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2020年3月8日日曜日

日本は韓国を“反面教師”に脱中国を進めよ! 国際社会は結局「自国第一主義」 識者「日本国民を売って自らの利権を確保する政治家らに裁きを」 ―【私の論評】日本人の武漢肺炎ウィルスへの脅威が、「脱中国」を促す(゚д゚)!


マスクを生産する中国・青島市の労働者。日本は過度な中国依存から脱却する必要がある

政府は新型コロナウイルス感染が拡大している中国と韓国に対する入国制限を決めた。だが、習近平政権への配慮から当初の対応が甘く、遅きに失した感は否めない。国際社会の「自国第一主義」があぶり出されるなか、国際投資アナリストの大原浩氏は寄稿で、日本は韓国のような中国依存の脆弱(ぜいじゃく)な構造の国を反面教師とし、ビジネス面でも脱中国を進めるべきだと強調する。


 安倍晋三首相の要請による小中高校などの一斉休校については、要請そのものを考えれば、それなりに妥当な判断だと思う。また、5日には中韓からの入国制限を公表したのだが、もっと前から「中国からの入国全面禁止」を行うべきだったという非難から免れることはできない。

 法律うんぬんで官僚が頑強に抵抗したという議論があるが、それならば習主席に「団体旅行だけではなく、個人旅行やビジネスでの訪問も禁止」にするよう要請すればよかったのだ。当時の状況で、「国賓招待」との交換条件なら、習氏も断れなかったはずだ。

 現状は、燃え盛る家から自分の家に飛び火するのを傍観していて、燃え移るのを確認してから命がけで消火活動を行っているようなものである。

 マスク売り切れ騒動も「転売屋」やドラッグストアの抱き合わせ販売が非難されているが、本当の問題点は過度の輸入依存だ。2018年に日本で約55億枚流通したマスクのうち、国産は約11億枚で残りの約44億枚は輸入品だ。輸入比率がなんと80%にのぼる。輸入品の多くが「メイド・イン・チャイナ」と推定されるが、彼らが自国の緊急事態において「思いやり精神」や「恩返し」で日本への輸出を続けているだろうか。

 その他の国も「自国民優先」が当然であるから輸出に回すとは考えられない。このような状況で、共産主義中国や韓国に、「日本国民の安全・安心・生命」を犠牲にして、血税で備蓄していたマスクどころか防護服まで贈呈する政治家、官僚、役人、企業は、「日本国民を売って」自らの利権を確保しているとしか言いようがない。緊急事態が終わった後に、彼らは日本国民から厳しく裁かれるべきである。

 政府はメーカーに大増産を依頼しているというが、供給の80%が消えたと考えられるから、日本メーカーがこれまでの5倍のマスクを生産して通常の需要をやっと賄えるに過ぎない。極度に需要が増加した現在の需要を満たせるはずがないのは当然だ。

 問題は、マスクに限らない。2018年度の食料自給率は、カロリーベースでは37%にとどまっている。生産額ベースでは66%というのも決して高い数値ではない。

 もちろん、現代の農業は産業化されており、農業機械の稼働や食糧を運ぶトラックなどのガソリン、化学肥料、農薬が入手できなければ生産・供給を維持できなくなる。

 1973年の第1次オイルショック後、日本が世界をリードする省エネ国になったのも、この時経験した「石油供給が途絶する恐怖」のトラウマの結果である。

 日本の目の前に反面教師もいる。フッ化水素などの3品目の「輸出管理の強化」を日本の国防上の必要から限定的に行っただけで、大騒ぎをした韓国である。半導体製造装置や各種材料など、韓国経済が日本に依存した脆弱な構造であることは明らかだ。

 対中国において、製造業の先端技術分野では、おおむね日本が輸出側で優位に立っているが、原油を始めとするエネルギー資源や鉱物資源では弱い立場だ。特にレアアースの生産は中国に偏っており、政治的に利用されて日本企業が大変困ったこともあった。

 グローバル化は「お互いに助け合う」スタンスでなければ成り立たない。「いいとこどり」をして「恩をあだで返す」国々が、世界貿易の枠組みに紛れ込んで来れば維持できなくなるのは当然だ。その意味で、「トランプ米大統領が『国民ファースト』の政策を推進し、自由貿易を破壊する国々にお灸をすえた」のは正しかったといえる。

 すでに米国は、コストうんぬん以前に戦略上重要な製造業を国内回帰させる方針であることを明言している。日本もこれに遅れてはならない。

 経済・社会の基本単位が「国家」であることはこれから、ますます意識されるであろう。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】日本人の武漢肺炎ウィルスへの脅威が、「脱中国」を促す(゚д゚)!

大原浩氏が上の記事で語っていることは正しいです。ただし日本人としては、その前に若干理解して置かなければならないことがあります。

中国発の新型コロナウイルスが今まさに日本でも猛威を振るおうとしていた矢先の2月17日、免税家電量販店のラオックスが「希望退職者を募集する」と発表した。その数、全従業員の20%にあたる140人(子会社のシャディを含めると160人)。

ラオックスと言えば、昔は激安のパソコンショップとして名を馳せた企業ですが、不況の影響で10年程前に中国企業である蘇寧(そねい)の傘下に入り、社長も中国人の羅怡文氏が務めています。

LAOX THE DIGITAL館がオープンして大賑わい(1999年10月)約3年後の2003年1月13日、様々な事情に
より閉店してしまいました。現在はパチンコ店と飲食店が入居する複合ビルとして営業

昨年から既にインバウンド需要に翳りが見え始めていましたが、ここに来て、中国で伝染病が発生したため、更なる企業業績の悪化は避けられないとの判断なのでしょう。インバウンド需要の変化(減少)は一過性のものではなく、ある程度は長期化すると見越した上での人員削減なのだろうと思われます。

日本経済はバブル崩壊後、「失われた30年」とも言われ、バブル期には土地や株式などの資産価格は上昇していたものの、一般物価の値上がりさほどでもなかったにも限らず、その当時の、とち狂った日銀が、金融引締に展示、その後も平成年間のほとんどの期間を引き締め続け、これに輪をかけてとち狂った財務省が、増税などの緊縮財政を続けたため、日本は深刻なデフレに陥りました。

日本は誤った財政・金融政策のためGDPは横ばいだった

当然のことながら、将来の先行き不安から多くの人々が財布の紐を固く締め、お金を散財しなくなりました。一方で、バブル経済の真っ只中にあったお隣の中国人の一部は、どんどんとお金持ちになり、日本に訪れて、高性能で安全な日本の商品を日本人に成り代わってゴッソリと購入しました。

その景気の良い姿に気を良くした日本の商売人達は「お客様(中国人)は神様」と言わんばかりに、我先にと中国人旅行者の獲得に努めました。

日本のバブル期を彷彿とさせる中国人の購買姿勢は、いつしか「爆買い」と呼ばれるようになり、「インバウンド消費」という言葉がテレビや新聞のタイトルとして踊り、お茶の間を賑わせました。識者の中には、景気浮遊=インバウンド消費であるかのように、したり顔て語る識者も大勢いました。

デフレ真っ只中の日本では、日本の製造業が日本で製造して日本国内で販売するよりも、中国や韓国で製造したものを輸入して日本国内で販売したほうが、コスト的に優位という異常事態が発生しました。

そのため、日本企業は中国と合弁企業を設立して、中国人従業員を大量に雇用して、中国で商品を製造し、日本に輸入するという方式をすすめました。そのため、中国は随分と潤ったわけです。

そうして豊かになった中国の富裕層や準富裕層などが、日本を訪れ爆買をしたのです。政治的には、日本の尖閣諸島を乗っ取ろうという思惑を抱いた中国に「ノー」を突き付けても、日本企業は中国に進出し、中国を豊かにし、さらにその中国からの一般旅行客は別物とばかりに「ヨイショ」するというような異常な事態が繰り広げられていたのです。

政治と経済で明らかな二重基準(ダブルスタンダード)を貫いてきた日本でしたが、今回の新型コロナウイルス騒ぎによって、その二重基準は改められようとしているかに見えます。

多くの日本人には、唯物論者が多いせいもあるのでしょうか、殊更に目に見えないものを恐れる傾向があります。原発の放射能と同じように、ウイルスも目には見えません。

こういう場合、正しい判断をするには科学的に冷静になることが求められるのですが、原発事故の時に判明したように、日本では、人体に全く悪影響が無い微量な放射線でも頭から、と言うよりも、脊椎反射で科学的事実を受け付けないという人が大勢いました。無論、それは過去形ではなく、現在進行形で存在しています。

今回のウイルスも放射能と同じような感覚で、脊椎反射で否定する人々は大勢出てくるものを思われますし、既にそういった人々は存在しています。

彼らが抱いている恐怖は、ウイルスだけでなく、ウイルスを運んでくる中国人や中国という国そのものにも向いています。

尖閣諸島を乗っ取ろうとする中国、核兵器で日本を狙っている中国、組織的で体系化された中国の反日教育等にはあまり危機感を抱かなかった人々が、ウイルスを日本国内に持ってくる中国には断固として「ノー」を突き付けています。特に、中国政府が当初武漢肺炎の感染を隠蔽していたことに、不条理を感じている日本人は多いでしょう。

実に皮肉な現象ですが、多くの日本人は自分自身に被害が直接及ぶと思われるもので、目に見えるものにはそうでもないのですが、目に見えないものには実に厳しい態度に変化します。それに気づいていないのは、日本の政財界の愚かな親中派どもだけです。

最近では、自分達に直接害を与える国のリーダー習近平が日本国賓で訪れるというスケジュールをなかなか変えず、多くの日本人が不信感をつのらせていました。さらには、中国全域からに日本への入国制限を安倍政権はなかなか実施しませんでした。その結果安倍政権への支持率が低下しました。



遅きに失した感はあったものの、習近平の訪日は延期され、結局中国全域からの日本への入国制限は実行されることになりましたが、中止ではなく延期であること、やはり遅すぎた入国制限などで、安倍政権の支持率の低下はすぐに解消されるかどうかは、不透明です。

これを機会に多くの識者が中国の真の脅威を説けば、中国に対して危機感を抱くだけではなく、不条理を感じる人も多くなるのではないかと思います。そうして、その不条理は、放射能への恐怖とは異なり正鵠を射たものなのです。

安倍政権としては、支持率が落ちたことを真摯に反省し、党内政治等のために党内親中派や財界親中派に忖度し続けるのか、それとも国民の声を聴くべきなのか、選択を迫られているとと捉えるべきです。

日本は、政治的にも経済的にも、ようやく「中国依存」から「脱中国」に舵を切ろうとしているようです。それは、短期的には大きな衝撃ですが、長期的には良いことです。

2019年11月2日土曜日

【日本の解き方】「デジタル人民元」の発行はドルの基軸通貨体制に脅威 FBと米政府は手を組むか―【私の論評】基軸通貨にはなり得ないデジタル人民元の末路(゚д゚)!


