2023年7月28日金曜日

第2四半期の独GDP、前期比横ばい 予想下回る―【私の論評】岸田首相は、人の話を聞くだけではなく、ドイツをはじめとするEU諸国の失敗から学ぶべき(゚д゚)!

第2四半期の独GDP、前期比横ばい 予想下回る

景気が低迷するドイツ AI生成画像

 ドイツ連邦統計庁が28日発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)速報値は前期比(季節調整後)で横ばいとなった。

 第1・四半期のGDPは0.3%減から0.1%減に、昨年第4・四半期のGDPは0.5%減から0.4%減に修正された。冬季に緩やかな景気後退に陥ったことになる。

 家計消費は冬季の低迷から第2・四半期に安定を取り戻した。

 第2・四半期のGDPは前年比(物価・日数調整後)で0.2%減だった。

 INGのマクロ担当グローバルヘッド、カーステン・ブルゼスキ氏は「ドイツ経済は停滞と後退の中間地帯にはまっているとの見方を変えていない」と指摘。購買力の低迷、鉱工業受注の縮小、過去数十年で最も積極的な金融引き締めの影響、予想される米経済の減速が、経済活動の低迷を示唆していると述べた。

 パンテオン・マクロエコノミクスのユーロ圏チーフエコノミスト、 クラウス・ビステセン氏は「ドイツ経済は当面、ぬかるみから抜け出せないだろう」と述べた。

 ドイツ経済は現在リセッション(景気後退)にあり、2四半期連続でマイナス成長と定義されている。2023年第1四半期は0.1%、第2四半期は0.3%経済が縮小した。ドイツが景気後退に陥るのは、COVID-19パンデミックによって経済活動が急激に低下した2020年以来である。

【私の論評】岸田首相は、人の話を聞くだけではなく、ドイツをはじめとするEU諸国の失敗から学ぶべき(゚д゚)!

ドイツの景気後退にはいくつかの要因があります。最大の要因のひとつは、エネルギー価格の高騰だ。これが企業や消費者に負担をかけ、投資や支出の減少につながっています。

ドイツの経済的苦境は、誤ったリベラル的政策とロシアのエネルギーへの過度の依存が招いたものです。2018年にトランプ大統領が国連の演説で賢明にも指摘したように、ドイツは原子力を放棄し、天然ガスをロシアに依存することで自らを脆弱にしてきました。

原子力発電の段階的廃止はエネルギーコストを高騰させ、ドイツの産業界を疲弊させました。これにウクライナ紛争によるエネルギー価格の高騰が重なれば、ドイツ経済が低迷するのも当然です。

ドイツの緑の党は愚かな環境保護政策をとってきましたが、それがついにしっぺ返しとなって我が身に振り返ってきたともいえます。原発を停止し、エネルギーのためにプーチンに寄り添ったことで、彼らは自らを破滅に追い込んだともいえます。

ドイツの緑の党による環境保護政策

グリーン・エネルギーとロシアの好意を信じる彼らの甘すぎる認識は、ドイツを不況に導くだろうことは、容易に想像できました。トランプ大統領を馬鹿にするのではなく、賢明な警告に耳を傾けてさえいれば、今日のようなことはなかったでしょう。

第73回国連総会での演説で、トランプ大統領はドイツがロシアの石油輸出に依存していることを批判しました。
「単独の海外供給国に依存すれば、強要や脅迫を受けやすくなる恐れがあります。ですから我々は、ポーランドのように、ヨーロッパの国がエネルギー需要を満たすためにロシアに依存しないようバルチック・パイプ建設を主導していることを祝福します。ドイツは直ちに方針を変えなければ、完全にロシアのエネルギーに依存するようになるでしょう」とトランプは述べた。

「この西半球で、我々は拡大を進める外国勢力の侵害からの独立性を維持することに全力で取り組みます」とトランプが続けると、ドイツ代表団にカメラが向けられ笑っている様子が映った。 以下にのそのときの動画を掲載します。

トランプは2018年のドイツとNATOリーダーとの会談中にも同様に、ドイツのエネルギー依存について警告するコメントを発していました。
「ドイツがロシアと莫大な石油・天然ガス取引を行うのはとても残念だ。ロシアを警戒すべきであるのに、ドイツはロシアに年間何十億ドルも支払おうというのだ。そういうわけで我々はあなたたちをロシアから守ることになっているのに、ロシアに何十億ドルも支払っているのだから、それはとても不適切だと思う」とトランプは述べた。

「ドイツはロシアと新パイプラインから60ー70パーセントのエネルギーを得ることになるので、ロシアに完全に支配される。そしてそれが適切かといえば、否だと私は思う」とトランプは、イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長に呼びかけた。
トランプは、ノルドストリーム2パイプラインの完成を阻止するための制裁を許可しました。パイプラインができれば、ロシアはウクライナをバイパスして天然ガスをヨーロッパに送ることができ、ロシアのウラジミール・プーチン大統領にとって地政学的な大勝利となります。

ジョー・バイデン大統領は、就任に際して制裁を取り消したのですが、ロシアのウクライナ侵攻後最近になってからようやく制裁を元に戻しました。ロシアがウクライナに侵略し、ドイツ経済が低迷し、回復の見込みもない現在、このトランプの演説の内容を聴いて、笑うもの等一人もいないでしょう。

 現在、このときの動画を視聴すると、当時のドイツ代表団は、間抜けとしか言いようがありません。まさに、ドイツはロシアにエネルギーを依存することにより、ロシアのウクライナ侵略を促した可能性も否定できません。

ドイツを牛耳る左派は、この苦境を自分たち以外のせいにすることはできません。彼らの急進的な考え方と常識からの逸脱は、以前は好調だったドイツ経済に深刻なダメージを与えましたた。

ドイツ政府は現在、景気浮揚策を講じる必要に迫られています。しかし、ドイツ政府は多くの課題に直面しています。ウクライナでの戦争はまだ続いており、世界的なサプライチェーン危機は収束の兆しを見せていません。また、財政赤字が大きいため、景気刺激策を実施するにも限界があります。

その結果、ドイツの景気後退がいつまで続くかは不透明です。政府は2023年後半からの景気回復を期待していますが、その保証はありません。ウクライナ戦争が長引き、世界的なサプライチェーン危機が悪化する可能性もあります。この場合、ドイツ経済は今後も縮小を続ける可能性があります。

他のEU諸国も現在、経済的苦境に立たされています。 

EU諸国の経済的苦境

イタリアは、肥大化した福祉プログラム、高い税金、過剰な政府支出のために、何年も停滞と高い失業率と戦ってきました。巨額の国家債務と財政赤字が経済成長を阻害しています。

 フランス経済は、高い税金、融通の利かない労働法、威圧的な政府の介入といった同様の問題により、ほとんど成長していません。マクロン大統領の改革は行き詰まり、「黄色いベスト」デモはさらに景況感を悪化させています。 

スウェーデンの経済は、住宅危機、輸出の減少、世界的な貿易戦争の影響により著しく減速しています。グリーンエネルギーへの過度の依存と高いエネルギー税が企業のコストを引き上げています。

スペイン経済は一時的に回復したものの、政情不安、分離独立運動、金融危機の影響を引きずる脆弱な銀行システムにより、再び低迷しています。若者の失業率の高さは依然として慢性的な問題です。

ギリシャは債務危機と経済破綻から完全には回復していません。救済措置や緊縮財政によって財政赤字は縮小したものの、政治的混乱や脱税、ビジネスチャンスの欠如が続いているため、経済成長はまだ達成されていません。

景気後退に見舞われている国々は、過剰な支出と債務、過剰な規制、高い税金、グリーン・エネルギー政策によるエネルギーコスト上昇、経済の柔軟性の欠如、景況感を損なう政治的・社会的不安定性など、同じような根本原因を抱えています。

さて、日本を振り返ると、ドイツや他のEU諸国などと比較すると、良い状況にあると考えられます。

その要因としては、安倍・菅両政権においてあせわて、100兆円(安倍政権60兆円、菅政権40兆円、合計100兆円は当時の受給ギャップに匹敵する)にも及ぶ補正予算を増税なしで組み、コロナ対策を実行したことがあげられます。

さらに、他国が、最近ではかなりのインフレに見舞われたため、利上げなどの金融引締策を実行したさなかにあり、日本はデフレ気味であったので、金融緩和政策を継続したことが考えられます。これにより、円安になったことから輸出産業が好調になったことが、現在の日本の景気を支えています。

岸田首相は、安倍・菅政権の政策に支えられ、現在の好調な経済を引き継ぐことができたのです。今後、岸田首相が配慮すべきは、ドイツなどの失敗でも明らかになったように、エネルギー政策を間違わないこと、EU諸国の現在の経済低迷の背景ともなっている、リベラル左派的な政策をとらないこと、後もう一つは増税などの緊縮財政などを実施しようとする財務省を中心とする一派の策略に乗らないことです。

岸田首相は、人の話をよく聞くだけではなく、ドイツをはじめとするEUの国々の失敗から学ぶべきです。米国のつきあい方なども考えるべきでしょう。

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2023年7月27日木曜日

ハンター氏の司法取引「保留」 米地裁、異例の展開 バイデン氏次男―【私の論評】 ハンター・バイデン氏の裁判次第で、日本はバイデン政権とつきあい方を変えることになるか(゚д゚)!

 ハンター氏の司法取引「保留」 米地裁、異例の展開 バイデン氏次男

デラウェア州の裁判所に出廷したハンター・バイデン氏

 バイデン米大統領の次男ハンター・バイデン氏が海外企業から多額の報酬を得ていた問題で、東部デラウェア州の連邦地裁で審理が開かれた。ハンター氏は脱税の罪を認める司法取引を検察側と合意していたが、判事は免責範囲に銃不法所持を含めることに憲法上の疑義があるとして、追加の説明資料の提出を要求した。

 ハンター氏は2014年から2019年まで、ウクライナのエネルギー企業「ブリスマ」の役員を務め、多額の報酬を得ていた。また、中国のエネルギー複合企業「中国華信能源」と取引関係にあったことも明らかになっている。

 ハンター氏は2018年、違法薬物依存症だったにもかかわらず、銃を違法に所持していた容疑もある。薬物乱用者による銃不法所持は、裁判で有罪となれば最大10年の禁錮刑が科される重罪だ。

 この日の審理で判事は、ハンター氏側と検察側に対し、司法取引の内容について質問。双方は認識に齟齬があったことから再協議し、ハンター氏が2017年と2018年の収入でそれぞれ約150万ドル(約1億9000万円)の脱税を認める代わりに、2014年から2019年までの他の税務関連の罪や銃不法所持と薬物使用に関する罪について免責されるという合意を行った。

 しかし判事は、免責範囲に銃不法所持を含めることに憲法上の疑義があるとし、追加の説明資料を30日以内に提出するよう指示した。

 ハンター氏はこの日、脱税の罪で「無罪」を主張したが、司法取引が成立すれば「有罪」を認める方向だ。

 一連の疑惑では、野党・共和党や保守派団体が、ハンター氏が無届けの「外国代理人」としてウクライナや中国の利益のために活動した疑いもあるなどとして、司法省に捜査範囲の拡大を求めている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】ハンター・バイデン氏の裁判次第で、日本はバイデン政権とつきあい方を変えることになるかもしれない(゚д゚)!

