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2020年1月26日日曜日

沖縄・豚コレラ殺処分で自衛官が流した涙―【私の論評】すっかり忘れさられたもう一つの疫病「豚コレラ」!中国は元々カントリーリスクが高いことを再認識せよ(゚д゚)!

沖縄・豚コレラ殺処分で自衛官が流した涙

     飼育豚が豚コレラに感染した沖縄県うるま市の養豚場で、防疫作業をする
     県職員と自衛隊員ら=8日午後0時1分(小型無人機から)

陸上自衛隊の松田みずき陸士長(23)は一児の母だ。沖縄県南風原(はえばる)町の出身。敵のミサイルや戦闘機を撃ち落とす03式中距離地対空誘導弾(中SAM)を運用する同県沖縄市の第15高射特科連隊第3中隊に所属している。息子は2歳になった。

1月8日、松田陸士長に思わぬ任務が舞い込んだ。うるま市と沖縄市の養豚場で豚コレラ(CSF)の感染が確認されたたため、県が第15旅団に災害派遣を要請した。これを受け、同旅団は隷下の第15高射特科連隊を中心に部隊を編成した。任務の内容は、豚の殺処分支援や消毒活動だ。

自衛官数人が豚をベニヤ板で囲い込み、獣医のもとへ誘導する。獣医が電気ショックを与えた後、心臓に注射して安楽死させる。死体を仮置き場に運ぶのは自衛官の役割だ。松田陸士長が最初に担当した豚は、おなかに赤ちゃんがいる母豚だった。

「自分も同じ一人の母親として、すごく心が痛かった」

松田陸士長はこう振り返る。周囲には泣いている同僚もいた。第15高射特科連隊本部管理中隊の野上光3等陸曹(29)も涙を流した一人だ。「豚を育てていらっしゃる方のことを思うと涙が出てしまった。最初はちょっと、やっていけるのかなと思った」と語る。

ベテラン自衛官にとっても緊張を強いられる任務だった。自分の地元が危機にさらされているなら、なおさらだ。第15後方支援連隊整備中隊の安慶名光明1等陸曹(49)は豚コレラが発生したうるま市出身。「初めてのことだったので戸惑いもあった」と打ち明ける。同級生の県庁職員を現場で見つけて気持ちが軽くなったが、若い隊員が養豚場の臭いに慣れることができず、気を配らなければならなかった。

殺処分を受ける豚が暴れることも隊員を悩ませた。豚は大きいもので体重300キロを超える。農林水産省担当者は「映画『もののけ姫』にでかいイノシシが出てくるでしょ。あんな感じです」と解説する。松田陸士長と同じ中隊の金城保享1等陸曹(36)は堂々とした体格の自衛官だが、「押さえ込むときにものすごい力を要した」という。

心のケアが課題

第15旅団は8日から20日までの13日間、豚コレラ対策支援のため、約570人の隊員を派遣した。同県内で殺処分された豚は20日時点の県発表で7農場の計9043頭。各養豚場では約35人の小隊規模で6時間交代のローテンションを組み、24時間態勢で「有事」に対処した。

15旅団にとって、懸案の一つは隊員の心の問題だった。昨年、岐阜県や愛知県で豚コレラ感染を受けて殺処分が行われた際は、精神的苦痛を訴える隊員が相次いだという。今回の派遣では心理ケアを専門とする自衛官3人を投入し、一日の任務が終わるたびにミーティングを開いた。どうしても耐えられない隊員は配置転換するなどして対応した。

現地指揮官を務めた第15高射特科連隊長の内村直樹1等陸佐(47)は「その日の任務が終わった後にどう感じたか、つらかったことがないかということを吐き出せた。一人ひとりの隊員に異常がないか、細やかに確認を取った」と説明する。殺処分の際に泣いた野上3等陸曹は、上官から「それは、おかしいことではないんだよ。みんなそうなんだよ」と声をかけられたという。

