2023年7月22日土曜日

対中強硬派の元米政府高官、台湾有事に備えた軍事力強化を指摘 ウクライナ積極的支援の岸田首相の戦略は「行きすぎだ」―【私の論評】同盟国からの喝采ではなく、中国に対抗する力による平和こそが日本が歩むべき道(゚д゚)!

対中強硬派の元米政府高官、台湾有事に備えた軍事力強化を指摘 ウクライナ積極的支援の岸田首相の戦略は「行きすぎだ」

エルブリッジ・コルビー氏

 アメリカのバイデン大統領は閣僚らを相次いで中国に派遣し、緊張が続く米中関係の安定化を模索しています。一方で、対中強硬派の元政府高官からは、台湾有事に備えた軍事力の強化を急ぐべきだとの声も出ています。  トランプ政権で国防副次官補として、対中国戦略の策定に関わったエルブリッジ・コルビー氏は、「中国との競争の管理」を掲げるバイデン政権の政策は、中国が台湾侵攻を真剣に検討している場合には機能しないと指摘しました。  コルビー元国防副次官補「最も重要なことは中国に対し、大規模な紛争を起こすことは、自国の利益にならないと思わせることだ。重要なのは『拒否戦略』、つまり軍事力の行使は失敗すると分からせることだ」  コルビー氏はウクライナへの軍事支援をアメリカが過剰に負担していると指摘し、むしろ対中国のための軍事力増強を急ぐべきだと指摘しました。また、経済制裁によって、中国の台湾侵攻の決意を変えることはできないとも分析しています。  一方、ウクライナを積極的に支援することで、対中国での欧米諸国の協力を引き出そうとする岸田首相の戦略について「行きすぎだ」と警鐘を鳴らしました。  コルビー元国防副次官補「政策として(欧米からの)感謝に訴えることは賢明ではない。重要なのは軍事力だが、それがウクライナに費やされている。私が日本や台湾なら『違う、ここ(インド太平洋)に注目してくれ』と言う」  コルビー氏は、その上で、日本が防衛費をGDP(=国内総生産)の3%にまで引き上げることが望ましいとしています。

【私の論評】同盟国からの喝采ではなく、中国に対抗する力による平和こそが日本が歩むべき道(゚д゚)!

上の記事のコルビー氏の指摘は正しいと思います。もし中国共産党が、米国が自分たちに甘くなっているという考えを持てば、権威主義的支配をさらに拡大するチャンスだと考えるでしょう。

中国共産党博物館

台湾への侵攻を米国は容認できません。台湾とこの地域の同盟国を守ることを明確にする必要があります。外交官を中国に派遣して世間話をするのは良いことですが、軍事的な態勢をしっかりと示すことでそれを裏付けるべきです。暴君が理解できる唯一の言語は力です。バイデン大統領は、ソ連との戦いで大いに役立った、力による平和という実績ある戦略に従うのが良いでしょう。弱さは侵略を招くのみです。

先日もこのブログで紹介したように、6月22日付の米ワシントン・ポスト(WP)紙は「米国のアジア同盟国は静かに中国への対抗に参加」との同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンの論説記事を掲載し、中国と対峙する上で、サリバン大統領補佐官訪日と初の日米比韓高官のミニラテラル開催はブリンケン国務長官の訪中より重要だと指摘しています。

アジアにおける同盟関係は、中国の地域支配の野心に対抗するための基本です。日本、韓国、インドのような同盟国との会談は、リベラルな外交官による空虚な話よりもはるかに強いメッセージを北京に送ることになります。

米国が同盟国と肩を並べることは、インド太平洋地域の平和と繁栄に対する米国のコミットメントの強さを示すものです。米国はあまりにも長い間、中国との誤った関与政策を優先し、アジアの同盟関係を軽視してきました。

米国は、中国が米国を経済的に利用し、世界中にその勢力を拡大することを許してしまいました。今こそ米国は、民主主義の価値観を共有する同盟国の重要性を再認識すべき時です。インド、日本、韓国などとともに、中国の侵略に対抗し、台湾と香港の自由を守り、この地域の自由貿易を促進することができます。