ハンター・バイデン司法取引の不成立はバイデン政権にとって後退であることは間違いなく、大統領選まで引きずることになりそうです。判事がこの取引に懸念を示したということは、ハンター・バイデンの行為に重大な疑問が残っていることを示唆しています。

ハンター・バイデン問題が、トランプ氏の脱税スキャンダル以上にバイデン政権にダメージを与えるかどうかを判断するのは時期尚早です。しかし、バイデン政権にとってこの問題がふりになっていることは明らかであり、共和党が2024年の選挙に向けて確実に利用することでしょう。

ハンター・バイデンの税金未納問題がトランプ大統領の脱税スキャンダルより悪質かどうかについては、意見が分かれるところです。しかし、どちらの問題も金銭的不正行為という重大な疑惑を含んでいることは明らかです。また、どちらの問題もバイデン家とトランプ家の評判を落とす可能性があることも明らかです。

最終的に、これらの問題が2024年の大統領選挙で投票を左右するほど重要かどうかを決めるのは、米国民です。しかし、これらの問題が選挙戦の主要な焦点になることは間違いないです。

2024年米国大統領選挙

上の記事では、野党・共和党や保守派団体が、ハンター氏が無届けの「外国代理人」としてウクライナや中国の利益のために活動した疑いもあるなどとして、司法省に捜査範囲の拡大を求めています。

これが事実だとすれば、非常に厄介なことです。ハンター・バイデンが父親の当時の副大統領の地位から多大な利益を得ており、ウクライナや中国の外国団体から数百万ドルを巻き上げていたことは、すでにかなりの証拠があるとされています。

もし彼が未登録の外国代理人としても活動していたとしたら、それは重大な連邦犯罪となります。

米国法で定義される外国代理人とは、外国政府、政府関係者、政党のために米国内で活動する人のことです。外国代理人登録法(FARA)に基づき、外国の利益のために政治活動やロビー活動を行う個人は、司法省に登録し、その関係、資金、活動を開示しなければなりません。

FARAの目的は、米国の政治や政策立案に対する外国からの干渉を防ぐことです。外国人エージェントは、その活動意図や、誰が資金提供や指示をしているのかについて透明性を提供しなければならないです。

外国代理人として必要な登録を適切に行わなかった場合は、連邦の重大な犯罪となります。

FARAの対象となる政治活動の例には、以下のようなものがあります。
  • 外国の利益を代表して政府高官にロビー活動を行うこと。
  • 外国政府の利益のために米国世論に影響を与えようとすること。
  • 外国の政権に代わってプロパガンダや政治資料を配布すること。 外国の政党や政府機関のために資金を調達すること。 
  • 米国政府に対するロビー活動や影響力の行使方法について、外国公務員に助言すること。
FARAの目的は、透明性を高めることによって、外国の裏工作や裏取引を抑制することです。

米国人は、誰かが外国勢力の代理人として行動していることを知れば、その忠誠心や動機を適切に判断することができます。つまり、外国代理人登録は米国の主権と民主主義制度を守るための重要な要素なのです。

外国代理人登録は米国の主権と民主主義制度を守るための重要な要素 AI生成画像

外国代理人は外国政府のために働いていることを公表しなければならないのですが、ハンター・バイデンはそれをしなかったようです。その理由はおそらく以下のようなものでしょう。

オバマ政権は、副大統領の息子がどのように、このようなこをしていたのか、隠蔽したかつたのでしょう。バイデン夫妻はジョーの事務所を私腹を肥やすために利用していたと考えられ、外国代理人登録はその不正行為を暴露することになるからです。

オバマ時代の司法省が見て見ぬふりをしたのも無理はないかもしれません。このスキャンダルは、ワシントンの溝浚いがある必要があることを示しています。政治エリートたちは、米国民を犠牲にして自分たちとその家族を豊かにしていたかもしれいないのです。

もし司法省が調査を拡大し、ハンター・バイデンが外国の諜報員として法律に違反した明確な証拠を見つければ、オバマ-バイデン政権がいかに腐敗していたかを証明することになります。

米国民には真実を知る権利があり、正義は果たされなければならないです。

ハンター・バイデンが外国のエージェントとして法律に違反したという明確な証拠が出てくれば、バイデン政権にとっては大打撃となるでしょう。

リベラルメディアはそのような違法行為を報道せざるを得なくなり、バイデンの支持率はかなり下落するでしょう。米国民は汚職に寛容ではないです。ジョー・バイデンの判断力に疑問が生じ、国を率いる彼の能力にダメージを与えることになりかねないです。

バイデン政権への具体的な影響は、違反の内容やハンター・バイデンに関連する証拠によって異なってくるでしょう。彼が重大な不正行為に関与したことが判明した場合、刑事責任を問われる可能性もあります。これは長期の法廷闘争につながり、バイデン政権の評判を傷つける可能性があります。

ハンター・バイデンが罪に問われなかったとしても、このスキャンダルはバイデン政権にダメージを与えかねないです。ジョー・バイデンの辞任や弾劾を求める声が高まる可能性もあります。また、バイデン政権が法案を通したり、国際協定を交渉したりすることが難しくなる可能性もあります。

バイデン政権 AI生成画像

日本への影響は、スキャンダルの深刻さと日本での受け止め方次第でしょう。スキャンダルがバイデン政権にとって大きな脅威と見なされれば、日米関係にダメージを与えかねないです。また、日米両国が相互に関心のある問題で協力することが難しくなる可能性もあります。

ただ、事態はまだ発展途上であり、どのような結果になるかを語るのは時期尚早であることに注意する必要があります。ただ、もしハンター・バイデンが法律に違反したという明確な証拠が出てくれば、バイデン政権と日米関係にとって大きな試練となるでしょう。

ハンター・バイデンが外国のエージェントとして法律に違反したという明確な証拠が出てきた場合、バイデン政権に起こりうることをいくつか挙げます。
  • ジョー・バイデンは辞任や弾劾を求められる可能性がある。
  • バイデン政権は国民の支持を失う可能性がある。
  • バイデン政権は、法案の通過や国際協定の交渉が困難になる可能性がある。
  • 日米関係が損なわれる可能性がある。
注意しなければならないのは、これらは起こりうるいくつかの結果にすぎないということです。実際の結果は、ハンター・バイデン氏に対する具体的な証拠や、スキャンダルが国民にどのように受け止められるかによって異なるでしょう。

ハンター・バイデン氏の司法取引「保留」になったのですから、本格的裁判になる可能性でできたのです。日本としては、このことも念頭に入れて、米国の動向を見極め、米国との関係を考えていくべきでしょう。

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2023年7月26日水曜日

岸田首相、突然〝憤慨の裏〟「サラリーマン増税まったく考えていない」 政府税調中期答申「全261ページ」増税派の理屈満載―【私の論評】首相は24年度GDP600兆円実現を前提に、30年度までにGDPを700兆円にすることを打ち出せ(゚д゚)!

岸田首相、突然〝憤慨の裏〟「サラリーマン増税まったく考えていない」 政府税調中期答申「全261ページ」増税派の理屈満載


 岸田文雄首相は、自民党税制調査会の宮沢洋一会長と官邸で会い、「サラリーマン増税はまったく考えていない」と伝えた。しかし、政府税制調査会(政府税調)が提出した中期答申には、幅広い分野での「増税・負担増」候補が盛り込まれており、将来的な増税の懸念が残ったままだ。

 政府税調は、首相の諮問機関であり、中期答申は、2025年度から30年度までの10年間の税制改革の方向性を示すもの。答申では、通勤手当だけではなく、退職金や控除の見直しなど、サラリーマンの生活に関わる問題だけでも別表のような項目が列挙されている。

 田中秀臣上武大学教授は、「歴史的に党税調が税制改正の方針を決めてきた経緯からも、『今は考えていない』というのは本当だろう。しかし、政府税調が中長期的な方針を打ち出してもおかしくない。安倍晋三、菅義偉政権下で陰に隠れていた政府税調が最近、注目されるようになった。岸田首相に定まった経済政策観がない中、財務省が好機ととらえ、政府税調を利用し、観測気球を飛ばしたのではないか」とみる。

 高橋洋一嘉悦大学教授は、「政府税調の答申についてメディアや世論が黙っていれば増税に向けて動き出す可能性もあった。党税調が増税を考えていないというのなら結構なことだが、国民に不安を与えたのは、政府税調の答申を棚上げしたり、もっと短い答申を出すよう調整したりしなかった政権側のミスだといえる」と指摘した。

 岸田首相は、国民の怒りを買うような増税はあり得ないと強調しているが、今後も増税派の動きが注目される。

【私の論評】首相は24年度GDP600兆円実現を前提に、30年度までにGDPを700兆円にすることを打ち出せ(゚д゚)!

