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2014年9月29日月曜日

【NewsPicks】経営学は経営の役に立つのか第2回 ビジネスにおける「学者」と「理屈」の意義―【私の論評】経営には原理・原則がありそれを多くの人々が知ることにより、社会は確実に変わる。しかし、知識ある者は、常に理解されるように努力する責任があることを忘れてはならない(゚д゚)!

【NewsPicks】経営学は経営の役に立つのか第2回 ビジネスにおける「学者」と「理屈」の意義

理屈じゃないから、理屈が大切

今回は、「なぜ学者が実務家とやり取りすることに意義があるか」について説明していきましょう。

最初に下図をご覧ください。理屈(論理)と理屈でないものの比率は一緒です。8割は理屈では説明がつかないにしても、ビジネスのもろもろのうち2割は、やはり何らかの理屈で動いているわけです。「ここまでは理屈だけれども、ここから先は理屈じゃない」というように、左から右へと考えてみてください。すると、「理屈じゃないから、理屈が大切」という逆説が浮かび上がってきます。
ストーリー_図01-2ai-01



何が理屈かをまるでわかっていない人には、「理屈じゃない」ものが本当のところ何なのかもわかりません。私も実務家の方々と議論しているときに、「まぁ、理屈としてはそうですが、現実は理屈じゃないので……」と言われることが少なくありません。しかし、私の経験からすれば、「現実は理屈じゃない」という声に迫力を感じる実務家に限って、総じて理屈っぽく、論理的なのです。

「いやー、ビジネスなんて理屈じゃないよね」ということで、のっけからけもの道を爆走しているだけでは、肝心の野性の勘をつかめないはずです。

野性の嗅覚が成功の8割にしても、2割の理屈を突き詰めている人は、本当のところ何が「理屈じゃない」のか、野性の嗅覚の意味合いを深いレベルで理解しています。「ここから先は理屈ではなくて気合だ」というふうに気合の輪郭がはっきり見えています。だからますます「気合」が入り、「野性の勘」に磨きがかかる。「理屈じゃないから、理屈が大切」なのです。

経営や戦略を相手にしている以上、法則定立は不可能です。しかし、それでも論理はある、「論理化」は可能だという主張です。ストーリーとしての競争戦略も「法則はないけれども、論理はある」という立場に立って、優れた戦略ストーリーの論理を明らかにすることを目的としています。

そして、その論理というのは、「イノベーションが大切だよね!」というほど元も子もない話ではありません。もう少し考えてみたほうがいい何か、しかもそれは実務の「けもの道」を走っているだけでは、なかなか見えない何かなのです。


楠木 建
一橋大学教授








上の記事は要約記事です。詳細は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】経営には原理・原則がありそれを多くの人々が知ることにより、社会は確実に変わる。しかし、知識ある者は、常に理解されるように努力する責任があることを忘れてはならない(゚д゚)!

News Picks ロゴ


皆さんは、NewsPicksをご存知でしょうか。新しいタイプのニュース・サイトです。今まで、いろいろなニュース・サイトのアプリをパソコンや、スマホ、タブレットで使用してみましたが、結局長続きせず、最初は見ても、後からはほとんど使わなくなるということがほとんどだったのですが、このサイトはこれからも使い続けると思います。

日本国内の、いわゆる普通のメディアなどに掲載されている犯罪・災害などのニュースは掲載されていませんが、主要なニュースをほぼ網羅されています。これは、犯罪などに関しては、サイトでみるまでもなく、通常のニュース・メデイアで十分であるとの考えでわざわざ掲載しないのだと思います。

しかし、通常のメディアだけだと、見逃してしまいそうにもかかわらず重要なものが掲載されているようです。そうして、この方針は良いと思います。

御嶽山の噴火のニュースなど、サイトで長々と、何度も掲載されても、確かにあまり意味はないと思います。そんなのは、テレビで十分です。

そうして、このサイトの魅力は何といっても、twitterとの連携がすごいことです。それも、ただ単に、twitterにニュースに関するコメントを掲載できるというだけではありません。なかなか優れものの機能があり、使い勝手かかなり良いです。