米ドル(上)と人民元(下)

中国の政府系シンクタンク、中国国際経済交流センターの黄奇帆副理事長が講演で、「中国人民銀行が、世界で初めてデジタル通貨を発行する中央銀行になる可能性がある」と発言したことが話題になっている。

 技術的な観点では、デジタル通貨の技術はできているので、中央銀行がその発行者になることは可能だ。単純にいえば、多くの種類があるデジタル通貨も基本は同じであり、どれかをコピーすれば新たなデジタル通貨を作ることができる。

 政府や中央銀行がデジタル通貨の発行主体になれば、民間主体のデジタル通貨が抱える問題点の多くは解消されるとともに、駆逐される可能性も高い。

 民間企業の米フェイスブックが発行を目指しているデジタル通貨「リブラ」は、米国議会で苦労している。米政府や中央銀行はリブラの発行が及ぼす影響を警戒しており、リブラの規制法ができようとしている。そこで、フェイスブックが持ち出してきたのが、中国の脅威だ。

 これは、的外れな論点ではない。リブラは複数の法定通貨で構成されたバスケットに裏付けられるが、その中に中国の人民元は含まれていない。しかし、中国人民銀行が、リブラをコピーして、各国の法定通貨に人民元を加えたデジタル通貨を作るのは難しくない。この場合、このデジタル人民元は中国がコントロールするブロックチェーン上で稼働することとなるに違いない。

 日本や欧米などの民主主義国では、ブロックチェーンは分散化され政府が管理することはあり得ないが、同じ技術でも中国では全て政府が管理することとなるだろう。

 もしデジタル人民元ができれば、米国による金融制裁を回避することも実際に可能になる。現在はドルが国際金融で基軸通貨として支配的なので、米政府が米国の銀行を抑えれば、世界中でドル決済を事実上行えなくなるが、デジタル人民元でドル支配を乗り越えられる可能性がある。

 もちろん米国もデジタル人民元にドルの有用性が吸収され、基軸通貨の立場が損なわれるおそれがあることを承知している。

 そこで、フェイスブックその他の通貨の裏付けがある安定的なデジタル通貨を規制し、民間企業であっても米政府の意のままに操ろうとしているのだろう。フェイスブックがマイクロソフトのように物分かりがよければ、規制に服する代わりに利益を保証してもらえるというわけだ。

 もっとも、フェイスブックは、規制当局の支持が得られるまではリブラの発行を遅らせる姿勢を改めて示しており、フェイスブックと米国政府は条件闘争しているようにも見える。

 結局、国際基軸通貨としてのドルの立場を守るためにも、フェイスブックと米政府が最終的には協力し、デジタル人民元の台頭を許さないと、筆者はみている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】基軸通貨にはなり得ないデジタル人民元の末路(゚д゚)!

アップルのティム・クックCEOが暗号通貨(仮想通貨)発行につき、否定的な見解を述べたことが報じられています。

今年6月、Facebookは暗号通貨プラットフォーム「Libra」を正式に発表。ブロックチェーンの管理団体「Libra Association」に参加するMastercardなどの共同創立者とともに、Libraを推進するとアナウンスしていました。

フランスの新聞Les Echosはインタビューの中で、アップルがこの動きに追随するのかと質問。それに対してクック氏は「通貨は国家の管理下に置かれるべきだと思います。民間企業グループが競合する通貨を創り出すアイディアには賛成できません」「民間企業は、このような形で権力を得ようとすべきではありません」と回答しています。

これに先立ってアップルの幹部は「暗号通貨を注視している」との趣旨を述べており、独自の暗号通貨を模索しているとの見方もありましたが、否定されたかたちです。

もっとも、クック氏の言葉は額面通りに受け取れないかもしれません。1つには、同氏がFacebookのザッカーバーグ氏とプライバシーの扱い等を巡って確執があり、当てつけを返した可能性も考えられるわけです。

もう1つは、Libraを取り巻く環境が危うさを増していること。米上院は消費者プライバシーの保護を懸念して公聴会を開催し、米政府もLibraが資金洗浄などに使われる恐れについて「非常に深刻な懸念」を表明、Libra担当者はスイスで26カ国の中央銀行幹部から質問攻めに遭うことに。そうした情勢を鑑みたのか、PayPalも撤退を表明していました。

さらに言えばクック氏は「事業を展開している現地の法律に従う」、つまり政府と対立しない方針を一貫しています。米国政府やEU諸国も大手ハイテク企業による暗号通貨に懸念を抱いているなかで、参入は問題外かもしれません。

アップルCEOティム・クック氏

ただし、仮にリブラ導入が阻止されても、他の主体が同様の仕組みを導入する可能性は残ります。

容易に想像できるのは、新興国で最初に導入される可能性です。金融システムが未発達で銀行取引にアクセスできない人が多い国々にとっては、既存の金融システムからの移行コストが相対的に小さいこともあり、スマートフォンと通信網だけで金融システムを高度化し得る可能性は魅力的でしょう。

この記事の冒頭に記事にもでてきた、リブラはビットコインと同様、ブロックチェーンの技術を使って開発される仮想通貨ですが、ビットコインとの最大の違いは、ドルやユーロなど既存通貨によって価値が担保される点である。要する、リブラはいつでもドルやユーロなどの既存通貨と交換できるということです。

リブラはリブラ協会と呼ばれるコンソーシアムが通貨を管理する予定ですが、リブラ協会はドルやユーロといった既存の法定通貨を保有し、この保有資産を裏付けにリブラを発行する仕組みとなっています。リブラと既存通貨の交換レートは変動するものの、各国通貨のバスケットになっているので、価格変動は穏やかなものになります。

IMF(国際通貨基金)には、主要通貨をバスケットにしたSDR(特別引出権)という、事実上の国際通貨がありますが、リブラはこれに近い仕組みと考えてよいです。主要通貨をベースに通貨を発行するという点では、保有するドル資産などを裏付けに、政府ではなく民間企業が通貨を発行している香港ドルとも似ています。
日本では政府が発行しないと通貨ではないといった議論をよく耳にしますが、それは単なる思い込みです。経済学的に見た場合、通貨は、それに価値があると多くの人が認識すれば、通貨として流通する性質を持っています。
政府の方が民間よりも信用度が高いので、法定通貨の方が流通しやすいのは事実ですが、民間が発行主体であっても、通貨の要件を満たさないわけではありません。
中国政府はリブラの計画をきっかけに、デジタル通貨の発行を進める決断を行ったようですが、その理由は、リブラが持つ潜在力が想像以上だったからです。

リブラについては、各国から様々な懸念が寄せられており、マネーロンダリング対策などで協議を進めていくとしています。しかし、リブラにはマネロンに関する懸念があるという各国通貨当局の説明は、額面通りには受け取らない方がよいでしょう。

もちろん、匿名性の高い仮想通貨が世界に流通すれば、犯罪資金などの温床になる可能性はありますが、現金とは異なり、仮想通貨は理屈上、その行方を電子的に追跡できます。

現金ほど匿名性が高く、犯罪やテロに利用しやすい決済手段はほかにないです。それにもかかわらず、現金が主な決済手段として全世界で使われている現状を考えますと、仮想通貨が普及するとマネロン対策ができなくなるというのは杞憂に過ぎません。

各国の通貨当局が本当に恐れているのは、マネロンなどではなく、リブラのような仮想通貨が普及することで、中央銀行が持つ巨大な権力が脅かされることです。

現代の金融システムは、中央銀行が通貨を一元的に管理し、傘下にある民間銀行を通じてマネーの流通をコントロールすることで成り立っています。

中央銀行はその気になれば、その国の経済を自由自在に操ることができるので、この仕組みは、中央銀行を頂点とした銀行による一種の産業支配システムと言い換えることができるかもしれません。

ところが、ここでリブラのような仮想通貨が広く流通する事態になると、状況が一変します。

中央銀行による統制が効かないマネーの比率が増えれば、金融政策の効果は半減し、中央銀行が持つ権力も大きく削がれることになります。金融機関にも十分な情報が入らなくなり、一般企業に対する支配力も大きく低下してしまうでしょう。

米国は常に巨額の貿易赤字を垂れ流していますが、それは多額のドルを世界にバラ撒いていることと同じです。つまり米国は貿易赤字を通じて全世界にドル経済圏を構築しているわけなのですが、世界経済におけるドル覇権の影響力はすさまじく、各国企業はドルなしでは経済活動を継続できません。

近年、グローバル化が進み、海外にも気軽に送金できるようになりましたが、銀行間の送金ネットワークも実は米国がドルベースで構築したものであり、ドル覇権と密接に関係しています。海外送金が簡単になったのはドルが普及したことが要因であって、多国籍という意味でのグローバル化が進んだ結果ではありません。

ドル覇権が続く限り、米国には金融機関を通じて世界のあらゆる情報が集まってきますが、インテリジェンス(諜報)の世界において、これほど有益な仕組みはほかにないでしょう。

米国のような通貨覇権国はお金の動きをチェックするだけで、全世界の情勢をほぼリアルタイムに把握できてしまうのです。そもそも、予算は国家意思といわれるように、すべての国家の政策には何らかの予算がついて初めて実行できるからです。

そうして、予算の実行にはすべてお金が絡むわけで、お金の流れをつかんでいれば、予算の実行過程まで把握できるのです。無論予算の実行には、ドルだけではなく自国通貨も使用するので、全部を把握できるとはいえませんが、それにしても全ての国が貿易をしており、その決済にはドルを使うことから、貿易に関しては把握できるわけで、その内容から自ずと、国内のこともかなりのところまで把握できるのです。

近年、このドル覇権に対して公然と挑戦状を叩き付けたのが中国です。中国は人民元をベースにした独自の銀行送金ネットワークの構築に乗り出しており、ドル覇権を周辺から突き崩そうとしています。ただし、これはいまのところ、成功しそうにはありません。

このような現実を考えると、全世界で27億人の利用者を持つフェイスブックが、本格的な仮想通貨の計画を打ち出したことのインパクトが、米中の通貨当局にとっていかに大きいことなのかお分かりいただけると思います。

これまで規模の小さい途上国は、ドル覇権の下にぶらさがる形でしか通貨システムを構築できませんでした。内戦が続き国土が荒廃したカンボジアでは、国連による暫定統治で経済を復活させましたが、金融システムはドルと現地通貨の二本立てとなっています。現在、カンボジアはめざましい経済発展を遂げていますが、これはカンボジアがドル経済圏であることと無縁ではありません。

中国はカンボジアを中国経済圏に引き入れようと、莫大な資金を投下していますが、企業における決済や預金、投資がドルになっている以上、中国もそのルールに従わざるを得ないです。通貨覇権を握っていることは、何兆円もの経済援助をはるかに上回る効果があるのです。

もしリブラが世界に普及した場合、自国通貨とリブラの二本立てで金融システムを構築する新興国が出てきても不思議ではないです。こうした新興国は、リブラを交渉材料に、ドル覇権を狙う米国と人民元覇権を狙う中国を上手くてんびんにかけ、双方から好条件を引き出そうとするでしょう。

