔で対応。「AIIBは国際的に一定の評価を得ており、日本の評価が得られると信じている。日本が参加すれば、わが方も日本の立場を最大限尊重する」と語り、日本のAIIB参加を強く要請しましたた。

その後、4月から5月にかけて、序列第2位の李克強(リー・カーチアン)首相や3位の張徳江(ジャン・ダージャン)全国人民代表大会(全人代)委員長、4位の兪正声(ユー・ジョンション)中国人民政治協商会議(政協)主席ら日本側要人と相次いで会談に応じ、習氏同様、AIIB入りを熱心に説きました。

中国としては、日本が入ることでAIIBの格付けを高くし、自らの思惑を現実化する狙いがあるのは明らかでした。しかしながら、ご存知のように、日米両国ともAIIBには加入しませんでした。

このAIIBは現状では、その実態は日米や欧州との協調融資に頼り、独自の資金調達は先が見えないという羊頭狗肉であり、さらに習近平政権肝いりの別組織との内紛も生じかねない状況です。

大きな懸念材料である格付け問題は未解決です。開発銀行は通常、融資資金を調達するために債券を発行するのですが、最大の出資国である中国の格付けが反映されるAIIBは、ADBのように「トリプルA」格を取得するのは困難で、当面、無格付けで債券を発行する方針とみられます。

先行して中国とブラジル、ロシア、インド、南アフリカ共和国のBRICS5カ国が設立した「新開発銀行」も、債券発行で「トリプルA格」を取得したのは、中国国内の2つの金融機関だけという状況でした。

米格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは今年に入って、中国の信用格付け見通しを引き下げています。

融資資金を利率の高い借り入れで調達するにせよ、参加国からの出資金でまかなうにせよ限界があります。ADB (アジア開発銀行)や欧州復興開発銀行(EBRD)との協調融資で、先進国の助け舟を受けるしかないのが実情です。

組織運営でも中国のもくろみ違いが生じています。欧州諸国が雪崩を打ってAIIBに参加したことは中国にとっては“うれしい誤算”でした。うるさ型の先進国がメンバーとなったことでAIIBのステータスは上がったものの、中国のペースで運営することには限界が出でしまいました。

中国のための銀行だとの批判をかわすために体裁を取り繕ったところ、身動きが取りづらくなってしまったのです。

このような状況では、中国の頼みの綱のAIIBもまともに機能しそうにありません。そうなると、習近平の中央アジアの「絹の道」に高速鉄道という「鉄の道」を敷設し、インド洋のシーレーンに多数の港湾を建設しようという目論見は、頓挫することになりそうです。

しかし、この構想は最初から無理があったのではないかと思います。中央アジアの国々それに、ロシアにとっては、中国が中央アジアに高速鉄道網を築くことは、中国が軍隊や戦車などの兵器を迅速に送ることができるようになることを意味します。

インド洋のシーレーンに多数の港湾を建設することは、中国の海洋覇権を南シナ海からさらにインドにまで拡張することを意味します。

中国はシルクロード経済圏構想でアジアの地政学的中心目指しているが・・・・
このようなことを周辺諸国や、日米が合意すると思ったのでしょうか。だとしたら、習近平は稀代の大馬鹿者としかいいようがありません。習近平は、以前米オバマ大統領との会談で「太平洋には両国を受け入れる十分な空間がある」と言い、事実上太平洋を2分割する提案をしましたが、にべもなく拒絶されています。

EU諸国などは、中国から地理的に相当離れいるので、儲かりさえすれば良いくらいの考えで、AIIBに参加したのでしょうが、ロシアは中国がどのような計画を持っているのか、探るために加入したのでしょう。中国の意図がわかれば、はやいうちにそれを潰すこともできます。鉄道網が構築されたとしても、その弱点を把握し、最も少ない努力と時間で、鉄道網を破壊する方途を考えだすことでしょう。

それに、ロシアは、ウクライナ問題で、欧米から制裁を受けていますし、国内にめぼしい産業がなく石油や天然ガスなどの資源が頼みの綱でしたが、原油価格の低落を受け、経済がかなり低迷しています。このままでいくと、国家基金が2019年初めに底つくといわれています。そのため、ロシアとしてもAIIBで儲かるならそれは、それで良いという考えだと思います。 

このような、AIIBに日米が、参加するなどと思い込むのは、あまりにも軽薄です。安倍総理が敢えて敵に塩を送るような真似はしないのは最初からわかり切っていることです。それに、いかに及び腰のオバマとはいえ、AIIBに加入するほどのお人好しではありません。

いずれ、AIIBは有名無実化することでしょう。そうして、高橋洋一氏が指摘するように、中国は、TPPには参加できません。そうなると、しばらく中国は国内でも、海外でもインフラ投資ができないことになります。

そうなると、中国はやはり、中進国の罠にどっぷりとはまるしかないわけです。

さらに、仮にオバマが稀代のお人好しで、米国がAIIBに参加したとしても、確かに中国はしばらくの間海外へのインフラ投資で経済がまた発展しだすかもしれません。

しかし、良く考えてみてください。海外インフラ投資が活発になれば、中国は再度経済発展をし始めることでしょう。しかし、海外インフラ投資が一巡して、インフラの投資先がなくなったらどうなるでしょう。無論、成長は止まります。習近平を含む中国共産党の幹部らは、このような単純なことも理解できないようです。

お先真っ暗の習近平主席。3月13日、中国時間の午後5時、中国政府の通信社「新華社」の
ウェブサイトに「中国最後の指導者、習近平」という報道が現れた。無論誤りだが・・・
インフラ投資で中国経済が一時息を吹替したにしても、中国市場に依然として存在する『ひずみ』を解決されていなければ、5年から10年もすれば、また中進国の罠にはまりこむしかなくなります。

