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2018年6月26日火曜日

早くも中国征伐へ舵を切った米国 日本には中国、北朝鮮、反日化する韓国と対峙する覚悟が必要に―【私の論評】米国が北朝鮮に軍事攻撃をする可能は未だ捨てきれない(゚д゚)!

早くも中国征伐へ舵を切った米国 日本には中国、北朝鮮、反日化する韓国と対峙する覚悟が必要に




1 史上初の米朝会談

 6月12日にシンガポールで開催された米朝首脳会談は、敵視する国同士のトップが直接会談するという歴史上稀なものであった。

6月12日に開催された中朝首脳会談 写真・図表はブログ管理人挿入 以下同じ

 日本や米国をはじめ大半の評価は、中国・北朝鮮が勝って高笑いする一方、ドナルド・トランプ大統領は詰めを欠いた政治ショーを演じ、曖昧な決着で終わってしまい、将来に禍根を残したというものであろう。

 筆者も4月号の雑誌「Voice(ボイス)」において、北朝鮮が核を放棄するはずはなく、直接会談でトランプ大統領はこれを見極め、いずれちゃぶ台返しをするだろうと予想した。

 しかしトランプ大統領が苦しい記者会見をやっている姿とスカスカの合意文書を見せられた。

 一方、金正恩が北朝鮮に到着するや否や、「段階的に見返りを受けながら朝鮮半島の核を廃絶していく」ことを共通認識とし「体制の安全の保障を得た」と言うに至って、トランプ大統領は完敗したと感じた。

 また、筆者は昨年6月に中国を訪問し安全保障に関する議論をしてきたが、その時中国側の要人は朝鮮半島問題については「米朝が直接話し合い、北朝鮮は核とミサイル発射を凍結し、米国は米韓合同演習を凍結する、ダブルフリーズが必要」と述べていた。

 まさにその通りになってしまったと感じ、中朝のクリンチ作戦で、トランプ大統領の退場を待つ策略が功を奏したと失望せざるを得なかった。

 米朝会談前に筆者は、昨年暮れに北朝鮮を米国が殲滅することは「金の斧」、次に会談を破談にし、北朝鮮を殲滅することが「銀の斧」、米国ペースで会談が進めば「銅の斧」、そして北朝鮮ペースで進めば「鉄くずの斧」であると指摘していた。

 この前提は、北朝鮮対処は「前哨戦」であり「本丸は中国」だということで、いかに早く対中国シフトができるかが評価要素であった。前述の評価からすれば、結果は最悪の「鉄くずの斧」になってしまったということだ。

 一方、もしこれらの評価が正しく、朝鮮半島が平和に向かっていると感じているなら、それは大きな間違いであろう。

 平和に向かっていると言うのは中国の見解だ。よりによって韓国はこの時期に、米韓合同軍事演習(以下、「米韓演習」)は中止しても竹島防衛訓練は実施し、また、慰安婦問題を蒸し返している。

韓国軍は18日から2日間竹島防衛訓練を実施

 文在寅大統領に代表されるように大多数が親北・左翼になってしまった韓国は、いずれ反日、反米、親中勢力として中国にのみ込まれていくだろう。

 10年先を見れば、しぼむトランプ大統領と米国を後目に、核を放棄しない北朝鮮といよいよ軍事的覇権を拡大する中国が合体して、否応なく日本は最前線に立たされることになる。

 このまま行けば、より厳しい状況が、早く出現するということだ。

 それへの備えと覚悟を訴える論調は日本にはほとんどない。核をも装備した自主防衛議論が出てきてもおかしくないのに皆無である。日本にとって安全保障とは他人事で、米国の責任だと思っているのだろう。

2 合点がいかない会談後の流れ

 さて前置きが長くなったが、このたびの米朝首脳会談の流れは実に不可解である。

 まず会談の開催をトランプ大統領がキャンセルした時の金正恩の驚きと、面子を重んじる北朝鮮が醜態をさらして会談を懇願したことは実に不可解だ。金正恩にはこの時期トランプ大統領に話さなければならない何か重大なことがあったのだろう。

 また、あの厳しい米国の訴訟社会で生き残り、不動産王と言われたトランプ大統領が、あんなスカスカの文章を容認するだろうか。記者会見を独りで実施したが、何を言われても平気で金正恩を持ち上げた。

 そして、金正恩は帰国後すぐさま勝利宣言だ。トランプ大統領にとっては、ICBM(大陸間弾道ミサイル)によって自国の安全が脅威に晒される北朝鮮問題は喫緊の課題である。

 とても米韓演習を中止するなどあり得ないし、中国を相手に貿易戦争などできるはずもない。なぜなら米国と北朝鮮は水と油ほど考え方が違うことから、いずれ米朝は決裂し軍事行動へと発展することは間違いないだろうと考えるのが普通だ。

 しかし、トランプ大統領は、米韓演習の中止を命じ、韓国に駐留する米軍も本国に戻したいと本音を漏らしてしまった。さらに、その後の主要スタッフの発言は、にわかに信じられないものがある。

 まず、韓国大使に任命された対中・対北朝鮮強硬派のハリー・ハリス前太平洋軍司令官は、米朝首脳会談で状況が劇的に変化したとして「北朝鮮が交渉に真剣かを見極めるため、米韓演習を『一時』中止すべきだ」「多くの米軍幹部が朝鮮半島より深刻な脅威となる中国への対処に資源を振り向けるべきだと考え始めている」と述べている。

 さらにジェームス・マティス国防長官は米海軍大学の講演で「中国は他国に属国になるよう求め、自国の権威主義体制を国際舞台に広げようとしている」「既存の国際秩序の変更が中国の宿願であり、他国を借金漬けにする侵略的経済活動を続け(一帯一路)南シナ海を軍事化している」「我々が中国に関与し、中国がどう選ぶかが大切」と述べている。

 また、マイク・ポンペオ国務長官は中国を訪問して、南シナ海での軍事拠点化に言及し「他国の主権を脅かし、地域の安定を損ねている」と指摘し、マティス国防長官と同じように、眼前の脅威だとしていた北朝鮮問題には一切触れていない。

 中国は北朝鮮の後ろ盾として影響力を行使することと引き換えに、貿易摩擦の緩和を狙ったが、米朝首脳会談の3日後には米国は中国への制裁関税を発表し、さらに追加制裁にも発展している。

