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2019年9月6日金曜日

「EU離脱」が英国にむしろ好ましいと考える理由―【私の論評】ブレグジット後、安全保障面と自由貿易で日本との関係が深まる英国(゚д゚)!

「EU離脱」が英国にむしろ好ましいと考える理由

一時的な円高や株の大幅安を招く懸念は残る

村上 尚己 : エコノミスト

ジョンソン首相は解散総選挙に持ち込みたいが、簡単ではなさそうだ。市場は今後どう反応するのか

8月22日のコラム「アメリカ株は再度大きく下落するリスクがある」
では、アメリカ株の下振れリスクが依然大きいと述べた。その後、8月23日にダウ工業株30種平均(ダウ平均株価)は2万5500ドル前後まで急落する場面があった。ただ、同29日には米国との関税交渉について中国の姿勢が穏当であることを期待させる報道などをうけて、ダウ平均は約2万6300ドルと、急落前の水準までほぼ戻った。

米中貿易戦争の下振れリスク織りこみはこれから

 アメリカ株市場は、米中貿易戦争に関する思惑で一喜一憂している状況と言える。北京で10月初旬に行われる中国の政治方針を決める会議の前後に、米中貿易戦争が沈静化するとの見方も聞かれる。米中貿易戦争の展開について、筆者は確固たる見通しを持ち合わせていない。だが、両政府が妥協するには至らず貿易戦争は長期化するため、米国が表明する対中関税のほとんどは実現すると想定している。

 問題は、米中による関税引き上げ合戦によって、両国を中心に世界経済がどうなるかである。筆者は、世界貿易の停滞が長引くため、製造業を中心に世界経済の成長率は2020年まで減速すると予想している。これまで利益拡大が続いてきた、アメリカ企業の利益の頭打ちがより鮮明になると見込まれるが、アメリカの株式市場は企業利益の下振れリスクを十分織り込んでいないとみている。

 そして、目先のリスクイベントとして注目されるのが、イギリスの欧州連合(EU)からの離脱問題である。ボリス・ジョンソン氏は7月下旬に保守党党首選に勝利し、政権を発足させると、10月末が期限となっているEUからの離脱を強硬に進める姿勢を強く打ち出した。それ以降、8月中旬まで外国為替市場でポンド安が進むなど、「合意なきEU離脱リスク」が懸念されている。

 10月末の期限までに合意なきEU離脱が実現する可能性は、現状で約40%と筆者は想定している。イギリス議会では合意なきEU離脱を阻止する政治勢力が強いことから、総選挙が想定されるなど今後の政治情勢が大きく変わりうる。どのような結末になるかは、同国政治の専門家ではない多くの投資家にとっても、見通すことは難しいだろう。

 金融市場は、10月末までに合意なき離脱が起きるかどうかの思惑で揺れ動いており、合意なき離脱となれば円高、株安をもたらすと見る向きが多い。筆者が警戒しているアメリカ株の下落は、合意なき離脱への懸念が高まり、市場心理が悪化することによって引き起こされる可能性がある。

 こうした意味で、目先のイベントとしてイギリスのEU離脱の行方を警戒している。ただ、どのような形であれイギリスがEUから早期に離脱することは、同国経済にとってむしろ望ましいと考える(この点は5月30日コラム
「EUへの民衆の支持が一段と落ちると読む理由」ですでに指摘した)。

 2016年以降の約3年間にわたり、EU離脱問題がどのような結末になるか分からないという不確実性が、同国の企業の設備投資を抑制し、成長率を下押ししてきた。EU離脱の行く末がはっきりすれば、抑制されていたイギリス企業の設備投資が増え始める可能性がある。

 もちろん、合意なき離脱となれば、モノ・ヒトの移動などに際して短期的に混乱が起きる可能性は否定できない。ただ、合意なき離脱となった場合は、英国は物品の87%の品目の輸入関税を無税にする暫定措置を発表、また関税職員を増やす対応を行っている。このため、海外からの輸入品が突如途絶えるリスクは限定的とみられる。

英国は合意なき離脱となっても、危機を回避する

 合意なき離脱によって、イギリスの株安、通貨安など金融市場にショックが起こり、金融システムが揺らぐこともリスクだろう。ただ、英イングランド銀行(中央銀行)は、ショックに備えて金融政策を慎重に運営しているが、合意なき離脱となれば利下げに転じ金融市場に流動性を供給する政策に踏み出すだろう。そして、政治情勢は予想できないが、ジョンソン首相は今後政府歳出を大規模に増やすプランを明示している。これらの政策対応によって、仮に合意なき離脱となっても英国は危機を回避すると予想する。

