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2019年10月24日木曜日

トランプのシリア撤退は勝利のない中東紛争から米国人の命を救う―【私の論評】国防に真剣に取り組まなけば、日本は特ア三国・露の理不尽な要求に屈服し修羅場を見る(゚д゚)!

トランプのシリア撤退は勝利のない中東紛争から米国人の命を救う

トニー・シェーファー中佐

<引用元:サン・センチネル 2019.10.22>トニー・シェーファー中佐による寄稿

米国の軍隊の男性と女性たちに対するトランプ大統領の気遣いを、大統領を中傷する人たちが完全に理解することはない。というのも、政治エリートの栄光の展望が戦争の厳しい現実に取って代わられる時に責任を負うのは大統領だけだからだ。その上――保有領域に足止めされることで兵士が標的となり、機敏さを保ち主導権を維持することができなくなることを大統領は理解している。

トランプ大統領がトルコによる軍事攻撃前にシリア北部から米国兵士を移動する決断を発表した時、民主党とワシントンの外交エスタブリッシュメントは激しい怒りの声を上げた(オバマ政権下での何年も無為と懸念の後のことであり、その無為のせいで50万人の罪のない人々が殺害される結果となったことに注目して欲しい)。

その人たちは単に、トランプが、米国の国益が直接危機にさらされていない、世界の反対側の地政学的な紛争を細かく管理するために米国人の命を危機にさらそうとしない理由を理解できなかった。これまでのそうしたアプローチは、タカ派が数十年かけて入念に米国の事実上の外交政策の立場として設定したものあり、今では民主党の戦争賛成派の進歩主義勢力がそれを採用している。

トランプ大統領には別の考えがある。ミネアポリスでのトランプ集会で最近、「米国よ、勝利を勝ち取れ。兵士たちを家に帰せ」と語ったように。

我々の目の前では「トランプ・ドクトリン」が始まっている。以下の4点から成る方針だ。
  • 米国民に対する具体的な脅威、軍事力の使用を正当化するための利益を確認すること。
  • 既定の期間内に割り当てられた軍事目的達成のための軍に対する明確で簡潔な助言。
  • 軍事作戦で同盟国と地域パートナーの主導を認めて彼らを活用すること。
  • 勝つための自由と政治的な意志――軍が勝利を獲得できるようにするための指針を出す。
こうした単純だが明確な方針がレーガン時代以降、米国の戦略的思考に不在だった・・・だが今それは戻ってきた。

大統領は、米国を終わりがなく、勝利のない外国での戦争に陥らせないと約束した。米国はすでに、中東での政権交代をもたらそうとする不幸な取り組みで血を流しすぎており、多くの財産を浪費しすぎている。トランプ大統領が頻繁に指摘しているように、その地域での行動は何千名もの命と何兆ドルもの税金を掛けたにもかかわらず、米国を少しも安全にしていない。

ISISを抑え続ける試みは継続する――縮小することはないだろうが――が、この取り組みを継続するために、我々は彼らを打倒するための「地上軍」を隣の村に駐留させる必要はない。

また別の長期化する中東の紛争から軍隊を解放するチャンスを提示された時、大統領は賢明にも米国兵士を損害の道から移動させた。明らかに政治エスタブリッシュメントの好む別の手段を取れば、国のない反政府武装集団にその目論見を追及させるために、NATO同盟国に戦争を仕掛けると脅迫することになっていたいだろう。

ISISに対する我々の作戦でクルド人に共通の利益があったのは事実だが、ジハード主義者のカリフの国はもう戦いに敗れ、米国の国益は、現在トルコ、シリア、イラクが所有する領域で独立国家を樹立しようというクルド人の野望に収束しない。マルクス・レーニン主義者の政治的ルーツを持つPKKについていえば、トルコを不安定にしようというその取り組みを支援するのは米国の利益にならない。

最高司令官、トランプ大統領は、外交政策決定による人的損失が非常に実質的なものだと考えている。結局、戦死した米国人の家族に手紙を送り、息子や娘が最終的に国旗で覆われたひつぎに入って帰宅する時に、悲しみに沈む父母に慰めの言葉をかけなければならないのは大統領だ。文民政治家、専門家、ジャーナリストが戦争をあおる――彼らには死傷者報告書を中傷的なデータ点として見るだけの余裕がある――一方で、トランプ大統領は米国軍人の命に責任を持っているのであり、主戦論者はけっしてそれを理解しようとしない。

ありがたいことに、大統領はその責任を真剣に受け止めている。大統領は最近の記者会見で自身のシリア戦略を弁護し、亡くなった兵士の家族への手紙に署名することは「やるべき事の中で最も困難な事」だと記者団に述べた。

大統領は最近のミネアポリスでのキープ・アメリカ・グレート集会で再びそれを話題にし、軍人の家族が愛する故人のひつぎを受け取るのを見守るゾッとするような場面を詳細に説明した。

今年1月米国で身寄りのない孤独な退役軍人ジョセフ・ウォーカー氏の葬儀に数千人が参列した

「(飛行機の)扉が開き国旗で覆われたひつぎが見えた。扉が開いて、この美しい兵士たち、5,6人が両側にいて、ひつぎを持ち上げて滑走路を歩いてくる・・・すると両親は声を上げ・・・今まで聞いたことのないような叫び声と泣き声だ」と大統領は感情を隠すことなく回想した。

そのような瞬間は明らかに大統領の心に重くのしかかっており、米国の軍事力を思慮深く使用するという決断を満たしている。親に息子や娘がこの国のための尊い犠牲となったと知らせる時、トランプはその犠牲が単に価値あるものだというだけでなく必要だったと伝えることができることを望んでいる。