 この裏には対中強硬派のピーター・ナバロ通商製造業政策局長の発言力の復活がある。

 これら一連の動きは、今年1月に発表された米国防戦略が指摘した「中国は地球規模で米国の主導的地位にとって代わろうとしている」「米国が最も重点を置くべきはテロではなく大国間競争だ」とし、中国を「主敵」としたその戦略の発動であり、いよいよ「本丸」への攻撃をまず経済から始めたということだ。

 しかし、そのような大転換をするには、北朝鮮が本当に安全保障上の脅威にならないという確信がなければできないであろう。

 それならば、北朝鮮に対する押さえは何か。その1つは、ハリー・ハリス氏の駐韓国大使への配置である。

 恐らくトランプ大統領は、ハリス氏を最も信頼できる右腕として、韓国、北朝鮮、中国北部戦区の目付役とし、情勢判断を委ねたのだろう。彼が危ないと判断したら、トランプ大統領はすぐさま北朝鮮壊滅の準備にかかるだろう。

 一般的に自衛隊・米軍とも人事異動は2~3年なので、1年あるいは1年半で主要な幹部の半分は変わる。そのため米韓演習の中止期間は1年が限界であろう。特に今は太平洋正面の米軍の主要指揮官が交代しているので、動く時ではない。

 トランプ大統領も、「対話が中断すればすぐに演習を開始できる」と警告している。ポンペオ国務長官は、2年半以内に完全な非核化ができると言っているが、それでは次の大統領選挙には間に合わないし、軍事行動の再起動には問題がある。

 トランプ大統領がABCテレビのインタビューに答えて、「1年後に私は間違っていたかもしれないと言うかもしれない」と発言した意味は、軍事行動を起こすかどうかの見極めは、1年以内だということであろう。

 もう1つのカギは、近々ポンペオ国務長官と死神と恐れられるジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が北朝鮮に入り、米朝間の非核化に向けた詳細な協議を行うことだ。

 「死神」を受け入れる北朝鮮には並々ならぬ決意があるのだろう。

 ポンペオ国務長官は中国の動きも念頭に「北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を要求すると述べ、北朝鮮との協議の場では核計画の全容を数週間以内に申告するよう求め、検証のため米国以外の関係国からも専門家を呼ぶとしている。

 そして非核化の中に核だけではなく、生物・化学兵器やミサイルなどを含めたと説明している。

 もし北朝鮮が公約通り、非核化に向けて目に見える形で具体的行動をとらなければ、1年以内、早ければ今年の暮れには北朝鮮に対する見切りをつけるだろう。そういう意味で、米国の軍事的選択肢はなくなってはいない。

 このように経緯をたどると、米国は北朝鮮問題は解決済みとし、すでに対中国へとシフトしたと見るしかない。なぜなのか。よほどの確信がなければそんな行動に出ることは無謀であり、ここまでの説明でもまだ不十分だろう。

 結局、米朝首脳会談では、文書化されていない重要な約束事があるのではないかという疑念が湧く。

 事実、ポンペオ国務長官は6月23日の米MSNBCテレビのインタビューの答え、金正恩は「完全な非核化をする用意がある」と発言した。

 12日の米朝共同声明に明記されなかった米朝間の取り決めに関し、詳細を明らかにしなかったものの、「合意した多数の原則があり、双方がレッドラインを認識している」とも述べている。

 そもそもトランプ大統領は従来の大統領と異なり、言ったことはやる男だ。

 もし、米国が北朝鮮の後ろ盾になってやると言い、金正恩一族の「体制の安全を保証」するから核を廃棄し、民主化でなくとも開国し、少しでも繁栄する国家に近づく気はないかと囁かれたらどうだろうか。

 危険だがトランプ大統領にとっては独裁者たる金正恩が生きている方が、はるかに体制変換は容易である。

 一方、金正恩にとっては、昨年来の米国による北朝鮮殲滅の意思と能力をいやと言うほど見せつけられた。本当に核兵器まで使うかもしれないという米国大統領を金正恩のみならず、我々も目にしていることを忘れてはいけない。

 中国の習近平国家主席が米国を訪問中にシリアをミサイル攻撃したことは、中国のみならず、北朝鮮にとっても大きな恐怖であったはずだ。

 抑止とは、実際に敵に勝てる意思と能力、すなわち、勝てる戦略と切り札となる装備と予算の裏づけがあって初めて有効になるものだ。従って、米国が北朝鮮を殲滅する意思と能力を見せつけた「金の斧」は無駄ではなかった。

 金正恩は戦わずして負けを認めたのだろう。どうせ負ける戦争で殺されるより、シンガポールで見た繁栄の一端を実現することに生き残りを賭けることは悪くないと思ったのかもしれない。

 金正恩は、一応核保有国になったことにより米国大統領を会談に引きずり出したことで、その時が来たと考えたとしてもおかしくはない。

 いずれにしても、北朝鮮は少し時間をもらい、体面を保ちながら核や化学・生物兵器を滞りなく廃絶に持っていく賭けに出たのかもしれない。

3 北朝鮮の後ろ盾は中国か、米国か

 このような見立てをしている論調はほとんどないが、何人かの論者が筆者と似た意見を持っているようだ。

 それぞれアプローチと観点は違うかもしれないが、この見方であれば合点がいく。平たく言えば、「米朝は握った」のである。

 その時に問題となるのが、中国の逆襲と北朝鮮内部の反乱である。

 まず、そんな北朝鮮の動きを中国は容認するのだろうか。答えはイエスである。

(1)そのような謀反の兆候を見て、中国は北朝鮮に対して軍事行動を起こさないだろうか。起こせないだろう。

 なぜなら、米国を悪者にしようと平和勢力のように振る舞ってきた中国にとって、米国に先駆けて軍事行動を起こすデメリットは計り知れない。そのうえ、米国の経済制裁のもう1つの意味は、中国に軍事行動を起こさせない匕首(ブログ管理人注:ひしゅ、あいくちのこと)だからである。

(2)そもそも中国は北朝鮮を憎悪している。昨年の筆者の中国訪問における要人との対話では、「北朝鮮との同盟は変質した」と述べた。

 さらに、北朝鮮の核兵器は中国にも向けられているのではないかとの問いには「平壌を壊滅しなければならない」と吐き捨てるように語っていた。

 中国にとって核兵器などがない北朝鮮の方がむしろ望ましい姿なのである。核の廃棄を進めながら、米国の朝鮮半島からの撤退に結びつけばもっと有難い。

(3)たとえ北朝鮮が米国の経済支援などを受けても、地続きの中国の方が改革・開放の名の下に経済的な浸透が容易である。

 北朝鮮も改革・開放を隠れ蓑にする可能性がある。まして左傾化し反日・反米になりつつある韓国は御しやすく、習主席の方がトランプ大統領よりも長く政権に居続けられることから、いずれ朝鮮半島は中国の傘下に入るだろう、とほくそ笑んでいることだろう。