つまりリブラという仮想通貨は、これまで構築してきたドル覇権を脅かす存在であり、そのドル覇権に対して挑戦状を叩きつけている中国にとっても、それは同じことです。

中国は発行を計画している人民元のデジタル通貨を用いて、国際的な人民元の普及を画策する可能性があります。表面上はリブラとは対立関係にありますが、この世界は「蛇の道は蛇」であり、リブラとデジタル人民元が共存することも十分にあり得ますし、米国政府が水面下でフェイスブックとの交渉を進めている可能性も否定できないです。

さらに言えば、ユーロ陣営や英国の動きにも注目する必要があります。

ユーロ圏各国は、表面的には仮想通貨規制で各国と足並みを揃えるというスタンスですが、ユーロ圏内では、ビットコインなどの仮想通貨を自由に流通させています(英国も同様)。欧州各国が、仮想通貨に対して警戒感を示しつつも、ドル経済圏に対する牽制球としての役割を仮想通貨に期待している面があるのは明らかです。

とはいいながら、先に述べたように、リブラはいつでもドルやユーロなどの既存通貨と交換できる通貨です。特に、いつでもドルと交換できるというのが強みです。

対して、中国の人民銀行が発行する仮想通貨はおそらく、ドルといつでも交換できるようにしたいのは山々でしょうが、それは現状では不可能に近いです。

リーマンショック後、人民元発行残高の100%相当のドル資産を人民銀行は保有していました。ところが、バブル崩壊不安を背景に資本の流出が激しくなりました。ドル資産は大きく減り、海外からドルを借りてようやく3兆ドル台の外貨準備を維持するありさまです。それでも人民元発行残高ドル資産比は6割まで落ちたのです。


これでは、中国が仮想通貨を発行したとしても、当然のことながら、ドルで担保することなど全くできません。

さらには、今年は中国の国内債が記録的なペースでデフォルト(債務不履行)に陥っていますが、来年はオフショア市場の番かもしれないです。現時点で「ストレスト」に分類される企業が発行したドル建て債の大量償還が近づいているためです。

ブルームバーグの集計データによると、利回りが現在15%以上のオフショア債86億ドル(約9260億円)相当が2020年に償還を迎える。言い換えると、ストレスト企業のドル建て債発行残高の約40%が来年償還となるからです。

ルームバーグの集計データによると、利回りが現在15%以上のオフショア債86億ドル(約9260億円)相当が2020年に償還を迎える。言い換えると、ストレスト企業のドル建て債発行残高の約40%が来年償還となる。

これらのことを考えると、現状ではドル建での信用がない中国の仮想通貨は仮に発行したとしても、リブラほどは普及しないことが十分考えられます。

仮想通貨自体には、現在ではあまり信用が高くはありません。それは、当然といば当然です。これは、自分におきかえて考えてみるとわかると思います。自分の給料が全部仮想通貨で支払われたとしたらどうするでしょうか。

たいていの人は仮想通貨は便利とは思うでしょうが、自分の給料が全部仮想通貨で支払われたとしたら、やはり不安を感じると思います。やはり、少なくとも一部、もしくはかなりの部分を既存の通貨に変えて、銀行に預金したいと思うのではないでしょうか。

現在の現金だって、昔は金や、銀に変換できる時代があり、それぞれ金本位制とか銀本位制と呼ばれていました。ただし、政府の発行する貨幣が長い間使われてきた実績があるので、今はなくなりました。

仮想通貨も同じことです。最初はこれで貯蓄することなどに不安を感じる人は多いでしょう。長く使われるようになって、しばらくして多くの人が安心するようになれば、ドルの保証などいらなくなるでしょうが、それまでには長くかかると認識すべきです。

現状では、人民元建てだけの信用だけでは、使い手にとってはかなり不安です。であれば、なかなか普及しないでしょう。

これから、先10年くらい中国がかつての中国のように、毎年10%程度の成長を続けるとの信頼が市場から得られれば、中国発の仮想通貨も普及する可能性はありますが、それはあり得ません。


それでも、金融システムが未発達で銀行取引にアクセスできない人が多い国々にとっては、中国の仮想通貨を使う意味は大きいかもしれません。スマートフォンと通信網だけで金融システムを高度化し得る可能性は魅力的でしょう。ただし、このような国々の多くが、仮想通貨を使うようになって、経済発展したとして、どのくらいの規模になるかという問題があります。

さらには、デジタル人民元が普及していくと、現金とは異なり、仮想通貨は理屈上、その行方を電子的に追跡できることから、中国国内では困る人が大勢出てくる可能性が大です。

無論中国の暗黒社会の構成員を容易に摘発しやすくなるというメリットもありますが、役人の不正や、政府要人の不正なども把握しやすくなります。中国共産党の幹部らは、現状ではメリットばかり考えているのでしょうが、彼らにとってデメリットも大きいことをいずれ痛感するようになるでしょう。

そもそも、ブロックチェーンは、常にみんなにみはられている台帳のようなものです。中国政府だけが、見張るブロックチェーンによる、仮想通貨は本当に仮想通貨といえるのかという問題もあります。

以上のことを考えると、現状では中国の仮想通貨はそれほど危険な存在とはとても思えません。ただし、将来の危険な芽を潰すという意味では、高橋洋一氏の主張するように、やはり国際基軸通貨としてのドルの立場を守るためにも、フェイスブックと米政府が最終的には協力し、デジタル人民元の台頭を防ぐことになると思います。

フェイスブックCEOのザッカーバーグ氏

さらに、リブラはドルトの交換ができるということで、発行には自ずと限界があるので、FRBの権力を脅かすまでにはならないでしょうし、フェイスブックは米国による規制等を受け入れるでしょうから、リブラがドルにとって変わるような事態にはなることはないでしょう。

さらに、ザッカーバーグ氏も、ドルに変わる通貨などという大それたことは考えていないでしょう。そんなことより、リブラを用いて、フェイスブックのユーザーにさらなるベネフィトをどのように提供していくかということに関心があることでしょう。

【関連記事】

2019年8月16日金曜日

北朝鮮、6度目のミサイル発射 韓国との交渉打ち切りを発表―【私の論評】韓国は今のままだと米国の短中距離ミサイルの設置場になるが、それを北・中・露は恐れている(゚д゚)! 


BBC News

金正恩

韓国の軍隊は16日、北朝鮮が東岸から日本海側に向かってミサイル2基の発射実験を行ったと発表した。北朝鮮は6日前にも日本海に向けてミサイルを発射しており、この1カ月間で6回に上っている。

また北朝鮮はこの日、韓国との交渉を今後一切打ち切ると発表。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が15日に行った演説を受けたもので、交渉の失敗は「完全に韓国の責任」だとしている。

文大統領は15日、日本統治からの解放を祝う記念日の演説で、2045年までに朝鮮半島を統一すると約束した。

「この半島や東アジア、世界に平和と繁栄をもたらす新しい朝鮮半島が待っている」と文氏は強調。その上で、朝鮮半島の非核化は統一の「正念場」になるだろうと話した。

これに対し北朝鮮は声明で、協議には意味がないと反論した。北朝鮮の国営・朝鮮中央通信(KCNA)が伝えた。

声明で北朝鮮は、「韓国は今も合同軍事演習を続けている。それなのに、平和的な経済や国家について語る権利はない」と断じた。

さらに文大統領を批判し、「北と南の『対話』に言及しながら、我が軍の大部分を90日で破壊する戦争シナリオを演習している。そんなことをする(文大統領の)思考プロセスが正常か、それさえ疑わしい」、「本当に恥知らずな男だ」と述べた。

北朝鮮はかねて、現在行われている米韓合同軍事演習への怒りをあらわにしており、「戦争のリハーサルだ」と批判している。

さらに演習は、ドナルド・トランプ米大統領や文大統領と交わした協定の内容に違反するものだと主張している。

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は先にトランプ氏に手紙を送っている、そこでも「馬鹿げた高額な」軍事演習への苦情が書かれていたという。

KCNAによると、北朝鮮・祖国平和統一委員会の報道官も、非核化協議が滞っているのは韓国が軍事演習の実施を決めたからだと批判。「これ以上、韓国政府と交わす言葉はない」と話した。

North Korea rejects peace talks with South Korea

提供元:https://www.bbc.com/japanese/49366256

【私の論評】韓国は今のままだと米国の短中距離ミサイルの設置場になるが、それを北・中・露は恐れている(゚д゚)!

今日の韓国との交渉の打ち切りに先立ち、北朝鮮は韓国に対して生命を出しています。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は14日、韓国が、米国の中距離ミサイルの自国配備を許せば、「自ら(米国の)弾除けになって自滅の道を歩む」ことになるとする論評を配信しました。

論評はまず、米国の高高度迎撃システム「THAAD」(サード)の韓国配備に伴って起きた混乱に言及。「『THAAD』の配置によって南朝鮮の人民が得たものは戦争に対する不安と経済的被害、肉体的苦痛だけである。生の基盤を奪われた慶尚北道星州住民の恨みの声は日増しに高まっている」と指摘しました。

THAAD

ここで「経済的被害」とあるのは、THAADの強力なレーダーが北朝鮮ではなく自国に向けたものだと反発した中国が、韓国に経済制裁を加えたことを指しています。実際、これにより韓国経済が被った「実害」は、最近の日本による輸出規制の比ではありません。

論評は、米国がTHAADに加えて地上発射型の中距離ミサイルまでを韓国に配備すれば、「地域の情勢を激化させ、極東地域で新たな冷戦と軍備競争を引き起こす」と主張しました。

また、そうなれば韓国は「米国の対朝鮮・対アジア侵略の核攻撃前哨基地に転落し、米国の軍事的制覇を絶対に許さないという周辺諸国の直接的な打撃の標的になるしかない」としながら、次のとおり中国の主張を引用しました。

「中国の『環球時報』(5日付)は論評で、中距離ミサイルは明白に攻撃用兵器だとし、日本と南朝鮮が米国の中距離ミサイル配備を受け入れれば『中国とロシアのミサイルの集中照準目標に、米国の殺気を帯びた対アジア政策の弾除けになるということをはっきり認識しなければならない』と明らかにしました。

ところで、エスパー米国防長官は今月、地上配備型の中距離ミサイルを比較的早期にアジアに配備することに前向きな姿勢を示しましたが、韓国国防省は、米国の中距離ミサイルを国内に配備する協議は行っておらず、配備を検討する計画もないと説明しています。

エスパー米国防長官

しかしこの間、韓国の文在寅政権は日本との対立解消のための仲裁をトランプ米大統領に頼むなど、米国に「おんぶにだっこ」の状態です。それでいて、米国と呼吸が合っているわけでもありません。

トランプ氏に「頼み事」をした代償は相当に高くつく可能性が高く、韓国は米国から中距離ミサイルの配備を迫られるかもしれません。北朝鮮、中露はこれを極度に恐れているのです。

韓国や日本が中距離核ミサイルを配備するということになれば、極東の軍事バランスは大幅に崩れます。

特に、北の核はその能力を半減されせらることになります。さらに、中国やロシアも極東の主要都市などは標的になります。中国は、北京も上海も標的になります。

米国にとっては、在韓米軍など大部分を撤退させ、韓国に米国の中距離短距離弾道核ミサイルを配置したほうが、経費の面でも、安全保障的観点からも良いです。

何しろ韓国ほ米国に安全保障面で頼っておきながら、中国に従属しようとし、それだけではなく、北朝鮮に接近して、南北統一を企むということを平気でする国ですから、全く当てにならないです。

