2022年2月18日金曜日

国際的な格付けで台湾の好成績相次ぐ、蘇行政院長が政府職員らに感謝―【私の論評】日本では鉄の三角形を弱めなければ、台湾のような経済的自由を獲得できない(゚д゚)!

国際的な格付けで台湾の好成績相次ぐ、蘇行政院長が政府職員らに感謝

蘇貞昌行政院長が17日の行政院会で、最近、国際的な国別評価の多くで台湾が好成績を挙げていることに触れ、「政府の職員たちを誇らしく感じる」と述べて感謝した。写真は「経済の自由度評価」を示した図。台湾は人口2,000万人以上の国として唯一「自由」評価を獲得した。(蘇貞昌行政院長のフェイスブックより)

蘇貞昌行政院長(首相)が17日の行政院会(閣議)で、最近、国際的な国別評価の多くで台湾が好成績を挙げていることに触れ、「政府の職員たちを誇らしく感じる」と述べて職員たちに感謝した。

蘇行政院長は、ここ1カ月間、国際的な国別評価における台湾の好成績が相次いでいると述べ、1月25日にドイツのトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が発表した「2021年腐敗認識指数(CPI)」で台湾が180カ国中25位だったことを例に挙げた。25位は台湾にとってTIが1995年に同ランキングを発表するようになってから26年で最高の成績。蘇行政院長はまた、2月10日にイギリスのエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が発表した「2021年民主主義指数」レポートで、台湾は167カ国のうち「完全な民主主義(Full democracy)」とされる21カ国の一つに評価されたことを指摘。台湾は2年連続で「完全な民主主義」入りを果たしたのみならず、全体のランキングでも前年の世界11位から8位へと上昇し、米国、フランス、ドイツ、イギリス、カナダなどの大国をも凌駕。アジアでも昨年に続いてトップだった。

蘇行政院長はさらに、2月14日に米シンクタンク「ヘリテージ財団」が発表した「2022年度版世界の経済自由度指数」にも言及。このレポートで台湾は177カ国中わずか7カ国しかない「自由(free)」の評価を受け、初めて「経済的に自由な国」の仲間入りを果たした。人口2,000万人以上の国で「自由」と評価されたのは台湾のみ。世界ランキングで台湾は6位だった。なお、同レポートでは、台湾は過去5年間経済成長を維持する極めてまれな経済体であると絶賛している。

蘇行政院長は、蔡英文総統が総統に就任して以来、政府職員と国民が共に努力する中、台湾は民主と自由の体制を守りながら民主の発展を深め、開かれて公平な経済貿易環境の構築に力を尽くすと共にクリーンな政治を厳格に要求してきたと強調。台湾は新型コロナウイルスの影響や中国からの不断の脅威と圧迫に向き合いながらも依然としてその強靭性を発揮して経済の活発な発展を実現し、次々と好成績を挙げてきただけでなく、国際的に重要な格付けでもますます評価を高め、過去最高の成績を挙げるなど世界から大いに評価されるようになっていると話した。

【私の論評】日本では鉄の三角形を弱めなければ、台湾のような経済的自由を獲得できない(゚д゚)!

ロシアの順位は、136位です。ウクライナは122位です。中国の順位は、66位です。日本の順位は18位です。米国の順位が27位で比較的低いのが印象的です。

「2021年腐敗認識指数(CPI)」の全体をご覧いただきたい方は、以下のリンクよりご覧になってください。

腐敗認識指数 国別ランキング・推移

以下に一部を引用します。



「2022年度版世界の経済自由度指数」では、上位10か国・地域は、シンガポール、スイス、アイルランド、ニュージーランド、ルクセンブルク、台湾、エストニア、オランダ、フィンランド、デンマークでした。
 
台湾の世界順位は昨年と同じでしたが、総合ポイントは80.1ポイント(満点は100ポイント)と、昨年の78.6ポイントを上回りました。また、世界平均あるいはアジア太平洋地域の平均と比べると、20ポイント余り上回りました。

米国のヘリテージ財団は14日、2022年版の「世界の経済自由度指数(Index of Economic Freedom)」を発表した。台湾は評価対象となった184か国・地域のうち6位で、アジア太平洋地域では3位だった。写真は台湾の世界順位の推移を示すグラフ。(国家発展委員会サイトより)

経済自由度指数はポイントが高いほど自由であることを意味し、総合ポイントが80ポイント以上であれば「自由(Free)」と格付けされます。2022年版で台湾は初めて「自由」の仲間入りを果たした。今年、「自由」に格付けされたのは世界で7カ国だけだけでした。

アジア太平洋地域で見ると、台湾は3位でした。これは世界順位19位の韓国、35位の日本を上回る快挙。韓国は「自由」の下の「おおむね自由(Mostly free)」に、日本はさらにその下の「適度に自由(Moderately free)」、そして中国は最低レベルの「抑圧された(Repressed)」に格付けされました。中国の世界順位は158位でしたた。

全体的に見ると、2022年度の世界の経済自由度指数は平均60ポイントで、昨年より1.6ポイント下がりました。アジア太平洋地域の平均は58.5ポイントでした。

経済自由度指数は4つの側面(法制度、政府の規模、管理監督の効率、市場の開放)と、その下に設けられた合計12の指標で経済の自由度を評価します。台湾は12の指標のうち、「ビジネスの自由」、「貿易の自由」、「貨幣の自由」、「財産権の保護」、「政府の支出」など8つの指標で80ポイント以上を獲得しました。一方、「労働者の自由」は68.7ポイント、「金融の自由」は60ポイントにとどまるなど課題も残りました。