 もう1つは北朝鮮の内部の問題である。

 これは、体制変換を感じ取った親中派の軍部などが金一族を抹殺することや、自由を得てきた国民がルーマニアやリビアのように独裁者を抹殺することであり、この2つの可能性は大きいかもしれない。

 一挙に昔の北朝鮮に戻る危険性は否定できない。従って、軍事行動の準備は続けなければならない。まさに激動の朝鮮半島である。

4 対中に舵を切った米国、日本はどうする

 このような激動の中で、日本の政治は国内の些細な問題に囚われ、また、とても自由主義国家とは言えない経済政策の推進で、米国や世界の信用を失いつつあることに気づいていない。

 特に中国の「一帯一路」への協力は、トランプ大統領やインド・アジア地域の国々にとって裏切り行為でしかない。

 米国が台湾にも近づき、本気で中国征伐に乗り出したのに、中国の支援に回るとは利敵行為もはなはだしいとトランプ大統領は怒っているだろう。

 日本は中国の離間の計、すなわち日米の分断に自ら協力している。

 その怒りは、韓国と日本が核廃絶のお金を払うだろうという言葉に表れているし、日本に対する制裁関税の解除が遅れているのも、一緒に中国に立ち向かうこともなく、自らを守り切る防衛費も負担しないで笑って済ませようとする日本に対する皮肉であろう。

 米国の中国に対する制裁関税は、知的所有権への侵害に対するものである以上、日本も制裁に参加すべきではないだろうか。また、韓国からの米軍の撤退の希望は本心だろうし、止められない流れとなるであろう。

 米国は、中国に立ち向かうときには、日本は対馬が最前線になることを自覚し、少なくとも自らを守り切り、米国とともに中国に勝てる戦略の下に一緒に戦う覚悟を固め、行動することを期待しているはずだ。

 そうでなければ、やがて日本からも撤収するかもしれない。米軍が、未来永劫駐留すると考えるのではなく、日本を守るために米軍を引き止め、戦わせることを考えることがこれからは必要である。

 北朝鮮のミサイルにすら太刀打ちできない自らを恥じることなく、平和の配当を求め防衛費を削減しようとすることがあるならば自殺行為である。

 いずれにしても、朝鮮半島情勢は一気に流動化し、北朝鮮が米国と中国のどちらに振れようと、中・長期的視点からは日本にとって安全保障上、最も厳しい情勢になることは間違いない。日本は正念場に立たされたのである。

 そして、今年策定される新防衛大綱が手抜きであれば、日本の将来はないだろう。

 日本に求められることは、

(1)本気の対中作戦を考えた「脅威対抗の防衛力」への転換である。

 すなわち、防衛の必要性から、勝てる戦略(共著「日本と中国、もし戦わば」SB新書、中国の潜水艦を含む艦艇を沈め、国土・国民を真に守り切れる装備、態勢、米国を含むインド・アジア・太平洋戦略を提言)と切り札となり、ゲームチェンジャーとなる装備の開発・装備化、そして裏づけとなる十分な予算の配当が必要である。

(2)軍事は最悪に備えることが必要である。このため、アチソンラインが復活することを前提に、南西諸島防衛を手本として五島列島、対馬、隠岐、佐渡島、北海道へ至る防衛線を再構築する必要がある。

1950年1月12日、アメリカのトルーマン政権のディーン・アチソン国務長官が、「アメリカは、
フィリピン・沖縄・日本・アリューシャン列島のラインの軍事防衛に責任を持つ。それ以外の地域は
責任を持たない」と発言しました。これをアチソンラインといいます。

 トランプ大統領の、力による平和、力を背景とした外交の効果を理解し、また、日本の力のない外交では北朝鮮すら動かすことができない惨めさを理解したうえで、日本は自らの責任と自覚の下に、敢然と中国に立ち向かう日米同盟へと転換させることが喫緊の課題である。

【私の論評】米国が北朝鮮に軍事攻撃をする可能は未だ捨てきれない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事については、賛同できるところもあるのですが、そうではない部分もあります。特に、日本の外交に関して、安倍総理の外交努力を完璧に無視しているところには、全く賛同しかねます。

米国は以前から、アジア太平洋方面では二つの大きな脅威に直面していました。短期的には北朝鮮。長期的には中国です。これは、このブログにも何度か掲載してきましたし、現在の米国を考える上では、前提としなければならないことです。

そうして北朝鮮と異なり、中国は圧倒的な経済力を持っていて、いくら脅威であっても中国と直接紛争することはなかなかできないというのが米国の認識のようです。中国はすでに数百発のミサイルを日本列島に向けて発射できるよう準備を済ませており、そのミサイルに核爆弾も搭載可能です。

米国からすれば、本命は中国であり、北朝鮮問題などその前哨戦に過ぎないのです。このブログでも何度か掲載してきたように、トランプ大統領は、金正恩が米国の対中国戦略の駒として動く限りは、北の存続を許すでしょうが、そうでなければ、さらに制裁を強化したり、場合によっては軍事オプションも用いて、北を崩壊させることでしょう。その決断は、ブログ冒頭の記事のように、1年以内になることでしょう。

トランプ政権は発足当初は、中国の軍事的経済的台頭を抑えるため、ロシアと組もうとしたようですが、結局ロシアとの関係改善は進まず、次善の策としてASEAN諸国やインドと組もうとしました。ところが、中国側に先を越されてしまいました。

中国は2014年11月から、一帯一路構想により「シルクロード経済ベルト」と、「二十一世紀海上シルクロード」を構築すべく、アジア諸国に対して徹底的な経済支援を実施しています。

この「買収」工作のため、ASEAN諸国の多くはなかなか「中国批判」を口にしないようになってきていました。ただし、最近ではマレーシアにマハティール政権が登場し、一帯一路の事業から撤退することを表明するなど、中国への警戒心が高まっています。

もともとASEAN諸国は、米国のヘッジファンドなどの投資家によって振り回されてきた過去があるため、米国に悪いイメージがありました。インドも独立以来、非同盟といって米国ともソ連とも同盟を結ばずに独自の道を歩んできたため、米国とは関係が良いわけでもありませんでした。