対象となった7農場の防疫措置が終了したことを受けて陸自の災害派遣が終了した20日、玉城デニー知事(60)は中村裕亮旅団長(54)に「誠にありがとうございました。本当にありがとうございました」と頭を下げた。県畜産課の担当者も「今回ここまでこられたのは、自衛隊の協力があってのことだと実感している」と語る。

活動に疑問の声も

ただ、こうした活動に自衛隊を使うことには疑問の声もある。元陸自東部方面総監の渡部悦和氏(64)は「南西諸島に対する中国の脅威が高まる中で、沖縄を取り巻く状況は非常に厳しい。訓練すべきときに、豚コレラの災害派遣は本当に適切だったのだろうか」と話す。

自衛隊の災害派遣は「公共性」「緊急性」「非代替性」の3要件が満たされたときに都道府県知事が要請できる。「非代替性」とは、自衛隊が派遣される以外に適切な手段がない状態を指す。「各自治体の体力によって『非代替性』があるかどうかの判断は異なる」というのが、防衛省統合幕僚監部の説明だ。

渡部氏は平成16年に京都府で鳥インフルエンザが発生した際の殺処分支援で現地指揮官を務めた経験から「自治体だけではなく、農協や建設業界には人も機材もある中で、すぐに自衛隊にやらせるのはおかしい」と批判する。

ただ、災害派遣は自衛官にとって目に見えて「県民の役に立った」と実感できる貴重な機会ともいえる。

「任務から帰ってきたら、県庁の皆さんから『ありがとうございました』との言葉をいただいて、グッとくるものがあった。『多少きつくてもしようがないやろ』という現場の意見はあった」

派遣隊員ら(左から安慶名1曹、安田1曹、野上3曹、松田陸士長)=20日午後、県庁

第15旅団隷下第51普通科連隊第3中隊の安田翔一1等陸曹(35)はこう語る。

第15高射特科連隊第2中隊長の斎藤祐太3等陸佐(34)は「国民の安心と安全のためにこのような任務につくことができ、任務を完遂できたことをとても誇りに思う」と胸を張った。

【私の論評】すっかり忘れさられたもう一つの疫病「豚コレラ」!中国は元々カントリーリスクが高いことを再認識せよ(゚д゚)!

最近は、中国の新型肺炎ウイルスの蔓延により、日本では豚コレラのことはすっかり忘れラさられたかの如くですが、これも重大な事件です。そうして、後で詳細を述べますが、この豚コレラも中国が発生源とみられています。

陸自の災害派遣が沖縄で終了しました。これは、沖縄豚コレラの新たな発生は食い止められたことを意味します。

上の記事にもある通り、これまでの過程において、自衛隊員はとてつもなく、大変な目にあったようです。自衛隊員の皆様本当にご苦労さまでした。

それにしても、自衛隊が災害派遣されている最中に、本州方面からいつもいらしている、左翼活動家の方々は一体何をしていたのでしょう。沖縄県民のことを本当に考えていらっしゃるなら、沖縄の豚コレラ防疫活動に、ボランティアの形でも参加すべきではなかったでしょうか。

沖縄県としても、自衛隊に頼る前に、これらの人々をボランティアとして、防疫活動に携わさせることなど考えなかったのでしょうか。沖縄といえば、基地反対派の方々が、元気一杯に市民活動に従事されている様子、YouTubeなど(下の動画など)でみかけますが、あの方々は何をしていらしたのでしょうか。


それにしても、何もかも、自衛隊に依存する行政とは何なのでしょうか。災害も豚コレラも鳥インフルエンザも、本来なら行政の仕事のはずです。多くの職員を低賃金の非正規雇用にして、その場しのぎの行政をやっているから、事が起これば自衛隊頼みとなってしまうのでしょう。

自衛隊も大幅に定員不足が続き、個々の隊員の負荷は重いです。本来の訓練に支障も出ることでしょう。本当に沖縄に限らず、各自治体はもしもの場合にどうするのか普段から考えておいていただきたいものです。普段から、各自治体の正職員が、リーダーとなり、ボランティアなどを動員して、いざというときに適切な行動ができるように、普段から訓練しておくべきものと思います。

