2023年7月23日日曜日

バイデン氏、CIA長官を閣僚に格上げ 中ロ対応を評価―【私の論評】バイデンの新人事により、日本は、米国の国家安全保障戦略や意思決定について、より不確実性を抱えることもあり得る(゚д゚)!

バイデン氏、CIA長官を閣僚に格上げ 中ロ対応を評価

バーンズ中央情報局(CIA)長官



 バイデン米大統領は、23日までに、バーンズ中央情報局(CIA)長官を閣僚に格上げする措置を発表した。ロシアによるウクライナ侵略を受ける中で、米国の国家安全保障対策で果たしている重要な役割を評価した昇格となっている。

 バイデン氏は声明で、「彼の指導力で、CIAは中国との間の賢明な競争の管理など米国が直面する安全保障上の最大の挑戦に対する明確かつ長期的な対応を打ち出すことが出来ている」とその手腕をたたえた。

 CIAは昨年2月に始まったウクライナ侵略に絡む関連情報の真偽の選別で主導的な役割を果たし、米国の対ロシア戦略の構築に大きな存在感を示したとされる。

 長官自身、ウクライナの戦争への米国の対応を見極めるため、他の諸国と共にウクライナやロシアへ足を運んでもいた。

 CIA長官を閣僚職として位置づける動きは過去数年間、あったりなかったりした。トランプ前政権に仕えたポンペオ元長官やハスペル前長官は閣僚として処されたが、バイデン氏は就任時に同じ対応をしていなかった。

 バーンズ長官はバイデン氏の今回の対応を受け、「CIAが毎日果たしている米国の安全保障に対する重要な貢献を認め、我々の業務への大統領の信頼感を反映したものだ」と感謝。「我々が擁する要員による多大な貢献を代表する長官職にあることを名誉に思う。ヘインズ国家情報長官の指揮で優秀な情報機関網と共に奉仕出来ることは光栄である」と続けた。

【私の論評】バイデンの新人事により、日本は、米国の国家安全保障戦略や意思決定について、より不確実性を抱えることもあり得る(゚д゚)!

日米の政治体制はかなり異なるので、もしこの人事を日本に当てはめようとした場合、日本でCIA長官に最も近いのは国家安全保障局(NSS)でしょう。NSSは日本の国家安全保障政策を調整する内閣レベルの機関です。NSSのトップは内閣の一員である国家安全保障アドバイザ(NSA)である。

現在、国家安全保障局の局長は、秋葉 剛男氏です。

NSAは厳密には官僚ではないですが、国家安全保障に関する情報を提供し、首相に助言を与えるという点で、CIA長官と同じような役割を担っています。したがって、日本でCIA長官が閣僚になるとすれば、NSAが閣僚になるのと最も似ているといえるでしょう。

このたとえは正しくはないのですが安倍政権時代に「官邸のアイヒマン」と呼ばれた大物警察官僚の北村滋前局長が閣僚になったとしたら、日本でもこれはかなり物議を醸すことになったかもしれません。

北村滋氏

ただし、これはあくまでも大まかな比較であることに注意する必要があります。CIA長官とNSAの具体的な役割は同一ではないし、日本には他にも閣僚級の機関があります。

保守派の私としては、バイデン大統領がCIA長官を閣僚級に昇格させる決定を下したことに、いくつかの懸念を抱いています

1. CIAは行政府の権限下にある機関にとどまるべきで、事実上の政策決定機関になるべきではないです。CIA長官に他の閣僚との席を与えることは、情報機関を政治化し、政策決定に対する影響力を増幅させる危険性があります。

2. 監視と説明責任が低下するリスクがある。官房長官となったCIA長官は、国家情報長官からの直接の監視を受けなくなり、より自律性と独立性を得ることになります。これはCIAの行動やプログラムに対する説明責任を低下させる可能性があります。

3. バイデン政権が、より介入主義的な外交政策をとる予定であることを示す可能性があります。CIA長官を昇格させるということは、バイデン政権の外交政策において、諜報活動や秘密作戦がより大きな役割を果たす可能性を示唆しています。バイデン政権は、対外介入を減らし、より抑制的な外交政策をすべきです。

4. オバマ政権下で国務副長官を務めたウィリアム・バーンズ氏には懸念があります。彼はオバマ政権下で国務副長官を務めたが、その経歴から、客観的な分析のみに焦点を当てるのではなく、諜報活動に対して過度に政治的なアプローチを取る可能性があります。

イラン核合意における彼の役割も、その欠陥の多さを考えると気になるところです。

バイデン大統領が自分の思うように政権を組織する権限は尊重しますが、CIA長官を閣僚に昇格させることは望ましくないと思われます。情報コミュニティは、政策立案者に政治的でない、事実に基づいた分析を提供すべきであり、自ら政策立案者になるべきではないです。

ウィリアム・バーンズ氏のオバマ政権での経歴や役割を考えると懸念があります。彼は国務副長官としてオバマの外交政策、特にイラン、ロシア、中国といった外交政策の形成に重要な役割を果たしました。保守派からみれば、彼のこれらの国々に対する政策は甘すぎと受け取られるものでした。