それは日米にとって当にならないだけでなく、北朝鮮の金正恩にとっても同じことです。そもそも、金正恩は中国を嫌っており、結果として北朝鮮と北朝鮮の核が、中国が朝鮮半島全体に浸透することを防いでいます。

これは、米国にとっては決して悪いことではありません。最悪は、中国が朝鮮半島全体に浸透することです。

そんな当てにならない国からは、在韓米軍を撤退させ、そこに中短距離弾道核ミサイルを配置すれば、トランプ政権にとっても願ったりかなったりです。これを実行すれば、韓国は単なるミサイルの配置場になるだけです。

米国の短中距離ミサイル

おそらくトランプ氏としては、在韓米軍を引き上げるだけというのなら、このブログにも過去に何度か掲載してきたように、韓国を経済的に焦土化してから、引き上げることにしたことでしょう。

しかし、韓国が米国の短中距離ミサイルの設置場になることを認めれば、在韓米軍をひきあげても、韓国経済を焦土化することはないでしょう。

ミサイルを配置した後に、韓国が不穏な動きをすれば、米国は韓国軍を短中距離ミサイルで叩いた上で、韓国経済を焦土化し、金正恩や習近平らに、経済的にある程度発展した韓国という塩を送るということはしないでしょう。

ミサイルとはそのような兵器です。北朝鮮のミサイルは日米韓を狙っているだけではありません。これは、中国、ロシア、韓国にだって打ち込むことができるのです。

米国が韓国に中短距離ミサイルを配置したとすれば、それは北朝鮮や中国にとって脅威というだけではなく、韓国にとっても脅威なのです。

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2018年8月21日火曜日

米中貿易戦争 衝撃分析! 貿易戦争で「中国崩壊」でも心配無用? 世界経済はむしろ好転か…―【私の論評】中国崩壊の影響は軽微。それより日銀・財務官僚の誤謬のほうが脅威(゚д゚)!

米中貿易戦争 衝撃分析! 貿易戦争で「中国崩壊」でも心配無用? 世界経済はむしろ好転か… 国際投資アナリスト・大原浩氏「世界にとってプラス」

中国経済が変調すれば、習近平主席の地位も危うくなるが、他国にとっては歓迎すべき事態か

 トランプ米政権に貿易戦争を仕掛けられた中国が大揺れだ。世界第2位の経済大国が「経済敗戦」となった場合、習近平政権に大打撃となるのは確実だが、世界経済も大混乱しないのか。中国経済や市場に詳しい国際投資アナリストの大原浩氏は、むしろ「世界経済は好転する」とみる。その理由について緊急寄稿した。

 「米国との貿易戦争で中国の負けは確定している」というのが筆者の持論だが、中国が崩壊でもしたら世界経済はどうなるのか? と心配する読者も多いかもしれない。しかし、結論から言えばごく短期的な負の影響はあっても、長期的に考えて中国崩壊は世界経済にプラスに働く。

 そもそも、現在の世界経済の最大の問題は「供給過剰」である。1979年からトウ小平氏によって始められた「改革・開放路線」は、89年のベルリンの壁崩壊、91年のソ連邦崩壊の後、92年ごろから加速した。80年代ぐらいまでは「鉄のカーテン」や「竹のカーテン」で西側先進諸国と隔絶されていた共産主義諸国が、大挙して世界の貿易市場に乗り出してきたという構図だ。

 東南アジアや南米などの新興国も供給者として名乗りを上げた。それまで日本と欧米先進諸国以外にはシンガポール、香港、タイ、台湾、韓国程度しかプレーヤーがいなかった市場環境は大きく様変わりした。

 日本のバブル崩壊は90年ごろだが、世界的な供給過剰が始まる時期と重なったのが不幸であった。今後、もし中国が崩壊し莫大(ばくだい)な供給がストップすれば、日銀が目標に掲げる物価上昇率2%もやすやすと達成でき、日本経済は短期的な波乱を乗り越えながら力強い発展を続けるだろう。

 忘れてならないのは生産性の向上である。経営学者のピーター・ドラッカー氏によれば、「科学的分析」が生産に取り入れられて以降、工業製品の生産性は50倍以上になっている。つまり50分の1の人手で足りるというわけだ。

経営学の大家ピーター・ドラッカー氏
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 20~30年前にはハードディスク50メガバイトのパソコンが30万円ほどしたが、今やそれは数千円のUSBレベルであるし、1本1万円ほどした映画のDVDは、月額1000円ほどで見放題である。

 だから、中国1国が“消滅”したくらいでは世界、そして日本への商品供給は途絶しない。生産性の向上ですぐにカバーできる。

 このような供給過剰の世界で、いくら資金を供給しても物価が上昇しないのはある意味当然かもしれない。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が金利引き上げを2019年で打ち止めにする意向を表明した後、トランプ大統領が「金利引き上げは望ましくない」と述べたが、供給過剰社会で金利の引き上げは困難だ。これは欧州においても同様だ。

 歴史的には、世界大戦級の大規模な戦争が供給過剰を解消してきたが、今回は中国の崩壊によって世界経済が好転するかもしれない。その方が、はるかに世界にとってプラスだといえる。トランプ氏がそこまで考えて中国を経済的に「攻撃」しているのならあっぱれだといえる。

 国防・セキュリティー問題での中国企業への厳しい制裁、中国製品への貿易関税、さらには「北朝鮮」問題も実は中国を押さえ込む導火線の役割を果たしていたのかもしれない。今回の一連の動きは「中国外し戦略」といっても良いだろう。

 いずれにせよ、今のトランプ氏の言動を見ている限り「米国という偉大な国にたて突く中国など無くなってもかまわない」という気迫を感じる。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

大原浩氏

【私の論評】中国崩壊の影響は軽微。それより日銀・財務官僚の誤謬のほうが脅威(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事、結構納得できるところが多いです。まずはソ連が崩壊した時のことを考えると、確かソ連崩壊後のロシア国内は酷い有様となりましたが、ではそれによって日本をはじめとする他国がそれによって甚大な影響を被ったかどうかいといえば、まず日本についてはほとんど影響はなかったと思います。

これは、経済統計をみたとかそういうことではなく、その当時にリアルタイムで生きて経験したということからいうと、その影響についてはほとんど記憶にないです。さらに、「ソ連崩壊の世界への影響」「ソ連崩壊の日本への影響」などというキーワードでGoogleで検索してみましたが、これに該当する内容はありませんでした。試みに、この時代を生きていた私以外の他の複数の人々にも聞いてみましたが、誰も記憶している人はいませんでした。

これから類推するに、ソ連崩壊の影響は少なくとも、日本経済に及ぼす影響は軽微もしくは、ほとんどなかったのだと思います。もし、大きな影響があれば、誰かが記憶しているとか、少なくともGoogleで検索すれば何かの記録が出てくるはずです。どなたかこの方面に詳しいかたがいらっしゃいましたら是非教えていただきたいです。

直感的には、ソ連が崩壊しても、ほとんど影響がなかったというのであれば、たとえ中国が崩壊したとしても、世界経済に悪影響はほとんどないのではとの考えは間違いではないと思われます。

さらに、日本のことを考えると、そもそも、中国への輸出はGDP(国内総生産)比3%未満であり、投資は1%強でしかありません。この程度だと、無論中国に多大に投資をしていた企業は悪影響を受けるかもしれませんが、日本という国単位では、他国への輸出や投資で代替がきくので、日本経済にはほとんど影響がないといえそうです。

米国では、輸出そのものがGDPに占める割合は10%を切っています。さらにその中の中国といえば、数%にすぎません。これも、他国への輸出で十分に代替えがきくものと思われます。

さて、ブログ冒頭の記事では、生産性の向上による、供給過剰ということが掲載されてました。これは実際そうです。

それについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!
野口旭氏
この記事の元記事は野口旭氏のものですが、野口氏はやはり現在の世界は供給過剰になっていることを指摘しています。その部分を以下に引用します。
ところが、近年の世界経済においては、状況はまったく異なる。「景気過熱による高インフレ」なるものは、少なくとも先進諸国の間では、1990年代以降はほぼ存在していない。リマーン・ショック以降は逆に、日本のようなデフレにはならないにしても、多くの国が「低すぎるインフレ率」に悩まされるようになった。また、異例の金融緩和を実行しても景気が過熱する徴候はまったく現れず、逆に早まった財政緊縮は必ず深刻な経済低迷というしっぺ返しをもたらした。世界経済にはこの間、いったい何が起こったのであろうか。 
一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。 
各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。
このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。 
この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近い。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくい。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができない。ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからである。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのである。
相対的にモノが不足していた、旧来の世界とは異なり、現代の世界は貯蓄が過剰であり、その結果供給が過剰なのです。

このような世界ではよほど世界需要が急激に拡大しない限り、供給の天井には達しないのです。その結果として、高インフレや高金利が近年の先進国では生じなくなったのです。

このような世界においては、確かに中国が崩壊したとしても、日本や米国のようにGDPに占める内需の割合が多い国では、ほとんど影響を受けないでしょうし、輸出などの外需の多い国々では、たとえ中国向け輸出が減ったにしても、中国になりかわり、中国が輸出して国々に輸出できるチャンスが増えるということもあり、長期的にはあまり影響を受けないことが十分にあり得ます。

日本や米国が貿易戦争で甚大な悪影響を被ると考える人々は、両国のGDPに中国向け輸出が占める割合など全く考えていないか、あるいは過大に評価しているのではないかと思います。

今でも一部の人の中には、「日本は貿易立国」と単純に信じ込んでいる人もいます。こういう人たちは、過去の日本は、輸出がGDPに占める割合が、50%とかそれより多いくらいと思っているかもしれません。それは全くの間違いです。20年前は、8%に過ぎませんでした。これは、統計資料など閲覧すれば、すぐにわかります。

ただし、日本で一番心配なのは、過去に日銀官僚や大蔵・財務官僚らが、数字を読めずに、なにかといえば金融引締めと、緊縮財政を実施してきたという経緯があることから、彼らは世界が需要過多の時代から、供給過剰の時代に変わったといことを理解せずに、またまたやってはならないときに金融引締めと緊縮財政を実施してしまい、再度「失われた20年」を招いてしまうという危険です。

実際、2019年10月より、10%増税の実施が予定されていますが、自民党政権がこれに抗えず、これが実行されれば、日本経済は再び甚大な悪影響を受けるのは間違いないです。これに加えて、物価目標が達成されないうちに、日銀が金融引締めに転ずることになれば、今度は失われた20年どころか、「失われた40年」になりかねません。とんでもないことになります。

現実には、中国がどうのこうのなどという問題よりはこちらの問題ほうがはるかに大きいです。

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2018年4月6日金曜日

安倍晋三首相、米皮切り相次ぎ首脳会談 北の包囲網突破許さず 「戦略描いたのは日本。置き去りではない」―【私の論評】アジアの平和と安定の脅威は日本のマスコミと野党(゚д゚)!