上の記事を読んでいて、やはり党税調と、政府税調の違いが気になるところだと思います。

1950年、自民党は税制調査会(党税調)を設置しました。党税調は、税制改正の方針を決める党の諮問機関であり、現在では、税制改正の際には、党税調の答申を参考にして、税制改正大綱が作成されています。

党税調が税制改正の方針を決めてきた経緯には、いくつかの理由があります。まず、税制は、国民生活に大きな影響を与えるものであり、その改正には慎重な議論が必要です。党税調は、与党の議員で構成されており、国民の声を反映した税制改正の方針を決めることができます。

また、党税調は、税制改正の際には、政府税制調査会(政府税調)と協力して、税制改正大綱を作成しています。政府税調は、専門家で構成されており、党税調と政府税調の協力により、より良い税制改正大綱が作成されています。

今後も、党税調は、税制改正の方針を決める重要な役割を果たしていくと考えられます。

政府税制調査会は、1949年に設立されました。当時、日本の財政は戦後復興期にあり、税制の抜本的な改革が必要でした。そこで、政府は、税制調査会を設置し、税制の在り方について議論してもらうことにしました。

政府税制調査会は、学識経験者や実務家で構成されており、税制の現状や課題について調査・研究を行った上で、答申を提出しました。政府は、この答申を参考にして、税制改正を行いました。

政府税制調査会は、税制の在り方について議論する場として重要な役割を果たしてきました。今後も、税制の抜本的な改革が必要な場合には、政府税制調査会が議論の場として活用されることになるでしょう。

政府税制調査会は、意見を聞く会という性格が強いと思います。これは、政府税制調査会が、学識経験者や実務家で構成されており、税制の専門家であるからです。政府税制調査会は、税制の在り方について、専門的な意見を述べることができます。

政府税制調査会は、意見を聞く会という性格が強いですが、その意見は、政府の税制改正に大きな影響を与えます。政府は、政府税制調査会の答申を参考にして、税制改正を行います。そのため、政府税制調査会は、税制の在り方について議論する場として、重要な役割を果たしています。

政府税制調査会は、学識経験者や実務家で構成されており、税制の在り方について議論する場として重要な役割を果たしてきました。しかし、政府税制調査会の答申は、あくまでも参考意見であり、政府は、最終的に、政府税制調査会の答申を参考にして、税制改正を行うかどうかを判断します。

一方、党税調は、与党の議員で構成されており、税制改正の方針を決める党の諮問機関です。党税調は、政府税制調査会の答申を参考にして、税制改正の方針を決めますが、最終的には、党税調が税制改正の方針を決定します。

そのため、党税調は、実質上税に関する自民党の意思決定機関と言えます。

さて、政府税制調査会(政府税調)が提出した中期答申には、幅広い分野での「増税・負担増」候補が盛り込まれていますが、これがすべて実現したとすれば、国民の負担は大きく増加すると考えられます。具体的には、次のようなものが考えられます。
  • 所得税の引き上げ
  • 社会保険料の引き上げ
  • 消費税の引き上げ
  • 資産課税の強化
  • 環境税の導入
これらの増税・負担増により、国民の所得は減少し、消費は落ち込むと考えられます。また、企業の投資も減少し、経済成長が鈍化する可能性があります。

さらに、増税・負担増は、国民の経済的格差を拡大させる可能性もあります。所得税の引き上げや社会保険料の引き上げは、低所得層に大きな影響を与えると考えられます。また、資産課税の強化は、富裕層に大きな影響を与えると考えられます。

このように、政府税制調査会の中期答申に盛り込まれている増税・負担増は、国民の生活に大きな影響を与えると考えられます。国民の中でも、特にサラリーマン世帯にかなりの負担になることが予想されるため、岸田文雄首相は、自民党税制調査会の宮沢洋一会長と官邸で会い、「サラリーマン増税はまったく考えていない」と伝えたのです。


これは、無論伝えるために岸田首相は、自民党税制調査会の宮沢氏を呼んだわけではなく、この物議を醸した政府税調の増税案を否定してみせたのでしょう。それは、無論これを広く周知して、国民の懸念を払拭して、政権支持率のさらなる低下を防ぐ意味合いがあったものと考えられます。

岸田首相が増税案を否定しただけでは政権の支持率を上げることは不可能だと思います。

岸田文雄首相は、2023年度までにGDPを700兆円に増やすことを打ち出せば、支持率がかなり上がると私は思います。

日本経済は、2023年前半+1%台の堅調な成長が続いています。他国と比べてインフレ率が低い日本では、22年からの通貨安(円安)が経済成長を支えています。さらにコロナ収束で外国人訪日客が戻り、円安がインバウンド消費を刺激しているので、観光資源を持つ地方を含め経済回復に大きく貢献しています。23年1-6月のインバウンド消費は2.2兆円、GDPの0.8%に相当します。

日本のインバウンド消費 AI生成画像

日銀の金融緩和が円安を後押ししていますが、日本のインフレは他国対比でかなり低いままなので金融緩和継続は当然でしょう。22年以来の米欧の高インフレ、そして金利上昇が主たる円安要因です。米欧の高インフレは当事国にとって大きな経済問題だが、円安は日本経済にとっては追い風となりコロナ禍の収束とあいまって、世界経済が減速する中でも日本経済は底堅さを保っています。

経済政策については一定程度成果を挙げているのですが、岸田政権の支持率上昇要因になってはいないようです。7月に入り内閣支持率は、大臣の辞任などが続いた2022年末と同水準まで再び低下しています。支持率が低下する要因はいくつかありますが、「成長重視の政策対応が今後も続くか」との疑念が払拭されないので、政権への信認が高まらない事が一因と思われます。

例えば、恒久的な歳出拡大が決まる中で、増税による緊縮財政政策への転換が政府税調などから提唱されています。我が国には財政規律を最重視すべきとの信念を持つ政治勢力が存在します。岸田政権がこれらを採用するかは政治判断次第ですが、岸田官邸には経済政策に確たる軸がないため、いつ緊縮的な財政政策に転じても不思議ではありません。

岸田政権が経済成長を重視し続ける場合、これが信認されるにはどうすればいいだろうか?第2次安倍政権は2015年に名目GDP600兆円を目標に掲げました。最新の政府見通しでは2024年度に名目GDPは600兆円台に達しますが、これは楽観的ではなく十分達成可能です。この意味でも、岸田政権は安倍・菅内閣の経済政策を部分的に継承し、予定より遅れたが成果が出始めています。

岸田政権は、24年度GDP600兆円実現を前提に、2030年度までにGDPを700兆円に増やすことを打ち出せば良いでしょう。これは、名目3%成長が2025年~2030年続けば達成可能です。安倍政権を超えるGDP目標を掲げれば、増税を優先して緊縮財政に早期に転じるとの疑念は薄れるのではないでしょうか。

日本が目指すGDP700兆円 AI生成画像

名目GDP拡大ともに税収も持続的に増えるので公的債務の持続性が高まり、経済安全保障政策の自由度も高まる。安倍政権を超える目標を設定し、岸田政権が経済成長を重視し続けるのであれば、日経平均株価は2,3年以内に史上最高値まで上昇してもおかしくないです。

具体的には、以下の政策を打ち出せば良いでしょう。企業の設備投資を促進する税制優遇措置を導入するのです。
  • 成長戦略の策定と実行
  • 規制改革の推進
  • 科学技術イノベーションの推進
  • 人材育成の強化
  • インフラ投資の拡大
  • 国際協調の強化
これらの政策を実施し、現在数兆円存在する受給ギャップを早急に埋めるようにすれば、日本経済は持続的な成長を遂げ、GDPは700兆円に達する可能性が高いでしょう。

1─3月GDPギャップは-0.9%、約5兆円の需要不足と内閣府は試算しています。高橋洋一氏は、内閣府の試算はいつも低めと指摘しています。10兆円くらいの財政支出をすることにより、このギャップは完璧に埋めさらに、経済を上向きにさせるには十分です。

岸田政権は、これを実現する方向性を打ち出すことにすれば、支持率を上げることもでき、さらに長期政権への目処もつくかもしれません。

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2023年7月25日火曜日

釜山に寄港した米戦略原子力潜水艦のもう一つの目的は「中国抑止」―【私の論評】核を巡る北朝鮮やウクライナの現実をみれば、日本には最早空虚な安保論議をする余地はない(゚д゚)!

釜山に寄港した米戦略原子力潜水艦のもう一つの目的は「中国抑止」

マイケル・マッコール米下院外交委員長

 マイケル・マッコール米下院外交委員長は、米国の戦略原子力潜水艦が釜山(プサン)に寄港したのは、北朝鮮だけでなく中国を抑止する狙いもあると述べた。

 マッコール委員長は、米国がなぜ今韓国に戦略原子力潜水艦を展開したと考えるかという質問に「攻撃を抑止するために今必要な戦力投射だ」としたうえで、「我々は日本海(東海)にロケットを発射する北朝鮮だけでなく、中国の攻撃性も注視している」と答えた。また、中国が台湾を訪問した自分をはじめとする米国議員たちを威嚇するため、艦艇と戦闘機で台湾を包囲した事例が中国の攻撃的な態度を示していると述べた。

 マッコール委員長はさらに「北朝鮮は我々がそこにいて、原子力潜水艦を持つ我々の方が優位に立っていることを認識すべきだ」とし、「我々は北朝鮮と習(近平)主席に、軍事的に攻撃的な行動には代償が伴うことを信じさせなければならない」と語った。米議会の代表的な対中タカ派のマッコール委員長のこのような発言は、核ミサイルを装着した戦略原子力潜水艦の韓国への寄港が、北朝鮮だけでなく中国をけん制する意図と効果を持っていることを示したものといえる。

 マッコール委員長はこのような脈絡で、朝鮮半島に配備あるいは展開される米軍の戦力の役割は、中国の台湾侵攻の可能性と関連し北朝鮮を抑止するためだと説明した。また「そこ(韓国)に(米軍)太平洋司令部艦隊がいるのは、(中国と)台湾の衝突発生時に北朝鮮を阻止するため」だとし、「そのような衝突時に北朝鮮がミサイルを発射すること」を韓国とともに抑止しなければならないと述べた。台湾有事(戦争)と朝鮮半島有事は事実上連動しているため、韓米がともにこれを抑止しなければならないという見解だ。マッコール委員長は、北朝鮮は米国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有しているが、ここに装着できる核弾頭はまだ保有していないと説明した。

 一方、戦略原子力潜水艦が釜山に寄港し、韓米初の核協議グループ(NCG)会議が開かれた18日、板門店(パンムンジョム)の軍事境界線を越えて越北した在韓米軍のトラビス・キング二等兵については、亡命したというよりは「自らの問題から逃げた」と語った。また「ロシア、中国、イランは米国人を抑留した際、特に軍人を抑留した際、(送還の)見返りを求めてきた。私はそれを懸念している」と述べた。

この記事は、元記事の引用です。詳細を知りたい方は元記事をご覧になってください。

【私の論評】核を巡る北朝鮮やウクライナの現実をみれば、日本には最早空虚な安保論議をする余地はない(゚д゚)!