現在の中国の経済をたてなおすためには、楼継偉財政相が指摘するように、1・農業改革、2・戸籍改革、3・労働・雇用改革、4・土地改革、5・社会保険改革―の5点を何とかしなければならなのです。

そのためには、まずはこのブロクでも何度も主張しているように、ある程度以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめなければならないのです。現在の先進国は、これをいずれかの時期に達成し、経済的中間層を多数輩出し、それらが、自由で活発な社会経済活動がすることにより、社会・経済が発展し、中進国の罠にはまることなく、経済的にも軍事的にも強国になったのです。

今のままでは、中国は中進国の罠にどっぷりと嵌り込むしかなくなります。その果てには、図体の大きなだけの、アジアの凡庸な独裁国に成り果てるしかなくなります。見込みがあるとすれば、いくつかに分裂して、沿海部の大都市部を含む国もしくは、国々が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をなしとげ、急速に発展することです。

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2015年5月9日土曜日

【日本の解き方】経済成長なくして財政再建なし 歳出カットのみ主張なら財務省の術中―【私の論評】財務省・内閣府の嘘吐き官僚には、徹底した報復人事を行い、政治主導を達成せよ(゚д゚)!

【日本の解き方】経済成長なくして財政再建なし 歳出カットのみ主張なら財務省の術中

高橋洋一氏 イラスト
 自民党の財政再建に関する特命委員会は、5月中にも財政再建計画をまとめる方針だ。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化する政府目標について、「経済成長だけでめどがたたないことは明らか」として、社会保障など歳出削減を議論の中心に据えると報じられている。

財政試算は内閣府が行っているが、筆者が小泉純一郎政権にいた当時は、竹中平蔵氏が経済財政担当相を務めていたこともあり、財務省にかなり対抗することができた。だが、今の体制では、財務省に自由自在にやられているのだろう。

財政再建シミュレーションでは、税収の見積もりが重要になってくるが、そのカギになるのは、税収の弾性値(名目成長率の伸び率に対する税収の伸び率)と名目経済成長率である。

税収の弾性値は、中期財政試算では、1・1程度に設定されているのだろう。実際には、景気の回復局面では税収弾性値は3~4程度になって、景気が巡航速度に達するにつれて低下し、1・1程度に近くなる。このため、景気回復局面での税収の伸びの試算が現実値を下回ることがしばしばである。

 また、日本の消費者物価指数(CPI)上昇率と、総合的な物価動向を示すGDPデフレーターには1%の差があるという前提も問題だ。このため、インフレ目標が2%でも、名目成長率は少しずつ上方修正されているが、政府目標では実質成長率2%、名目成長率3%になるというのが、中期財政試算の考え方だ。

1981年~2013年のデータがある先進国28カ国で、「CPI総合-デフレーター上昇率」をみると、平均で0・09ポイントである。日本で、CPIの方がデフレーターより大きくなるのは、デフレ時のデータのためだ。デフレ時にはCPIは下がりにくいが、企業物価は下がりやすいからである。

このような税収弾性値とGDPデフレーターの計算をまともにするだけで、2020年から23年度ぐらいには財政再建はできてしまう。これは決して楽観的な前提ではなく、普通の前提である。

この単純な事実を理解せずに、歳出カットのみを主張すると財務省の術中にはまる。まず、財政再建は経済成長の後についてくることを理解しよう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

この記事は要約です。詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】財務省・内閣府の嘘吐き官僚には、徹底した報復人事を行い、政治主導を達成せよ(゚д゚)!

上の記事で、税収弾性値については非常に重要です。これを良く理解していれば、昨年4月の8%増税など全く必要なく、百害あって一利なしであったということが良く理解できたと思います。

まずは、税収=名目GDP✕税率✕税収弾性値ということを念頭においていただき、時を金融緩和を実施しはじめた2013年に戻して、考えてみます。

この時点で平成14年4月から増税など決定せずに、増税をせずに現在まで金融緩和のみを続けていれば、2年連続、毎年名目5%程度の経済成長は十分あり得ました。ここで仮に税収弾性値を3(倍)とすれば毎年歳入の15%、6〜7兆円の増収が見込まれ、二年で消費税5%相当の約12兆円となり今頃増税自体不要になっていたはずです。

下のグラフ2012年のG7諸国の名目GDP成長率の平均値です。ここからデフレ日本を除いた6カ国平均値は3.3%です。日本もデフレを脱却すれば、当時の△0.6%から3.3%程度の名目成長率は十分可能であったはずです。

この名目GDP平均値と、税収弾性値として3を用いると、上記で掲載したような名目5%成長前提ほどではないですが、それでも毎年歳入の約10%、4兆円で、二年で8兆円程度の増収が見込めたはずです。これでも、昨年4月の増税など全く必要がありませんでした。

各国の名目GDP成長率 (1997-2012)
出所:IMF WEO Apr 2013 縦軸:パーセント
 
税収弾性率を低く見積もれば、当然このようなことは考えられないということになります。しかし、現実にはブログ冒頭の高橋洋一氏景気の回復局面では税収弾性値は3~4程度になって、景気が巡航速度に達するにつれて低下し、1・1程度に近くなるとしているように、昨年や今年あたり増税さえしていなければ、少なくとも3くらいにはなっていたはずです。

しかし、財務省も内閣府も弾性値を1.1で計算して、それをもとにして、増税やむなしとし、大増税キャンペーンを繰り返し、政治家からマスコミ、識者まで巻き込んでとうとう、一昨年には昨年4月の増税が決められ、そうして本当に増税され、多くの人々が消費税増税の影響は軽微などとしていたにもかかわらず、昨年はマイナス成長となりました。

GDPデフレーターについては、ここでは詳細は説明しませんが、いずれにせよ、ブロク冒頭の記事で、高橋洋一氏が語っているように、増税などしなくとも、金融緩和だけしていれば、税収弾性値とGDPデフレーターの計算をまともにするだけで、2020年から23年度ぐらいには財政再建はできてしまうという見込みは十分になりたつわけです。

