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2020年5月1日金曜日

コロナ・ショックは「リーマン級危機」以上では? 消費税減税の大義名分、国民の命と経済を優先すべきだ ―【私の論評】危機の時こそ、人々の本質・地金が出てくる、すでに財務省は中共と同じく表舞台から退場しつつある(゚д゚)!

コロナ・ショックは「リーマン級危機」以上では? 消費税減税の大義名分、国民の命と経済を優先すべきだ 
高橋洋一 日本の解き方

安倍首相

安倍晋三首相はこれまで、消費増税を見送る条件として、「リーマン・ショック級の危機」を挙げてきた。今回のコロナ・ショックは、まさにリーマン級危機ではないのか。

消費税については、長い経緯がある。1989年4月、当時の竹下登内閣が税率3%として初めて導入した。その後、村山富市政権時の94年11月に税制改革法案が成立し、橋本龍太郎政権の97年4月に税率は5%に引き上げられた。

その後、消費税率は5%のままであったが、2012年8月の民主党の野田佳彦政権時、14年4月に8%、15年10月に10%にそれぞれ引き上げる消費増税関連法が成立した。

安倍政権になって14年4月に予定通りに8%に引き上げられた。ただし、その後経済が低迷したために、安倍政権は14年11月、10%への引き上げ開始時期を17年4月まで1年半延長。さらに16年6月には、19年10月まで2年半延長した。1回目の延長の際には、その直後総選挙を行った。2回目の延長は北海道・洞爺湖サミットにおいて表明された。

19年10月の10%への引き上げは実施されたが、その際、安倍首相は「リーマン・ショック級の危機があれば見送るが、そうでなければ予定通り」としてきた。

10%への増税後、19年10~12月期国内総生産(GDP)は年率7・1%減だった。これだけでもかなりの経済ショックであるが、その上、2月下旬からはコロナウイルスによる内外での経済ショックがあり、さらに急速に景気が落ち込んでいる。

政府の景気判断は、月例経済報告を読めばわかる。2月まで「緩やかに回復」としていたが、3月にはさすがに「大幅に下押しされている」に引き下げた。4月は、「急速に悪化しており、極めて厳しい状況」とさらに引き下げた。

リーマン・ショック後の09年2~4月においてすら「急速な悪化が続いており、厳しい状況」という表現であり、今回の景気判断は、その当時よりも厳しい認識となっている。西村康稔経済再生相も「家計や企業の経済活動が急速に縮小する過去に例を見ない、極めて厳しい状況だ」と述べた。

これで、政府としても、今回のコロナ・ショックは、「リーマン・ショック級以上」と言わざるを得ない状況だ。

内需の過半を占める個人消費は、判断を2カ月続けて引き下げ、「急速に減少している」とした。20年1~3月期GDPは年率5%程度減、4~6月期も年率10%程度減となると国内エコノミストは見込んでいる。

世界経済も大変だ。米議会予算局が24日公表した経済見通しでは、1~3月期GDPは年率3・5%減、4~6月期は年率39・6%減だ。

まさに、日本も世界もリーマン・ショック級の事態になっている。この未曾有の危機は、当然、消費税減税を行う立派な大義名分になる。消費税よりも国民の命と経済を優先すべきである。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】危機の時こそ、人々の本質・地金が出てくる、すでに財務省は中共と同じく表舞台から退場しつつある(゚д゚)!

16人の民間エコノミストの予測平均から、日本の2020年4-6月期における実質国内総生産(GDP)が、年率換算で前期比21.7%減となる見込みであることが分かりました。日経新聞が報じました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出の自粛や店舗の休業が続き、GDPの60%以上を占める個人消費が前期比6.9%減となると予想。戦後最悪のマイナス成長となる見込みです。

内閣府は今月18日に1-3月期のGDPの一次速報を発表する予定。この期間は5.2%減と見込まれており、昨年10月の消費税増税後から3期連続のマイナス成長率となる見通しです。増税後の落ち込みから回復しつつあった流れが、コロナウイルスによって完全に途切れました。

予測通りになれば、4-6月期はリーマンショック後の2009年1-3月期に記録した17.8%の減少を超えることになります。また3期連続のマイナスは、東日本大震災前後の10年10-12月期から11年4-6月期以来となります。