そうして、昨年1月に発足したトランプ大統領は、国務省幹部と仲が悪いです。そのため国務省の主要人事でさえなかなか決まらず、アメリカ外交は余り機能しない状況が続きました。

そもそもトランプ大統領自身が国際政治の分野で友達が少なく、途方に暮れていたトランプ政権の対アジア戦略を支えてきたのが、なんと安倍首相なのです。

安倍首相は選挙勝利し、民主党から自民党ぺの政権交代が決まった2012年の暮に、「セキュリティ(安全保障)・ダイアモンド構想」を発表しています。これは、中国の脅威を念頭に、日米同盟を広げて東南アジアやオーストラリア、インドに至るまでの連携網を構築しようというものです。



この構想に基づいて安倍首相はこの6年近く「地球儀を俯瞰する外交」と称して世界中を奔走してきました。特にASEAN諸国やインドとの外交を押し進め経済のみならず、安全保障面での関係強化を図ってきました。

この安倍首相の活躍のおかげで、トランプ政権とASEAN諸国、インドとの関係改善も進んでいるといっても過言ではありません。トランプ政権単独ではなかなかできないことてした。

インド太平洋地域で果たすべきアメリカの役割が不明確になっているなかで、代って日本がこの地域でより大きな役割を果たすようになってきています。特にアメリカは昔からインドとの関係は複雑で微妙な面がありますが、安倍外交がインドと米国との関係を強化することに貢献したのは間違いありません。

ブログ冒頭の記事では、「一帯一路」への協力は米国への裏切りなどとしていますが、安倍総理は「個別案件に対応したい」と言っただけであり、「一帯一路に協力する」と言ったわけではありません。

おそらくリップサービスの域を超えていないと思います。そうして、安倍総理は、このリップサービスにより、「一帯一路」に関する情報を中国から仕入れようとしたのでしょう。中国としては、喉から口が出るほど日本の協力を欲しがっているので、これに関しては、静観しているようです。

そもそも、「セキュリティ・ダイヤモンド構想」を発表したその本人が、本気で「一対一路」に協力するなどということは考えにくいです。そうして、その後安倍総理の口からは、「一帯一路」に関する具体的発言は出ていません。


それどころか、特に南シナ海問題が起こってから、日本は経済協力を通じてフィリピンやベトナムへの関与を強め、巡視船の供与などによって法の支配を広げていこうとしてきました。こうした状況をを米国側からみれば、今や日本はアジア太平洋の安全保障の要となっていると認識しているといっても過言ではないのです。

インド太平洋地域の安定と平和を守るために現在のような戦略的な安倍外交がなくてはならないと、米国その中でも軍関係者は認識しているのです。

日本は過去には「アメリカの言いなり」「対米従属だ」と批判されてきたのですが、今や安倍首相の対アジア外交にアメリカが便乗してきているのです。

そうはいっても課題もあります。それは、ブログ冒頭の記事でも、指摘されているように、日本の防衛体制の不備、特に防衛費の不足です。

米国は仮に北朝鮮が東京にミサイル攻撃を行えば、必ず激しい対応を行うことでしょう。中国の侵略部隊が九州に上陸するようなことがあっても同じように対応することでしょう。。

しかし、北朝鮮のミサイルが五十マイルの沖合に落下した場合や、日本の田舎の住民のいない場所に落ちた場合はどうでしょうか。あるいは、中国の漁民が尖閣に上陸して退去を拒否し、中国海軍がすぐ近くで日本に干渉するなと警告するようなことがあったとしたら、どうなるでしょう。このようなぎりぎりの問題でも、日本は米国に武力の行使を含めて徹底的な支援を期待できるでしょうか。

こうした微妙な問題について日米首脳はしっかりと詰めておかないと、中国にしてやられることもあり得ます。

それでなくともアメリカの政治家の大半は、極東の「島」のために米中が戦争をすることなどあり得ないと考えていることでしょう。日本の領土は、米軍などに頼らず、日本がしっかりと守るべきだと考えていることでしょう。

防衛に対する本気度は予算でわかります。なぜなら、予算は国家の意思だからです。いくら政府が何をやります、あれをやりますといっても、肝心要の予算がつけられなければ、何もできません。


トランプ政権は北朝鮮有事を念頭に昨年は、18年度予算を前年比で約7兆円増の68兆円に増やす防衛予算を国会に提出、昨年7月27日、可決しました。防衛予算を大幅に増額することで「このまま核開発を進めるならば北朝鮮を全面攻撃するぞ」と、その本気度を示しましたのです。

ところが日本は昨年、政府が閣議決定した2018年度予算案の防衛関係費は、米軍再編経費を含む総額で過去最大とはいいなが、前年比で数千億円増やしただけの5兆1911億円に過ぎませんでした。


ミサイル防衛体制も尖閣防衛体制もさほど強化していません。このため、「日本は本気で自国を守るつもりがあるのか」と不信感を抱く米軍幹部も存在するくらいです。

日本は防衛費をもっと増やすことで米国の完全な支援の見込みを増やし、米国と日本のすべての軍隊の間で協力関係を向上することができるはずです。

日米同盟こそがアジアの平和を守る最大の公共財なのです。その公共財を守るためには、憲法改正だけでなく、防衛費をせめて先進国並みのGDP比2%、つまり10兆円規模に増やすことが必要ではないでしょうか。

私は、北朝鮮が中国側について米国に反旗を翻すということもあり得ると思っています。あるいは、米国と中国を手玉にとって、二股外交をするという可能性もあります。いずれにしても、米国が中国に対して、現状の貿易戦争などから、金融制裁などへと制裁を強化しても習近平が翻意しなけば、米国は中国に対する見せしめのために、北朝鮮に対して無慈悲な軍事攻撃加えることもあり得ると思っています。

私は、トランプ大統領やその取り巻きのドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)たちは、本気で全く価値観が異なり、なおかつその価値観を寸分たりとも変えるつもりのない現中国の体制を崩し、米国への脅威を取り除こうと考えていると思います。

ブログ冒頭の記事には、賛同できない部分もありましたが、日本には中国、北朝鮮、反日化する韓国と対峙する覚悟が必要になることだけは、確かです。

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2017年9月25日月曜日

「北朝鮮問題」覚悟を決めた安倍首相と、決められない野党の「大差」―【私の論評】政党が守るべき六つの規律と駄目にする六つの方法(゚д゚)!

