2023年7月30日日曜日

「外国人との共生」 社会に痛み伴う恐れ 欧米に追随の必要なし 高橋洋一―【私の論評】首相が行うべきは「外国人との共生」という蜃気楼ではなく、AI・ロボット化推進により国民の生活水準を最大化すること(゚д゚)!

日本の解き方


 岸田文雄首相は「外国人と共生する社会を考えていかなければならない」と述べ、政府が「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」をまとめていることが話題になっている。首相は人口減少への対策として少子化対策とデジタル化を両輪で対応し、外国人受け入れも大きな課題として認識している。

 共生社会については、参院選公約や首相の発言で、多文化共生社会の実現を目指す意向が示されている。ただし、首相が挙げたアラブ諸国の例については、中東の研究者から聞いた話として、熱中症で多数の外国人労働者が亡くなっているという問題が指摘されており、不適切だとの意見もある。

 現在の「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」は、日本語学習など基本的な取り組みに終始しており、具体的な外国人受け入れの数値は示されていない。

 一方、「国立社会保障・人口研究所」の推計では、将来的に外国人の人口比率が増加するとしており、特に都市部ではかなり高い数字になる見込みである。他の先進7カ国(G7)と比べると、日本の外国人受け入れ率はまだ低いが、外国人の受け入れは社会に痛みを伴うため、欧米の国々に追随する必要はないという意見もある。

 最後に、外国人の受け入れには経済界の要望もあるが、一部の専門家は日本人優先の考え方を支持しているという意見が述べられている。

【私の論評】首相が行うべきは「外国人との共生」という蜃気楼ではなく、AI・ロボット化推進により国民の生活水準を最大化すること(゚д゚)!

昨日は、このブログで岸田政権に実施してほしいことを述べました。その筆頭は私の中では、増税疑念を払拭するために、24年度GDP600兆円実現(かつて安倍首相がこれを約束、現状のままなら達成する可能性がかなり高い)を前提に、30年度までにGDPを700兆円にすることを打ち出すべきことです。

岸田政権に実施してほしくないことの筆頭は、LGBT法の成立ですが、これはすでに成立してしまいました。成立してしまった現状では、できることは、この法律を理念法の範囲にとどめていただくことです。

女性を似非トランスジェンダーから護るための法律や、自治体が学校でLGBT教育をすることを禁ずる法律や政令を出していただきたいものです。無論、このようなことをするくらいなら、最初からこの法律を成立させるべきではありませんでした。

次に実施してほしくないことは、移民の大量受け入れです。これは、移民を大量に受け入れた国々がどのような状況になっているのかみれば良く理解できます。

上の記事にもあるように、国際労働機関(ILO)は2017年、アラブ首長国連邦(UAE)における外国人の労働条件が世界最悪レベルであるとの報告書を発表しました。報告書によると、UAEの外国人労働者は強制労働や借金による束縛、その他の形態の搾取を受けることが多いそうです。また、結社の自由や公正な賃金を受ける権利など、基本的な権利も否定されることが多いそうです。

アラブ首長国連邦、ドバイのホテル

報告書は、移民労働者を雇用主と結びつけるスポンサーシップ制度であるカファラ制度が、UAEにおける外国人労働者の搾取の主な要因であることを明らかにしました。カファラ制度の下では、移民労働者は雇用主の許可なく転職したり出国したりすることは許されません。このため、雇用主は労働者に対して大きな権力を持ち、労働者が搾取から逃れることを困難にしているのです。

報告書はまた、UAE政府が外国人労働者の搾取問題にほとんど取り組んでいないことも明らかにしました。政府は労働法を効果的に執行しておらず、外国人労働者に十分な保護を与えていません。

湾岸諸国における外国人労働者の労働環境の現実は、非常に劣悪であることが多いです。労働者はしばしば、長時間労働、低賃金、危険な労働条件にさらされています。また、結社の自由や公正な賃金を受ける権利など、基本的な権利を否定されることもあります。

