ラベル 入札 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 入札 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年8月26日日曜日

中国通信機器2社を入札から除外 日本政府方針 安全保障で米豪などと足並み―【私の論評】中国は体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなった(゚д゚)!

中国通信機器2社を入札から除外 日本政府方針 安全保障で米豪などと足並み


 政府が、安全保障上の観点から米国やオーストラリアが問題視する中国通信機器大手2社について、情報システム導入時の入札から除外する方針を固めたことが25日、分かった。機密情報漏洩(ろうえい)やサイバー攻撃への対策に関し、各国と足並みをそろえる狙いがある。

 対象となるのは、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)。両社に対しては、米政府が全政府機関での製品使用を禁じているほか、オーストラリア政府が第5世代(5G)移動通信整備事業への参入を禁止するなど、除外する動きが広がっている。

華為技術(ファーウェイ=上)と中興通訊(ZTE)のロゴ
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 背景にあるのは安全保障上の根深い危機感だ。米下院情報特別委員会は2012年の報告書で、両社が中国共産党や人民解放軍と密接につながり、スパイ工作にもかかわると指摘した。

 実際、米国防総省は今年5月、両社の携帯電話などを米軍基地内で販売することを禁止すると発表している。中国当局が携帯電話を盗聴器として使ったり機器を通じて情報を盗み出したりすることを防ぐためだ。

 こうした状況を踏まえ、日本政府は、各国と共同歩調をとって対処すべきだと判断し、具体的な方策の検討に入った。情報セキュリティーを担当する政府関係者は「規制は絶対にやるべきだ。公的調達からの除外の方針は、民間部門の指針にもなる」と強調する。

 政府内では、入札参加資格に情報セキュリティーの厳格な基準を設け、条件を満たさない企業の参加を認めないようにする案などが検討されている。政府の統一基準にあるセキュリティー機能確保規定を適用するなどし、入札時に両社を除外する案も浮上している。

 一方で、10月に予定される安倍晋三首相の訪中に向け、日中関係の改善ムードに悪影響が及ぶことを危ぶむ声もある。除外の方針が、世界貿易機関(WTO)の内外無差別原則に抵触すると解釈される余地も否定できない。

 日本政府関係者は「統一基準の中に『中国』の国名や企業名を盛り込むところまでは踏み込めないだろう」と話した。

【私の論評】中国は体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなった(゚д゚)!



米ホワイトハウスは23日、米国で22日から行っていた事務レベルの米中貿易協議が終了したと明らかにしました。

米側は2日間の協議で「公正で均衡が取れた互恵的な経済関係の実現方法について意見を交換した」と説明しました。中国による米先端企業の技術移転強要といった「構造的な問題」も含まれたといい、米中間の隔たりは依然大きいです。

米国による制裁関税の対象額は第2弾発動で計500億ドル(約5兆5000億円)となり、第3弾も合わせれば中国からのモノの輸入額のほぼ半分となる2500億ドル(約27兆5000億円)となります。

米国が第3弾制裁を発動しても、中国の対抗措置は600億ドル分の米製品への報復関税にとどまるなど弾切れ状態です。さらにトランプ大統領は全輸入品への制裁も辞さない構えをみせています。

攻勢の手を緩めないトランプ大統領に、習近平主席((写真)、AP)はなすすべもないのか
トランプ大統領としては、米国製品の購入を拡大させるなど、雇用増につながる譲歩を中国側から引き出すことができれば、11月の中間選挙に向けた支持層へのアピールになるのは事実です。

一方で、米国が中国を敵視する背景には、ハイテク技術や知的財産、安全保障も絡む覇権争いが存在しています。

米中貿易戦争は、このブログでも掲載してきたように、ビジネスだけの問題ではありません。米国は腰をすえて中国を追い詰め、経済の骨抜きを図ろうとしています。

中国封じ込めの動きも具体化してきました。ブログ冒頭の記事にもあるように、米豪英が問題視する中国通信機器大手2社について、日本も情報システム導入時の入札から除外する方針を固めました。

