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2009年11月12日木曜日

あえて「客単価↑」の狙いは-飲食業界客単価上昇の傾向をどう見るか?

あえて「客単価↑」の狙いは

2009.11.11


客単価上昇の傾向をどう見るか?
昨日ワールドビジネス・サテライトを見ていたら、外食産業での単価上昇のことが報道されていたので、前から、少し気になっていたので本日はこれに関して掲載します。

居酒屋チェーンのワタミは12日、東京・大田にファミリーレストランの1号店「ごちそう厨房(ちゅうぼう) 饗(きょう)の屋」を開業しました。客単価は2100円と、すかいらーくの「ガスト」の750円などと比べ高めに設定。普段使いよりも家族で記念日に食事する需要を開拓します。ただ強気の価格が受け入れられるかは不透明です。

1号店の店舗面積は約260平方メートルで、4人がけのテーブル席中心に129席と標準的なファミレス並み。メニューは定食を中心に約70種類を用意。定食の価格は1500~2500円前後に設定、豪州産牛肉を使った「霜降り牛の石焼ステーキ膳」(3129円)など高額の商品もそろえます。メニューに関しては、下のURLからご覧になることができます。

◇ファミレス衰退の原因は?
さて、この新しい業態、お客に受け入れられるどうか、注目です。飲食業界の雄である、マクドナルドは、低価格路線は維持してはいるというものの、一回り大きなハンバーガー「クォーター・パウンド」も人気です。また、以前このブログにも掲載したように、たとえば、2000円の商品(とても一人では食べきれない)を1000円に割り引くなど、個食の権化のようでもあったハンバーガーを「共食」にしようという試みを実施しています。

ファミリーレストランというと、その名のとおり、家族などでの「共食」を前提とした業態でもあります。最近、スカイラークのファミリーレストラン型業態の最後の店が店じまいしたばかりです。このファミリーレストランの単価は1000くらいだったと思います。

飲食業界は、ここ10年くらい叙々に売上が落ちていましたが、一般にはこれを単に不況のせいにしていました。しかし、実際には消費者が変わりつつあったとの証ではないかと思います。これに対応することが十分できていなかったのかもしれません。従来型の業態であるスカイラークの終焉は、それを示していたのかもしれません。

こちら函館には、以前このブログにも掲載したように、函館の独特の食文化のせいか、いわゆる、全国チェーンのファミレスは、ありませんでしたが、函館のローカルのファミリーレストランがありました。しかし、それも、2年くらい前から姿を消しています。ここのメニューもいわゆる、ごく当たり前の鉄板に載った、ハンバーグや、エビフライでした。客単価も1000円前後ではなかったと思います。

典型的な従来型のファミリーレストランのイメージは、以下のようなものだったと思います。

肯定的なイメージ特徴

  • 比較的綺麗で清潔な店舗、開放感のある広い店内にマイカーで行ける駐車場がある。
  • 料理の値段が全般的に値ごろ感があり利用しやすい。
  • メニューが幅広く、和・洋・中など多種多様な料理が楽しめる他、キッズメニューも多い。

否定的・マイナスイメージでの特徴

  • カジュアルレストランなど、ファミリーレストランより客単価の高い形態の店舗と比べると料理の味が劣ることが多い。これは大量生産・工場生産などの理由に起因する。
  • 子供が騒いでも周りが気にしない雰囲気である。
  • ドリンクバー設置店での若年層(これに限らず、低価格商品の注文で長時間居座る客)の溜まり場、客席放置。
  • 喫煙席と禁煙席が分かれてはいるものの仕切りがない店舗もある。

ファミリーレストランは、その誕生した時代の消費者にのニーズを満たす業態です。先月の、10月29日。ファミリーレストランの元祖とも呼べる「すかいらーく」は、川口新郷店(埼玉県)を最後に39年の歴史に幕を閉じました。この30年くらいて、消費者ニーズも相当変わっているのだと思います。

いまや、上記で示したファミレスの肯定的イメージも、当時とは違って肯定的ではなくなったのだと思います。

「比較的綺麗で清潔な店舗、開放感のある広い店内にマイカーで行ける駐車場がある」というのが、駐車場を備えていない店舗もたくさんあった当時としては斬新でもあったのでしょうが、現在では当たり前になり、画一的でなんの変哲もない面白みもない店になってしまったということだと思います。今では、綺麗・清潔なのが当たり前で、何の差別化にもならないし、開放感あふれるといっても、今では無機質にしか感じられないのだと思います。