家族や友人が地図の上で見つけることもできないような場所で、あまりにも多くの米国人兵士が死んだ。彼らをそこに送った政治家たちは、その理由を決して的確に声に出していうことができないだろう。1カ月で終わるはずの作戦は10年続く戦争となった。それでもトランプが、その地域での命を懸けた窮地に兵士たちを関わらせるのを拒否した時、ワシントンの政治エスタブリッシュメントは無責任な行動だとして非難した。

戦うなら、勝つために戦う。

勝とうとするなら、米国人の命と利益を守るためであるべきだ。

曖昧な、あるいは存在しない軍事目的で終わりのない戦争をすることは利益にならない。

だがタカ派は、親がなぜ自分の子供に生きて再び会えなくなるのか説明する手紙を書く必要がない。そうした親が泣きすがる棺桶に付き添う必要はない。それはトランプ大統領の責務であり、大統領はそれを平然と果たす。大統領を批判する人たちは、意味のない死を終わらせ兵士たちを損害を受ける道から逃れさせようという大統領の取り組みを非難する前に、そのことを考えてみるべきだ。

トニー・シェーファー中佐は元情報将校であり、London Center for Policy Researchの所長である。

【私の論評】国防に真剣に取り組まなけば、日本は特ア三国・露の理不尽な要求に屈服し修羅場を見る(゚д゚)!

冒頭の「トランプ・ドクトリン」からすると、日本の防衛は米国にとってどうなのかという疑問がわいてきます。

トランプ大統領は、以前「日米安保は不公平。米国は日本を守るのに日本は米国を守らない。こんな条約は破棄してもいい」と語りました。この報道は日本国内で大きな波紋を呼びました。

「対米従属から脱出する好機」という勇まし意見から、米国に捨てられたと思って落胆する者まで、日本での反応はさまざまでした。



しかし、左翼から右翼まで入り乱れて収拾のつかないことになる前に、以下の事実を冷静に心得ておくべきです。

まず第一に。まだ安保条約破棄を検討するような事態には全く至っていません。日米安保は米国にとっても実は大変有意義なのです。日本の基地があるから、米軍の艦隊は西太平洋からペルシャ湾までの広い海域で活動できるのです。

横須賀基地を使えなければ、米国の空母は点検・修理のために遠路、米国西海岸の基地まで帰らなければならなくなります。しかも日本は年間約2000億円もの「思いやり予算」で米軍の駐留を助けています。米軍が日本以外に点検・修理の拠点をつくるということになれば、莫大な投資が必要になります。だからこそ、トランプ自身も、破棄は考えていないと付言しています。

日本にとっても、日米安保は非常に有意義です。いくつかの基地を提供し、思いやり予算を付けることで、世界最強の米軍を後ろ盾(抑止力)として保持できるのです。これにより、日本のタンカーを攻撃することは、即米国に攻撃を与えたものとみなされるので、そのようなことを敢えてすることなどあり得ないです。だから、石油の輸送路も安泰です。

もう1つ、日本は経済で米国市場への依存性が強いため、対米貿易黒字の約620億ドルがないと、日本は約360億ドルの貿易赤字になってしまいます(2017年)。安保面での日本の選択肢も限られることになります。つまり日本が「自分は中立だから」と言って、米国による中国等への制裁に加わらないと、自分自身が制裁を食らって米国市場を閉じられたり、ドル決済ができないようにされ、経済的存立の道を閉ざされてしまうことになりかねません。

トランプ氏の車列に中指立てて解雇された米女性、地方選立候補で再チャレンジ

では日本はどうすべきなのでしょうか。トランプの言動の多く、特に過激な言動は、大統領選挙で再選されることを目的としています。つまり日本を脅しつけて「何か」日本から獲得したことを、選挙民に示したいのです。それも、大統領選挙が本格化する前、年内くらいには欲しいところでしょう。

そうであれば、あまり正面から考え込まず「何か目立つ」成果を日本の役にも立つ形で作れば良いのです。安保面では「日本を守るために作戦中の米軍を自衛隊は守る」こと、つまり集団的自衛権を日本が行使することをアメリカにもっと明確に伝えるのです。

14年の閣議決定でこの点は可能になったのですが、さまざまな但し書きが付いているため、米国はどういうときに自衛隊に守ってもらえるのか理解できないでしょう。

次にホルムズ海峡がこれからずっと危険になることはないとは思いますが、自衛隊の護衛艦は既にアフリカのジブチを根拠地としてアデン湾で海賊対策をしているのですから、ホルムズ海峡にまでその活動範囲を広げれば良いです。中国やインドにも呼び掛けて、ホルムズ海峡を守る国際構想を日本が示せば、それは米国での日本のイメージを一変させることになります。

思いやり予算も増額が必要でしょう。2000億円は一見多額に見えるますが、米国防費6391億ドル(約71兆円、18年度)に比べるとインパクトは弱いです。ただ日本は思いやり予算増額の見返りを米国に要求するべきです。日本が米国から戦闘機などの兵器を購入する際、技術情報を米側がもっと開示し、日本が事故防止や部品生産ができるようにしてもらうべきです。そうして北朝鮮などの核ミサイルを抑止する手段をもっと整備してもらうべきです。

「日本を守る米軍を自衛隊は守らない」という不公平や、安保における対米依存は、米国に押し付けられたものではありません。日本が集団的自衛権の行使を自らに禁じていたため生じた結果であり、自縄自縛(じじょうじばく)なのです。

日本は現行の「日本国憲法」のもとで、「国防」は米国に委ねて、自衛隊は米軍を補助して「防衛」に当たることになっています。米国が日本の国防の主役であって、日本は傍役にしか過ぎないのです。

