2025年11月11日火曜日

沈黙はもう終わりだ──中国外交官の“汚い首を斬る”発言に、日本が示すべき“国家の矜持”

 まとめ

  • 高市早苗首相は国会で「中国が台湾を武力封鎖すれば、日本の存立危機事態に当たり得る」と明言し、戦後日本の安全保障政策を一歩前進させた。
  • 中国大阪総領事の「汚い首を斬る」発言は、個人の暴走ではなく、中国共産党が黙認する体制的な“戦狼外交”の一環である。
  • 中国の外交官は実質的な裁量を持たず、儀礼や窓口業務が中心であり、昇進のために過激発言で党の注目を集める構造が存在し、それが戦狼外交の温床ともなっている。
  • 英国やカナダなど諸外国では、類似事例に対して外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ(望ましからざる人物)」として国外追放しており、日本も同様の措置を検討すべき段階にある。
  • 我が国は「沈黙の平和」から「覚悟の平和」へと転換し、礼と理性をもって毅然と立ち向かうことこそが「国家の矜持」と「霊性の文化」の実践である。
高市早苗首相が、台湾有事に関する国会答弁で「存立危機事態」に踏み込んだ発言を行った直後、中国大阪総領事館の薛艦(シュエ・ジエン)総領事がSNS上でこう書き込んだ。

「その汚い首を斬る。覚悟はあるか?」

この一文が世界を震撼させた。暴言というより、もはや恫喝である。民主主義国家では、外交官の発言は国家の立場を反映するが、中国では事情がまったく異なる。

1️⃣台湾有事と「存立危機事態」──高市発言の衝撃

11月7日、衆議院予算委員会。立憲民主党の大串博志議員が問うた。「中国が台湾を海上封鎖した場合、それは日本の『存立危機事態』に該当するのか」。

高市首相は静かに、しかし明確に答えた。

「戦艦を用い、武力の行使を伴うような事態であれば、我が国の存立危機事態に当たり得ると考える」

この発言は、戦後日本の安全保障政策を根底から動かすものだった。従来、政府は「我が国が直接攻撃を受けない限り、集団的自衛権の行使は慎重に」としてきた。しかし高市首相は、台湾有事が我が国の安全保障に直結するという現実を、初めて公の場で明言したのである。

首相は「特定国を念頭に置いたものではない」としながらも、「発言を撤回するつもりはない」と断言した。この毅然とした姿勢こそ、まさに日本の覚悟を示すものであった。

2️⃣暴言と沈黙──党が演出する“戦狼外交”


問題の投稿は翌日、SNSで世界に拡散した。「汚い首を斬る」――その言葉は、外交官としての一線を完全に踏み越えていた。日本政府は即座に外務省を通じて中国政府に正式抗議を行い、当該外交官の処分と説明を求めた。

だが、中国外交部は謝罪どころか、こう言い放った。
「日本側が台湾問題で誤った発言を繰り返し、中国の核心的利益を挑発している」

まるで加害者が被害者を責めるような態度である。この開き直りは、中国共産党体制の本質を端的に示している。

中国の外交官は、我が国や欧米の外交官とは根本的に立場が異なる。民主主義国家の外交官が「国家の代表」として一定の裁量と責任のもとに発言するのに対し、中国の外交官は共産党体制の命令下で行動する“執行装置”にすぎない。彼らに実質的な政策決定権はなく、主な任務は窓口業務や儀礼行事、親善活動など、党の方針を外部に伝達する限定的なものにとどまっている。

問題は、そのような環境で「どうすれば出世できるのか」という点にある。研究によれば、中国外務省の昇進構造はきわめて閉鎖的で、海外赴任が長くても昇進率は上がらない。むしろ北京本部に残り、党幹部の信頼を得た者が昇進する傾向がある。そのため海外に出された外交官は、本国の注目を集めるために、過激な発言や強硬な態度を取ることで忠誠心を示そうとする。この構造的歪みこそが、いわゆる「戦狼外交(ウォルフ・ウォリアー・ディプロマシー)」の温床となっている。

したがって、薛艦総領事の暴言は個人の暴走ではなく、党の意向を映す鏡そのものである。もし本国が問題視していれば、発言は削除されるだけでなく、直ちに懲戒処分が下されていたはずだ。しかし沈黙をもって放置されたという事実が、体制の容認を意味している。つまり、これは「党が演出した外交劇」である。

3️⃣諸外国ならどう動く──「覚悟ある外交」の試金石


もし同様のことが他国で起きれば、対応は明快である。国際法――ウィーン外交関係条約第9条――は、受入国に対し、理由を示すことなく外交官を“persona non grata(望ましからざる人物)”として宣言し、国外退去を命じる権利を認めている。

英国は2018年、スクリパル毒殺未遂事件の後、ロシア外交官23名を追放した。カナダも2023年、中国外交官の脅迫行為を理由に国外追放を断行した。リトアニアは中国による政治的干渉を理由に大使館員の受け入れを拒否した。いずれも、国家の尊厳を守るための当然の措置である。

我が国も、謝罪も処分もないまま放置されるなら、ペルソナ・ノン・グラータの宣言をためらうべきではない。それは挑発ではなく、国家を侮辱させないための最低限の自衛である。

ただし、外交とは断絶のためにあるのではなく、秩序を保つためにある。怒りに任せて関係を破壊すれば、経済や人的交流にも悪影響が及ぶ。だからこそ、日本は冷静に、しかし揺るぎなく立ち向かわなければならない。その態度こそ、我が国が千年の歴史の中で培ってきた「礼の外交」、すなわち「霊性の文化」の体現である。

我々はいま、沈黙をもって平和を保つ時代を終え、覚悟をもって平和を守る時代に踏み出した。中国が言葉を武器に威圧するなら、日本は理性と品格でそれを跳ね返す。それこそが「国家の矜持」であり、日本が誇る真の外交の姿である。

【参考情報】

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  まとめ 高市早苗首相は国会で「中国が台湾を武力封鎖すれば、日本の存立危機事態に当たり得る」と明言し、戦後日本の安全保障政策を一歩前進させた。 中国大阪総領事の「汚い首を斬る」発言は、個人の暴走ではなく、中国共産党が黙認する体制的な“戦狼外交”の一環である。 中国の外交官は実質...