 つまり、今後想定されるイギリスの合意なき離脱は、2016年半ばのEU離脱の是非を問う国民投票後のように一時的に金融市場が大きく動く可能性はあるが、それが世界の景気動向に及ぼす影響は同様に軽微にとどまるだろう。

 むしろ、合意なき離脱となり経済的苦境に直面するのは、イギリスと経済関係が深いフランスを中心としたEU諸国ではないか。イギリスではEU離脱に向けた準備が進んでいるが、イギリスと貿易取引がさかんなフランスなどでは税関などの準備が十分に進んでいない可能性がある。さらに、ドイツでは2019年になってから景気指標の停滞が顕著で、イギリスのEU離脱が引き起こす混乱が、EU諸国の景気停滞をより深刻にするリスクがあるとみている。

なお、自国の経済安定のために、金融財政政策をフルに使える強みをイギリスが持っていることは、アメリカ同様の強みである。EUからの離脱を控え、イギリスはいずれの政権になっても拡張的な財政政策に転じるとみられる。この結果、現時点で緊縮財政政策を続けている主要国は、ほぼ日本だけであることは一層鮮明になっている。

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【私の論評】ブレグジット後、安全保障面と自由貿易で日本との関係が深まる英国(゚д゚)!

冒頭の記事にもあるように、英国の合意なき欧州連合(EU)離脱が「ますます不可避」のように見受けられ、英経済が来年、軽度のリセッション(景気後退)に陥ることになるのは必定のようです。

10月31日の期限を越えることがあるとしても合意なき離脱に至ることが今や英国の基本シナリオであるとみるべきです。

このシナリオをたどる場合、イングランド銀行(中央銀行)は2020年半ばまでに政策金利を50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げ、政府は財政支出計画を前倒しすることになるでしょう。

中銀はこれまでのところ、金利はいずれの方向にも動き得るとしていますが、何人かの当局者は利下げの可能性がより高いと述べています。当然そうすることでしょう。

10月31日以降に先延ばしすることなくEU離脱を実現させることが、英国保守党の分裂を防ぎ将来の選挙で勝利するための政治的至上命令だと首相は考えているようです。

経済的リスクは軽く扱われ、緊急対策としての財政支出と金融緩和の効果が強調されています。そうして、これにより、英国経済は比較的短期間で復活する可能性が大きいです。



ところでブレグジット(イギリスのEU離脱)後の英国は、世界の舞台でどのような役割を果たすべきと考えているのでしょうか。テリーザ・メイ元首相ら英政権の閣僚たちは、かなり前からこの問題を検討していました。そして運命の国民投票の数カ月後に、メイとボリス・ジョンソン外相(当時)が示したのが「グローバル・ブリテン」構想でした。

メイは2016年10月の保守党大会で、グローバル・ブリテンとは、英国が「自信と自由に満ちた国」として「ヨーロッパ大陸にとどまらず、幅広い世界で経済的・外交的機会を求める」構想だと説明しました。

なぜなら国民投票の結果は、イギリスが「内向きになる」ことではなく、「世界で野心的かつ楽観的な新しい役割を担う」ことへの決意表明だったから、というのです。

この「世界における新しい役割」には、英海軍がインド太平洋地域で再び活発な役割を果たすことが含まれます。例えば、キム・ダロック駐米大使は2018年、「航行の自由を守り、海路と航空路の開放を維持する」べく、空母クイーン・エリザベスがインド太平洋地域に派遣されるだろうと述べました。

同年にオーストラリアを訪問したジョンソンは、英海軍が2020年代にクイーン・エリザベスとプリンス・オブ・ウェールズの空母2隻を南シナ海に派遣すると語りました。英海軍の制服組トップである第一海軍卿も、2020年代にクイーン・エリザベスを南シナ海に派遣すると語っています。


英国の外交政策はあまりにも長い間、ヨーロッパという狭い地域に縛られていたというのが、英政府高官らの考えです。彼らにとってブレグジットは、イギリスが単独で世界的な役割を果たすチャンスなのです。2018年末のサンデー・テレグラフ紙のインタビューで、当時のギャビン・ウィリアムソン国防相は以下のように語りました。

