まとめ
- 我が国政府が在中国邦人に「広場・人混みを避けよ」と警告したのは、中国国内の政治的緊張と反日感情の高まりを現実的な危険として捉えた結果である。
- 高市首相の台湾有事に関する国会答弁は、我が国の安全保障の常識に沿ったものであり、中国がこれを撤回させようとするのは明白な内政干渉である。
- 中国の反日デモは過去たびたび発生し、その一部は反政府運動へ転化し、当局の統制さえ危うくした事例があるため、邦人が巻き込まれる危険性は無視できない。
- 国際環境も台湾海峡をめぐり緊張を高めており、米国務省や米議会は中国の現状変更を強く非難し、日本との連携を明示している。
- 国内の一部メディアや識者は、事態の本質を見ず「挑発だ」「日本が自制すべきだ」といった浅い反応に終始し、危機の構造を理解しようとしない姿勢がむしろ問題を深刻化させている。
11月中旬、我が国政府は在中国邦人に向けて「大人数の広場や人混みを避けよ」と注意喚起を出した。表向きは安全情報に見えるが、その文言には通常の旅行注意を超えた緊張感が漂う。広場、群衆、不審な集団――いずれも政治的騒乱を暗示する言葉だ。我が国は、中国国内で反日感情が溜まりつつある危険を見逃さず、それが邦人リスクに転化する可能性を現実に読み取っている。
背景には、高市早苗首相が国会で台湾海峡の危機に言及したことがある。中国はこれに反発し、日本政府に“発言撤回”を迫った。外交の場で他国の首相答弁に口出しする行為は、主権国家への明白な干渉である。それにもかかわらず、国内の一部メディアと“識者”は、高市首相に対して「挑発的だ」「余計な発言だ」と責める調子ばかりで、中国側の不当性を指摘する声は驚くほど少なかった。
11月18日の中日外務高官協議では、中国外務省の毛寧報道官が高市首相の答弁に抗議し、撤回を要求したと明らかにした(出典:ロイター China urges Japan PM to retract 'egregious' remarks on Taiwan, 2025年11月13日)。
これは、まぎれもなく我が国への干渉であり、看過すれば今後も際限なく踏み込まれる。高市首相が退く理由はまったくない。
さらに、国会でもこの問題は核心に触れた。11月7日の衆院予算委員会で、立憲民主党の岡田克也氏が「台湾とフィリピンの間の海峡が封鎖された場合、存立危機事態に当たるのか」と問い、高市首相は「武力を伴うものなら該当し得る」と答えた。
国家安全保障の責任者として当然の答弁であり、これを中国が“撤回せよ”と迫る構造自体が危険なのだ。
2️⃣中国が最も恐れるのは“反日”の暴走ではなく“反政府”への転化である
中国は長年、反日ナショナリズムを国内統治の道具として利用してきた。経済不満や政治不満を外に向け、国民の視線をそらす典型的な手法である。しかし、この方法には重大な欠点がある。火が大きくなりすぎると、矛先が“反政府”へ向かう危険を常に伴う。まさに諸刃の剣なのだ。
実際、過去には反日デモが反政府へ“転化”した事例がある。2005年の反日デモでは日本企業の店舗破壊が起きたが、一部では汚職批判のスローガンが混ざった。2012年の尖閣をめぐるデモでも、地方政府の腐敗や不満が叫ばれた場面が確認されている。
| 自由を求めた中国のゼロコロナ抗議デモ |
中国当局はこの転化を恐れている。
なぜなら、反日デモは「政府が許した範囲」でしか燃やせない炎だからだ。しかし、中国人民の中には、政府に対する憤怒のマグマがいつ爆破してもおかしくないほど鬱積している。火力が上がり過ぎれば、中国共産党の統治正当性そのものに跳ね返り、制御不能になる。
したがって、我が国政府の警告は、当然のことである。中国国内の反日感情が高まる時期は、中国当局が神経質になる時期でもあり、これがさらにエスカレートしさらに反政府運動にまで拡大すれば、多数の邦人が巻き込まれる可能性は一気に高まる。広場を避けよという警告は、混乱の“暴発”とその限界を我が国が冷静に見通した結果である。
3️⃣国際環境の現実と、情けない国内“専門家”たち
