2018年10月20日土曜日

米、中距離核全廃条約から離脱へ=ロシア違反と批判、来週伝達―NYタイムズ―【私の論評】米の条約離脱は、ロシア牽制というより中国牽制の意味合いが強い(゚д゚)!

米、中距離核全廃条約から離脱へ=ロシア違反と批判、来週伝達―NYタイムズ

トランプ米大統領(写真左)とプーチン・ロシア大統領。米紙ニューヨーク・タイムズは
19日、トランプ米政権が冷戦時代に旧ソ連との間で結ばれた中距離核戦力(INF)
全廃条約から離脱する見通しだと報じた

 米紙ニューヨーク・タイムズは19日、トランプ米政権が冷戦時代に旧ソ連との間で結ばれた中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱する見通しだと報じた。

 ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が来週、ロシアを訪問し、プーチン大統領に米国の方針を伝えるという。

 同紙によれば、トランプ大統領が近く、条約離脱を正式に決定する。同政権が主要な核軍縮条約から脱退するのは初めて。米国の条約離脱が、米ロ両国と中国を巻き込んだ新たな軍拡競争につながる恐れもある。

握手するゴルバチョフ・ソ連書記長(左)とレーガン大統領(右)(ともに当時)

 1987年にレーガン大統領とゴルバチョフ・ソ連書記長(ともに当時)の間で調印されたINF全廃条約は、米国と旧ソ連が保有する射程500~5500キロの地上発射型弾道・巡航ミサイルの全廃を定めた。ただ、米国は近年、ロシアが条約に違反して中距離核戦力の開発を進めていると批判してきた。 

【私の論評】米の条約離脱は、ロシア牽制というより中国牽制の意味合いが強い(゚д゚)!

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版、2017.11.16)は、米国防省が中距離核戦力(INF)全廃条約(以下、「INF条約」)で禁止されている中距離ミサイルの再開発を検討していると報じました。

冒頭の記事にもあるように、1987年に米ソ間で調印されたINF条約は、両国の中距離(射程500~5500キロ)地上発射型弾道ミサイルと巡航ミサイルの全廃を定めました。

しかし近年、ロシアが条約に違反して中距離核ミサイルの開発を進めているとの疑惑が深まる一方で、米国だけが条約を遵守しているのは不公平だとして米側の不満の声が高まっていました。

米当局者によると、米国は数週間前、ロシアが条約を順守しないようであれば、新たな中距離ミサイルの研究開発を進める意向をロシア側に伝えたといいます。

しかし、問題の所在は、米国とロシアの間にとどまりません。というのも、INF条約は米露(締結時はソ連)間の条約で、中国には適用されないからです。

その中国は、平成29年版「防衛白書」によると、「DF-4」、「DF-21」などの中距離核ミサイルを160基保有しています。

中国のDF-21

他方、米国は、地上発射型弾道・巡航ミサイルの全廃に加えて、バラク・オバマ大統領の「核のない世界」の方針を受け、INF条約の対象外である核搭載海上発射型巡航ミサイル「トマホーク」を2010年の「核態勢見直し(NPR)」で退役させました。

その結果、米国には海中発射型(TLAM-N)と空中発射型(AGM-86B)の巡航ミサイル「トマホーク」がかろうじて残っただけになりました。

そのため、アジア太平洋地域では中国の「アクセス(接近)阻止/エリア(領域)拒否(A2/AD)」戦略によって中距離核ミサイルの寡占状態が出来上がり、米国による同盟国・友好国に対する核の地域抑止(「核の傘」)に大きな綻びが生じているのではないかとの懸念が増大していました。

ロシアの戦略爆撃機T-160「ブラック・ジャック」

ロシアは、国際的地位の確保および米国との核戦力バランスの維持とともに、通常戦力の劣勢を補う意味でも核戦力を重視してきました。

戦略核戦力については、米国に匹敵する規模の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)および長距離爆撃機(Tu-95「ベア」、Tu-160「ブラックジャック」)を保有し、核戦力部隊の即応態勢を維持しています。