「(ブレグジットによって)イギリスは再び真のグローバルプレーヤーになる。私はそこで、軍が極めて重要な役割を果たすと考えている。......わが国のリソースをどのように前方配備して抑止力を構築するか、そしてイギリスのプレゼンスを確立するかを、私は大いに検討している。このような機会は極東だけでなく、カリブ海地域にも存在すると考えている」

さらにウィリアムソンは、「今後2年以内に」、極東に軍事基地を設置する計画を明らかにしていました。現時点の候補地はブルネイとシンガポールの2カ所です(イギリスは現在、シンガポールのセンバワン海軍基地に小規模な後方支援拠点を持つ)。

実際、イギリスは近年、東南アジアにおける防衛活動を拡大しています。その根拠となっているのは、1971年に英連邦5カ国(イギリス、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド)が締結した防衛協定(5カ国防衛協定)です。

ウィリアムソンは、2018年6月に開かれたアジア太平洋地域の安全保障会議「シンガポール・ダイアローグ」で、英国は海軍艇を派遣することにより、この地域の海における「ルールに基づくシステム」を強力に支持していくと語りました。「国家はルールに沿って行動する必要があること、そうしない場合にはそれなりの結果が伴うことを明確にする必要がある」

さらに英外務省のマーク・フィールド閣外相(当時:アジア太平洋担当)は昨年8月、訪問先のインドネシアのジャカルタで講演し、英国はアジアで恒久的な安全保障プレゼンスを維持する決意だとして南シナ海における航行の自由と国際法の尊重を各国に促しました。

これまで英海軍の艦艇が極東に派遣されたのは2013年が最後でした。同年、駆逐艦デアリングがオーストラリア海軍の創設100周年記念行事に派遣され、5カ国防衛協定の合同軍事演習にも参加しました。この年は超大型台風ハイエンの被害を受けたフィリピンの人道支援活動のため、軽空母イラストリアスも派遣されました。だが、その後の派遣はぱったり途絶えていました。

昨年晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」
状況が変わったのは2018年4月でした。英国は朝鮮戦争以来となる海軍艇3隻を極東に派遣しました。強襲揚陸艦アルビオンは、オーストラリアとニュージーランドに寄港し、5カ国防衛協定の合同軍事演習に参加しました。対潜フリゲート艦サザランドとフリゲート艦アーガイルは、日米韓合同軍事演習に参加するとともに、北朝鮮に対する経済制裁の履行監視活動に参加しました。

南シナ海では、英海軍とフランス海軍の合同チームが、航行の自由を確保するための哨戒活動を実施。アルビオンも8月に日本に寄港後、西沙群島(パラセル)近海で哨戒活動を行い、ベトナムのホーチミンに親善目的で寄港しています。米海軍との合同演習も、この地域における英海軍のプレゼンス強化をアピールするものになりました。

英国がインド太平洋地域に再び強力に関与するようになった背景には、3つの大きな要因があります。

第1に、英国はブレグジット後、EU加盟国としてではなく、独立した存在として世界における役割を規定しなければならないということがあります。その点、英国の貿易額の12%が通過する南シナ海、さらにはインド太平洋地域の安定と、ルールに基づく国際秩序の形成をサポートすることは、外交的にも経済的にも理にかなっています。

従って北朝鮮に対する制裁と、南シナ海における航行の自由を維持するために、5カ国防衛協定の加盟国やアメリカなどの同盟国、さらには日本などの安全保障パートナー諸国との協力が今後も重要になります。

第2に、インド太平洋地域は世界経済の成長のエンジンであり、英国はその成長に便乗する必要があります。このことがオーストラリア、日本、韓国、シンガポール、ベトナムとの自由貿易協定交渉、さらには「包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP)」の交渉につながります。

第3に、インド太平洋地域の防衛に関与するには、イギリスの海軍と先端軍事技術、さらには安全保障パートナーとしての「頼りがい」を世界にアピールする必要があります。そこで英政府が積極的に進めているのが武器取引です。

ストックホルム国際平和研究所が発表した2013〜2017年の世界武器輸出国ランキングで、イギリスは6位に入りました。2017年だけでもイギリスの武器輸出額は1130億ドルに上ります。輸出先のトップ3はサウジアラビア、オマーン、インドネシアです。2018年には対潜フリゲート艦9隻の調達契約260億ドル相当をオーストラリアと締結しました。

かつて大英帝国の基礎となった植民地政策はあり得ないですが、ブレグジット後のイギリスの世界戦略にも、歴史ある海軍の力が欠かせないようです。そうして、ブレグジット後の英国は、安全保障面でも、自由貿易でも日本との関係が深まりそうです。

【関連記事】

2018年8月26日日曜日

中国通信機器2社を入札から除外 日本政府方針 安全保障で米豪などと足並み―【私の論評】中国は体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなった(゚д゚)!

