岸田文雄政権の「サラリーマン増税」政策に国民は反発している。政府税制調査会の中期答申では、退職金や生命保険控除などの見直しが盛り込まれており、国民の生活に直結する項目も含まれている。専門家は、今回の答申で透けて見える「増税・負担増」路線について、「アベノミクス以前に逆戻りする」と警鐘を鳴らしている。
政府税制調査会で挨拶する岸田首相 |
夕刊フジの公式サイトには、「税の限りを尽くす」「盗りやすいところから盗るの典型」などの多くのコメントが寄せられた。日本維新の会の馬場伸幸共同代表も、ツイッターで記事をリツイートし、「「無限増税」内閣にカツを入れましょう!!」と投稿した。
控除については、ほかにも地震保険料控除や電気自動車(EV)や燃料電池車の課税強化も提言されている。EVは揮発油税や軽油引取税などの燃料課税がなく、税収減となるため、課税強化は「一定の合理性がある」と強調している。
答申では、「非課税所得」についても、「他の所得との公平性や中立性の観点から妥当であるかについて、政策的配慮の必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要がある」としている。
参考例として通勤手当や社宅の貸与などが挙げられているが、ほかにも少額投資への非課税を売りにしたNISAの譲渡益や配当、失業等給付、遺族基礎年金や、給付型奨学金も含まれている。
このほか、「資産課税」では、固定資産税が槍玉に挙がった。住宅用地について、小規模住宅用地が一般住宅用地より低い課税標準としている特例や、一定の条件を満たす新築住宅について3年間の減額措置が行われている例を紹介。「税負担軽減措置等はその政策目的、効果等を十分に見極めた上で、不断の見直しを行わなければなりません」と指摘している。
上武大学の田中秀臣教授(日本経済論、経済思想史)は、「財務省や税調は、幅広く、声が小さく、徴収しやすい項目から課税していく狙いではないか。サラリーマンには既得権益を主張する団体もなく、退職金も引退間際で波風立てたくない層を標的にしている」と指摘している。
答申では、消費税についても「税体系の中で重要な役割を果たす基幹税」と言及したうえで、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中、米国を除く37カ国で付加価値税が実施されていると指摘。標準税率は「20%以上の国が23カ国」として、税率引き上げ余地があると暗に示唆しているようだ。
「細かいところからサラミ戦術(サラミを薄切りするように少しずつ相手側に入り込むこと)で徐々に進め、消費増税も忘れてはいない」と田中氏はみる。
田中氏は政府や税調の方向性について「戦後、GHQ(連合国軍総司令部)は日本を大国にさせないよう財政法で国債発行を禁じた。これが1990年代以降の景気低迷期に足かせとなり、緊縮路線がとられ停滞が続いた。アベノミクスの成果で景気が回復しようとする中、緊縮派は財政法の理念を再活性化させ、巻き返しを図ろうとしている」と語っている。
岸田政権は防衛増税について2025年以降に先送りするほか、少子化対策の財源についても先送りの姿勢だ。22年度の国の税収は約71兆円と過去最高を記録したこともあり、増税を打ち出しにくい状況だが、それでも税制見直しの方針が掲げられている以上、油断は禁物だ。
田中氏は「アベノミクスの影響を無視できない一方、本音の緊縮路線の間で揺れているようにみえる。しっかり問題点を指摘していく必要がある」と強調しました。
控除については、ほかにも地震保険料控除や電気自動車(EV)や燃料電池車の課税強化も提言されている。EVは揮発油税や軽油引取税などの燃料課税がなく、税収減となるため、課税強化は「一定の合理性がある」と強調している。
答申では、「非課税所得」についても、「他の所得との公平性や中立性の観点から妥当であるかについて、政策的配慮の必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要がある」としている。
参考例として通勤手当や社宅の貸与などが挙げられているが、ほかにも少額投資への非課税を売りにしたNISAの譲渡益や配当、失業等給付、遺族基礎年金や、給付型奨学金も含まれている。