民間の経済予測、7〜9月期はコロナ禍が終息したものとして予想している

米議会予算局は、米国の実質GDPは4-6月期に年率40%のマイナス成長になると予測。日本の4-6月期の輸出は17%減となっており、これはリーマン危機以来の大幅な減少で、内需も外需も厳しさを増している状況です。

12年前のリーマン・ショックの際、国際標準は、積極財政政策と金融緩和政策の同時発動でした。実際にほとんどの先進国で行われたのですが、日本では財政支出の規模が足りず、金融緩和も行われませんでした。

その結果、リーマン・ショックの震源地からほど遠いにもかかわらず、日本経済への打撃が大きく、震源地の米国やその悪影響をモロにかぶった英国が、いちはやく回復したにもかかわらず、世界で日本だけが、回復が遅れ、ひとりまけの状態になりました。

特に白川方明(まさあき)総裁当時の日銀で金融緩和が行われなかったため、円は他通貨に対し希少性が出て猛烈な円高となり、日本経済を痛め付けたことは多くの人の記憶に残ったことでしょう。

日本の貧乏神と揶揄された日銀元支店長白川方明士

東日本大震災の際の処方箋も、同様に財政政策と金融政策の同時発動だった。しかし、これも十分に行われなかったどころか、復興増税という古今東西にない愚策が行われた。

日本政府は全国に発令された緊急事態宣言の延長を表明しています。延長期間などの詳細はこれから発表される予定ですが、今回の予測は延長による下振れは織り込み済みです。

国際通貨基金(IMF)は今年の後半から世界経済が回復に向かうとみており、エコノミストも7-9月期は平均で年率9.9%の成長を見込んでいます。しかし経済活動再開後に第二波が到来することを危惧するなど、今後もコロナウイルスの影響が長引けば、回復にはさらに時間がかかるとみられます。

新型コロナウイルスの感染拡大に対応する、注目の「国民1人当たり一律10万円給付」を盛り込んだ2020年度補正予算が30日、成立しました。「世界恐慌以来の景気悪化」(国際通貨基金)から日本経済を再生させ、国民生活を守るため、今後のさらなる経済対策が期待されます。自民党内から「消費税減税」を求める声が上がってきました。

「一律10万円給付では、政治主導で財務省のくびきを外し、『政治の力』を証明できた。次は消費税減税だ」

自民党若手有志の議員連盟「日本の未来を考える勉強会」を主宰する安藤裕(ひろし)衆院議員=京都6区=は語りました。

「日本の未来を考える勉強会」を主宰する安藤裕(ひろし)衆院議員=京都6区

補正予算(25兆6914億円)の成立を受け、総額117兆円という緊急経済対策が本格的にスタートしました。

未曾有の危機から国民生活を守るため、財務省主導で国民に「不評」だった「減収世帯に30万円給付」に代わり、「国民1人当たり10万円給付」が実現しました。大型連休明けには、全国の自治体で給付も始まります。ほかに、減収となった中小企業に最大で200万円を支給する「持続化給付金」なども盛り込まれました。

ただ、今回の予算措置だけでは、経済再生は困難です。政府が4月23日発表した4月の月例経済報告では、国内景気の判断について「急速に悪化しており、極めて厳しい状況にある」と下方修正した。「悪化」の表現は、リーマン・ショック後の09年5月以来。新型コロナウイルスの影響はあまりに甚大です。

冒頭の議連「日本の未来を考える勉強会」は3月、「景気の致命的下降や恐慌を食い止めるには『消費税の減税』が欠かせない」という緊急声明を出しています。財務省が「一律10万円給付」で折れたことを受け、政府に対して、さらに積極的な財政出動を求めます。

安藤氏は「補正予算は今後、第2次、第3次が必要になるのは間違いない。政府・与党は、国民の生活を守り、企業の倒産を出さない決意を示し続けるべきだ。政治の力で、財務省の厚い壁を打ち破って、国民が熱望する『消費税減税』も実現しなければならない」と語りました。

現在の安倍政権は政権末期によくみられる現象で、官邸内の指揮命令系統がうまく機能していないようです。しかし、コロナ・ショックを受けたマクロ経済政策としては、大規模な財政支出と無制限金融緩和という先進国の定番政策に近いところまできています。細かい点にはまだ不満がありますが、自民党の一部には、上記のように財政問題がほぼないことを正確に理解し、正しい政策を模索する向きもあります。