安倍晋三首相、米皮切り相次ぎ首脳会談 北の包囲網突破許さず 「戦略描いたのは日本。置き去りではない」


 安倍晋三首相は17日からの訪米を皮切りに、夏にかけて首脳会談ラッシュに突入する。狙いは、国際社会との対話に動き始めた北朝鮮が試みる包囲網突破の阻止だ。対北圧力路線の旗振り役として、非核化だけでなくミサイル問題の解決についても北朝鮮が具体的な行動を取らない限り圧力継続が重要と訴え、包囲網維持を呼びかける。同時に拉致問題の解決に向けた協力の確約取り付けも目指す。

 「米政府内には『シンゾーからトランプ大統領に言ってもらった方がいい』という声が多い。首相が発言することが多くて負担が重くなってしまう…」

 日本政府関係者は日米首脳会談を前にこう語る。自身のスタッフにさえあまり耳を貸さないトランプ氏だが、首相の話はきちんと聞くため、米政府も首相に頼っているのだ。


 今月の日米首脳会談はトランプ氏就任後、6度目となるが、日本側は「これまでで最も重要な会談」と位置づける。5月末までにトランプ氏と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の会談が予定されているからだ。

 首相はトランプ氏に対し、北朝鮮の「非核化」のあり方を具体的に説明し、核開発のための猶予を与えずに短期間で実行させる重要性についてクギを刺す。日本にとって脅威の中・短距離ミサイルの廃棄も不可欠であることをすり込む考えだ。拉致問題についてもトランプ氏から金氏に直接、解決を迫るよう要請する。

 米国と綿密なすり合わせの後、首相は日米連携をテコに韓国や中国、ロシアと対北包囲網堅持を確認する。特に韓国は日米と連携を取っているが、いつ中朝にすり寄ってもおかしくない。北朝鮮の非核化を話し合う6カ国協議の「日米韓対中朝露」の構図が「日米対中韓朝露」に変化すれば、包囲網の効力は低下しかねない。

 こうした事態を避けるため、首相は5月上旬に東京で開催する日中韓サミットで、韓国の文(ムン)在(ジェ)寅(イン)大統領、中国の李克強首相とそれぞれ会談し、圧力路線継続の一致を目指す。5月下旬には訪露してプーチン大統領と会談するほか、6月上旬のカナダでの主要7カ国(G7)首脳会議でも協力を呼びかける。

 北朝鮮が米韓中との首脳会談に加え、近く朝露首脳会談を行うとの臆測もあり、「日本置き去り」論は根強い。しかし、北朝鮮が対話を求めるほどに追い詰められたのは、日本が圧力路線を主導したからだ。

 日米はトランプ政権発足以降、(1)軍事力を含むすべての選択肢はテーブルの上にある(2)最大限の圧力をかける(3)北朝鮮側から話し合いを求めてくる状況を作る-の3方針を主導してきた。いずれも日本が提案し、米国が国連などで主張し日本が支持する形を取ってきた。

 外務省幹部は「実は日本がこれまでの戦略を描いてきた。決して置き去りになっていない」と断言する。首相の一連の外国訪問は置き去りではないことを証明する狙いもありそうだ。(田北真樹子)

【私の論評】アジアの平和と安定の脅威は日本のマスコミと野党(゚д゚)!

電撃的だった中朝首脳会談

平昌オリンピックにおいて、北朝鮮による華々しい「微笑み」外交が繰り広げられ、その後の電撃的な中朝首脳会談の背後で、北朝鮮をめぐる軍事的緊張は確実に高まってきています。こう書いても、いまや話半分にしか聞いてくれないことが多いかもしれません。

それも理解できなくもありません。昨年来、マスコミでは、トランプ政権がいまにも北朝鮮を攻撃するかのような憶測が事あるたびに報じられてきましたが、軍事行動が起こらないまま1年が過ぎたからです。

狼少年ではありませんが、半島危機は起こらないのではないのかという奇妙な楽観論がいまの日本を覆いつつあるようです。しかし、この1年のあいだに危機は確実に進行しています。

その危機の実情を理解してもらうためには、まず、なぜこの1年間、トランプ政権が軍事行動を起こさなかったのか、ということの説明から始める必要がありそうです。

そもそも、北朝鮮に対してトランプ政権はどのように考えているのでしょうか。特にその中でも、米軍関係者はどのように考えているのでしょう。

米軍側は、北朝鮮だけを見ているわけではありません。北朝鮮有事はあくまで前哨戦に過ぎず、本丸は中国であり、ロシアが連動してくると考えているようです。

米軍は、アジア太平洋方面において2つの大きな脅威に直面しています。短期的には北朝鮮。長期的には中国が自国の利益を確保するために軍事力を使おうとしていることです。

北朝鮮の脅威は、軍事だけといえます。経済力がないため、中国に比べればそれほど難しくはありません。この北朝鮮の問題を混乱させているのがロシアです。ウクライナ問題でもロシアは事態を混乱させる方向で動いていました。

中国は経済力をもっているため、中国に対して軍事は重要ですが、それ以上に外交、情報、経済などの分野で中国を抑止していくことが重要です。とくに中国は、他国が他の問題に気を取られているあいだにいろいろと手を打ってくるので注意が必要です。

金正恩朝鮮労働党委員長を筆頭とする北朝鮮の体制を崩壊させたとしても、米軍は、中国が軍事的増強を続けているため、これから10〜20年はアジアの緊張が続くものとみるべきでしょう。特にこのブログでも何度か掲載しているように、台湾を巡る米中の争いはアジアに新たな火種となるのは間違いないです。

3月22日、トランプ米大統領は中国への高関税措置に署名した

トランプ米政権が国防予算を大幅に増やしたことから、半島危機に備え本気で対応しようとしているのは間違いないでしょう。

その上で、安倍晋三政権は外交で、北朝鮮の暴発を阻止する努力を続けています。アジア紛争のリスクは実は、安倍批判が強い日本のメディアの論調にあるかもしれません。

その中でも、「(北朝鮮問題で)日本は置き去りにされている」マスコミの論調は、最低、最悪と言って良いかもしれません。その尻馬に乗って、森友問題などでとにかく倒閣に結びつけようとする野党も大問題です。

安倍総理は、ブログ冒頭の記事のように、これからも様々な外交活動をしますが、それ以前にかなりの外交努力を継続してきています。そのため、トランプ大統領にも外交では頼られる存在になることができたのです。

安倍総理の経済制裁の強化は、正しい路線です。この制裁に日米が本気でとりくんだからこそ、金正恩は焦りに焦り、それまでとはうってかわって、平昌五輪での融和路線を打ち出し、中朝首脳会談をも実現させたのです。

経済制裁はときに大きな効果をもたらすことがあります。これに関しては、実例があります。80年代後半、各国が次々に制裁に踏み切ると、国際的に孤立した南アの白人政権は、黒人との融和をめざさざるをえなくなりました。

国連が一連の経済制裁を解除したのが93年、南アでの初の黒人政権が誕生したのは、94年のことでした。経済制裁があの南アの白人を動かしたのです。

ダーバンビーチ条例第37節に基づき、この海水浴場は白人種集団に属する者専用とされる」と
英語アフリカーンス語ズールー語で併記された1989年撮影の標識 アパルトヘイトの象徴

日米の本気の経済制裁がなければ、そもそも、韓国と北朝鮮との南北会談も実現せず、相変わらず北は、ミサイル発射実験を継続していたかもしれません。

国民も安倍外交の成果や、半島危機の実態を正しく理解することが必要です。これから、半島危機で日本がうまく立ち回れないとすれば、残念ながら最大の要因はマスコミや野党が倒閣のために安倍政権の足を引っ張ることでしょう。

そもそも、安倍政権がここ数年以内で、崩壊することにでもなれば、日本経済は再びデフレスパイラルのどん底に落ち込み、さらに外交面では世界から置き去りにされることでしょう。これがどれだけ、日本経済や外交・安全保障に悪影響を与えるかは明らかです。さらに、安倍晋三というパートナーを失った米国は外交経験の浅いトランプ氏では中国との対決に苦しむことになります。

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2017年11月19日日曜日

【北朝鮮危機】朝鮮半島の最悪シナリオに備えよ 「中国が実質的に支配」なら日本は脅威を直接受けることに―【私の論評】中国が北実効支配なら習近平は寝首をかかれる(゚д゚)!

【北朝鮮危機】朝鮮半島の最悪シナリオに備えよ 「中国が実質的に支配」なら日本は脅威を直接受けることに

米中の「二大大国の覇権争い」で朝鮮半島の危機を考えたとき、日本はどう動くべきか
 朝鮮半島の危機は、単なる日米韓と北朝鮮の枠組みでとらえるのではなく、米国と中国という「二大大国の覇権争い」という構図の中で考えるべきである。例えば、北朝鮮に対する米国の先制攻撃のみならず、中国の先制攻撃の可能性も考える必要がある。

 なぜならば、自国との国境付近で核実験を繰り返し、習近平国家主席の顔に泥を塗る行為を繰り返す北朝鮮に対し、中国は激怒しているはずだ。そして、米軍の攻撃が成功し、その影響力が朝鮮半島全域に及ぶことを、中国は避けたいと思うからだ。

 中国の人民解放軍が北から北朝鮮を攻撃し、南から米韓連合軍が攻撃する案は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を排除する目的のためであれば、米中双方にとって悪い案ではない。今後、朝鮮半島を舞台とした米中の駆け引きが注目される。

 ここで、朝鮮半島をめぐる将来シナリオを列挙してみる。

 (1)現在と変化なく、韓国と北朝鮮が併存する。

 (2)朝鮮半島に統一国家が誕生する。このシナリオには2つのケースがあり、北朝鮮が主導する統一国家が誕生するケースと、韓国が主導する統一国家が誕生するケースだ。両ケースとも、米軍は朝鮮半島から撤退せざるを得ないであろう。

 (3)中国が実質的に朝鮮半島の一部または全域を支配する。このシナリオには2つのケースがある。中国が北朝鮮のみを実質的に支配するケースと、朝鮮半島全域を実質的に支配するケースだ。このシナリオでは人民解放軍がその支配地域に駐留することになる。米軍が韓国に残る場合は「北朝鮮のみを中国が実質的に支配するケース」であり、米軍と人民解放軍が38度線で直接対峙(たいじ)することになる。

(4)米国が朝鮮半島を実質的に支配するシナリオも考えられるが、民主主義国家である米国が採用する案ではないので削除する。

 以上の各シナリオに対し、日本の安全保障はいかにあるべきかを分析すべきだ。最悪のシナリオは「朝鮮半島全域を中国が実質的に支配し、中国の人民解放軍がその支配地域に駐留する」シナリオだ。

 この場合、日本は中国の脅威を直接受けることになり、この脅威に対処するためには、現在の防衛態勢を抜本的に改善する必要がある。

 いずれにしろ、北朝鮮の「核・ミサイル」の脅威は目の前にある現実の脅威であり、これに確実に対処する一方で、朝鮮半島の将来を見据えたシナリオに基づく日本の国家安全保障戦略を構築し、それに基づき防衛態勢を整備することが急務である。

 ■渡部悦和(わたなべ・よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書に『米中戦争そのとき日本は』(講談社現代新書)など。

【私の論評】中国が北実効支配なら習近平は寝首をかかれる(゚д゚)!