問題の中距離核戦力については、米国とのINF条約に基づき1991年までに廃棄し、翌年に艦艇配備の戦術核も各艦隊から撤去して陸上に保管しましたが、その他の多岐にわたる核戦力を依然として保有しています。

こうしたなか、2014年7月、米国政府は、ロシアがINF条約に違反する地上発射型巡航ミサイル(GLCM)を保有していると結論づけました。

米政府当局者に「SSC-8」と呼ばれる同ミサイルは、2個大隊を保有し、ロシア南東部アストラハン州のカプスチン・ヤルなどに配備されていると指摘されていました。

この件について、米政府は、たびたびロシア政府に対し異議申立てを行ってきた。

しかし、ロシア政府が否定しているため、米国はその対抗措置として、新たな中距離ミサイルの研究開発を進める意向をロシア側に伝え、そのうえで、ロシアが条約を順守すれば、開発を断念すると伝達したのです。

中国H-6(Tu-16)爆撃機

一方、中国は、核戦力および弾道ミサイル戦力について、1950年代半ば頃から独自開発を続けており、抑止力の維持、通常戦力の補完そして国際社会における発言力の確保を企図しているものとみられている。

中国は、ICBM、SLBM、H-6(Tu-16)爆撃機のほか、INF条約に拘束されないため、中距離弾道ミサイル(IRBM / MRBM)を保有し、さらに大量の短距離弾道ミサイル(SRBM)といった各種類・各射程の弾道ミサイルを配備している。

わが国を含むアジア太平洋地域を射程に収める中距離弾道ミサイルについては、発射台つき車両(TEL)に搭載され移動して運用される固体燃料推進方式の「DF-21」や「DF-26」があり、これらのミサイルは、通常・核両方の弾頭を搭載することが可能です。

また、中国はDF-21を基にした命中精度の高い通常弾頭の弾道ミサイルを保有しており、空母などの洋上の艦艇を攻撃するための通常弾頭の対艦弾道ミサイル(ASBM)「DF-21D」を配備しています。

さらに、射程がグアムを収めるDF-26は、DF-21Dを基に開発された「第2世代ASBM」とされており、移動目標を攻撃することもできるとみられています。

これらの中距離弾道ミサイルは、中国周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での軍事活動を拒否する「A2/AD」戦略を成り立たせるための重要な手段です。

米国のINF廃棄と相まって、アジア太平洋地域に中国の核ミサイルの寡占状態を作り上げることができるため、米国による同盟国・友好国に対する核の地域抑止(「核の傘」)に大きな綻びが生じているのではないかとの懸念が増大していました。

中国の中距離弾道ミサイルは日本を各地を狙っている
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このように、中距離核ミサイル、すなわち戦域核ミサイルについては、米国と中国(および北朝鮮)との間に非対称状態を生じています。

米国の核による地域抑止の低下についての懸念は、第1列島線域内の同盟国・友好国のみならず、米国の要人の間でも公然と指摘されるようになっていました。

日本側の意向も、様々なチャネルを通じて米側に伝えられており、米国政府もINF条約の「くびき」について十分認識しているとみられました。

これまで、米国の核戦略は、主としてロシアを対象に策定されてきましたが、21世紀の世界における安全保障の最大の課題は中国であり、今後はロシアのみならず、中国を睨んだ核戦略および核戦力の強化に目を向けなければならないです。

米国政府がINF条約違反と結論づけたロシアによる中距離核ミサイルの開発ならびに中国による大量の中距離核ミサイル保有を考えれば、米国には、同条約の破棄あ踏み切り、懸念される地域核抑止の信憑性と信頼性を回復しようとするでしょぅ。



この際、同条約の無効化に伴い、米国は短距離・中距離核ミサイルの配備について、わが国を含む第1列島線域内の関係国(日本、韓国、台湾、ベトナム)に打診してくる可能性もあります。