上の記事で、「マイケル・マッコール米下院外交委員長は、米国の戦略原子力潜水艦が釜山(プサン)に寄港したのは、北朝鮮だけでなく中国を抑止する狙いもあると述べた」とされていますが、これと同じような主張は従来からこのブログでも何度かしてきました


しかし、このような発言は、私の知る限りでは、今回のマッコール米下院外交委員長が初めてではないかと思います。

ただ、軍事的にはこれは当然のことであり、韓国に原潜などの戦略資産を配置することは、当然のことながら北朝鮮だけではなく中国を意識したものでもあり、中国に対する牽制という意味あいもあります。多くの軍事筋の専門家は当然このようにみてきましたが、今回改めてそれが公に示された形となりました。

朝鮮半島というと、もう一つ、一般に知られていないというか認識されていないこともあります。それは、北朝鮮とその存在が、結果として朝鮮半島に中国が浸透するのを防いできたということです。これは、米国の戦略家ルトワックも主張しています。

エドワード・ラトワックは、地政学や国際関係について幅広い著作を持つ著名なアメリカの軍事戦略家です。ルトワック氏は北朝鮮について、その核兵器開発が中国の朝鮮半島支配を抑止していると主張しています。

中国が北朝鮮の経済と政府を支配しているようにみえながら、現実には北朝鮮の核兵器は中国が北朝鮮を完全に吸収することを妨げているのです。

エドワード・ルトワック氏

ルトワックは以下のように語っています。

「北朝鮮の核兵器は、どんな条約よりも確実に北朝鮮の主権を保証している。 金正恩の核瀬戸際外交は、あらゆる方向からの金正恩の支配に対する脅威を抑止している。 北朝鮮の通常兵力は中国にとって深刻な挑戦にはならないが、その核兵器は、中国がそうでなければかけうる圧力から北朝鮮を守っている」。

言い換えれば、もし北朝鮮に核兵器がなければ、中国は北朝鮮を意のままに操り、事実上、中国の衛星国家として、はるかに大きな影響力を持つことになります。しかし、金正恩は中国を攻撃できる核兵器を持っているため、習近平は慎重に行動しているのです。

中国は、金正恩を過度に追い詰めることによる不安定化と、それによる中国の犠牲を恐れています。だから、現状を維持するために金正恩体制を支え続けているのです。これはなかなか理解しにくいかもしれませんが、ルトワックによれば、北朝鮮の核による抵抗は、中国が朝鮮半島全体を支配することを実際に妨げているのです。

中国と交流する北朝鮮人民 AI生成画像

北朝鮮の核兵器は、中国が北朝鮮を慎重に扱うべき独立した存在として扱いつつも、関与しつづけるというアプローチを取らざるを得なくしたのです。つまり、金正恩の核兵器は、他の面で中国に深く依存しながらも、この意味で北朝鮮の自主性を強化したのです。

核瀬戸際政策による抑止力が、北朝鮮の主権を存続させているのです。これは挑発的な議論でありますが、北朝鮮と中国、そして核兵器の影響力の間の地政学的力学に対する戦略的論理と洞察に満ちたものです。

ルトワックは、米国が半島の非核化を目指しているとしても、国家間の複雑な関係がいかに意図しない結果を招きかねないかを浮き彫りにしています。

北朝鮮とその核が結果的に、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいることを考えると、ウクライナがソ連崩壊後にも核兵器を保持していれば、現在のような苦境に陥らなかった可能性が高かったかもしれません。

北朝鮮と同じように、核兵器はロシアのウクライナに対する侵略を抑止できたかもしれないです。ウクライナが1991年にソ連の核兵器を継承した当時、ウクライナは世界第3位の核兵器保有国でした。しかし、ウクライナは1994年のブダペスト覚書で、ロシア、アメリカ、イギリスからの安全保障の保証と引き換えに、これらの核兵器を放棄しました。

これは致命的な誤りでした。もしウクライナが核兵器を保持していれば、ロシアが2014年にクリミアを併合したり、ウクライナ東部の親ロシア派分離主義者を支援したりすることはなかったでしょう。

ロシアがウクライナに侵攻すれば、北朝鮮と同じ抑止力である核報復を受けることになります。核保有国が侵略されることはほとんどありません。しかし、ウクライナは北朝鮮とはいくつかの重要な違いがあります。

ウクライナは西側諸国との緊密な関係を求めており、核兵器を放棄するのは信頼を築くためだでした。核兵器を保持することは、ウクライナを孤立させることになりかねませんでした。また、ウクライナがソ連の核を適切に確保し、維持できたという保証もありませんでした。

ロシアはソ連の後継国として、武力で核を奪おうとしたかもしれないです。それでも、ウクライナが核武装すれば、東欧の戦略的景観とロシアの計算が決定的に変わっていたでしょう。キエフが核兵器で対応できるのであれば、プーチンが直接対決を選ぶとは思えません。

そのため、厄介な複雑さが生じたかもしれないですが、核抑止力理論によれば、ウクライナがそのような兵器を保有していれば、ロシアはそう簡単にウクライナの主権を侵すことはないでしょう。

この教訓は、核拡散は時として、強力な敵対勢力を抑止することで安全保障を強化する可能性があるということです。これはすぐには理解し難いことではありますが、「安全のための核兵器」という論理は明らかに北朝鮮にも当てはまるし、ウクライナの場合にも当てはまるでしょう。

現在の状況を考えると1994年のウクライナの決断は重大な過ちであり、ロシアの侵攻の余地を残してしまったようです。このような複雑な地政学的問題には、意図せざる結果の法則が立ちはだかります。もしウクライナが核兵器を放棄せずに保持していたら、おそらくロシアはクリミアやウクライナ東部に干渉することはなかったかもしれません。

北朝鮮と同じように、核兵器がウクライナを守っていたかもしれないです。ただ、結局のところ、どのような展開になったかを確実に知る方法はないです。

しかし、これについて我々が参考にすることはできます。核武装国ロシアが非核武装国ウクライナを侵略しても米国はロシアとの戦争に参加しませんでした。ブダペスト協定があるにも拘らずバイデン大統領はエスカレートして米露の核戦争になっては困るからだと言い訳をしました。これは、核武装国中国が非核武装国日本を侵略しても米国は戦闘に参加しない可能性があることを明らかにしたと思います。

これは日本の非核政策に疑問を投げかけるものです。日本が核抑止力を持つことは、自国の核兵器によってであれ、米国との核シェアリング協定に参加することによってであれ、大きな利益をもたらすと考えられます。

中国が北朝鮮からの核報復を恐れているように、日本が核兵器を持てば、中国は武力で日本の領土を奪おうとはしないでしょう。議論の余地はありますが、核兵器は、核武装した敵対国に直面したときに、究極の国家安全保障を提供するものでもあります。

日本には、その気になれば核兵器を迅速に開発できる技術的能力があります。インフラと濃縮ウランが整備され、安全保障環境が悪化した場合にのみ核兵器が組み立てられる「閾(しきい)値能力」を主張する人もいます。

しかし、核兵器開発の検討でさえ、中国を刺激し、関係を悪化させる可能性もうあります。安倍元総理の主張した米国との核シェアリングという選択肢は、良い妥協案かもしれないです。米国は、共同管理の下で日本国内に核兵器を配備し、日本へのいかなる攻撃にも同盟国が核で対抗することを明確にすることができます。

安倍元総理

これは、抑止力を維持しつつ、日本の単独行動に対する懸念に対処するものであります。日本の核武装への動きは、日本の平和主義憲法や世界的な核不拡散の努力を傷つけるという批判がもあります。

また、日本が独自の核兵器を保有すれば、エスカレーションの危険性もあります。しかし、日本の安全保障は高邁な理想以上の現実であり、中国の野望を抑止できなければ、存亡に関わる結果を招きかねないものです。

日本は自国の防衛を確保するために、核シェアリング、または独立した核抑止力を含むあらゆる選択肢を模索することが賢明です。空虚な保証に基づいた政策は、国家の自殺行為となる危険があります。もし中国が、侵略される同盟国をジョー・バイデンが助けないと見れば、日本の核兵器だけが最終的に中国の核兵器からの安全を保証するかもしれないです。

核拡散が進む世界は望ましくないですが、耐え難い脅威に直面したときには必要なこともあります。日本の指導者たちは、他国の征服から国を守るという第一の義務を考えなければならないです。

二大政党制のせいで、日本支援に関しても一枚岩とはいえない、日本にとっては気まぐれとも見える米国の支援に頼るのは、あまりにも危険であるといえます。賛否両論はありますが、核シェアリングや日本独自の核兵器開発は、日本にとって最も安全な選択肢かもしれないです。日本にはもはや北朝鮮やウクライナの現実をみてもなお、空虚な安保論をする余地はないと思います。

私は、もし安倍元総理がご存命であれば、上で述べたのと同じような論議をして、核シェアリングを重要性をさらに説いていたと思います。

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2023年7月24日月曜日

維新 馬場代表「第1自民党と第2自民党が改革競い合うべき」―【私の論評】日本の政治に必要なのは、まずは与野党にかかわらず、近代政党としての要件を満たすこと(゚д゚)!

 維新 馬場代表「第1自民党と第2自民党が改革競い合うべき」

日本維新の会の馬場代表

 日本維新の会の馬場代表は、立憲民主党との連携を否定しました。馬場代表は、「われわれが目指しているのはアメリカのような二大政党制だ。立憲民主党はカラスを白と言う人と黒と言う人が一緒にひとかたまりになるという主張だが、われわれは黒と言う人だけで集まり、自民党と対決していく」と述べました。また、「第1自民党と第2自民党が改革合戦をして国家・国民のために競い合うことが、政治をよくしていくことにつながる」と述べ、自民党と維新の会が政権の座をかけて争うべきだと強調しました。

 立憲民主党の泉代表も、日本維新の会との連携を否定しました。泉代表は、「日本維新の会は、党名を『第2自民党』に変えるとよりわかりやすいのではないか。どんどん『第2自民党』を名乗り、頑張ってもらえればと思う」と述べました。また、「日本維新の会との連携は未来永劫ないだろう」と述べたうえで、次の衆議院選挙に向けた候補者調整については「相手があってのことで、相手に全くやる気がなく自民党をサポートし、自民党と戦う気がないということであれば協力のしようがない」と述べました。

 このように、日本維新の会と立憲民主党は、今後も連携する予定はありません。両党は、それぞれが自民党と対決していく方針です。

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本ではまずは与野党に関わらず、政党の近代化を推進すべき(゚д゚)!