この使い勝手の良さもあってか、結構有名人も使っています。あの堀江貴文さんなども使っています。

これは、言葉で説明しても、なかなかご理解いただないと思いますので、是非一度ご覧になって下さい。以下にリンクを掲載しておきます。


さて、前置きが長くなってしまいましたが、本日の主題は、NewsPicksの紹介を兼ねては、いますが、それが本題ではありません。

本題は、このニュース・サイトに掲載されていた、連載企画であるブログ冒頭の記事です。

私は、この記事に興味をひかれたので、読了後すぐにコメントしました。

本日は、まずはそのコメントの内容を以下に掲載します。
私は、経営学を専攻はしませんでしたが、学生の頃からドラッカーの書籍を読んで、感動し経営学がドラッカー氏が語っているようなことを意味するのであれば、経営学は本当に役に立つと確信しています。
特に、最近では、企業内の資料である『新・時流人』という会長のお言葉をまとめた、書籍の原稿を執筆しましたが、その時にも非常に役にたちました。会長の言葉の真の意味が、ドラッカーの書籍ではこういうふうに掲載されているという具合に確認することができました。

執筆した書籍の表紙

書籍ができあがってから、結局書籍の八割が、表現は異なるものの、ドラッカー氏のいう経営の原理原則であり、後の二割が、会長ご自身の哲学のようなものということに気付きました。
しかも、会長自身は、あまりドラッカーの書籍を読んでいるといこともないようでしたので、経営には原理原則というものがあるという結論に至りました。
しかしながら、こうした会長が原理原則を自らの経験を踏まえて、誰にでも解りやすく平易な言葉で語っていたことには、改めて感動を覚えました。いくら原理原則を知っていても、それを本当に理解してもらうには、ただ原理原則を語れば良いというものではありません。多くの人々に理解できる言葉や、事例を用いなければ、誰も納得しません。
最近もドラッカー氏の"Management revised edition"を読みましたが、構成や力点の置き方が多少異なり、事例などが新しいものに置き換わっているものもありましたが、原理原則はそのままで、今でも十分に通用するもであると思いました。
経営学か全く役にたたないという方は、ドラッカー氏の書籍を読んだことがないか、読んだとしても、その本質を理解していないということではないかと思います。あるいは、教える側にも問題があって、うまく伝わらないだけではないかと思います。
そうして、ドラッカー氏の書籍を読んでいて感じるのは、まさに、経営に法則や定理はないということです。こんなものがあったら、誰も苦労しません。しかし、それでも原理・原則はあるということです。
そうして、原理・原則に従い日々の問題に取り組めば、それを知らないよりは、はるかに様々な事柄に対処しやすくなります。
私は、多くの人々がドラッカー氏が語っていたような、経営学の本質を学べば、社会は随分変わってくると思います。
私は、経営学という学問を正式に学んだことはありませんが、ドラッカー氏を抜いて現代の経営学を語ることはできないと思います。

ドラッカー氏のように、経営学の原理・原則について考えぬいた人はいないのではないかとさえ思っています。
ドラッカー氏


なぜなら、現在であれば、多くの人々が、ドラッカー氏のマネジメントにおける原理・原則を下敷きとして、様々な現象を説明したり、理解したり、積み上げたりすることが容易にできますが、その下敷きを創った人がドラッカーです。

ドラッカー氏以前にも、マネジメントについて考えた人は大勢いますし、先人の研究があったからこそ、ドラッカー氏もマネジメントの体系化ができたのではありますが、どれも部分的であって、全体像に関して考察して、体系化したのはドラッカー氏がはじめてだからです。

今の私達は、このようなものがすでにあるのですから、マネジメント関連のことで、いろいろ考えたり、疑問などがあった場合には、他の書籍や、コンサルタントにあたる前に、まず一度はドラッカー氏の書籍を熟読するべきと思います。

熟読すれば、必ずそこには、すくに役立つことや、すぐにではなくても、いずれ役に立つ原理原則がみつかるはずです。無論、特定の事柄にすぐに役立つ法則や定理などはみつかりませんが、多くの事柄に適用できる、珠玉の原理原則が散りばめられていことに気づくはずてす。

そうして現代の私達が最も気をつけなければならないことは、ドラッカー氏の語る以下の言葉です。
知識ある者は、常に理解されるように努力する責任がある。知識労働者は、直接にものを生産するわけではない。
生みだすアイデアや情報を誰かに使ってもらうことで、いわば間接的に生産する。だから、市場を理解すると同時に、組織における上下左右の人間が何を必要としているかを知らなければならない。さらに、自分のアイデアの内容や情報の価値を彼らにわかってもらう事が不可欠だ。
現在の仕事は、従来から比較すると、どの仕事も高度な知識労働となっています。だから、多かれ少なかれ、どの人の仕事もある程度以上は専門的になっています。現在では、ある人の仕事は、別の人にとっては、すぐに理解できるような簡単なものではありません。

