まとめ
- COP30の本質は「地球を救う会議」ではなく、利権と政治的妥協の場であり、化石燃料廃止の核心は産油国・大国の圧力で消えた。
- 気候モデルには初期条件の不確実性が大きく、未来を一つに決めることは原理的に不可能なのに、一部の科学者や国際機関は“最悪シナリオ”を唯一の未来として恐怖を煽っている。
- この恐怖煽動の構造は、財務省が用いてきた「財政破綻キャンペーン」と同じであり、どちらも国民に負担を押しつけるための“恐怖装置”として機能している。
- 脱炭素は短期的には補助金で華やかに見えるが、中長期には不安定な電源構造・二重設備コスト・電気料金の上昇など、国民に“絶望的な未来負担”をもたらす危険がある。
- 米国はCOP30に距離を置き、トランプは気候政策を「詐欺」と批判しており、我が国は“政治に利用される科学”から距離を置き、大局観で国益を守る姿勢が必要である。
一つは、国際機関と一部の科学者が作り出す「気候危機」の物語。
もう一つは、財務官僚が長年振りまいてきた「財政破綻」の物語である。
どちらもやり口は同じだ。
最悪の未来だけを持ち出し、それを“必ず来る現実”のように見せかける。そして不安に駆られた国民に、増税・負担増・補助金・規制といった重荷を飲ませる。背後には、利権と権限の構造がある。
COP30は、この構造を見せつけた象徴的な舞台である。ここから、その中身を見ていく。
1️⃣COP30と「気候科学」という聖域
| COP30会場の看板 |
ブラジル・ベレンで開かれたCOP30は、「地球を救う」と大げさなスローガンを掲げた国際会議だった。だがふたを開けてみれば、各国は2035年までの適応資金三倍化といった金額目標を並べる一方で、化石燃料の段階的廃止という核心は、産油国や大国の反発で結局うやむやになった。
美しい言葉を重ねながら、最も痛みを伴う部分は避ける。誰がどれだけカネを出し、誰がどれだけ受け取るか──本音はそこにある。これがCOP30の実態だ。
それでも多くの人がこの構造を直視できないのは、「科学」という看板が前面に立っているからだ。政治家や官僚の嘘には疑いの目を向けるようになった日本人も、「科学者の言葉」となると途端に無防備になる。ここが一番危ない。
その象徴が、2021年にノーベル物理学賞を受賞した日系アメリカ人科学者、真鍋淑郎である。彼は大気と気温の関係を初期の段階から理論的に明らかにし、気候モデル研究の基礎を築いた。その功績は疑いようがない。
しかし、真鍋の仕事は「地球温暖化の仕組みの理解」であって、「未来予測を一つに確定したこと」ではない。本来の気候モデルは、大気・海洋・雲・氷床など膨大なパラメータを使い、しかもそれぞれに観測の穴と不確実性がある。初期条件を少し変えれば結果が大きく変わる“気まぐれなシステム”だ。
それにもかかわらず、一部の科学者や国際機関は、このモデルを「唯一の正しい未来予測」であるかのように使い、最悪のシナリオだけを前面に押し出す。ここで科学は、冷静な知の道具ではなく、「恐怖を作るための機械」に変わってしまう。
2️⃣気候危機と財政危機──恐怖で国民を縛る“双子の物語”
| 気候危機を煽る典型例 大干ばつのイメージ |
この「恐怖の機械」は、我が国ではすでに見覚えのあるものだ。財務省が長年やってきた「財政破綻キャンペーン」である。
「国の借金はGDP比200%超で異常だ」「このままでは日本は破綻する」──こうした言葉が繰り返されてきた。しかし実際には、日本国債のほとんどは円建てで発行され、その大部分を日本国内の主体が保有している。政府は自国通貨の発行主体であり、ギリシャのように外貨建て債務で首が回らなくなる構造とはまったく違う。利払い費も長く低水準で推移してきた。
それでも財務省は、「破綻するぞ」と国民を脅し続けてきた。その結果として正当化されてきたのが、増税、歳出削減、国民生活の締め付けである。つまり「破綻の物語」は、国民から取るための道具として機能してきたのだ。
気候危機の物語も、まったく同じ構造を持っている。
気候モデルの不確実性や初期条件の問題にはほとんど触れず、「この最悪シナリオが来る」とだけ言い切る。そして、「だから再エネ賦課金が必要だ」「だから炭素税が必要だ」「だから補助金をもっと出せ」と続く。そこには必ず、誰かの利権と誰かの負担がセットで存在する。
共通点は三つある。
一つ目は、最悪のケースだけを前面に出し、それを“避けがたい運命”のように語ること。
二つ目は、「専門家」「国際機関」といった権威を看板にして、疑いの余地がないかのように装うこと。
三つ目は、最後にツケを払わされるのが、いつも国民であることだ。
財政危機と気候危機──看板は違っても、どちらも「恐怖で国民を縛る物語」である。ここを見抜かなければならない。
3️⃣脱炭素がもたらす“絶望的な未来負担”と、米国の距離感
| ユートピアとして描かれる脱炭素の世界はディストピア? |
太陽光や風力のような変動電源が増えると、天気次第で発電量が激しく上下する。その穴を埋めるために、火力発電など従来の安定電源を完全にはやめられない。結果として、使うかどうか分からないバックアップ設備まで抱え込む「二重投資」に陥る。
蓄電池の技術も、現時点では長期的な大量蓄電には程遠い。大量導入を試みた国では、再エネが増えるほど電力価格が乱高下し、自分で自分の利益を削る「カニバリゼーション効果」が問題になっている。採算が悪化すれば、結局は補助金や賦課金という形で、国民の負担に乗せるしかない。
日本のように、エネルギー安全保障がそのまま国家存亡に直結する国で、こうした不安定な仕組みに過度に頼るのは、危険というより無謀に近い。我が国が本当に守るべきは、「安くて安定した電力」とそれを支える産業基盤であり、「国際会議での拍手」ではないはずだ。
ここで米国の動きは象徴的である。今回、米国はCOP30に高位の政府代表を送らず、国として距離を置いた。トランプ大統領は一貫して、気候政策を「詐欺(hoax)」と呼び、グリーン・エネルギーを巨大な利権ビジネスとして批判している。もちろんトランプの政治手法に賛否はある。しかし、世界最強の大国がCOPの場から一歩引き、「そのゲームには乗らない」と示した事実は重い。
COP30が見せたものは、「人類の連帯」ではない。
それは、「恐怖を使って国民の財布を開かせる国際政治のからくり」だったと言ってよい。
結び──“恐怖に使われる科学”から自由になる
恐怖に支配される国は弱い。
COP30の幻想も、財政破綻の物語も、国民を縛るために仕組まれた“恐怖の装置”にすぎない。
我々が必要としているのは、恐怖ではなく、大局観と理性だ。
二つの嘘の構造を見抜いた今こそ、日本が再び立ち上がる時である。
そして高市政権には、その鎖を断ち切り、この国を力強く前へ進める役割を果たしてほしい。
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