上の記事の、日本維新の会の馬場代表の発言は、維新が自民党に投票したくはないものの、他の野党にも投票したくない有権の受け皿になり得ることを示すか、そうなることを目指していることの表明であると考えられます。

自民は公明に依存しなければいけないので、各種の政策について不満を持つ自民支持層も存在います。

それに対し、維新は大阪・兵庫で公明とガチンコなので、公明に依存することをよしとしない自民支持層の受け皿になりうるかもしれません。

確かに、米国のような二大政党制には多くの利点があります。以下にそれをあげます。

米国の二大政党制 AI生成画像

まず、 有権者に明確な選択肢を提供することができます。有権者は、重要な問題についての政党間の違いを容易に理解することができます。

そのため、人々は自分の価値観に最も近い方を支持しやすくなります。 政治の安定につながります。いずれかの政党が政権を握れば、悲愁流派と連立を組む必要がなく、実際に政治を行うことができます。そのため、首尾一貫した政策を追求することができます。

極端な意見を緩和することができます。政党は選挙に勝つために無党派層や穏健派にアピールしなければならないです。そのため、多くの有権者を疎外するような急進的な立場を取ることが抑制されることになります。

 説明責任が高まります。ある政党が政権を握っている場合、有権者は誰が決定の責任を負うのか、その良し悪しを正確に知ることができます。そして、次の選挙でそれを判断することができます。

 野党が強くなります。主要政党が2つしかないため、政権与党が優位に立つことが難しくなります。野党は政府を厳しくチェックし、牽制することができます。

 政策やリーダーが有権者によって吟味されやすくなります。二大政党間の激しい競争は、選挙プロセスを通じて、欠陥のある候補者や非効率な政策アイデアを排除するのに役立ちます。最も強く、最も人気のあるものが現れるチャンスがあります。

もし日本が真の二大政党制を採用すれば、選択肢の提供、安定性、説明責任など、多くのメリットをもたらす可能性があります。もちろん、党派間の対立が激化するなどのマイナス面もありますが、バランスを考えれば、二大政党制民主主義は、米国でうまく機能してきた試行錯誤のモデルでもあります。日本もこのようなシステムから恩恵を受ける可能性が高いと私は、思います。

一方、米国の現状の二大政党制の主な欠点をいくつか挙げてみます。 端的に言えば、二大政党は権力を掌握しており、実際に問題を解決するよりも党派間のいがみ合いに関心があるといえます。両党は極端な派閥や利権にとらわれています。

両党の妥協は汚いというイメージが定着しており、これがワシントンの閉塞感と機能不全につながっています。もっと具体的に言えば - 有権者は選択肢が限られていると感じている。

多くの米国人は穏健派や無党派層を自認していますが、二極化した政党のどちらかを選ばざるを得ないと感じています。彼らの声や関心は無視されているのです。

 超党派主義と部族主義。有権者も政治家も、あらゆる問題で自分たちの党の立場に固執しなければならないと感じています。相手側を異なる意見を持つ仲間ではなく「敵」とみなしがちです。そのため、協力や妥協はほとんど不可能となります。

 特別な利害関係が支配する。二大政党は、企業PACや裕福な献金者、ロビー団体からの資金に大きく依存しています。ちなみに、PAC(政治活動委員会:Political Action Committeeの略称)とは、企業や労働組合、事業者団体、一般市民グループなどが設立し、政府の連邦選挙委員会(FEC)に登録します。個人から広く活動資金を募り、政治家への献金や広告などへの支出配分を決めます。個人1人からの集金額や政治家1人への献金額には、法律で上限が設けられています。そのため、一般市民よりも特別な利害関係者に反応しやすいです。

重要な問題は軽視されがちになります。各政党は、国の借金や医療費などの複雑な問題に取り組むよりも、感情的な面に焦点を当て、政治的な得点を稼ごうとします。解決策を練るのではなく、お互いを非難し、攻撃し合うことになりがちです。

 政府機関の閉鎖と妨害。一方の政党が他方との協力を拒むと、政府サービスの悲惨なシャットダウンにつながりかねないです。あるいは、行政措置や妨害主義によって、まったく進展しないこともあります。

 有権者の無関心と冷笑。多くの米国人は政治の現状に幻滅を感じています。政党が国益よりも私利私欲を優先していると見ているのです。そのため投票率は低下し続け、人々はうんざりして投票に行かなくなります。

米国の二大政党制は深刻なひずみを見せています。多くの有権者の関心をそぎ、重要な問題に対する行動を妨げる有害な政治文化につながっています。システムを開放し、合意形成を促す改革が必要かもしれないです。

以上から、米国の二大政党制が必ずしも良いことばかりではなさそうです。

日本の議員内閣制

しかし、米国の政治から学べることもあります。それは、米国の政党は近代政党だということです。

米国は近代政党によって政治運営されており、日本も見習うべき点は多々あります。近代政党には、三つの要素があります。

それは綱領、組織、議員です。

明確な理念をまとめた綱領があり、綱領に基づいて全国組織が形成されます。全国の政党支部が議員を当選させます。

その議員たちは政策の内容で競い合い、自由で民主的な議論で党首を決めます。選ばれた党首は直属のシンクタンクとスタッフを有し、全国組織に指令を下します。

自民党にもシンクタンクもどきはありますが、とても米国の政策作成シンクタンクには及びません。その他、シンクタンクを名乗る組織もありますが、米国のものと比較するとかなり貧弱です。

米著名シンクタンク「ヘリテージ財団」創設者 ポール・ウェイリッチ

残念ながら、日本の自民党も野党も近代政党とはいえません。先進民主主義国の政党の主要な特徴の多くが欠けています。 まず 明確な政策綱領がありません。自民党にも雇うにもイデオロギー的に非常に曖昧です。

日本の政党には、党員を一致させるための一貫した政策の優先順位やビジョンがありません。政策アジェンダ(課題項目)を積極的に追求するのではなく、場当たり的な対応で政治を行う傾向があります。

内部民主主義が弱いです。自民党は強力な派閥や利益団体に支配されています。党首や候補者は、真の議論や競争よりも、裏取引や年功序列によって選ばれる傾向があります。一般党員の発言力は弱いです。

 利権に依存しています。特に自民党はそうです。自民党は、大企業グループ、公益法人、ロビー団体、その他の特別利益団体からの献金、推薦、支援に大きく依存しています。そのため、自民党は市民よりもむしろ、こうした利害関係者に主に奉仕する傾向があります。

 頻繁にリーダーが入れ替わります。自民党は政策や理念の一貫性ではなく、派閥の利害に基づくため、派閥が主導権を争う中で、そのリーダーシップは常に流動的です。首相の交代が激しく、長期的な政策の進展が妨げられます。

専門知識と説明責任の欠如。自民党には、証拠に基づく解決策を開発する強力で独立した政策組織がありません。また、明確な綱領や指導者の権限もないため、厳しい問題に対する立場を取ることを避け、有権者から結果に対する説明責任を効果的に問われることもありません。

非競争的選挙。日本の選挙制度は、特別な利害関係者や農村部の有権者と密接な関係を持つ自民党に大きく有利といわれてきました。真の政策論争や権力競争がありません。野党は弱く、意味のある形で自民党に挑戦することができません。

自民党は近代的で政策主導型の民主主義政党の特徴がほとんどありません。日本の政治システムをより競争的で民主的なものにし、日本の問題に対する首尾一貫した政策的解決策を生み出すことができるものにするためには、改革が必要です。

日本は、米国のような近代政党の主要な特質をいくつか取り入れることで、大きな恩恵を受けるでしょう。主な利点は以下の通りです。

 明確な綱領とビジョン。政党は、政策の優先順位と哲学的原則の首尾一貫したセットを持つことができる。有権者は各政党の主張を正確に知ることができ、十分な情報に基づいた選択が可能になる。

 強力な国内組織。政党は、国レベルでも地方レベルでも強固な組織機構を持つことになります。これにより、政党は効果的にメッセージを広め、候補者を募り、有権者を動員し、政権を握った際には効果的に統治することができます。

 競争的な指導者選挙。党の指導者が討論を通じて、また党員の支持を得ることによって、その役割を競わなければならないのであれば、候補者のより良い審査と選出につながります。また、リーダーの正統性と権威も高まる。

政策の専門知識。独自のシンクタンク、政策スタッフ、アドバイザーを持つ政党は、問題に対処するための詳細な政策提案を作成することができます。ただ相手の意見に反応し批判するだけでなく、証拠に基づいたアイデアで議論を形成することができます。

責任の所在を明確にする。ある政党が過半数を獲得し、その党首が首相となった場合、その政党は自分たちの綱領を実行する権力と権限を持つことになります。有権者は、その結果に基づいて、誰を評価すべきか、誰を非難すべきかを知ることができます。

説明責任はより良い統治につながる。党内民主主義。党員、特に選挙で選ばれた議員は、綱領、指導者、候補者選定などの重要な決定について発言権を持ちます。このボトムアップのプロセスが党に生命を与え、党の指導者や政策が党員や有権者の望むものを実際に反映していることを保証します。

全体として、このような特徴を持つ近代的な政党を作ることは、日本に大きな利益をもたらすことでしょう。それは、真の政策論争を伴う民主的プロセスの再活性化につながり、首相が頻繁に入れ替わることを防止し、有権者に発言権と選択肢を与え、政府が国民の支持を得て首尾一貫した方法で問題に取り組むことを可能にします。米国のモデルは、日本も学ぶ価値があると思います。

維新 馬場代表は日本も二大政党を目指すべきとしていますが、政治体制を単純に真似るだけでは何も変わりません。日本ではまずは与野党に関わらず、政党の近代化を推進すべきです。

無論、日本の政党が近代政党化したからといって、現在の米国や英国の政治が理想からは程遠く、すぐに日本の政治が薔薇色になるということはありませんが、それにしても、日本の政党が近代政党ではないがために、同じ政党の中に、保守層から、リベラル層、さらには左翼までが混在していており、その正体は近代政党ではなく、選挙互助会に過ぎないよう状態になっていることは、改善・改革をすべきです。

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2023年7月23日日曜日

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バイデン氏、CIA長官を閣僚に格上げ 中ロ対応を評価

バーンズ中央情報局(CIA)長官



 バイデン米大統領は、23日までに、バーンズ中央情報局(CIA)長官を閣僚に格上げする措置を発表した。ロシアによるウクライナ侵略を受ける中で、米国の国家安全保障対策で果たしている重要な役割を評価した昇格となっている。

 バイデン氏は声明で、「彼の指導力で、CIAは中国との間の賢明な競争の管理など米国が直面する安全保障上の最大の挑戦に対する明確かつ長期的な対応を打ち出すことが出来ている」とその手腕をたたえた。

 CIAは昨年2月に始まったウクライナ侵略に絡む関連情報の真偽の選別で主導的な役割を果たし、米国の対ロシア戦略の構築に大きな存在感を示したとされる。

 長官自身、ウクライナの戦争への米国の対応を見極めるため、他の諸国と共にウクライナやロシアへ足を運んでもいた。

 CIA長官を閣僚職として位置づける動きは過去数年間、あったりなかったりした。トランプ前政権に仕えたポンペオ元長官やハスペル前長官は閣僚として処されたが、バイデン氏は就任時に同じ対応をしていなかった。