世界最大の市場を抱える中国ではありますが、見切りを付けようとする企業も出てきました。自動車大手のスズキは、中国での自動車生産について、撤退も視野に現地の合弁相手と協議を進めていることが分かりました。中国企業との合弁解消で合意し、中国事業から撤退するとの報道もあります。


スズキの子会社、マルチ・スズキはインドの乗用車市場で約50%と圧倒的なシェアを握っています。中国を追う巨大市場に成長しつつあるインド市場を軸に海外展開を拡大することになりそうです。

ロイター通信は、米国の医療機器や農業用具などのメーカーが、中国から米国への生産移転比率を高めたり、中国以外の国からの調達に切り替えたり、雇用を米国に再移転するなどの動きを検討していると報じました。

このような動きは企業レベルにとどまるものではありません。マレーシアのマハティール首相は21日、訪問中の北京で記者団に、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関連する鉄道建設などの大型事業を中止すると述べました。

マハティール氏は20日に中国の習近平(シージンピン)国家主席、李克強(リークォーチャン)首相とそれぞれ会談した際にも中止の意思を伝え、中国側も「理解し受け入れた」といいます。

マハティール氏は将来的な事業再開の可能性は否定しなかったものの、「マレーシアの現在の焦点は債務削減にある」と述べました。中止により補償金が発生すれば支払う意思も示しました。

中国外務省の陸慷(ルーカン)報道局長は21日の定例記者会見で、「どんな2国間でも協力を進める上であれこれ問題が出るのは避けられない。友好的な話し合いで適切に解決すべきだ」と交渉を続ける考えを示しました。

中国の習近平国家主席(右側手前)と会談する
マハティール・マレーシア首相(左側手前から2人目)=20日

中国では人件費が上昇し、電気代や土地代が米国を上回っているうえ、外資系企業に共産党組織の設置を義務付けられるという問題もあります。外資系企業が中国を捨てる時期は、今回の米中貿易戦争によって早まることになるでしょう。

追い詰められつつある中国。米中貿易協議での展望が開けないどころか、中国が人民元を割安に保っている為替操作問題が指摘される恐れもあり、かえってヤブ蛇になりかねないです。

米国向け輸出品の関税が引き上げられるうえ、人民元高が進めば、輸出品の競争力はダブルで打撃を受けることなってしまうでしょう。

この貿易戦争は、米中間の覇権争いの次元になっています。この覇権争いは、19世紀末からのドイツの台頭を大英帝国が退けた覇権争いや17世紀に英国がオランダの経済的繁栄に嫉妬して英蘭戦争でオランダを蹴落とした際に見られた典型的な覇権国と挑戦国との間の争いの場合と本質は同じです。

ドイツと大英帝国の覇権争いは、別の複雑な要因も絡みあい第一次世界大戦になってしまいました。

第一次世界大戦の発端は、ドイツと大英帝国の覇権争いだった

ただし、米中間の覇権争いは基本的に地域経済的なもので、軍事的なものに至る可能性は当面は極めて低いです。

英国は、ロシアと仏と手を結ぶことによりドイツの挑戦を退けました。なぜもともと英国の一番のライバルだったフランスと思想的に相いれないロシアが対ドイツ戦で英国に協力したかといえば、仏ロ含め周囲の国はドイツの急激な台頭に警戒心を募らせていたからです。

その意図に関わらず、ある国が急激に経済的、軍事的に台頭してくれば、その「事実」が周辺国の警戒心を招くものです。ジャパン・アズ・ナンバーワンなどと言われていた時の日本(同盟国なのに!)がいかに米国の警戒感を呼んだか思い出してみればわかることです。

中国の経済的、軍事的台頭は、これらの過去の歴史の例の比にならないぐらい急激で大きく、単に、GDPで2030年までに米国を凌駕するかもしれないといわれただけでなく、米国からの知財盗用も踏み台にしてAI、ビッグデータ時代のテクノロジーにおいて米国を凌駕しかねないところまで来ました。

しかも、胡錦涛政権以前までは、上手く強大化しながらも国際社会の警戒心を呼び起こさないように韜光養晦(とうこうようかい)で上手くやってきたのに何と、習近平国家主席は昨年の共産党大会において、中国型統治モデルは(欧米型民主主義より)優れているとした上で、科学技術テクノロジーに精力を傾注しつつ、2049年までに米国を凌駕する世界覇権国になるという意図を宣言してしまいました。

