共同訓練を行う、米原子力空母「エーブラハム・リンカーン」(中央)と、 海自護衛艦「こんごう」(左から5番目)など(海自提供) |
日米が抑止力強化を進めている。海上自衛隊は8日、イージス護衛艦「こんごう」などが4~7日、米原子力空母「エーブラハム・リンカーン」などと沖縄周辺海域を含む東シナ海、西太平洋で共同戦術訓練を実施したと発表した。ロシアがウクライナ侵攻をチラつかせ、中国が台湾への軍事的圧力を強めるなか、日米同盟の絆を見せつけた。
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共同訓練に参加したのは、海自は「こんごう」とP3C哨戒機、米海軍は「エーブラハム・リンカーン」と、強襲揚陸艦「アメリカ」、巡洋艦「モービル・ベイ」、ミサイル駆逐艦「スプルーアンス」、ドック型輸送揚陸艦「グリーン・ベイ」など計11隻。
6日には、南西諸島への展開手順を確認する目的で、陸上自衛隊の離島防衛専門部隊「水陸機動団」(長崎県)が加わり、ヘリコプターによる米強襲揚陸艦への着艦訓練も実施した。
ウクライナ危機が「台湾有事」「日本有事」に連動する危険性が指摘されるなか、日米は、中国の海洋進出が強まる海域に大規模な艦艇を展開させて抑止力を誇示した。
海自は1月17~22日にも米空母2隻などと共同訓練を実施している。
中国は「平和の祭典」である北京冬季五輪の開幕(4日)前の1月31日にも、台湾の防空識別圏(ADIZ)に複数の軍用機を進入させた。
台湾国防部によると、進入したのは戦闘機「殲16」3機と、電子戦機「殲16D」1機、早期警戒管制機「空警500」1機。殲16Dはレーダーや通信システムなどを攪乱(かくらん)・無力化する能力を持つ。ロシアがクリミア併合で見せた「ハイブリッド戦」を意識した脅しとみられる。
こうしたなか、米国務省は7日、台湾の地対空ミサイル「パトリオット」などを維持、改良するための装備売却(約1億ドル=約115億円)を承認、議会に通知した。
台湾総統府の報道官は8日、「台湾は自衛能力を向上させ、米国を含む価値観が近い国々とパートナーシップ関係を深める」と強調した。
【私の論評】インド太平洋地域と地中海への米艦隊の派遣との比較から見る、米国の真意(゚д゚)!
上の記事には、海自は1月17~22日にも米空母2隻などと共同訓練を実施している旨が欠かれていますが、それについてはこのブログでも解説しました。
さらに他の記事では現在、米軍はインド太平洋地域に3隻の空母のほか、強襲揚陸艦2隻も派遣しており、これはベトナム戦争以来のことであることも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
米の対北政策行き詰まり ウクライナ危機と同時進行のジレンマ―【私の論評】ベトナム戦争以降、インド太平洋地域に最大数の空母を集結させた米軍は、中露北の不穏な動きに十分に対応している(゚д゚)!
1月17~22日海上自衛隊が米海軍と実施した共同戦術訓練。右端は米原子力空母、エーブラハム・リンカーン
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を引用します。
空母3隻だけではなく、強襲揚陸艦「アメリカ」「エセックス」2隻が同じ時期にインド太平洋地域に出現しており、これは異例中の異例です。まさに、ベトナム戦争以降、この地域での最大の空母集結と言っても良いです。そうして、日本の海上自衛隊も現在も米海軍と行動をともにしていると考えられます。
さて、この記事でも上の記事でも、空母2隻(「エイブラハム・リンカーン」と、「カール・ビンソン」)という言葉があり、インド太平洋地域に米軍は空母打撃群を2つしか派遣していないのではないか思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、やはり3隻の空母が、インド太平洋地域に現在、派遣されているのです。そうして、上記で示した2隻以外のもう1隻はどこにいるかといえば、それは現在日横須賀に停泊中でメンテナンス中だったのです。その空母の名称は「ロナルド・レーガン」です。
さて、米軍はもちろん他の地域にも空母を派遣しています。米海軍第6艦隊は2022年2月7日(月)、フランス、イタリア両国とともに地中海で共同訓練を行ったと発表しました。
参加したのは米空母「ハリー・S・トルーマン」を中心とした空母打撃群で、フランスからは空母「シャルル・ド・ゴール」を中心とした「タスクフォース473」、イタリアからは空母「カブール」を中心とする戦闘群です。この3か国の空母と随伴する多くの艦船が統合され、訓練しつつ一定期間、艦隊を組んで航海しました。 並走する米仏伊3カ国の空母。手前から仏空母「シャルル・ド・ゴール」、 伊空母「カブール」、米空母「ハリー・S・トルーマン」 |
一方、フランス海軍の空母「シャルル・ド・ゴール」を中心とした「タスクフォース473」には、スペイン海軍イージス駆逐艦「アルミランテ・ファン・デ・ボルボン」や、ギリシャ海軍フリゲート「アドリアス」を始めとして、ベルギーやドイツといったNATO加盟国のほか、モロッコ軍艦も指揮下に入り行動中のため、今回の艦隊演習には米仏伊の3か国以外にもこれら各国艦船が集結したことになります。
加えて、同じく2月7日には、ロシア北方艦隊の軍艦3隻も地中海へ入ったそうです。ロシア海軍によると、ジブラルタル海峡を通過して地中海へ入ったのは、スラヴァ級ミサイル巡洋艦「マーシャル・ウスチーノフ」、フリゲート「アドミラル・カサトノフ」、ウダロイ級大型駆逐艦「ヴィツェ・アドミラル・クラコフ」とのことです。
