2021年6月27日日曜日

「表現の自由脅かす」批判 吉村知事発言に主催者側―【私の論評】自らの果たすべき貢献は何かという問いからスタートするとき、人は責任をもつがゆえに自由になれる(゚д゚)!

「表現の自由脅かす」批判 吉村知事発言に主催者側

大阪府立労働センター「エル・おおさか」(大阪市中央区)

 大阪市で7月中旬に開催予定だった「表現の不自由展かんさい」の利用許可を会場側が取り消した問題で、大阪府の吉村洋文知事は26日、記者団に「施設の管理運営を考えると取り消すべきだ」と発言、賛意を示した。

 知事発言に対して、主催する実行委員会の一人は同日夜、「憲法に保障されている表現や集会の自由を知事自らが脅かすことに加担している」と厳しく批判した。

 会場は大阪府立労働センター「エル・おおさか」(大阪市中央区)。抗議が相次ぎ利用者らの安全が確保できないとして、25日付で会場側が利用許可を取り消した。

【私の論評】自らの果たすべき貢献は何かという問いからスタートするとき、人は責任をもつがゆえに自由になれる(゚д゚)!

「表現の自由」の「自由」という言葉について、誤解している人も多いのではないでしょうか。

自由は、英語で"freedom"と"liberty"と訳されますが、この2つの言葉には根本的に違いがあります。

日本語では同じ自由だからと言って、同じように使ってしまうと、状況によっては意味が伝わらなくなってしまう可能性があります。

“freedom”が意味する「自由」は「受動的」なイメージです。

そのままそこにいればいい、何もしなくていい、ただ与えられるものなのです。ある意味、あって当然という感覚です。

例えば、「表現の自由」というのは”freedom”を使って表現されます。”freedom of the speech”と言います。

何かを表現する自由というのはあって当たり前という感覚なんですね。別に掴み取りに行くものではありません。

言論統制などされている国はありますが、本来「表現の自由」というのは誰にでも与えられているものですから、”freedom”で表現します。

では、”freedom”を使った例文を見ながら、そのニュアンスを感じとっていただきたいです。

We have the freedom to give our opinions about anything.
(私たちは何に関しても意見を述べる自由があります。)

「意見を述べる」という「自由」も、あるのが当たり前のものです。人間なら誰しも持っている「自由」です。だから、”freedom”で表現するのです。

「あって当然」という感覚ですから、“freedom”が意味する「自由」は最初からあるものなんです。

何かに押さえつけられていたり縛られてたりしている状況は存在しません。つまり、なんの制約もないような状態なのです。

Children naturally have the freedom to be what they want to be.
(子供というのは、本来なりたいものになれる自由というのを持っている。)
様々な状況で夢をあきらめなければいけないという状況は当然ありますが、そういうのを抜きにして考えた場合、「なりたいものになる自由」というのは誰にでもあります。

制約がなく「最初からある自由」なのです。そのため、”freedom”の持つニュアンスです。

“liberty”が表す「自由」は”freedom”と違い、「能動的」なイメージです。

“freedom”を掴むために争ったり闘ったりする必要はありませんが、“liberty”を掴むためには争ったりしながら自らが取りに行かなければならないのです。

つまり、「自らがすすんで勝ち取る自由」という意味です。周りと争ったり闘ったりしながら、自分の「自由」の権利を主張して掴み取るものなのです。

例えば、米国にある「自由の女神」を英語で言うと、”The Statue of Liberty”です。なぜ、これは”liberty”が使われているのでしょうか?

「自由の女神」というのは、米合衆国独立の象徴です。人々は「自由」を得るために戦って、「自由」を掴み取り、そして独立したのです。

だから、その象徴である「自由の女神」の「自由」は”liberty”なのです。

以下の例文で確認しながら、”liberty”のニュアンスを感じ取っていただきたいです。
In many countries, many people have had to fight to receive liberty in past eras.
(過去、多くの国の多くの人々が自由を得るために闘わなければならなかった。)
「自由を得るために闘わなければならなかった」という状況ですから、自ら「自由」を求めにいってるということです。つまり「能動的」ということです。だから、”liberty”を使っていめりです。

“liberty”が意味する「自由」は、自分で掴み取るもの。つまり、元々は自由ではなかったことを意味します。

何らかの制約や縛りがあったりと不自由な状態から抜け出して得た「自由」ということです。
Our ancestors got liberty from the dictator a long time ago.
(遠い昔、私たちの先祖は独裁者から自由を得た。)
「独裁者にいろいろと抑えつけられていた状況」というのはいろいろと制約があったりして不自由です。「そういった状況から抜け出して自由を得た」ということなので”liberty”を使って表現するのが適しているのです

このように、何か不自由な状態があって初めて”liberty”が生まれるのです。

日本語では同じ言葉でも、英語の”freedom”と”liberty”には意味合いの違いがあるんですね。ちなみに、意味合い以外にも「”freedom”は古ゲルマン語、”liberty”はラテン語」という語源の違いもあります。

そうして、責任という観点でみると、両者の言葉がより一層明確になります。"libery"である状態にあるということは、それは誰にでも認められた当然の権利という意味合いがあります。"liberty"である状態にある人には何の責任も問われません。

一方"freedom"はそうはいきません。経営学の大家ドラッカー氏は"freedom"について以下のように述べています。


これを直訳すると「自由は解放ではない。それは何かをするかしないかを選択する自由である」

これだけだと理解しにくいと思いますので、『産業人の未来』というドラッカー氏の著作の和訳から「自由(freedom)」に関する部分を引用します。
自由は解放ではない。責任である。楽しいどころか一人ひとりの人間にとって重い負担である。それは、自らの行為、および社会の行為について自ら意思決定を行うことである。そしてそれらの意思決定に責任を負うことである。
(産業人の未来)

 libertyであることはすでに権利となったものですから、"liberty"の状態にあることに責任は伴ないわないのですが、freedomには意思決定が伴い、そうしてその意思決定には責任が伴うのです。

このあたりを誤解している人は多いのではないかと思います。表現の自由にも"自由"という言葉があるからには責任が伴うのです。

We have the freedom to give our opinions about anything.
(私たちは何に関しても意見を述べる自由があります。)

この言葉においても、何か意見を述べるという意思決定をして、そうした場合、責任が伴うということです。であれば、「表現の自由」にも責任が伴うということです。

なにやら、小難しいことをグニャグニャと述べてきましたが、本日は「自由」に関するアニメをTwitterに掲載されているのを見て、これはわかり易いと思いましたので以下に掲載します。


ソース元のツイートを以下に掲載しておきます。



 このアニメ単純に見えますが、意味するところは深いです。

ドラッカー氏は現代人、特に民主主義社会に生きる人々には、自由の代価として何をしたいかを問われているとしています。

選択肢を前にした若者が答えるべき問題は、正確には、何をしたらよいかではなく、自分を使って何をしたいかである。多元社会は一人ひとりの人間に対し、自分は何か、何をしたらよいか、自分を使って何をしたいかを問うことを求める。この問いは就職上の選択の問題に見えながら、実は自らの実存にかかわる問題である。(『断絶の時代』)

 多くの若者にとって、自分が得意とするものが何かはまだわからないです。それどころか、自分の「値打ちがある」とするものが何かさえ、まだわからないのです。

ほとんどの人が親の後を継いで農民になる以外になかった時代は、歴史的にみればついこの前のことです。しかし、いまや選択肢は無数にあるのです。

だから就職に悩みます。しばしフリーターともなります。その間に、せっかく身に付けた知識が陳腐化するという悲劇も起こるのです。

ドラッカーによれば、17世紀にデカルトが精神の実存を無視して以来、西洋では、いかにして人間の実存は可能かではなく、いかにして社会の存在は可能かが問われてきました。こうしてこの2世紀の間、世の関心は社会に向けられてきました。

 今日ふたたびわれわれは、昔からの問いである一人ひとりの人間の意味、目的、自由という根源的な問題に直面している。世界中の若者に見られる疎外の問題が、この問いに答えるべきことを迫っている。組織社会が、選択の機会を与えることによって、一人ひとりの人間に意思決定を迫る。自由の代価として責任を求める。(『断絶の時代』)

一方ドラッカー氏は、以下のようにも語っています。
自らの果たすべき貢献は何かという問いからスタートするとき、人は自由となる。責任をもつがゆえに自由となる。(『明日を支配するもの』P218)
これは、私の好きな言葉でもあります。この言葉を噛み砕くと他人を助けるという視点で、一つ一つを積み重ねていくということです。それも自分のできることで、できれば他人になかなかできないことで積み重ねていくということです。

一つ一つ積み重ねることで、やがて自らの強み、仕事の仕方、組織の価値観を知り、機会をつかむ用意が出来るということなのです。そういう機会を多くの組織が提供すべきてなのです。組織というと、なにやら悪いことのように考える人もいるようですが、現代は組織社会であり、多くの人が組織に属していることを思い起こしてください。さらには、現代人は悪い組織から抜け出し、まともな組織に移る自由もあるのです。

「自分には、夢や希望が湧いてこない」という悲痛な叫びを見聞きすることがありますが、文章の主語は何になっているでしょうか?

「自分には」という主語に、他人に貢献する、組織に貢献するという気持ちは入っていません。こういうことを言うだけの人には、実は自由ではないのです。人は、自分の果たすべき貢献は何かを考えることにより、はじめて責任を持ち自由になり強くなれるのです。

そのようなことは、一昔の日本人なら当然のこととして知っていたはずです。しかし、現代ではドラッカー氏の言葉などを引用しないとなかなか理解してもらえないところがあります。そうして、これは日本だけの現象ではないようです。米国ではドラッカー氏のことがわすさられているようです。本当に残念なことです。

この文脈では、これも私の好きな言葉である三島由紀夫の「人間というのは自分のためだけに生きて、自分のためだけに死んでいけるほど強くない」という言葉を思い出します。


「自分のためだけ」に生きる人、自分の自由だけ考える人は、強くはなれず、必ずすぐに限界にぶち当たります。自分のためではなく、親のため、子供のため、家族のため、恋人のため、仲間のため、地域のため、会社のため、国のために生きる人、いいかえると自分を超えた何らかの大義に生きる人は、応分の自由を得て強くなれるのです。

そのことを多くの現代人は忘れてしまっているのではないでしょうか。

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2021年6月26日土曜日

【日本の解き方】米当局の中国製品排除方針、経済を「武器」にした戦いとなる 台湾が利する安全保障の狙いも―【私の論評】米中対立は「文明の衝突」なのか?そうであれば、日本史の研究が米国の対中戦略立案に役立つ【その2】(゚д゚)!