だから、中国とのテクノロジー競争において米国が負けない状況を作り出すまで中国をやり込めなければならないという1点については、トランプ大統領は、米国の支配層に相当のコンセンサスがあります。

だからそう簡単に収束しないのです。そして、過去の歴史でもそうだったように、自分も損をするが相手の方がより大きなダメージを被るならそれで構わないのです。目的は相手を倒すことであり、自分が利益を得ることではないのです。

習近平が共産党大会で強国化宣言をしたのは、もはや、米国が中国の意図に気づいたとしても中国の優勢を変えることはできないぐらい中国は強大になったと過信したからなのでしょうか。

あるいは、国内ばかり見ていてChina2049宣言が国際社会にどういう反応を引き起こすか無関心だったのでしようか、両方でしょうが、おそらく国内ばかりみていたというほうが大きいでしょう。

そもそも、中国は巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによってかなり信頼を失っています。

そうして、その後の展開を見れば、この宣言は中国にとっては得策ではなかったことは明らかです。

現状では、まだ米国の方がはるかに強いです。習近平は明らかに、やりすぎました。米国との間で平穏な状況を続けることができれば、時間は中国に味方したかもしれないのに、自ら、最大のライバルからの攻撃を招き、中国の天下への道を険しく困難にしてしまいました。習近平は、軌道修正を図ってはいるようですが、今更、どの程度修正できるのか、疑問です。

そうして、トランプ大統領はブログ冒頭の記事にもあるように、米英豪で協調して、中国に対抗しようとしています。

そうして、この動きはさらに大きなものになりそうです。以前このブログでは、最近トランプ大統領はロシアのプーチン大統領と首脳会談を開催したりして、ロシアと接近し、いずれは、日米英露と他の国々が協調して中国に対抗しようという動きを見せています。

これに関しては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプ氏、ハイテク分野から中国を締め出し…国防権限法で中国製品の政府機関での使用禁止 島田教授「日本でも対応が必要」―【私の論評】世界は日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあり(゚д゚)!
国防権限法に署名したトランプ大統領
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
今年の7月を皮切りに、国際関係において明らかに構造的変化が起こりました。7月6日米国は支那(中国のこと、以下同じ)に対して貿易戦争を発動しました。これにより、本格的な米中対立の時代が幕開けしました。 
ブログ冒頭の記事の国防権限法関連による支那への対応もその一環です。 
日本の政財界人のほとんどはこのことをほとんど理解していないようですが、米トランプ政権は、世界の経済ルールを公然と破ってきた支那を徹底的に叩く腹です。
今後は、支那に対して味方をするような経済活動は、米国から反米行動とみなされることになります。 
そうして、7月に起きたもう一つの大きな出来事は、米露協調時代が始まったことです。7月16日にはフィランドの首都ヘルシンキで米露首脳会談が開催され、その路線が確定しました。
フィランドの首都ヘルシンキで米露首脳会談で握手するトランプとプーチン

トランプ氏もプーチン氏も、公式にそのような発言はしていませんが、ロシアは米国に協調して世界秩序を再構築する方向に大きく舵をきったものとみられます。

7月には、この大きな2つの出来事が起こったのです。この2つの出来事が、今後の世界情勢を大きく方向づけることになるのです。
・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・
いずれにせよ、今後日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあるとみるべきです。日米の経済力、米露の軍事力、それに加えて英国など有力な他国の協力があれば、支那を叩きのめすことは十分可能です。

こうした動きは、安倍総理が全方位外交で、その動きをトランプ大統領に先んじてみせていました。安倍総理は、その意図をトランプ大統領に伝えたでしょうし、政治家としての外交権の乏しいトランプ大統領も、これをかなり参考にしたと思います。

ブログ冒頭の、米英豪の動き、さらには米露の動きなどもあわせて、いずれ世界は多くの国々が中国の覇権に協調して対抗する時代に入るでしょう。

世界の先進国のほとんどは、中国の「内向き」思考、漢民族の「戦略の知恵」を「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することにも耐えられなくなっています。

現在の中国は、体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなりました。

【関連記事】

トランプ氏、ハイテク分野から中国を締め出し…国防権限法で中国製品の政府機関での使用禁止 島田教授「日本でも対応が必要」―【私の論評】世界は日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあり(゚д゚)!