バイデンはジョシュ・ロギンのような声に耳を傾け、同盟関係を中国戦略の中心に据えるのが賢明でしょう。バイデン政権による中国との協力や競争の管理という話はすべて失敗する運命にあるといえます。

中国はそれを弱点と見なし、利用するでしょう。ロナルド・レーガン氏や安倍晋三氏は、平和は強さと同盟国との結束によってもたらされることを知っていました。バイデンは彼らの知恵に従うべきでしょう。同盟こそが勝利への鍵なのです。

ウクライナへの軍事支援を米国が過剰に負担しているというコルビー氏の指摘は、正しいです。ウクライナのような遠い紛争に資源を浪費するのではなく、中国の侵略を抑止することが最優先されるべきです。なぜなら、ロシアの人口とGDPは両方とも中国の1/10に過ぎず、中国と比較すれば、ロシアの脅威ははるかに小さなものであるからです。

中国がアジアで、ロシアのような振る舞いをすれば、世界に計り知れない惨禍をもたらすのは、確かです。眼の前の戦争ばかり注視して、より大きな脅威を無視することはできません。それに、バイデンの対露政策は完璧に間違えていると思います。戦争前に、ロシアがウクライナに侵攻した場合、米国単独でもウクライナに軍を派遣すると表明すべきでした。

習近平(左)とプーチン(右)

中国を抑止できる唯一の方法は、太平洋における強力な軍事力の誇示以外にありません。制裁や厳しい言葉は無意味です。そもそも、彼ら自身があらゆる権力闘争を力で切り抜けて指導者になったのですから、中国の共産主義指導者は力しか理解しません。米国は、海軍力を急速に増強し、この地域のミサイル防衛を強化し、台湾へのいかなる動きも米軍の全戦力で迎え撃つことを明確にすべきです。これについては、安倍元総理も暗殺される直前にそうすべきと、語っていました。

民主党政権は過去に予算削減と無駄遣いで軍備を弱体化させました。それは終わらせなければならないです。台湾と同盟国を守るために、より多くの艦船、飛行機、軍隊が必要です。中国への依存を許してしまった今、経済的な脅しは空虚に響きます。

コルビー氏が言うように、中国が台湾を奪取する決意を固めているのであれば、米軍の大規模な報復という信頼できる脅威だけが、彼らの台湾侵攻の意図を砕くことになるでしょう。バイデン氏は彼のアドバイスに耳を傾けるのが賢明でしょう。

アジア以外で資源を浪費すぎるのをやめ、アジアにおける軍事力を再構築し、台湾を防衛することを明確にし、それを貫く準備をすべきです。それが中国の野心に対抗する唯一の方法です。バイデンが必要なことをできないのであれば、おそらく、米国はそれをするリーダーを見つける時といえるかもしれません。米国の安全保障は、力による平和にかかっているのです。

岸田首相の戦略についてもコルビー氏は鋭い洞察力を発揮しているといえると思います。ウクライナを支援することで欧米の機嫌を取ろうという日本の戦略は近視眼的ともいえます。日本の安全保障は、欧州の同盟国から喝采を浴びることではなく、中国からの侵略を抑止することにかかっているのです。

日本がウクライナ等に費やそうとする資源は、台湾を守り中国に対抗するために日本の軍事力を高め、米国と協力することに費やした方が賢明です。コルビー氏の言う通り、日本は同盟国からの感謝や空約束に頼るべきでありません。

バイデン大統領(左)と岸田首相(右)

日本は、自国は自分たちで護るという気概をみせるべきです。防衛費をGDPの3%以上に増やし、海軍力とミサイル戦力を増強し、この地域における米国の軍事戦略と一体化すべきでしょう。ウクライナをめぐる同盟国へのアピールは、日本と台湾が直面している真の脅威から目をそらすものです。