日本国民は非常の場合には、どんな場合でも協力な米国が守ってくれると思い込んでいるようですから、国防意識が低いです。

緊張が高まっているのは、日本がある東アジアだけではないです。ヨーロッパでは、いつロシア軍がバルト三国や、北欧を奇襲するか、緊迫した状況が続いています。中東も予断を許さないです。もし、イランがペルシャ湾の出入り口を封鎖すれば、米軍が出動するでしょう。

そうして当の米国は、はもはや同時に二正面で大規模な作戦を実行する能力を持っていません。もし、不測の事態が生じて、米軍の主力がアジア太平洋からヨーロッパか、中東に移動せざるをえなくなった場合、日本の周辺は手薄になります。それこそ、「トランプ・ドクトリン」に従って、日本の防衛は二の次ということになるかもしれません。

その機に乗じて、中国やロシア、北朝鮮が本格的に日本に侵略してくるか、そこまでもいかなくても、揺さぶりをかけてくるのは必定です。揺さぶりならあの韓国も当然かけくるでしょう。そのようなときに、日本はこれらの要求に屈服せざるを得なくなる立場になるでしょう。

今まで米国に守られて平和だった日本は、平和ボケでそのような経験はなく、日本は、恥辱に塗れることになるかも知れません。そのようなことは、日本人にとっては、久しくなかったことなので、多くの日本人が強い強い憤りを覚えることになるかもしれません。


そうなってしまってからでは、手遅れです。日本が平和を享受し続けるためには、国防に真剣に取り組まねばならないのです。

憲法を改正して、自衛隊を他の先進国と同じような軍として扱えるようにすること、世界中のほとんどの国では当たり前の、自国は自国の軍隊で守れるようにすることを急がなければならないです。

トランプ大統領の圧力を良い機会として日米安保を破棄するのではなく、もっと公明正大なものとし、それによって対米依存度を減らし、日本人としての自尊心も回復すべきです。

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2019年9月1日日曜日

米国、米韓同盟破棄を真剣に検討か―【私の論評】韓国はいまのままなら文によって、日米を蔑ろにしつつ、相手にされてもいない北や中国に秋波を送り続けることになるだけ(゚д゚)!

米国、米韓同盟破棄を真剣に検討か

韓国はもはや味方にあらず、日米豪印同盟に舵切る米政権


「韓国は米軍のリスクを増大させた」

 韓国の文在寅政権による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄のショックが冷めやらぬ中、ドナルト・トランプ米大統領と安倍晋三首相がフランス南西部ビアリッツで会談した。

フランス南西部ビアリッツで会で会談をしたトランプ米大統領と安倍首相

 会談後の政府高官によるブリーフィングによると、両首脳は日米韓連携の重要性は確認したものの、GSOMIA破棄に関するやりとりはなかったという。

 首脳会談内容のブリーフィングではこうした「ウソ」はままある。

 筆者の日米首脳会談取材経験から照らしても、首脳会談後のブリーフィングがすべて「包み隠さぬ事実」だったためしがない。

 オフレコを条件に米政府関係者から話を聞いたという米記者の一人は筆者にこうコメントしている。

 「(文在寅大統領の決定に対する)トランプ大統領の怒りは収まりそうにない。それを安倍首相にぶつけないわけがない」

 「ただ、憤りはちょっと置いておいて、当面文在寅大統領の出方を静観することで2人は一致した。大統領は『韓国に何が起こるか見守る』とツィートしているのもそのためだ」

 だが、日米首脳会談の直後、「伏せた部分」はほぼ同時刻、モーガン・オータガス米国務省報道官が公式ツィッター上で意図的に(?)「代弁」している。

 「韓国政府のGSOMIA破棄決定に深く失望し懸念している。これは韓国を守ることをさらに複雑にし(more complicated)、米軍に対するリスク(risk)を増大させる可能性がある」

 米国務省は22日、同趣旨の報道官声明を出している。今回は韓国の決定が「米軍に対するリスクの増大の可能性」にまで言及した。ダメを押したのだ。

平気でウソをつく文在寅政権

 米国の怒りようは半端ではない。

 米政府高官たちが怒っているのは、文在寅大統領のブレーンにあれほど「破棄するな」と要求していたにもかかわらず、しらっと破棄に踏み切ったからだけではない。

 発表に際して、文在寅政権の高官でこの問題の最高責任者がぬけぬけと嘘をついたからだ。

 金鉉宗・国家安保室第2次長だ。

 タイトルから見ると偉そうに見えないが、韓国人記者によれば「ニクソン政権時代のヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官のような存在」らしい。

 今年6月の時点からワシントンを訪問し、日韓間の確執について文大統領の言い分をトランプ政権高官に直接説明に来たのはこの人物だ。

 金鉉宗第2次長は、韓国人記者団にこうブリーフィングした。

 「米国は韓国にGSOMIA延長を希望した。米国が表明した失望感は米側の希望が実現しなかったことに伴うものだ」

 「外交的な努力にもかかわらず、日本から反応がなければGSOMIA破棄は避けられないという点を米国に持続的に説明した。私がホワイトハウスに行き相手方に会ったときにも、この点を強調した」

 「またGSOMIA破棄の決定前には米国と協議し、コミュニケーションを取った。米国に(韓国の決定についての)理解を求め、米国は理解した」

 この発言に米政府高官は直ちに反論した。

 「韓国政府は一度も米国の理解を求めたことはない」

 別の政府高官は韓国通信社ワシントン特派員に対して厳しい表現でこう述べている。

 「これはウソだ。明確に言って事実ではない。米国政府は駐米韓国大使館とソウルの韓国外務省に抗議した」

 外交儀礼として相手方の大統領府高官の発言を「ウソだ」と言うのも異例なことだ。

http://www.koreaherald.com/view.php?ud=20190823000106
https://www.asiatimes.com/2019/08/article/us-verbal-broadside-at-seoul-over-axing-of-pact/