こうした危機の時こそ、人々の本質・地金が出てくるものです。もう、緊縮大好きで、財務省の省益しか考えない、財務官僚の本質が顕になりつつあります。

コロナ禍はこれからもしばらく続くはずであり、これに対する政府の対応に対して、財務省は結局国民経済や命など無視して、とにかく緊縮財政の立場から反対し続けるでしょう。この財務省の抵抗は、これからも多くの国民に知られるところとなるでしょう。

そうして、多くの国民は、財務省の省益とは一体何なのかと、財務官僚に疑問を抱くようになるでしょう。しかし、その質問に当の財務官僚すら答えられないという事態になると思います。

ましてや、その答えが、単に退官後に天下りして、超リッチなハッピー・ライフを贈りたいからなどと答えれば、単なる馬鹿と多くの国民に認識されるだけです。

漿液優先の財務省などのキャンペーンとは一線を画した多くの政治家によるまともなマクロ経済政策への理解も10年前の民主党政権当時よりはるかに高まっているはずです。それこそが、これまでの10年の成果であり、日本経済復活への一縷の希望でもあります。

私自身としては、もうすでに制度疲労を起こした財務省の絶頂の時代は終わりつつあり、すでに財務省は表舞台から退場しつつあると思っています。

財務省「ピンチはチャンスだ、コロナのあとで増税・緊縮」を画策しているようです。実際、テレビで財務官僚がそのような発言をしています。今回こそは、復興増税の過ちを繰り返してはならないです



今回のコロナ禍で、コロナ復興税などで、復興を賄うなどのことを財務省が画策して動き出せば、さすがに今回ばかりは、政治家も国民も黙ってはいないでしょう。何しろ、今回は東日本大震災のときとは、規模が全く異なります。財務省は、全国民と全政治家を敵に回すことになります。

現在、コロナ禍を自分にとって有利になるように、中国共産党が画策しています。しかし、東アジアは、日本、香港、台湾ともに被害が少なく、被害のひどかったEUの国々に対して、マスク外交をしたり、医療団を送ったりしています。

その他コロナウイルスの発生源を米国だとしてみたり、東シナ海や南シナ海での挑発をゆるめるどころか、強化しています。

しかし、この中国の試みが成功するとはとても思えません。実際、香港経済日報の29日付報道では、現在、米国、英国、イタリア、ドイツ、エジプト、インド、ナイジェリア、オーストラリアの8カ国の政府や民間機関が、新型コロナウイルスの感染拡大を招き、自国に大きな被害をもたらしたとして、中国政府に賠償を求める訴訟を起こしていると紹介しています。

「外国による中国への賠償請求を『100国連合』と形容する人もいるが、あながち言い過ぎではないだろう」と伝えました。

そして、8カ国が中国政府に対して求めている賠償額の合計は約49兆5000億米ドル(約5300兆円)となり、これに米ミズーリ州の推定賠償請求額を加えると100兆ドル(約1京1000兆円)を上回り、中国のGDP(国内総生産)7年分に相当する額に達すると伝えました。

中国ウイルスで酷い目にあった国々は、この恨みを決して忘れることはないでしょう。今後の中国は、米国や多くの国々から体制の転換を求められるでしょう。

中共がそれを拒否すれば、米国などの国々が、中共幹部や家族の個人資産を凍結したり、ドルと人民元の交換を停止したり、中国のドル使用を禁止するなどの措置を課するかもしれません。そうなれば、このブログにも以前掲載したように、中国は石器時代に舞い戻ることになります。

財務省も、今後国民生活や、国の経済を考えず、省益だけを追求すれば、中共と同じような運命をたどることになるでしょう。

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2018年1月5日金曜日

【アジアを先導する日本】中国の領土侵略の脅威説き世界の主役に躍り出た安倍政権 自国の外交論文を取り上げないメディアの異常―【私の論評】安全保障論議から自ら退場した日本のマスコミ(゚д゚)!