中国は、米国の影響力を西太平洋から押し出すために積極的に軍備を拡大しており、台湾はその正面に位置していまい。安倍元総理大臣が語ったように、台湾有事は日本有事でもあるのです。

このブログでは、中国による台湾侵攻は難しいことを何度か述べてきました。それは、あまりに多くの人が、中国の台湾侵攻が簡単と思い込んでいるようなので、軍事的にはそうではないことを強調したかったからです。実際簡単であれば、もうとうに侵攻していることでしょう。

ロシアのウクライナ侵攻も軍事的にはかなり難しいことも強調しましたが、現在のロシアのウクライナ侵攻はまさにその通りの展開になっています。多くの都市をミサイルで破壊しつくしてもなお、ロシアはウクライナで目的を達成できていません。

確かに、軍事的には侵攻は難しいのですが、中国が台湾を破壊するのは容易いです。台湾は、ウクライナよりははるかに領土が狭いため、ウクライナよりもはるかに破壊はし易いです。ロシアがいままで、ウクライナに打ち込んできたミサイルに相当するミサイルを台湾に打ち込めば、台湾の領土のほとんどは破壊しつくされるでしょう。そうして、中国は台湾を破壊さえすれば、簡単に侵攻できると、勘違いする可能性もあります。

勘違いしても、いざ本当に侵攻ということになれば、中国人民解放軍はその使命を達成するのは現実にはかなり困難かもしれませんが、しかし台湾の受ける被害は甚大なものとなります。これは、絶対に避けるべきです。侵攻できなくても破壊そのものを許してしまえば、それは彼らにとって、他国に脅威を与える格好のツールになってしまいます。

近隣諸国は、侵攻されないまでも、破壊し尽くされる脅威におののいて、中国の言う通りになるということも考えられます。そのようなことにならないためにも、中国に台湾を破壊する機会を何が何でも与えてはならないのです。

日本は、台湾の防衛と中国への対抗を最優先課題としなければならないのです。西側の同盟国から賞賛されるようなことは無視し、日本と地域のパートナーを守るために必要なことだけに集中すべきです。

高度な軍事力に投資し、有事の際に台湾を支援する態勢を強化し、米インド太平洋軍との協力をさらに進めるべきです。遠く離れたウクライナを守るために声を合わせるのは、空虚なパフォーマンスに過ぎません。台湾を守ることこそが特に日本にとっては、最も重要なのです。コルビー氏は賢明な助言をしていると思います。

そうして、日本が中国に対峙することが、中国がロシアを支援する力を削ぐことにもなることを忘れるべきではありません。中国にしっかり対峙することが、ウクライナを助けることにもなるのです。

このあたりを勘違いすべきではありません。ウクライナにも莫大な支援をしつつ、中国にもしっかりと対峙するのは難しいです。ウクライナへの支援はできる範囲ですべきであって、日本にとっては台湾を守り抜くのが最優先課題なのです。

コルビー氏は賢明な助言をしています。岸田政権は、海外に媚びへつらうという見当違いの戦略を捨て、もっと身近なところにある真の国家安全保障の優先事項に集中すべきです。同盟国からの喝采ではなく、中国に対抗する力による平和こそが最も確かな道です。日本は彼の助言に耳を傾けるのが良いでしょう。

【関連記事】

墓穴を掘る中国 進む日米韓と日米比の結束―【私の論評】インド太平洋地域におけるミ二ラテラリズムの台頭は、安倍元総理が夢見ていたインド太平洋同盟の始まり(゚д゚)!

中国が東南アジアから撤退開始、経済問題に直面し―【私の論評】中国は、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアでも撤退しつつある(゚д゚)!

中国、NATO日本事務所に反発 「歴史の教訓くみ取れ」―【私の論評】中国は、将来「インド太平洋諸国同盟」が出来上がることを恐れている(゚д゚)!

なぜ台湾を守る必要があるのか、その三つの理由―【私の論評】台湾有事に備えて、日本は台湾への軍事支援ができる体制を整えるべき(゚д゚)!

0 件のコメント:

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...