 「文在寅は長年にわたって築いてきた米国家安全保障体制をぶち壊した」

 ワシントン駐在の外交官たち(無論その中には韓国大使館員たちも含まれる)にとっては「虎の巻」ともされている米外交政治情報を流すニューズレターがある。

 購読料が高いので一般の人の目にはとまらない(筆者は米政府関係筋から間接的に入手することができた)。

 米政権中枢の極秘情報を提供する「ネルソン・リポート」だ。

 同リポートは韓国政府の決定直後の米政府高官・元高官の露骨なコメントを記している。さすがに主要メディアはそこまでは報じない、歯に衣着せぬコメントばかりだ。

トランプ政権高官:
 「文在寅という男は本当に阿呆(Fool)。どうしようもない」

駐韓国大使館で高位の外交官だった人物:

 「文在寅は戦略的痴呆症(Strategic stupidity)と言い切っても過言ではない」

米情報機関で朝鮮半島を担当した専門家:

 「文在寅の決定は愚かで誤り導かれた決定(Foolish and misguided decision)以外のなにものでもない」

 「後世の史家は、こう述べるに違いない。『この決定は何十年にもわたって築き上げられてきた北東アジアにおける米国の安全保障の中枢構造が終焉する、その始まりを暗示するシグナルだった、と』」

別の米外交官OB:

 「文在寅という男は、韓国に対する安全保障上の脅威(Security threats)はどこから来ると思っているのか、全く分かっていない」

 「コリア第一主義(Korea First Tribalism)に凝り固まった衆愚の知恵(Wisdom of the crowd)としか言いようがない」

「日米韓三角同盟よ、さようなら」
「日米豪印同盟よ、いらっしゃい」


 GSOMIA破棄決定を受けて米国は今後どう出るのか。

 短期的には北朝鮮のミサイル情報収集としては、2014年に締結された日米韓の「軍事情報共有協定」(TISA)がある。これまでGSOMIAと並行して機能してきた。

 同協定に基づき、米国を介した日韓間の情報交換は今後も継続させるというのが米国の方針だ。

 GSOMIAもTISAも何も北朝鮮のミサイル情報だけを扱っているわけではない。むしろもっと重要なのは中国やロシアの動向をチェックすることかもしれない。

 日米軍事情報の共有は今後さらに強化されるだるう。米国は韓国から得た情報をこれまで以上に迅速に日本に流すことになるだろう。

 国防総省関係筋はこう指摘している。

 「米国は文在寅大統領は信用しない。だが、韓国軍は信用している。つき合いは文在寅大統領とのつき合いよりも何十倍も古い」

 「先の米韓共同軍事演習も文在寅大統領の反対を押し切って実施した。それを阻止できなかったから北朝鮮は文在寅大統領を口汚く罵った」

大幅な米軍駐留費分担増要求へ

 韓国政府は、GSOMIA破棄決定を踏まえて今後米韓二国間の安全保障関係を一層強化すると宣言している。

 米国にとってはいい口実ができた。直近の対韓要求は2つある。

 一つは、駐韓米軍駐留費問題(SMA)。

 米韓問題を専門とするダニエル・ピンクストン博士(トロイ州立大学国際関係論講師)は米国はこの問題で高圧的になるとみている。

 「米軍駐留費協定交渉は昨年末以降中断したまま。韓国側は年間10億ドルを分担するとしているが、トランプ政権はその5倍、50億ドルを要求してくるといわれている」

 「協定だから議会の承認が必要だ。来年4月には選挙がある。それまでに協定に合意できなければ、駐留費問題は選挙の最大のアジェンダになってしまう」

https://www.nknews.org/2019/08/what-south-koreas-termination-of-the-gsomia-means-for-north-korea-policy/

 文在寅大統領としては米韓の隔たりを埋めて、穏便に年内に決着させたかったところだが、GSOMIA破棄決定で米国の怒りを鎮めるには米側の法外な要求も受け入れざるを得なくなってきているわけだ。

 もう一つはイランによる外国籍タンカーへの威嚇行動で生じた危機管理問題だ。

 中東ホルムズ海峡を航行する船舶の安全を確保する米主導の「有志連合構想・海洋安全舗装イニシアティブ」への参加協力要請だ。

 ホルムズ海峡は日本同様、韓国にとっても中東からのシーレーン確保の要だ。

 コリア第一主義の大衆ナショナリズムは一歩間違えば、反日から反米に点火する危険性を帯びている。文在寅大統領としても何が何でも米国の言うことを聞くわけにはいかない。

 米国にとっては、長期的にみると、これから5年、10年後の韓国をどうとらえるべきか、という重要懸案がある。

 中国が推し進めている「一帯一路」路線に対抗する米国の「インド太平洋戦略」の中核となる同盟国の構成をどうするか、だ。

 米国内には「韓国は外すべきだ」という主張が台頭している。早晩、韓国は「あちら側」つまり中国サイドにつくと見ているのだ。

 トランプ政権内部ではすでに「韓国抜き」の「インド太平洋戦略」が動き出していると指摘する専門家もいる。

 日本、豪州、インドという準大国を同盟化するというのだ。

 特に経済通商上の理由から米国と中国とをある意味で天秤にかけてきたオーストラリアは、スコット・モリソン政権発足と同時に米国に超接近し、米国の考える「インド太平洋戦略」の構築に積極的になってきたからだ。

http://www.iti.or.jp/kikan114/114yamazaki.pdf

豪ダーウィン港湾に軍用施設建設へ

 その事例がすでにある。

 マイク・ポンペオ米国務長官とマーク・エスパー国防長官は8月、オーストラリアを訪問し、米豪初の国務・国防閣僚による「2プラス2」協議で同盟強化を再確認している。

https://www.theguardian.com/world/2019/aug/04/mike-pompeo-urges-australia-to-stand-up-for-itself-over-trade-with-china