打診とは、わが国を含む第1列島線域内の関係諸国に、核を配備すること等の打診ということです。日本としても、どのようにすればわが国の核抑止力を高めることができるか、その在り方について真剣に検討すべき段階に入っています。ただただ、核を忌避したとしても、中国の中距離核弾道弾がなくなることはありません。

日本では、北朝鮮の核ばかりが注目されて、なせが中国の核兵器についてはほとんど問題にもされず、報道もされませんが、現在でも中国の中距離弾道弾は日本の大都市全部に狙いをつけています。

以上のことを考慮すると、今回の米国による中距離核全廃条約から離脱は、対ロシアというよりは、対中国に重きをおいた措置であると考えられます。

いまのままの状況であれば、中国は対中国経済冷戦を挑む米国を牽制するため、日本をはじめとする第1列島線域内の国々に対して、核攻撃の構えをみせ、脅すということも考えられます。今回の措置ははそれを予め防止するという意味があるのです。

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2018年10月19日金曜日

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【有本香の以毒制毒】安倍首相は習近平氏に「NOと言える」のか マハティール氏の英断を見習え 

訪中する安倍首相(左)は習主席との首脳会談で、もの申すことができるのか
写真・図表はブログ管理人挿入 以下同じ

安倍晋三首相は来週25日に中国を訪問し、翌26日、習近平国家主席と会談する。両首脳の会談はこれで8回目となるが、6年前の第2次安倍政権発足以来、国際会議を除いて安倍首相の中国訪問は初となる。

この6年、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」をキャッチフレーズに、自ら世界76カ国を精力的に訪問してきた安倍首相が「あえて訪れなかった国」の1つが中国だ。

安倍首相が6年間、中国の周辺国(ASEAN=東南アジア諸国連合=や中央アジア諸国、ロシア)へは積極的に訪問し、ロシアやASEANの一部の国々を複数回訪れてきたことを見れば、「中国パッシング(無視)」が戦略的意図によるものだったことは明白だ。今回はその禁を解いたことになる。

今月23日は、トウ小平時代に締結した日中平和友好条約の発効から40年の節目にあたる。日中の外交当局は「関係改善に弾みをつけたい考え」だと伝えられるが、果たして安倍首相の真意はどこにあるのか。

鄧小平

40年前と今とでは、日中関係は大きく変化した。ことに、この6年の両国をめぐる情勢の変化は大き過ぎると言っても過言ではない。何より、米国が政権交代に伴い、対中政策を転換させたことの影響が大きい。

米中は今や、「貿易戦争」で激しくやり合うのみならず、ウイグル人への人権弾圧などに関し、米国がかつてないほど激しく北京を非難している。この現状を「米中冷戦」と評する米国の識者もあるなか、米ソ冷戦を振り返ると、今、日本がいかに振る舞うかが極めて重要だということも見えてくる。



ソ連の失敗の要因の1つは、経済運営の失敗にあった。

衛星国に過度に資金投入したことによる財政圧迫が大きかったが、今の中国もASEANや南アジア、中央アジアなどの周辺国のみならず、アフリカや中南米の国々にまで大枚をバラまいている。

事実上の軍事拠点を得るため、台湾との国交を断たせるためなど、理由はさまざまあるが、いずれにせよ中国は自らの国力を過信し、国際社会での「ゲーム」を少々急ぎすぎたきらいもある。

貿易での稼ぎで積み上がった外貨を使えるうちはよかったが、この稼ぎが「貿易戦争」で干上がれば、たちまち不良債権が膨れ上がる。習氏肝いりの巨大経済圏構想「一帯一路」も、このまま拡大すれば、かつてのソ連のように不良債権をため込む要因となろう。

まさかとは思うが、安倍首相が今回の訪中の手土産に、「一帯一路」の手助けを約束、というような事態にならないか懸念する声も聞かれる。これと関連づけ、12年前の第1次安倍政権が「中国訪問」を皮切りにスタートして短命だったことを引き合いに、「訪中は縁起が良くない」と言う安倍首相支持の識者もいる。