それでも、災害などの規模大きすぎて、自分たちの手ではどうにもならなかったときに、自衛隊に頼るべきです。沖縄の場合は無論正規職員の一部は防疫活動に従事していてはいたようでしたが、どうだったのか、この観点からも国会などで論議をすべきです。

豚コレラ、アフリカ豚コレラ対策チームとして農水省のみならず、法務省、財務省、法制局、調査室との打ち合わせが連日続いています。来週も予算委員会で与野党対決の場面ばかりが取り上げられると思いますが、食料の安全保障に関しては国会の審議を横目でにらみながら、地道な作業を続けています。具体的にはいかのようなことが実施されています。
・家畜伝染病予防法改正法第一弾(予防的殺処分の対象にアフリカ豚熱を入れる)
・家畜伝染病予防法改正法第二弾(国家防疫体制の強化も含めた総合的な見直し)
・出入国管理及び難民認定法改正法(水際対策のさらなる強化)
・養豚農家振興法の見直し検討など
それにしても、今回の新型肺炎は、無論のこと、この豚コレラの発生源もまだはっきり特定されてわけではないですが、中国だといわれています。

一昨年9月に26年ぶりに発生し、現在も猛威を振るっている豚コレラの感染経路について、農林水産省の疫学調査チームが昨年中間とりまとめを公表しました。中国やその周辺国からの旅行客が不正に肉を持ち込むなどしてウイルスが日本に入り、ウイルスを含む肉が廃棄されて野生イノシシに感染したのが発端になった可能性があるとしています。

豚コレラより致死率が高く、有効な治療法やワクチンがない、アフリカ豚コレラが中国や北朝鮮などで発生し、新たな脅威にもさらされています。


中間とりまとめでは、発生源の特定はできていないようですが、今後も調査を継続して、発生源をつきとめていただきたいものです。ただし、中国が感染源でない可能性もありますが、今回の豚コレラの感染源が中国だったとしても全くおかしくはありません。

中国とのビジネスには、中国固有のカントリーリスクがあります。日本国内でも、中国のインバウンド消費に糠喜びしていると、今回の新型肺炎ウイルスや、豚コレラで足元をすくわれかねません。

実際中国ではアフリカ豚コレラ感染のまん延で、今年に入って飼育数の3分の1に当たる2億頭を超える豚が処分されるなど、食卓に欠かせない豚肉の価格が急騰しているのですが、これにいま、中国マフィアが目を付けているといいます。アフリカ豚コレラに感染した豚を安く買い取って、他の省に運び、健全な豚の肉と偽って、高く売りつけたりして荒稼ぎしているというのです。

このブログでもかねてから主張しているように、現状の日本におけるインバウンド消費など、GDPの1%にすぎません。消費税増税をした現在、大型の経済対策をすぐに行い、物価目標を未だに達成できない日銀も従来の異次元の金融緩和の姿勢にもどすべきです。

それなしに、単純にインバウンド消費を増やせば、日本国内がニセコ化するだけです。

今回の新型肺炎、豚コレラ騒動で、日本人いかに不確かな中国のインバウンド消費に頼ることが危険なのかを学ぶべきです。そのような危機から日本を守るには、日本国内の景気を良くして、インバウンド消費に頼らなくて良くすることです。

無論「来る者拒まず」という格言にもあるとおり、わざわざ日本に来たいとする外国人を拒む必要はないですが、それにしても、外国人にだけ特化した施設をつくり、日本人を受け付けないようなことまで、無理して行うことは全くありません。日本には、もともとそのようなことをしなくても、国内を豊かにできる潜在能力が十分有り余るほどあることを忘れるべきではありません。

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2019年8月19日月曜日

文在寅の報復は「日本に影響ナシ」どころか「韓国に大打撃」の可能性―【私の論評】断交前に韓国のカントリーリスクを高める価値は十分ある(゚д゚)!