【米中貿易摩擦】手詰まり中国 時間稼ぎ トップ会談で「休戦」狙う―【私の論評】中国のミンスキー・モーメントが世界のナショナリズム回帰への先鞭をつける(゚д゚)!

【湯浅博の世界読解】「自滅する中国」という予言と漢民族独特の思い込み―【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!


2014年10月25日土曜日

国債入札、初のマイナス金利…買い注文殺到で―【私の論評】あれ?再増税しないと国債が暴落するではなかったのですか?国債のマイナス金利とは政府の借金ですか!そんな虚妄等をいう連中に再増税など推進されてはたまったものではない(゚д゚)!

国債入札、初のマイナス金利…買い注文殺到で

日本国債の見本

 財務省が23日に行った短期国債の入札で、金融機関などからの買いが殺到し、本来はプラスであるはずの平均利回りが年率換算でマイナス0・0037%となった。

 国債入札でマイナス金利になるのは初めてだ。

 国債は国が借金をする際に発行する証文だ。普通、お金を貸す人が利子を受け取るものだが、国にお金を貸す金融機関がさらに国に利子も払うという異例の事態になった。

 この日行われた入札は、満期までの償還期間が3か月の短期国債「国庫短期証券」で、金融機関などの希望額は52兆1052億円まで膨らんだ。財務省は5兆2576億8000万円の発行を決めた。

 短期国債は償還期間が1年までの国債で、国が一時的な資金不足を補うため、金融機関などに向けて発行する。通常は、金融機関の国債の購入額(金融機関が国に貸す額)よりも、満期時に国が金融機関に返済する額の方が大きいため、金融機関は満期時に差額分のもうけを得られる。

 しかし、今回は国債の買い注文が殺到して競い合った結果、金融機関が国に貸す額がつり上がり、返済される額より大きくなった。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!


【私の論評】あれ?再増税しないと国債が暴落するではなかったのですか?国債のマイナス金利とは政府の借金ですか!そんな虚妄等をいう連中に再増税など推進されてはたまったものではない(゚д゚)!

あれっ(゚д゚)!確か、麻生財務大臣は、消費税の再増税をしないと、国債が暴落するとおっしゃってはいませんでしたか? それに、そういう論法で増税を是とする、識者の方々も大勢いらっしゃいませんでしたか?

麻生財務大臣は、9月に以下のような発言をしています。
消費増税先送り、国債売り浴びせられると対応困難=麻生財務相
予定通りに再増税すると9月12日のアジア欧州会議でも発言した麻生財務相
 [東京 29日 ロイター] - 麻生太郎財務相は29日夜のNHKの番組で、2015年10月に予定される消費税率10%への引き上げについて、財務省としては、予定通り引き上げたいとの意向を示した。 
 一方で、再増税が見送られ、国債が売り浴びせられると対応は困難とも語り、先送りした場合の経済の混乱に警戒感を示した。 
 消費税率は予定通り引き上げたいとの方向かとの質問に、麻生財務相は「私どもとしては、そう思っている」と語った。 
 さらに財務相は「(予定通り)しないと、話が違うと国際社会から言われかねない」とし、「国際社会から話が違うと言われた時、日本国債が売り浴びせられると、その対応は難しい。黒田日銀総裁も言っていたが、私たちが最も恐れるところだ」と市場の反応に警戒感を示した。
それにしても、この発言もともとなにやら眉唾です。そもそも、日本国債のほとんどは、日本の機関投資家が購入しているもので、外国の機関投資家や、外国の個人の投資家が購入している例は少ないし、それにすべて円建てです。

以下に、日本の国債の保有者内訳をグラフ化2014年)(最新)したものを掲載します。

日本国政府)「これだけの金額を預かりました」として発行する借用証書が「国債」です。政府の財政、そして国そのものの信頼性に関わる重要な有価証券であることから、その発行総額は多くの経済面での分析に使われ、また格付けもなされ、為替や株式市場にまで影響を及ぼし得ます。