 米軍の豪州駐留永久化だ。

 米国はこれまでオーストラリア北部のダーウィンに近い豪州陸軍基地に米海兵隊を乾期だけに配備してきた。

 この港湾にワスプ級揚陸艦(LHD)が着艦可能な軍用施設を建設することを決めたのだ。すでに総工費2億1150万ドルが計上されている。

 ダーウィン港湾の管理権は15年以降、中国大手「嵐橋集団」(ランドブリッジ)が99年間貸与する契約を結んでいる。当時、中豪協力のシンボルとして騒がれた。米政府は強く反発していた。

 「嵐橋集団」のトップ、葉成総裁は人民政治協商会議の代表。中国共産党とも太いパイプを持っており、ダーウィン港湾管理権貸与の背景には対米抑止力の一翼を担う狙いがあるとされている。

 同港湾に米軍が軍用施設を建設するというのは、小さな一歩かもしれないがシンボリックな意味合いを持っている。

 米国とインドとの関係も直実に同盟化のロードマップに沿って動いている。

https://www.washingtonexaminer.com/opinion/our-most-important-alliance-in-2019-will-be-with-india-but-two-other-big-foreign-policy-opportunities-await

 オバマ政権で国務省コリア部長(韓国と北朝鮮を担当)確認だったミンタロウ・オバ氏はこう指摘する。

「GSOMIA破棄決定に米政府はこれ以上ないほどのネガティブに反応している。オバマ政権が将来を考えて編み出した協定だったからだ」

「当時関係者は『これは北東アジアにおける米安全保障体制にとっての聖杯*1(Holy Grail)だ』と言っていたくらいだ」

*1=イエス・キリストがゴルゴタの丘で磔刑された際に足元から滴る血を受けた杯。「最後の晩餐」の時にキリストの食器として使われたとされる。この杯で飲むと立ちどころに病や傷が癒され、長き命と若さを与えられるとされてきた。

 「ワシントンの多くのアジア関係者は日韓関係に赤信号が灯り始めたと見ている。韓国は今後その戦術展開の幅を狭くしてしまった」

 ワシントンの外交安保専門家たちから見ると、GSOMIA破棄で完全に米国を怒らせてしまった韓国はもはや「米国の同盟国」ではなくなってしまったようだ。

【私の論評】韓国はいまのままなら文によって、日米を蔑ろにしつつ、相手にされてもいない北や中国に秋波を送り続けることになるだけ(゚д゚)!

トランプ米政権は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が米政府の説得を振り切って日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄し、日韓の対立を安全保障分野に持ち込んだことで、文政権への怒りと不信を募らせています。

South Korea Flag Bikini 

協定の破棄で今後、ほんど日本には悪影響はないとともに、韓国のほうが悪影響があるともされていますが、それは情報のやりとりに関してのみいえることであり、信頼関係が大きく毀損されたことは間違いありません。

日米韓関係筋によると、トランプ政権は韓国が実際に協定破棄を強行するとは事前に認識していなかったとされ、完全に虚を突かれた形となりました。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は22日、トランプ政権高官の話として、韓国政府は米政権に対し、協定破棄の意思はないとの態度を事前に示していたと伝えました。

政権高官は「韓国のこうした行動は、文政権が米国などとの集団的安全保障に真剣に関与していく意思があるのか、根本的な疑問を生じさせるものだ」と述べ、韓国の同盟軽視の姿勢を痛烈に批判しました。

政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)のビクター・チャ上級顧問は「協定は北朝鮮の行動に関する日米韓の情報共有を円滑化させてきた」と意義を説明。協定破棄は「米国の同盟システムと対立する北朝鮮や中国、ロシアを利するだけだ」と警告しました。

CSISのビクター・チャ上級顧問

日本にとっては協定破棄で今後、北朝鮮の弾道ミサイルに対する早期警戒能力が低下する恐れはありません。それはつい先日、北朝鮮から短距離ミサイルが発射されたとき、日本のほうがそれをいち早く発表しました。過去の韓国側からの北のミサイル発射情報においては、誤りも多々あり、日本側の公表の後に訂正ということもしばしばありました。

そもそも、韓国は人工衛星がないという点からも、日米から比較すると情報収集能力は格段に劣っています。

しかし、GSOMIA破棄に関して、最も恐れるべきは、今回の行動は明らかに北朝鮮や中国に利する行動であり、そのような行動をとった韓国は信用することなどできません。

韓国から米国への情報に意図的な偽情報が流され米国の国益が直接脅かされる事態となることも考えられます。さらに、その偽情報が米国から日本にもたらされる可能性も否定できません。今後、日米韓連携に加え米韓同盟も弱体化するなどの甚大な影響が出るのは確実です。

北朝鮮のミサイル情報をめぐっては、2014年に締結された日米韓の「情報共有に関する取り決め」(TISA)に基づき、日本と韓国が保有する情報を米国を介して共有する枠組みがあります。

しかし、明らかに北朝鮮や中国に利するような行動をした韓国に関しては、日米ともいつ寝首を搔かれることになるかわからないと考えるのは当然のことです。特に在韓米軍にはそのような危機があるということです。

だからこそ、トランプ政権も安倍政権もこの事態に激怒しているのです。問題は、韓国から情報が入らなくなるなるという程度の些細な問題ではなく、はるかに大きなものなのです。

このブログでは、過去に何度か指摘してきたように、日米、中露、北朝鮮のいずれの国も、朝鮮半島の現状を維持を望んでいます。

日米にとって朝鮮半島に起こり得る最悪の事態は、中国の影響力が朝鮮半島全体に及ぶことです。中露にとっての朝鮮半島の最悪の事態は、韓国ベースで朝鮮半島が統一されてしまうことです。