そんななか、92歳にして政権トップの座に返り咲いたマレーシアのマハティール首相(現在93歳)の英断を伝えるニュースが飛び込んできた。中国政府からの再三の働きかけに反し、自国内にいたウイグル難民を中国へ送還しないことを決めたのだ。

まさに、「NOと言える」マハティール健在を見せつける朗報だが、わが国の安倍首相はどうか。野党時代から首相となった今も、日本ウイグル国会議員連盟の最高顧問である安倍首相の「NO」と言う力を、今こそ期待したいところである。

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)など多数。

【私の論評】安倍総理がわざわざ訪中して、中国の口車にのるようなことをすることはあり得ない(゚д゚)!

私は、安倍総理は、習近平に対して「ノー」というべきことは言うだろうし、場合によっては中国訪問のドタキャンも視野に入れているのではないかと思います。

安倍総理は、過去においては中国訪問をドタキャンしたことがあります。安倍首相は2015年9月3日に北京で行なわれた「抗日戦争勝利70年記念式典」に合わせて計画されていた中国訪問をドタキャンしました。

中国は2015年から9月3日を「抗日戦争勝利記念日」として祝日に決め、軍事パレードなど記念行事を行なうことにしました。そして安倍首相を招待してきたのです。当初、首相は訪中しないという見方が強かったのですが、戦後70年談話を出した後、首相はその気になっていたようです。



当時毎日新聞(8月18日付)が〈首脳会談へ 9月3日午後訪中 中国側と最終調整〉と、軍事パレードが終わった後に北京に入るという日程を報じ、首相側近の萩生田光一・総裁特別補佐も「この時期に北京を訪問できるなら結構なことだ。(訪中は)式典とは切り離したほうがよい」と訪中ありうるとの見通しを語っていました。

中国が日本に勝ったなどと、嘘つき妄想パレードをしているときに総理が訪中すれば、それこそ、現中国は日本と戦ったことは一度もないという真実の歴史の修正を認めてしまいます。

日本と戦ったのはあくまで、現在は台湾に移った中華民国でした。日本は現中国の前進となった共産軍とは一度も戦ったことはありません。安倍総理が他の時ならいざしらず、なぜそんな時期の訪中に傾いたのか全くもって疑問でした。

その根回しに動いたのが親中派の二階俊博・自民党総務会長(当時)と官邸の今井尚哉・総理首席秘書官(経産省出身)ラインといわれています。官邸は事前の交渉に首相ブレーンで外務省出身の谷内正太郎・国家安全保障局長を訪中させ、中国側は李克強・首相との面会をセットする演出までして総理を誘い出そうとしたようです。

二階俊博氏

これでは、親中派は喝采を送るかもしれないですが、状況次第では中国側に利用されるか、逆に反発を招くか、外交的リスクが大きかったと思います。

中国が祝賀式典で軍事力を誇示する意図があったのは明らかで、米、英、仏、独など西側の首脳は出席を断わりました。結局のところ、訪中はドタキャンされました。

今回の訪中も親中派がいろいろ画策したのでしょうが、米中冷戦がはじまったばかりですが、中国はすでに敗北の軌道に完璧に乗っています。これは誰の目にも明らかです。ただし、親中派は読みが甘く、いずれ中国は元通りになると考えているのかもしれません。愚かです。

こんな時期にわざわざ安倍総理が、中国を訪問して、中国に接近して、軍事同盟国の米国から「シンゾーは裏切り者」などと思わるようなことをするでしょうか。

安倍総理は中国に行くとすれば、「日本の軍事同盟国アメリカの敵国に行くのだ」としっかりと認識していると思います。

今度の経済冷戦で、中国は負ける側です。日本は大東亜戦争のときには、負けるナチスドイツと同盟を組み、破滅しました。今回は、日本はすでに「勝つ側」と「同盟関係」にあります。

私には、このような状況に置かれている、安倍総理がわざわざ訪中して、中国の口車にのるようなことをするとは考えられません。一度あったことは二度目もあり得ます。安倍総理は何か理由をつけて訪問をドタキャンするか、あるいは訪問しても、中国に利用されるようなことはしないと思います。それどころか、引導を渡すことになるかもしれません。

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2018年10月18日木曜日

中国の地方隠れ債務が「GDPの60%」、巨大な信用リスク伴う=米S&P―【私の論評】日本では財務官僚が必死で資産を隠し、中国では中央官僚が必死で債務を隠している(゚д゚)!

