2023年7月3日月曜日

中国が東南アジアから撤退開始、経済問題に直面し―【私の論評】中国は、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアでも撤退しつつある(゚д゚)!

中国が東南アジアから撤退開始、経済問題に直面し

東南アジアから撤退をはじめた中国 AI生成画像

 東南アジアにおける中国の経済的存在感が縮小し始めている。以前は中国がこの地域に最も多くの融資や援助を提供していたが、現在は他国に押されて影が薄くなっている。中国が東南アジアに向ける金を切り詰めることにより、中国の世界支配への夢は遠のくことになるだろう。

 2021年の中国の政府開発融資(ODF)は再び減少し、かつての最高額の半分強にとどまった。一方で、他の国や国際機関の投資が増えており、中国の存在感は低下している。日本の投資は特に増加しており、中国に追いつこうとしている。

 中国の投資減は海外の優先順位の転換を示すものではなく、中国自体が経済と金融の問題を抱えていることを示している。中国経済の回復が一時的で、再び減速している状況であることも考慮すべきだ。

 このような経済的制約に直面している中国が、東南アジアでかつての存在感をすぐに取り戻すことは難しいだろう。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国は、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアでも撤退しつつある(゚д゚)!

中国の東南アジアでの経済的プレゼンスは上の記事にもあるように、確かに縮小しつつあります。

これについては、私も独自に調べましたので、それを以下に示します。
中国政府による東南アジアへの開発融資は、2015年の760億ドルから2021年には390億ドルに減少しまし。(出典:AidData)

中国の対東南アジア直接投資(FDI)シェアは、2015年の25%から2021年には14%に減少しました。(出典:UNCTAD)
他の地域でも、中国の経済的プレゼンスが縮小している地域があります。以下にあげます。

アフリカ: 中国は近年、アフリカへの主要な投資国であったのですが、その経済的プレゼンスはここ数ヶ月で低下しています。これは、COVID-19のパンデミック、ウクライナ戦争、中国自身の景気減速など、さまざまな要因によるものです。
中国の対アフリカ直接投資は、2015年の36億ドルから2021年には28億ドルに減少しました。(出典:UNCTAD)
中国の対アフリカ貿易は2015年の2,220億ドルから2021年には1,990億ドルに減少。(出典:世界銀行)

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ラテンアメリカ: 中国は近年、ラテンアメリカへの主要投資国でもあったのですが、ラテンアメリカでの経済的プレゼンスも低下しています。これは、COVID-19の流行、一部の国の政情不安、中国自身の景気減速など、さまざまな要因によるものです。
中国のラテンアメリカへの直接投資は2015年の105億ドルから2021年には83億ドルに減少しました。(出典:UNCTAD)
中国の対ラテンアメリカ貿易は2015年の3200億ドルから2021年には2790億ドルに減少。(出典:世界銀行)
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中央アジア: 中国は近年、中央アジアへの主要な投資国であったのですが、その経済的プレゼンスも低下しています。
中国の中央アジアにおける直接投資は、2015年の27億ドルから2021年には22億ドルに減少しました。(出典:UNCTAD)
中国の対中央アジア貿易は2015年の520億ドルから2021年には470億ドルに減少。(出典:世界銀行)
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注意しなければならないのは、これらは中国の経済的プレゼンスが縮小している地域のほんの一例にすぎないということです。このようなことが起きている地域は他にもたくさんあります。

中国が、東南アジアでかつての存在感をすぐに取り戻すことはなさそうなのと同じく、これらの地域でもすぐに取り戻すことはなさそうです。

だからといって、すぐに中国がこの地域からすべての投資などをひきあげるということはないでしょうが、年々先細りになっているのは事実です。これが、すぐに回復することはないでしょう。これは、日本、米国、欧州などの先進国にとって、これらの地域での経済的プレゼンスを回復する好機です。

先進国には、これらの地域と関わってきた長い歴史があり、貿易、投資、技術の面で提供できるものがたくさんあります。また、グッド・ガバナンス、人権、持続可能な開発の促進にも貢献できます。

