2022年2月15日火曜日

ロシア艦艇24隻を確認 日本海・オホーツク海―【私の論評】バイデン政権に完璧に無視されたロシア太平洋艦隊(゚д゚)!

ロシア艦艇24隻を確認 日本海・オホーツク海

海上自衛隊が確認したロシア艦艇。手前から商船の砕氷艦、「グリシャV級フリゲート艦」
「マルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦」と続き、一番奥は「ロプチャーI級戦車揚陸艦」


 防衛省は15日、今月1日以降、日本海とオホーツク海南部の海域で活動するロシア海軍の「ウダロイ級駆逐艦」など艦艇計24隻を確認したと発表した。岸信夫防衛相は同日の記者会見で「ウクライナでの動きと呼応する形で東西で活動を活発化させている」との認識を明らかにした。

 ロシア海軍の艦艇24隻には駆逐艦のほか、フリゲート艦やミサイル護衛哨戒艇、潜水艦、揚陸艦、さらに補給艦や病院船なども含まれていた。それぞれの目的や狙いは不明だが、日本海やオホーツク海南部を航行。中には商船の砕氷艦とともに隊列を組んでいたケースもあった。

 海上自衛隊は護衛艦「しらぬい」や哨戒機「P3C」が情報収集や警戒監視に当たった。日本への領海侵犯などはなかった。

 岸氏は会見で「全艦艇によるこの時期の軍事演習は異例」とした上で「ロシア軍が東西で活動し得る能力を誇示するため、オホーツク海などでも活動を活発化させている」と述べた。

 ロシア側は1月20日、地中海や北海、オホーツク海などで1~2月、艦艇計140隻以上が参加する演習を行うと発表。目的は「海からの軍事的脅威への対抗」などとしていた。

【私の論評】バイデン政権に完璧に無視されたロシア太平洋艦隊(゚д゚)!

この24隻の艦艇のほとんどは、ロシアの太平洋艦隊に所属していると思います。そうして、ロシア太平洋艦隊はこのところ、今回に限らず最近活動を活発化させているようです。

たとえば、このブログにも掲載したように、中国海軍とロシア海軍の艦艇計10隻が10月18日に津軽海峡を通過した。この艦隊はその後太平洋を南下、さらに鹿児島県の大隅海峡を通過しました。

さらに、昨年10月下旬ロシア国防省は軍事演習の異例の公開をしたり、潜水艦基地や最新鋭艦も披露し、ロシア極東戦力の一端を明らかにしました。

極東に新しく配属されたボレイ型原子力潜水艦「ウラジーミル・モノマフ

このロシア海軍の行動については、日米とも政府が公表したり、マスコミで報道されたりしていますが、ホワイトハウスはどう見ているのでしょうか。

実はその回答が最近だされています。それについては、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
米バイデン政権が「インド太平洋戦略」を発表 「台湾侵攻の抑止」明記 高まる日本の重要性―【私の論評】現在バイデン政権は、ウクライナ問題に対処しているが、最優先はインド太平洋地域の安定であることを、改めて明らかにした(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではアメリカのバイデン政権は11日、最重要と位置づけるインド太平洋地域での外交や安全保障、経済政策の指針となる「インド太平洋戦略」を発表しました。中国に対抗する姿勢を強調し、台湾への軍事侵攻を抑止する方針も明記されていることを掲載しました。

この戦略は、上記で述べたロシア海軍の行動の後に出されていることに注目していただきたいです。

あれだけロシアが存在価値を示すようことを繰り返し行ったにもかかわらす、この戦略にはロシアのことは一言も述べられていないのです。ロシアは、極東に太平洋艦隊を配置しています。にもかかわらず、一言も触れていないのです。これに関する部分をこの記事から引用します。
米国が現状のように、ロシアによるウクライナ侵攻の危機が叫ばれている時にこのような戦略を公表する意図は何なのでしょうか。ちなみに、バイデン政権のこの戦略の中には、ロシアもウクライナも一切でてきません。

インド太平洋戦略について述べているわけですから、出てこないのは当たり前といえば、当たり前なのかもしれませんが、それにしても、インド・太平洋地域というと、ロシアもオホーツク海を介して太平洋と繋がっているのですから、何らかの影響力があれば、言及されるはずです。

米国としては、ロシアのインド・太平洋地域における影響はなしとみているといえると思います。実際そうなのでしょう。ロシアの太平洋艦隊も、ロシアの原潜等も、米国には脅威とみなしていない、少なくとも米国のコントロール下にあると見ているのだと思います。無論、それには日本の強力な対潜水艦戦闘力(ASW)等が関係していると思います。

そうして、この地域における最大の脅威はとりもなおさず、中国であるということです。そうして、これこそが米国にとって大きな脅威であると認識しているのです。しかも、軍事力だけではなく、経済力や技術力などによるこの地域への浸透と不安定化を懸念しているでしょう。

以下に結論部分を引用します。

現在バイデン政権は、ウクライナ問題に対処はしていますが、最優先はインド太平洋地域の安定であることを、改めて明らかにしたというのが、今の時期にわざわざ「インド太平洋戦略」を公表したことの背景にあるのは間違いないでしょう。

バイデン政権としては、旧ソ連の核や軍事技術を継承しているロシアは決して侮ることはできないものの、今や一人あたりGDPが韓国を大幅に下回るロシアに、振り回されることなく、インド太平洋地域の戦略を第一義に考えていることをアピールするという目的もあったのではないかと思います。

そうしなければ、マスコミはウクライナ問題ばかり報道し、バイデン政権はウクライナ問題に忙殺されているように国民から受け取られ、同盟国からもインド太平洋地域を軽視していると受け取られかねません、それだけは避けたかったのでしょう。 