「北朝鮮問題」覚悟を決めた安倍首相と、決められない野党の「大差」

選挙の争点は、やっぱりここだろう

髙橋 洋一経済学者
嘉悦大学教授

本日解散の意思を表明した安倍首相 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 「圧力か、対話か」

いよいよ衆院解散である。夕刊フジが9月13日発行号で「9・25解散強まる」と報じたのを皮切りに各マスコミがこれを後追い。しばらくは安倍首相も真意を明かさなかったが、今日25日についに衆院解散を表明する。

安倍首相の気持ちは、北朝鮮の一点にあるのだろう。国民と国家を守るために、どのような政府が必要なのかを国民へ問いかけるはずだ。先の国連での演説を読んでも、この決意がわかる。15分程度のものであるので、全文を読んだらいい(http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0920enzetsu.html)。

北朝鮮の脅威が目の前に迫っていることを強く世界に訴えて、今は対話ではなく圧力の時だと、これまでの歴史を鑑みながら納得のいく説明をしている。振り返れば1994年の米朝間核合意、2005年の六ヶ国協議での北朝鮮の核放棄合意と、二度も対話による合意があった。にもかかわらず北朝鮮はいずれの合意も無視して、核・ミサイル開発を進めてきた。対話による安定を期待していたが、いまはその期待とはまったく正反対の状況にある。

安倍首相は、「三度も騙されるために対話をするのか」と選挙で訴えるだろう。国連で国際社会に訴えたように、国民にも問いかけるはずだ。

簡単な対立図式でいえば、「圧力か対話か」が選挙の重要な争点となるだろう。左派政党は「対話を」となるだろうが、はたして対話路線で、リアルな国際政治の議論についていけるだろうか。

実際の国際社会でも、当初中国とロシアは対話を主張していたが、最近では対話と圧力のなかで、圧力のウエイトが増している。特に、先日北朝鮮が実施した水爆実験では、さすがの中国もロシアも「これはマズい」と思いだしており、石油禁輸は盛り込まれなかったものの、それに準ずる強い制裁措置が採用されたことからも、それは明らかだ。

日米が強い対応を打ち出したところ、北朝鮮側は「超強硬対応を検討する」とした。まさに米朝のチキンレース。トランプ大統領は金委員長を「ロケットマン」と呼び、「アメリカや同盟国を攻撃する事態になれば、他の選択の余地はなく北朝鮮を完全に破壊する」ともいった。

これに対し金委員長が声明をだした。かの国で委員長が声明を出すこと自体が異例であるが、「史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」とした。「慎重に考慮」と表現しているところに、まだ最終段階には至らない余地を感じるが、これでチキンレースはまた一歩進んだ。

特に、金氏は声明の最後で「行動で見せる」といっているので、さらに核・ミサイル開発を進めるのは確実だ。北朝鮮は独裁国家なので、誰も金正恩委員長に意見を言える人はいない。委員長のいうことを実行するだけである。

一方、アメリカでトランプ大統領に意見を言える人は、北朝鮮に比べれば長女のイバンカ氏をはじめ少なからず存在しているが、もはやトランプ大統領も引き下がれない段階まできている。

 安倍首相は知っているのではないか

そんな中で行われる10月選挙。焦点となるのは、やはり北朝鮮情勢なのである。そんなときに総選挙している場合かという批判もあるが、素直に考えれば、あと1カ月ぐらいのスパンでは、アメリカと北朝鮮が武力衝突にまで進む可能性は少ないとみている。

11月上旬にはトランプ米大統領の初来日が検討されており、国連の経済制裁も当初のアメリカ案より後退したので、逆にいえばまだ手が残っている段階だ。今後さらなる制裁案が出てくる可能性があるので、軍事行動という選択肢はまだ先だ。

ただし、今後1年くらいというタイムスパンでみれば、北朝鮮が確実にアメリカ本土の核ミサイル攻撃できる能力を持つ可能性が高いので、どのような口実を作ってでもアメリカは北朝鮮を攻撃するのではないか。

となると、来年12月の衆院任期までに解散総選挙を行うのは難しい情勢になる。安倍首相は、北朝鮮によって首相の解散権が制約を受けることを何より嫌うはずだ。

実際にアメリカが軍事行動を起さないという楽観論はない。去る18日には、マティス国防長官が、「ソウルを重大な危機にさらさずに、北朝鮮に対して軍事的な対応を採ることが可能だ」と語っている。

アメリカは北朝鮮の主要な攻撃拠点を把握しており、数百発以上の巡航ミサイルなどによる同時攻撃が可能だし、その前に北朝鮮の指揮命令系統を混乱させる技術も持っているといわれている。こうした情報は、日本政府首脳にも伝えられているようだ。

しかも、アメリカにはこれまで多くの戦争に関わってきた歴史がある。最近の国際紛争では、アメリカが関与していないものを探すのが難しいほどだ。アメリカは強大な軍事力があるので、事件を「でっち上げ」てでも戦争の口実にする国だ。

ベトナム戦争でのトンキン湾事件はその典型例だ。イラク戦争での大量破壊兵器も事実でなかった。アメリカの話ではないが、湾岸戦争でも米国政府が引用したナイラ証言はクウェートの広報戦略だったことが明らかになっている。

ナイラ証言を報道するテレビ
筆者は、こうした謀略まがいを肯定するものでないが、戦争の口実はいくらでも作れるのが歴史の教訓であると思っている。アメリカはそうした戦略に基づき行動してきた国であることは、良くも悪くも事実なのだ。

実は筆者は、先日の北朝鮮の水爆実験が既にアメリカのデットラインを超えてしまったと思っている。こうしたトランプ大統領の感覚について、安倍首相は世界で一番早く掴める人物だろう。国連演説後の昼食会があったが、トランプ大統領は事前に「シンゾウの隣の席にして欲しい。そうでなければ昼食会には出席しない」と国連事務局に伝えたという。

初の日米首脳会談で、トランプ大統領は安倍首相と20秒近くも握手したり、1.5ラウンドもゴルフをした仲だ。最近でも、電話連絡を1日に何回もしているようだ。

そうした間柄なので、トランプ大統領の今後の行動について、安倍首相はこれまでの日本の歴代首相とは比較にならないどころか、現時点で世界で一番読めている、と考えるべきだろう。やはり今回このタイミングで解散総選挙が行われることは、いずれアメリカが行動にでることを示唆しているのではないか。