一方、国債は他の債券同様に、借り手にとっては債務ですが、貸し手においては債権であり資産に他なりません。貸し手と借り手、資産を検証する際の領域区分により、国債が持つ意味は大きな変化を示すことになります。今回は日本銀行(日銀)の公開データを基に、日本国政府が発行する国債の保有者区分をグラフ化し、現状を把握していくことにします。

日本国国債保有者別内訳(2014年Q2暫定・合計852.4兆円)

ここで、勘違いしてはならないのは、国と政府の区分です。国=政府ではありません。上のグラフでみると、おそらく社会保障基金というのが、国が持つ国債ということになります。社会保保障基金とは、社会全体あるいは大部分を対象として社会保障給付を行うことを目的としていること、加入が法律により義務付けられていること、資金が積立方式以外の方法で運営されていること、の条件を満たす組織を意味します。

中央政府及び地方政府とともに一般政府を構成しており、国の社会保険特別会計(厚生保険、国民年金、労働保険、船員保険)、共済組合(国家及び地方公務員共済組合等)、及び健康保険組合などがそれに該当します。これは、このような組合などの組織が国債を購入して、年金として被保険者らか集めた保険金を国債購入にあてて、運用しているということです。

それにしても、国債全体からみれば、わずかのものです。政府が発行した国債をこのような一派政府が購入している部分もありますが、ここれは全体から見れば7.9%に過ぎません。

さらに、注目していただきたいのは、海外の保有者は、4.1%に過ぎないということです。

これを、くだけた例えで表現すれば「日本家の家計には852万円の借金(負債)があります。しかしお隣さんから借りているのは35万円だけです(852.4×4.1%)。後は同居しているおじいちゃんや、自宅から職場に通っている息子たちから借りています」ということになります。

そして「日本家全体の」借金(負債)は、おじいちゃんや息子たちの立場から見れば「それぞれの債権(資産)」に他ならないわけです。

これは個人事業主なら、社長本人の資産を会社に貸し付けているようなもの。つまり日本政府が発行した国債のうち95.9%は、国内の民間・地方自治体などの資産ということでもあります。しかも、4.1%の外国人購入者の国債はすべて日本円建です。一方、「投信・証券など」の一部は海外のものも購入しているはずなので、実際には多少は海外の比率が高くなるかもしれませんが、それも全体からすれば、3.9%の一部ということで、これはもう、ほとんど誤差の範囲内といっても良いくらいものです。

国債の発行額だけを比較して、「国の借金は云々、国民一人当たり云々」「日本の財政はアルゼンチンやアイスランドのようにデフォルト直前だ」と危機感を必要以上にあおるのは、まったく筋違いといわざるをえません。特に国民一人当たりに換算すると、赤ん坊も含めて852万円もの借金があるという表現は全くの間違いです。

これを正しく言えば、国民一人当たりに換算すると、生まれた赤ん坊を含めて、国民一人に換算して、852万円もお金を貸し付けているとても豊な国であると言わなければなりません。何しろ、日本国民は、生まれ落ちた途端から、政府に対して一人当たりで、825万円ものお金を貸し付けているということで、日本の赤ちゃんはまさに、銀のスプーンを加えて生まれてきていると言っても過言ではありません。

欧米では大金持ちの言えに生まれた子供のことを銀のスプーンを
くわえて生まれてきた子供という。日本の赤ん坊は、生まれながらに
して、800万円以上のお金を政府に貸している計算になる。

ただし、多くの皆さんにはそのような感覚はないかもしれません。何しろ、多くの国民は、直接個人投資家として、国債を購入して運用しているわけではありません。しかし、多くの人は、金融機関にお金を預けたり、年金・保険などを支払っていますが、これらを取り扱う機関が、それを国債購入にあてているということで、間接的に購入しているだけで、自分のお金と国債との関係を実感できないわけです。

それに、特にデフレという異常現象の皺寄せが、多くの若者などに及んでいるため、豊さを実感できないばかりか、デフレの最中に、増税するという愚かなことをしてしまったため、ますます、その傾向が強まって、消費がガタ落ちになっているということも事実です。