文在寅の報復は「日本に影響ナシ」どころか「韓国に大打撃」の可能性

経済の条件が違いすぎる







文在寅


感情的な対応の代償

日韓関係がかつてないほどに緊迫している。すでに、貿易戦争に突入していると言っていい。

最近の出来事を整理しておけば、日本は8月2日、韓国を輸出管理上の優遇国(グループA)から除外する政令を閣議決定した。

これに対して、韓国政府は日本の輸出管理強化への対抗策として、(1)日本を「ホワイト国」から外すと発表した。その上で韓国では、民間レベルで(2)日本製品をボイコットしたり日本行きの旅行をキャンセルしたりする動きが出ている。

さらに韓国政府は、(3)WTOへの提訴、(4)日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の更新を行わない(8月24日までに通告義務)等が検討されていると報じられている。

はたして、これらの韓国の報復措置は、どこまで意味があるのだろうか。

結論を言えば、ほとんど日本経済には影響がない。それどころか、もし日本が本気で対抗策を実行し始めたら、韓国経済は潰れてしまうだろう。韓国は、感情的な対応をするのではなく、一刻も早く冷静な対応をとった方がいい。

まず、日本の輸出管理の見直し措置は、いわゆる徴用工問題に対する報復ではなく、あくまで安全保障上の措置である。

それなのに韓国政府は、「本音は、いわゆる徴用工問題の報復だろう」と公言し、対抗措置を取っている。外交的に、きわめて稚拙だ。

韓国の人とこの話をしても、同じく「本当は、いわゆる徴用工への対抗措置なんだろ」と言ってくる。外交においては、あくまで建前が重要だ。韓国側が、日本が掲げるような安全保障上の問題として扱っていれば、これほどこじれることはなかった。

つまり、日本の措置をいわゆる徴用工問題への報復と捉えているところが、韓国の外交上のミスだ。日本側の問題提起では、あくまで輸出管理の問題なので、最終需要者などを韓国側が特定し、不正な再輸出はなかったと弁明するなり、もしあっても再発防止策を講じるなどの措置を行えば、日本としても基本的には受け入れざるを得ない。

それなのに、徴用工問題と関係していると韓国が言い張るのは、韓国として問題解決をしたくない、と言っているのに等しい。

ここでは、韓国は感情的にならずに、日本がいう安全保障上の措置という問題提起に冷静に乗ったほうが得策だったはずだが、感情だけで動いたのがそもそもの間違いだ。

感情で動くのは韓国の特徴ともいえるが、文政権としては、自分たちの経済運営があまりに無残なので、国内からの批判を日本に向けたかったのも一因だろう。

文在寅政権の「失敗」はどこか

韓国の失政の代表例は、雇用政策である。文政権は、韓国内では左派政権とされるが、それが雇用政策に失敗したとあっては、面目がないだろう。この点、韓国の文政権は驚くほど日本の民主党と共通点がある。

文政権は、「最低賃金引き上げ」と「労働時間短縮」に取り組んだが、結果として失業率は上がってしまった。

最低賃金引き上げも労働時間短縮も、ともに賃金引き上げを意図した政策だ。しかし、金融緩和を行って雇用を作る前に、先に賃金を上げてしまうと、結果として雇用が失われる。典型的な失敗政策で、まさに日本の民主党政権と同じ間違いだ。

左派政党の建前は、労働者のための政治だ。このため、雇用を重視する。しかし、雇用を作るための「根本原理」が理解できていないと、目に見えやすい賃金にばかり話が行きがちだ。

金融緩和は、一見すると企業側が有利になる。そのため左派政党は、短絡的に「金融緩和は労働者のためにならない」と勘違いする。金利の引き下げは、モノへの設備投資を増やすとともに、ヒトへの投資である雇用を生み出すことを分からないからだ。