日本のメディアなどは、韓国を他国が欲しがると言う前提で論じていますが、北朝鮮ですら欲しがらないという現実があります。周辺国が皆要らないと言う視点を持って考える方が現実的です。

金正恩は、南北統一 をしたいなどと望んでいません。金正恩にとっての最優先課題は金王朝の継続なのです。それを前提に考えれば、北は南北統一を望んでいないわけです。北朝鮮は歴代の大統領の末路を良く知っています。南北統一後の朝鮮の大統領になるというのは自分の死刑執行にサインするのと同じようなものです。

それでなくても、南北を統一すれば、幼い頃からチュチェ思想を叩き込まれ、金王朝を尊敬するように仕向けられた北朝鮮人民のほかに、チュチェ思想とは無縁で、金王朝に対する尊敬心など全くない韓国人が北朝鮮領内にも大量に入ってくることになります。

そんなことは、金正恩は、許容できません。さらに、文在寅をはじめ朴槿恵等、朝鮮半島から数十年を経た韓国では、中国に従属しようという行動が目立ちました。これも金正恩には耐え難いことです。

金正恩は、中国の干渉を蛇蝎のごとく嫌っています。それは、中国に近いといわれていた金正恩の叔父であった、張 成沢(チャン・ソンテク)を処刑したことでも、はっきりしています。

さらに、中国に近いとされた、実の兄の、金正男氏を暗殺したことでも、明白です。両者の殺害、ならびにその後の北朝鮮内の中国に近い筋の幹部などの処刑は、北朝鮮内の親中派を震え上がらせたことでしょう。

このように、金正恩が中国を蛇蝎のごとくに嫌っているという事実と、北の核が結果として、中国が朝鮮半島全体に浸透することを防いでいます。

だからこそ、トランプ大統領は北が短距離ミサイルを発射してもほとんど苦言を呈することはありません。北朝鮮の短距離ミサイルは、米国にとっては脅威ではなく、北朝鮮と国境を直接接している中露にとっては脅威だからです。

にもかかわらず、金正恩が文在寅の南北統一等呼びかけに、快く応じてみせたのは、当初は米国への橋渡しを期待したのと、制裁破りや、制裁の緩和を望んでいたからでした。

しかし、鈍感な文在寅は、文在寅への呼びかけに快く応じたので、すっかり舞い上がってしまったのです。しかし、米国との応対が自らできるようになった現在では、文在寅への対応は厳しいものに変わってしまいました。

金正恩と文在寅

南北統一など文在寅の妄想に過ぎないのです。しかし、その妄想に浸りきった文在寅は、今でもその妄想から冷めることができず、北朝鮮や中国に秋波を贈り続け、挙げ句のはてに、GSOMIAを破棄してしまつたのです。

政策研究機関「新米国安全保障センター」(CNAS)のエリック・セイヤーズ非常勤上級研究員は米軍系軍事誌ディフェンス・ニューズに対し、協定は日米韓が今後、ミサイル防衛や対潜水艦作戦など幅広い分野で連携を進めていくための基盤に位置づけられていたと指摘し、韓国による破棄決定で同盟強化の取り組みは「元のもくあみとなった」と批判しています。

こうなると、韓国は文在寅を放逐するか、いまのまま文在寅によって、日米をないがしろにしつつ、北朝鮮や中国にまともに相手にされていないにも関わらす、秋波を送り続けることになるだけです。それは、韓国に何の利益ももたらしません。

そうなれば、在韓米軍の撤退ということになます。その時には、このブログでも何度か掲載したように、米国ならび日本を含む同盟国が、韓国から人や資産を引き上げたり、韓国に築いた様々なシステム(金融その他)や組織等を破壊、すなわち経済的焦土化をして韓国から引き上げることになります。米国は、習近平や金正恩の敵に塩を送るような真似はしません。

その時になっても、北朝鮮が韓国に手を差しのべることはありません。それは、中国もロシアも同じことです。この三国は、経済的にも余裕はないし、韓国に対して何の恩義も感じていません。むしろ、北朝鮮は韓国人難民が押し寄せないように38度線の守りを強化するでしょう。

中国も、ロシアも、船や航空機で押し寄せる難民を受付ないでしょう。無論日本だって受け付ける必要はないのです。ただし、領海の警備を強化することになるでしょう。日本に漂着した難民はすべて韓国に強制相関すようにすべきでしょう。

今年とはいいませんが、いよいよになれば、米国と協調しつつ、10月から12月頃に韓国の経済焦土化をするべきです。冬の日本海は一番厳しいので、1番の防護壁になります。そうして、次の年の春までに領海の警備を強化するようにすれば良いのです。

これには、在日米軍も多数の難民が日本に押し寄せれば、身動きがとれなくなるし、中には武装難民もいるかもしれないので、日本に協力することになるでしょう。

ただし、韓国が経済焦土化されず在韓米軍のほとんどが撤退するという道もあります。それは、韓国が米国中短距離核ミサイルの発射上になるという条件を飲めば、そうなります。

無論、発射を担当するのは米国です。そうなれば、朝鮮半島の軍事バランスは崩れます。北朝鮮の核の脅威は半減することになります。ただし、韓国が通常兵力で攻撃された場合は、核ミサイルではなかなか対応できず、日本からの在日米軍が日本からの許可を受けて韓国を助けることになります。そうなると、対応は後手にまわるしかありません。

これらはワーストシナリオですが、文在寅を今のまま放置しておけば、このような結果になる可能性がかなり高まります。韓国国民の賢明な判断に期待したいところです。

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2019年1月27日日曜日

米国務長官、タリバンとの協議で「進展」 米軍のアフガン撤収に「真剣」―【私の論評】ドラッカー流マネジメントの観点からも、戦略的な見方からも、米国が中国との対峙を最優先する姿勢は正しい(゚д゚)!