無論、国家財政面だけ見れば、それだけの負債があり利子が発生し、財務を圧迫していることには違いありません。また、国内消費にも現状のデフレのままでは、限界があり、さらに発行額を積み増した場合、国内消費比率が減少していく可能性もあります。要は「危機意識を持つ必要はあるが、必要以上の動揺とそれに伴う誤判断は無意味どころか弊害でしかない」ということです。

それに、なぜこのように政府が、国民から借金をしなければならなくなったかといえば、その第一の原因はデフレです。深刻なデフレであるがゆえに、政府が多額の借金をしなければならなくなっているのです。

平たく言えば、そうしなけば、日本国の経済がまわっていかない状況になっているということです。日本では、デフレを解消すれば、国内消費が拡大して、政府がこれほどまでに借金をしなくても良い状況になります。

とはいいつつ、社会保障費など際限なく拡大していては、限界もあることも事実です。バランスをとりながら、財政を運用していく必要があるのも事実です。しかし、だからといって、財政破綻というのは単なる妄想にすぎません。

的確なバランス感覚に基づいた、財政運営が必要であることはいうまでもありません。いずれにせよ、日本国国債の利回りが(政府の負債が増加しても)なぜ低いままで推移しているのか、銀行がなぜ日本国国債を買っているのかあたりと合わせて、考える必要があります。そうして、それは結論から言えば、現在の日本はデフレという特殊な状況下にあることと、日本政府の信用は今でもかなり高いということです。これは、データからみれぱはっきりとわかります。

ちなみに過去データ分と合わせた経年グラフは次の通りです。

日本国国債保有者別内訳
現時点で時系列的に捕捉しているのは5四半期分のみですが、確実に「その他金融機関」のシェアが増加しています。この中身は、ほとんどが中央銀行、つまり日本銀行によるものです。昨年4月4日の金融政策決定会合で決定された量的・質的金融緩和政策(異次元緩和)で、国債購入を積極的に行った結果、シェアが増加しているということです。

また海外部門のシェアについては、「国債・財政投融資債」以外に「国庫短期証券」(償還期間が1年未満の短期債権)も含めて計算し直すと、合計額は1013.1兆円、海外比率は8.5%となります。

定義、解釈は人それぞれで、「国庫短期証券」を含めるか否かは判断が分かれるところだが(「事業債」「投資信託受益証券」すら含めるべきだとする意見もある)、念のためこちらについても簡易的ながら、海外投資家のシェア推移を確認しておきます。

日本国国債保有比率(「海外」部門、国債・財政投融資債以外に国庫短期証券も含めた場合)(金額:兆円)
こうみると、海外比率8%台になりますが、これを根拠に増税しないと、国債が売り浴びせられると、強弁するにしてもかなり無理があります。

なぜかといえば、日本の国債はすべて円建てだからです。円建てでも外国勢が購入するのは、それだけ日本政府に信用があるということです。

日本政府に信用がなければ、円建では買ってもらえません。この場合、多くはドル建てになるのが普通です。しかし、日本政府はすべて円建てで販売しています。

日本政府の信用がなければ、最初からドル建ての日本国債も発行するはずですが、そのようなものは発行されていません。

日本の財務省や財務大臣が何を言おうが、別に日本政府としては、海外から日本国債を購入してもらわなくても、何とでもできます。

そうして、それは、国債入札、初のマイナス金利という事態によって十分に証明されたものと思います。

なお、上のグラフと、解説の一部は、Garbage NEWS.comというサイトから、引用したものですが、グラフはそのままコピペしましたが、解説はかなり甘い部分があったと思いましたので、私がかなり付け加えました。

なお、国債暴落の妄想については、田村秀男氏も指摘しています。その記事のURLを以下に掲載します。
虚妄にすぎない日本国債暴落論
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事に掲載されていたグラフと一部のみ以下にコピペさせいただきます。