湾岸諸国における外国人労働者の労働環境がこれほど劣悪な理由はいくつかあります。その一つは、カファラ制度が雇用者に労働者に対する大きな権力を与えていることです。もう一つの理由は、湾岸諸国には多数の移民労働者がいるため、労働者が組織化して労働条件の改善を要求することが難しいことです。

UAE政府は外国人労働者の搾取問題に対処するため、いくつかの措置を講じています。2018年、政府はカファラ制度を廃止すると発表しました。しかし、これがいつ実現するかは明らかではなく、新制度がどのようなものになるかは不明です。

湾岸諸国における外国人労働者の労働環境は深刻な問題です。これらの国の政府がこの問題に取り組み、外国人労働者が公平に扱われるようにするための措置を講じることが重要です。

首相がUAEなどを「外国人との強制」の事例としてあげるということは、これらの現実を知っている人たちからみれば、日本も多数の外国人労働者を強制労働させるつもりであるとも受け取らねかねず、不適切な発言だと思います。

「外国人との共生」ということではEUなどの移民政策はほとんど参考にはならないですが、カナダは、大量の移民を計画的に大量受け入れています。その目的はGDPを押し上げることです。これは参考になりそうです。

これについては、ロイターの『アングル:移民受け入れ拡大のカナダ、経済繁栄は「蜃気楼」か』という記事が参考になりそうです。この記事の要約を以下に掲載します。
2015年の政権発足以来、カナダのトルドー首相は約250万人の新規永住者を受け入れ、人口を4000万人以上に増やしました。人口増加は1957年以来最も速いペースであり、経済成長率も世界のトップ20に入るほどです。この移民の増加により、高齢化による労働人口の減少を一部相殺しています。

一方、急速な移民増加による問題も顕在化しています。カナダ銀行は経済成長を抑制する金融政策を実施していますが、その中で新規移民の影響を評価することが難しいとしています。移民は労働力不足を緩和し、個人消費と住宅需要を増加させる一方で、交通機関、住宅、医療面などのインフラへの負担増大を引き起こしています。

カナダ政府は移民を積極的に受け入れており、トロントの新市長からの要請にも応じ、難民の収容を支援するための資金を拠出しています。しかし、一部の専門家は移民による経済成長はあるものの、1人当たりのGDPは他の国に比べてあまり増えていないと指摘しています。

移民の増加はカナダの経済と社会に影響を与える一方で、インフラや医療の面で課題も抱えているとされています。
カナダ銀行(カナダの中央銀行)のマックレム総裁は、移民は需要と供給の両面を押し上げるが、総じて見れば利上げの必要性を高めたと述べています。移民は労働力不足を緩和する一方で、個人消費と住宅需要を増加させたのです。

ローゼンバーグ・リサーチのチーフエコノミスト兼ストラテジスト、デービッド・ローゼンバーグ氏は「カナダ経済は1人当たりで見ると横ばい状態だ」とし、人口増加によって「経済の繁栄という蜃気楼を作り出すことはできるが、結局は蜃気楼(しんきろう)にすぎない」と語りました。

蜃気楼 AI生成画像

移民の大量受け入れによって「移民と日本人が共生」して、経済を発展させようと言う試みも蜃気楼で終わる可能性が高いです。

外国人の受け入れには経済界の要望もありますが、日本では経営者が賃金が上がることを忌避する傾向があります。そのためこのような要望を政府に伝えるのでしょうが、これは正しいのでしょうか。賃金が低い外国人労働者を大量に受け入れることよって企業は本当儲かるのでしょうか。

安価な移民労働力に依存することは、日本の経済成長にとって長期的に持続可能な戦略でありません。賃金の低下は短期的には企業収益を押し上げるかもしれないですが、経済全体の賃金の停滞は最終的に需要を損ない、デフレ圧力につながることになります。

