- 中国の威嚇は、日本が「沈黙する国」から「自立した主権国家」へ戻り始めたことへの恐怖の表れである。
- 日本の“和の精神”は服従ではなく境界を守る静かな強さであり、第一列島線を守る姿勢は我が国の霊性文化に沿う行動である。
- 日本はASWとAWACSで海と空の情報優位を握り、中国の軍事行動に大きな制約を与えられる。
- 中国の唯一の海戦上の優位は核だが、核を使えば目的は永遠に達成できず、中国自身が破滅に向かうため現実的には使えない。
- 「中国を刺激するな論」は完全に破綻しており、日本が国家の矜持と主体性を示して初めて抑止が成立する。
1️⃣中国の威嚇が示す「日本の変化」とその背景
今月上旬、高市早苗首相は国会で「中国が台湾へ軍事侵攻すれば、我が国の存立危機事態に当たり得る」と明言した。台湾有事は日本の有事である──この当たり前の現実を、ここまで明確に語った首相は戦後ほとんど例がない。
その発言に、最も過敏に反応したのが中国だった。大阪の中国総領事・薛剣はXに「勝手に突っ込んできたその汚い首は斬ってやるしかない」と書き込み、日本政府はただちに抗議した。外交官が一国の首相に向けて「首を斬る」などという暴言を吐いた例は近年ほとんどない。
さらに中国外務省の報道官は「台湾問題で火遊びをするな。火遊びをする者は必ず火傷する」と述べ、日本を名指しせずとも明確に威嚇した。それは単なる強がりではない。中国は、日本が“沈黙する国”から“自立した主権国家”へ戻っていくことを最も恐れている。だからこそ、言葉で日本を抑え込もうとしているのである。
米国防総省は日本の防衛力強化を「第一列島線の戦略構造における最大級の変化」と評価し、米シンクタンクも「台湾防衛は日本の協力なしには成立しない」と分析している。中国自身が公式声明で、日本を「核心利益に挑戦し得る主要国」と位置付けた。日本が挑発したからではない。日本が眠りから覚め始めたからだ。
そして、これを“和を乱す”と受け取る向きもある。しかし、日本文化における「和を以て貴しとなす」は、外圧に沈黙して従うことを意味しない。和とは、秩序を守り、境界を乱させないための知恵である。鎮護国家の祈り、武家社会の自立、共同体を守る覚悟──そのどれもが“守るための静かな強さ”だ。
第一列島線を守り、日本自身の存立を守ることは、我が国の霊性の文化に反するどころか、その核心に沿う行動である。外からの暴力に沈黙することは“和”ではない。守るべきものを守ることで初めて、和は成り立つのである。
2️⃣海と空で日本が握る優位──ASW・AWACS、そして中国唯一の強み“核”の現実
中国海軍の艦艇数が増えたことで「海では日本がもう勝てない」という声がある。しかし、海戦は数では決まらない。勝敗を分けるのは質、地理、そして情報優位である。ここで日本は、中国にとって最も厄介な強みを持っている。
まずASW(対潜戦)だ。
日本の対潜能力は世界でもトップクラスであり、P-1哨戒機、P-3Cの多数運用、「そうりゅう型」「たいげい型」の静粛性、そして何より日本近海で蓄積してきた膨大な音響データが中国潜水艦の動きを縛っている。中国原潜が太平洋に出るには限られた海峡を通るしかなく、その出口には日本の監視網が張り付いている。
次にAWACS(早期警戒管制機)である。
日本のAWACSはE-767とE-2Dを運用し、空中だけでなく巡航ミサイルなど低空飛翔体も捉える。機数は多くないが、日本周辺に集中運用されており、この地域に限れば世界最高密度の監視網を形成している。中国軍機や艦隊がどこで動こうとしても、その多くは“日本側が先に気付く”構造が定着している。
ここまでが日本の優位だ。だが公平に言えば、中国に唯一、日本より海戦上の明確な優位がある。それは核兵器を保有していることだ。
しかし、この“唯一の強み”は、実のところ中国自身を最も縛っている。
海戦に核を使えば、中国は戦術的には勝利できるかもしれない。だが、そこで終わりだ。核を使った瞬間、中国は国際社会の正統性を完全に失う。
そして、この“核の不合理”を理解する上で、今まさに世界が目撃している事例がある。
それがロシアである。
ロシアは戦術核を大量に保有している。追い詰められた場面も多かった。それでも、ウクライナに核を使っていない。なぜか。
理由は明白だ。
核を使えば“勝利”はできるかもしれないが、
その瞬間、ロシアは国際社会の敵として完全に孤立し、国家としての目的を果たせなくなるからだ。
中国も同じである。
核は強いように見えて、実は“最後まで使えない兵器”なのだ。
その核を過大評価する必要はないし、過小評価する必要もない。
ただ冷静に、ロシアの現実を見ればよい。
中国が本当に恐れるのは、核が使えない状況で、日本がASWとAWACSで海と空の主導権を握り、第一列島線を固めてしまう未来である。
そして、その未来に最も近づきつつあるのが、まさに今の日本だ。
まずASW(対潜戦)だ。