【日本の解き方】米当局の中国製品排除方針、経済を「武器」にした戦いとなる 台湾が利する安全保障の狙いも

左からケネディー大使、バイデン氏、皇太子殿下(当時)

 米連邦通信委員会(FCC)は17日、国家安全保障を脅かすと指定した中国企業の製品を認証しない方針を発表した。通信機器の華為技術(ファーウェイ)や監視カメラの杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など5社が対象で、米国で販売できなくなる可能性があると報じられている。

 バイデン政権の対中政策については大統領選中、バイデン氏が「親中」なので、トランプ政権のものを全てひっくり返すとの観測もあった。具体的には、自身が副大統領を務めたオバマ政権のような対話路線になるというものだ。

 これまでのところ、そうした極端な見方は正しくなかったが、トランプ政権を完全に継承したかといえばそうでもない。継続しつつ、一部修正しているというところだ。

 少し考えれば当たり前だが、米国の政権は継続しているので、一夜にして大転換というのは考えにくい。修正は徐々に行うものであるが、事前に予想されていたほどには修正が少ないというところだろう。

 主要7カ国(G7)首脳会議や北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議で分かったことは、バイデン政権は同盟国とともに対中戦略を立てるという大方針だ。この点が、米国一国で対中戦略を行っていたトランプ政権との違いといってもいい。

 バイデン政権が今後、現状の対中戦略の方針を大きく変更するかといえば、筆者にはそう思えない。米国一国ではなく、同盟国を巻き込んだものとなっているので、その信頼を失わないためにも、さすがに手のひら返しは難しいだろう。

 その背景には、本コラムでも紹介したように、経済安全保障に基づく考え方があるのだと思う。つまり、米中両国間では当面、物理的な軍事衝突は考えにくいが、その前に経済を「武器」にした争いがあるからだ。なお、サイバー空間での前哨戦は既に始まっていると思った方がいい。

 米国が中国製品を排除することになるとどうなるか。今の工業製品は、中間財を世界各国に依存するなどサプライチェーン(流通網)が複雑なので、中国製品を排除しても中国が直接打撃を受けるとは限らない。しかし、長期的には対中ビジネスのリスクが顕在化するので、中国へ中間財を輸出している企業が供給停止することも含めて、中国にとって打撃となるのは間違いないだろう。

 一方、どこが相対的に有利になるかといえば、韓国や台湾だろう。その意味で、バイデン政権の目指す同盟重視にも長期的にはつながる。

 経済安全保障の観点からも、長期的には台湾をも利することになるので説得的だ。なお、安全保障から、台湾を中国の一部ではなく、「同盟国」としてみるという点とも、米国市場からの中国製品排除政策は整合的だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】米中対立は「文明の衝突」なのか?そうであれば、日本史の研究が米国の対中戦略立案に役立つ【その2】(゚д゚)!

オバマ政権は2期目に外交政策の重点を中東に移す中、中国とは対話路線を模索しました。これが後に「対中弱腰外交」との批判を内外から受けることになりました。バイデン政権は、オバマ政権時の「対中弱腰外交」に戻るとの観測を払しょくするために、対中強硬姿勢をことさら強調しています。

バイデン政権は外交、軍事、経済政策の基本方針となる「国家安全保障戦略」を今年後半に発表します。3月3日には、その策定に向けた指針を公表しました。注目される中国に関する記述では、「攻撃的かつ威圧的に振る舞い、国際システムの中核をなすルールや価値観を弱体化させている」と中国を強く批判しました。

さらに、「経済、外交、軍事、先端技術の力を組み合わせ、安定的で開かれた国際システムに対抗しうる唯一の競争相手だ」とも指摘しています。バイデン政権は、地球温暖化対策などでは中国との連携を探りますが、人権問題、安全保障問題などでは、日本などの同盟国との連携を強化したうえで、対中強硬姿勢をとっています。

同じ日に演説を行ったブリンケン米国務長官は、中国について、「安定的で開かれた国際秩序に本格的に挑戦する力を有する唯一の国だ」と指摘したうえで、中国との関係を「21世紀における最大の地政学的な試練」と位置づけています。

また、新疆(しんきょう)ウイグル自治区でのイスラム教徒少数民族への人権侵害や、香港の民主派弾圧に立ち向かい、民主主義や人権重視などの価値観を擁護していく必要があるとしました。

米中の対立は、価値観とそれに立脚する体制を巡る争いの様相を強めている。そして米国内では、中国は価値観を共有できない国、との認識が国民の間で強まっている可能性があるのではないか。ここで思い起こされるのは、2019年に米国務省の高官が米中対立について示した、「文明の衝突」論です。

文明の衝突」とは、米国の国際政治学者のサミュエル・ハンティントンが1996年に表した著作「文明の衝突と国際秩序の再構築(The Clash of Civilizations And the Remaking of World Order)」で提唱した理論体系です(日本語版の書名は「文明の衝突」)。冷戦後の世界では、異なるイデオロギーではなく異なる文明が対立軸になる、と主張されています。

2019年4月に米国で開かれたシンポジウムで米国務省のキロン・スキナー政策企画局長は、「中国は米国にとって初めての異なるイデオロギーを掲げる強大なライバルであり、米国は非白人国家である中国との『文明の衝突』に備えるべきだ」と発言しました。

キロン・スキナー氏

中国共産党機関紙・人民日報のニュースサイトである人民網は、この発言を、人種主義色の濃い対中文明衝突論であり、スキナー氏は米国の対中関係に、センセーショナルな「文明の衝突」のレッテルを貼ろうとしている、と強く批判しました。

批判は米国内でも高まった。ワシントン・ポスト紙は、「中国は白人の国でないという理由で、米国は『文明の衝突』を企てている。これは危険だ」とする表題の論説文の中で、「中国人が白人でないがゆえに『文明の衝突』が起こるとする議論には欠陥があり、非常に危険だ」と論じています。

スキナー氏の主張の不正確さも、また、批判の対象となりました。スキナー氏は、「中国との対立は、米国が今まで経験したことのない、異なる文明、異なるイデオロギーとの闘いだ」、「冷戦は西洋諸国(Western Family)の間での戦いだったが、中国は西側の思想、歴史から産まれたものではない。米国は白人以外と初めての大きな対立を経験しようとしている」と発言しています。

これに対してワシントン・ポスト紙の論説は、異なるイデオロギーとの対立は既に米国は経験している、と反論しています。その第1は、第2次世界大戦時のドイツのナチズムとの対立だ。そして第2は、冷戦下でのソ連との対立だ。加えて、ソ連を西側あるいは欧州の国と捉えるのは誤っている、としています。

さらに、スキナー氏が「中国人が白人でない」としていることで、同氏が本当に主張したいのは、文明でもイデオロギーでもなく、人種の違いなのだということを露呈している、ともこの論説は述べています。しかし、第2次世界大戦時に米国は非白人国の日本と戦争をしたことを思い返せば、これについても事実誤認だ、としています。

スキナー氏の発言が、「米国が、中国は人種的に異なる国という考えを軸にして外交政策を行う」ことを意味するもの、と理解されれば、中国は国際社会で人種差別を受けると当然考えるでしょう。そして、国際秩序は不公正であり、中国の居場所がなくなります。そのように考えたら、中国の強硬派はより過激な外交政策を行うようになる、と論説は強く批判しています。

また、米中対立を「文明の衝突」と捉える解釈は、「普遍的価値に基づいていると今まで説明してきた、米国の外交政策の基調を大きく損ねてしまう」との指摘も米国では出されたのです。

米通信社のブルームバーグの記事は、「米国の外交政策の基調である、民主主義的価値と人権は、西洋諸国に限るものではなく人類全体の普遍的な価値である、ということを米国は長く主張してきました。それは、権威主義的な政権を攻撃する際にしばしば用いられてきたレトリックです。例えば、冷戦下でのソ連を攻撃する際などです。しかし、スキナー氏の発言はそうした主張の正当性を突き崩してしまった」としています。

さらに、「このことは、中国が現在の政治体制維持を正当化する根拠を与えてしまう」とも、この記事は指摘しています。米国あるいは西洋社会が主張する民主主義的価値と人権は、西洋社会の概念であり、中国文明の伝統と比較することはできない、と中国は主張してきたのです。「文明の衝突」は、こうした中国の主張を助けるものとなり、米国が求める政治の民主化を拒む根拠を中国政府に与えてしまう、と指摘しています。

また、中国は長らく、世界を文明で東西2つに分けるべきだ、と主張してきたと言われます。そうして、共通の文明を持つアジアから異なる文明の米国は手を引き、中国にアジアを支配するように働きかけてきた、とも言われています。スキナー氏の発言は、そうした中国の志向や行動を正当化してしまうだろうというのです。また、中国が、アジアの他の国々を自らの影響下に取り込んでいくことを助けてしまう、とブルームバーグの記事は指摘しています。

世界は2つの文明に分けられるほど単純ではない

仮に、中国がそのような展望を抱いているとすれば、それは日本としても当然看過できないことです。他方、スキナー氏の発言にも、世界が東西の文明で2分されることを正当化する要素が含意されており、非常に危険であると言えるでしょう。

そうして、ここで思い出すべき重要なことがあります。それは、『文明の衝突』の文明の分類では、日本は中国の文化圏には入っておらず、日本は日本文化圏という範疇に収まっています。

著者のサミュエル・ハンティントン自身が、後に「最初は、日本も中国文明の大きな影響を受けているので、中国文明に入れようと考えたのだが、調べれば、調べるほど日本はユニークであり、日本は日本文明圏にあるとした」と述懐しています。

この点が米国では、すっかり忘れ去られています。スキナー氏の主張にもこれが出てこないし、ワシントン・ポストなどのメデイアの論調もそうでし、中国もそうです。日本文明があるにもかかわらず、世界が東西の文明で2分されることを正当化などとして、日本文明の存在を無視しています。中等やアフリカも無視しています。

なぜそうなのでしょうか。日米が現在は互いに重要な同盟国同士であり、現在では価値観を同じくしている部分が大きいので、遠慮しているという部分もあるかもしれません。

しかし「文明の衝突」という次元で過去の日米の戦いやその後の日米関係を論じていくと、米国にとっては不都合なことがかなり出てくるということもあるのではないでしょうか。それにしても、文明を東西2つに分類するのはあまりに乱暴です。

先日も述べたように、経済学の大家ドラッカー氏は、コミュニティの伝統と天皇制を含む独自の価値観を近代社会の成立に生かしたことこそ、他の非西欧諸国が近代化に失敗したなかにあって、日本だけが成功した原因だといいます。

ドラッカー氏

そのドラッカー氏は、マネジメントは、個人、コミュニティ、社会の価値、願望、伝統を生産的なものとしなければならないし、もしマネジメントが、それぞれの国に特有の文化を生かすことに成功しなければ、世界の真の発展は望みえないとしています。米国をはじめ、西欧諸国はこれを怠ってきた点は否めません。

そうして、先日もこのブログで述べた通り、ドラッカー氏は、世界は日本に学ばなければならないといいます。ドラッカー氏に言わせれば、今世界は、世界的な規模において、明治維新の必要に直面しているといいます。それは、中国も例外ではありません。いやむしろ中国こそ必要です。

そうして、実は米国など西欧諸国もそうなのだと思います。無論現代日本もそうです。

中国との対立においては、日本や欧米諸国が中国に一方的に要求をつきつけるだけではなく、中国への要求とともに、日米欧も明治維新に匹敵するような変革が必要なのです。ただし、もちろん現在行われている中国の人権侵害を容認しろなどとは言ってはいません。これは、ただちにやめるように中国に伝えるべきですし、それに対して制裁もすべきです。ただ、それだけで終わらせるなと言っているのです。

中国、欧米、日本の文明は、それぞれの文化の基礎となっています。各々の社会のコミュニティーの伝統と独自の価値観を活かす形で、新たな社会を構築しなおさなければならないのです。これをもって、中国に日本や西欧が迎合するというのではありません。中国に厳しい要求をつきつける一方で我々自身が変わることがなければ、「文明の衝突」は避けられないと言っているのです。

そうでなければ、中国と欧米の文明の衝突はこれから終わり見えない果てしない戦いになるでしょう。「文明の衝突」という考え方を忌避して、米中対立を短期的なものととらえ、短期的な戦略で米中対立を終わらせようとしても、終了しない可能性が大きいです。

先日このブログにも述べたように、楊 海英氏は、中国が変わるには、300年かかるとしています。実際「文明の衝突」を放置しておき、小手先だけの対中国制裁を繰り返せば、300年はかかるかもしれません。中国も頑なにこれに反発し続けてけば、疲弊していくだけです。世界も疲弊していくことになるでしょう。かといって中途半端にしていては、何も変わりません。短期で終わらせようとすれば、世界大戦しかないかもしれません。

しかし、そのようなことは絶対に回避すべきです。そうして、先日も述べたように、「文明の衝突」を避けるための大きなヒントがあるのです。それは、日本史の研究です。

コミュニティの伝統と天皇制を含む独自の価値観を近代社会の成立に生かした日本のあり方を、学ぶべきなのです。無論、日本もそれを当然とするのではなく、「文明の衝突」という観点から見直すべきです。