このほか、「資産課税」では、固定資産税が槍玉に挙がった。住宅用地について、小規模住宅用地が一般住宅用地より低い課税標準としている特例や、一定の条件を満たす新築住宅について3年間の減額措置が行われている例を紹介。「税負担軽減措置等はその政策目的、効果等を十分に見極めた上で、不断の見直しを行わなければなりません」と指摘している。
上武大学の田中秀臣教授(日本経済論、経済思想史)は、「財務省や税調は、幅広く、声が小さく、徴収しやすい項目から課税していく狙いではないか。サラリーマンには既得権益を主張する団体もなく、退職金も引退間際で波風立てたくない層を標的にしている」と指摘している。
答申では、消費税についても「税体系の中で重要な役割を果たす基幹税」と言及したうえで、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中、米国を除く37カ国で付加価値税が実施されていると指摘。標準税率は「20%以上の国が23カ国」として、税率引き上げ余地があると暗に示唆しているようだ。
「細かいところからサラミ戦術(サラミを薄切りするように少しずつ相手側に入り込むこと)で徐々に進め、消費増税も忘れてはいない」と田中氏はみる。
田中氏は政府や税調の方向性について「戦後、GHQ(連合国軍総司令部)は日本を大国にさせないよう財政法で国債発行を禁じた。これが1990年代以降の景気低迷期に足かせとなり、緊縮路線がとられ停滞が続いた。アベノミクスの成果で景気が回復しようとする中、緊縮派は財政法の理念を再活性化させ、巻き返しを図ろうとしている」と語っている。
岸田政権は防衛増税について2025年以降に先送りするほか、少子化対策の財源についても先送りの姿勢だ。22年度の国の税収は約71兆円と過去最高を記録したこともあり、増税を打ち出しにくい状況だが、それでも税制見直しの方針が掲げられている以上、油断は禁物だ。
田中氏は「アベノミクスの影響を無視できない一方、本音の緊縮路線の間で揺れているようにみえる。しっかり問題点を指摘していく必要がある」と強調しました。
【私の論評】改憲論議だけでなく、実は憲法とセットで日本を弱体化する財政法4条についての議論もすべき(゚д゚)!
その日本では、長い間国債は発行されなかったのですか、1965(昭和40)年11月19日、戦後初の(赤字)国債発行が閣議決定されました。佐藤栄作内閣の時代です。
法施行直後に出版された「財政法逐条解説(コンメンタール)」にはこう記されています。「公債のないところに戦争はないと断言し得るのである。従って、本条は新憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証せんとするものである」。
「日本は4つの小さい島々に8千万人近い人口を抱えていたことを理解しなければならない」
「日本の労働力は潜在的に量と質の両面で最良だ。彼らは工場を建設し、労働力を得たが、原料を持っていなかった。綿がない、羊毛がない、石油の産出がない、スズがない、ゴムがない、他にもないものばかりだった。その全てがアジアの海域に存在していた」
「もし原料供給を断ち切られたら1000万~1200万人の失業者が日本で発生するだろう。それを彼らは恐れた。従って日本を戦争に駆り立てた動機は、大部分が安全保障上の必要に迫られてのことだった」
法施行直後に出版された「財政法逐条解説(コンメンタール)」にはこう記されています。「公債のないところに戦争はないと断言し得るのである。従って、本条は新憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証せんとするものである」。
要するに、過去においては政府が国債を発行し、戦争を遂行したため、国債を発行さえしなければ、戦争はないという馬鹿げた理念を語っているわけです。これは、護憲派が憲法9条があるから戦争がないと言っているのと同じようなものです。
無論それだけではなく、当時の日本は戦費調達のため膨大な国債を発行したため、超インフレになりかけていました。これも、公債を発行すべきでないと主張する根拠にもなっています。