このようなとんでもない、計算をして、国民や、政治家、マスコミ、識者などを幻惑した、財務省と内閣府の罪は大きいです。これをこのまま放置しておいて良いはずがありません。

従来だと、こうした無責任な官僚に対して政府は何もできませんでしたが、今年からは違います。それに関する記事のURLを以下に掲載します。

【経済インサイド】内閣人事局が初めて練る官僚人事 「対官邸」「女性」「片道切符」3つのキーワードに高級官僚たちの戦々恐々
霞が関人事は、安倍首相(左)、菅官房長官の官邸サイドの意向が強く働きそうだ
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 内閣人事局(ないかくじんじきょく)は、内閣官房に置かれる内部部局の一つです。2014年(平成26年)5月30日に設置されましたが、実際に人事に関与するのは、今回が初めてです。

以下に一部のみコピペさせていただきます。
 例年は大型連休明けに始まる中央省庁の「出世レース予想」が、早くも騒がしくなっている。国家公務員は年功序列型の人事システムで「10年先の異動・配置先まで決まっている」(政府高官)のが当たり前だったが、いまや出世街道を突き進むには「3つの壁」を乗り越えなければならない。女性職員の幹部登用や省庁間人事を推し進める首相官邸は、今夏の定期人事で政治主導を本格化させる構えで、いつにも増して「官僚たちの夏」は熱くなりそうだ。 
最大の注目は財務省 
 今夏の注目は財務省だ。厳しい国家財政の中、予算編成を事実上担ってきた主計局長の田中一穂氏は、事務次官への就任が確実視されている。昨年の人事で主税局長から異例の転身を遂げ、「次官待ちポスト」の主計局長として新たな財政健全化計画の策定を牽引(けんいん)している。 
 現在の香川俊介次官、その前の木下康司元次官と同じ昭和54年入省で、同期3人が次官を経験することになりそうだ。官僚の世界では、出世レースでトップを走る同期が次官に就任するまでの間、ほとんどの同期は退官するか外部に転出する。 
 だが、安倍晋三首相は第1次政権時に首相秘書官を務めた田中氏の能力や人柄を高く評価。休日も首相とゴルフしたり酒を交わしたりする首相の側近中の側近で、「『田中次官』以外ありえない」(政府関係者)との声も漏れている。
・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・ 
 内閣人事局が初めてゼロベースから練り上げる今年夏の幹部人事。そのキーワードは「官邸との距離」「女性の幹部登用」「片道切符」だ。キーマンである菅官房長官は「権力というのは人事が大切」と漏らしており、それを伝え聞いた官僚たちは早くも戦々恐々となっている。
今回の人事では、昨年増税キャンペーンに大きく関与した、官僚どもには、徹底した報復人事を行っていただきたいものです。無論、この報復人事とは、安部総理個人の報復という意味ではなく、 上記で述べたように、国民や、政治家、マスコミ、識者などを幻惑して結果として情報統制をした官僚どもの、肝を冷やすような徹底した、国民のための報復人事を実行していただきたいものです。

特に財務省には厳しく、嘘吐き官僚には片道切符で他省庁に左遷とか、ぐうの音も出ないような人事を行ってほしいものです。

そこから、本当の意味での政治主導が始まるはずです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年3月14日土曜日

【日本の解き方】「経済成長よりも成熟社会を」は人を殺す 半可通の議論に騙されるな―【私の論評】今の日本は成熟社会ではない!20年もデフレ・円高を放置した原始社会である!今こそ当たり前の現代社会に復帰して、過去20年間成長できなかったその遅れをなるべくはやく取り戻すべきだ(゚д゚)!


そもそも、一国の経済・社が生物の一個体のように、成長、成熟、老化などというパターンが成り立たない。
写真はブログ管理人が挿入 以下同じ

日本の経済成長率がこのところ伸び悩んでいることやインフレ目標にまだ届いていないことについて、一部マスコミで「消費者の節約志向」「金融緩和マネーは株や資産価格を上げるだけ」などと解釈している記事を見かけた。

データを見よう。消費者物価指数総合の対前年同月比をみると、2014年4月の消費増税までは順調に上昇していた。量的緩和がスタートした13年4月には0・7%下落だったが、14年5月には1・7%上昇(消費増税による見かけ上の影響を仮に2%として差し引いた数値)となった。ところが、消費増税の影響で消費が減退し、15年1月には0・4%上昇(同)と低下している。

成長率でも、消費増税前の13年4~6月期から14年1~3月期の平均実質国内総生産(GDP)成長率は2・1%増であったが、増税後の14年4~6月期から15年1~3月期では2・6%減と急落している。

マスコミの経済関係記者は、こうしたマクロのデータを見ないで、半径1メートルの世界の印象から「消費者の節約志向」という結論を出しているのだろうか。

「緩和マネーは株や資産価格を上げるだけ」というのも、マクロ経済への無理解からくるものだ。

金融緩和によって実質金利が下がり、これがGDPを増加させ、就業者数が増えるのを、株価が先取りするだけだ。つまり、株価上昇と就業者数増加は同時に進行しているが、株価の方が先に現象として出てくるわけで、株価と就業者の間に因果関係があるわけではない。

このような無理解の上に、一部のマスコミでは、「経済成長よりも成熟社会を」という論調もしばしば見受けられる。これは戦後のヘタレ左翼思想に過ぎず、そもそも1990年代以降の低成長ではシャレにもならない。90年代以降の日本の経済成長率は、先進国では最低ランクだった。この間、経済成長しなかったことでさまざまな問題が出てきた。とりわけ社会問題として顕著なのは自殺率の増加であろう。

低成長が続く社会で損をするのは、結局、社会の底辺にいる人たちである。トマ・ピケティ氏の著書によって有名になった「The World Top Incomes Database」を使って、それを確かめてみよう。同サイトでは、トップ1%だけではなく、ボトム10%の平均所得のデータ(物価上昇分を除いた実質値)もある。ここ20年間の伸び率をみると、日本では、平均1・6%減だ。米英仏独の4カ国平均は0・4%減。これも日本が低成長だったためだ。

低成長は、全体のパイを減らす。全体のパイが大きければ分配も容易であるが、パイが小さいともともと少ない人はより苦しくなる。成長を否定したら何もできない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今の日本は成熟社会ではない!20年もデフレ・円高を放置した原始社会である!今こそ当たり前の現代社会に復帰して、過去20年間成長できなかったその遅れをなるべくはやく取り戻すべきだ(゚д゚)!