ドラッカー氏は日本について次のように語っています。
日本は、外国からの影響を自らの経験の一部とする。外国の影響のなかから自らの価値、信条、伝統、目的、関係を強化するものだけを抽出する。その結果は混合ではない。15世紀や18世紀の日本画が示すように、一体化である。これこそが、真に日本に固有の特性である。(『日本 成功の代償』)
ドラッカー氏は、日本は導入した文物を急速に消化し、改善するといいます。筆づかいの巧みさにおいて、15世紀の山水画家・雪舟に肩を並べる者は、中国にはほとんどいません。企業組織と経営技術において、日本の大商社に肩を並べうる企業も、欧米にはほとんどないとしてます。

その日本が、仏教と中国の文物が洪水となって入ってきた6世紀、世界に門戸を開いた19世紀を超えるスケールで、外の世界と一体化しつつあるとしています。

ドラッカー氏は、日本が今後とも、外国の非日本的な文化、行動、倫理、美意識を吸収し、日本的なものに変えていくことを期待するとしています。

歴史上、ほとんどあらゆる非西洋の国が、自らの西洋化を試みて失敗しました。ところが日本は、明治維新では、西洋化を試みませんでした。ドラッカー氏は「日本が行なったのは西洋の日本化だった」と言います。だから成功したのです。
私は、日本が歴史上繰り返し行ってきたことを再び行うよう望む。今日世界は、近代的であると同時に際立って非西洋的な文化を必要とする。世界は、ニューヨークまがいやロサンゼルスまがい、あるいはフランクフルトまがいの日本ではなく、日本的な日本を必要とする。(『日本 成功の代償』)
経営学大家であるドラッカー氏は、日本の明治維新を賞賛し、日本は全体的なコンセンサスがとれた場合は一夜にして変わることができるとしていました。

日本がどのようにして西洋文明に対処すべく明治維新においてコミュニティの伝統と天皇制を含む独自の価値観を近代社会の成立に活かすことができたのか、それも西欧の革命と比較すれば、はるかに犠牲が少なく、無血革命とでもいえる大イノベーション一夜にしてなしとげることができたのか、まずは私達自身が学び、中国等との対応に役立てていくべきです。

いずれにせよ、日本も欧米も、中国も、その他の文明圏の国々も、一方的に自分の価値観を押し付けるだけでは何も解決しないことだけは確かです。

2021年6月25日金曜日

宮内庁長官発言の波紋 天皇陛下の五輪受け止めに「開催が感染拡大につながらないか…ご心配であると『拝察』」 八木氏「表に出してはいけない言葉」 ―【私の論評】勅を捏造する者共は朝敵(゚д゚)!


東京五輪モニュメント

 宮内庁の西村泰彦長官が24日の定例会見で、コロナ禍での東京五輪・パラリンピックをめぐる天皇陛下の受け止めについて、「開催が感染拡大につながらないかご懸念されている、ご心配であると『拝察』しています」と述べたことが波紋を広げている。天皇陛下は憲法上、政治的発言ができないが、西村氏の発言がさまざまな影響力を及ぼしかねないからだ。

 「宮内庁長官自身の考え方を述べられたと承知している」「安全、安心な環境確保を最優先に、準備を着実に進めていきたい」

 加藤勝信官房長官は24日の記者会見で、こう語った。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長も同日、「国民、都民の不安がない安全、安心な大会を開催することが責務。その実現に向けて最善を尽くしたい」と述べた。ともに沈静化を図ったようだ。

 天皇陛下は、東京五輪・パラリンピックの名誉総裁に就任されており、それぞれの開会式で開会宣言をされる方向で調整が進められている。

 こうしたなかで、西村氏の発言が飛び出した。

 西村氏は会見で、「陛下から直接そういうお言葉を聞いたことはありません」「日々、陛下とお話しするなかで私が、肌感覚として受け止めているということです」「感染が拡大するような事態にならないよう、組織委員会をはじめ、関係機関が連携して感染防止に万全を期してほしい」と説明したが、ネット上では、五輪中止派が発言を「錦の御旗」のように取り上げている。

西村泰彦宮内庁長官

 西村氏は警視総監を務めた元警察官僚で、内閣危機管理監や宮内庁次長を経て、2019年に宮内庁長官に就任した。

 冷静で手堅い官僚というイメージだが、西村氏は4月、秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまの婚約内定相手、小室圭さんが、母親と元婚約者の男性との「金銭トラブル」について、代理人を通じて計28枚もの文書を発表した際、「非常に丁寧に説明されているという印象だ」と評価する発言をし、多くの国民は首をかしげた。

 今回の西村氏の発言をどうみるか。

 皇室事情に詳しい麗澤大学の八木秀次教授は「憲法上、天皇陛下は国民全体を超越してまとめられ、統合するお立場である。西村氏の発言は『皇室を代表した発言』と受け取られかねない。五輪を中止に追い込みたい人々は必ず政治利用するだろう。敵と味方をつくることにもなりかねない。これは陛下のお立場として望ましくない。『拝察』発言は表に出してはいけない言葉だったのではないか」と語っている。

【私の論評】勅を捏造する者共は朝敵(゚д゚)!

麻生太郎財務大臣は、以下のように発言しています。今回の出来事は、これに尽きます。

 これは、西村泰彦氏の単なる、自分の感想であつて、それ以下でも以上でもありません。

宮内庁長官が勝手に陛下の思いを拝察するわけがありません。拝察という言葉あったのかもしれませんが、それはまた別の意味で語っていた可能性もあります。

西村長官「天皇陛下が、五輪の開催が感染拡大に繋がらないかご懸念されている」としたあとで、「ただ陛下から直接そういうお言葉を聞いたことはありません。そこは誤解ないようにお願いします」等と語ったようですが、これは苦しいいいわけです。

「陛下は五輪開催を懸念しているはず。だから、陛下のご意向を無視するな。五輪中止しろ」とは、思い込みに立脚した詭弁であるだけでなく、天皇陛下の政治利用そのものです。

そもそも、西村泰彦氏の発言そのものの動画も、記録も存在しません。宮内庁のホームページを閲覧しても現時点では掲載されていません。マスコミは西村氏の発言を脚色し自分の都合良いようにつくりかえて、報道しているとしか思えません。

マスコミ・左翼は自分のイデオロギーのためなら何でも利用し、挙げ句の果に宮内庁長官の発言まで利用するという己のさもしさを恥じるべきです。

ただ、西村泰彦氏もなんらかの形で誤解を招くような発言をしたのかもしれません。そうだとすれば、とんでもないことです。結果として、勅を捏造したことになりかねません。そもそも、宮内庁とは、皇室が政治も含めて他の目的に利用されないように監視する機関であり、そこの長たるものがこのようなことをするは許されることではありません。

宮内庁庁舎

これが、政治利用されてしまえば、とんでもないことになることを西村泰彦氏は良く理解していないのかもしれません。

天皇発言の政治利用は現在でもかなり危険なことです。たとえば、終戦後のGHQ「何で日本兵はあんなに粛々と武装解除できたんだ考えられない」質問に対して、ある日本人が応えています。「承詔必謹、当然だです」。

十七条憲法 の中の第三条 に「承詔必謹」という条文があります。

これは、文字通り「詔(みことのり)を承れば必ず謹(つつし)めという意味です。そうして、十七条憲法自体、天皇(当時は大王)の名において出された勅です。

勅や詔は勅や詔でないと取り消しできません、そのため、十七条憲法は、終戦時はおろか現代でも有効なのです。なぜなら、現在にいたるまで、いずれの天皇もこれに対して廃止するとか、改変するとの勅を出していないからです。

十七条の憲法は『日本書紀』に記載がある

古来よりどのような戦であっても日本国内では朝敵になった方がほんんど負けます。それどころか、その軍勢に協力した勢力も朝敵になってしまいます。一度朝敵になってしまえば、天皇自らの「許し」の勅がでなければ、いつまでたっても、百年たとうが千年たとうが朝敵です。

それぐらい日本人にとては大事なのが天皇による勅や詔なのです。

政府が「コロナを蔓延させないために、自粛してください」といっても言うこと聞かない人もいまずが、実際にはあり得ないことですが、陛下が「自粛してむください」勅を下せばたいがいの人は従います。

そんなときに、フラフラ出歩けば朝敵になってしまうからです。誰でもなりたくないのです。そんな理屈もわからない馬鹿者も最近では大勢でてきてはいますが、まともな家系ではいまでもそうです。一度「朝敵」と天皇が勅を出してしまえば、その後天皇による勅許がない限り「朝敵」です。まともな家系の人々はそれを恐るのです。

これに関して、源頼朝「天皇に逆らう者、この日の本に居場所無し」と言いました。現在ではそこまでにはなりませんが、それにしても、天皇の朝敵という汚名は、代々続くことになります。

宮内庁長官が、意図的に勅を捏造したというというのなら、これは大罪です。世が世なら打ち首獄門不可避です。切腹もさせてもらえないでしょう。西村家は、閉門蟄居となるでしょう。

現在ではそのようなことはなくなりましたが、勅の捏造はそれだけ罪深いことであることを多くの人が肝に命ずるべきです。

ちなみに日教組が目の敵にして存在を消したい教育勅語も取り消しの勅はないので今でも有効です。

教育勅語にあるように、孝行しましょう、精進しましょう、努力して社会貢献しましょう、このような当たり前のことが書いてある「教育勅語」を目の敵にする精神が全くもってりかいできません。

教育勅語にある「万機公論に決すべし」も有効です。だとすれば、国会審議を度々拒否する野党も朝敵です。そうして、共産党は皇室打倒を堂々と党の方針に謳ってる隠してない公然の朝敵です。

今の日本では、朝敵なる言葉は死語に近いものがありますし、朝敵になるようなことをしたからといって、厳罰が下るということはありませんが、それにしても、天皇の存在をないがしろにする人が、この日本では長期間にわたって良い目をみることはないでしょう。

そういう人たちは、結局大金持ちになっても、多くの名誉を得ることができたとしても、精神的な安定は得られず、結果として不幸な人生を歩むことになると思います。

石平手記「天皇陛下は無私だからこそ無敵」―【私の論評】知っておくべき、これからも私達が天皇とともに歩み、「世界史の奇跡」を更新し続けるワケ(゚д゚)!

【主張】天皇誕生日 令和の「行幸」国民の力に―【私の論評】全体主義とは対局にある日本の天皇、天皇弥栄(゚д゚)!

2021年6月24日木曜日

米国の対中〝戦略的競争〟には戦略が足りない―【私の論評】米中対立は「文明の衝突」なのか?そうであれば、日本史の研究が米国の対中戦略立案に役立つ(゚д゚)!