まさに、日本の命運を握っている「トランプ・カード」を手にしているのが安倍首相であるが、これに立ち向かう野党の人々は頼りない。

 不利な政党、チャンスの政党

今回の総選挙の争点は、これまで述べてきた①北朝鮮への対応(対話か圧力か)のほかに、②消費増税の是非、③憲法改正となるだろう。

民進党は北朝鮮対処で「まだ対話が必要」というのだろうか。もしそうであれば、それはここ20年間の対話で北朝鮮がウソをいい続けて核・ミサイルを開発してきたという事実にはどう答えるのか。それでもまだ、というのは「お花畑議論」に思えて仕方ない。

といっても、民進党はもう北朝鮮問題でリアルな議論はできそうにもない。民進党内の保守系といわれる細野氏や長島氏は、こうした民進党の非現実的な議論に飽きて離党している。

前原氏は外交安保では比較的リアリストであるが、それでも党内の多くの意見は相変わらす「お花畑」なので、北朝鮮問題では「対話せよ」となって、共産党と比較的に意見が合いそうである。となると、前原氏が忌み嫌っていた共産党との共闘が、各地の選挙区でみられるかもしれない。その際、「モリかけ」の疑惑隠しのための国会解散だ、というだろう。

本コラムの読者であれば、「モリかけ」における総理の疑惑について裏付けされたものはひとつもなく、単なる言いがかりであったことが明らかだ。「モリかけ」は腹一杯である(笑)。北朝鮮問題の重要度に比べると「モリかけ」は次元が低い話で比較にならないが、国民にはどう映るのだろうか。

民進党は、②と③についても自民党とは明確な差が出せそうになく、苦しい選挙となるだろう。

日本維新の会は、外交安保では常識的な保守政党なので、まともな意見をいうチャンスである。自民党も民進党もいえない、①での非核三原則の見直し、②で消費増税凍結や規制改革を主張し両党との差別化を図りながら、存在感を増す好機だろう。③の憲法改正では、日本維新の会が先導してきた「教育無償化実現」を訴えるチャンスだ。

小池新党はどうだろうか。保守系の人たちが一気に集まれば面白いことになる。風を吹かすにはいい機会なのだが、なにしろ手勢が少なく準備不足である。小池氏が都知事から国政復帰すると宣言すれば別の展開になるかもしれないが、今の状況では難しいだろう。北朝鮮問題への対処が争点となるなかで、存在感を見せられるか。

小池百合子東京都知事は、本日都内で会見し、新党「希望の党」の立ち上げを発表した
いずれにしても、①北朝鮮への対応(対話か圧力か)が総選挙の中心争点になると、これまで集団的自衛権や安保法制に反対してきた政党や政治家は苦しい展開を強いられることになる。

リアルな危機を目の前にすると、「お花畑議論」がまったく通用しないからだ。この点、自衛隊を違憲と主張する共産党が今回の選挙でどのような結果となるか、も注目の一つである。

総選挙は、しばしば「政策の展覧会」ともいわれる。この際、各政党が外交安保、経済などで是非論戦を戦わせて、国民に政策の選択肢を示してほしい。安倍首相は、もっとも得意とする外交安保で解散総選挙を仕掛けたわけだが、はたしてどの政党がその論戦について行けるだろうか。

各政党もここで勝てば、安倍政権打倒の道が開けている。おおいに自説を掲げて戦ってもらいたい。

【私の論評】政党が守るべき六つの規律、駄目にする六つの方法(゚д゚)!

さて、本日も最近の解散にともなう、各党の状況をマネジメント的観点から分析しようと思います。全政党について分析するということになれば、あまりに長くなるので、自民党と民進党の対比ということにします。

特に、自民党などの有利な状況と、民進党などの不利な状況について分析してみます。特にドラッカーの考え方を適用して分析してみようと思います。

ドラッカーは政治学者ではないので、政治そのものや、政党について分析した書籍はありません。ただし書籍の中の一部で政治や政党などについて分析していることはあります。

政党は、非営利組織であり公的機関とみなしても良いと思います。そうしてドラッカー自身も、マネジメントの基本はあらゆる組織にあてはまるとしているので、ドラッカー公的機関に関する分析は、日本の政党の分析にも役立つものと思います。

ドラッカーは、"公的機関が必要とするのは卓越した人材ではない六つの“規律”である"としています。政党も優秀な人がいれば良いというものではなく、やはり守るべき規律をまもらなければ、衰退していくものと思います。
あらゆる公的機関が、六つの規律を自らに課す必要がある。事業の定義、目標の設定、活動の優先順位、成果の尺度、成果の評価、活動の廃棄である。(ドラッカー名著集(13)『マネジメント──課題、責任、実践』[上])
今ようやく日本でも、公的機関の見直しが急ピッチで進められています。しかしドラッカーは、すでに3分の1世紀前に、公的機関に成果を上げさせるための規律を明らかにしています。

第一に、自らの事業を定義することです。「事業は何か」「何であるべきか」を定義することです。ありうる定義をすべて公にし、それらを徹底的に検討することです。これは、政党でいえば、どのような政策を考えるかということにあたると思います。

第二に、その定義に従い、明確な目標を設定することです。成果を上げるには、活動に直結する目標が必要です。目標がなければ活動のしようがないです。

第三に、活動に優先順位をつけることです。同時に、期限を明らかにし、担当する部署を決めることです。

第四に、成果の尺度を明らかにすることです。尺度がなくては、せっかくの事業の定義や目標も、絵空事に終わります。

第五に、その尺度を使って成果のフィードバックを行なうことです。全組織が成果による自己目標管理を行なわなければならないのです。

第六に、事業の定義に合わなくなった目標、無効になった優先順位、意味の失われた尺度を廃棄することです。不十分な成果に資金とエネルギーを投入し続けることのないよう、非生産的なものすべてを廃棄するシステムを持つのです。

これらのステップのうち最も重要なものは、事業の定義だと誰もが思うかもしれません。ところがドラッカーは、最も重要なものは、第六のステップだといいます。企業には、非生産的な活動を廃棄しなければ倒産するというメカニズムが組み込まれています。ところが、公的機関にはそのようなメカニズムがないです。

公的機関が必要としているのは、人の入れ替えの類いではない。わずか六つの規律を守ることなのです。
公的機関に必要なことは、企業のまねではない。成果をあげることである。病院は病院として、大学は大学として、行政機関は行政機関として成果をあげることである。つまり、自らに特有の目的、ミッション、機能を徹底的に検討して、求められる成果をあげることである。(『マネジメント』)
これは、無論政党にもあてはまることです。政党も成果をあげなければ存在意義がありません。