この間違いを犯す人は、金融引き締めで金利を上げることが経済成長のためになる、などと言いがちだ。例えば、立憲民主党の枝野幸男代表がその典型だ。

そうした勘違いの末、政策として実行しやすい最低賃金の引き上げを進める、という話になる。民主党政権もこれで失敗した。

政権を取ってはじめの年、2010年は、最低賃金を引き上げるべきでなかった。左派政権であることの気負いと経済政策オンチからか、前年比で2・4%も最低賃金を引き上げてしまったのだ。

前年の失業率が5・1%だったので、その値から導かれる無理のない最低賃金引き上げ率は、せいぜい0・4%程度であるのに、民主党はもったいないことをした(この点は、かつて本コラムでも概要を紹介した)。

韓国が痛手を被る構造的理由

韓国の文政権も、この日本の民主党と同様の失敗をした。2018年1月、最低賃金を16・4%引き上げたのだ。その結果、3・6%だった失業率が1年後には4・4%まで上昇し、今年の5月には4・0%と高止まりしている。

そうした失敗の結果、韓国の失業率は、安倍政権以前には日本よりも低い水準だったが、最近では逆転し、日本のほうが低くなっている。特に若者の失業率では、日韓の逆転は顕著である。


もっとも、韓国と日本とでは経済構造が異なることには留意しておいたほうがいい。

まず、日本のGDPはおよそ5兆ドルであるが、韓国はその3分の1にすぎないおよそ1・6兆ドルだ。外貨準備についても、日本は3兆1000億ドルであるのに対し、韓国は4000億ドル(2018年)と7分の1しかない。

しかも、貿易依存度(輸出入合計額のGDPに対する比率)を見ても、日韓で格差がある。

もともと日本は内需中心の国であり、貿易依存度は27・4%だが、韓国は貿易依存度が高く67・6%だ(2017年)。貿易のうち輸出だけをみても、日本の輸出依存度は14・1%、韓国は37・7%。

さらに日本の輸出先のうち、韓国のシェアは7.1%、韓国の輸出先のうち日本のシェアは4・5%なので、日韓間での輸出不振からくるGDPへの影響度は、韓国の方が日本より1・7倍大きいことになる。また、日本の輸入先のうち韓国のシェアは4・5%、韓国の輸入先のうち日本のシェアは11%だ。

つまり、日本は外需依存が少なく、韓国からの影響も受けにくいが、韓国の状況は日本とは逆なので、どう考えても韓国のほうがより大きな影響を受けることになるだろう。

また、外需依存の強い韓国では外資依存も強いので、大きな経済ショックがあると、外資が引き上げられて国内経済がガタガタになってしまう。これは、1998年の金融危機のときに経験済みである。通貨のウォンが大幅下落して対外債務負担が著しく大きくなり、それが国内経済をも毀損するのだ。

こうした観点からみると、このまま日韓で貿易戦争が進展すれば、韓国のほうが痛みが大きい。

訪日客は確かに減っているが…

韓国経済にはこのようなアキレス腱があるために、まともなマクロ経済政策を打ちにくいのも痛いところだ。

対外的な経済危機のときには、国内マクロ経済政策として、変動相場制を採用している先進国においては金融緩和によって為替安状態を作り、同時に積極財政によって国内での有効需要を創出する。

ここでポイントになるのは、金融緩和である。もし、金融緩和を行わずに積極財政だけを行うと、国内で国債発行するために金利が上がり、それが通貨高を招いて輸出減少へつながり、国内での有効需要創出が相殺されてしまう。これが、有名なマンデル=フレミング効果であり、しばしば先進国で見られる現象である。

しかしいずれにしても、韓国がこのオーソドックスな金融緩和と積極財政を行うと、為替安を誘発し、韓国経済にはかえってマイナスになる可能性があるので、金融緩和を行えない弱みがある。この点も、韓国のマクロ経済構造は日本より不利であるといえる。

日本に対する韓国の「報復措置」は、こうした条件の上に行われている。(1)日本を「ホワイト国」から外すこと、(2)日本製品をボイコットしたり日本行きの旅行をキャンセルする動き、(3)WTOに提訴する、(4)日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の更新を行わないといった施策は、日本に対して影響がないばかりか、むしろ韓国自身への打撃になる。