米国の対中〝戦略的競争〟には戦略が足りない

岡崎研究所

 6月4日付のワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストでCNNの政治アナリストのジョシュ・ロウギンが、米政府の誰もが、中国との戦略的競争が米外交政策の最も重要な問題であることに合意しているようだが、この問題にどう対処すべきかについては合意が無いようである、と述べている。


 最近アメリカでは、米中関係について、香港情勢や新疆ウイグル地区での虐待などに関心が高まっている。米政府関係者の間でも、中国との戦略的競争が米外交政策の最も重要な問題であるとのコンセンサスができているようである。

 この背景にあるのが、戦略的競争で中国に押されているという危機感である。この危機感の内容としては、1)中国共産党は冷戦以来見られなかったような水準で、米国の知的財産権の盗用と米国におけるスパイ活動を行っている、2)中国の長期的な戦略的競争にいかに対処すべきかの議論はもっと早く始めるべきであった、3)議会は中国の挑戦に直接焦点を当てた法案を通すべきである、といったものがある。

 しかし、このような危機感の共有にもかかわらず、この問題にどう対処すべきかについては合意が無いようであるとの指摘がされている。ロウギンの論説はこの点を説明している。その一つが、議会に提案された「米国革新・競争法」であり、本来中国との戦略的競争にいかに対処すべきかが法案の趣旨であるべきところ、実際には半導体対策に焦点が当てられているという。確かに半導体は米国が最近中国に遅れをとっている戦略物資であり、大きな課題ではあるが、専ら半導体対策に重点が置かれ、その背景にある中国との戦略的競争にいかに対処すべきかについて重点が置かれていないのは問題である。米政府が中国との戦略的競争が米外交政策の最も重要な問題であると言っておきながら、それに対する政策を掘り下げて議論していないというのでは、危機感がどれほど深刻なものかを問わざるを得ない。

 ただ、中国との戦略的競争にいかに対処すべきであるかについて、米国内が機能不全に陥っているというのはいささか言い過ぎの感じがする。

 現に、ロウギンの論説でも触れられた「米国革新・競争法」(通称「エンドレス・フロンティア法案」)は、6月8日、米上院で、賛成68、反対32で可決された。丁度、バイデン大統領が、初の外遊としてG7サミットやNATO首脳会議のため訪欧に出発する前日である。同法案は、安全保障とも密接に関係する次世代通信網や半導体、AI(人工知能)等に、5年間で2500億ドル(約27兆円)という巨額の予算を投じることを可能とするものである。日本を含む同盟諸国との連携強化も視野に入れている。ロウギンは、この法案が下院に行くと骨抜きにされてしまうのではないかと懸念しているようであるが、そういう論説が出ることによって、下院での審議を後押しすることになるかもしれない。いずれにせよ、米国経済を強固なものにすることに反対する議員はいないだろうから、「米国革新・競争法」は、バイデン政権の政策を支える重要な法案として、いずれ成立するだろう。それは、超党派で一致している、中国の挑戦に対抗する手段の一つには成り得よう。

【私の論評】米中対立は「文明の衝突」なのか?そうであれば、日本史研究が米対中戦略立案に役立つ(゚д゚)!

米国の対中戦略はすでに、定められていようではありますが、著者が伏せられているなどて、あまり普及していないようです。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
習近平も青ざめる…中国共産党「内部崩壊」を指摘した“ヤバすぎる論文”の内容―【私の論評】日本は、アジアにおいて強い存在感を示し、対中政策に関しては米国を牽引していくくらいのリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!


これは、今年2月19日の記事です。 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事より一部を以下に引用します。
匿名の筆者が米国の対中戦略を提言した1本の報告書が、世界で大反響を巻き起こしている。米国は「中国共産党ではなく、党内で批判勢力との亀裂を深める習近平総書記に攻撃の的を絞るべきだ」と主張しているのだ。中国は当然、猛反発した。米国はどうするのか。
「より長い電報:米国の新たな対中戦略に向けて」と題された報告書は1月28日、米国の超党派シンクタンクである大西洋評議会から発表された(https://www.atlanticcouncil.org/content-series/atlantic-council-strategy-paper-series/the-longer-telegram/)。本文は85ページ。プロでなければ書けないような図表(別掲)と詳細な注釈付きだ。
この表題を見て、ピンときた読者も少なくないだろう。

このタイトルは米国の外交官、故・ジョージ・ケナンが1946年、国務省に送った「長い電報」から援用している。ケナンは電報でソ連に対する「封じ込め戦略」を提唱し、その後の米ソ冷戦を戦う外交政策の基礎を作った。今回の「より長い電報」は、米中新冷戦での対中戦略を提言している。

同じ論文の要約版も同日、米国の政治メディア「ポリティコ」に掲載された(https://www.politico.com/news/magazine/2021/01/28/china-foreign-policy-long-telegram-anonymous-463120)。こちらも匿名である。ただ、タイトルは「中国の台頭に対抗するために、米国は習氏に焦点を当てよ」と、より刺激的だ。

筆者は不明だが、ポリティコの紹介文によれば「中国問題を扱うのに、十分な専門性と経験を持つ元政府高官」とされている。実名を明かせば、外交サークルでは、だれもが知る人物かもしれない。現実の米中外交に悪影響を及ぼすのを懸念した可能性もある。
この報告書の内容に関して詳細は、この記事をご覧いただくものとして、ざっくり言いますと、習氏と不満分子との亀裂を深めて、習氏を権力の座から退場させる。そして、あわよくば、米国と良好な関係を築ける穏健な後継者の登場を促そう、としています。ターゲットは中国共産党ではなく。習氏その人なのです。

ジョージ・ケナンの論文は、当時「X論文」と呼ばれました、今回の著者不明のこの論文は米国内では「第2のX論文」とも呼ばれています。

この論文に関して、私自身は、キロン・スキャナー氏によるものではないかと推測しましたが、彼女の経歴などをみると、「大西洋評議会」に属していたこともなく、現在も関係はありません。おそらく、彼女ではないのでしょう。

そもそも、キロン・スキャナー氏は中国との対峙を、「文明の衝突」の観点から捉えています。この観点からとらえると、習近平が失脚して、他の指導者になったとしても中国は変わらないということになります。こうした主張をする彼女が、習近平個人を権力の座から落とす戦略を主張することはないと考えられます。

キロン・スキナー氏

この見方に関しては、いわゆるモンゴル人で現在日本人に帰化している人で主張している人もいます。それは、楊海英氏です。楊海英氏は、最近『中国の暴虐』という鼎談(櫻井よしこ (著), 楊逸 (著), 楊海英)の内容の書籍を出しています。

楊 海英(よう かいえい、ヤン・ハイイン、1964年(昭和39年)9月15日 - )は、内モンゴル(南モンゴル)出身の文化人類学、歴史人類学者。静岡大学人文社会科学部教授。モンゴル名はオーノス・チョクト、帰化後の日本名は大野旭(おおの あきら)。楊海英は中国名のペンネームです。

楊 逸(ヤン イー、本名:劉 莜(りゅう・ちょう、「ちょう」は草冠に「攸」)、1964年6月18日 - )は、日本の小説家です。中国ハルビン市出身。2008年、「時が滲む朝」で第139回芥川賞受賞。中国籍(当時)の作家として、また日本語以外の言語を母語とする作家として史上初めての受賞となりました。2012年ごろ、日本国籍を取得しています。

この内容については、この書籍、興味のある方は是非読んで頂くものとして、ざっくりいうと、中国共産党が崩壊しても中国は変わらないということが書かれています。なぜなら、中国の暴虐ぶりは、文化や、文明などによるものであるので、変わりようがないというのです。

たとえ中国共産党が倒れて、支配されている民族が独立しようとも、それは決して明るい未来を約束するものではないのです。モンゴル国、ウイグル国、チベット国などという国を立ちあげたところで、その国で各々の民族が考える民主的な政治を行えばどうなるでしょうか。すぐに多数派となった漢民族の思い通りの政治が行われるのです。その中でむしろ異民族は今よりもっと酷い形で弾圧され虐殺されかねないのです。

私たち日本人は中国共産党の独裁体制が崩れて、彼らが晴れて独立することがバラ色の最善の道である、と単純にそう思っていますが、実際には事はそんな単純なものではなく、よくよく考えてみれば、独立しても悲劇が待ち構えてることが容易に想像されるのであって、それはすでに遅きに失していると彼らは口を揃えています。

楊 海英氏は、この書籍を話題とした動画に出演しています。その動画を下に掲載します。


楊 海英自身は、現在の中国の暴虐性を文明によるものとは直接は言っていませんが、結局それを意味していることを語っています。中国が変わるには、300年かかるという言葉がそれを雄弁に物語っています。

楊 海英氏が語っていることが事実だとすれば、「第2のX論文」では中国を変えられないことになります。

やはり、キロン・スキャナー氏のように中国との対峙を、「文明の衝突」の観点から捉える必要があることになります。

トランプ政権のときの、米国務省のキロン・スキナー政策企画局長は、「中国を念頭に置いた『X書簡』のような、深遠で広範囲にまたがる対中取り組みを検討中」だとされていました。

私自身は、この試みは、トランプ政権終了後もスキナー氏などによって何らかの形で、継承されていていずれ公表されるのではないかと思っています。

深遠で広範囲にまたがる対中取り組みということばからも想像できるように、習近平を失脚させるというようなものではなく、かなり奥まで踏み込んだものであると考えられます。

これが、本当の意味での米国の中国戦略になる可能性もあります。

ただ、中国問題は習氏と不満分子との亀裂を深めて、習氏を権力の座から退場させ米国と良好な関係を築ける穏健な後継者を登場させることで解決するような単純なものではなく「文明の衝突」という観点から見るべきように思われる一方で、中国共産党の非常にわかり易い行動をみていると、それで中国問題が解決するようにも思えます。

この状況では、冒頭の記事での「中国との戦略的競争にいかに対処すべきであるかについて、米国内が機能不全に陥っている」とのジョシュ・ロウギンの見方は正しくもあり、間違いでもあるということになります。

こういう場合には、演繹的な手法と、帰納的な手法を組み合わせて考えていくしかないようにも思われます。前者は物事の原理を追求し、後者は事例から逆算するものです。

まずは、キロン・スキャナー氏のように米国と中国の対峙を「文明の衝突」という観点から見るために長期戦略を練ることです。これには、まだ時間を要することでしょう、何しろ考慮すべきこと、読むべき文献も膨大なものになります。今後少なくとも2年〜3年の時間を要すると思います。それでも、ようやっと原型が作れるだけかもしれません。

一方これとは、別にその時々で、「米国革新・競争法」などを実際に施行して、中国共産党がどのような反応をするのか、これ以外にも効果があるとみられる方法をいくつかやってみて、それに対して中国共産党がどのような反応をするかによって、中国共産党の真の姿をあぶり出していくのです。その中には、無論習近平の失脚も含む場合もありえると思います。

さらに、この帰納的手法によって得た結果を演繹的な手法で作成する戦略にフィードバックしていくのです。このフィードバックにより、米中対立が「文明の衝突」の次元か、そうではないかあるいはどれくらいの比重を占めるのかを見極めて、戦略が定まれば、その線でどんどん戦術を繰り出すようにするべきと思います。

このようなことが行われていないので、一抹の不安を感じたジョシュ・ロウギンが、米政府の誰もが、中国との戦略的競争が米外交政策の最も重要な問題であることに合意しているようだが、この問題にどう対処すべきかについては合意が無いようである、と述べたのでしょう。

実際、米中の対立が「文明の衝突」という深い次元のものであった場合、米国の繰り出す様座な戦術はあまり効果を上げることなく失敗することになり、それを予期していない場合は、泥沼化する可能性があります。

ただ、そもそも文明の衝突とは言っても、それはどの次元で衝突しているのか、それを特定できたとして、それをどのように回避するのか、あるいは、その部分は中国が従わざるを得ないようにするのか。

そのヒントは意外と身近なところにあります。それは、日本です。

経営学の大家ドラッカー氏は、マネジメントは、個人、コミュニティ、社会の価値、願望、伝統を生産的なものとしなければならないし、もしマネジメントが、それぞれの国に特有の文化を生かすことに成功しなければ、世界の真の発展は望みえないとしています。

ここでドラッカーは、世界は日本に学ばなければならないといいます。ドラッカーに言わせれば、今世界は、世界的な規模において、明治維新の必要に直面しているといいます。それは、中国も例外ではありません。いやむしろ中国こそ必要です。

ドラッカーは、コミュニティの伝統と天皇制を含む独自の価値観を近代社会の成立に生かしたことこそ、他の非西欧諸国が近代化に失敗したなかにあって、日本だけが成功(発展途上国から先進国になったということ)した原因だといいます。

このように考えると「文明の衝突」を回避することは相当難しいのです。米国が一方的に中国にすべてを変えることを要求してもうまくいきませんし、一方中国が頑なに何も変えないと言い張っても何もうまくはいきません。

中国は王朝がコロコロ変わる易姓革命を繰り返したため、天皇のような国家の中核存在を持つことができませんでした。維新の革命者が孫文のように共和主義を掲げ、天皇制を廃止していたならば、日本も中国と同じように、無秩序と混乱に陥っていたことでしょう。

中国の無秩序と混乱を終わらせるためには、多少の荒療治も必要でしょうが、それにしても無秩序な荒療治はかえて混乱を招くだけです。

スキナー氏のように「文明の衝突」の次元で、戦略を考える人は是非日本史を研究していただきたいものです。

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2021年6月23日水曜日

さまざまな憶測が…小池都知事の入院 都民ファースト都議選苦戦の分析 自公との関係修復、東京五輪後の国政復帰狙う?―【私の論評】国際金融センターのトップになり得る東京が、今熱い!小池氏はこのチャンスを活かせるのか(゚д゚)!