ポンペオ米国務長官のツイート

ポンペオ米国務長官は26日、アフガニスタン情勢に関しツイッターで「米国は和平を追求し、アフガンが今後も国際テロの空間とならないようにするとともに、(米軍)部隊を本国に帰還させることを真剣に考えている」と述べ、将来的にアフガニスタン駐留米軍を順次撤収させていく考えを示した。撤収開始の時期などについては明らかにしなかった。

 米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表は21~26日にカタールのドーハでアフガンのイスラム原理主義勢力タリバンと和平協議を実施。現地からの報道では、双方は米軍撤収に関し一定の合意に達したとされるが、ポンペオ氏は「協議では和解に関し重要な進展があった」としたものの、米軍撤収に関する合意には言及しなかった。

米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表

 ポンペオ氏はまた、和平に関し「アフガン政府および全ての関係当事者と一緒に取り組んでいる」と指摘。「米国はアフガンの主権と独立、繁栄を目指す」とも語り、不完全な合意で情勢を不安定化させないよう慎重に協議を進める立場を打ち出した。

 一方、ハリルザド氏もツイッターで「近く協議を再開する」とした上で、「多くの取り組むべき課題が残されている。関係当事者間の対話と包括的停戦を含む全ての課題で合意できなければ合意にはならない」と強調した。

 ロイター通信などによると、今回の協議では和平合意が成立してから16カ月以内に米軍がアフガンから撤収を始めることで一致したとされるが、ハリルザド氏の発言は米軍撤収の議論が先行することにクギを指す狙いがあるとみられる。

【私の論評】ドラッカー流マネジメントの観点からも、戦略的な見方からも、米国が中国との対峙を最優先する姿勢は正しい(゚д゚)!

米国とアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)は26日、17年以上にわたるアフガン紛争の終結を目指す和平協議で、いくつかの争点が残っているものの、大きく前進したと発表しました。

米国のザルメイ・ハリルザド(Zalmay Khalilzad)アフガン和平担当特別代表はカタールで、タリバンの代表団と6日間という異例の長さの和平協議を行っていました。ハリルザド氏はアフガン生まれ。ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)元米政権下の外交で重要な役割を果たしました。

ハリルザド氏はツイッター(Twitter)に「ここでの協議は、これまで行われてきたものよりも実りが多かった。重要な諸問題で著しい進展があった」と投稿しました。アフガンとその重要な近隣諸国で協議を行ってからカタール入りしたハリルザド氏は協議後、アフガンの首都カブールに戻り、今回の協議の成果について説明することになっています。

合意案の詳細は明らかにされていないですが、タリバンが外国の過激派をかくまわないと保証することと引き換えでの米軍撤収も含まれているとの観測が出ています。米軍事介入のそもそもの原因は、タリバンが外国過激派をかくまったことでした。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド(Zabihullah Mujahid)報道官は、協議で「進展」があったと認める一方、停戦やアフガン政府との協議に関する合意があったとの報道は「事実ではない」と述べました。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド(Zabihullah Mujahid)報道官

しかし、タリバンのある幹部は協議後、匿名を条件にパキスタンからAFPの電話取材に応じ、「米国はわれわれの要求の多くを受け入れた。双方は重要な点に関してかなりの合意に達した」「まだ意見の一致を見ていない問題で妥協点を見いだす努力が続いている。アフガン政府も関与している」と述べ、協議の先行きに楽観的な見方を示しました。

米国はアフガニスタンからも撤退しそうですが、ではなぜこのようなことを米国はするのでしょうか。これには、様々な憶測が飛び交っていますが、私はやはりトランプ氏の意向がかなり反映していると思います。

長い間企業家の道を歩んで、失敗や成功を数々積み重ねてきたトランプ氏は、既存の政治家や、軍人とは異なる考え方をします。その最たるものは、物事に優先順位をつけるということでしょう。

経営学の大家であるドラッカー氏は優先順位について以下のように語っています。
いかに単純化し組織化しても、なすべきことは利用しうる資源よりも多く残る。機会は実現のための手段よりも多い。したがって優先順位を決定しなければ何事も行えない。(『創造する経営者』)
トランプ政権にとって最大の優先課題は、やはり中国です。中国の体制を変えるか、体制が変えられないなら、経済的に他国に影響を与えることができないほどに中国の経済を衰退させることです。

経済の指標としては、現在のロシアあたりを念頭においているかもしれません。ロシアの現在のGDPは最新の統計では韓国と同程度の規模です。そうして、これは東京都と同程度の規模です。

これでは、いくらロシアのプーチンが力んで見せても、どうあがいても米国の敵ではありません。最早、NATOともまともに対峙することはできないです。ただし、旧ソ連からの核兵器や軍事技術などを引き継いでいるのは現ロシアなので、その点では確かに侮ることはできないですが、GDPがこの程度の規模のロシアには、できることは限られています。

とはいいながら、やはりロシアは侮れません。油断すれば、米国はウクライナでの失敗を繰り返すことになります。

ロシアと中国の両方と対峙するべきと主張していたのが、先日国防長官を辞任したマティス氏です。

しかし、考えてみてください、中国とロシアの両方に対峙し、さらにアフガン、シリア、イラクなどで戦っている状況は、優先順位というものを考える人間からすると、これでは戦える戦も負けてしまうと考えるのが普通です。これは、戦中の日本を彷彿とさせます。

