2023年7月1日土曜日

中国が「対外関係法」を施行 米にらみ対抗姿勢を明記―【私の論評】中共が、何の制約も制限もなく、自由に外交問題に関与し、外国人を取り締まる体制を確立するその第一歩か(゚д゚)!

中国が「対外関係法」を施行 米にらみ対抗姿勢を明記
 中国は2023年7月1日、外交政策の基本原則を定めた「対外関係法」を施行しました。主権や安全を守るために報復措置をとる権限を明記するなど、対立の長期化が見込まれる米国への対抗姿勢を示す内容です。中国は同日にスパイ行為の定義を拡大し、取り締まりを徹底する「改正反スパイ法」も施行しており、習近平政権の対外強硬姿勢が法制面でも鮮明になっています。

 全45条の対外関係法は米国を念頭に「覇権主義と強権政治に反対する」とした上で「中国の主権、安全、発展の利益を損なう行為に対して相応の対抗・制限措置を講じる権利を有する」と定めました。外交担当トップの王毅共産党政治局員は6月末、党機関紙、人民日報への寄稿で「対外闘争の法的な『道具箱』であり、国際秩序の『安定器』の役割を果たす」と同法の意義を説明しました。

 習国家主席の外交思想を「法的な形で実行した重大な成果」と強調しており、権威強化の狙いもうかがわれます。同法には、巨大経済圏構想「一帯一路」や、グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)といった習氏が提唱した国際戦略が盛り込まれています。香港メディアの「香港01」は6月末、同法制定について「習氏の外交思想がかなりの長期にわたって中国外交を指導することを暗示している」と指摘しました。

 習政権は共産党による指導強化を進めており、同法は「対外工作は党の集中統一指導を堅持する」と明記。党中央の指導機構が「国の対外戦略と、関係する重要方針や政策を指導し実施する」と明確化しました。

 中国共産党は1日、創建102年の記念日を迎えました。党中央組織部は同日までに、党員数が2022年末時点で約9,804万人に達したと発表。前年末から約132万人増えました。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中共が、何の制約も制限もなく、自由に外交問題に関与し、外国人を取り締まる体制を確立するその第一歩か(゚д゚)!

中国は2023年1月28日、全国人民代表大会(全人代)の常務委員会で「対外関係法」を可決しました。この法律は、中国が対中制裁や「西側の覇権」に反撃するための法的根拠を提供するものと見られています。

対外関係法は、国家主権と安全保障、発展の利益を危うくする行為や国際法と「国際関係の基本的な規範」に反する行為に対して、「対抗・制限措置」を講じる権利を中国は有しているとしています。

中国はすでに、米国による台湾への武器売却を理由にロッキード・マーチンやレイセオン・テクノロジーズに報復制裁を科したことがあります。今回の新法はそうした措置の法的根拠を強化することになります。

対外関係法はまた、中国共産党の習近平総書記(国家主席)が中国の外交政策を個人的にコントロールすることを明文化しています。

習近平

同法は、グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)やグローバル文明イニシアチブ(GCI)といった習氏の代表的な政策に言及することで、法律というよりも習氏の外交政策宣言に近いものです。これは法的プロセスを通じて中国の外交政策を個人化したものといえます。

対外関係法は、報復措置を実施する上で政府機関に対して部門間の調整と協力を強化するよう義務付けています。また、国務院には「関連実務機関を設立する」権限が与えられました。

中国は米国に比べ制裁の実施例が比較的少なく、2021年に初の対外制裁法「反外国制裁法」を成立させました。

共産党系の新聞、環球時報は対外関係法が制裁などに対する「外交闘争の法的根拠を提供する」と専門家の話を引用し報道。「西側の覇権に対する予防と警告、抑止の役割も果たし得る」との見方も示しました。

習氏は今年3月の演説で、「米国主導の西側諸国」が中国を「包括的に封じ込め、抑圧」しようとしていると非難していました。

ただ、対外関係法は中国政府に制裁への新たな対抗手段を与えるものではなく、より抽象的なレベルでの反外国制裁法の繰り返しに過ぎないようです。

対外関係法は政府機関に向けたものですが、中国による対外関係の行動は共産党指導部全体が統括することも強調。習氏はここ数年、政府機関に対する党の掌握を強めています。

同法は党が外交政策を担当し、外務省と国務院が実務機関であることを非常に明確にしています。

私は、これは独裁国や全体主義国家によく見られるように、外交は独裁者の胸先三寸で決められることを、法的に明確にしたに過ぎないように見えます。

中国共産党が常に中国の外交政策に強い影響力を持ってきたことを考えれば、これは驚くべきことではないかもしれません。

独裁国家や全体主義国家では、独裁者の意向で外交政策が決定されることが多いです。独裁者が最終的な権力と権威を持ち、他の誰にも相談することなく決定できるからです。中国の場合、中国共産党が独裁者に相当するのだから、彼らが外交政策について最終的な発言権を持っていてもおかしくはないです。