中国の地方隠れ債務が「GDPの60%」、巨大な信用リスク伴う=米S&P

マネーボイス

米格付大手S&Pグローバル・レーティングス(以下、S&P)はこのほど、中国地方政府の「隠れ債務」規模が40兆元(約648兆円)に達したとの調査報告を発表した。これによると、2017年中国の公的債務総規模は国内総生産(GDP)の60%を占めた。S&Pは中国の債務問題について、「巨大な信用リスクを伴っている」と警鐘を鳴らした。

中国の地方債務は、7月末では30兆元を超えていたが・・・・
グラフはブログ管理人挿入 以下同じ

中国の地方政府は、インフラ建設や不動産投資の資金調達のために、地方融資平台(LocalGovernmentFinancingVehicles,LGFV)を設立し、社債を発行してきた。中国当局は、この部分の社債を地方政府の債務ではないと定めている。S&Pは、こうした地方政府の隠れ債務は2017年まで、30~40兆元(約480兆~648兆円)まで膨らんだとの見方を示した。

在米中国経済学者の何清漣氏は以前、中国の公的債務による大規模な債務不履行(デフォルト)の可能性が高いと指摘した。同氏によると、世界金融危機を受けて、2009年中国当局が打ち出した景気刺激策の下で、4兆元(約64兆円)とLGFVによる20兆元(約320兆円)余りの資金が中国国内不動産市場とインフラ投資に投じられた。同氏は、中国経済は自転車操業だと批判した。

米中貿易戦の白熱化で、中国経済の鈍化が鮮明となっている。当局は景気にテコ入れするため、これまでのデレバレッジ政策(債務圧縮)から一転、緩和的な金融政策に転換した。またインフラ投資計画を拡大するため、積極的な財政政策の強化を表明した。今後地方政府が抱える債務が一段と増えると懸念されている。

最近中国当局は、金融リスクの拡大を阻止する狙いで、LGFVの破たんを容認する動きを見せている。

今年8月、中国新疆ウィグル自治区の地方政府融資平台、「新疆建設兵団第6師国有資産経営有限責任公司」は国内で発行した5億元(約80億円)規模の債券について、期限内に利払いと償還金の返済が困難だとし、実質上のデフォルトを発表した。デフォルトした初めてのLGFVとなった。

出所:ブルームバーグ
 
地方政府の債務危機拡大に警戒したS&Pは9月12日、中国の天津市、重慶市、無錫市、長沙市などのLGFV7社について、格付けを1段階引き下げた。S&Pは「中国当局のLGFVへの支援は時間の経過とともに強まる可能性がある」との見方を示した。

また米格付大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスも同日、江蘇省や湖南省などのLGFV5社の格付けを引き下げた。

9月13日、中国当局は各地方政府に対して、債務超過となったLGFVについて破産させる方針を通達した。

香港紙サウス・チャイナ・モーニングポスト(16日付)によると、S&Pのアナリストは中国のLGFVのデフォルトリスクは以前より高まっていると指摘した。

(翻訳編集・張哲)

【私の論評】日本では財務官僚が必死で資産を隠し、中国では中央官僚が必死で債務を隠している(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、中国地方政府の「隠れ債務」規模が40兆元(約648兆円)に達したとしていますが、では中国総体の債務はいったいいかほどなのでしょうか。