トランプ氏は、実際に米国の大統領の立場に立ち、米国の軍事力や経済力の現実を知り、その上で今一度米軍の安全保障政策をみると、実務家のトランプ氏はこれでは到底、米国はいずれの戦線でも勝つことはできないと考えたに違いありません。

いまや世界で唯一の超大国米国にも、限界があります。第二次世界大戦時には米国も総力戦となり、米国だけではなく、多数の連合国とともに戦いました。だから、ドイツと日本と同時に戦うことができました。しかし、現状はそのようなことはなく、ほとんどが米国の負担によってすべての戦線で戦わければならないのです。

それは、到底不可能で、現状のままであれば、米国は勝てる戦争にも勝てないとトランプ氏は考えたのでしょう。だからこそ、先日はシリアからの撤退を決めたのです。そうして、今度はアフガニスタンからの撤退を決めたのでしょう。

ドラッカー氏

ドラッカー氏は優先順位について、さらに以下のように語っています。「誰にとっても優先順位の決定は難しくない。難しいのは劣後順位の決定。つまり、なすべきでないことの決定である。一度延期したものを復活させることは、いかにそれが望ましく見えても失敗というべきである。このことが劣後順位の決定をためらわせる」。

トランプ氏はシリア問題やアフガニスタン問題に関しては、劣後順位が高いと考えたのでしょう。

シリアについては、以前もこのブログで述べたように、反政府勢力が勝っても、アサド政権側が勝っても米国に勝利はありません。反政府勢力が、米国の味方などという考えは間違いです。もし反政府戦力が勝てば、反米政権を樹立するだけです。

このあたりについては、他の記事で挙げています。一番下の「関連記事」のところにリンクを掲載しておきますので、興味のあるかたは当該記事をご覧になってください。

この混乱したシリアに関しては、トルコがこれに介入すると名乗りをあげたので、トランプ氏としてはトルコに任せるべきと判断したのでしょう。そうして、イラクには米軍を駐留させ続けながら、シリアからは撤退する道を選んだのでしょう。

アフガニスタンに関しては、17年間も紛争が続いているのにもかかわらず、未だに米国は勝利を収めていません。これ以上米軍が関与しても、米国が勝利を収めることはできないでしょう。もっと上位の問題を解決しないとこの紛争は本質的に解消しないとトランプ氏は考えたのでしょう。であれば、暫定政権を支援しつつアフガニスタンからは撤退すべきなのです。

優先順位の分析については多くのことがいえます。しかしドラッカーは、優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気だといいます。彼は優先順位の決定についていくつかの原則を挙げています。そしてそのいずれもが、分析ではなく勇気にかかわる原則です。

 第一が、「過去ではなく未来を選ぶこと」である。 

 第二が、「問題ではなく機会に焦点を合わせること」である。

 第三が、「横並びでなく独自性を持つこと」である。

 第四が、「無難なものではなく変革をもたらすものに照準を当てること」である。

そうして、ドラッカー氏は、優先順位について以下ような結論を述べています。
容易に成功しそうなものを選ぶようでは大きな成果はあげられない。膨大な注釈の集まりは生み出せるだろうが、自らの名を冠した法則や思想を生み出すことはできない。大きな業績をあげる者は、機会を中心に優先順位を決め、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見る。(『経営者の条件』)
今一度、アジア情勢でこの結論をあてはめてみると、米国にとって最大の機会は、中国の覇権主義を封じることです。今や一人あたりのGDPはまだまだの水準ですが、国としてGDPは中国は世界第二の水準になりました。これについては、実際ははるかに小さくてドイツ以下であろうとみるむきもあります。

ただし、それが事実であろうが、なかろうが、ロシアなどよりははるかに大きく、現在は米国が問題を抱える国としては、中国が最大です。

であれば、中国との対峙を最優先にあげることは、ドラッカー氏の結論にも適合しています。そうして、中東の問題や、北朝鮮、韓国の問題なども、そうしてロシアの問題もこの優先順位の高い中国の対峙という問題に比較すれば、決定要因ではなく制約要因にすぎないと見るべきなのです。

実際、中国の問題が解消できれば、北朝鮮問題や韓国の問題など簡単に解決できるでしょう。ほとんど何もしなくても半自動的に解消されるかもしれません。ロシアとの問題も解消できるかもしれません。

米国が、第一次冷戦ソ連に勝利し、第二次冷戦でも中国に勝利すれば、ロシアは米国に対峙することはためらうことでしょう。それよりも良好な関係を継続したいと考えるようになるでしょう。

その後は、ロシアか中東が米国にとっての最優先課題になるのかもしれません。しかし先にも述べたように、ロシアは今やGDPは東京都より若干少ない程度ですし、中東諸国もそのロシアよりも下回る程度に過ぎません。

こうして、考えるとやはり米国が中国との対峙を最優先するのは当然のことです。そうして、超リアリストの 政治学者であるミアシャイマー氏やこのブログにも度々登場する、世界一の戦略家ともいわれるルトワック氏は、 「ロシアと組んで中国を封じ込めろ」と主張しています。

ミアシャイマー氏

そして、ルトワック氏は、米ロが直でつながるのは難し いので、 「日本が米国とロシアをつないでくれ」 といっているのです。 そして、彼は日本がロシアに接近することを勧めています。 ロシアとつながることが、日本がサバイバルできるかどう かの分かれ目だととも語っています。

安倍総理がプーチンとの会談を重ねているのも、領土問題そのものよりも米国とロシアとの橋渡し役が多いのかもしれません。米国といえども中国とロシアを同時には戦えません。そのためにはロシアと中国を組ませない工作が必要です。シリアからの撤退もその一つかもしれません。

このように経済学の大家ドラッカー流の考え方でも、国家戦略の大家からみても、やはり米国は中国との対峙を最優先として、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見るべきなのです。

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