 バーンズ長官はバイデン氏の今回の対応を受け、「CIAが毎日果たしている米国の安全保障に対する重要な貢献を認め、我々の業務への大統領の信頼感を反映したものだ」と感謝。「我々が擁する要員による多大な貢献を代表する長官職にあることを名誉に思う。ヘインズ国家情報長官の指揮で優秀な情報機関網と共に奉仕出来ることは光栄である」と続けた。

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日米の政治体制はかなり異なるので、もしこの人事を日本に当てはめようとした場合、日本でCIA長官に最も近いのは国家安全保障局(NSS)でしょう。NSSは日本の国家安全保障政策を調整する内閣レベルの機関です。NSSのトップは内閣の一員である国家安全保障アドバイザ(NSA)である。

現在、国家安全保障局の局長は、秋葉 剛男氏です。

NSAは厳密には官僚ではないですが、国家安全保障に関する情報を提供し、首相に助言を与えるという点で、CIA長官と同じような役割を担っています。したがって、日本でCIA長官が閣僚になるとすれば、NSAが閣僚になるのと最も似ているといえるでしょう。

このたとえは正しくはないのですが安倍政権時代に「官邸のアイヒマン」と呼ばれた大物警察官僚の北村滋前局長が閣僚になったとしたら、日本でもこれはかなり物議を醸すことになったかもしれません。

北村滋氏

ただし、これはあくまでも大まかな比較であることに注意する必要があります。CIA長官とNSAの具体的な役割は同一ではないし、日本には他にも閣僚級の機関があります。

保守派の私としては、バイデン大統領がCIA長官を閣僚級に昇格させる決定を下したことに、いくつかの懸念を抱いています

1. CIAは行政府の権限下にある機関にとどまるべきで、事実上の政策決定機関になるべきではないです。CIA長官に他の閣僚との席を与えることは、情報機関を政治化し、政策決定に対する影響力を増幅させる危険性があります。

2. 監視と説明責任が低下するリスクがある。官房長官となったCIA長官は、国家情報長官からの直接の監視を受けなくなり、より自律性と独立性を得ることになります。これはCIAの行動やプログラムに対する説明責任を低下させる可能性があります。

3. バイデン政権が、より介入主義的な外交政策をとる予定であることを示す可能性があります。CIA長官を昇格させるということは、バイデン政権の外交政策において、諜報活動や秘密作戦がより大きな役割を果たす可能性を示唆しています。バイデン政権は、対外介入を減らし、より抑制的な外交政策をすべきです。

4. オバマ政権下で国務副長官を務めたウィリアム・バーンズ氏には懸念があります。彼はオバマ政権下で国務副長官を務めたが、その経歴から、客観的な分析のみに焦点を当てるのではなく、諜報活動に対して過度に政治的なアプローチを取る可能性があります。

イラン核合意における彼の役割も、その欠陥の多さを考えると気になるところです。

バイデン大統領が自分の思うように政権を組織する権限は尊重しますが、CIA長官を閣僚に昇格させることは望ましくないと思われます。情報コミュニティは、政策立案者に政治的でない、事実に基づいた分析を提供すべきであり、自ら政策立案者になるべきではないです。

ウィリアム・バーンズ氏のオバマ政権での経歴や役割を考えると懸念があります。彼は国務副長官としてオバマの外交政策、特にイラン、ロシア、中国といった外交政策の形成に重要な役割を果たしました。保守派からみれば、彼のこれらの国々に対する政策は甘すぎと受け取られるものでした。

大統領時代のオバマ氏

保守層は、政治や政策立案ではなく、客観的な諜報活動だけに集中するCIA長官を望んでいると考えられます。CIAのバーンズのリーダーシップの下で、事態がどのように展開するか見守る必要がありそうです

上の記事にもあるように、トランプ政権において、ポンペオCIA前長官は国務長官となり、ポンペオ氏がCIA長官をやめたあと、CIA長官に昇格したハスペル氏も閣僚として、処されていました。

ポンペオ国務長官を評価できる点を以下にあげます。

 ポンペオ国務長官は、中国とその悪質な影響力に対して、強く、原則的な姿勢をとりました。また、中国に対抗するため、インドのような同盟国との関係強化にも努めました。

これらは中国の地政学的脅威に立ち向かうための重要な一歩でした。ポンペオ氏はイランに対して「最大限の圧力」キャンペーンを展開し、欠陥だらけのイラン核合意から離脱しました。この厳しいアプローチはイランに対抗するために必要でした。

ポンペオ国務長官の懸念点を以下にあげておきます。

ポンペオ氏は外交において過度に党派的で政治的なアプローチをとっていると批判されることもありました。国務省の伝統的な使命を犠牲にして、トランプ個人への過度の忠誠を示したと感じる人もいました。

また、ポンペオ長官のもとでは職員の離職率が高く、士気にも問題があったとされました。

トランプ政権ではハスペルCIA長官も閣僚として処せられました。ハスペル氏について 評価できる点をあげます。 

 CIA長官として、ハスペル氏はテロ対策プログラムを継続・拡大し、米国が再び大規模な攻撃を回避できるようにしました。彼女は数十年のキャリアを持つ情報将校です。

 ハスペル氏の懸念を以下にあげます。9.11後のCIAの「尋問強化」プログラムにおけるハスペルの役割は、依然として物議を醸し、懸念されています。彼女の倫理基準へのコミットメントには疑問がありました。

 ポンペオと同様、ハスペルも客観的に情報機関を率いるのではなく、トランプ大統領の個人的な優先順位に寄り添いすぎているとの批判がありました。

全体として、ポンペオとハスペルは保守派の原則に沿った強力な国家安全保障への方向性を追求しましたが、トランプとの緊密な連携とリーダーシップの問題は懸念されました。閣僚は、大統領に客観的な情報と助言と提供すべきであり、彼らの政治的な考えを優先させるべきではありません。

しかし、ポンペオとハスペルの在任期間は、国内の安全保障を維持しつつ、中国やイランと対峙するといった保守派の主要目標を前進させました。閣僚は、本来非政治的なアプローチをすることが理想的です。たたこのバランスを維持することは、実際にはしばしば非常に困難を伴います。

トランプ政権の国務大臣だった頃のポンペオ氏

バイデン政権でCIA長官を閣僚に昇格させることは、日本のような同盟国に何らかの影響を与える可能性があります。

 評価できる点としては 、 バイデン政権下でも、情報共有と協力が米国の最優先事項であることを示す可能性があります。CIAは日本を含む外国の情報機関と緊密な関係にあります。バイデンは伝統的な同盟関係を重視しており、安全保障上の協力について同盟国を安心させたいのかもしれないです。

 CIA長官により高いレベルの役割を与えることは、バイデンが諜報活動とテロ対策に強い焦点を当てることを示す可能性があります。これは北朝鮮のような脅威に直面している同盟国にとっては歓迎すべきことかもしれないです。

一方懸念される点をあげます。 CIAの地位向上が、安全保障問題に対するバイデン氏の、より主張的あるいは介入的な米国外交政策アプローチを反映する可能性もあります。

もしCIAが海外で積極的な諜報活動を行なえば、同盟国をより危険な状況に引きずり込むことになりかねないです。

 情報当局に政策決定権が集中すれば、透明性や監視の目が行き届かなくなる危険性があります。その結果、日本のような同盟国は、米国の国家安全保障戦略や意思決定について、より不確実性を抱えることになりかねないです。

バイデン氏が指名したウィリアム・バーンズ氏は、多くの同盟国が批判するイランとの取引のような政策を支持していました。もし彼がCIA長官として同盟国と対立する政策的立場をとれば、協力関係や信頼関係にひずみが生じるかもしれないです。

情報機関がより大きな権限と自治権を得ることに不快感があるかもしれないです。強固な安全保障上の結びつきを重視する一方で、同盟国はCIAが政策に口を出したり、他の地域を不安定化させたりすることを望まないでしょう。

CIA長官の地位の向上は、バイデン政権下での米国の安全保障政策のより積極的な姿勢を反映し、時として同盟国の考えと乖離する可能性もあります。結果として、米国の民主党政権の他同盟国とは異質な価値観を押し付けることになるかもしれません。

情報当局に権限を与えることは、意思決定における透明性や監視機能を低下させる危険性があります。同盟国は安全保障に関する米国との緊密な協力関係を重視しますが、同時に協議や政策の一致も重要視します。

バイデンは、日本のような同盟国を情報共有や戦略面で安心させる一方で、CIAが外交政策に一方的な影響力を持ちすぎないようにする必要があります。このバランスをとることが、同盟国に対するバイデンのアプローチの鍵となるでしょう。

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2023年7月22日土曜日

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対中強硬派の元米政府高官、台湾有事に備えた軍事力強化を指摘 ウクライナ積極的支援の岸田首相の戦略は「行きすぎだ」

エルブリッジ・コルビー氏

 アメリカのバイデン大統領は閣僚らを相次いで中国に派遣し、緊張が続く米中関係の安定化を模索しています。一方で、対中強硬派の元政府高官からは、台湾有事に備えた軍事力の強化を急ぐべきだとの声も出ています。  トランプ政権で国防副次官補として、対中国戦略の策定に関わったエルブリッジ・コルビー氏は、「中国との競争の管理」を掲げるバイデン政権の政策は、中国が台湾侵攻を真剣に検討している場合には機能しないと指摘しました。  コルビー元国防副次官補「最も重要なことは中国に対し、大規模な紛争を起こすことは、自国の利益にならないと思わせることだ。重要なのは『拒否戦略』、つまり軍事力の行使は失敗すると分からせることだ」  コルビー氏はウクライナへの軍事支援をアメリカが過剰に負担していると指摘し、むしろ対中国のための軍事力増強を急ぐべきだと指摘しました。また、経済制裁によって、中国の台湾侵攻の決意を変えることはできないとも分析しています。  一方、ウクライナを積極的に支援することで、対中国での欧米諸国の協力を引き出そうとする岸田首相の戦略について「行きすぎだ」と警鐘を鳴らしました。  コルビー元国防副次官補「政策として(欧米からの)感謝に訴えることは賢明ではない。重要なのは軍事力だが、それがウクライナに費やされている。私が日本や台湾なら『違う、ここ(インド太平洋)に注目してくれ』と言う」  コルビー氏は、その上で、日本が防衛費をGDP(=国内総生産)の3%にまで引き上げることが望ましいとしています。

【私の論評】同盟国からの喝采ではなく、中国に対抗する力による平和こそが日本が歩むべき道(゚д゚)!