安全保障でも連携を強める(左から)安倍首相とトランプ米大統領、ターブル豪首相
新幹線車両「E5系」の前で握手する安倍晋三首相とインドのモディ首相
 第二次安倍政権が発足して、昨年12月26日で丸5年になった。一部メディアは、アベノミクスについて「実感がない」などと批判的に伝えるが、客観的データは以下の通りだ。

 日経平均株価は、2012年12月の政権発足時1万230円36銭だったが、5年後の同日は2万2892円69銭と、2倍以上も上昇した。

 名目GDP(国内総生産)も、12年10~12月期の493兆円から、17年7~9月期の549兆円に増加。有効求人倍率は0・83倍(12年12月)から、1・55倍(17年10月)に。消費者物価指数も、マイナス0・2%(12年12月)から、0・8%(17年10月)に増えた。

 景気回復に成功したのは間違いない。

 さらに私は、安倍政権の外交戦略にも注目していた。

 安倍晋三首相が政権発足翌日、チェコにある言論プラットホーム「プロジェクト・シンジケート」に、英語で「アジアの民主的安全保障ダイヤモンド(セキュリティーダイヤモンド)構想」という論文を発表したからだ。

 不思議なことに、この論文は発表直後、産経新聞と東京新聞が取り上げたぐらいだった。自国の外交安保方針に関わる首相の論文を、メディアが取り上げないのは異常だ。政権発足直後から、安倍首相は偏向報道とフェイク・ニュースに攻撃されていたのではないか。

注目の論文は、冷戦時代、オホーツク海が「ソ連の内海」と言われたのに対比させて、《南シナ海がいま「北京の湖」になっているかのように見える》と、中国による領土侵略の脅威を説いている。

 そのうえで、《日本と米国ハワイ、オーストラリア、インドによって、インド地域から南太平洋に広がる海洋権益を保護するダイヤモンドを形成する国々》は、成熟した海洋民主国家として、法によって支配される平和的エリアを形成すべきだ-と、世界に訴えているのだ。

 この5年間、安倍首相はこの通りの外交を着々と進めてきた。わが国の歴史上、こんな宰相が存在しただろうか?

 在米台湾人の若き女性研究者、エミリー・チェン氏(米フーバー研究所フェロー)が16年2月、米外交専門誌『ナショナル・インタレスト』に「台湾海峡の次の主役は日本か?」という論文を発表したとき、私が少しも驚くことはなかった理由がそこにある。

 ■西村幸祐(にしむら・こうゆう) ジャーナリスト。1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部中退。在学中、「三田文学」の編集を担当し、80年代後半から、作家、ジャーナリストとして活動。2002年日韓サッカーW杯取材後、拉致問題や歴史問題などにも、取材・執筆分野を広げる。アジア自由民主連帯協議会副会長。著書に『21世紀の「脱亜論」 中国・韓国との訣別』(祥伝社新書)、『報道しない自由』(イースト・プレス)など。

【私の論評】安全保障論議から自ら退場した日本のマスコミ(゚д゚)!

冒頭の記事に掲載されている「アジアの民主的安全保障ダイヤモンド(セキュリティーダイヤモンド)構想」については、このブログでもことあるごとに掲載してきました。そうして確かに、安倍総理は過去5年間この構想に基づき行動してきしまた。

しかし、上の記事にもあるように、この構想を報道したのは、産経新聞と東京新聞くらいで、他の新聞はもとより、テレビ局なども全く報道していません。

このような重要な構想を報道しない報道機関は全く異常です。そのことに関して掲載したこのブログの記事のリンク以下に掲載します。
安倍首相の「安保ダイヤモンド構想」、対中抑止へ完成間近-【私の論評】鳩山の構想は報道しても、安部総理の構想は一切報道しない日本のマスコミの存在意義を問う(゚д゚)!
安倍晋三首相とインドのモディ首相
この記事は、2014年5月2日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この時もマスコミは安倍総理のこの構想を完璧に無視していました。この記事には、この構想の日本語訳も掲載しました。まだ読まれていない方は是非ご覧になって下さい。

安倍総理はこの構想通りに動き、今日に至っています。その結果上の記事にも掲載されていように米国、オーストラリア、インドにおよばずASEAN諸国とも良い関係を構築しています。

そうして、米国のトランプ大統領は外交経験も乏しいことから、外交面で安倍首相に頼るところが多くなってきています。

トランプ大統領は、大統領選挙選の頃から中国に対峙すると語っていましたが、中国は、米国が主導する国際秩序への最大の挑戦者であるという内容で、昨年12月18日「国家安全保障戦略」を発表しました。これによって、トランプ大統領は長期的には中国の膨張を抑える対決の道を選ぶという姿勢を明確にしました。