さまざまな憶測が…小池都知事の入院 都民ファースト都議選苦戦の分析 自公との関係修復、東京五輪後の国政復帰狙う?
東京五輪、21年7月開催へ


 東京都の小池百合子知事(68)が22日午後、都内の病院に検査入院した。過度の疲労で静養が必要になったとして、今週中は公務から離れるという。25日に都議選(7月4日投開票)の告示が迫り、年内には衆院選があり、東京五輪の開幕(7月23日)まで1カ月というタイミングだけに、さまざまな憶測が流れている。

 「すみません。声がかれていまして…。こんな声で、恐縮です」

 小池氏は22日、都庁で開かれた新型コロナウイルス対応に関する会合で、こうあいさつしたが、小さな声量で、途中息切れもしていた。

 コロナ対応に加え、東京五輪・パラリンピックの準備など公務が重なり、最近は週末も登庁機会が多かった。

 都庁関係者は「この数日間、体調は芳しくなく、かなり疲れがたまっていたようだ」と、夕刊フジの取材に語った。

 小池氏の代理は多羅尾(たらお)光睦副知事が務めるが、来週以降、小池氏が公務に復帰できるかは未定という。

 古くから、政治家の入院は、自身の権力基盤に影響し、政局にも発展してきた。小池氏にも「重病説」から「仮病説」まで流れている。注目されるのは、都議選への対応だ。

 小池氏は、都議会の最大会派である地域政党「都民ファーストの会」の特別顧問を務めている。同会の候補者からは応援依頼が殺到しているようだが、小池氏は態度を明らかにしておらず、動向が注目されていた。

 実は、永田町で出回っている都議選の情勢調査によると、4年前に大惨敗した自民党が復調し、立憲民主党や共産党も議席を伸ばす一方、都民ファーストは大苦戦すると分析されているのだ。

 小池氏が最近、自民党の二階俊博幹事長と頻繁に接触していることも、疑念を呼んでいる。

 永田町や都庁の関係者からは「小池氏は、都民ファーストとどう距離感を取るか、悩んで心労がたたったのでは」「都議選後の都政運営を見据えて、自民、公明両党との関係修復を模索しているのだろう」「公選法違反で議員辞職した菅原一秀前経産相の選挙区(衆院東京9区)は、小池氏のお膝元(東京10区)の隣。東京五輪後の国政復帰を狙っているのかもしれない」など、さまざまな声が聞かれた。

【私の論評】国際金融センターのトップになり得る東京が、今熱い!小池氏はこのチャンスを活かせるのか(゚д゚)!

小池知事は、昨日(6月22日)の会議で声がかすれていたということや、今週いっぱいの静養だということが発表されています。一方で19日に菅総理と公邸で会談をしていたということです。都議選の告示は25日に控えています。

小池知事は、政治家ですから、選挙は大事なはずです。都議選の告示が25日ですが、このときに表に出て来るのかどうかで選挙の趨勢は随分変わるでしょう。このままだと、無理なようではあります。

ただ、選挙の第一声というものはかなり注目されます。そこは政治家でしたら欠かせないはずです。

そもそも、政治家の方の健康情報は、トップシークレットだと言われます。普通は本人からは言わないですし、秘書にすら言わない人もいるくらいです。

であれば、小池知事の静養のこの発表は相当思い切ったものであるとも思えます。とすると、この発表は告示にギリギリ間に合わせたということかもしれません。

小池知事は、都知事選の一方で、コロナ対応にも尽力しなければなりません。東京都という大きな組織を動かすのは、様々な案件が挙がって来ますから、聞くだけでも時間がかかるでしよう。それに、小池知事は会見もしていますから、下から上がって来る情報は取捨選択して捌かなくては何もできないでしょう。

小池知事は過去には大臣も経験していますが、大きな組織を長い期間、そして緊急事態下で動かすというのは、そう滅多にあることではありません。

コロナ感染自体は有事ではないですか。長くやればストレスも溜まると思います。小池都知事の第一声がないかも知れないというなかで、都民ファーストは都議選を戦えるのでしょうか。

ただ、オリンピックの前でトップ不在ということになると、いろいろ支障も出て来ると考えられます。もちろん職務代行は立てているので執務自体はさほど問題はないでしょう。

執務よりは政治の方が問題になるでしょう。都議選での都民ファースト、分が悪いようです。

そうして、その原因の一つかもしれませんが、都民ファーストの都議選の公約には、整合性がないと思います。

東京五輪の開催にあたって、「国が有観客を強行開催するならば」と書いてあったのですが、昨日もこのブログにも述べたように、東京オリンピック「開催都市契約」によれば、国には主債権がないですから、そもそもこの公約が成り立たないです。この公約はあまり精査されたものではないと言う印象を受けました。


特に、➂は余計でした。ここに、ある程度大きな経済対策を盛り込むべきだったと思います。経済対策が「ワクチン」というだけでは、あまりに弱すぎです。本来ならば、都の予算は潤沢なのですから、何らかの大型経済対策を打ち出すべきでした。

特に、都の財政は地方自治体の中では、ダントツに潤沢です。東京都のバランスシートを見てみると、18年度では、資産34兆6265億円、負債6兆7486億円。資産負債差額27兆8779億円という「超健全」な財務状況です。

都財政に財政調整基金の1兆円の取り崩しが取りざたされていましたが、これは確かに「資産」の減少であるものの、1兆円くらい減少しても、健全財政はびくともしません。

この観点からいえば、地方債を発行して総額15兆円のコロナ対策を賄うと都知事選で公約を掲げた山本太郎氏の考えは、一理あったともいえます。

これだけ潤沢なら、昨年の時点でコロナ病床を増やしたり、医療従事者を増やすとか、休業補償をかなり手厚く実施するなど対策を実施しようとすれば、できたはずです。少なくとも、潤沢な財政で、資金に関しては心配せずに、存分に大鉈をふるえたはずです。

これを実行していれば、今頃嫌がおうでも、小池人気は再燃したかもしれません。

コロナ禍の現在、そうして収束後も経済対策は重要です。国に先駆けて、都も大々的に実施すべきです。

しかし、それがないために、都民ファーストの公約はかなり貧弱な魅力のないものになっています。

都議選における、各党の五輪に対する姿勢は、共産党は反対。立憲民主党は「延期または反対」と言っていますが、もう五輪は確実に始まってしまいます。

前回の都議選では、小池氏が陣頭指揮をとり緑旋風を起こし、そうして自民党の議席数が落ちましたが、今回は違うのではないかみられています。あのときは、自民が落ちて都民ファーストが伸びたのですが、それが今回ひっくり返りそうだという予想があります。

そういうときに都民ファーストの小池さんが表に十分に出ることができない。特に第一声がないということになると、都民ファーストは惨敗になるのではないでしょうか。

そうした中で、小池氏は国政に戻るという話も出ています。特に、自民党・党本部の二階幹事長と通じているのではないかということも言われています。

ここで、昨年の都知事選をふりかえっておきます。

自民党は、2019年3月、二階俊博幹事長が現職の小池百合子都知事に対して、「都知事選に出馬することになれば、全面的に協力する」と述べ、支持する考えを表明。2017年東京都議会議員選挙で小池率いる都民ファーストの会に惨敗した禍根の残る自民党東京都連は二階の発言に猛反発しました。

2019年6月に都連は候補者選考委員会を立ち上げ対立候補の擁立を模索しましたが、丸川珠代や松岡修造らに立候補を打診するも実現せず、さらに2020年3月には新型コロナウイルスの感染拡大により都連内でも主戦論が下火となりました。

その後、党本部は5月15日に正式に独自候補の擁立断念を決定。また、自民党と連立を組む公明党は、2020年1月に山口那津男代表が街頭演説で小池の再選支持を示唆しました。

自民党本部は小池からの要請があれば推薦する方向で調整していたものの、小池氏が6月12日に出馬表明した際に政党の推薦を求めない考えを示したため、同日に自主投票とすることを決定しました。

二階氏は「全力で小池氏を応援する」と述べ、小池を支援する意向を改めて示しました。また、自民党都連も同日、「候補者はいたが、勝てる候補者はいなかった」などとして独自候補の擁立を正式に断念しました。公明党も小池氏の意向を踏まえ推薦や支持を見送ったものの、16日には山口が実質的に支援する方針を示しました。都民ファーストの会も小池に対し党として推薦や支持を出さなかったのですが、代表の荒木千陽氏が小池陣営の選対本部長に就きました。

二階氏と、小池氏が通じているというのは、間違いないようですが、その二階氏が、昨日述べたように、衆院選後の秋には幹事長もお役御免になりそうな趨勢です。

もし、本当にお役御免になれば、二階氏と通じていたということは、小池氏の国政復帰にはかなりの打撃となります。

二階氏(左)と小池氏(右)

小池氏はもっと先を見て、公示のときには公に姿を表し、都民ファーストを応援する旨を明らかにし、都民ファーストの公約のうち、➂は削除して、そのかわりに大型コロナ対策予算をつけることを公言し、都議選においては都民ファーストを応援して、陣頭指揮をとるようにしたほうが良いのではないでしょうか。

そうすれば、都民ファーストは、勝つ見込みがでてきますし、小池氏も新たな旋風を起こせる機会がおとずれるかもしれません。➂削除で、東京五輪開催にも、全身全霊で取り組み、これを成功させるべきです。

そうして、実際に10兆円を超える経済対策を実施し、東京都の経済をいちはやく回復し、その余勢をかって、東京を香港に変わる国際金融都市にすることに取り組むべきと思います。

実際東京都は、アジアナンバーワンの国際金融都市としての地位を取り戻すために、「国際金融都市・東京」構想をまとめています。

出典:東京都政策企画局2015年「東京国際金融センター推進会議」資料より転載

ここでは、①魅力的なビジネス面、生活面の環境整備 ②東京市場に参加するプレーヤーの育成 ③金融による社会的課題解決への貢献、という3つの取り組みを中心に進められることが発表されました。

この一環として2019年4月には、官民連携で各種プロモーションを展開する組織「一般社団法人東京国際金融機構」(通称:FinCity.Tokyo)が設立されました。この機構にはメガバンクや大手証券会社、金融関連業界団体のほか、東京都も正会員として参加しています。

この構想を実現に移すのです。東京五輪の成功、経済のいち早い復活を背景に、東京の国際金融都市化はスムーズに進むと考えられます。

そもそも、自由のない香港、上海、シンガポールなどは、これからますます国際金融都市の地位を下げていくでしょう。

ロンドンは、ブレグジットにより、地位を下げることになります。となると、コロナ禍での五輪開催に成功し、経済復興も急速に進み、何よりも安全な東京が金融センターの事実上のトップとなる時がきたとしてもおかしくはありません。これは、日本復活の狼煙になる可能性が大です。もし、小池氏がそれに成功すれば、これは大成果です。

そうなれば、二階氏がどうなろうとも、小池氏には国政復帰の大チャンスがくるのは当然です。

無論、これには政府や日銀もまともな、財政政策や金融政策等を実行して、サポートしていく必要があります。これなしに、国際金融都市を維持発展させていくことはできません。万年デフレの国の首都が、国際金融都市になることはできません。その意味でも、小池氏の国政復帰の必然性が出てくることになります。

国政に復帰した場合、コロナ禍でのオリンピックを成功させ、その後東京を国際金融都市にした都知事として、国内はもとより、海外でも一目置かれることになるでしょう。英国のジョンソン首相は、ロンドンオリンピックのときにはロンドン市長でした。