デニス・ガボール

成熟社会とは、元々はイギリスのデニス・ガボールの著した『成熟社会新しい文明の選択 』(1972)からの転用語で、一種の未来社会についてのビジョンを指します。ガボールは1971年にノーベル物理学賞を受賞した高名な物理学者で、かたわら未来学者としても活躍しました。

彼のいう成熟社会とは、これまでの物質万能主義を排し、ひたすら量的拡大のみを追い求める経済成長やそれに支えられた大量消費社会のかわりに、高水準の物質文明と共存しつつも、精神的な豊かさや生活の質の向上を最優先させるような、平和で自由な社会を意味しています。

そこでガボールが提示している未来社会像は、かならずしも新奇なものではなく、高成長から低成長への転換期にあたり、自然との闘いから人間性との闘いへ、物質的・手段的価値から精神的・表出的価値への推移(=成熟)を可能にし促進するような政治、経済、社会、文化全般の見直しを提唱したものです。

たとえば、消費社会の不毛と倦怠(けんたい)の克服、知能偏重から知能と倫理の調和へ、善意と幸福を周囲に広げる人間の形成、強制と支配ではなく自由と責任と連帯の拡充、多様な個性と価値観を尊重し許容する寛容な民主的社会の実現などが主張されています。

この立場は、生活の質の向上による社会の漸進的活性化を意図するもので、人間にとって真の豊かさとは何かを追求するポスト・マテリアリズムpost-materialismの立場にほかならないものですが、一方、伝統的な自由主義・民主主義の流れに棹(さお)さしながら、一種のエリート主義的な色調をも帯びています。

この言葉が日本で流通し始めたのは1973年に日本で『成熟社会』が翻訳されて、出版されてからであると考えられます。この書籍は、一時は、アマゾンで1円で買えるような古書にすぎなかったのですが、今では、成熟社会というキーワードに人気があるせいか、本日改めてアマゾンでみて、700円とか、1000円などと価格がついていて、改めて驚きました。

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やはり、この書籍今や古書でとしてしか購入できないのに加え、最近またこの成熟社会なる幻想が頭をもたげてきて、ブログ冒頭の記事で高橋氏が指摘するような状況になっているのだと思います。

この成熟社会なる言葉、もう本当は死語に近いものにすぎないはずです。特に、日本以外の国では、死語に近い言葉になっています。この書を世に送り出した、ガボールの最大の誤算は、出版された1973年当時、同時に変動相場制に移行した後訪れた本格的なグローバル経済を読めなかったということでしょう。

世界が、固定相場制なら多くの国々特に先進国が、それぞれ内々に「成熟」してしまったのかもしれませんが、グローバル経済が展開することで「成熟」などという言葉は浮世離れしてしまいました。世界全体から見れば、「成熟」など遠く離れた世界で、国境が低くなれば、「成熟」は拡散して流産してしまいます。

「成熟社会」というの言葉は、生物学からの安易な借用なのですが、生物の個体に見られる成長して成熟し、老化し死ぬというお決まりのコースをあてはまるほど世界はまだ「成熟」していません。

というより、混沌としていて、まだまだ安定した状況ではなく、ISISにみられるようなテロリストによる恐怖や、未だに世界的な宗教対立の火種はあちらこちらに見受けられます。それだけではなく、日ケティ氏などが指摘する前から、グローバルな視野から見た場合、政治システムや、経済システムなどまだまだ成熟の域に達しているとは言いがたい状況にあります。

恐らく今後も世界が「成熟」することはなでしょう。成長と破壊の繰り返し。シュムペーターの語った、創造的破壊がこれからも世界的な規模で繰り返されていくことでょう。もういい加減日本のマスコミや、似非識者なども「成熟社会」などという幻想からを卒業する程度には頭の中身を成熟するべきです。



さらに、直近の日本の状況をみていれば、デフレが20年近くも放置され続けました。このような状況に至った国など、古今東西例を見ません。誤った金融政策や、財政政策を実行し続け、このように長い間、是正もしなかった国が日本です。

しかも、このデフレの最中には、上でも高橋洋一氏が指摘したように、デフレ・円高政策が多くの人を殺してきました。

これについては、以前このブログでも指摘したことがあります。そのブログのURLを以下に掲載します。
【田中秀臣氏TW】財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない―【私の論評】政治主導を実現するため、財務省殺人マシーンは分割して破壊せよ!日銀殺人マシーンの亡霊を蘇らせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、最近は年間2万人台に戻ってはいるものの、デフレが顕著になった98年から自殺者が年間3万人台となり、多くの国民が塗炭の苦しみを味わったことを掲載しました。デフレと、自殺者数の相関関係に関しては、田中秀臣氏や、日銀の現副総裁の岩田規久男など、日本の著名な経済学者も指摘するところです。

そもそも、これだけの死者を出しても、20年近くも放置しておいたという稚拙な、経済対策しかできなかった日本が、とても成熟社会に入ったとは言えないと思います。

過去の日本は、成熟社会に入ったために経済が停滞したのではなく、デフレ・円高を放置し、マクロ経済学では常識とされている、その対応策である金融緩和政策や、積極財政などせずに、その反対の日銀による金融引き締め策や、財務省による増税という緊縮財政を実行したからです。