料理の値段が全般的に値ごろ感があり利用しやすい」ものが、今では、「安いのはいいのだが、それだけで、何も訴えるものがない。家で自分で作ったほうが美味しいとか、レトルト食品や、冷凍モノとそう変わらない、デパ地価で買ってきたもののほうが美味しい」ということになってしまったのです。

それに、ファミレス設立当初は、確かに家族の人数も多く、家族みんなでということになると、5人以上もで行ったので、単価もファミリー全部で個々が1000円のものを頼んだとしても、5000円以上にもなったものが、今では、核家族化、少子化が進んだため、3000円~4000円ということになり、安すぎということになったこともあると思います。であれば、最近では個食化も進んでいて、家族全員がそろって食事をすること珍しいので、せっかくの家族の外食だから何か思い出に残るように、もっと高くても良いというように変わってきているのだと思います。

それこそ、今だと、新築の家であれば、おしゃれな開放的なダイニング・キッチンが主流でシステムキッチンも標準で備えられており、システムキッチンには使いこなしているかいないかは、別にしても、オーブンなども設置されています。そこでいつも食べているような、料理、たとえば鉄板プレートに載った安い冷凍ハンバーグを家族全員でわざわざファミレスで食べても白けるだけで何の感動どころか、味も素っ気もないのではないかと思います。

「メニューが幅広く、和・洋・中など多種多様な料理が楽しめる他、キッズメニューも多い」というのも、今となっては、幅が広すぎでちょっと突っ込むとすぐに奥行きがなくなってしまうのだと思います。たとえば、洋物メニューはあるものの、ハンバーグ、カレー、エビフライ、グラタンなど、画一的で、イタリアンの定番であるラビオリを食べたいとおもってもまずはないとか・・・・・。和食でも、天ぷら、刺身、焼き魚など、特に珍しくもないメニューの組み合わせしかありません。ファミレスに何回か行ってしまえば、画一的なメニューなので、食べたいものがなくなってしまうなどのこともあったと思います。

さて、以上の従来は肯定的なイメージだってものが、今の時代ではマイナスになり、さらに上にあげたマイナスイメージもそのまま残っています。これらを統合して考えてみると、最早、伝統的なファミレスの役割は日本では終焉したのだと思います。最近の外食チェーンの不況は、必ずしも、マクロ経済のせいばかりではなく、こうした変化に対応してこなかったということもあると思います。ファスト・フードなどの単価の安い業態は高くするとか、高い業態を創設する、高級レストランなどの業態は、単価を低くするとか、低い業態を創設することなしに、根本的には既存の業態のまま運営し、顧客のニーズに応えられなかったというのが実態だと思います。

◇新たな業態の可能性は?

さて、従来型のファミリーレストランがその役割を終えて、業績が悪くなって以来、飲食業界の動きは、低価格化でした。最初は、これで一見成功したようにもみえました。しかし、その先頭を走っていた、マクドナルドも、100円マックは、今も継続してはいますが、アイテムも少なく、従来のようなプロモーションも行っていません。このように、マックは今でも、低価格路線を維持はしていますが、積極的に維持しているわけではありません。これについては、以前もこのブログに掲載してありますので、そちらをご覧ください。牛丼、焼肉など他の低価格業態も今では、決して良いとはいえません。

日本の飲食業界、特にレストラン業界に限ってその特徴をアメリカなどとの比較であげてみると、いわゆる高級レストラン(客単価1万円前後以上)と、ファストフードを含める町の洋食屋さん、カレー屋さん、蕎麦屋さんなど廉価な業態は豊富にあるのですが、いわゆる客単価が3000円~10000円以下の業態は極端に少ないのではないと思います。本来、こうした業態がもっと生まれてきても良いはずです。あまり高くないところでかといって、本当に安いところには行きたくないと思ったとき、意外と行ける店がありません。それでも、東京都内なら、何とか探していけないこともないですが、ここ函館をはじめ地方都市では皆無といっても良い状況です。