特定の専門的知識を有する人々の中だけで、話が通じて事が足りるということはないのです。多くの人々にわかってもらえなければ、専門化した現在の知識は全く役に立たないのです。だからこそ、伝えることが本当に重要になってくるのです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2012年3月11日日曜日

GREEはかつて“ウェブ屋台”だった−【私の論評】未来をつくる方法には二種類方法がある!!

GREEはかつて“ウェブ屋台”だった:

ゴムホース大学


今回はラカンさんのブログ『ゴムホース大學』からご寄稿いただきました。

■GREEはかつて“ウェブ屋台”だった
先週、従兄弟の友人から「“起業”したい」と相談を受けた。餃子の王将で3時間ほど従兄弟も交えて話したのだが内容は覚えておらず。ただ彼が連呼する「スタートアップ」「MBA」「ベンチャーキャピタル」「グリーの田中さん」「BOPビジネス」「ザッカーバーグ」という単語だけが私の脳の底に残っていた。


帰ってから「あいつは何者なんだ」と従兄弟に聞くと「MBA=M→マヌケ、B→バカ、A→アホ」(写真:馬鹿阿呆間抜けの三色ランチ:映画『バーン・アフター・リーディング』のスチル)と即答して笑わせてくれた。とにかく性格的には良い奴だが、痛い感じの意識高い同級生だそうだ。ある種の一部の最近よくいる愛嬌あるタイプなのかもしれない。彼の話した内容を一・二行で要約すると、
「自分は世界を変えたくて、でかい起業がしたい。莫大な金がいる。でもお金がない。エンジェルを探している、米国でMBAも欲しい」

みたいな感じになるのだと思う。こんな要約でなんとなく彼の雰囲気が伝わるのではないか。

自分は大きな野心を持つ挑戦に対して、「お前は無理だ」「身の程を知れ」などと頭から否定するつもりはないが、ただ“この種”の学生の話を聞いていると、疑問に思うことが多い。それは“無謀”だからではなく、彼らが思い描く巨大な設備投資から始まる“大起業”のイメージが、少し間違っているのではないかと感じるからだ。

私は、近年のIT系“大起業”は従来の起業とは違う、独特の派生を経ていると思う。
その点を考えるうえで、携帯ゲーム会社2大双璧の1つGREEの田中和良社長のインタビューが面白い。


「「それでいい、楽しいから」――7万人の町「GREE」を一人で作ってる会社員」2004年07月30日『ITmediaニュース』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0407/30/news006.html

田中氏は楽天勤務時代、自身でサーバーを用意し、サラリーマンと兼業して、まさに屋台的な半趣味でGREEを運営していたようだ。大きな“社会を変える起業”など当初は想像していなかったが、やっている途中で自己増殖的に爆発して巨大プラットフォームにまで成長した。

田中氏以外にも、こういう例は多い。『Facebook』も最初はザッカーバーグが作った出会い系SNSのような趣味サイトだったろうし。2ちゃんねる管理人の某氏のケースも同様だ。


現在は経営者として多忙な日々であろうが、初期に起きた爆発的拡張は、管理人も意図していなかったははすである。これら類似点はなんなのだろうか。

これを彼らがラッキーだったからと解釈するのも、血の滲む努力をしたからと解釈するのも間違っている気がする。

彼らのサービスがハイパーインフレーション的な増殖を見せたのは、当然彼らのサービスが魅力的であったからで、ウェブ媒体で希少な資源(ソース)である“人の関心”を奪ったからだ。

そして最も重要なのことは、現代はITインフラの拡張で情報伝達が加速化して“人の関心”の集積が指数関数的に伝達・集積される部分が深く関係しているのだろう。特にSNSでは人⇔人というダイレクトな繋がりで伝達されるので、“良い”と思ったサービスはネズミ算式に拡張する。