中国が北朝鮮を攻撃し、中国が実質的に朝鮮半島の一部または全域を支配する可能性については、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国、正恩氏排除を決断か 人民解放軍が対北参戦の可能性も…軍事ジャーナリスト「黙ってみているはずがない」―【私の論評】中国の北朝鮮への侵攻は新たな火種を生むことに(゚д゚)!
失脚した元人民解放軍トップ郭伯雄氏
この記事を理解するためには、まずは以下のような事実を知っていなければなりません。
人民解放軍は「国家の軍隊」ではなく、共産党の私兵です。そもそも、中国には普通の国でいう、軍隊は存在しないのです。
中国人民解放軍女性兵士?彼女らは、総合商社の一員でもある\(◎o◎)/!
人民解放軍は日本でいえば、商社のような存在であり、実際中国国内外で様々なビジネスを展開しているという事実です。そのような存在でありながら、武装もしており、いわば武装商社のような存在です。そうして中には核武装もしているという異常な組織です。
人民解放軍にはさらなる弱点もあります。中国政府が1970年代から進めた一人っ子政策で誕生した「一人っ子軍人」です。兄弟姉妹のいない環境で過保護に育てられた別名「小皇帝」が軍内部で増加。有事でまともに戦えそうにない“本性”を、災害派遣などの場面でさらしているといわれています。巨大な軍は、実は内部崩壊を招きかねない深刻な事態に直面しているのです。 
さて、このような事実を前提に、この記事にはもし人民解放軍が北朝鮮に侵攻すれば、さらなる火種を生み出すことになることを掲載しました。その部分を以下に引用します。
このような軍とは呼べないような武装組織である、人民解放軍がまともに戦えるとは思えませんが、まかり間違って北朝鮮に攻め込み、北朝鮮に進駐することにでもなれば、それこそ目もあてられない状況になります。北朝鮮は人民解放軍の不正の温床になるだけです。それどころか、金目のものといえば、武器、核兵器、核関連施設だけの北朝鮮と言っても良いくらいなので、これらを海外に売却するということもやりかねません。

かえって、治安を悪化させ、次の戦争の火種を生み出すことになりかねません。米国であろうが、中国であろうが、特に地上戦で北朝鮮を打ち負かした後に、少なくと50年くらい軍隊を進駐させて、民主的な政権を樹立して、自分たちで国を収めることができるように監視を続ける覚悟がなければなりません。

中国の人民解放軍にはそのような覚悟は最初からありませんし、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家化もされていない中国の人民解放軍にはそれはできません。それこそ、腐敗の温床になるだけです。
これをご覧いただければ、北朝鮮に中国が侵攻して、朝鮮半島の一部(現在の北朝鮮に相当する部分)、あるいは朝鮮半島一部に進駐することになれば、とんでもないことになることは明らかです。

一人っ子が多い、武装商社である中国の人民解放軍は、韓国まで攻め込んで一挙に半島を統一して統治するようなことは、ほとんど無理だと思います。しかし、北朝鮮侵攻ということはあり得ない話ではないので、仮に中国が北朝鮮に進駐したとなると、現在の北朝鮮は紛争の絶えない地域になることが考えられます。

まずは、中国が侵攻したことで、北朝鮮の経済も中国のようにある程度は良くなるかもしれません。特に、中国が得意のインフラ整備を行えば、それなりに経済成長するかもしれません。

しかし、中国は他の先進国のように、これをさらになる地域の発展に結びつけるようなことはできず、中国国内のように富裕層だけが潤い、その他大勢の一般の人民は、旧北朝鮮のときと同じ程度の生活水準から抜け出ることはできないでしょう。

これが不満をよび、さらに外国に支配されているということでこれがさらに朝鮮族の不満を呼ぶでしょう。そうして、これから北朝鮮内で紛争が絶えない地域になってしまう事が考えられます。

そうして、この地域に投入される人民解放軍は、大部分は瀋陽に本拠をおく軍制改革後も、《北部戦区》と名前を変えたに過ぎず、今もって「瀋陽軍区」のままの戦区からの人民解放軍ということになると考えられます。この瀋陽軍区にも着目すべきです。



この瀋陽軍区は特に中国人民解放軍の中でも、最精強を誇り、機動力にも優れています。

朝鮮戦争(1950~53年休戦)の戦端が再び開かれる事態への備え+過去に戈を交えた旧ソ連(現ロシア)とも国境を接する領域を担任する旧瀋陽軍区には、軍事費が優遇され、最新兵器が集積されています。

大東亜戦争(1941~45年)以前に大日本帝國陸軍がこの地に関東軍を配置したのも、軍事的要衝だったからです。

習国家主席は、北京より平壌と親しいとされる「瀋陽軍区」によるクーデターを極度に恐れているといわれています。「瀋陽軍区」高官の一族らは、鴨緑江をはさみ隣接する北朝鮮に埋蔵されるレアメタルの採掘権を相当数保有しています。

これは、「瀋陽軍区」が密輸支援する武器+エネルギー+食糧+生活必需品や脱北者摘発の見返りです。北朝鮮の軍事パレードで登場するミサイルや戦車の一部も「瀋陽軍区」が貸している、と分析する関係者の話もあります。

もっと恐ろしい「持ちつ持たれつ」関係は核・ミサイル製造です。中国人民解放軍の核管理は《旧・成都軍区=現・西部戦区》が担い「瀋陽軍区」ではありません。「瀋陽軍区」は核武装して、北京に対し権限強化を謀りたいのですが、北京が警戒し許さないのです。

ならば、核実験の原料や核製造技術を北朝鮮に流し、または北の各種技術者を「瀋陽軍区」内で教育・訓練し、「自前」の核戦力完成を目指すということも考えられます。

実際、2016年、中国の公安当局は、瀋陽軍区→北部戦区の管轄・遼寧省を拠点にする女性実業家を逮捕しました。高濃度ウランを生み出す遠心分離機用の金属・酸化アルミニウムなど核開発関連物資や、戦車用バッテリーなど大量の通常兵器の関連部品を北朝鮮に密かに売りつけていたのです。戦略物資の(密輸)重油も押収されました。

しかも、北の核戦力は日米ばかりか北京にも照準を合わせている可能性があります。

その理由は以下のようなものです。
(1)北京が北朝鮮崩壊を誘発させるレベルの対北完全経済制裁に踏み切れば、最精強の「瀋陽軍区」はクーデターを考える。
(2)他戦区の通常戦力では鎮圧できず、北京は旧成都軍区の核戦力で威嚇し恭順させる他ない。
(3)「瀋陽軍区」としては、北朝鮮との連携で核戦力さえ握れば、旧成都軍区の核戦力を封じ、「瀋陽軍区」の権限強化(=対北完全経済制裁の中止)ORクーデターの、二者択一を北京に迫れる。
習国家主席が進める軍の大改編は、現代戦への適合も視野に入れていますが、「瀋陽軍区」を解体しなければ北朝鮮に直接影響力を行使できぬだけでなく、「瀋陽軍区」に寝首をかかれるためでもあります。

「瀋陽軍区」が北朝鮮と北京を半ば無視してよしみを通じる背景にはその出自も関係しています。中国は朝鮮戦争勃発を受けて“義勇軍”を送ったのですが、実はそれは人民解放軍所属の第四野戦軍でした。

朝鮮戦争時に韓国内を侵攻した中国軍
当時、人民解放軍で最強だった第四野戦軍こそ瀋陽軍区の前身で、朝鮮族らが中心となって編成された「外人部隊」だったのです。瀋陽軍区の管轄域には延辺朝鮮族自治州も含まれ、軍区全体では180万人もの朝鮮族が居住します。

いわば、「瀋陽軍区」と北朝鮮の朝鮮人民軍は「血の盟友」として今に至っています。金正日総書記(1941~2011年)も2009年以降、11回も瀋陽軍区を訪れています。

北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するには、北と一蓮托生の「瀋陽軍区」を筆頭とする反習近平派人民解放軍を習近平派人民解放軍が掃討しなければ、決着がつかないことでしょう。

2012年氷点下40度の気温のもとで、演習を実施する瀋陽軍区の高射砲部隊
中国は、国内の内戦の危険を抱えているのです。この内戦で逃げ回るのは、「瀋陽軍区」の猛攻を前に恐れをなす習近平派人民解放軍の役どころかもしれないです。

瀋陽軍区の人民解放軍が北朝鮮に侵攻すれば、金ファミリーは実権を失い以前にもこのブログに掲載したように、ロシアが亡命の手助けをするかもしれません。しかし、朝鮮人民解放軍の組織はそのまま残り、瀋陽軍区と北朝鮮軍により、いずれ中国に反旗を翻すことになりそうです。そうして何よりも、瀋陽軍区は北の核兵器を手に入れるのです。

これを考えると、習近平が自らの私兵である人民解放軍を、北朝鮮に送り込むのはかなり難しいです。もし送りこめめたにしても、瀋陽軍区と北朝鮮軍とに挟まれることになり、中国本土からの供給の道が絶たれ、兵糧攻めで崩壊するかもしれません。

かといつて、瀋陽軍区の人民解放軍を送り込めば、北朝鮮の人民解放軍と結託して、それこそクーデターをおこし、逆に北京に攻め込むということも考えられます。

以上のことから、習近平が北朝鮮に人民解放軍を送り込むことは考えにくいし、送るとすれば、それこそ習近平が命脈がつきかけているというサインかもしれません。

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2017年10月11日水曜日

【ニュースの核心】脅威は北だけではない 小池氏は衆院選操る「暗黒政治家」 適当な人物を首相指名し自分は黒幕に―【私の論評】危機に対応する真のリーダーの姿勢とは?