バイデン政権としては、もはや強敵とはいえないロシアに振り回されて、インド太平洋地域を疎かにしてしまえば、それこそ今秋の中間選挙に向けて、共和党から批判され支持率がさらに低下するのは目に見えています。

また、中国の脅威にさらされている、日本、台湾、オーストラリア、ASEAN諸国からも不満の声があがりかねません。

だからこそ、インド太平洋地域の安定こそが最優先であることを、はっきりさせておく必要があったのでしょう。

そうして、実際米国としてはロシア太平洋艦隊にはあまり脅威を感じていないのでしょう。そうして、その背景には日本の存在があります。これについても、以前のブログで解説しましたので、そこから一部を引用します。
(米国は)ロシアは旧ソ連の核兵器と軍事技術を継承しており、決して侮れる相手ではないものの、インド太平洋地域においては当面大きな脅威になるとはみなしていないのでしょう。そんなことよりも、この地域への中国の浸透のほうが、かなり大きく深刻であると判断しているのでしょう。

ロシアの動き封じるという意味では、日本は新冷戦においても冷戦時に旧ソ連を封じ込めたのと同じくロシアをオホーツク海で封じ込めています。さらに東シナ海、南シナ海でも米軍に協力し西側諸国に大きく貢献しているといえます。
日本の潜水艦はこの付近の海域を巡航しており、当然のことながら今回のロシア海軍の動きを察知していたことでしょう。しかし、ロシア側には、日本の艦艇や哨戒機の行動は探知できても、ステル性に優れた日本潜水艦の動きは探知できません。

日本の潜水艦はこの付近の海域で情報収集にあたっているでしょうし、ロシア海軍が異常な行動を起こせば米軍に知らせる体制は出来上がっているでしょう。それに米原潜も哨戒活動にあたっているでしょう。米国にとっては、この海域においてロシアの不意打ちを警戒する必要はないのでしょう。

このあたりは、以前にも述べたように潜水艦の行動は極秘中の秘なので、公表はされませんが、日米ともに、ロシアの動きを監視しているのは間違いないでしょう。実際先日も、ロシアがクリル諸島付近の海域を領海侵犯したと公表しています。

米国はこれを否定していますが、領海近くで哨戒活動にあたっていたのは間違いないと思います。日本も哨戒活動にあっていた可能性もありますが、それはロシア側が発見できないでしょうから、なんともいえません。

ただ、ソースが明らかになっていないので、事実かどうかは確認できないですが、韓国中央日報に以下のような記事が掲載されています。
【コラム】周辺国に大きく遅れた韓国の潜水艦戦力 補完が至急
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
日本は冷戦時代、北海道とサハリンの間の宗谷海峡に2隻、北海道と本島の間の津軽海峡に2隻、大韓海峡(日本名・対馬海峡)に2隻の潜水艦を配置した。潜水艦隊司令官を務めた小林正男提督は「米国の要請でロシアのウラジオストクから太平洋に向かう旧ソ連の潜水艦を監視しなければならなかった。そのためには3つの海峡にそれぞれ2隻を配置する戦略に基づき、交代・整備などを考慮して16隻体制という潜水艦保有戦略が構築された」と述べた。

日本はさらに毎年1隻を退役させ、新しく1隻を建造している。このため潜水艦技術も毎年発展し、艦齢が平均8年にもならない先端潜水艦で武装、非原子力潜水艦で世界最高と評価されている。2011年からは米国の要請で東シナ海と南シナ海に抜ける2カ所に計8隻の潜水艦を常時配置し、22隻体制に変わった。毎年1隻ずつ退役させるが解体はせず、演習艦という名目で保存しているため、運用可能な潜水艦は計30隻ほどと推定される。
この記事が正確なものかどうかはわかりませんが、それにしてもこれに近いことが行われているのは間違いないでしょう。日本は潜水艦22隻体制をとっていますから、この潜水艦隊は日本近かくの海域に潜んでいることは間違いなく、現在でもオホーツク海のいずれかの海域に潜んでいるでしょう。

2018年函館に寄港した潜水艦「なるしお」

さらに、このブログにも掲載したことがあるように、旧ソ連軍は最盛期の時であってさえ海上輸送能力が十分ではなく北海道に侵攻できるだけの力はありませんでした。現在のロシア軍はそれ以下です。

そういうこともあって、米国はオホーツク海や太平洋でのロシアの動きにはあまり脅威を感じないのでしょう。

それにしても、最新の「インド太平洋戦略」にロシアという文言が一言もないというのが、現在のバイデン政権の考えを雄弁に語っていると思います。いくらプーチンが去勢をはってみたところで、いまや一人あたりのGDPが韓国に大幅に下回るロシアにできることは限られています。インド太平洋地域におけるバイデン政権の最優先課題はやはり、中国なのです。

そうして、この戦略には「日本」という言葉は2度でてきます。以下にその部分だけを引用します。
  • オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、およびタイとの 5 つの地域条約同盟をさらに深める。
  • 拡大抑止と韓国・日本の同盟国との連携の強化、朝鮮半島の完全な非核化の追求 
バイデン政権としては、日本をはじめとする同盟国等も米国が中国と対峙するための支援を惜しまないでほしいと願っているのでしょう。

こうした中で、ロシアを囲い込みに協力している日本は、米国に対してかなり貢献しているといえるでしょう。その安心感もあって、戦略のなかに「ロシア」という文言は一言も出さなかったのでしょう。冷戦時と比べれば、隔世の感があります。

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