そうして、この点から自民党と、民進党を比較すると、どちらか特に優れているということもないようです。私は、このブログにも過去に何度か、民主党(現在の民進党)は、自民党のコピーのような政党であり、コピーした分だけ、劣化しているということを指摘しました。

そのためでしょうか、六つの“規律”という観点からみると、自民党と民進党のいずれが、この規律を守れているかといえば、どちらの党も似たり寄ったりであると思います。

ただし、自民党のほうが、第六の規律については、民進党よりははるかにましであると考えます。経済政策においては、増税では失敗したものの、金融緩和策では成功して、雇用状況がかなり改善されています。また、北朝鮮情勢に対する対応も、素早いものがあります。

ドラッカー氏
政党などの組織も、成果あげることは容易ではありません。公的機関の成果について、ドラッカーは以下のように語っています。
公的機関が成果をあげるようにすることは容易でない。しかし、公的機関が成果をあげないようにすることは簡単である。6つの罪のうちどの2つを犯しても、成果は立ちどころにあがらなくなる。今日、公的機関の多くが6つの罪のすべてを犯しているが、その必要はない。2つで十分である。(『日本 成功の代償』)
これは、1980年、ドラッカーが「パブリック・アドミニストレーション・レヴュー」誌に寄稿した論文を引用したものです。これは、『日本 成功の代償』に収載されているが、日本の公的機関についてだけ書いたものではありません。世界中の公的機関が抱える問題を論じています。

公的機関が成果を上げないようにするための第1の方法は、ドラッカーは、目的として、「保健」や「身体障害者福祉」などのあいまいなスローガンを掲げることであるとしています。

この種のスローガンは、設立趣意書に書かれるだけの値打のものであり、いかなる趣旨のもとに設立したかは明らかにしても、いかなる成果をあげるべきかは明らかにしないからです。

第2の方法は、複数の事業に同時に取り組むことです。優先順位を決め、それに従うことを拒否することであす。優先順位がなければ、努力は分散するだけとなります。
第3の方法は、「肥満が美しい」とすることです。ドラッカーは痛烈です。「金で問題の解決を図ることは間違いだと言われる。だが頻繁に目にするのは、人手で解決を図ることである。人員過剰は資金過剰よりも始末に負えない」。

第4の方法
は、実験抜きに信念に基づいて活動することです。ドラッカーは、これは、「初めから大規模にやれ、改善はそれからだ」という、今日の公的機関に一般的に見られる態度だと指摘します。

第5の方法は、経験から学ぼうとしないことです。つまり、何を期待するかを事前に検討することなく、したがって、「結果」を「期待」にフィードバックさせないことです。

第6の方法は、何ものも廃棄しないことです。もちろん、この方法によれば、ほとんどただちに成果を上げられなくなります。
政府機関であれ民間機関であれ、公的機関はすべて不滅の存在と前提している。馬鹿げた前提である。そのような前提が、公的機関をして成果をあげなくさせている。(『日本 成功の代償』)
政党として、成果があげられないようにする方法に関して、両党を比較してみました。

まずは、第一のあいまいなスローガンをあげるといいうことでは、 自民党は党の綱領などみてみましたが、作成されたのが、昭和30年代であり、そこから改定されていません。これでは、民進党の綱領は昨年作成されているのですが、結論からいうとまさに、「あいまいなスローガン」になっています。

民進党には、「結党宣言」もありますが、その最後の言葉「野党勢力を結集し、政権を担うことのできる新たな政党をつくる」という文言があります。野党を結集したら政権を担える、その発想がそもそも旧態依然とした55年体制的なのです。

自民党は、古いスローガンがそのまま、民進党は曖昧なスローガンということで両者に差はありません。第2〜第4もさほど差があるとは思えません。

しかし、第5と第6では大きな差異があると思います。民進党は、ブーメランという言葉で象徴されるように、過去においても、何度もスキャンダルで自民党を批判し、その都度かえつて不利な状況を招いてきました。スキャンダル追求では、過去においては何の成果をあげることもできませんでした。

しかし、「森友・加計問題」に関しては、いっときかなり成果をあげたかのように見えました。そうして、現在でも野党はこの問題を追求し続けたいようです。実際以下のような新聞記事があります。
野党、冒頭解散を批判 民進代表「疑惑隠し」  :日本経済新聞

野党は19日、28日召集の臨時国会冒頭で衆院を解散する意向を固めた安倍晋三首相を批判した。 
民進党の前原誠司代表は19日の党常任幹事会で、学校法人「森友学園」「加計学園」の問題に触れ「敵前逃亡、自己保身、疑惑隠しの解散と言わざるを得ない」と強調。 
以下、全文を読む
ところが、わずか二ヶ月前には、同じ日経新聞に以下のような報道がされていました。
蓮舫氏「解散に追い込む」=社民幹事長も同調:時事ドットコム

民進党の蓮舫代表は6日の記者会見で、自民党が東京都議選で惨敗したことを受け、「解散・総選挙はいつでも受けて立つ。(衆院解散に)追い込みたい」と述べた。
 社民党の又市征治幹事長も同日の会見で、「内閣改造でごまかそうとしているが、解散・総選挙を打たざるを得ないところに追い込むことが大事だ」と強調した。
以下、全文を読む
これでは、完全に矛盾しています。安倍総理の解散の決断は、二ヶ月前の野党の要望に沿ったものともいえるものです。

「森友・加計問題」のようなスキャンダル追求は、結局過去においてはめぼしい効果をあげていません。過去においては、いくら野党がスキャンダル追求をしても、与党の支持率は微動だにしませんでした。

「森友・加計問題」では、一時支持率は落ちたものの、現在では回復しています。本当に、民進党をはじめとする野党は、経験に学ぶということができないようです。

安倍総理は、経験に学ぶということができます。第一次安倍内閣のときの失敗を謙虚に反省して、現在の政権運営に生かしています。特に経済面ではそうです。とはいいながら、これはあくまで、安倍総理とその側近に関していえるということであり、残念ながら、自民党という組織としては、あまり経験に学ぶということは得意ではないようです。