上の記事のコルビー氏の指摘は正しいと思います。もし中国共産党が、米国が自分たちに甘くなっているという考えを持てば、権威主義的支配をさらに拡大するチャンスだと考えるでしょう。

中国共産党博物館

台湾への侵攻を米国は容認できません。台湾とこの地域の同盟国を守ることを明確にする必要があります。外交官を中国に派遣して世間話をするのは良いことですが、軍事的な態勢をしっかりと示すことでそれを裏付けるべきです。暴君が理解できる唯一の言語は力です。バイデン大統領は、ソ連との戦いで大いに役立った、力による平和という実績ある戦略に従うのが良いでしょう。弱さは侵略を招くのみです。

先日もこのブログで紹介したように、6月22日付の米ワシントン・ポスト(WP)紙は「米国のアジア同盟国は静かに中国への対抗に参加」との同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンの論説記事を掲載し、中国と対峙する上で、サリバン大統領補佐官訪日と初の日米比韓高官のミニラテラル開催はブリンケン国務長官の訪中より重要だと指摘しています。

アジアにおける同盟関係は、中国の地域支配の野心に対抗するための基本です。日本、韓国、インドのような同盟国との会談は、リベラルな外交官による空虚な話よりもはるかに強いメッセージを北京に送ることになります。

米国が同盟国と肩を並べることは、インド太平洋地域の平和と繁栄に対する米国のコミットメントの強さを示すものです。米国はあまりにも長い間、中国との誤った関与政策を優先し、アジアの同盟関係を軽視してきました。

米国は、中国が米国を経済的に利用し、世界中にその勢力を拡大することを許してしまいました。今こそ米国は、民主主義の価値観を共有する同盟国の重要性を再認識すべき時です。インド、日本、韓国などとともに、中国の侵略に対抗し、台湾と香港の自由を守り、この地域の自由貿易を促進することができます。

バイデンはジョシュ・ロギンのような声に耳を傾け、同盟関係を中国戦略の中心に据えるのが賢明でしょう。バイデン政権による中国との協力や競争の管理という話はすべて失敗する運命にあるといえます。

中国はそれを弱点と見なし、利用するでしょう。ロナルド・レーガン氏や安倍晋三氏は、平和は強さと同盟国との結束によってもたらされることを知っていました。バイデンは彼らの知恵に従うべきでしょう。同盟こそが勝利への鍵なのです。

ウクライナへの軍事支援を米国が過剰に負担しているというコルビー氏の指摘は、正しいです。ウクライナのような遠い紛争に資源を浪費するのではなく、中国の侵略を抑止することが最優先されるべきです。なぜなら、ロシアの人口とGDPは両方とも中国の1/10に過ぎず、中国と比較すれば、ロシアの脅威ははるかに小さなものであるからです。

中国がアジアで、ロシアのような振る舞いをすれば、世界に計り知れない惨禍をもたらすのは、確かです。眼の前の戦争ばかり注視して、より大きな脅威を無視することはできません。それに、バイデンの対露政策は完璧に間違えていると思います。戦争前に、ロシアがウクライナに侵攻した場合、米国単独でもウクライナに軍を派遣すると表明すべきでした。

習近平(左)とプーチン(右)

中国を抑止できる唯一の方法は、太平洋における強力な軍事力の誇示以外にありません。制裁や厳しい言葉は無意味です。そもそも、彼ら自身があらゆる権力闘争を力で切り抜けて指導者になったのですから、中国の共産主義指導者は力しか理解しません。米国は、海軍力を急速に増強し、この地域のミサイル防衛を強化し、台湾へのいかなる動きも米軍の全戦力で迎え撃つことを明確にすべきです。これについては、安倍元総理も暗殺される直前にそうすべきと、語っていました。

民主党政権は過去に予算削減と無駄遣いで軍備を弱体化させました。それは終わらせなければならないです。台湾と同盟国を守るために、より多くの艦船、飛行機、軍隊が必要です。中国への依存を許してしまった今、経済的な脅しは空虚に響きます。

コルビー氏が言うように、中国が台湾を奪取する決意を固めているのであれば、米軍の大規模な報復という信頼できる脅威だけが、彼らの台湾侵攻の意図を砕くことになるでしょう。バイデン氏は彼のアドバイスに耳を傾けるのが賢明でしょう。

アジア以外で資源を浪費すぎるのをやめ、アジアにおける軍事力を再構築し、台湾を防衛することを明確にし、それを貫く準備をすべきです。それが中国の野心に対抗する唯一の方法です。バイデンが必要なことをできないのであれば、おそらく、米国はそれをするリーダーを見つける時といえるかもしれません。米国の安全保障は、力による平和にかかっているのです。

岸田首相の戦略についてもコルビー氏は鋭い洞察力を発揮しているといえると思います。ウクライナを支援することで欧米の機嫌を取ろうという日本の戦略は近視眼的ともいえます。日本の安全保障は、欧州の同盟国から喝采を浴びることではなく、中国からの侵略を抑止することにかかっているのです。

日本がウクライナ等に費やそうとする資源は、台湾を守り中国に対抗するために日本の軍事力を高め、米国と協力することに費やした方が賢明です。コルビー氏の言う通り、日本は同盟国からの感謝や空約束に頼るべきでありません。

バイデン大統領(左)と岸田首相(右)

日本は、自国は自分たちで護るという気概をみせるべきです。防衛費をGDPの3%以上に増やし、海軍力とミサイル戦力を増強し、この地域における米国の軍事戦略と一体化すべきでしょう。ウクライナをめぐる同盟国へのアピールは、日本と台湾が直面している真の脅威から目をそらすものです。

中国は、米国の影響力を西太平洋から押し出すために積極的に軍備を拡大しており、台湾はその正面に位置していまい。安倍元総理大臣が語ったように、台湾有事は日本有事でもあるのです。

このブログでは、中国による台湾侵攻は難しいことを何度か述べてきました。それは、あまりに多くの人が、中国の台湾侵攻が簡単と思い込んでいるようなので、軍事的にはそうではないことを強調したかったからです。実際簡単であれば、もうとうに侵攻していることでしょう。

ロシアのウクライナ侵攻も軍事的にはかなり難しいことも強調しましたが、現在のロシアのウクライナ侵攻はまさにその通りの展開になっています。多くの都市をミサイルで破壊しつくしてもなお、ロシアはウクライナで目的を達成できていません。

確かに、軍事的には侵攻は難しいのですが、中国が台湾を破壊するのは容易いです。台湾は、ウクライナよりははるかに領土が狭いため、ウクライナよりもはるかに破壊はし易いです。ロシアがいままで、ウクライナに打ち込んできたミサイルに相当するミサイルを台湾に打ち込めば、台湾の領土のほとんどは破壊しつくされるでしょう。そうして、中国は台湾を破壊さえすれば、簡単に侵攻できると、勘違いする可能性もあります。

勘違いしても、いざ本当に侵攻ということになれば、中国人民解放軍はその使命を達成するのは現実にはかなり困難かもしれませんが、しかし台湾の受ける被害は甚大なものとなります。これは、絶対に避けるべきです。侵攻できなくても破壊そのものを許してしまえば、それは彼らにとって、他国に脅威を与える格好のツールになってしまいます。

近隣諸国は、侵攻されないまでも、破壊し尽くされる脅威におののいて、中国の言う通りになるということも考えられます。そのようなことにならないためにも、中国に台湾を破壊する機会を何が何でも与えてはならないのです。

日本は、台湾の防衛と中国への対抗を最優先課題としなければならないのです。西側の同盟国から賞賛されるようなことは無視し、日本と地域のパートナーを守るために必要なことだけに集中すべきです。

高度な軍事力に投資し、有事の際に台湾を支援する態勢を強化し、米インド太平洋軍との協力をさらに進めるべきです。遠く離れたウクライナを守るために声を合わせるのは、空虚なパフォーマンスに過ぎません。台湾を守ることこそが特に日本にとっては、最も重要なのです。コルビー氏は賢明な助言をしていると思います。

そうして、日本が中国に対峙することが、中国がロシアを支援する力を削ぐことにもなることを忘れるべきではありません。中国にしっかり対峙することが、ウクライナを助けることにもなるのです。

このあたりを勘違いすべきではありません。ウクライナにも莫大な支援をしつつ、中国にもしっかりと対峙するのは難しいです。ウクライナへの支援はできる範囲ですべきであって、日本にとっては台湾を守り抜くのが最優先課題なのです。

コルビー氏は賢明な助言をしています。岸田政権は、海外に媚びへつらうという見当違いの戦略を捨て、もっと身近なところにある真の国家安全保障の優先事項に集中すべきです。同盟国からの喝采ではなく、中国に対抗する力による平和こそが最も確かな道です。日本は彼の助言に耳を傾けるのが良いでしょう。

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岸田政権「サラリーマン増税」底なし…奨学金・遺族年金・失業等給付もリストアップ 「アベノミクス以前に逆戻り」専門家警鐘

 岸田文雄政権の「サラリーマン増税」政策に国民は反発している。政府税制調査会の中期答申では、退職金や生命保険控除などの見直しが盛り込まれており、国民の生活に直結する項目も含まれている。専門家は、今回の答申で透けて見える「増税・負担増」路線について、「アベノミクス以前に逆戻りする」と警鐘を鳴らしている。

政府税制調査会で挨拶する岸田首相

 夕刊フジの公式サイトには、「税の限りを尽くす」「盗りやすいところから盗るの典型」などの多くのコメントが寄せられた。日本維新の会の馬場伸幸共同代表も、ツイッターで記事をリツイートし、「「無限増税」内閣にカツを入れましょう!!」と投稿した。

 控除については、ほかにも地震保険料控除や電気自動車(EV)や燃料電池車の課税強化も提言されている。EVは揮発油税や軽油引取税などの燃料課税がなく、税収減となるため、課税強化は「一定の合理性がある」と強調している。

 答申では、「非課税所得」についても、「他の所得との公平性や中立性の観点から妥当であるかについて、政策的配慮の必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要がある」としている。

 参考例として通勤手当や社宅の貸与などが挙げられているが、ほかにも少額投資への非課税を売りにしたNISAの譲渡益や配当、失業等給付、遺族基礎年金や、給付型奨学金も含まれている。

 このほか、「資産課税」では、固定資産税が槍玉に挙がった。住宅用地について、小規模住宅用地が一般住宅用地より低い課税標準としている特例や、一定の条件を満たす新築住宅について3年間の減額措置が行われている例を紹介。「税負担軽減措置等はその政策目的、効果等を十分に見極めた上で、不断の見直しを行わなければなりません」と指摘している。

 上武大学の田中秀臣教授(日本経済論、経済思想史)は、「財務省や税調は、幅広く、声が小さく、徴収しやすい項目から課税していく狙いではないか。サラリーマンには既得権益を主張する団体もなく、退職金も引退間際で波風立てたくない層を標的にしている」と指摘している。

 答申では、消費税についても「税体系の中で重要な役割を果たす基幹税」と言及したうえで、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中、米国を除く37カ国で付加価値税が実施されていると指摘。標準税率は「20%以上の国が23カ国」として、税率引き上げ余地があると暗に示唆しているようだ。

 「細かいところからサラミ戦術(サラミを薄切りするように少しずつ相手側に入り込むこと)で徐々に進め、消費増税も忘れてはいない」と田中氏はみる。

 田中氏は政府や税調の方向性について「戦後、GHQ(連合国軍総司令部)は日本を大国にさせないよう財政法で国債発行を禁じた。これが1990年代以降の景気低迷期に足かせとなり、緊縮路線がとられ停滞が続いた。アベノミクスの成果で景気が回復しようとする中、緊縮派は財政法の理念を再活性化させ、巻き返しを図ろうとしている」と語っている。

 岸田政権は防衛増税について2025年以降に先送りするほか、少子化対策の財源についても先送りの姿勢だ。22年度の国の税収は約71兆円と過去最高を記録したこともあり、増税を打ち出しにくい状況だが、それでも税制見直しの方針が掲げられている以上、油断は禁物だ。

 田中氏は「アベノミクスの影響を無視できない一方、本音の緊縮路線の間で揺れているようにみえる。しっかり問題点を指摘していく必要がある」と強調しました。

【私の論評】改憲論議だけでなく、実は憲法とセットで日本を弱体化する財政法4条についての議論もすべき(゚д゚)!