このような馬鹿げたことをする国、それを支持する政治家や、似非識者が存在する国が、どうして成熟社会などということがてきるのでしょうか。

昨年の4月に8%増税をして、大失敗した直後に、さら10%増税など言い立てて、それに輪をかけて「経済成長よりも成熟社会を」という馬鹿げたことを言う、マスコミや識者、幼稚であり稚拙であると言わざるを得ません。このような、者共の言うことが、幅を効かせて、結局8%増税せざるを得ない状況に安倍政権を追い込んだ、社会などとても成熟社会とは呼べません。

金融・財政政策においては、成熟社会であるどころか、原始社会といっても良いくらいだと思います。

しかし、この原始社会が、まともな現代社会に復帰し、今後成長することになれば、日本はとてつもないことになると思います。

もう、その方向性は見えています。今は何がなんでも、物価目標も達成していないうちに、金融引締めをするとか、10%増税による緊縮財政を実行するなどという馬鹿真似をするような原始社会から、普通の現代社会に復帰して、過去20年間成長できなかった、その遅れをなるべくはやく取り戻すべきです。その先に、全世界が羨む日本が待っています。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年10月5日日曜日

【高橋洋一氏TW】もう成長出来ないという人が見たくない図―【私の論評】金融緩和と積極財政をあまりにもしてこなかった日本が経済成長をしなかったのは当たり前、まずは経済成長をすることがもっとも重要(@_@;)

【高橋洋一氏TW】もう成長出来ないという人が見たくない図
【私の論評】金融緩和と積極財政をあまりにもしてこなかった日本が経済成長をしなかったのは当たり前、まずは経済成長をすることがもっとも重要(@_@;)

上のグラフを見て、みなさんはどう思われるでしょうか。このグラフの横軸はマネー伸び率であり、縦軸はGDP成長率です。

結論からいうと、このグラフを見て、その内容を理解すれば、来年10%増税などすべきことではないということです。それを声高に叫ぶ人々は単なるどバカかエゴイストであるということです。

このグラフの期間は、1994年~2013年です。世界の中では、日本はGDP伸び率最低、マネーの伸び率も最低です。

昨年の4月から異次元の包括的金融緩和を実行していますが、それでもまだまだ、マネーの伸び率が低い状態にあるということです。あまりにも長い間、金融引き締めをしてきたので、マネーがまだまだ足りないということです。

それに、これだけ成長率が低いということは、政府も緊縮財政ばかり繰り返してきたということです。あまりにも長い間、日銀は金融引き締め、政府は緊縮財政ばかりやってきたので、日本はデフレに陥ったということです。

政府が行うべき経済対策 クリックすると拡大します

本来、不景気になったり、ましてや、デフレに陥った場合には、通常なら、中央銀行は金融緩和を大々に行い、政府は積極財政を行い、素早くデフレから脱却するのが当たり前のど真ん中です。しかし、日本ではなぜかそのような政策が実施されずに、長期間にわたって、デフレが放置され続けてきました。

経済対施策における金融政策は、かなり時間がかかります。それに比較すると、財政政策は、長続きはしないものの、短期的にすぐに効果が現れます。

だから、日本以外の普通の国では、デフレから脱却するためには、金融緩和はもちろんのこと、積極財政も併用して、なるべくデフレから脱却できるようにするというのが普通です。

しかし、ここ日本においては、過去20年間にわたり、なぜかこれを実行せず、金融引き締めと、緊縮財政を繰り返してきました。

その結果1998年からは、不景気どころむか、本格的なデフレに陥ることになりました。それでも、金融引き締め、緊縮財政を繰り返したため、経済成長もしなくなるどころか、デフレが長期間にわたって続くことになりました。

第一次安倍内閣のときには、日銀は金融緩和策を実行していて、景気はかなり回復していましたが、デフレが解消しないうちに、日銀は再び金融引き締めに転じてしまい、結局日本経済はデフレから脱却することなく、再びデフレスパイラルの底に沈んでしまいました。

そうして、昨年4月からは上でも掲載したように、異次元の包括的金融緩和を始めたので、昨年度はかなり経済が回復しました。

しかし、残念なことに、未だ日本経済は、デフレから脱却していないというのに、今年の4月から8%増税が実施され、4~6月期はかなり消費が落ち込みました。

おそらく、これからも消費は落ち込み続けて、なかなかデフレから脱却できないのは目に見えています。

現状の日本は、どう考えても、本来は増税などすべきではなく、減税すべきであったものを、増税してしまったため、デフレ脱却は遠のいてしまっています。

今後、さらに8%から10%に増税した場合は、さらに景気は落ち込み、デフレ脱却はかなり困難になります。失われた20年どころか、失われた40年になってしまう恐れも十分にあります。

にもかかわにず、増税を声高叫ぶ愚か者が大勢います。マスコミも、政治家も、官僚もほとんどが増税賛成派が大勢を占めます。これは、本当に異常な状況です。

そうして増税賛成派の論理は、全部全くまともな根拠がありません、。

これは、経済評論家の上念司氏も指摘しています。それについては、以下の動画をご覧いただくと良く理解できると思います。




財務省を筆頭とする増税を推進するバカもしくは、エゴイストどもは、上念氏が語っているように、全く脆弱な根拠しかなく、ことごとく論破されてしまうものばかりです。

そもそも、こんな言い訳を平然と言えるというのが、全く非論理的であり、幼稚ですらあります。

そうして、財務省をはじめとするバカもしくは、エゴイストがなぜこんな幼稚な言い訳をしてまで、増税を強行しようとするのか、それについては以前もこのブログに掲載したことがあります。