中国通信機器2社を入札から除外 日本政府方針 安全保障で米豪などと足並み


 政府が、安全保障上の観点から米国やオーストラリアが問題視する中国通信機器大手2社について、情報システム導入時の入札から除外する方針を固めたことが25日、分かった。機密情報漏洩(ろうえい)やサイバー攻撃への対策に関し、各国と足並みをそろえる狙いがある。

 対象となるのは、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)。両社に対しては、米政府が全政府機関での製品使用を禁じているほか、オーストラリア政府が第5世代(5G)移動通信整備事業への参入を禁止するなど、除外する動きが広がっている。

華為技術(ファーウェイ=上)と中興通訊(ZTE)のロゴ
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 背景にあるのは安全保障上の根深い危機感だ。米下院情報特別委員会は2012年の報告書で、両社が中国共産党や人民解放軍と密接につながり、スパイ工作にもかかわると指摘した。

 実際、米国防総省は今年5月、両社の携帯電話などを米軍基地内で販売することを禁止すると発表している。中国当局が携帯電話を盗聴器として使ったり機器を通じて情報を盗み出したりすることを防ぐためだ。

 こうした状況を踏まえ、日本政府は、各国と共同歩調をとって対処すべきだと判断し、具体的な方策の検討に入った。情報セキュリティーを担当する政府関係者は「規制は絶対にやるべきだ。公的調達からの除外の方針は、民間部門の指針にもなる」と強調する。

 政府内では、入札参加資格に情報セキュリティーの厳格な基準を設け、条件を満たさない企業の参加を認めないようにする案などが検討されている。政府の統一基準にあるセキュリティー機能確保規定を適用するなどし、入札時に両社を除外する案も浮上している。

 一方で、10月に予定される安倍晋三首相の訪中に向け、日中関係の改善ムードに悪影響が及ぶことを危ぶむ声もある。除外の方針が、世界貿易機関(WTO)の内外無差別原則に抵触すると解釈される余地も否定できない。

 日本政府関係者は「統一基準の中に『中国』の国名や企業名を盛り込むところまでは踏み込めないだろう」と話した。

【私の論評】中国は体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなった(゚д゚)!



米ホワイトハウスは23日、米国で22日から行っていた事務レベルの米中貿易協議が終了したと明らかにしました。

米側は2日間の協議で「公正で均衡が取れた互恵的な経済関係の実現方法について意見を交換した」と説明しました。中国による米先端企業の技術移転強要といった「構造的な問題」も含まれたといい、米中間の隔たりは依然大きいです。

米国による制裁関税の対象額は第2弾発動で計500億ドル(約5兆5000億円)となり、第3弾も合わせれば中国からのモノの輸入額のほぼ半分となる2500億ドル(約27兆5000億円)となります。

米国が第3弾制裁を発動しても、中国の対抗措置は600億ドル分の米製品への報復関税にとどまるなど弾切れ状態です。さらにトランプ大統領は全輸入品への制裁も辞さない構えをみせています。

攻勢の手を緩めないトランプ大統領に、習近平主席((写真)、AP)はなすすべもないのか
トランプ大統領としては、米国製品の購入を拡大させるなど、雇用増につながる譲歩を中国側から引き出すことができれば、11月の中間選挙に向けた支持層へのアピールになるのは事実です。

一方で、米国が中国を敵視する背景には、ハイテク技術や知的財産、安全保障も絡む覇権争いが存在しています。

米中貿易戦争は、このブログでも掲載してきたように、ビジネスだけの問題ではありません。米国は腰をすえて中国を追い詰め、経済の骨抜きを図ろうとしています。

中国封じ込めの動きも具体化してきました。ブログ冒頭の記事にもあるように、米豪英が問題視する中国通信機器大手2社について、日本も情報システム導入時の入札から除外する方針を固めました。