五輪開催時のロンドン市長だったことは、その後ジョンソン氏が首相になる際にプラスに働いたと思いますが、コロナ禍での東京五輪開催とその成功、そうして、東京が世界一の国際金融都市になることができたとすれば、小池氏は日本国だけではない、世界中のその名を馳せることになります。

そうなれば、与党も小池氏を無下にすることはできません。初の女性首相への道も開けるかもしれません。そうならなくても、小池氏の名前は、歴史に刻まれることになります。これに挑戦せずに、近いうちに都知事を引退するとしたら、本当に愚かなことだと思います。

小池さんの前には、こうしたとてつもないチャンスが転がっているのですが、本人は気づいているでしょうか、いまのままだと、東京国際金融都市構想は他の人が実行することになりそうです。それどころか、二階氏とともに沈没ということにもなりかねません。

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2021年6月22日火曜日

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我が世の春を謳歌してきた二階氏だが・・・・・・

菅首相もナーバスに

 6月15日、立憲民主党など野党4党は衆議院に内閣不信任決議案を提出したが、与党は同日、衆院本会議でこれを否決した。ここ最近、「不信任決議案が出れば解散」と、首相の専権事項とされる解散権に踏み込んできた自民党の二階俊博幹事長には与党内で冷たい反応が少なくない。その他の不適切発言も含めて菅義偉首相自身がナーバスになっており、解散後には在職記録を更新し続ける幹事長職を追われるだろうという見方が強まっている。

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 二階氏は15日の定例会見で内閣不信任決議案について、「最終的に総理から粛々と否決したいというご判断がなされた。その意思を尊重し与党として結束して断固否決の対応をしてまいりたい」とし、衆院解散に関しては「最後は総理が決めることだが、解散はもうこの時期ですから常識的にはないでしょうね」と続けた。

 これまでの発言を駆け足で振り返っておこう。

 その1日前の14日には、菅首相との会談後、「解散を進言する、こういうことです。私が解散する訳ではない。解散を総理に進言、申し上げるということです」

 7日の記者会見では、「覚悟を持って不信任案を出される場合はどうぞ。直ちに解散します」

 1日の記者会見で、「いつでも解散に打って出て、国民の皆さんの本当の真意をおうかがいしながら、政治に真剣に取り組んでいきたいと考えているので、ただちに解散の決意はある」

 この際には緊急事態宣言中の選挙についても問われ、「周囲の意見をよく聞いた上で判断したい」と答えている。解散を判断する首相気取りの発言にも聞こえる。

五輪中止発言の余波

 少しさかのぼって、4月4日放送のBSテレ東の番組では、「(野党が内閣不信任決議案を)出してきたらすぐやる。(今国会の)会期末であろうが、どこであろうが国民に信を問おうじゃないか」

 そして3月29日の記者会見で、「自民党幹事長としてはそうした(内閣不信任案が提出された)場合に直ちに解散で立ち向かうべきだという風に(菅義偉首相に)進言をしたい」「解散覚悟のうえでそれぞれの党は意見を述べるべきだ」「不信任案を出してくる限りは与党は解散に打って出る覚悟を持っている」

 政治部デスクに聞くと、

「尋ねる方も答えが分かったうえで質問していますよね。そして幹事長は毎回、期待を裏切らず答えてくれる(笑)。見出しを取りやすいし、幹事長としても存在感を示せるという思惑があるからこういうやりとりになるんでしょう。ただ、解散権は首相の専権事項ですから、幹事長は答える立場にはないというのが永田町の常識です。二階さんといえども、党内では“やり過ぎ”“言い過ぎ”という声が上がっていました」

 これだけ解散だと言い続けてきたのに、単に不信任案否決ということになれば、幹事長に向けられる視線がさらに厳しいものとなりそうだが、

「その通りですね。ブラフ、脅しが利かなかったということですから求心力に影響することは間違い無いでしょう」

 二階幹事長からは、4月15日のCS番組の収録で、東京五輪について、こんな発言も飛び出していた。

「ぜひ成功させたいと思うが、そのために解決すべきテーマがたくさんある」「これ以上とても無理だということだったらこれはもうスパッとやめなきゃいけない」「(中止の選択肢について)それは当然だ」

二階派は実質的に武田派に

 再び先のデスクによると、

「解散に関する言及もさることながら、五輪中止発言には菅さんも憮然としていたようです。菅政権樹立のきっかけを作った自負がある二階さんとしてはある程度、踏み込んだ発言をしても問題ない、誰にも文句は言わせないという思いがあるようですが、菅さんがそれを面白く思うはずがありません」

 ここにきて、解散後を見据えた主導権争いが目に見えて活発になってきている。口火を切ったのは、麻生太郎財務相だった。

 「4月に行われた自派閥の政治資金パーティーで、“菅義偉首相を先頭に衆院選を戦っていかなければならない。われわれは中心的な役割を担っていきたい”と述べ、解散後に言及しています。それに呼応するように安倍前首相も、“当然、菅首相が継続して首相の職を続けるべきだ”とBS番組で述べ、9月に任期満了を迎える自民党総裁での続投が望ましいと表明しました。麻生さんは去年の総裁選で二階さんが『菅総裁』の流れを作って、そのまま幹事長職を続けていることに不満で、一方の安倍さんもそろそろ派閥のボスに就く流れで、となると幹事長ポストは手に入れたい。居座り続ける二階さんが邪魔なのは間違いありません」

 菅首相としては、この2人の首相経験者からの支持表明は渡りに船だ。別のデスクに聞くと、

 「菅さんは党内基盤が脆弱ですから、安定的な政権運営には派閥ボスとの良好な関係作りが欠かせません。二階さんは歴代最長だった田中角栄を超えて通算在職日数を更新し続けていて、菅さんとしても“そろそろ後身に身を譲って頂いて‥…”という思いがあるようです。解散後の議席次第ではありますが、菅さんがその後も政権運営を続けるとして、二階さんを留任させる可能性はあまりないと言われています」

 来る総選挙では、山口3区で、二階派ナンバー2の河村建夫元官房長官と参院からの鞍替えを目指す林芳正元文科相が激突する可能性が高く、「林さんが圧勝する」(同)と見られる。

「そうなれば、さらに二階さんの求心力に影響することは避けられません。加えて総選挙後は、二階派は実質的に武田良太総務相に引き継がれ、武田派になっていくようですから、二階さんが要職に就き、表立って発言を続けるのも秋頃までということになりそうです」

【私の論評】これ以上二階氏が幹事長を勤めることは、自民党にとっても良くないし、二階氏にとっても晩節を汚すだけ(゚д゚)!

週刊誌に掲載される政局関連のほとんどは、出鱈目なものが多いです。ただし、週刊誌の特性から、新聞やテレビでは取り上げることができないものも取り上げられることもあり、それが他のメディアに先駆けて真実を表している場合もあります。

読者としては、様々な情報、特にすでに発表された様々な事実などから、週刊誌の報道を読み取るべきです。鵜呑みにだけはすべきではありません。

それにしても、二階氏が昨日も掲載したように、投開票日が10月10日になりそうな秋の衆院選後の組閣で幹事長職を追われそうなことは、いかにもありそうなことです。

二階幹事長の年齢は82歳です、ちなみに麻生財務大臣兼副総理は80歳です。あまり年齢の差もないようにみえますが、この年代で2つの差は大きいですし、さらには個人差も相当あります。

二階幹事長の在任期間は、昨年9月8日時点で1498日となり、田中角栄・元総理大臣を抜いて歴代最長となりました。

自民党の二階幹事長は、自転車事故で大けがをして政界を引退した谷垣・前幹事長の後任として、6年前の平成28年8月に就任し、その後続投を続けています。

これにより、二階氏が政治の師と仰ぎ、幹事長を2度務めた田中角栄・元総理大臣の1497日を抜いて、歴代最長となったのです。

二階氏は、去年8月に連続の在任期間が歴代最長となったのに続き、通算でも最長となりました。

二階氏は、自民党の総裁任期の延長を主導するなどして、安倍総理大臣の政権運営を支えたほか、今回の総裁選挙では、安倍総理大臣の辞任表明の翌日に菅官房長官と会談し、いち早く、みずからが率いる二階派をあげて支持の方針を打ち出しました。

菅氏は、自民党総裁選前の昨年9月7日の記者会見で、二階氏について、「政策を実行していくためには、政府・与党が緊密に連携することが不可欠だ。幹事長が党内をしっかりと、取りまとめていただけるので、非常に頼りになる存在だ」と述べていました。

菅氏は、自民党総裁選に勝ち、自民党総裁となり、その後の役員人事で、二階氏が決まりました。

菅総理

このような二階氏ですが、幹事長としてはすでに焼きが回っているのではないかと思われるようなことが散見されます。

まず、直近ではなんといっても、二階氏を含む自民媚中三人組による対中非難決議の見送りでしょう。これは、他の野党も全部が賛成に回っていたものの、実質二階氏が見送りを決めています。

これは、昨年の米ピューリサーチセンターの調査により、86%もの日本人が中国を否定的に見ているという調査結果からもあきらかなように、国民の中国不審は明らかであり、二階氏のこの行動は、国民に対する裏切りであるともいえます。

そうして、多くの自民党議員も、中国を否定的に見ているのは確実であり、にもかかわらず、二階氏の対中非難決議の見送りを独断で決めたことに、自民党内からも大きな不満が出るのは当然のことです。それよりも何よりも現状の世界情勢をみれば、対中非難決議案を見送ることなどできないのは自明のことです。二階氏は、世界情勢、特に中国情勢を客観的に見ることはできないようです。

さらに、解散についての言及も完璧にまずいというか、あまりにお粗末です。先日もこのブログにも掲載したように、内閣支持率とコロナ感染率には明確な負の相関があります(下グラフ参照)。


相関係数が▲0.85なのですから、これは確実に負の相関関係にあるとみて間違いありません。現在ワクチンの接種率も上がっており、徐々に内閣支持率もあがりつつある状態にあります。ただ、まだ低い状態にあるのは間違いないです。

これが、9月にもなれば、かなり新規感染者数は減り、内閣支持率が上がることが見込めます。このときに、オリパラがさしたる混乱もなく終わっていれば、ますます追い風となっていることでしょう。それを現時点で、選挙となれば、支持率がかなり低いので、与党が負ける可能性も高いです。

それに、今月行われた党首討論で、菅総理は枝野立憲民主党代表に言質をとられず、解散総選挙を言い出すことはありませんでした。これをもって、党首討論は、菅総理の大勝利だったといえます。言質を取れなかった枝野氏は敗北です。これをみても、菅総理は直近で解散総選挙をするつもりが全くないことがわかります。

しかしその後の内閣不信任案においては、二階氏は不信任案が出されれば、解散などということを平然と語っています。これでは、票読みもできないといわれても致し方ありません。

さらに、五輪中止に言及するということもあり得ないことです。そもそも、開催の決定権はIOCにあります。それは、東京都とIOCが結ぶ「開催都市契約」でも明らかです。

開催都市契約の条文によれば、開会中止の権限は東京都や日本政府ではなくIOCのみが持つことになる。こうした内容から、開催都市契約を「不平等条約」と揶揄する声もあるくらいです。

また、中止を判断する場合は戦争状態や内乱など、IOCが「参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠」がある場合とされています。

加えて、中止となった場合に生じる金銭的な賠償責任も日本側に不利な内容です。

IOCが中止判断を下した場合、東京都・JOC・東京大会の組織委員会は「いかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかなる種類の救済に対する請求および権利を放棄」し、中止した場合に生じた「第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする」と記されています。

    東京オリンピック・パラリンピック大会の開催都市契約の署名。ジャック・
    ロゲIOC会長、猪瀬直樹都知事(当時)、竹田恒和JOC会長(いずれも当時)
    らのサインがある



第9条には「IOCに対する請求の補償と権利放棄」の項目があります。大会中止を含むトラブルが生じた場合、IOCやスポンサー、米NBCなどのメディアといった第三者への損害賠償を含む補償を日本側が支払う可能性があります。IOCの最大の収入源である放映権をめぐっては、2032年までの五輪・パラリンピックの夏・冬6大会の放映権料を米NBCが76億5000万ドルで購入しています。

軽々しく、五輪中止に言及する二階氏は、もう焼きが回ったと言わざるを得ません。いくら、党内調整に長けているとはいっても、現下で媚中をやめない頑迷固陋さや、票読みができない、重要な条約の意味も理解できないようでは、誤った党内調整しかできません。最低でもこれくらいできないと、幹事長など勤まりません。

以上のようなことからも、冒頭の新潮デイリーの「二階さんが要職に就き、表立って発言を続けるのも秋頃まで」という記事の結論は大いにありそうですし、自民党はそうすべきです。

これ以上二階氏が幹事長を勤めることは、自民党にとっても良くないし、二階氏にとっては晩節を汚すだけになります。

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2021年6月21日月曜日

台湾・ベトナムから始まる日本版ワクチン外交の勝算―【私の論評】年内に一部野党・マスコミは自滅!選挙とワクチン外交で大勝利を収める菅内閣(゚д゚)!