ただこれは“量”(人数)のネズミ算ではなく“質”(ムード)の部分も大きい。はじめは誰かが面白そうだと思い興味本位で参加して。サービスに関心を持つある一定のユーザーが集まり、それでますます面白い雰囲気ができてきて、という繰り返しで偶発的なインフレーションが、次第に強まり、独自の有機的なコミュニティーが形成されるのだ。

現在のSNSを含む、ユーザー参加型サービスは、サービスごとに独自の風土が形成されているような気がする。もちろんそのSNS内のコミュニティーごとにも、集まったユーザー層ごとに島のようなクラスタで細部増殖的に分枝するのだが。結局はそのサービス、またサービス内の所属コミュニティーの雰囲気のようなものに引き付けられ、その繰り返しで自律的なフレームが構築されるのだろう。つまり1つの言語ゲーム型ネットワークなのだ。この場合、関心の集積は、ユーザー参加人数としての身もふたもない量を超えて、参加者コミュニティーの感性価値が重要視される。

このような参加型サービスの爆発的拡張の契機となるのは、戦略的なマーケティングの集客よりも、多数派工作に至るまでの“有機的な関心の増加”である(もちろん初期の“火付け”としての宣伝は必要だが)。

王将で私が相談を受けた学生は、世界を見ているようだ。それは良いが、どうやら世界ははじめから戦略的意図で狙えるものではないのではないか?

とりあえず何がしたいか考え抜いた後で、設備投資を抑え、安価に使用できるサービスを横断的に組み合わせて低リスクなポーフォリオを組み“屋台的な試み”をトライ&エラーで続けるのがベターだと私は彼にアドバイスした。彼は世界起業のイメージと正反対だったためか、唖然としていたが、それが近道だろう。

個人にできることは考え抜いた末に、不確実性の海にサイコロを投げ続けるだと私は思う。
“投げ続けること”が重要なのだ。

【追記1】ウェブメディア企画の調査も兼ねて調べてみると、月100万PVを集める言論プラットフォーム『アゴラ』も月数百円のブログサービスに、無料のリンクウィズイン、『Facebook』などのプラグインを組み合わせたウェブ屋台である。こういう屋台的なメディアがダイナミックに運営されている事例も面白い。今後、起業の概念がIT分野に至っては変わってくるのではないか。

【追記2】適当に書いた記事だが、『Twitter』上で「そのとおり。現代のスタートアップは屋台的です」とシリコンバレーで働かれている日本人、日系人の方からほめていただけた。素朴にうれしい。

執筆: この記事はラカンさんのブログ『ゴムホース大學』( http://d.hatena.ne.jp/Lacan2205126/20120214/1329228176 )からご寄稿いただきました。
(ガジェット通信)

【私の論評】未来をつくる方法には二種類方法がある!!



上の記事起業や新しい事業を起こそうと考えている方には、非常に役にたつものだと思います(写真上は、アメリカの屋台)。ただし、題材がITに関することであったり、個人的な話題であったりして、原理原則にまではまとまっていないような気がします。このような良い話は、IT業界の方だけではなく、他の業界の方も知っておいて損になるようなことはないと思いますので、以下にドラッカーの言葉など借りながら、掲載してみます。
われわれは未来についてふたつのことしか知らない。ひとつは、未来は知りえない、もうひとつは、未来は今日存在するものとも、今日予測するものとも違うということである(『創造する経営者』)
 ありがたいことにドラッカーは、ここで終わりにしていません。続けてこうも言っています。
それでも未来を知る方法は、ふたつある。
一つは、自分で創ることである。成功してきた人、成功してきた企業は、すべて自らの未来を、みずから創ってきた。ドラッカー自身、マネジメントなるものが生まれることを予測する必要はなかった。自分で生み出した。
もう一つは、すでに起こったことの帰結を見ることである。そして行動に結びつけることである。

あらゆる出来事が、その発生と、インパクトの顕在化とのあいだにタイムラグを持つ。
これをドラッカーは、「すでに起こった未来」と名付けています。(下の写真は北見の屋台村)

出生率の動きを見れば、少子高齢化の到来は誰の目にも見えたはずだ。対策もとれたはずである。だが、高齢化社会がいかなる社会となり、いかなる政治や経済を持つことになるかを初めて論じたのはドラッカーだった。
こうして東西冷戦の終結、転換期の到来、テロの脅威も彼は予見していました。
未来を築くためにまず初めになすべきは、明日何をなすべきかを決めることでなく、明日を創るために今日何をなすべきかを決めることである。(『創造する経営者』)