【ニュースの核心】脅威は北だけではない 小池氏は衆院選操る「暗黒政治家」 適当な人物を首相指名し自分は黒幕に

金正恩
 いま日本は「戦後最大の危機」を迎えている。朝鮮半島情勢が一触即発の状態にあるからだ。そんななか、日本の将来を決める衆院選が10日公示された。私たちは何をどう判断すべきなのか。

 まず、「何を」についてだ。それは消費税の使い道とかアベノミクスではない。何より「日本の平和と安全」である。

 問題を難しく考える必要はない。国の平和と安全が守られなければ成長も繁栄もないからだ。

 日本はいま中国と北朝鮮に脅かされている。北朝鮮は言うに及ばず、中国も沖縄県・尖閣諸島周辺に公船や軍艦を派遣して、隙あらば島を奪取しようともくろんでいる。この現状認識が出発点になる。

 この危機認識を共有できず、「中国も日本と平和共存を望んでいる」などと考える能天気な人々は論外である。これだけで、怪しさを見破れる政治家や政党もあるはずだ。

 では、日本はどう中国や北朝鮮の脅威に対処するのか。

 残念ながら、単独では対抗できない。毎年の中国の軍事費は日本の4倍近くに上り、ベースになる経済力は2倍以上に達している。

 仮に、軍事衝突が起きたとしても、日本は攻撃能力を保有していない。だから攻撃力を持つ米国との同盟を基軸に対抗するしかないのが現状なのだ。ところが、野党は何を言ってきたか。

 ここから「どう判断するか」の問題になる。野党は日米同盟を強化する安全保障関連法に反対し、自衛隊明文化という最小限の憲法改正にも反対してきた。

 本当を言えば、立憲民主党を結成した枝野幸男代表や、民進党を壊した前原誠司代表は月刊誌への寄稿や自分のブログで、実は改憲に賛成していた。

 希望の党に駆け込んだ民進党出身の前議員たちに至っては、「安保関連法反対、改憲反対」を絶叫していたのに、議員バッジ欲しさに一夜にして寝返って支持者を裏切った。

 こうした野党議員は「確固たる信念を持った政治家かどうか」という基準に照らせば、容易に判断できる。

写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 希望の党の小池百合子代表(都知事)は立候補を否定した。選挙後の首相指名で「誰に投票するか」については明言を避け、「選挙後に決める」と言っている。

 これが何を意味するか。

 もしも希望の党が過半数をとったら、誰を首相にするか「一切、私に任せてくれ」と言っている。つまり小池氏は適当な人を首相に仕立て上げ、自分は「舞台裏の黒幕」として国を仕切るつもりなのだ。

 国会議員でないから、国会で説明責任も求められない。彼女が言う「情報公開」とか「透明性強化」など、とんだお笑い草である。

 こんな人物が代表を務める希望の党が権力を握ったら、日本はとんでもない「ブラックボックス政治」「暗黒政治」になってしまうに違いない。

 日本を脅かしているのは、北朝鮮の「核・ミサイル」だけではない。ポピュリストの仮面をかぶった「暗黒政治家」にも脅かされているのだ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。東京新聞論説委員。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。

長谷川博之氏

【私の論評】危機に対応する真のリーダーの姿勢とは?

ブログ冒頭の長谷川幸洋氏の記事のように、いま日本は「戦後最大の危機」を迎えています。このような危機にある日本は、今真の意味でのリーダーが必要不可欠です。

優れたリーダーについて、経営学の大家ドラッカー氏は以下のように述べています。
優れたリーダーは、“私”とは言わない。意識して言わないのではない。“私”を考えないのである。いつも、“われわれ”を考える。チームを考える。彼らは、自分の仕事がチームを機能させることだということを知っている。責任を引き受け、逃げることをしない。成果は“われわれ”のものとする。考えることは、なされるべきことと、チームのことだけである。そこから信頼が生まれ、なされるべきことがなされる。(ドラッカー名著集(4)『非営利組織の経営』)
これを今の日本即して言い換えると、以下のようになると思います。

優れたリーダーは、"私"とはいわないのです。意識して言わないのではありません。"私"を考えないのです。いつも"日本"を考えるのです。政府のことを考えるのです。優れたリーダーは、自分の仕事が政府を機能させることだということを知っているのです。責任を引受け、逃げることをしない。成果は"日本国"のものとするのです。考えることは、なされるべきことと、日本のことだけです。そこから信頼が生まれ、なされるべきことがなされるのです。

ドラッカーは、リーダー用の資質などというものはないと言います。リーダーにはいろいろなタイプがあります。しかし、リーダーたるために必要とされる姿勢は、いくつかあります。

 第1が、人に聞くことである。聞くことは、スキルではなく姿勢です。

 第2が、自らの考えを理解してもらう意欲です。そのためには何度も言い、身をもって示すことです。

 第3が、言い訳やごまかしをしないことです。何事にも本気であることです。

 第4が、仕事の重要性に比べれば、自分など取るに足りない存在であるとの認識です。仕事と自らを一体化しないことです。仕事とは、リーダーよりも重要であって、リーダーとは別個の存在です。

リーダーの姿勢として、現在の日本で一番重要なのは、特に第4の姿勢だと思います。北朝鮮に対応することの重要性に比べれば、自分など取るに足りない存在であるとの認識です。仕事と自らを一体化しないことです。北朝鮮への対応は、リーダーよりも重要であって、リーダーとは別個の存在です。

ドラッカーは、真のリーダーについて、こう言っています。「私の知っているほとんどのリーダーが、生まれつきのリーダーでも、育てられたリーダーでもなかった。自らをリーダーとして作り上げた人たちだった」。

ソ連封じ込めに尽力したハリー・トルーマン
トルーマン大統領は、ルーズベルト大統領の突然の死によって大統領になったとき、今米国のリーダーとしてなすべき最も重要な仕事は何かを考え、急きょ、不得意だった国際問題に取り組み、旧ソ連の封じ込めに成功しました。

マッカーサー元帥は、自分よりも頭のよい者はいないはずと自負しながらも、部下の言に耳を傾けて最強のチームをつくり上げました。気性には合わなかったのですが、それがリーダーの役割だということを知っていました。
リーダーたるものは、献身しつつも個たりえなければならない。そのとき仕事もうまくいく。自らを仕事の外に置かなければならない。(『非営利組織の経営』)
北朝鮮の危機の前に、安倍総理に衆院を解散し、衆院選に突入したことによって多くのことが明るみにでました。

現状の衆院選の様子をみると、多くの政治家がとにかく北朝鮮の脅威などは二の次にして、選挙において何とか生き残るとか、選挙において少しでも有利に戦い、自らの権力を拡大することにばかりに汲々としているようにしかみえません。

特に「安倍一強を倒す」という野党のリーダーたちのスローガンはお粗末です。確かに日本人は強力なリーダーシップを嫌う傾向にあるので、なんとなく強い人物を倒すというと、情緒的には訴えるものがあるのかもしれません。

しかし、一強のどこが悪いのでしょうか。どのような組織でも、先見性のあるリーダーが強力な力を持つことがプラスに作用することのほうが多いです。安倍政権を倒した後に、どうするのかも言わずに、政治家が務まれば、本当に気楽なものです。

これでは、とてもリーダーにふさわしいとはいえません。小池東京知事に至っては、自らが女性初の総理大臣になることを目指しているためか、北朝鮮の危機などおかまいなしに、自らの権謀術数をはりめぐらして、少しでも有利に動こうとしているようにしかみえません。やり方が、姑息で意地汚いです。

とても、北朝鮮に対応することの重要性に比べれば、自分など取るに足りない存在であるとの認識があるようにはみえません。

安倍総理としては、様々な情報源から、北朝鮮の脅威は年内には顕在化せず、来年あたりに顕在化するものとみて、その時に選挙をするよりは、今のうちにやっておいたほうが、対応しやすいということで、今回解散選挙に踏み切ったのでしょう。

だから、今回の選挙で本来もっとも問われなければならないのは安全保障政策であるのは、あまりにもはっきりしすぎています。他の問題は、無視しても良いくらいです。特に「森友問題・加計問題」などは本当にどうでも良い問題であり、今となってはそもそも何が問題なのかもわかりません。

森友に関しては、すでに篭池氏が逮捕されており、国会など関与しなくても、司法がこれを明らかにしつつあります。

加計問題も、そもそも公開されている戦略特区ワーキング・グルーブの議事録を読んだり、加戸氏の証言により、獣医学部設立にどう考えても安倍総理がかかわっている明白な証拠などあり得ないことも明らかになっています。にもかかわらず、小池知事も他の野党の代表などもこれを追求し続けるといいます。

そもそも、これで安倍総理や政権を追求したとしても、無意味であり、これをやり続けることは時間の無駄です。こうした無駄時間を費やしたことが、民進党崩壊の大きな要因の一つになっていることは明らかです。

平成27年に成立した安保関連法に対する各党の姿勢はさまざまで、仮にリベラル派勢力が議席を伸ばすようなことになれば、自衛隊の活動が制限され、北朝鮮のミサイルを日米が連携して迎撃する態勢が揺るぎかねないです。

憲法改正で自衛隊を明記するかどうかも含め、各党は国民の生命をどう守るのか、具体的な政策を訴えるべきです。それが、現状のそれぞれの党のリーダー役割です。それを国民もしっかりと見極め、投票すべきです。

そうして、今本当に必要なリーダーを定めるべきです。選挙が終わったら、野党のリーダーは、こと北朝鮮対応に関しては、党派を超えて政府に協力する旨を申し出るべきです。そのようなことをするリーダーこそ、仕事の重要性に比べれば、自分など取るに足りない存在であるとの認識する真のリーダーです。

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2017年4月29日土曜日

焦点:初飛行迎える中国初の大型旅客機、欧米2強脅かすか―【私の論評】いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わり高速鉄道と同じ運命をたどる(゚д゚)!


中国産狭胴型ジェット旅客機「C919」
中国が同国初となる国産大型ジェット旅客機の受注を2010年の国内航空ショーで発表した時、同国航空事業の転換点となるこのイベントには地元メディアのみが招かれ、欧米の記者は取材を許されなかった。

関係者によると、国産狭胴型ジェット旅客機「C919」は5月5日にも初飛行に臨む見通しだが、今回は外国メディアやバイヤーが大挙して招かれる。今後20年で2兆ドル(約219兆円)が見込まれる世界のジェット旅客機市場での競争に向け、中国政府がいかに体制を整えているかを示している。

だが、開発着手からほぼ10年、3年の遅延を経て、ボーイング737型機の競合機となるC919とその開発担当は、米ボーイング(BA.N)と欧州のエアバス(AIR.PA)が牛耳る世界のジェット機市場にいかに売り込みをかけるか、という正念場を迎える。

中国側は価格競争を仕掛けるだろうが、相手の建造スピードはより早く、経験も豊富だ。競争で搾り取られるリスクがある」と、ティール・グループ(米バージニア州)の航空アナリスト、リチャード・アボラフィア氏は指摘する。

C919の開発を担う国有中国商用飛行機(COMAC)にはいくつか切り札があるという。西側製のエンジンと航空電子工学機器を搭載し、新デザインを起用。パイロット訓練プログラムを始動しており、外国人スタッフを増員。水面下では、中国政府からの強力な支援も受けている、と航空業界幹部は説明する。

まだ確証はないものの、COMACは、自国の巨大な航空機市場と長期的には海外市場の双方において、今後数十年でボーイングとエアバスの独占を脅かす唯一最大の脅威となり得る。C919は、その最初の一歩となる。

中国政府がこの単通路機を後押しすることで、COMCは、世界最速で成長する国内市場において飛躍することができる。とはいえ同社は、世界市場でのハードルの高さは認識している。

「われわれをボーイングやエアバスと比較することはできない。戦略的ステージが違う。(航空機開発という)最初の戦略的課題を解決するのに半世紀かかった。市場攻略という第2の課題を解決するためには、また何年もかかるだろう」と同社広報担当のジェフ・チェン氏は語る。「初飛行の後は、C919とCOMACの市場競争力を高めることに集中しなければならない」

エアバス中国法人のエリック・チェン社長は、COMACの参入を歓迎。また、ボーイングの中国広報担当者は、C919の開発を祝福した。

<国際的サポート網>
C919は、主に中国政府系の航空会社やリース会社など23社から計570機を受注したが、その内訳を明らかにしていない。それに比べ、ボーイング737最新型機は、昨年1月の初飛行までに3000機以上の受注があった。