大統領時代のオバマ氏

保守層は、政治や政策立案ではなく、客観的な諜報活動だけに集中するCIA長官を望んでいると考えられます。CIAのバーンズのリーダーシップの下で、事態がどのように展開するか見守る必要がありそうです

上の記事にもあるように、トランプ政権において、ポンペオCIA前長官は国務長官となり、ポンペオ氏がCIA長官をやめたあと、CIA長官に昇格したハスペル氏も閣僚として、処されていました。

ポンペオ国務長官を評価できる点を以下にあげます。

 ポンペオ国務長官は、中国とその悪質な影響力に対して、強く、原則的な姿勢をとりました。また、中国に対抗するため、インドのような同盟国との関係強化にも努めました。

これらは中国の地政学的脅威に立ち向かうための重要な一歩でした。ポンペオ氏はイランに対して「最大限の圧力」キャンペーンを展開し、欠陥だらけのイラン核合意から離脱しました。この厳しいアプローチはイランに対抗するために必要でした。

ポンペオ国務長官の懸念点を以下にあげておきます。

ポンペオ氏は外交において過度に党派的で政治的なアプローチをとっていると批判されることもありました。国務省の伝統的な使命を犠牲にして、トランプ個人への過度の忠誠を示したと感じる人もいました。

また、ポンペオ長官のもとでは職員の離職率が高く、士気にも問題があったとされました。

トランプ政権ではハスペルCIA長官も閣僚として処せられました。ハスペル氏について 評価できる点をあげます。 

 CIA長官として、ハスペル氏はテロ対策プログラムを継続・拡大し、米国が再び大規模な攻撃を回避できるようにしました。彼女は数十年のキャリアを持つ情報将校です。

 ハスペル氏の懸念を以下にあげます。9.11後のCIAの「尋問強化」プログラムにおけるハスペルの役割は、依然として物議を醸し、懸念されています。彼女の倫理基準へのコミットメントには疑問がありました。

 ポンペオと同様、ハスペルも客観的に情報機関を率いるのではなく、トランプ大統領の個人的な優先順位に寄り添いすぎているとの批判がありました。

全体として、ポンペオとハスペルは保守派の原則に沿った強力な国家安全保障への方向性を追求しましたが、トランプとの緊密な連携とリーダーシップの問題は懸念されました。閣僚は、大統領に客観的な情報と助言と提供すべきであり、彼らの政治的な考えを優先させるべきではありません。

しかし、ポンペオとハスペルの在任期間は、国内の安全保障を維持しつつ、中国やイランと対峙するといった保守派の主要目標を前進させました。閣僚は、本来非政治的なアプローチをすることが理想的です。たたこのバランスを維持することは、実際にはしばしば非常に困難を伴います。

トランプ政権の国務大臣だった頃のポンペオ氏

バイデン政権でCIA長官を閣僚に昇格させることは、日本のような同盟国に何らかの影響を与える可能性があります。

 評価できる点としては 、 バイデン政権下でも、情報共有と協力が米国の最優先事項であることを示す可能性があります。CIAは日本を含む外国の情報機関と緊密な関係にあります。バイデンは伝統的な同盟関係を重視しており、安全保障上の協力について同盟国を安心させたいのかもしれないです。

 CIA長官により高いレベルの役割を与えることは、バイデンが諜報活動とテロ対策に強い焦点を当てることを示す可能性があります。これは北朝鮮のような脅威に直面している同盟国にとっては歓迎すべきことかもしれないです。

一方懸念される点をあげます。 CIAの地位向上が、安全保障問題に対するバイデン氏の、より主張的あるいは介入的な米国外交政策アプローチを反映する可能性もあります。

もしCIAが海外で積極的な諜報活動を行なえば、同盟国をより危険な状況に引きずり込むことになりかねないです。

 情報当局に政策決定権が集中すれば、透明性や監視の目が行き届かなくなる危険性があります。その結果、日本のような同盟国は、米国の国家安全保障戦略や意思決定について、より不確実性を抱えることになりかねないです。

バイデン氏が指名したウィリアム・バーンズ氏は、多くの同盟国が批判するイランとの取引のような政策を支持していました。もし彼がCIA長官として同盟国と対立する政策的立場をとれば、協力関係や信頼関係にひずみが生じるかもしれないです。

情報機関がより大きな権限と自治権を得ることに不快感があるかもしれないです。強固な安全保障上の結びつきを重視する一方で、同盟国はCIAが政策に口を出したり、他の地域を不安定化させたりすることを望まないでしょう。

CIA長官の地位の向上は、バイデン政権下での米国の安全保障政策のより積極的な姿勢を反映し、時として同盟国の考えと乖離する可能性もあります。結果として、米国の民主党政権の他同盟国とは異質な価値観を押し付けることになるかもしれません。

情報当局に権限を与えることは、意思決定における透明性や監視機能を低下させる危険性があります。同盟国は安全保障に関する米国との緊密な協力関係を重視しますが、同時に協議や政策の一致も重要視します。

バイデンは、日本のような同盟国を情報共有や戦略面で安心させる一方で、CIAが外交政策に一方的な影響力を持ちすぎないようにする必要があります。このバランスをとることが、同盟国に対するバイデンのアプローチの鍵となるでしょう。

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