戦時中の日本は、戦前からソ連と対峙しており、朝鮮半島の併合や満州国の設立は、そのために行われたものです。これを侵略とする人もいますが、当時は現在のような国連も存在せず、国際連盟はあったものの、十分には機能していませんでした。そのため、現在の尺度で、これを単純に侵略戦争と断定するのは間違いだと思います。ただ、これには様々な意見があるとは思います。
戦後米国に帰国したマッカーサーは公聴会で以下のような発言をしています。
「日本の労働力は潜在的に量と質の両面で最良だ。彼らは工場を建設し、労働力を得たが、原料を持っていなかった。綿がない、羊毛がない、石油の産出がない、スズがない、ゴムがない、他にもないものばかりだった。その全てがアジアの海域に存在していた」
「もし原料供給を断ち切られたら1000万~1200万人の失業者が日本で発生するだろう。それを彼らは恐れた。従って日本を戦争に駆り立てた動機は、大部分が安全保障上の必要に迫られてのことだった」
もし、当時の日本が戦争遂行のために、公債を発行しなかった場合、どうなったでしょうか。そうすれば日本は、米英と戦争することはなかったかもしれませんし、戦後に超インフレになりかけるということもなかったでしょうが、軍事力を強化できず、ソ連に占領されていたかもしれません。そこまでいかなくても、ソ連の覇権の及ぶところとなっていたかもしれません。
戦後は、ソ連に組み込まれたかもしれません。そうして、ソ連崩壊後にウクライナのように、独立したかもしれませんが、その後も事あるごとに、ロシアに干渉され、今日のウクライナのようになり、今頃ロシアに侵攻されていたかもしれません。このような可能性を無視して、公債を発行しなければ、戦争が起こらないなどと主張するのは、甚だ無責任としか思えません。
ノモンハン事件(日ソ紛争)時の現地での停戦交渉の写真 |
公債発行による政府支出の賄いを禁じている日本の財政法第4条は極めて誤った方向性を示しているように見え、第二次世界大戦後にGHQによって植え付けられた緊縮財政の教義を反映しているとみるべきでしよう。
現代世界中の国々のほとんどは、財政赤字と債務が財政政策の有用な手段であると認識しており、この厳格な均衡予算義務が日本の経済の柔軟性を妨げています。
この法律が GHQ の戦後占領政策の影響を受けているのは間違いないと思います。以下にその論拠をあげます。
1) この法律は、日本の降伏からわずか 2 年後の 1947 年に可決され、当時 GHQ は立法改革と官僚改革に対して最大限の統制力を持っていました。
2) 財政の均衡を図るために赤字と借金を厳しく制限することで、GHQ の緊縮財政の考え方を体現しています。 これはGHQの経済改革の優先目標でした。
3) 当時のGHQが好んだ自由放任主義、均衡予算主義に沿った形で政府の財政・金融政策を制約する。 このイデオロギーが彼らの占領政策の多くを形作りました。
4) 現在、政府運営資金への公債の使用をこれほど厳格に制限する法律を持っているような民主主義国は日本以外にありません。 GHQの見解とは異なり、赤字と借金は適度であれば、有益な財政的手段であるとほとんどの人が認識しています。
5) この法律は、日本の経済政策の柔軟性、成長、回復力を妨げるものとして多くの経済学者から批判されています。
これは当時の時代遅れの考え方を反映した異常なものです。 これらは、日本の財政法第 4 条が占領期間中の GHQ の政策目的によって指示または間接的に影響を受けたことを強く示唆しています。
この条項には、GHQの緊縮財政の教義と政府の経済介入に対する制約の痕跡が残っています。 少なくとも、GHQ はこの法律に反対したり修正したりしていません。
この法律には、GHQ のイデオロギー的立場との一貫性が示されています。 この法律は、当時の主流の経済観を反映していたものの、後から振り返ってみると間違った方向に導かれていた可能性が高いです。無論超インフレになりかけた当時は妥当性・有用性はありましたが、これを法律にしてしまったことは間違いでした。
しかし、これはその有用性をはるかに超えて長く存続しており、おそらく官僚の惰性と現状維持バイアスのせいで存続しているだけでしょう。 第 4 条の改正または廃止は、日本の経済政策の柔軟性と回復力に利益をもたらす可能性があります。