台湾・ベトナムから始まる日本版ワクチン外交の勝算

セバスチャン・ストランジオ

台湾向けのコロナワクチンの輸送機への積み込作業(成田空港、6月4日)

<ワクチン不足にあえぐASEAN諸国への援助を決めた日本政府がCOVAXなどの国際機関の枠組みを経由しなかったのは、手続きに時間がかかるから──だけではない>

ベトナムの首都ハノイに6月16日夜、約100万回分のアストラゼネカ社製新型コロナワクチンが到着した。ワクチン不足に悩むベトナムに対する日本政府の贈り物だ。茂木敏充外相はその前日の会見で、他のASEAN諸国にも7月からワクチンの無償提供を開始すると発表した。

「(ASEAN諸国の)感染状況やワクチン不足、日本との関係等々を総合的に勘案して」決定したと、茂木は記者団に語った。また、今回の無償提供はWHO(世界保健機関)のCOVAXなどの国際機関の枠組みを経由せず、直接の2国間援助という形で行われると述べ、その理由として国際機関を通すと「承認取得等の手続きに若干時間がかかる」ためだと説明した。

ベトナムは2020年に新型コロナの封じ込めに成功して国際的に高く評価されたが、今年4月以降感染が拡大している。6月19日の時点で感染者数1万2508人、死者は62人。ベトナム保健当局はインドとイギリスでそれぞれ確認された変異株(デルタ株、アルファ株)の特徴が組み合わさったハイブリッド株を検出したと報告している。

日本からベトナムへのワクチン提供は6月初め、感染が急拡大した台湾に送ったアストラゼネカ製ワクチン124万回分に続くもの。茂木はインドネシア、タイ、フィリピン、マレーシアにも7月から同様の無償提供を検討していると述べた(ワクチンの量などの詳細は明かさなかった)。

日本はアストラゼネカ製ワクチンを1億2000万回分確保しており、そのうち9000万回分は国内で生産されることになっている。ただし、日本の厚生労働省は副反応への懸念から、国内での接種を保留している。

今回の日本の無償提供を、中国の「ワクチン外交」と切り離して考えることは難しい。中国政府はパンデミック(世界的大流行)の発生当初から、新型コロナの抑え込みとパンデミックからの経済回復を目指すASEAN諸国の重要なパートナーとして自国を売り込んできた。

中国はASEANの全ての国に、大量の自国製ワクチンを有償または無償で提供している。現在、ASEAN諸国で国民の半数以上にワクチンが接種できる見込みなのはシンガポールだけだ。もともと中国への警戒心が強いベトナムも、感染拡大を受けて中国医薬集団(シノファーム)製ワクチンを承認した。

日本がCOVAXの枠組みを通さないワクチン提供を選択した本当の理由は、おそらく戦略的な利点が最も大きい国や地域にワクチンを送りたいからだろう。WHOに加盟していない台湾にワクチンを提供できる点はさらに重要だ。

ASEAN諸国への日本のワクチン提供が実現すれば、長年日本企業が製造拠点を置いてきたこの地域で重要な外交的パートナーシップを強化するのに役立つだろう。多くのASEAN諸国は中国の勢力拡大と海洋進出に対する懸念を日本と共有している。

日本は近年、ハノイからミンダナオ島までのASEAN域内各地で高速道路、橋梁、地下鉄、かんがい網、送電線などの建設を手掛け、中国が「一帯一路」構想の下で進める融資付きインフラ開発に代わる有力な選択肢を提供できることを証明してきた。

国内でのワクチン接種が十分に進めば、日本には新型コロナ対策についてASEAN諸国でも同様のことができるだけの資金力と緊密な関係がある。

From thediplomat.com

【私の論評】年内に一部野党・マスコミは自滅!選挙とワクチン外交で大勝利を収める菅内閣(゚д゚)!

政府は、6月4日、まず台湾に124万回分を提供しました。さらにベトナムにも、提供しました。


日本政府がベトナムに無償供与した新型コロナウイルスのワクチン約100万回分が6月16日夜、ハノイのノイバイ空港に到着しました。日本で製造された英国アストラゼネカのワクチンで、グエン・タイン・ロン保健相によると、17日朝にホーチミン市に輸送され、南部地域での接種に活用されるといいます。

ベトナム政府は2021年内に人口の75%ほどが2回の接種を完了できるよう、1億5,000万回分のワクチン調達を目指しており、ワクチン基金を立ち上げるなど奔走しています(2021年6月11日記事参照)

累計接種回数は16日までに約177万回で、人口に対する接種割合は1%台とみられ、2回の接種を完了した人は約7万人、人口の0.1%以下にとどまっています。医療従事者をはじめ、軍・公安関係者、教員、高齢者などを対象に優先的に接種されており(2021年2月25日記事参照)、5月以降は感染地域を中心に工業団地の労働者への接種も進んでいます。

ベトナムは感染の抑え込みに成果を上げてきたが、2021年4月末に発生した第4波により、北部のバクザン省やバクニン省、南部ホーチミン市を中心に感染が拡大している(2021年5月25日記事参照)。ベトナムの累計感染者数は6月17日午前時点で約1万1,700人ですが、そのうち第4波による感染者が7割以上を占めます。

日本からのワクチン供与について、ファム・ミン・チン首相は6月15日、山田滝雄駐ベトナム大使と会談した。山田大使は、今回のワクチン供与は日本とベトナムの深い友情の証しと強調しました。

また、在ベトナム日系企業36社がワクチン基金に392億ドン(約1億9,600万円、1ドン=約0.005円)を寄付しており、今後も寄付額は増えるとの見解を示しました。チン首相は、日本の支援に対し、ベトナム政府と国民を代表して謝意を表明した。また、今後の日本との連携について、ワクチン生産技術の移転支援のほか、ベトナム産果物の日本への輸出促進、日本在留ベトナム人への支援など、さらなる協力を求めました。

タイのアヌティン保健相は21日、日本政府が英アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンをタイに寄付すると発表しました。

24日に合意文書に調印し、7月前後にワクチンが到着する予定といいます。数量は明らかにしていません。

タイは今月、大規模なワクチン接種を開始。国王の所有する企業が国内で製造するアストラゼネカのワクチンに大きく依存していますが、一部で遅れが生じており、台湾、マレーシア、フィリピンにも影響が出ています。

タイでは、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンも利用されており、一部は中国から寄付を受けています。

人口約6600万人のうち、ワクチン接種を完了したのは210万人です。

日本の自衛隊のワクチン接種東京会場では、予約がなかなか埋まらなくなっています。多くの人が不思議だというが、これはワクチンが確実余ってくることを示しているようです。余って予約が埋まらなれば、若者に打てば良いし、場合によっては接種券がなくても本人確認書類だけで打っても良いでしょう。

自衛隊のワクチン接種東京会場

日本には、ワクチン嫌いの人も多数いて、「コロナワクチンに関する意識調査」(リーディングテック)によれば、62.8%の人は接種を希望しているのですが、37.3%の人は希望しないとなっています。

海外でも、人口の6割に達したイスラエルは新規の接種数が激減しています。米英もそうです。未成年は接種しないので全人口に対する比率は6割でも成人人口に対する比率は8割にものぼります。

日本はファイザー7200万人分、モデルナ2500万人分、アストラゼネカ6,000万人分、95%の有効率があるファイザーとモデルナで9700万人分を確保しています。日本の18歳以上人口は1億756万人、8割の人がするとすれば8600万人分のワクチンがあればよい計算です。5%を無駄にしても9,215万人(9,700×0.95)に打てます。

ごくわずかですが血栓のできる可能性があり、有効率が7割と言われているアストラゼネカのワクチンはもう余ることが分かっています。アストラゼネカのワクチンは、イギリスや大陸欧州諸国、韓国など71か国で接種していますから、さほどの問題はないでしょう。ちなみに、ファイザー社製は72か国で接種しています。

このような状況のなか政府は、6月4日、まず台湾に124万回分を提供しました。この日は天安門事件があった日です。これは、明らか日本政府が意図して意識して提供したのでしょう。これは、台湾人も理解しているでしょうし、中国人も理解しているでしょう。

これは、明らかに日本政府の「政治的メッセージ」です。それとなく、中国のワクチン外交に対抗する意思をしめしたものです。日本今後さらにマレーシアにも供与するとのことです。年末にかけて、日本のワクチン外交は着々と進められることになります。

そうしてこれはまた、中国のワクチン外交も今年までだ、ということを意味しています。おそらく多くの人は、中国のワクチンよりアストラゼネカのワクチンを打ちたいと考えるでしょう。アストラゼネカのワクチンは日本で製造しています。

ライセンス料さえ払えばいくらでも製造することができるでしょう。ファイザーもモデルナも、高く売れる先進国に売った後は、安くても途上国にたくさん売りたいはずです。日本のこうした動きを歓迎することでしょう。

中国がワクチンを海外に配布できることが、共産主義体制の勝利を示すものだという中国の自己宣伝を信じる人が日本にもいることは残念ですが、仮に勝利であるとしても、それは短期的なものにすぎません。1年で自由主義体制下の製薬企業が大量生産でます。

中進国以上の国々は自分で購入して、貧しい国は日本を含む先進国が援助すればよいのです。ファイザーとモデルナの95%の有効率という、感染症学者にも思いもよらないほどの高い効果を持つメッセンジャーRNAワクチンを発明し大量供給できることこそ、短期的に旗色が悪くなることはあっても、長期的には(といってもせいぜい1年以下の遅れに過ぎないのですが)、人々の自由な試みを賞讃する自由主義体制が勝利することの実例になることでしょう。

その中でも、日本はアジアの中で大きな役割を果たすことになります。以下に、現在の日本のコロナの状況などを確認するために、高橋洋一氏が作成したグラフ(本人のTwitterに掲載)を以下に掲載します。



新規感染者数と内閣支持率の関係は、相関係数がマイナ▲0.85ということで、負の相関が高いです。これは、当然といえば、当然です、感染症が蔓延しているときには、国民は政府に対して効果のある感染症対策を求めるからです。

100万人あたりの、新規感染者数は元々他国に比較すると桁違いに低いですが、今後ワクチンの接種がすすめば、もともと「さざ波」だったものが,9月あたりには「なぎ」になるのは確実でしょう。

ワクチン接種回数は、予測より大幅に進み、もうすでにイギリスを除く他国と遜色がないくらいまでになっています。これだと、五輪・パラもさしたる混乱もなく、他の世界大会などと同様に終了することでしょう。

これを成功させれば、世界中の人々の間に長く記憶に残る祭典になります。まさに、私達日本人が、人類がパンデミックに打ち勝てることを示す新たな世界史の1ページを綴ることになるのです。日本の威信は嫌が追うでも高まることになります。