日本の対潜能力は世界でもトップクラスであり、P-1哨戒機、P-3Cの多数運用、「そうりゅう型」「たいげい型」の静粛性、そして何より日本近海で蓄積してきた膨大な音響データが中国潜水艦の動きを縛っている。中国原潜が太平洋に出るには限られた海峡を通るしかなく、その出口には日本の監視網が張り付いている。
次にAWACS(早期警戒管制機)である。
日本のAWACSはE-767とE-2Dを運用し、空中だけでなく巡航ミサイルなど低空飛翔体も捉える。機数は多くないが、日本周辺に集中運用されており、この地域に限れば世界最高密度の監視網を形成している。中国軍機や艦隊がどこで動こうとしても、その多くは“日本側が先に気付く”構造が定着している。
ここまでが日本の優位だ。だが公平に言えば、中国に唯一、日本より海戦上の明確な優位がある。それは核兵器を保有していることだ。
しかし、この“唯一の強み”は、実のところ中国自身を最も縛っている。
海戦に核を使えば、中国は戦術的には勝利できるかもしれない。だが、そこで終わりだ。核を使った瞬間、中国は国際社会の正統性を完全に失う。
〇 台湾統一という「目的」は永久に達成不能つまり、核を使えば“勝てる”が、“目的達成は絶対にできないという矛盾が生まれる。
〇 中国は全方位から経済制裁と封鎖を受ける
〇 インド・米国・欧州・ASEANが完全に対中包囲へ転じる
〇 自国経済が崩壊し、共産党の統治そのものが揺らぐ
そして、この“核の不合理”を理解する上で、今まさに世界が目撃している事例がある。
それがロシアである。
ロシアは戦術核を大量に保有している。追い詰められた場面も多かった。それでも、ウクライナに核を使っていない。なぜか。
理由は明白だ。
核を使えば“勝利”はできるかもしれないが、
その瞬間、ロシアは国際社会の敵として完全に孤立し、国家としての目的を果たせなくなるからだ。
中国も同じである。
核は強いように見えて、実は“最後まで使えない兵器”なのだ。
その核を過大評価する必要はないし、過小評価する必要もない。
ただ冷静に、ロシアの現実を見ればよい。
中国が本当に恐れるのは、核が使えない状況で、日本がASWとAWACSで海と空の主導権を握り、第一列島線を固めてしまう未来である。
そして、その未来に最も近づきつつあるのが、まさに今の日本だ。
3️⃣「刺激するな論」の破綻と、国家の矜持を取り戻すとき
| 伊勢神宮の日の出 |
それでも日本国内には、「中国を刺激するな」「台湾に関わるな」と繰り返す勢力がいる。石破政権でもこの姿勢が堂々と語られた。しかし、この論法は現実に耐えない。
中国は、日本が沈黙しようが反論しようが、自らの利益のために圧力を強める国家である。尖閣で日本が弱腰を見せても、中国公船の進入は減らなかった。台湾が融和を示しても、中国の軍事圧力はむしろ強まった。香港では抵抗が弱まった瞬間、一気に国家安全維持法が適用された。
譲歩して得をした例は、ほとんど存在しない。
だからこそ、高市首相の台湾発言に中国が過剰反応したこと自体が、日本の方向が正しい証左でもある。日本が安全保障の現実に向き合い始めたことが、中国には最大の脅威だからだ。
台湾が崩れれば、次は南西諸島であり、その先には本土がある。我が国は台湾と地政学的に運命共同体であり、この事実から逃れることはできない。
いま問われているのは、外交の巧拙ではない。
我が国が「国家の矜持」を取り戻せるかどうかだ。
中国の暴言に沈黙し、波風を立てない道を選ぶのか。
それとも、霊性の文化にもとづき、守るべきものを守るという当たり前の覚悟を示すのか。
第一列島線を日本が主体的に守るとき、中国は初めて日本を恐れる。
そのとき初めて、真の抑止が成立する。
歴史はいま、日本に覚悟を問うている。
未来を守るために、退く理由はどこにもない。
【関連記事】
中国外交官「汚い首を斬る」暴言──日本が示すべき“国家の矜持” 2025年11月11日
高市首相への暴言事件を起点に、中国の戦狼外交の本質と日本外交のあるべき姿を論じる。脅しに屈しない国家の姿勢、霊性文化の観点からの“秩序を守る覚悟”を解説。
台湾有事は日本有事──高市首相発言が示した現実 2025年11月9日
台湾情勢をめぐる日本の立場を「存立危機事態」の観点から整理。中国の心理戦・威圧行動の実態と、抑止力強化の必要性を現実主義で描く。
小泉防衛相「原潜も選択肢」──日本が問われる防衛の決断 2025年11月1日
日本が原潜保有に踏み込む可能性を背景に、潜水艦戦略の変化と中国海軍の動向を分析。静粛性に優れた日本潜水艦の強みと、広域防衛に必要な能力を提示。
中台サイバー戦の最前線──中国が台湾の部隊を名指し非難 2025年4月28日
中台対立の“見えにくい戦場”であるサイバー攻撃・情報戦の実態を紹介。台湾有事はサイバー圧力から始まる可能性が高いことを示す。
対中国ASWの核心──P-1哨戒機訓練が示す日本の対潜戦能力 2023年1月18日
P-1哨戒機の訓練を通じて、日本のASW(対潜戦)能力の高さを具体的に解説した記事。第一列島線防衛の要としての役割をわかりやすく提示。
0 件のコメント:
コメントを投稿