ボーイングとエアバスという2大メーカーが大規模受注を実現できるのは、数十年に及ぶコスト削減と市場への売り込みの実績があるからだ。両社は、航空機が故障した場合にいつどこでも対応できる世界規模のサポートネットワークを持つ。運航中の機体が多いため、航空会社も、購入のための融資を取り付けやすい。

中国資本が世界の航空機市場に攻勢をかける一方、COMACは国際航空ショーで比較的目立たない姿勢を取り、C919は国内向けと説明してきた。だが、同社がより積極的な戦略を取り始める兆しも見える。

2007年に初飛行を行ったCOMCの地域路線用小型ジェット機ARJ21のマニュアルは中国語で書かれたが、C919のマニュアルは、売上を伸ばすため英語で書かれている。

広報担当によると、COMACの営業やサポート部門には50人以上が在籍しているが、エアバスやボーイングと比較するとほんの一部に過ぎない。

とはいえCOMACの本拠地での優位は重要だ。中国の航空各社は今後20年で航空機7000機近くを主にボーイングやエアバスから購入する見通しで、世界の航空機需要のけん引役となる見込みだ。

「営業担当は中国政府だ」とある中国系航空会社の幹部は指摘する。「政府が国営航空会社に(COMAC機を)購入するよう指示すれば、その通りになる」

航空業界幹部は、COMACが実際に手付金や契約締結の商談に入れるようになるタイミングは、初飛行だと指摘する。初飛行後も、納入までに何年もの試験が必要になる。

「まだ手付金は支払っていない。(購入)意志を示した段階だ」と、 厦門(アモイ)航空のチャ・シャンルン会長は言う。同社は中国南方航空(600029.SS)(1055.HK)の子会社で、158席のC919を最大50機購入するとしている。 

「50機購入を表明したが、実際に欲しいのは30機だ。実際に生産できるか確認しなければならない。COMAC側は非常に熱心で、毎月のように開発状況を説明してくれる」

<安全性は>

中国の航空会社2社の幹部は、C919を発注する前に、安全記録を確認し、世界規模のサポートチームを構築してほしいと語る。

航空当局から機体の安全認証を得ることが、C919が国際市場に参入するための最大の課題の1つとなりそうだ。国営メディアによると、C919の価格は一機5000万ドル(約55億円)で、ボーイング737やエアバスA320の半値以下となる。

旅客機として飛ぶのに必要な安全認証を取得するのは、西側の航空機メーカーにとっても容易ではない。航空機の構造がより複雑になり、サプライチェーンも拡大しているからだ。C919が中国国外で飛ぶために必要な許可を取得できるかは、まだ不確実な部分がある。米国と欧州連合(EU)が、この分野で最大の影響力を持っている。

EUは、中国当局が行う審査の一部をそのまま認証することで同意したものの、安全認証の発行に向け、EU基準の審査にこだわる部分もあるとみられている。EUは現在、中国の認証基準との違いを検証している。

「まだ手続きは始まったばかりだ」と欧州航空安全局のエグゼクティブディレクター、パトリック・キー氏は語る。米連邦航空局は、コメントの求めに応じなかった。

欧米当局の認証が得られなければ、中国の認証基準を承認している国にしかC919を売れなくなる。ジンバブエとボリビア、タジキスタンは、過去に中国機を購入した実績がある。

欧米当局の認証がなければ、「先進国や、多くの新興国への売り込みは困難または不可能になる」と航空・防衛関連出版アビエーション・ウィークのブラッドレー・ペレット氏は話す。

これまでのところ、C919を購入する国外勢は、実質的にリース会社のGEキャピタル・アビエーション・サービスだけだ。親会社の米ゼネラル・エレクトリック (GE.N)は、仏航空宇宙大手サフラン (SAF.PA)とともに、同機のエンジンを開発した。

「われわれの飛行機が市場に参入し、実際に使われてみて初めて、何が足りないかが分かるだろう」と、COMACのチェン氏は言った。

【私の論評】いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わり高速鉄道と同じ運命をたどる(゚д゚)!

C919は158座席、航続距離4075キロでボーイングB737やエアバスA320と競合する長さです。

中国には今までもMA60というプロペラの国産旅客機がありましたが、「世界で最も危険な旅客機」として有名でした。それについては、以下の記事をご覧になって下さい。
中国製小型航空機で事故多発 中国人「国産怖くて乗れない」
MA60
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部分だけ引用します。
 中国の航空機メーカー、西安飛機工業が製造した旅客機「新舟60」が25日、降着装置の異常が表示されたために着陸できなくなった。同機は目的地の瀋陽桃仙空港の上空で旋回を繰り返し、低空飛行をして地上から降着装置が出ていることが確認されたとして、午後8時17分に着陸した。新舟60は4日にも、降着装置の問題で事故を起こしていた。西安飛機工業は航空当局に新船60の一時飛行停止を申請した。中国新聞社などが報じた。 
C919はすでに21社から計517機を受注したのですが、全て中国の航空会社と、開発に関わったりした企業からの発注です。

最大航続距離は5555キロでボーイング737に匹敵し、北京や上海からアジア主要都市へ、無着陸で飛行できます。

このクラスの中型機はB737とA320の2機が独占しており、他社が参入する隙が無いようにも見えます。

B737は1967年に初飛行以来、モデルチェンジを重ね3世代で8300機以上を販売したベストセラーです。

最近まで危険な旅客機しか作れなかった中国が、短期間に欧米に匹敵する数値を実現できたのは、驚くべき進歩だと言えます。

しかし、この国産旅客機を開発したのは中国自身ではなく、実質的にはGEなどの欧米メーカーなのでした。以下にC919がどのような部品を用いているのか示すチャートを掲載します。


ほとんどが米国製です。これで、本当に中国国産といえるのでしょうか。このような疑問については中国メディアですら報道しています。以下にそのニュースのリンクを掲載します。
中国の旅客機「C919」 誇るべき国産品か、ただの組立品か=中国メディア
 中国商用飛機(COMAC)が開発を行ってきた旅客機「C919」が2日に上海市内でラインオフしたことについて、中国メディアの騰訊は3日、C919は「誇るべき国産品か、それとも低レベルな組立品に過ぎないのか」の見出しで記事を掲載した。
ただし、このようなことは、中国だけのことではありません。たとえば、トランプ米大統領は2月17日、米南部サウスカロライナ州ノースチャールストンにあるボーイングの旅客機工場を視察し、日本でも就航する中型旅客機ボーイング787ドリームライナーを前に「米国人労働者が、米国の工場で、米国製の製品を造ることを望んでいる」と訴え、787旅客機を「夢を実現した」旅客機と絶賛しました。

しかし、787は、日本のほか英仏伊などが参加した国際共同開発機です。海外製部品の割合は7割近くに達する。中でも日本は35%を担当。三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の3社が主翼、胴体パネルなどを担当します。

またこの日、トランプ氏が「カーボンファイバーを使っているんだ!」と褒めたように、世界で初めて炭素繊維複合体(日本の東レが製造)を機体の多くに使用し軽量化を実現しました。
トランプ氏は「米国製品を購入せよ! 米国人を雇用せよ!」がキャッチフレーズ。今回、その主張に最適の地を選んだはずでしたが、図らずも日本製など海外製品の優秀性を強調することになってしまいました。

サウスカロライナ州ノースチャールストンにあるボーイングの旅客機工場を視察したトランプ大統領
ただし、これは元々国際共同開発であり、しかも米国が主導して各国をコーディネートして作り上げたものです。そうして、日本のカーボンファイバーなどごく一部を除き、米国でも製造することができるものです。しかし、各国にはそれぞれ得意分野があり、国際共同開発をすることにより、迅速で低コストで実現したものです。

しかし、中国に関して、元々技術水準が低いですから、C919の開発は、このようなこのような国際共同開発に近いようなものではなく、単に中国の技術水準の低さをカバーするためのものであると考えられます。

それを裏付けるものとして、米国製の部品の比重がかなり高いです。
中国は今後20年で約6000機の旅客機を就航させる計画で、一部を国産機で充当する考えを持っています。

6000機の多くは小型から中型機で、C919が1割を占めるとして600機、2割なら1200機は確実に売れます。

エアバスは既に中国に工場を建設し、200機以上のA320を生産しています。ボーイングB737の工場を中国に建設し、300機を生産する計画を発表しています。

エアバスとボーイングに突きつけられた条件が「技術の開示」や「技術移転」「技術協力」なのは確実でした。

自動車でもスマホでもパソコンでも、中国で販売する商品は何でも製造技術を中国に開示しなければなりません。

C919は当初2015年には初飛行している予定でしたが、遅れた原因はアメリカ製の主用部品が届かない事だったと考えらます。

エンジン、航空電子システムといった中枢システムは、GEと中国航空工業集団公司 (AVIC)の合弁会社である昂際航電から納入されました。

787や777-Xに匹敵するシステムだと説明していますが、実際の所はどうだか分かりません。

ところで、中国国内では、C919を哨戒機や電子戦偵察機に改造するとこんな形になるというような画像がネット上で出回っていました。


このようなことは実際あり得ることだと思います。しかし、米側は当然のことながら、部品の中や、他の電子部品やそれを運用するソフト部分に、中国側には知らさない何らかの秘密を持ったままで、中国に提供しているものと思います。

中国としては最初のうちは欧米に儲けさせておき、技術を盗んだら完全国産化して輸出攻勢を掛けるつもりでしょう。しかし、この秘密を解読するのは至難の技のようです。

中国は1970年代から、国産ジェット旅客機の自主開発に取り組んでいました。1992年、国営の上海飛機製造有限公司(上飛公司)と当時の米大手航空機製造会社マクドネル・ダグラス社が40機のMD-90の共同生産の契約を結んだのですが、結局その一基あたりの製造コストは米直輸入のMD-90より1000万ドルも高く、巨額な赤字を出しました。

共同開発ですらこの有様なのですから、中国が部品を安直にコピーしようとしても、そううまくいくとは思えません。

このような観点から、この飛行機が目論みどおりの成果を挙げるか、いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わるのかは注目です。

そうして、いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わる確率が高いように思います。なぜなら、中国は高速鉄道輸出でも結局大失敗しているからです。それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【ビジネス解読】中国製車両が海外で初の大規模リコール シンガポール都市鉄道が故障だらけ 鉄道受注合戦さらに暗雲―【私の論評】中国高速鉄道には元々安全性に問題!導入すれば大惨事を招くだけ(゚д゚)!

 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国の高速鉄道は壮絶な売り込みをして、一見勝利をおさめたように見えた時期もあったのですが、結局失敗しそうです。

中国の高速鉄道の技術は日本の新幹線の古い技術のコピーですが、結局コピーではなかなかうまくいかずどうしても、自主開発の部分がでてくるのですが、その部分はなかなか難しいのでしょう。

以上のようなことから、中国初の大型旅客機は失敗し、欧米2強を脅かすような存在にはならないでしょう。いつもの「チャイナ・クオリティ」で終わり高速鉄道と同じ運命をたどりそうです。

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