世界最大の市場を抱える中国ではありますが、見切りを付けようとする企業も出てきました。自動車大手のスズキは、中国での自動車生産について、撤退も視野に現地の合弁相手と協議を進めていることが分かりました。中国企業との合弁解消で合意し、中国事業から撤退するとの報道もあります。


スズキの子会社、マルチ・スズキはインドの乗用車市場で約50%と圧倒的なシェアを握っています。中国を追う巨大市場に成長しつつあるインド市場を軸に海外展開を拡大することになりそうです。

ロイター通信は、米国の医療機器や農業用具などのメーカーが、中国から米国への生産移転比率を高めたり、中国以外の国からの調達に切り替えたり、雇用を米国に再移転するなどの動きを検討していると報じました。

このような動きは企業レベルにとどまるものではありません。マレーシアのマハティール首相は21日、訪問中の北京で記者団に、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関連する鉄道建設などの大型事業を中止すると述べました。

マハティール氏は20日に中国の習近平(シージンピン)国家主席、李克強(リークォーチャン)首相とそれぞれ会談した際にも中止の意思を伝え、中国側も「理解し受け入れた」といいます。

マハティール氏は将来的な事業再開の可能性は否定しなかったものの、「マレーシアの現在の焦点は債務削減にある」と述べました。中止により補償金が発生すれば支払う意思も示しました。

中国外務省の陸慷(ルーカン)報道局長は21日の定例記者会見で、「どんな2国間でも協力を進める上であれこれ問題が出るのは避けられない。友好的な話し合いで適切に解決すべきだ」と交渉を続ける考えを示しました。

中国の習近平国家主席(右側手前)と会談する
マハティール・マレーシア首相(左側手前から2人目)=20日

中国では人件費が上昇し、電気代や土地代が米国を上回っているうえ、外資系企業に共産党組織の設置を義務付けられるという問題もあります。外資系企業が中国を捨てる時期は、今回の米中貿易戦争によって早まることになるでしょう。

追い詰められつつある中国。米中貿易協議での展望が開けないどころか、中国が人民元を割安に保っている為替操作問題が指摘される恐れもあり、かえってヤブ蛇になりかねないです。

米国向け輸出品の関税が引き上げられるうえ、人民元高が進めば、輸出品の競争力はダブルで打撃を受けることなってしまうでしょう。

この貿易戦争は、米中間の覇権争いの次元になっています。この覇権争いは、19世紀末からのドイツの台頭を大英帝国が退けた覇権争いや17世紀に英国がオランダの経済的繁栄に嫉妬して英蘭戦争でオランダを蹴落とした際に見られた典型的な覇権国と挑戦国との間の争いの場合と本質は同じです。

ドイツと大英帝国の覇権争いは、別の複雑な要因も絡みあい第一次世界大戦になってしまいました。

第一次世界大戦の発端は、ドイツと大英帝国の覇権争いだった

ただし、米中間の覇権争いは基本的に地域経済的なもので、軍事的なものに至る可能性は当面は極めて低いです。

英国は、ロシアと仏と手を結ぶことによりドイツの挑戦を退けました。なぜもともと英国の一番のライバルだったフランスと思想的に相いれないロシアが対ドイツ戦で英国に協力したかといえば、仏ロ含め周囲の国はドイツの急激な台頭に警戒心を募らせていたからです。

その意図に関わらず、ある国が急激に経済的、軍事的に台頭してくれば、その「事実」が周辺国の警戒心を招くものです。ジャパン・アズ・ナンバーワンなどと言われていた時の日本(同盟国なのに!)がいかに米国の警戒感を呼んだか思い出してみればわかることです。

中国の経済的、軍事的台頭は、これらの過去の歴史の例の比にならないぐらい急激で大きく、単に、GDPで2030年までに米国を凌駕するかもしれないといわれただけでなく、米国からの知財盗用も踏み台にしてAI、ビッグデータ時代のテクノロジーにおいて米国を凌駕しかねないところまで来ました。

しかも、胡錦涛政権以前までは、上手く強大化しながらも国際社会の警戒心を呼び起こさないように韜光養晦(とうこうようかい)で上手くやってきたのに何と、習近平国家主席は昨年の共産党大会において、中国型統治モデルは(欧米型民主主義より)優れているとした上で、科学技術テクノロジーに精力を傾注しつつ、2049年までに米国を凌駕する世界覇権国になるという意図を宣言してしまいました。