これには、当然のことながら安倍首相の構想が大きな影響を与えているものと考えられます。

さて、これで日米両首脳により、両国は中国の膨張を抑える対決の道を選ぶという姿勢を明確にしたことになります。

2016年国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は、中国が南シナ海に設定した独自の境界線「九段線」には国際法上の法的根拠がないと認定しました。同裁判所はこのほか、「南沙諸島には排他的経済水域(EEZ)を設けられる国連海洋法条約上の『島』はなく、中国はEEZを主張できない」「中国がスカボロー礁でフィリピン漁民を締め出したのは国際法違反」「ミスチーフ礁とセカンドトーマス礁はフィリピンのEEZ内にある」などと認定。中国の主張をほとんど退け、中国の国際的孤立を浮き彫りにしましました。

案の定、中国は逆上し(たふりをし)、「違法茶番劇」(中国メディア)、「紙くず(注――裁判所の判決)に外交努力が邪魔されるべきではない」(駐米大使)と批判して、領有権問題は当事者間の対話で解決されるべきだと、中国政府の従来の主張を繰り返しました。
中国は二国間対話を進めれば、孤立しないと思い込んでいるようです。

しかし、「これは中国の錯誤である」――。米国の世界的な戦略家であるエドワード・ルトワック氏は「中国4.0――暴発する中華帝国」(文春新書)の中で、中国の動きを予測するかのように書いています。

(ベトナムのような)小国は圧倒的なパワーを持つ中国と二国間交渉をするはずはなく、他国の支援、同盟によって対抗しようとします。ベトナムより大きい日本でも同様です。
中国が大きくなればなるほど、それに対抗しようとする同盟も大きくなるのだ。……中国が日本に対して圧力をかけようとすると、アメリカが助けに来るし、べトナム、フィリピン、それにインドネシアなども次々と日本の支持にまわり、この流れの帰結として、中国は最初の時点よりも弱い立場追い込まれる。これが(中国の錯誤の)核心である
安倍首相の活発な海外歴訪が示すように、昨今の動きはそうなってきています。その分、国際法を無視する中国の孤立化が進んでいます。オランダの仲裁裁判所の判決はその決定打というべきものなのですが、中国はそれに気付いていないのです。あるいは気付いていても対応を変えられないのです。

ルトワック氏の「チャイナ4.0」とは、かつて国民党軍の高官が酔っ払って書いた「九段戦」という馬鹿げた地図を放棄し、アメリカの警戒感を解消するために空母の建設を放棄することにあります。
(このチャイナ4.0は)今の中国にとって究極の最適な戦略だが、現在の中国にはおそらく実行不可能(だ)
1つは今の中国は内向きで海外の正確な情報が習近平にまで届かず、極めて不安定だからです。また、外国を理解できず、「自分たちこそ世界一、後の国は我々の家来だ」という昔ながら「冊封体制」のメンタリティが外国への理解を阻んでしまいます。2000年代半ば以降の経済大国化(の幻想、過信)が「冊封」メンタリティをいやまし高め、それが大きな弊害となっているのです。
今1つは習近平がチャイナ4.0を思いついたとしても、彼は人民解放軍に殺されるかもしれないし、人員解放軍がわざと対外危機を起こすかも知れない
世界の大国にのし上がりながら、北朝鮮とそれほど変わらない独裁国家の不安定性が増長されています。「今そこにある危機」です。

国内政治の間で苦悩する習近平
では、日本はどうすればいいのでしょうか。日本人は今、昨今の尖閣領域への中国軍の侵入の増加などから「中国政府が軍をコントロールできていないために、現場が暴走するのではないか」という懸念を持っています。ルトワック氏は「この懸念は実に真っ当なもの」として対中「封じ込め政策」を提案しています。

その提案は結論から言えば「尖閣領域のような小さな島の問題はアメリカに頼らず、自分でやれ」ということです。

米国は核抑止や大規模な本土侵略に対する抑止は日米条約によって提供します。しかし、島嶼奪還のような小規模なことにまで責任は持てないです。「日本が自分で担うべき責任の範囲なのです」。