国債利回りは現象し続けている
日銀の異次元緩和で国債相場は上昇し、国債金利は下がり続けている。政府は、国債の利払い負担を減らせるので、金融緩和は大歓迎だ。しかし、日銀緩和だけでは市場に不安が残るので、消費税増税が欠かせないという論法である。
 財務官僚が事実上支配する内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」(7月25日付)で経済成長率1に対する一般会計税収の伸び率(税収弾性値)を1とし、消費税率を継続的に引き上げないと財政赤字膨張に歯止めがかからないというシナリオを首相に提示した。
 ところが、これまでの実績では弾性値は3~4に達することが、内閣府の別の試算で証明されている。弾性値3とすれば、名目経済成長率2~3%を維持することで、財政均衡目標は達成できるのに、内閣府はそのデータを無視した。
 4月、消費税率8%を実施した結果、家計消費は戦後最大のレベルで落ち込んだ。脱デフレの希望は遠のきかねない。虚妄の国債暴落リスク論に、首相は二度とだまされないと信じたい。 
いずれにしても、再増税しないと、国債が暴落するなどということは詭弁にすぎず、それは、理論的にもそうであるし、このブログの冒頭の記事にもある、国債入札、初のマイナス金利という事実が、国債暴落の虚妄を見事に実証していると思います。

増税推進派、今回の国債金利のマイナスをどう説明するのか、それでも何か屁理屈をつけて、再増税すべきと言い張るのでしょうか。

もう日経新聞は、屁理屈をこねはじめています。日経のこのマイナス金利に関する記事を掲載します。
短期国債入札で初のマイナス金利 
この記事、完璧な間違いなので、ひよっとしたら削除されるかもしれないので、以下に日経のサイトの記事そのものを切り取り、そのままコピペさせていただきます。


この日経の記事完璧におかしいです。本来、政府が銀行に利子を払うべきものが、マイナス金利ですから、政府はわずかですが、お金を受け取るわけです。それがなぜ借金となるのか、理解できません。

お金を他者に貸して利子を払うのが普通ですが、マイナス金利ですから、利子を払うのではなく、マイナス利子分をお金を貸した人がもらうということであり、これは断じて借金ではありません。日経はもう経済に関しては、何もわからず、愚鈍新聞に成り果てたのでしょうか。

私は、以前このブログに日経新聞を読んでいると、日本経済がわからなくなるという旨の記事を何回か掲載してきましたが、これもそれを示す格好の事例になったと思います。

ちなみ、この同じニュースを毎日新聞では以下にように掲載しています。
国債:金利マイナス…財務省入札で初

 財務省が23日実施した短期国債の入札で、平均落札利回りが年マイナス0.0037%となり、日本の国債入札で初めてマイナス金利を付けた。政府が借金をする際に利子を支払うのではなく、逆に利益が生じる異常な状態を示す。背景には、異次元緩和を続ける日銀が市場から大量の国債を購入し、国債が品薄になっていることがある。
それにしても、いくら日銀が大量に国債を購入して、品薄になっているからといって、再増税をしなければ、国債が暴落して国際的信任がなくなるなどという話は金利マイナスという状況が発生した今日にわかには信じることはできません。

それにしても、財務相や政治家やマスコミなどもそのうち、マイナス金利で政府がその分を借金などと言い始めるでしょうか。これからも、マイナス金利が度々出るようになれば、そういうことを言い出すかもしれません。

ありそうで、怖いです。何しろ、前科がありますから。国債を国民の資産ではなく、国民の負債すなわち、国民の借金だなどと、真顔で言った財務大臣が過去にいました。

そんな連中に再増税など推進されてはたまったものではありません。

事実を無視して、そのようなことを言い張るというのなら、もうまともでありません。認知症の治療を受けてはいかがでしょうか。おそらく、もう治らないでしょうが・・・・。私は、もうそのレベルに近いと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】




【関連図書】

増税と政局・暗闘50年史 (イースト新書)
倉山満
イースト・プレス
売り上げランキング: 84,967

消費増税の黒いシナリオ デフレ脱却はなぜ挫折するのか (幻冬舎ルネッサンス新書 た-8-1)
田村 秀男
幻冬舎ルネッサンス
売り上げランキング: 200,078

検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む (光文社新書)
倉山 満
光文社 (2012-03-16)
売り上げランキング: 26,300

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...