だから、中国とのテクノロジー競争において米国が負けない状況を作り出すまで中国をやり込めなければならないという1点については、トランプ大統領は、米国の支配層に相当のコンセンサスがあります。

だからそう簡単に収束しないのです。そして、過去の歴史でもそうだったように、自分も損をするが相手の方がより大きなダメージを被るならそれで構わないのです。目的は相手を倒すことであり、自分が利益を得ることではないのです。

習近平が共産党大会で強国化宣言をしたのは、もはや、米国が中国の意図に気づいたとしても中国の優勢を変えることはできないぐらい中国は強大になったと過信したからなのでしょうか。

あるいは、国内ばかり見ていてChina2049宣言が国際社会にどういう反応を引き起こすか無関心だったのでしようか、両方でしょうが、おそらく国内ばかりみていたというほうが大きいでしょう。

そもそも、中国は巨大国家であるがゆえの「内向き」な思考を持っており、しかも古代からの漢民族の「戦略の知恵」を優れたものであると勘違いしており、それを漢民族の「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することによってかなり信頼を失っています。

そうして、その後の展開を見れば、この宣言は中国にとっては得策ではなかったことは明らかです。

現状では、まだ米国の方がはるかに強いです。習近平は明らかに、やりすぎました。米国との間で平穏な状況を続けることができれば、時間は中国に味方したかもしれないのに、自ら、最大のライバルからの攻撃を招き、中国の天下への道を険しく困難にしてしまいました。習近平は、軌道修正を図ってはいるようですが、今更、どの程度修正できるのか、疑問です。

そうして、トランプ大統領はブログ冒頭の記事にもあるように、米英豪で協調して、中国に対抗しようとしています。

そうして、この動きはさらに大きなものになりそうです。以前このブログでは、最近トランプ大統領はロシアのプーチン大統領と首脳会談を開催したりして、ロシアと接近し、いずれは、日米英露と他の国々が協調して中国に対抗しようという動きを見せています。

これに関しては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプ氏、ハイテク分野から中国を締め出し…国防権限法で中国製品の政府機関での使用禁止 島田教授「日本でも対応が必要」―【私の論評】世界は日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあり(゚д゚)!
国防権限法に署名したトランプ大統領
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
今年の7月を皮切りに、国際関係において明らかに構造的変化が起こりました。7月6日米国は支那(中国のこと、以下同じ)に対して貿易戦争を発動しました。これにより、本格的な米中対立の時代が幕開けしました。 
ブログ冒頭の記事の国防権限法関連による支那への対応もその一環です。 
日本の政財界人のほとんどはこのことをほとんど理解していないようですが、米トランプ政権は、世界の経済ルールを公然と破ってきた支那を徹底的に叩く腹です。
今後は、支那に対して味方をするような経済活動は、米国から反米行動とみなされることになります。 
そうして、7月に起きたもう一つの大きな出来事は、米露協調時代が始まったことです。7月16日にはフィランドの首都ヘルシンキで米露首脳会談が開催され、その路線が確定しました。
フィランドの首都ヘルシンキで米露首脳会談で握手するトランプとプーチン

トランプ氏もプーチン氏も、公式にそのような発言はしていませんが、ロシアは米国に協調して世界秩序を再構築する方向に大きく舵をきったものとみられます。

7月には、この大きな2つの出来事が起こったのです。この2つの出来事が、今後の世界情勢を大きく方向づけることになるのです。
・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・
いずれにせよ、今後日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあるとみるべきです。日米の経済力、米露の軍事力、それに加えて英国など有力な他国の協力があれば、支那を叩きのめすことは十分可能です。

こうした動きは、安倍総理が全方位外交で、その動きをトランプ大統領に先んじてみせていました。安倍総理は、その意図をトランプ大統領に伝えたでしょうし、政治家としての外交権の乏しいトランプ大統領も、これをかなり参考にしたと思います。

ブログ冒頭の、米英豪の動き、さらには米露の動きなどもあわせて、いずれ世界は多くの国々が中国の覇権に協調して対抗する時代に入るでしょう。

世界の先進国のほとんどは、中国の「内向き」思考、漢民族の「戦略の知恵」を「同一文化内」ではなく、「他文化」に過剰に使用することにも耐えられなくなっています。

現在の中国は、体制を変えるか、内に篭もるしか生き残る術はなくなりました。

【関連記事】

トランプ氏、ハイテク分野から中国を締め出し…国防権限法で中国製品の政府機関での使用禁止 島田教授「日本でも対応が必要」―【私の論評】世界は日米英露が協調して中国を叩く体制に入りつつあり(゚д゚)!