国際社会も台湾海峡の危機を本気で見ている。7月、米国務省は「台湾海峡の現状変更に強く反対する」と公的に表明し、日本を含む同盟国と連携する姿勢を明確にした。さらに米議会では、台湾侵攻に備えた中国制裁法案が超党派で進み、米軍制服組も議会で「台湾有事の危険は過去より切迫している」と証言した。
(出典:米国務省・台湾に関するプレスリリース / 米議会公聴会記録)
こうした状況下で、高市首相が台湾海峡の安全保障を語るのは国際常識に沿っている。むしろ、語らないほうが不自然だ。台湾海峡は我が国の生命線であり、その危機は我が国の危機だ。首相が国会で現実を述べたからといって、それを中国が撤回させようとするのは、主権を踏みにじる行為にほかならない。
ところが、国内の一部メディアと“識者”は、まるで中国の広報官のような反応を示した。「挑発的だ」「不用意だ」「中国を刺激するな」――そうした言葉ばかりが紙面に躍り、高市首相を批判する声はあっても、中国の不当性を指摘する声はほとんど聞こえなかった。
中国が日本の首相に“発言撤回”を求める異常事態であるにもかかわらず、その重要性に触れようともしない。
目の前で起きているのは「台湾有事の現実化」と「中国による日本政治への介入」であり、いずれも国家の根幹にかかわる問題である。これを矮小化する報道は国益を損なう。
中国による“発言撤回要求”は、我が国の主権と議会制民主主義への挑戦である。もしこの要求を受け入れれば、我が国は今後あらゆる外交・安全保障上の議論で中国の顔色を窺う国になるだろう。それは国家としての自殺行為だ。
台湾海峡の危機が迫る中、我が国は同盟国と歩調を合わせ、毅然とした姿勢を貫くべきだ。高市首相の答弁はその第一歩であり、撤回する理由はどこにもない。
我が国は、主権国家として当たり前のことを当たり前に言う国でなければならない。
それこそが国民を守る確かな道である。
中国の威嚇は脅威の裏返し――地政学の大家フリードマンが指摘した『日本こそ中国の恐れる存在』 2025年11月16日
高市首相の「台湾有事=日本の存立危機」発言に、中国が暴言・威嚇・渡航自粛で過剰反応した背景を、フリードマン地政学から読み解く記事だ。日本列島が中国の外洋進出を塞ぐ“壁”であることを踏まえ、中国の恫喝がむしろ「日本への恐怖と焦り」の裏返しである構図を描き出している。
沈黙はもう終わりだ──中国外交官の“汚い首を斬る”発言に、日本が示すべき“国家の矜持” 2025年11月11日
大阪の中国総領事が高市首相に対して「汚い首を斬ってやる」と発言した前代未聞の暴言を取り上げ、日本がどのような抗議と対抗措置を取るべきかを論じたエントリーである。外交とは礼と覚悟の勝負であり、中国の恫喝に沈黙してきた日本の姿勢を改めるべきだと強く訴えている。
「台湾有事」への覚悟──高市首相が示した“国家防衛のリアリズム” 2025年11月9日
高市首相が国会で「台湾の安定は日本の安全保障に直結する」と明言した意味を、南西シフトやハイブリッド戦のリアリズムから掘り下げた記事だ。台湾有事は日本有事であり、防衛力整備は“戦争準備”ではなく戦争を避けるための抑止であるという視点を提示している。
高市総理誕生──日本を蝕んだ“中国利権”を断て 2025年10月21日
高市総理誕生を、日本政治に巣食ってきた「中国利権ネットワーク」を断ち切る転換点として描いた論考である。IR汚職や海外の事例を引きつつ、中国マネーが政財官界や大学・地方自治体にまで浸透してきた実態を示し、高市政権に求められる利権構造の一掃を提起している。
日本の沈黙が終わる――高市政権が斬る“中国の見えない支配” 2025年10月19日
高市政権の成立を「情報主権国家」への出発点と位置づけ、中国の情報操作・統一戦線工作にようやくメスが入る過程を描いた記事だ。スパイ取締法構想や“空白証拠”の分析を通じて、メディアと政治の親中構造が生んだ沈黙を断ち切る必要性を訴えている。
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