ルトワック氏は戦略家として米国の軍事戦略にも深くかかわっています。だから、この姿勢は米政府もほぼ同様だ、と言って良いです。

島嶼防衛は日本独自の責務--。そのためには多元的な対中封じ込め戦略が不可欠である、とルトワック氏は提案します。
(海上保安庁、海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊、外務省などが)独自の対応策を考えておくべきなのである。「多元的能力」を予め備えておくことによって、尖閣に関する「封じ込め政策」は、初めて実行可能なものとなる
その際、「慎重で忍耐強い対応」という日本の役所の大好きな「先延ばし戦略」は逆効果だ、とルトワック氏は警告します。
そもそも中国は、(過去)15年のうちに三度も政策を変更している。さらに作戦レベルや現場レベルで、ソ連でさえ決して許さなかったような軍事冒険主義が実質的に容認されている
昨今の東シナ海、南シナ海での中国海軍の危なっかしい行動にそれが現れています。
これに対抗するには、有事に自動的に発動される迅速な対応策が予め用意されていなければならない。中国が突然、尖閣に上陸したとき、それに素早く対応できず、そこから対応策を検討したり、アメリカに相談をもちかけたりするようでは、大きな失敗につながるだろう
自分でやらずに、すぐにアメリカに頼る日本の外務省の体質を熟知したような指摘です。そして外務省も尖閣侵入のような有事に備えて海外諸国と連携した対応策を容易しておかねばならない、と説いています。

例えば、中国との貿易が多いEU(欧州連合)に依頼して、中国からの貨物処理のスピードを遅らせるよう手配するのです。
こうすれば中国はグローバルな規模で実質的に「貿易取引禁止状態」に直面することになり……かなり深刻な状況に追い込まれるはずだ
大事なのは、こうした具体的な行動が自力で実現できるように、平時から準備しておくことです。

対米依存度の高い外務省や防衛省は「今そこにある危機」に対応し、それをやっているのでしょうか。そこが問題です。

そうして、先日もこのブログに掲載したように、米国はいざとなれば、中国に対して大規模な金融制裁ができます。大規模な金融制裁を実施された場合、中国は身動きがとれなくなります。だから、米国や日本に対して、どこまでも自分の要求をつきつけるということはできません。どこかで、折れるしかありません。

しかし、上のルトワック氏の主張にもあるように今の中国は内向きで海外の正確な情報が習近平にまで届かず、極めて不安定です。また、外国を理解できず、「自分たちこそ世界一、後の国は我々の家来だ」という昔ながら「冊封体制」のメンタリティが外国への理解を阻んでしまいます。2000年代半ば以降の経済大国化(の幻想、過信)が「冊封」メンタリティをいやまし高め、それが大きな弊害となっているのです。

結局、軍事力でも金融力でも米国にかなり劣っている中国は、米国に直接挑むことはできません。

昨日もこのブログで述べたように、習近平にとっては反日を叫んでいなければ、「毛沢東が建国前の日中戦争において、日本軍と共謀していた事実」が明るみに出ることになります。これだけは絶対に避けたいために言論弾圧をヒステリックなほど強化しているのです。グローバル化が進めば進むほど、「嘘をつき続けることが困難になる」からです。

このブログにも過去に何度か掲載してきたように、現在の中国で「反日」の姿勢が崩れれば、中共政府は人民に「統治の正当性」を疑われることになり、それこそ体制が崩壊してしまいかねないのです。

中国にとっては、米国との大国二国間による対等な関係を模索し、いずれ太平洋を米中で二分して、支配しようという目論見は、米国の「国家安全保障戦略」によりすでに完璧に外れてしまいました。

そうなると、国内で「統治の正当性」を維持しつつ、反日を標榜し、国内の政治力学が何よりも重要な中国では、習近平は米国との対峙が無理というのであれば、まずはその矛先を本格的日本に向けることになる可能性は高いです。それ以前にまずは台湾を奪取するという冒険に出るかもしれません。

ここまで、述べるといかに安倍首相の「安全保障のダイヤモンド」構想が重要なものであるか、おわかりいただけるものと思います。

本来日本のマスコミは、安倍総理の構想など、立場や、良い・悪い、賛成・反対などは別にして、日本の総理大臣の構想として、報道し論評すべきです。それをしないで報道しない自由を行使するということは、日本マスコミのほとんどは、安全保障論議からすでに表舞台から退場したものとみなされても仕方ないです。

日本のマスコミの安全保障論議など、見聞きしても、何の益もないどころか、かえって混乱するだけです。最近も、村本大輔のように大混乱している人がいるようです。まったく、日本の安全保障論議からすでに退場したマスコミに情報に頼っているようでは、混乱するのはも無理はないと思います。

それよりも、現代中国の真の歴史を学ぶ、安倍首相の構想を読み解く、米国の戦略を読み解くことなどによって、まともな安全保障の論議が醸成されていくことになると思います。日本の安全保証論議をするなら、マスコミなど頼るべきではないです。

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