ロシア海軍は、この北方艦隊3隻のほかに、ウラジオストクのロシア太平洋艦隊からスラヴァ級ミサイル巡洋艦「ヴァリヤーグ」、ウダロイ級大型駆逐艦「アドミラル・トリブツ」、ボリス・チリキン級補給艦「ボリス・ブトマ」の3隻を分派しており、今後は地中海エリアで、黒海艦隊を含めた艦隊間演習などを実施する予定としています。
ロシア海軍は、この北方艦隊3隻のほかに、ウラジオストクのロシア太平洋艦隊からスラヴァ級ミサイル巡洋艦「ヴァリヤーグ」、ウダロイ級大型駆逐艦「アドミラル・トリブツ」、ボリス・チリキン級補給艦「ボリス・ブトマ」の3隻を分派しており、今後は地中海エリアで、黒海艦隊を含めた艦隊間演習などを実施する予定としています。
以上は、当然のことながら、ウクライナを意識してのことでしょう。
これら、中露を東西から挟むような艦隊の配置から、米国の意図が読み取れると思います。
米軍が地中海に派遣した空母は、「ハリー・S・トルーマン」1隻です。ただ、仏・伊の空母も参加していますから、大艦隊であることは間違いありません。
ただ、米国は3つの空母打撃群と、2隻の強襲揚陸艦をインド・太平洋地域に派遣する米国の意図は何なのでしょう。もちろん、中国・北朝鮮を牽制することもありますが、同時にロシアを東から牽制するという意味もあると考えられます。
それについて述べた部分を以下に引用します。ウクライナ情勢に関しては、以前このブログにも述べたように、現在のロシアは一人あたりのGDPが韓国を大幅に下回り、米国を除いたNATOと正面から対峙するのは困難です。それに、ロシア地上軍は今や20数万人の規模であり、ウクライナ全土を掌握することはできません。
現在のロシアにできることは、ハイブリット戦などを駆使したとしても、ウクライナの一部の州もしくは、一部の州のロシア国境側の地域等の占拠のみということになるでしょう。ウクライナ全土に侵攻できる軍事力はありませんし、もしそうしたとしたら、ウクライナをはじめ周辺諸国が軒並みNATOに加盟することになります。
そうなると、ロシアはNATOと直接軍事衝突しなければならなくなります。それでは、勝ち目は全くありません。運が悪ければ、NATO軍にロシア領内深くまで攻め入られることになりかねません。
米国としては、ウクライナ情勢に関しては、無論米国も関与するつもりでしょうが、それにしても大部分はウクライナに任せいざというときは、NATOにかなりの部分を任せるつもりなのでしょう。
それよりも、中国・北の脅威に対処するとともに、ロシアに対して東側から圧力を加えることによって、ロシアの軍事力を分散させることを狙っているのでしょう。実際、ロシアは戦車や歩兵戦闘車、ロケット弾発射機などの軍事装備を極東の基地から西方へ移動し始めています。米当局者やソーシャルメディアの情報で明らかになっています。
そうして、バイデン政権は、ロシアへの脅威に対しては、米国も参加するものの、あくまでもNATOが対処すべきであり、また現状のロシアならNATOで十分対応できるとみているのでしょう。
しかし、中国は違います。中国は現状では軍事的には未だ未整備な部分が多いですが、それにしてもGDPでロシアをはるかに上回っています。一人あたりのGDPはロシアと中国はさほど大きな差はありませんが、人口はロシアが1億4千万人、中国は14億人で丁度ロシアの10倍です。そのため、ロシアのGDPは中国の1/10で韓国と同じくらいです。
しかし、ロシアの領土は広大です。ロシア軍は中国よりも広大な領土を守備しなければならないのです。たとえ、韓国がロシアのように核兵器と優秀な軍事技術を持ち、人口もロシアと同じくらいだったにしても、韓国の経済力でロシア全土を守備し、それに加えてウクライナ全土に侵攻して、占拠できるなどと考える人は誰もいないでしよう。
ロシアは戦争を起こしたとしても、クリミアのときのように短期で局所戦のみでしょうが、中国は現在はともかく将来は長期的な総力戦も遂行できるようになる可能性があります。米国もこれには、長期に渡る対応が必要になります。
バイデン政権か優先しているは、やはり中国への対峙なのでしょう。インド太平洋地域にベトナム戦争意向最大数の空母などを結集させていることがそれを示しています。そうして、日本の海自もこれらと行動をともにしているのです。直近の2回の日米合同演習がそれを示していると思います。
これは米国が日米の協同が、中国対応への一つの鍵だとみている証拠です。日本は米国に頼りにされているのです。日本のマスコミはこれを報道しませんが、日本としてはこれをしっかり認識すべきです。重い責任を担うことにもなりますが、日本の存在価値を高めるチャンスでもあるととらえるべきです。
ロシア、中国、イランの策動は今後も続き、これら3枢軸国と、米国とその同盟国を中心とした、「米国連合」の対峙はもうすでに新冷戦の様相を示しています。もう、両陣営とも引き返すことはできない所まで来ています。いずれ決着をつける時は必ずきます。
ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」、後方は同「いせ」 |
「3枢軸国」と「米連合」を比較すれば、信条・価値観などが近いのは無論「米連合」です。「3枢軸国」のそれは、日本国民のほとんどは受け入れられないでしょう。
日本は、かつて冷戦において、日本は米軍に基地を提供する以外にも、オホーツク海においてソ連原潜の動きを封じ込め、西側諸国に大きな貢献をして冷戦戦勝国に名を連ねることができました。新冷戦でもそのような道を選ぶことが、日本の進むべき道です。
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