もちろん、これらの地域で経済的プレゼンスを取り戻すには課題もあります。中国は近年、これらの地域で非常に積極的に活動しており、多くの関係を構築しています。しかし、先進国がこれらの地域に積極的に投資し、現地のパートナーと協力すれば、これらの課題を克服することができると思います。

私は、先進国がこれらの地域で経済的プレゼンスを取り戻すために協力することが重要だと思います。資源や専門知識をプールし、それぞれの努力を調整することができます。そうすることで、中国がこれらの地域を支配することがより難しくなり、これらの地域の人々にも利益をもたらすことができます。

経済的利益に加え、これらの地域で経済的プレゼンスを取り戻すことには政治的利益もあります。これらの地域は世界の安全保障と安定にとって重要であり、世界経済にとっても重要です。これらの地域での経済的プレゼンスを高めることで、先進国は平和の促進に貢献することができます。

私は、東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアにおける経済的プレゼンスを回復することが、先進国にとって最善の利益であると思います。これは自国の利益を促進する機会であり、またこれらの地域の発展と繁栄を助ける機会でもあります。

一方中国では、国家統計局が4月16日に発表した若年層の失業率は、前月比で0.8ポイント上昇し、20.4%となりました。これは、2021年夏に記録した19.9%を上回り、過去最高となりました。

調査対象全体の失業率は、前月比で0.1ポイント低下し、5.2%となりました。国家統計局の付凌暉報道官は、北京での記者会見で、「若者の雇用安定・拡大に向け、一段の取り組みが必要だ」と述べました。

統計局が同時に発表した他の経済統計は、軒並み予想を下回りました。これは、債務問題や民間セクターの弱い景況感が経済成長の重しになっていることを示しています。

今年大学を卒業する学生は約1158万人と見込まれていることもあり、若年層の高い失業率は大きな課題となっています。

一方、過去3年間で就業者数は4100万人余り減少しています。これは、新型コロナウイルス禍がもたらした経済的影響と国内の少子高齢化がいずれも響いています。

これだけ、雇用が、その中でも若者雇用が悪化しているのですから、本来なら中国人民銀行(中国の中央銀行)は大規模な量的緩和を行うべきですが、そうはしていません。

それには、やはり国際金融のトリレンマにより、人民銀行は、独立した金融政策ができなくなっているからとみられます。

国際金融のトリレンマとは、1980年代にロバート・マンデルによって提唱された理論です。これは、ある国が次の3つの政策を同時に達成することは不可能であると主張するものです。

  • 為替相場の安定(固定相場制)
  • 金融政策の独立性
  • 自由な資本移動

これらの3つの政策は、いずれも経済成長に重要であると考えられています。しかし、同時に達成することは不可能であり、3つのうち2つしか実行できないというものです。これは、数学的にも、経験的にも知られている事実です。

例えば、中国は為替相場の安定を重視しているため、金融政策の独立性や自由な資本移動を制限しています。これは、中国経済の安定に効果的である一方で、経済成長の可能性を制限しているとも言われています。

現在の中国は、独立した金融政策ができない状況になっており、若者の雇用が深刻になっていても、思い切った金融緩和ができません。それを実行すると、ハイパーインフレになったり、資本の海外逃避が深刻になることが考えられるため、やりたくてもできないのです。

深刻な若者の雇用状況を改善することすらできないのですから、他の経済問題を解消することもなかなかできないとみて良いでしょう。

これを解決にするには、変動相場制に移行するなどの大胆な改革が必要なのですが、習近平にはその気は全くないようです。それをするには、他の改革もせざるをなくなり、そうなると、中国共産党の統治の正当性を毀損しかねないので、改革をせず、その都度弥縫策を繰り返しているのでしょう。

これでは、ここしばらく、中国がこれらの地域でかつての存在感をすぐに取り戻すことは難しいでしょう。

これは、日本にとっても大きなチャンスであり、日本はこの機会を逃すべきでありません。

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