しかし、ここ10年ほど、日本の景気はパットせず、景気が伸びいてた金融危機直前でも、「実感なき好景気」といわれていて、飲食業界もあまり思い切ったことはできなかったのだと思います。しかし、本当は、顧客のほうは変わっていて、もはや、ファミレスのような業態はごめんだし、かといつて、本当に高級なところには、ごくたまにしか行けないという意識になっていたのだと思います。

数年前に、いわゆるファスト・カジュアルという業態が日本にもできかけたことがあり、マクドナルドでも、マックダイニングという業態をたちあげました。モスバーガーでも緑モスをたちあげたのですが、あまりパットしませんでした。いわゆる1000円ハンバーガーなども売り出したのですが、一時的な流行で終わってしまったようです。やはり、実感なき好景気などの状況さらには、金融危機などによってこの動きはいったん止まったかのようになっているのだと思います。

しかし、消費者の根底にある変化は変わらず、そのため、既存のファミレスも生き残ることができなかっだと思います。だとすれば、いわゆる客単価が3000円~10000円以下の業態は、まだまだ見込みがあるはすです。

ワタミは、いろいろな業態を持っています、また新しい業態を創設する力も十分あります。将来的には、客単価3000円以上のレストランを狙うにしても、今の景気の状況をみて、2000円程度の業態に最初にチャレンジし、様子を見ているのではないでしょうか?客単価が3000円であれば、サービスも一段上のいわゆるカジュアル業態のレストランにすることができます。だから、現状ではファミレスの業態として、価格は高めにして、ファスト・カジュアルのような業態としているのだと思います。それと、景気が回復したとしても、おそらく、2000円のファミレスなら残れると踏んでいるとおもいます。1000円では無理だと判断しているのだと思います。おそらく、1000円台のレストランは、ラーメン屋、カレー屋、洋食屋さん、その他個人経営のものなどで日本では十分事足りるし、個性が豊かであって、とても、チェーン店などは太刀打ちできないのだと思います。

私は、この不景気が終焉した後には、客単価が3000円~10000円以下のいわゆる、カジュアルの業態が日本にも根付く番ではないかと思います。現在は、少子高齢化の傾向にあります。子供の数は減っていますが、少ない子供によりお金をかけるという傾向があります。それに、若者ならまだしも、ある程度の年齢のいった高齢者が単価の安い外食ばかりしているというのも、あまりに侘しいと思います。子供の頃、その当時の日本では珍しくもなかった極貧生活を過ごし、現代日本人とは異質のメンタリティーの代表格でありその末期の層ともいえる、政治家の鈴木宗雄さん(61)は、幼少のころ父親とラーメン屋に行って、ラーメンを食べ終わって、お腹がいっぱいになって、スープを飲まないでいたら、「スープも御代に含まれているんだ!!全部飲み干せ」と怒られたそうです。

このような時代や、このような時代の痕跡が残っていたようなファミレスが創設されたばかりの頃は、ラーメン一杯でも、外食すれば、それなりに満足があったでしょうし、ファミレスなど家族で行ったら、それだけで特に子供などは有頂天になれたのでしょぅが、今はそうではありません。たまに家族で行く外食ですから、やはり、良いものを召し上がり、良いサービスを受けていただきたいものです。今まで熱心に働いてきた多くの日本人には、それだけの資格があると思います。高級レストランのほかに、ファストフードとか、1000内外のレストランという選択肢では、あまりにアンバランスです。やはり、ファストカジュアル、カジュアルの日本の飲食業界が提供すべきです。また、そうしたことが、外食業界を活気づけ、内需拡大にもつながります。

いずれ、アメリカやヨーロッパと比較して、数も少なく、貧弱な、カジュアル業態と、ファストカジュアル業態の店が日本にも興隆していくと思います。日本でも、アメリカ直輸入のような、ファストカジュアルの1000円ハンバーガーというようなものではなく、日本独自の和食やその他、創作料理などを含む、ファスト・カジュアルや、カジュアルレストランの新たな業態が開発されて、興隆していくと思います。

マクドナルドも、ワタミもそうした時代が来ることを予期しつつも、今の景気状況を踏まえ、現状にあわせた運営や、業態を創設して、着々と新たな時代に備えているのだと思います。


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