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2013年6月23日日曜日

中国経済、大混乱! 飛び交う“銀行デフォルト連鎖”の噂―【私の論評】日本銀行が中国麻薬漬け金融政策をやめた途端この有様、日本人や中国社会のためにも、安全保障の観点からもアベノミクスの頓挫は許されないぞ(゚д゚)!

中国経済、大混乱! 飛び交う“銀行デフォルト連鎖”の噂


中国の金融市場が大パニックに陥っている。銀行の連鎖破綻の噂が飛び交い、短期金利が一時、13%にも跳ね上がった後、急落するなど荒れ模様だ。背後には中国経済の火種である「影の銀行(シャドーバンキング)」の問題があり、金融崩壊がいつ起こってもおかしくない。

中国の金融市場で、上海銀行間取引金利の翌日物が17日の約4・8%から急上昇、20日に約13・4%と過去最高に跳ね上がった。

背景にあるのが、中国人民銀行(中央銀行)の金融引き締めだ。銀行以外のルートで資金調達する「影の銀行」から資金が不動産市場などに流れ込んでいるが、元本や利息が回収できない恐れが高まっている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2年前に中国の政府系シンクタンクの研究員は「今年7月または8月に企業や銀行、地方政府が相次ぎ経営破綻に追い込まれる」との見通しを示している。「7月危機」が現実になってしまうのか。

【私の論評】日本銀行が中国麻薬漬け金融政策をやめた途端この有様、日本人や中国社会のためにも、安全保障の観点からもアベノミクスの頓挫は許されないぞ(゚д゚)!



 なにやら、中国の金融界一触即発の兆しがみえてきました。本日は上の記事の他以下のような記事もありました。それから本日は、中国セレブ女性の写真とともに掲載させていただきます。
中国銀行セクターの流動性リスクは上昇=フィッチ
フィッチ・レーティングスは、中国の金融セクターで依然流動性がひっ迫していることで、幾つかの銀行は近く迎える「理財商品」(WMP、Wealth Management Productsと呼ばれる金融商品)の償還の義務を期限通りに果たせなくなる可能性があると指摘した。

われわれの試算では、1兆5000億元超のWMP‐定期預金の代替品‐が6月の最後の10日間で償還期限を迎える。償還資金の調達に最もよく使われている方法は新商品の発行と銀行間市場からの借り入れだが、最近の銀行間流動性の不足状態はこの両方を難しくしている。

中国の中堅銀行が最も困難に直面するだろう。これらの銀行はWMP商品の全ての預入金の平均20─30%を占める。国有銀行と都市・地方銀行が占める割合は10─20%だ。

WMPの償還は、20日に過去最高水準となった銀行間金利にさらなる上方圧力となるだろう。7日物銀行間レポ金利の今月6日以来の平均は7%近くになっており、1月1日─6月5日の平均である約3.3%の倍以上だ。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 とにかく中国の金融セクターで依然流動性がひっ迫していることで、幾つかの銀行は近く迎える「理財商品」(WMP、Wealth Management Productsと呼ばれる金融商品)の償還の義務を期限通りに果たせなくなる可能性が高まったということです。



現在の中国金融界に関しては、さらに別の記事もあります。
コラム:中国の流動性逼迫で問われる人民銀行の信頼
米国では量的緩和縮小の観測が取り沙汰されているが、中国では実際に市場から流動性が吸収される事態が起きている。融資過剰に陥った市中銀行と中国人民銀行(中央銀行)が角突き合わせた結果、銀行間市場で短期金利が過去最高を記録したのだ。

中国の金融市場は閉鎖的で国家の管理下にあるため、世界金融危機の際に欧米で発生したような市場の大きな混乱は回避される可能性が高い。しかしすべては当局が迅速に断固とした対応を採ることができるかどうかに掛かっている。
これも詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 中国国内のある銀行が融資を返済できなくなり、それが連鎖反応を引き起こして抑えが利かなくなるかもしれません。預金者が資金の引き出しに不安を感じたり、WMPで返済が滞る事態になれば、暴動が発生することもあり得るということです。