日本はすでに慢性的なデフレと消費需要の低迷に苦しんできました。それが、安倍・菅両政権の時に増税なしで合計で100兆円(当時のデフレギャプに相当する)の補正予算を組んでコロナ対策にあたったこと、岸田政権になってからは、他国がインフレ傾向になり利上げなどの金融引締策を実施するさなか、日本はデフレ気味だったので金融緩和政策を続けたため、円安になり、輸出産業が繁栄したことなどが要因となり、景気が落ち込まず、どちらかというと良い状況にあります。

政府としては、輸出企業の繁栄によって、景気が上向いているし、法人税や消費税の税収もかつてない程増えているのですから、これを輸入企業とか国内産業の支援に用いるなどのことをすれば、ベストでしょう。

しかし、ここで大量の移民を受け入れて賃金を低く抑えることは、さらに自らデフレを招くことになります。経済が成長するためには、国内消費が拡大する必要があります。そうして消費が成長するためには、日本の労働者は賃金の上昇と生活水準の向上を必要としています。

移民は合法的かつ責任を持って行われれば、一定の経済的利益をもたらすことができます。しかし、主に賃金を抑制する方法として移民の労働力を利用するのは見当違いであり、逆効果となります。それは国内ではデフレを招き国内産業を弱体化し、超円高により、輸出産業を毀損し、さらに国内産業の空洞化を招くことになります。

そのようなことは、原因は日銀官僚や財務官僚の誤謬で平成年間のほとんどがデフレだった時代を経験した日本人なら理解できるはずです。それを理解しない経営者は愚かとか言いようがありません。

大量の低賃金労働者を受けいることは、日本の労働者を傷つけ、彼らの消費力を低下させ、経済全体を弱体化させることになります。そうして、結局のところ、経営者にとっても一つも良いことはありません。

解決策は、日本企業がAIやロボットに投資し、生産性を向上させ、従業員の賃金を進んで引き上げることてす。経済学でいうところの、装置化をより一層推進することです。政府はこれを推進するために積極財政と金融緩和策を行うとともにインフラを整備すべきです。そのインフラの上で企業がAI・ロボット化で競い合う体制を築くべきです。中国のように、政府が中心となって推進するような体制は長続きしませんし、効果的でもありません。

賃金上昇は需要を押し上げ、経済成長を促進し、社会全体に利益をもたらすことになります。短期的な企業利益は犠牲になるかもしれないですが、経済と生活水準に対する長期的な利益は、一時的な損失をはるかに上回るでしょう。

安価な外国人労働者に頼ることは、生産性の向上、技術革新、自国民の賃金上昇に代わる実行可能な手段ではありません。日本が持続可能な経済的成功を収めるためには、企業は利益の最大化に時間を費やすのではなく、賃金上昇と生活水準の向上を通じて日本の平均的労働者の幸福を最大化することに時間を費やさなければならないです。

豊な日本国民 AI生成画像

低コストの労働力ではなく、広範な繁栄が目標であるべきです。

低賃金労働者の大規模な移民受け入れが長期的に日本経済にプラスになるとは思えないです。それは、需要の低迷と経済停滞のより深い根源への対処を避ける、近視眼的な解決策にすぎません。日本経済を活性化する鍵は、金融緩和を積極財政をしつつ生産性を向上させ、賃金を引き上げ、既存の国民の生活水準を最大化することにあります。この順番を間違えるべきではありません。

賃金を機械的にあげるだけで、政府が金融緩和や積極財政をしない生産性向上のためのインフラを整備しなければ、文在寅が韓国で雇用を激減させたのと同じように大失敗します。その後経済が加熱すれば、金融引締、緊縮財政に転ずれば良いのです。順番を間違えるべきではありません。

ただ、低賃金労働者の大規模な移民受け入れだけを実行するのでは、日本の労働者にも経営者にも中長期的には何の利益ももたらさないことは明らかです。


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