ヘリテージ財団がまとめたレポートによると、過去5年間で台湾の経済自由度指数は大きく向上した。台湾は各領域で高いポイントを獲得しており、それに加えて「司法の有効性」、「労働者の自由」などの指標でも成長が見られます。その結果、台湾の経済自由度指数は2017年に比べて3.6ポイント増え、今年は初めて「自由」の仲間入りを果たしました。

レポートでは同時に、台湾が「ビジネスの自由」や「金融の自由」などの方面でも努力すれば、さらなる躍進が期待できると指摘しています。

日本が、「経済自由度指数」が低いことはある程度納得がいきます。それは日本には、どの産業でも強力な鉄の三角形が築かれているからです。それについては以前もこのブログで述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
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日本には様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。


それは、医療の世界にも厳然として存在します。医師会、族議員、厚生官僚による三角形(医療ムラ )は厳然として存在してるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

1年以上も前から、コロナ病床は、かなり増床すべきことはわかっていました。そうして、昨年の補正予算でも、それに関する予算は潤沢につけられていたにもかかわらず、この医療ムラの猛反撃にあい、現在に至るまで大きく増床されることはありませんでした。感染症対策分科会も、こうした医療ムラの圧力に対抗できなかったのか、結局対策といえば、病床の増床ではなく、人流抑制ばかりを提言していました。
尾身会長

そのため、コロナ感染者数が増えるたびに、野党・マスコミは、医療ムラを批判するのではなく、菅政権を批判しました。尾身会長は、マスコミに利用された形になったといえます。これは、間違いなく菅政権を追い詰めていきました。特に、マスコミは感染者数が増えるたびに、不安を煽り、様々な印象操作で菅政権を追い詰めました。

特に日本では、まだまだマスコミの報道を信じる人が多いので、強力な医療ムラを崩壊させるには、仕事人内閣の菅内閣ですら、時間と労力がかかることは無視して、菅内閣を責め立てました。野党もその尻馬にのり、菅内閣を糾弾しました。

マスコミが、菅内閣ではなく、医療ムラを批判していたら、状況は変わっていたかもしれません。まさに、仕事師内閣が短命政権になったのは煽るマスコミとそれにのせられる人たちよるものです。

この記事では、農業や医療に関する「鉄の三角形」について述べましたが、他の産業等にもそれは存在します。

さて、この鉄の三角形がどのように機能するのか、以下に述べます。

政官財が以下の行動を取ることにより、国益・国民益より省益・企業益・私益が優先されるのです。
  • 財界等の業界団体や圧力団体が政治献金で族議員に代表されるような政治家を支援し、財界に影響力のある官僚を天下りで懐柔する。
  • 官僚は所轄業界をまとめ、その利益代表として動き、政治家・財界を許認可権限・公共事業・補助金振り分けで影響力を持つ。
  • 政治家は官僚・財界の通したい予算・法案成否について影響力を行使し、財界から政治献金を集め、官僚への限定的指揮権を持つ。
日本では政官財だが、南アフリカでは政労資(財)が鉄の三角形を形成しています。党議拘束の弱い米国では、軍や政策形成に利害を持つ圧力団体が個々の議員を支援する事で鉄の三角形の一翼を担っています。どの国にも、形式や強さは異なるもののこの三角形は存在します。

しかし、日本のそれは他国に比較して、度を超えて強力なのです。

その日本の鉄の三角形の中でも最たるものは、財務省、財界、族議員らの三角形でしょう。それに続くのは、日銀、金融業界、族議員の三角形でしょう。

これらの三角形が日本をどう毀損したかといえば、失われた30年を招いてしまったことです。

今から31年前、1990年の東京証券取引所は1月4日の「大発会」からいきなり200円を超える下げを記録しました。1989年12月29日の「大納会」でつけた史上最高値の3万8915円87銭から、一転して下げ始めた株式市場は、その後30年が経過した今も史上最高値を約4割ほど下回ったままです。長期的な視点に立てば、日本の株式市場は低迷を続けています。

その間、アメリカの代表的な株価指数である「S&P 500」は、過去30年で約800%上昇。353.40(1989年末)から3230.78(2019年末)へと、この30年間でざっと9.14倍に上昇しました。かたや日本は1989年の最高値を30年間も超えることができずに推移しています。

そうしてもう一つ、この30年間、他国は賃金が上昇したのに、日本は上昇しませんでした。

この違いはどこから来るのかという議論は日本でもありましたが、何かといえば構造改革が言われてきました。そうした議論が繰り返される中で、財務省は何をしたかといえば、増税等の緊縮財政を取り続け、平成年間には何度も消費税増税を繰りかえしました。

日銀は、2013年に黒田総裁が登場する前までの、白川総裁までは、実体経済とは無関係に、とにかく金融引締を続行しました。その後2013年に黒田総裁が登場し、異次元の包括的な金融緩和を実施し、日本経済は順調に伸びるようにみえたのですが、2014年に消費税増税をしたため、また落ち込みました。

さらに、日銀は金融緩和を続けてはいるのですが、2016年には、イールドカーブ・コントロールを導入して、金融緩和を控えめなものにしてしまいました。

日本は、未だデフレから完璧に脱却していないにもかかわらず、結局2019年10月にも消費税増税をしました。

そのため、日本は平成年間のほとんどの期間デフレであり、令和になってからも未だデフレから完璧に脱却したとはいえません。コロナ感染症による経済の停滞により今後も予断を許せない状況にあります。

「2022年度版世界の経済自由度指数」の話から内容が少しずれたようにもみえますが、日本では強固な鉄の三角形をなくすことまではできないでしょうが、弱くすることが喫緊の課題だといえると思います。

日本は、台湾ではどのように経済的自由度を高めたのか、真摯に学ぶ必要がありそうです。

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