まず(1)について、日本にとっては痛くも痒くもない。前述した通り日本は内需依存国であり、輸出依存度が高くないからだ。しかも、日本はEUなどから優遇国として扱われているので、韓国からの扱いは、はっきり言ってどうでもいい。

では(2)についてはどうだろうか。2018年の韓国からの日本への訪問者は753万9000人と、中国からの838万人に次いで2位。3位は台湾からの475万7000人だ。

しかし、2018年の訪日外国人旅行消費額でみると、韓国は5881億円であり、中国の1兆5450億円に次ぐ2位だが、3位の台湾の5817億円と大差ない。ちなみに1人あたりの消費額でみると、中国18万4000円、台湾12万2000円なのに対し、韓国は7万8000円とかなり低い。

確かに最近、日本を訪問する韓国人は減少している。昨年6月から今年5月までの毎月の訪問者数を対前年同月比で平均してみると、韓国は4・6%減だ。

ただし、中国が10・2%増、台湾は0・3%減なので、韓国からの訪問者の減少は中国が補ってあまりある。中国からの訪問者の消費単価は韓国の倍以上なので、全国平均であれば、韓国からの訪問者数減少が日本の消費にもたらす影響は、あまり大きくないだろう。

むしろ、韓国からの訪問者数の減少が、韓国の旅行業者やLCC事業者など韓国側の企業に悪影響が出ているというレポートもある。先行き業績の悪化を懸念して、韓国LCC各社の株価も低迷しているのだ。

(3)のWTO提訴については、WTOの上級審は事実上機能していないので、当面の解決策にはならない。
また(4)について、これはそもそも米国が許さないし、韓国の軍事的協力がなくとも、アメリカとさえ情報共有できれば、日本としては何の問題もない。

日本にはまだ手がある

今後はどうなるのか。いずれ韓国はアメリカに泣きついて、政治的な仲介を頼むしかなくなる。

8月2日、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合が開催されているバンコクで、日米韓外相会談があった。ポンペオ米国務長官は日韓での対話を促しただけで、積極的な仲介はしなかった。しかも日米韓外相会談の前日の1日、日米外相会談が行われており、アメリカは日本の事情を理解している。

つまり、表面上アメリカは日韓のいずれにも肩入れしないが、実際には日米両国が駄々っ子の韓国を持て余している、という状態だ。

さらに、韓国が感情的に主張する、「日本の措置はいわゆる徴用工問題への報復だ」とする構図も、アメリカからの情報をきちんと分析すれば、あまり筋が良くない。

アメリカは、いわゆる徴用工問題については「日韓協定により解決済み」という日本の立場を支持していることがすでに明らかになっている。韓国がこの程度の情報さえ入手しないで、感情的に対応しているのは呆れるほかないが、ここでも韓国の勝ち目はなく、詰みの状態だ。

日本は今のところ「安全保障上の措置」をとっているに過ぎないが、本格的に韓国経済へ打撃を与えようと思えば、まだ手が残されている。

今回の輸出規制管理の見直しは「モノ」に対する措置であるが、財務省管轄の外為法を使えば、韓国のカントリーリスクを高めることも、金融庁のさじ加減で可能になる。これは韓国経済の息の根を止めうる措置であり、発動すれば1998年の金融危機の再来になるかもしれない。

韓国は、今回の日本の措置が安全保障上の問題であるという原点に戻って、冷静に対応したほうがいい。
【私の論評】断交前に韓国のカントリーリスクを高める価値は十分ある(゚д゚)!