1947年に施行された財政法は4条で「国の歳出は、公債又(また)は借入金以外の歳入を以(もっ)て、その財源としなければならない」と定めています。


その日本では、長い間国債は発行されなかったのですか、1965(昭和40)年11月19日、戦後初の(赤字)国債発行が閣議決定されました。佐藤栄作内閣の時代です。

法施行直後に出版された「財政法逐条解説(コンメンタール)」にはこう記されています。「公債のないところに戦争はないと断言し得るのである。従って、本条は新憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証せんとするものである」。

要するに、過去においては政府が国債を発行し、戦争を遂行したため、国債を発行さえしなければ、戦争はないという馬鹿げた理念を語っているわけです。これは、護憲派が憲法9条があるから戦争がないと言っているのと同じようなものです。

無論それだけではなく、当時の日本は戦費調達のため膨大な国債を発行したため、超インフレになりかけていました。これも、公債を発行すべきでないと主張する根拠にもなっています。

戦時中の日本は、戦前からソ連と対峙しており、朝鮮半島の併合や満州国の設立は、そのために行われたものです。これを侵略とする人もいますが、当時は現在のような国連も存在せず、国際連盟はあったものの、十分には機能していませんでした。そのため、現在の尺度で、これを単純に侵略戦争と断定するのは間違いだと思います。ただ、これには様々な意見があるとは思います。

戦後米国に帰国したマッカーサーは公聴会で以下のような発言をしています。

「日本は4つの小さい島々に8千万人近い人口を抱えていたことを理解しなければならない」

「日本の労働力は潜在的に量と質の両面で最良だ。彼らは工場を建設し、労働力を得たが、原料を持っていなかった。綿がない、羊毛がない、石油の産出がない、スズがない、ゴムがない、他にもないものばかりだった。その全てがアジアの海域に存在していた」

「もし原料供給を断ち切られたら1000万~1200万人の失業者が日本で発生するだろう。それを彼らは恐れた。従って日本を戦争に駆り立てた動機は、大部分が安全保障上の必要に迫られてのことだった」

もし、当時の日本が戦争遂行のために、公債を発行しなかった場合、どうなったでしょうか。そうすれば日本は、米英と戦争することはなかったかもしれませんし、戦後に超インフレになりかけるということもなかったでしょうが、軍事力を強化できず、ソ連に占領されていたかもしれません。そこまでいかなくても、ソ連の覇権の及ぶところとなっていたかもしれません。

戦後は、ソ連に組み込まれたかもしれません。そうして、ソ連崩壊後にウクライナのように、独立したかもしれませんが、その後も事あるごとに、ロシアに干渉され、今日のウクライナのようになり、今頃ロシアに侵攻されていたかもしれません。このような可能性を無視して、公債を発行しなければ、戦争が起こらないなどと主張するのは、甚だ無責任としか思えません。

ノモンハン事件(日ソ紛争)時の現地での停戦交渉の写真

 公債発行による政府支出の賄いを禁じている日本の財政法第4条は極めて誤った方向性を示しているように見え、第二次世界大戦後にGHQによって植え付けられた緊縮財政の教義を反映しているとみるべきでしよう。

 現代世界中の国々のほとんどは、財政赤字と債務が財政政策の有用な手段であると認識しており、この厳格な均衡予算義務が日本の経済の柔軟性を妨げています。

 この法律が GHQ の戦後占領政策の影響を受けているのは間違いないと思います。以下にその論拠をあげます。

 1) この法律は、日本の降伏からわずか 2 年後の 1947 年に可決され、当時 GHQ は立法改革と官僚改革に対して最大限の統制力を持っていました。 

2) 財政の均衡を図るために赤字と借金を厳しく制限することで、GHQ の緊縮財政の考え方を体現しています。 これはGHQの経済改革の優先目標でした。

 3) 当時のGHQが好んだ自由放任主義、均衡予算主義に沿った形で政府の財政・金融政策を制約する。 このイデオロギーが彼らの占領政策の多くを形作りました。

 4) 現在、政府運営資金への公債の使用をこれほど厳格に制限する法律を持っているような民主主義国は日本以外にありません。 GHQの見解とは異なり、赤字と借金は適度であれば、有益な財政的手段であるとほとんどの人が認識しています。

 5) この法律は、日本の経済政策の柔軟性、成長、回復力を妨げるものとして多くの経済学者から批判されています。

 これは当時の時代遅れの考え方を反映した異常なものです。 これらは、日本の財政法第 4 条が占領期間中の GHQ の政策目的によって指示または間接的に影響を受けたことを強く示唆しています。

 この条項には、GHQの緊縮財政の教義と政府の経済介入に対する制約の痕跡が残っています。 少なくとも、GHQ はこの法律に反対したり修正したりしていません。

この法律には、GHQ のイデオロギー的立場との一貫性が示されています。 この法律は、当時の主流の経済観を反映していたものの、後から振り返ってみると間違った方向に導かれていた可能性が高いです。無論超インフレになりかけた当時は妥当性・有用性はありましたが、これを法律にしてしまったことは間違いでした。

 しかし、これはその有用性をはるかに超えて長く存続しており、おそらく官僚の惰性と現状維持バイアスのせいで存続しているだけでしょう。 第 4 条の改正または廃止は、日本の経済政策の柔軟性と回復力に利益をもたらす可能性があります。

 いかなる国の財政においても適度な赤字は賢明であり、法的に禁止されるべきものではありません。 GHQ は、今日でも日本に影響を与えているこの法律による緊縮財政義務について、直接的または間接的に何らかの責任を負った可能性があります。 彼らの影響力とイデオロギーは長い間日本に影を落とし続けているのは間違いないようです。

このイデオロギーは米国にも残っており、それは最近の債務上限問題でも示されています。しかし、米国ではこの問題に関しては、過去何回も発生しており、結局毎回柔軟に対処するようになっています。

財務省からすれば、公債発行をなるべくしないで、緊縮財政をすることは、法律に基づいていわけであり、彼らの考えからすれば、自分たちは正しいのであり、増税なしで国債発行、日銀買い取り方式で合計100兆円の補正予算を組み、コロナ対策を実施した、安倍・菅氏こそ異端というべき存在なのでしょう。

自民党の中には、積極財政派と、財政健全派がしのぎを削っているようです。最近は積極財政派も増えているようではありますが、依然として財政健全派の力も侮れないです。

私は、日本の財政法第 4 条を改正または廃止すべきと思います。 国債の発行を財源とする責任ある限定的な赤字支出を認めれば、切望されていた柔軟性と経済の安定がもたらされでしょう。

第4条の改正には政治的・政策的リスクがないわけではないですが、賢明な管理と監視があれば、現代先進国のほとんどが成長と安定を促進するために活用している柔軟な経済政策ツールを日本政府が得ることになります。 

厳格な均衡予算ルールはもはやその有用性をはるかに超えており、責任ある持続可能な赤字支出を目指して改革を慎重かつ賢明に進めるべきです。 政府が経済に対して責任ある財政運営ができることが証明されるにつれ、時間が経ち、安全策が講じられれば、頑なな緊縮財政への暴走を防ぐことができるようになるでしょう。

現在日本では、憲法9条を巡って改憲論議は、行われています。しかし、財政法4条については、ほとんど議論されていません。

現状の日本においては、安倍総理のような総理大臣の時代には、増税が先送りされることなどがあります。ただ、三党合意によって決まった消費税増税に関して、安倍総理ですら、これを先送りし続けることはできず、結局在任中に二度にわたって消費税増税をせざるを得ない状況に追い込まれました。

岸田政権になってからは、増税勢力が勢いづき、とにかく増税しようという動きが強まっています。

財務省

日本では、実体経済に関係なく、増税すべきという圧力は常態化しているといっても過言ではありません。この動きを絶って、実体経済に応じて柔軟な財政政策を行えるようにするには、まずは、財政法4条を変えるしかないと思います。

そのための論議をするだけでも、多くの人たちが、なぜ日本には実体経済を無視して、増税をしたがる人たちが大勢いるのか認識するようになると思います。

日本では、改憲議論はなされますが、なぜか財政法4条の議論はなされません。しかし、上で述べてきたことからもわかるように、実は憲法とセットで日本を弱体化しているのが財政法4条にともいえると思います。そうして、これはまさに終戦直後のGHQのイデオロギーに沿ったものであり、米国議会の多数が日本の改憲に賛成している現在では、時代遅れも甚だしいと言わざるを得ません。

政府の仕事でも、会社の仕事でも予算の配分がなければ何もできません。日本を弱体化させようとする視点に立てば、これと同じく憲法を制定するだけでは、日本を弱体化するのは難しいです、そのための財政的裏付けがまさしく財政法4条であるといえると思います。GHQは意図的に、憲法と財政法4条のセットで日本を弱体化しようと企んだとしたとしか思えません。

積極的にそのようなことをしたかどうかは、断定できませんが、少なくとも誘導したか、これを許容したかのいずれかであるのは間違いないと思います。

ただ、現在では日米は同盟国であり、日本はもとより、米国にも日本を弱体化させて得るものはありません。このような時代遅れな法律は改正すべきときがきたといえます。

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