もちろん、外交関係法が単なる法的形式的なものであり、中国共産党が外交政策に関して外交部や国務院と協議を続けるという可能性もあります。しかし、この法律が外交政策における中国共産党の役割について具体的に言及していることは、中国共産党が外交政策により実践的なアプローチを取っていることを示唆しています。

外交関係法が実際にどのように実施されるかは、時間が経ってみなければわからないです。しかし、中国共産党が外交政策の主導権を本気で握ろうとしているというシグナルを送っていることは明らかです。このことは、中国と他国との関係だけでなく、世界秩序にも影響を及ぼす可能性があります。

「対外関係法」の施行とともに「改正スパイ防止法」が施行されたことは、中国共産党が、何の制約も制限もなく、自由に外交問題に関与し、外国人を取り締まることができる体制を確立する、その第一歩であると考えられます。

外国人を厳しく取り締まる中国 AI生成画像

対外関係法は中国共産党に、自国の利益を脅かすと見なした国に対して報復措置をとる権限を与えます。これには経済制裁、渡航制限、あるいは軍事行動も含まれます。改正反スパイ法では、スパイの定義を拡大し、中国国民や企業のデータ収集など、以前はスパイとみなされなかった活動を含めるようにしました。これにより中国共産党は、完全に合法的な活動に従事している外国人を取り締まる権限を得たといえます。

注意しなければならないのは、これらはまだ2つの法案に過ぎず、中国共産党の意図を断言するのは時期尚早だということです。中国共産党は、対外政策において自己主張を強めており、脅威とみなす外国人を取り締まる姿勢を強めている。これは世界秩序に重大な影響を与える可能性があります。

中国共産党(CCP)が対外政策を強化し、脅威とみなす外国人を弾圧しやすくしたことは、世界秩序に多くの深刻な影響を与える可能性があります。

まずは、中国と他国との緊張の高まりがあります。中国のより積極的な姿勢は、近隣諸国や米国をはじめとする西側諸国との緊張の高まりにつながる可能性があります。これは、経済制裁、軍備増強、さらには武力衝突など、さまざまな形で現れる可能性があります。

次に、中国が世界的な大国として台頭することで、世界の分断が進む可能性があります。その結果、気候変動や核拡散といったグローバルな課題の解決がより困難になる可能性があります。

さらに、中国の外国人取り締まりは、国内の人権低下にもつながる可能性があります。中国共産党が新たな権限を行使して、反体制派や政府批判者を取り締まる可能性があるからです。

日本にとって、中国の対外政策がもたらす影響は特に大きいです。日本は米国の緊密な同盟国であり、中国の隣国でもあります。つまり、日本は中国と米国の対立の渦中に巻き込まれる可能性があるのです。

かといって、もし日本が米国と対立して中国側についた場合、多くの深刻な事態に直面する可能性が高いです。

まずは、米国からの経済制裁です。米国は日本にとって最大の貿易相手国であり、日本が中国側についた場合、経済制裁を科す可能性があります。これは日本経済に大きな影響を与えるでしょう。

米国からの軍事的圧力。米国は、東アジア地域への増派を含め、日本への軍事的圧力を強める可能性もあります。これは日中間の緊張を高め、武力衝突に発展する可能性さえあります。

米国からの信頼の喪失もあります。日本が中国側についた場合、米国からの信頼を失う可能性が高いです。これは、日本の安全保障の礎のひとつである日米同盟にも悪影響を及ぼすことになります。同時に欧州や、豪州、インドからの信頼も失うことになります。

また、中国には脅威とみなす国に対して経済的強制力を行使してきた長い歴史があることも注目に値します。もし日本が中国側につけば、中国は経済力等を使って日本に圧力をかけ、要求を呑ませる可能性もあります。

天然でお花畑的な頭の日本人 AI生成画像

中国に関しては、こちらが味方につけば、まさか味方に悪いことはしないだろうという、日本人の天然でお花畑的理屈は通用しません。米国や欧州から距離を置いた日本に対して、中国は最初は微笑みで対応するでしょうが、それは束の間に過ぎず、すぐにここぞとばかり、今までよりもさらに強硬になり、様々な要求を突き付け日本を中国の支配下にできるように動くでしょう。拒否すれば、軍事的圧力をかけてくるでしょう。

それどころか、日本への中国の浸透がすすめば、様々な不平等条約を押し付け、日本の富を奪う挙に出てくるかもしれません。さらには、改憲を迫り、日本が軍隊を持てるようにして、中国軍と共同作戦ができるようにし、日本軍をインドやロシアとの国境地帯に派遣したり、中国軍とともに、台湾と戦争することを迫るようになるかもしれません。

無論、日本の科学技術などは中国のものにして、中国は科学技術においても、台頭するようになるかもしれません。その時に、親中派・媚中派の国会議員や、財界人などを呪っても手遅れです。その頃には、親中派・媚中派は、国家を裏切った信頼できないものどもとして資産など身ぐるみ剥がされて、日本から放逐されているか、拘束されているかもしれません。お花畑日本人には、想像もつかないことなのかもしれません。

結局のところ、米国と中国の対決において中国側につくかどうかの決断は、中国に味方した場合の結果が非常に深刻なものになることは明らかであり、日本にとって選択の余地はないとみられます。

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