冒頭の記事で、高橋洋一氏がいうところの、カントリー・リスクとは、その国の政治・経済情勢によって企業などが損をしたり、資金回収ができなくなる危険性を指します。韓国のカントリー・リスクを引き上げることでは、2つの効果があります。

まず、第一は韓国の銀行は現在、ドル送金ができないという報道があります。韓国企業は邦銀を含む外国銀行のソウル支店を利用して送金しています。金融庁が保証債務のリスク区分を引き上げれば、邦銀は手を引かざるを得ず、ほかの外国銀行も手を引くことになります。韓国の外貨調達コストは一気に上がることになります。

このブログにも以前掲載したことですが、韓国紙、中央日報(日本語版)は昨年11月、韓国経済新聞の記事として、米金融当局のコンプライアンス強化の要求に対応できないため、ニューヨークにある韓国系銀行の支店と現地法人が送金中継や貸付などの業務を相次ぎ中断していると伝えています。グローバル金融の中心地ニューヨークで韓国系銀行は連絡事務所に転落しています。

第二は、カントリー・リスクの引き上げは、韓国の貿易も直撃します。

国際貿易でモノを輸入する際、『信用状』というものが使われています。企業の代金決済を保証する一種の手形のようなものです。韓国の銀行の信頼は低く、簡単には受け取ってもらえません。邦銀が再保証する形で流通しています。保証をやめれば輸入が止まります。

これまで、日韓間では「政治と経済は別」という意識が強かったのですが、文政権の韓国は、国家間の約束も守らないうえ、海上自衛隊の哨戒機に危険な火器管制用レーダーを照射し、国会議長が「天皇陛下への謝罪要求」をするなど、常軌を逸しています。

日本財界も、韓国の対応を問題視しており、1969年以降、毎年開かれていた「日韓・韓日経済人会議」も、今年5月にソウルで開催予定でしたが延期となりました。

外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は14日、ソウルの韓国外務省で開かれた金容吉(キム・ヨンギル)東北アジア局長との会談では、対立激化を回避する努力をしていくことで一致したといいますが、ボールは韓国が持っています。日本企業に実害が出る事態になれば、効果的な一打を返すしかないです。

韓国のカントリー・リスクの引き上げは、その効果的な一打になることは間違いありません。

これは、いずれ発動しなければ、韓国の外交的非はこれからも続くでしょう。元来、政権が変わったら前政権が行った政策は覆しても構わない、という発想が韓国政治の特徴です。

徴用工裁判の原告

しかし、国際社会では、前政権の外交上の約束事は次の政権も引き継がなくてはいけないのが鉄則です。日本も民主党政権時の政策の尻拭いを現政権がしています。それが国際社会における当然の姿勢です。

米国やつい最近までの英国の二大政党制においては、たとえ政権が変わったとしても、前政権の政策の6割〜7割を引き継ぐのは当然のことです。残りの4割から3割で新政権らしさを出すというのが常識です。これは、政権が変わるたびに何もかもが変わると、国民生活に重大な支障をきたすからです。

国と国の条約も同じことです。政権が変わるたびに前政権が交わした条約を反故にするというのであれば、そもそも外交は成り立ちません。政権が変わって、前政権が交わした他国と交わした条約を変えたいというのであれば、そこからが交渉です。

相手がいることですから、変えられるかどうかは定かではありません。しかし、はっきりしていることは、交渉の上で、当事者国同士が新たな条約を結ぶまでは、前の条約は生きているということで、両国とも前条約を守るというのが筋です。これは、国際社会の常識です。

日本では小村寿太郎が不平等条約を変更するどれほどの努力と年月をかけのか、知っている人はこれを当然のこととするでしょう。不平等条約ですら、勝手にすぐに破棄ということはできないのです。これが国際社会の常識です。ましてや、日韓は不平等条約を結んでいるわけではないのですから、何をか言わんやです。

小村寿太郎

これを政権交代を理由に、平気で変えられると思っているのが韓国です。日韓合意の破棄は外交的にはありえない、恥ずべき行為の極みです。そのことを韓国は知るべきなのです。

韓国にそうさせるためには、まともな手段を用いていては、できません。このブログでは、断交すべきと主張してきました。たしかに、これくらいのショックはないと韓国は態度を改めない思います。しかし、その前に、韓国のカントリーリスクを高めるという措置は実行してみる価値が十分あると思います。

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