いかなる国の財政においても適度な赤字は賢明であり、法的に禁止されるべきものではありません。 GHQ は、今日でも日本に影響を与えているこの法律による緊縮財政義務について、直接的または間接的に何らかの責任を負った可能性があります。 彼らの影響力とイデオロギーは長い間日本に影を落とし続けているのは間違いないようです。
このイデオロギーは米国にも残っており、それは最近の債務上限問題でも示されています。しかし、米国ではこの問題に関しては、過去何回も発生しており、結局毎回柔軟に対処するようになっています。
財務省からすれば、公債発行をなるべくしないで、緊縮財政をすることは、法律に基づいていわけであり、彼らの考えからすれば、自分たちは正しいのであり、増税なしで国債発行、日銀買い取り方式で合計100兆円の補正予算を組み、コロナ対策を実施した、安倍・菅氏こそ異端というべき存在なのでしょう。
自民党の中には、積極財政派と、財政健全派がしのぎを削っているようです。最近は積極財政派も増えているようではありますが、依然として財政健全派の力も侮れないです。
私は、日本の財政法第 4 条を改正または廃止すべきと思います。 国債の発行を財源とする責任ある限定的な赤字支出を認めれば、切望されていた柔軟性と経済の安定がもたらされでしょう。
第4条の改正には政治的・政策的リスクがないわけではないですが、賢明な管理と監視があれば、現代先進国のほとんどが成長と安定を促進するために活用している柔軟な経済政策ツールを日本政府が得ることになります。
厳格な均衡予算ルールはもはやその有用性をはるかに超えており、責任ある持続可能な赤字支出を目指して改革を慎重かつ賢明に進めるべきです。 政府が経済に対して責任ある財政運営ができることが証明されるにつれ、時間が経ち、安全策が講じられれば、頑なな緊縮財政への暴走を防ぐことができるようになるでしょう。
現在日本では、憲法9条を巡って改憲論議は、行われています。しかし、財政法4条については、ほとんど議論されていません。
現状の日本においては、安倍総理のような総理大臣の時代には、増税が先送りされることなどがあります。ただ、三党合意によって決まった消費税増税に関して、安倍総理ですら、これを先送りし続けることはできず、結局在任中に二度にわたって消費税増税をせざるを得ない状況に追い込まれました。
岸田政権になってからは、増税勢力が勢いづき、とにかく増税しようという動きが強まっています。
財務省 |
日本では、実体経済に関係なく、増税すべきという圧力は常態化しているといっても過言ではありません。この動きを絶って、実体経済に応じて柔軟な財政政策を行えるようにするには、まずは、財政法4条を変えるしかないと思います。
そのための論議をするだけでも、多くの人たちが、なぜ日本には実体経済を無視して、増税をしたがる人たちが大勢いるのか認識するようになると思います。
日本では、改憲議論はなされますが、なぜか財政法4条の議論はなされません。しかし、上で述べてきたことからもわかるように、実は憲法とセットで日本を弱体化しているのが財政法4条にともいえると思います。そうして、これはまさに終戦直後のGHQのイデオロギーに沿ったものであり、米国議会の多数が日本の改憲に賛成している現在では、時代遅れも甚だしいと言わざるを得ません。
政府の仕事でも、会社の仕事でも予算の配分がなければ何もできません。日本を弱体化させようとする視点に立てば、これと同じく憲法を制定するだけでは、日本を弱体化するのは難しいです、そのための財政的裏付けがまさしく財政法4条であるといえると思います。GHQは意図的に、憲法と財政法4条のセットで日本を弱体化しようと企んだとしたとしか思えません。
積極的にそのようなことをしたかどうかは、断定できませんが、少なくとも誘導したか、これを許容したかのいずれかであるのは間違いないと思います。
ただ、現在では日米は同盟国であり、日本はもとより、米国にも日本を弱体化させて得るものはありません。このような時代遅れな法律は改正すべきときがきたといえます。
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