その記事のURLを以下に掲載します。
消費増税スキップしても実体経済に影響なし!リスクは「増税利権に群がる人々」のみ―【私の論評】まともな企業なら日々直面するトレードオフという考え方ができない官僚の単細胞頭が国民を苦しめる(゚д゚)!
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事の月論は、"増税をスキップするリスクは、実体経済の話ではなく、増税利権に群がる人々を激怒させるという政治的なものだけになる"。というものでした。

結局のところ、増税を見送り、デフレから早期脱却を目指すような政策をとると、財務省は目の前の、自らが他省に対して配分できる税金が少なくなってしまい他省に対する優位性を損なうなどという、財務省益を損なうことは絶対にしたくないでしょう。

政治家や、他省庁の官僚らは目の前の、増税による利権は、絶対に手放したくありません。

マスコミ、特に新聞は、自らの生き残りのため、軽減税率を財務省に適用してもらいたいため、増税を後押しするような記事ばかり掲載します。

他のテレビなどのマスコミも、財務省が実際にOBなどを送り込んだり、さまざまな手法を用いて、テレビの報道を増税賛成のほうに持っていく努力は、欠かしていません。

このような、官僚・政治家・マスコミなど国民を全く無視したバカでエゴイスティック目の前の利益だけで、増税が誘導されているというのが実体です。

目の前の利益とは、結局増税したとすれば、消費は落ち込み、税金の源泉であるGDPが大幅に減ります。そうなると、財務省が他省などに配分できる税金は減ります。そうなると、結局利権も減ってしまうので、増税は、政治家や官僚にとっても、本当に目の前の利益に過ぎないということです。

この図が示すのは、経済成長すれば財政もよくなるということを示している

デフレの前と、深刻なデフレに見舞われてからを比較してみれば、財務省が他省に配布できる金は、無論のこと、政治家の利権もかなり減っていると思います。

これから増税すれば、さらにデフレがより深刻になり、増税利権はほんの一時のものになります。そんなことは、当たり前のど真ん中なのですが、目の前のことしか考えない彼らにはそれが見えないのだと思います。

いずれにせよ、このようなことは、このブログ冒頭に掲載したグラフの意味を良く理解すれば、すぐに了解できることなのですが。我欲で、目のくらんだバカなエゴイストどもにはそうした判断はつかないようです。

そうして、エゴイストどものうちバカはそうではありませんが、バカではない連中は、今日本にとって一番重要なのは、経済成長をすることであることは、重々承知なのでしょうが、目の前利益だけに目がくらんでいるのだと思います。特に財務省の高級官僚たちはそうなのだと思います。

だから、上のグラフの意味するところなど、もちろん知っているのでしょうが見たくない図というよりは、他の多くの人々に見せたくない図であると考えているに違いありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか(@_@;)

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2013年11月18日月曜日

スティグリッツ:「貧富の格差に対処する国と対処しない国に世界は分裂しはじめた」―【私の論評】中間層を育成することが、過去の経済成長の基本中の基本であったことが忘れ去られている!これは、単なる平等主義とは違う!!

ジョセフ・スティグリッツ「貧富の格差に対処する国と対処しない国に世界は分裂しはじめた」

ジョセフ・スティグリッツ

われわれは不公平な世界に向かっているのか?

もっとも富裕な国、とりわけアメリカの所得と富の格差はこの数十年で急拡大し、そして悲劇的なことに、この大不況以来さらに悪化したことが広く知られている。

しかしほかの国はどうだろうか。国家間の格差は、中国やインドのような新興国の経済力が、何億もの貧困者を引き上げたことで縮小しているのだろうか。貧しい国や中所得国では、格差は悪化しているのだろうか、それとも改善しているのだろうか。われわれは公平な世界へと向かっているのだろうか、それとも不公平な世界へと向かっているだろうか。

これらは入り組んだ問題だ。世界銀行のエコノミストであるブランコ・ミラノビッチらによる最近の研究はその答えをいくつか示している。

・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・

「格差は技術変化を受け入れた副産物」というウソ

ミラノビッチ氏によれば、1988年から2008年にかけて、世界人口の上位1%の所得が60%も増加する一方で、最下層5%の所得にはまったく変化がない。ここ数十年で、中位所得は著しく上がったが、いまだに法外な不均衡がある。

8%の人間が世界中の所得の50%を懐に入れ、同様に最上層の1%だけが15%をわが物にしている。利子配当収入は、富裕国の金融・産業界のエグゼクティブのようなグローバルエリートや、中国、インド、インドネシア、ブラジル諸国の「新興中産階級」にもっとも厚い。では、取り損なったのは誰か。それは、アフリカ、ラテンアメリカの一部、共産主義崩壊後の東欧および旧ソビエトの人びとだ、とミラノビッチ氏は指摘する。

アメリカは世界に恐ろしい具体例を示している。非常に多くの点で「世界に先駆ける」国だけに、他国がそれに続けば、将来いいことは起こり得ない。

一方、アメリカで広がる所得と富の格差は、西側世界で広範に見られる傾向である。OECDの2011年度の研究によれば、所得格差は、1970年代後半から1980年代前半にかけてアメリカとイギリス(さらにイスラエル)で最初に広がりはじめた。この傾向は、1980年代後半にさらに拡大した。所得格差はこの10年で、平等主義的な国であったドイツ、スエーデン、デンマークでさえ拡大した。フランス、日本、スペインという少数の例外を除き、多くの先進国で、最上層10%の稼ぎ手が急浮上したが、最下層の10%ははるかに遅れてしまった。

しかしこの傾向は、普遍的でも回避できないものでもない。同じころ、チリ、メキシコ、ギリシャ、トルコ、ハンガリーは、国によるがきわめて甚だしい所得格差を首尾良く減らし、格差とは政治的産物で、単なるマクロ経済動向によるものではないことを示した。