このままの勢いだと、9月あたりには、誰の目からみても、コロナが収拾する日は近いとわかる程度にまで、感染者数が少なくなります。そうして、内閣支持率もかなり上がります。

これを見計らい菅総理は昨日も示したように、9月28日公示、10月10日投開票のスケジュールで、補正予算の可決、衆院解散を行うでしょう。

そうして、おそらく余程のことがない限り、菅政権はこれに勝利することでしょう。

この時点で、マスコミ・一部野党は、お通夜状態になるでしょう。

大好物のパンケーキを満面の笑顔で食する菅総理

そうして、さらに年末にかけて経済が回復するとともに、内閣支持率はさらに上がるでしょう。さらに、年末にかけて、日本のワクチン外交は続き、多くの国々から感謝されることになるでしょう。

菅内閣は、外交はあまり良くないようなことが言われていましたが、これは完全に払拭され、菅外交も、安倍外交と同様に高く評価されることになるでしょう。

年内に倒閣命の一部野党・マスコミは自滅することになるかもしれません。コロナ収束にともない、テレビ視聴率、新聞購読率はさらに激減するでしょう。一部野党は、倒閣のための決め手になる材料に乏しくなります。中国対応や改憲等に関しては、自民党も攻めどころが満載なのですが、なぜか野党をここを突きません。

ただ、国民はそのようなことにはほとんど関心を持たないでしょう。コロナでできなかったことに挑戦し始め、過去にはさほど有り難みもあまり感じなかったような些細なことにまで、幸福を感じるようになるでしょう。当たり前と思っていたことが、当たり前でないことに気づくようになるでしょう。いつもネガティブなマスコミ報道や、野党の倒閣運動は見向きもされなくなるかもしれません。それが、さらに内閣支持率を上げることになるかもしれません。

ただ、好事魔多しという言葉にもあるように、菅政権も浮かれてばかりいては、何が起こるのかわかったものてはありません。選挙後には、党内の問題を改善したり、中国対応や憲法問題に真摯に取り組み、勝って兜の緒を締めるべきです。

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2021年6月20日日曜日

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「3A」VS二階幹事長 自民党「抗争の歴史」に新たな1ページを刻むのか

中山知子の取材備忘録

自民党二階俊博幹事長(右)の議連設立総会であいさつする安倍晋三前首相

「3A」といえば、米メジャーリーグ傘下の組織。この言葉が最近、スポーツ紙ではなく一般紙や報道番組でひんぱんに登場する。安倍政権時代から盟友の安倍晋三前首相、麻生太郎財務相、甘利明税調会長3人の名前の頭文字だ。3人は最近、自民党で次々に立ち上がる議員連盟の中心メンバーで、活動を活発化させる安倍氏が複数で最高顧問などに就任している。安倍政権時代から党の人事とカネを握り、まもなく5年になる二階俊博幹事長のポストに狙いを定めた「人事抗争」「主導権争い」ではとの見方がある。3Aは現在の日本で、緊張感あふれる話題のキーワードだ。

そんな3Aのメンバーと二階氏が交錯する会合が、15日に自民党本部で行われた。二階氏が会長を務める「自由で開かれたインド太平洋」推進議連で、安倍氏の最高顧問就任も発表された。約130人の議員のほか、大勢のメディアで8階の会議室は満杯に。安倍、二階両氏は第2次安倍政権後半、二階氏の幹事長続投をめぐる攻防が報じられた間柄だが、また当時の雰囲気が再燃しつつある。

安倍氏は冒頭「マスコミの皆さんもたくさんおられる」と会場を見回しながら「いろんな顧問を引き受けているが、この会こそ引き受けたいと思った」と、横に座る二階氏を見ながら思わせぶりに語った。「政治家はあきらめない、しつこくということが大切」と話すと、拍手が起きた。その前にあいさつした二階氏のぼそぼそとした口調とは対照的に、冗舌だった。

会の始まりは午後5時、8階の会議室。30分後、1階下にある7階のやや小さめの会議室で、3Aの1人、甘利氏が会長を務め、安倍氏が最高顧問を務める「半導体戦略推進議連」の勉強会が開会。当初、二階氏の議連と開始時間が同じで「二階氏と3Aが全面対決か」と騒動になり、甘利氏側が時間をずらした。会が始まってしばらくすると、二階氏の懐刀、林幹雄幹事長代理が8階から移動。甘利氏は「これが、この議連の趣旨です」と“融和”を強調したが、額面通りに受け取った人はどれほどいただろう。義理は果たしたとばかりに、林氏はその後、また8階に戻った。

自民党の歴史には、大小含めてさまざまな権力闘争があった。「角福戦争」「四十日抗争」など、今も語り継がれる熾烈(しれつ)な戦いも少なくない。近年の安倍1強時代は安倍氏にものをいえる人がおらず、深刻な党内のもめごとはほとんどなかった。ただ今回は、前首相や前首相の盟友コンビ、こわもて現職幹事長が当事者。まぎれもない権力闘争にみえる。

二階議連では、3A、二階氏双方に軸足を置く格好となっている安倍氏が1人、元気だった。首相を辞め自由に発言する機会が増える中、「周囲が安倍氏の活動を支援するため」ともいわれるほどの議員連盟乱立で、最高顧問などの立場で前面に登場する。二階議連翌日の16日は「国民皆歯科検診」実現を目指す新たな議連が立ち上がり、ここにも参加。17日は二階氏が発起人の自治会や町内会を支援する議連でも、最高顧問として参加している。

首相時代と違ってよほどのテーマでよほどの失言でもしない限り、明確な責任は生じないかもしれない。一方で「3A」の1人として物事を動かす可能性がある立場=キャスティングボーダーになっているように見える。前首相ながら、生々しい権力抗争のさなかにいるのだ。

対立や分裂を繰り返す野党とは異なり、数の力の意味を知る自民党は最終的にはまとまるのが文化だ。ただ3Aと二階氏の動きは、自民党総裁選や衆院解散・総選挙が行われる今年秋に向けて、新しい政局的な流れを生むかもしれない。永田町に長年勤めるベテランは、最近の動きをこう評した。「抗争こそ、自民党ですからね」

【私の論評】マスコミ・野党も9月にはお通夜状態、10月10日の選挙に向け与党は一丸となって戦い勝利し党内バトルはその後に(゚д゚)!

上の記事にもある"「3A」VS二階幹事長"の抗争は、いかにもありそうなシナリオです。しかし、それ以前に自民党がしておくべきことがあります。それは、無論次の衆院選挙での勝利です。この抗争は、この勝利が前提です。敗北すれば、抗争どころではなくなります。

自民党の議員は、この抗争の前にまずは選挙で勝たなければならないです。そのため、選挙でも数の力の意味を知る自民党は最終的にまとまるでしょう。

そうして、永田町においてはすでに選挙のシナリオはまとまっているとみるべきです。五輪パラ直後に臨時国会を開催し、補正予算を上げてから、解散。10月10日投開票はもうすでに、永田町の常識になっているようです。10月3日は補正をあげられないし、仏滅だからあり得ないです。仏滅投開票は戦後26回のうち2回しかないのです。これは選ばないのが常識ともいえます。


立憲民主党が不信任決議案を提出しましたが、これは誰もが予想したように、否認されました。「不信任決議案が提出されたら解散する」とを二階幹事長が語っていましたが、そういうハプニングは結局起きませんでした。

おそらく10月の可能性が高いからこそ、枝野氏もタイミング的にあの時期に言わないと不信任決議案を言うタイミングがなくなると考えていたのでしょう。そもそも10月の選挙が濃厚になって来たからこそ、安心して不信任案を出せたともいえます。

 10月10日投票日というのは、スケジュール的に与党にとってはかなり良いのです。パラリンピックが終わるのが9月5日です。その後すぐに臨時国会を召集して、補正予算を通すことになるでしょう。ちなみに、補正予算は1週間~10日くらいかかるのです。それを見ると、9月28日告示、10月10日投開票というスケジュールが見えてきます。

9月28日は大安で、10月10日は先勝です。おそらくこれ以外に考えられません。 このスケジュールの唯一の難点は9月30日に自民党総裁の任期が切れてしまうので、手続きをどうするだけです。

しかし、この手続は1週間~10日くらいですから、暫定的に総裁の任期を延ばせば良いだけです。そうすると、この日程しかないとおのずからスケジュールが決まってきます。

枝野氏も今言わないと言うチャンスがないし、いま言ったら安心して否決されるというパターンでした。 9日には党首討論がありましたが、枝野氏は菅総理の解散総選挙の言質をとることができませんでした。

党首討論

その後菅総理はG7サミットに参加。そこから帰って来ると、もう国会開催中の14・15・16日の3日間にしか内閣不信任案を提出できませんでした。だから15 日に不信任案を提出して、否決してそれでおしまいになりました。 

それで少なくとも枝野氏を含めてすべての人の面子が立ちました。 二階さんも、解散発言について再度問われたとしても「当然、解散総選挙は総理の権限ですから」と言うわけですからといえば面子が立ちます。

問題は、投票日に新型コロナウイルスの感染状況がどうなっているかですが、ワクチン接種をすると、当然のことながら感染率は下がります。実際問題、東京の6月8日ですら、感染者数は369人です。100万人あたり27人という数字ですから、そもそもかなり低いのです。

現在でも予想通り下がっています。ワクチンを打っても、次の波が来ると言う専門家がいるのですが、波がかき消されてしまうというレベルなのです。下げ止まりという人もいますが、元々かなり低いので、いっとき下げ止まりしているように見えるだけです。そのため、このまま徐々下がって行きます。ワクチン接種の効果が効いて、10月くらいになると、接種率は4割ほどになります。そうすると集団免疫に近くなります。

そうなると誰の目に見ても、専門家になど頼らなくても、明らかに近いうちにコロナが収束する時期が見えてきます。

新型コロナウイルス感染症対策分科会が、感染数理モデル等を政府で使ってもらうためには、まずは予測をある程度当てないと信用されません。そのため、初めはパラメータを広く取り一定幅で説明し予測を当てて、次第にパラメータを狭めて予測の精度を高めるなどして、信頼を得る必要があったのですが、結局分科会はそれが出来ませんでした。

感染症対策で政治で求められているのはとにかく先が、正確無比でなくても良いので、ある程度予測出来ることです。新型コロナは当初は未知の現象なので、先が読めない中、政府が専門家に頼るのは先を読むためです。そのため、予測を外したり、結果を後講釈するだけの自称専門家は必要ないのです。

新型コロナウイルス感染症対策分科会御身会長

分科会は、エビデンスなしで、いろいろなことを言い過ぎたので、結局は政府からは、専門家扱いされなかったのでしょう。

現状では分科会が大きな影響を与えているようにもみえますが、それはマスコミがそのような扱いをするのでそう見えるだけです。本来助言者の役割を担う分科会が大きな影響力などありませんし、あったとすれば、そちらのほうが大問題です。コロナ対策の最終責任を負うのは、選挙によって選ばれた議員が構成する政府であり、分科会は元々責任などとれません。

五輪・パラも結局さしたる混乱もなく終了し、8月〜9月頃には、分科会が何を言おうと、コロナ収束が近いことは誰の目にもあきらかになり、分科会の見解など、選挙や政局等には何の影響もなくなります。マスコミ、野党も政府をつつける材料が何もなくなり、お通夜状態になるでしょう。本当は対中非難決議見送りなどを批判材料とすれば、かなりの盛り上がりをみせるでしようが、彼らは中国共産党が怖くてそれもできません。

そうして、対立や分裂を繰り返す野党とは異なり、数の力の意味を知る自民党は、一丸となって選挙に勝ち抜き、公明党もこの動きに呼応し選挙戦を戦うことになります。"「3A」VS二階幹事長"の抗争などはその後になります。選挙が終わるまでは、対中非難決議見送りの元凶となった二階氏等の媚中三人組への党内での批判も選挙に大きな支障が出ない限り選挙後になるでしょう。自民党総裁選びの大バトルも無論選挙後になります。

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