とはいいながら、総裁がそのような姿勢なので、民主党の大失敗の経験から学ぼうとしない民進党前原代表や幹部の存在する民進党とは大きな差があります。

第6の方法は、何ものも廃棄しないということでは、やはり民進党のほうに軍配があがります。ほんとうに、古い考えをそのまま、温存して何も破棄しようとしません。

まずは、上記であげたように、スキャンダル追求主体という方法をいつまでも堅持しています。無論、いっさいやるなとはいいませんが、これが主体で、政策論争がおろそかというのでは、本末転倒です。

それに、憲法でも、安全保障に関する事柄でも、とにかく古いものにしがみつくということでは、自民党に比較しても、かなり劣っています。

それにしても、上の6つの規律、公的機関が成果を上げないようにするため6つの方法など見ていると、自民党も決して優れた政党ではないことが理解できます。

やはり、今回の選挙では、各政党が外交安保、経済などで是非論戦を戦わせて、国民に政策の選択肢を示してほしいものです。

各政党もここで勝ち、上で上げた諸規律を守り抜けば、目覚ましい成果をあげて、安倍政権打倒の道が開けることになるかもしれません。また、そのような政党が出てくれば、自民党にも多いに刺激になって、良い政策を打ち出し、政権の座を守り抜くことになるかもしれません。各党おおいに自説を掲げて戦っていただきたいものです。

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2015年7月3日金曜日

<民主党>自民党政権と対決する覚悟ある人公募―【私の論評】キャッチをみれば、民主党の末路が見える(゚д゚)!



民主党は3日、自民党政権と対決する覚悟のある人材に限定して公募を開始した。対象は衆参両院の国政選挙と各種地方選挙。8月31日までの募集で、党に新設した特命人事部(部長・玉木雄一郎衆院議員)が選定する。

3日には「大補強2015 逸材公募」と題した特設ホームページ(HP)も開設。HPでは、デメリットとして、休みはなくなる▽批判にさらされる▽からだはきつい▽収入は減る▽当選の保証なし▽しかも民主党--と列挙。その上で「それでも日本を救う気概があるならぜひ応募を」と呼びかけている。

デメリットをさらけ出すことで、反骨精神のある人材を発掘する狙いがあるという。玉木氏は3日の記者会見で「民主党の状況は今厳しいが、国民のために安全保障問題や財政の膨張、天下りなどの自民1強の弊害と対決する熱い人材に来てほしい」と語った。

【私の論評】キャッチをみれば、民主党の末路が見える(゚д゚)!

上の記事に掲載されている、民主党のHPのページの画像を以下に掲載します。


それにしても、これでは何のことなのか全く理解できません。反骨のエキスパートとは、いつも民主党が国会でやっているように、自らの主張は何もないにもかかわらず、反対のための反対をすることを指しているでしょうか。

これも良く理解できませんが、その後下に出ているキャッチもいただけません。まるで、民主党はブラック企業でもあるかのような表現です。

これで、本当に人が集まるとは思えません。民主党は本気で人を集めようとしているのか、それもまともに政策討論ができる人や、政策立案のできる人などを公募すつもりがあるのか疑わしいです。

政策などどうでも良く、とにかく数を集めて、下手な鉄砲でも数を打てば当たるという考えで、とにかく目の前の選挙で議席を少しでも増やせればそれで良いという気持ちがにじみ出ています。人材募集のツールとしては、最低です。

最近の安全保証論議でも、まるで地に足のつかない、一般論で終始して多くの国民に対して安全保障問題を理解しにくいものにしています。これについては、以下の動画をご覧いただくと、よくご理解いただけるものと思います。


上の動画を見ていると、小川教授と同じく参考人として鳥越が出席していますが、本当に馬鹿面をさらしているとしか見えないです。鳥越の語った意見など、全く参考にも何にもならない戯れ事に過ぎないので、ここには掲載しません。どうしても、知りたい方は、サイトで他の情報源をあたって下さい。

それにもまして、馬鹿面を晒しているのは民主党の面々です。特に幹部連中はそうです。民主党は、集団的自衛権で一般論ばかり論議し、それをもって安倍叩きの材料にしているようですが、彼らが幾ら安倍叩きしても、奇妙なことに、民主党の支持は全く増えず、増えるのは共産党だけです。本当に、民主党の支持率は、微動だにしません。どこのメディアの調査でも、これだけは変わりませんから、実際そうなのでしょう。

あれだけ、マスコミや民主党などから、徹底的に叩かれても、安倍政権の支持率平均がまだ45%超です。長期政権の2年後以後支持率がどうであったかを振り返るとこれは、驚異的です。

佐藤政権は30%前半、中曽根政権は30%後半、小泉政権ですら40%前半です。そうして今の安倍政権程野党や、メディアからぶつ叩かれ続けている政権はさすがにありません。
本年6月29日FNNによる安倍内閣支持率
それに、叩かれる事、支持率急落を全て覚悟の上でなければこんな政治やりません。おそらく、安全保障の問題など後回しにしたことでしょう。それには、それなりの差し迫った事情があるのです。民主党であれば、せっかく支持率が高いときに、このようなことはしないでしょう。しかし、民主党の幹部はこれに気づいていないようです。愚かしいです。

結局自分たちは何をしたいのか、日本という国をどのようにしたいのか、全くそれがみえてきません。だから、先にあげた、人材募集においても、あのような到底理解しがたい、まるでブラック企業のようなキャッチ・コピーしか出来ないのだと思います。
民主党政権の三年間も酷いものでした、結局何も決められず漂流していただけです。

キャッチコピーをつくるのは、おそらく民主党でも、他の党でもその道のプロが作成するのだと思います。そうして、作成するときには、幹部などから民主党をどのようにしたいのかとか、日本をどうしたいのかということをインタビューし、その他要望も聴き出すでしょう。誰が作成するにしても、キャッチコピーをつくるには、この手続きは欠かせません。

しかし、民主党には明確なそれがなかったので、キャッチコピーもあのようなものになってしまったのだと思います。

もう民主党の行く先は、見えてきたようです。結局、安倍総理個人や、自公政権に対してネガティブ・キャンペーンばかり繰り返し、衰退して過去の社会党のようになるのが関の山です。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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【関連図書】

民主党は、結局のところ自民党のコピーのような政党であり、コピーした分だけ劣化しています。それは、民主党政権によって、白日のもとにさらされたのですが、喉元すぎれば熱さを忘れの格言の通り、そのことが忘れられています。

そのことを思い出していただくための書籍を以下にチョイスしました。

破壊外交-民主党政権の3年間で日本は何を失ったか-完全まとめ
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