格差はグローバリゼーション、労働、資本、モノ、サービスの移動、スキルや高学歴の従業員を優遇する、回避できない技術変化の副産物だ、というのは真実ではない。

先進経済諸国の中で、アメリカは壊滅的なマクロ経済の結果、所得と機会における格差が最悪だ。アメリカの国内総生産はこの40年間で4倍以上となり、この25年間ではほとんど倍増したが、ご存じのとおり利益はトップに集中し、そしてますますトップ中のトップへ集中している。

昨年、最上層1%のアメリカ人は、全国民の所得のうち22%を、同じく0.1%は11%を懐に入れた。2009年以来の利子配当収入総額の95%は最上層1%の手に渡ったことになる。

最近発表された国勢調査によれば、アメリカの中位所得者は、ほぼ4半世紀のあいだ動くことがなかった。典型的なアメリカ人の所得は、(インフレ補正後で)45年前より低く、4年制大学の卒業資格を持たない高卒者は40年前よりも約40%所得が低い。

「誰のための繁栄なのか」

アメリカ人の間での格差は、富裕層への減税と金融機関への規制緩和に伴い、30年前から拡大しはじめた。これは偶然の一致ではない。われわれがインフラや教育、健康保険制度、さらに社会的セーフティーネットへの投資を減らすにつれ格差は著しくなった。拡大する格差は、アメリカの政治制度と民主的な国家統治が蝕まれることで、ますます強化されている。

そしてヨーロッパ諸国は、この悪しき先例をかなり熱心に追いかけているようだ。イギリスからドイツにいたる緊縮財政の信奉が、結果として高い失業率、賃金下落、増大する格差を招いた。今回、再選したドイツ首相のアンゲラ・メルケルや、欧州中央銀行総裁マリオ・ドラギは、ヨーロッパの問題は、福祉への膨張した支出の結果だと論じている。しかしその考え方は、単にヨーロッパに不景気(とさらには大不況)をもたらしただけだった。

底は脱した、つまり「公式には」不況は終わったと言っても、EUの2700万人の失業者にとってそれは慰めにもならない。大西洋の両岸で緊縮財政強硬派が、「断固進め!」と言う。繁栄に必要な苦い薬だというわけだ。しかしそれは一体、誰のための繁栄なのか。

度を超えた金融化という事実は、アメリカに次いで不平等が甚だしいイギリスの危うい現状や、増大する格差の説明に役立つ。多くの国で、弱体な企業統治と衰退する社会的つながりが、CEOと労働者間の報酬の格差をますます拡大させてきた(ILOの推計による)。

アメリカ大企業の500対1のレベルにはまだ達していないにしろ、いまでも、大不況以前よりも格差は大きい(役員への報酬を制限してきた日本は注目すべき例外だ)。経済的なパイを拡大することなく、システム操作で、パイの大きい部分を獲得するレントシーキングというアメリカ生まれのイノベーションが、グローバル化してしまったのだ。

「富の分配か分裂か」という時代へ突入

グローバル化による不均衡は、世界中に被害をもたらした。国境を越え移動する資本は、労働者には賃金の譲歩を、政府には法人税減税を要求した。その結果、どん底への競争、賃金と労働条件が脅かされるようになった。政府から資金援助された、科学技術の巨大な進歩にたよる、アップルのような先端企業もまた、税金逃れに手際の良さを発揮してきた。取ることには熱心だが、お返しはない。

子どもの間での格差と貧困は、あまりにもひどい道徳上の恥だ。貧困が怠惰とお粗末な選択の結果だとする右派の考えを、この事実はあざ笑う。

子どもは親を選べない。アメリカでは4人に1人、スペインやギリシャでは6人に1人、オーストラリア、イギリス、カナダでは10人に1人強の子どもが貧困生活をおくっている。公平な経済の創造をしている国もあるのだから、これは回避できないことではない。たとえば半世紀前の韓国では、10人中1人しか学士になれなかった。しかし現在では世界でもっとも高い学卒率の国の1つである。

以上の理由で、単に持つ者と持たざる者に分裂した世界というだけでなく、それに対処しない国と対処する国に分裂した世界にわれわれは足を踏み入れた、と私は見ている。

いくつかの国は、繁栄を分かち合う社会を創り上げることに成功するだろう。また私は、こういう成功こそが本当に持続可能だと信じている。しかし、一方では格差を荒れ狂うままにする国もあるだろう。こういう分裂した国の富裕層は、ゲーテッド・コミュニティー(※2)に引きこもり、貧困者からは完全に隔離され、その生活はほとんど理解の外だろう。そしてその逆もまた然りだ。

私はこういう方向を選択したように見える地域社会をいくつか訪れてみた。そこは世間から隔離された富裕層の特区であれ、絶望的な貧民地区であれ、われわれが住みたいと思うような場所ではない。

【私の論評】中間層を育成することが、過去の経済成長の基本であったことが忘れ去られている!中間層が育てば、富裕層も貧困層もともに利益をこうむることになる。これは、単なる平等主義とは違う!!

上の記事を徹底的に要約し要点中の要点だけをまとめると、以下のようになります。
1.チリ、メキシコ、ギリシャ、トルコ、ハンガリーは、国によるがきわめて甚だしい所得格差を首尾良く減らし、格差とは政治的産物で、単なるマクロ経済動向によるものではないことを示した。 
2.格差はグローバリゼーション、労働、資本、モノ、サービスの移動、スキルや高学歴の従業員を優遇する、回避できない技術変化の副産物だ、というのは真実ではない。 
3.いくつかの国は、繁栄を分かち合う社会を創り上げることに成功するだろう。また私は、こういう成功こそが本当に持続可能だと信じている。しかし、一方では格差を荒れ狂うままにする国もあるだろう。
まずは、上記の要約1.について解説します。格差とは、マクロ経済動向によるものではなく、政治的産物であることがいくつかの国の事例で明らかになっているということです。多くの識者が、格差とはグローバル経済を含めたマクロ経済動向によるものとしています。要するに、安い賃金の国で生産された物品・サービスが高い国の賃金の国々に流れ込み、いずれ世界は標準化されるのですが、その過渡期では偏りが出ることになり、それが、格差が発生する原因だというのです。そんなのは、嘘っぱちだということは、よく考えれば素人でもわかります。