さて、中国の現在の金融セクターの混乱ぶりは、日本と多いに関係があります。これに関しては、以前も掲載したことがあります。

その記事のURLを掲載させていただきます。
中国は世界で最もストレスの大きい国に―【私の論評】日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策を終わらせ、中国に新社会秩序を打ちたてよ!!
この記事も詳細はこの記事をご覧いただくものとして、今日の話題に関係する部分を以下にコピペさせていただきます。
    中国を支えているのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものだ。からくりはこうだ。

    慢性的な円高に苦しむ日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入している。国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっているのだ。つまり日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けた」ことになる。

    これ以上、日本経済が中国に振り回されないで済むにはどうしたらいいか。答えは簡単だ。日銀にデフレ政策をいますぐやめさせることである。
この記事をご覧いただければ、以下に日本の経済政策が中国に都合の良いものだったかお分かりになると思います。この記事を掲載したのは、昨年の11月のことです。まだ、アベノミクスは実際には、始まっていない時期でした。ただし、市場の希望的観測から、株価があがりつつあった時期です。 そうして、この記事では、こうした日本による経済政策が、中国に与えた影響についても、掲載しました。以下にその部分を掲載します。
 しかし、このようなこと(ブログ管理人注:日銀のデフレ円高政策)が長続ききするはずはありません。日銀は、はからずも、中国を人間でいえば、麻薬漬けにしてしまったといえるかもしれません。しかし、先に述べたようにこのような麻薬漬け政策をつづけたとしても、日本を、デフレと円高で苦しめるし、中国は麻薬漬け体質からなかなか抜け出しにくくするだけです。日銀の白川総裁も、いい加減、中国麻薬漬け政策など、中国を駄目にしていずれ人民に恨まれるだけであろうことを認識していただきたいものです。

やはり、日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策をおわらせ、中国に新社会秩序を早期に打ちたてるためにも、日銀のとんでもない金融政策は、一刻もはやく終わらせるべきだと思います。そう思うのは私だけでしようか?
 そうして、現在はアベノミクスが進行中で、特に強力な金融緩和政策を実施中です。正式には、4月から発動しました。それから、わずか二ヶ月で中国の金融界は上のようなありさまです。これは、日本の金融政策がいかに、中国にとって有利作用していたかを如実に示しています。


まさに、元白川 総裁による、金融政策は中国麻薬漬け政策だったのです。そうして、この麻薬漬け政策は、中国のごく一部の富裕層を潤すことと、軍備拡張に用いられてきたということです。一般人民には、ほとんど関係ありません。上海等は違うなどという人もいるかもしれませんが、上海等は、中国の極々一部に過ぎませセん。そうして、中国は最近軍備はどんどん拡張していました。この軍備にも、過去の元白川総裁の金融政策が、多いに寄与してきたことはいうまでもありません。

また、ここでは、詳細はここでは述べませんが中国麻薬漬け政策は、結果として、中国社会の構造改革を遅らせ、旧態依然のまま温存させてきたことも否めません。これに関しては、上の記事に詳細を掲載していまので、詳細を知りたいかたは是非ご覧になって下さい。

中国政府は、日本が麻薬政策を中止したことを非難していますが、それは正しくはありません。もともと、現在の経済発展は、日本のデフレの代償として得られたものであり、中国実体経済は本来はまだまだ下の水準なのです。

どんな国であれ、自国のために他国にデフレを強要することなどできません。もともと、デフレは異常なことであり、経済の癌ともいわれているような異常なことです。どんな国も、他国に対して、他国がいつまでもデフレであり続けよなど強制することなどできません。



だから、中国・韓国などの麻薬漬け政策を享受してきた国以外は、日本がデフレから立ち直ることに対して異議を唱えるようなことはしません。 ドイツは先進国では例外かもしれませんが、それにしても中国などのようにあからさまに主張しているわけではありません。

中国ではこれから、金融セクターが混乱し、どうしようもなくなる時期も来るかもしません。そうなれば、軍備拡張だって滞ることでしょう。しかし、それは中国の国内問題であって、断じて日本とは全く関係ないことです。

しかし、こうして考えると、アベノミクスを中断して、日本が中国麻薬漬け政策にもどるということは、日本人が知らずして、見ず知らずの中国の富裕層に奉仕することになり、中国軍拡に寄与することになるといことであり、これは、多くの日本人のためにも、中国の社会にとっても良くないということは明らかであり、絶対に中断するべきではありません。私は、そう思います。皆さんは、どう思いますか?

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