またドラッカーはこうも語っています。(上の写真は、八雲町における地域振興パイロット事業試食会)
新しいものはすべて、小規模にテストする必要がある。パイロット(試行)する必要がある。
そのためには、その新しいものの実現に意欲のある者を探さなければならない。新しいものは常に障害にぶつかる。そのとき戦う者を必要とする。成功させると胸を張り、取り組む者を必要とする。しかも、それは敬意を払われる存在でなければならない。
こうしてパイロットに成功するならば、市場、デザイン、アフターサービスについて、誰も気がつかなかった問題が明らかにされ、誰も気がつかなかった機会が明らかにされる。こうして変化にともなうリスクは最小限にとどめられる。
(『明日を支配するもの』)
上の記事にでてくる馬鹿な従兄弟の友人は、資金的にも、情報的にもなんの積み上げもないところから、未来を知ることの二つの方法のうちの、未来をつくるということを志向しているということです。未来をつくるということは、すでに起こった未来をみつけるよりもかなり難しいことです。個人や中小企業などにはすぐには、なかなかできないことです。

だから、ラカンさんは、いろいろな事例を出しながら、「すでに起こった未来」を探すべきであることをこの従兄弟の友人に伝えているというわけです。

まさに、Greeの創業者田中さんも、ウエブ屋台をやって、「すでに起こった未来」を探し続けていたのだと思います。ただし、それが、意図的であったのか、それともあまり意識しないでやっていたのかは、わかりませんが、このウェブ屋台の運営こそが、上でドラッカーのいうところの、「すでに起こった未来」をみつける行為だったのです。

それから、未来をみずからつくるにしても、すぐに大々的にやってしまっては、どうなることかわかりません。だから、資金や情報をふんだんに持つ企業であってさえ、上でドラッカーが提唱しているように、パイロットをしているのです。(下の写真は、函館の屋台村)


上でラカンさんの言う「個人にできることは考え抜いた末に、不確実性の海にサイコロを投げ続けるだと私は思う。“投げ続けること”が重要なのだ」とは、まさに、ドラッカーのいうところのパイロットのことなのです。

詳細は、ドラッカーの書籍を実際に読んでいただきたいと思いますが、エッセンスはこういうことです。どんな事業だって、新規事業であるからには、最初から、大戦略があって、資源を大量につぎ込むわけではありません。それこそ、「すでに起こった未来」を探したり、未来をつくるために、パイロットをやったりしているわけです。これが、いわゆる原理原則だと思います。

このようなことをしているうちに、すでに起こった未来に確信がもてたり、パイロットで良い結果がでれば、大々的に実施することになり、そのときに始めて戦略が必要になるのです。

まさにラカンさんがおっしゃるうに、「はじめから戦略的意図で狙えるものではない」のです。

それから、冒頭にでてきた「マヌケ、バカ、アホ」は、後追いすることが新しいことと思っているよう思えてなりません。グリーも、Facebookも、もうすでに、田中さんや、ザッカーバーグさんが、歩んできた道です、これと同じことをしても全く意味がないし、成功することもかなわないでしょう。新しいことで勝負をしなければなりません。このようなことは、時代が変わっても繰り返されるということがよくわかりました。私が学生だったころ、生物学のある教授が私に「最近の大学院生は、外国の後追いばかりやっている。後追いすることが新しいことと勘違いしている。彼らは、サイエンスに掲載されているバイオテクノロジーに関する実験の追試ばかりやろうとする」と嘆いていました。

雑誌や、ウェブに掲載されている華々しい成果は、すでに過去のもであることをこの、MBAは知らないんですね。たとえば、化学の世界には、ケミカル・アブストラクトという有名なデータベースがあり、それには、最新の成果が掲載されています。これの用途は何かといえば、まだ世の中にない、新しい物質を開発するために、世の中にすでにあるものを検索するために利用します。無論、どのにようにして、作ったのかを参照もするし、場合によっては、追試もしますが、それが目的ではありません。あくまで、この世にない新しい物質をつくるためです。

「スタートアップ」「MBA」「ベンチャーキャピタル」「グリーの田中さん」「BOPビジネス」「ザッカーバーグ」なる、バズワードを覚えても仕方ないわけです。あくまで、体系的に「すでに起こった未来」を発見することが、近道なわけです。



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