貧困の原因は、膜経済ではく政治氏テムの不備にある

要約2については、日本ではデフレが続き、国内である程度の価格平準化などが進んでいる面もありますが、それにしても、東京の地価は地方に比較すればまだまだ高いですし、賃金も東京都内は高く、地方では低いです。同じスキルを持つ、同じ事業の労働者であれば、あきらかに東京の方が賃金が高く、地方では低いです。

これは、おそらく統計資料を整えるようになってから同様の変らぬ傾向だと思います。同じ国の中ですら、完璧に平準化はされていません。それは当たり前のことです。需要の供給のバランスからそうなっています。地方で東京と同じ賃金で、労働者を雇うことはありません。東京で、最初は安い賃金で地方の労働力を雇いいれたとして、時間がたつうちに、労働者は賃金の低い職場から賃金の高い職場に移ることになります。そうなれば、地方なみの低賃金で人を雇うことは困難になり賃金をあげざるを得なくなります。

日本という人口は1億2千万という人口の多い(中国、インド、アメリカなどは例外中の例外、これらをのぞけば日本の人口はかなり多いほう。ちなみに、ニュージーランド、などは数百万に過ぎない。イギリス、フランス、ドイツなども数千万にすぎない、ロシアは、1億4千万と、日本より若干多いだけです)ものの、国土面積が狭い国ですら建国から2000年以上たっても、結局完全に平準化されていません。このような事実からみても、いくら対象がグローバルに広がっても、完全に平準化される時代が来るはずがありません。というより、グローバル化したから突然賃金や、物価など完璧に平準化されるなどという考えは、まともな経済学の考え方いえば、異端といっても良い考え方です。でも、その異端の考えが、政治家などの中で、理解されていないところに問題があります。

格差は政治システムの不備により助長されている
要約3.は、全くその通りです。アメリカ、中国、EUの中でも先進国は、格差を荒れ狂うままにする国になる可能性が大きいです、そうして、日本はデフレのため現在格差が目だつようにはなりましたか、それでも日本以外の国よりは格差は少なく、デフレを解消した場合、ふただひ中間層が増えるとともに、中間層により経済活動が増え、繁栄を分かち合う社会を創り上げることに大成功することでしょう。またステグリッツ氏が語るように、日本の大成功こそが本当に持続可能だと考えます。

現在世界は、日本が数十年でなしとげ、欧米が数百年かけてなしとげた、中間層の拡大による経済の拡大を忘れています。過去の先進国のすべてが、この道をたどり、高い経済成長を実現したことを忘れています。さらにその豊かさを維持したことにより、より良い社会を構築できたことをすっかり忘れています。中間層による経済活動による経済成長という事実は、今でも新興国などで繰り返されていることです。例外はありません。

いくら、国が豊かになっても、格差は残ります、一握りの富裕層、一握りの貧困層は残ります。しかし、中間層が多ければ、貧富の差はより縮まります。ステグリッツのいう、格差のない社会を実現するのは、多数の中間層です。私たちが、すでに経験済みのこの原則を理解しないで、

そうして、これに近いことをすでに日本は、実現してきました。そうです、高度成長時代の日本がそうです。奇跡の経済成長率といわれた10%台の成長を毎年実現していました。


当時の日本は、まだまだインフラが整備されていなかったため、この整備をするということでも、随分GDPを引きあげていましたが、今の日本ではかなりインフラが整備されてしまっているので、この時代の成長率のように大きな伸びはないでしょうが、それでも、かなりの経済成長率が期待できます。

そうして、すでに豊になった日本でも、高度成長時代の熱狂が再現されると思います。そうして、日本が、単に経済的に豊になることだけを追求することなく、社会を充実させることに向かえば、日本は、それこそ黄金の国ジパングと昔のヨーロッパ人があこがれたような国を本当に実現することが可能です。そうして、日本は世界のトップランナーになることができます。

そうなればそうなったで、社会問題はいろいろ発生しますが、その社会問題とは、従来のものではなく、次世代の社会問題になり、それを解決するノウハウを日本が身につけたならば、次世代社会のモデルを創設することになり、世界に範を示す存在となることでしょう。

一方で格差を荒れ狂うままにする国には、将来はありません。アメリカも今のまま、中間層を減らすような、政治を続けていれば、いずれ没落します。格差を放置する中国は、今後5年以内に国力がかなり衰え、崩壊の危機にさらされ、今のままであれば、10年以内に必ず分裂します。もう、先がありません。

中国富裕層


だからこそ、私たちは、上記のステグリッツの警告を真摯に受け止める必要があります。そうして、現在残念ながら、来年の4月からの増税を決めてしまった日本は、デフレ解消まで遠回りをすることになりますが、それでも、世界の中をみわたせば、これから先一番見込みがあるのは日本です。なぜなら、景気が悪いといいながら、深刻なデフレに見舞われている国はないからです。そうして、デフレは純然たる貨幣現象であり、必ず克服できます。

しかも、日本とは異なり、ほとんどの国は借金をかかえています。そうして、経済は不況という範囲内を納まっており、デフレという特殊な状況にはないからです。日本の場合は、好景気、不況という景気の循環から逸脱したデフレという状況にあるとはいいながら、政府の借金はあるものの、国は借金どころか、海外に貸し付けてる金の金額が過去20年間1位という事実があるからです。このデフレから脱出できれば、人々が消費を増やすのみにあらず、今まで海外に貸し付けていたお金が、日本に大量に投資されることになり、かなり経済成長が期待できるからです。日本の中間層を活気づけるのは、デフレ解消と、中間層を多数輩出させる、政治システムです。そうして、それは、可能です。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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