中国は地方政府の負債を債権と交換するなどの荒っぽい手口で不良債権率を低く見せかけていますが、過去の地方政府が野放図になしてきた銀行からの借金は、どうなったのでしょうか。累積額はいったい幾らなのでしょう。

その資金を供給した銀行も国有銀行であり、「親方五星紅旗」だから、問題はないとばかりにじゃんじゃん不動産開発、地方政府の公共事業に貸し込んできたことは周知の事実です。公表された数字では、中国の国有銀行の不良債権率、いずれも1%台です。一番悪い数字の中国農業銀行とて、1.81%(17年末)。日本の基準に照らせば、「成績優秀行」です。

ところが、しばらくして中国農業銀行は増資を静かに発表しました(3月13日)。第三者割り当てで1兆7000億円。政府系金融機関が引き受けました。というより強制的に引き受けさせられたのです。この何気ない報道からも、中国のファイナンスの実態が浮かび上がってきます。誰も信用しない統計を平気で公表する面の皮の厚さも、中国ならではの風景です。

一部の楽天的なエコノミストは1980年代のラテン・アメリカ諸国が、破産寸前に追い込まれて通貨暴落、猛烈インフレが政情不安を呼んだ事実経過を例証し、けっきょくIMFの管理下となって、経済を立て直したように中国金融の再建は可能だとしているようです。甘い見通しだと言わざるを得ないです。

中国政府の公式統計では地方政府の債務残高は12兆6000億ドルです。中央政府の負債はちなみに10兆3100億ドルです。

だからGDPの36.2%に過ぎないのであり、中国の債務バランスは健全だと、まやかしの数字を使ってその場しのぎをしてきました。いまも誤魔化しは続いています。

地方政府の隠れた債務はほかに14兆ドルと見られています。ウォール街の専門家が見積もるように中央と地方政府の債務は合計で36兆9100億ドルになる。日本円に換算すると(1ドル=105円で計算)、3975兆円、これが公的債務の累積と考えられています。

国有企業の債務は、この統計には加算されておらず、まして民間の個人消費である不動産ローンの残高などは公表がなされていません。卒倒するような禍々しい数字になるだろうと推測されます

この最悪数字を誤魔化すために中国ではシャドーバンキングが悪用され、さらには「理財商品」を預金者、投資家に売りさばいて当座の危機を回避してきました。「理財商品」の残高は17年末で53兆元(邦貨換算で900兆円)。良心的エコノミストなら気絶するかもしれません。

最近では、爆買いどころか、中国国内の消費も頭打ち傾向が歴然とでてきています。

2018年年の春節の旅行は減少傾向を鮮明にしました。海外旅行も外貨持ちだし制限にあって、限度額があるため消費は振るいませんでした。小売りはスマホ、自動車の売れ行きが鈍化しており、ここへ来て消費の頭打ち、微減がはっきりしてきました。

問題は不動産です。北京はマンション価格高騰で、目を血走らせた投資家が、建設中のマンションを買ったりしたのですが、頭金は33%、また住宅ローンの金利は5.3%です。2017年末のローン残高が40兆5000億元(一元=17円で計算しても、688兆円。日本のGDPより多いです)

いまさら指摘するまでもないですが比較材料として、日本のGDPは530兆円、2018年度予算は92兆円だ。中国が天文学的な借金を背負っている事実は、これでおわかりいただけるでしょう。それでも中国経済は大丈夫だと言いふらす人々は、何を考えているのでしょうか。甚だ疑問です。

公式資料では、政府債務残高の推移は以下のようになっています。中国のそれは出鱈目であることは言うまでもありません。

公式の資料では政府総債務残高はこのようになるが、無論中国のそれは出鱈目である

それにしても、日本と中国を比較すると面白いことがわかります。

先日、日本政府は債務と資産をあわせるとプラス・マイナスゼロであることをIMFが公表していることをこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論―【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つべき(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部のみ引用します。
IMFが10日公表した世界経済生産の61%を占める31カ国の財政モニター報告書には、驚くべき指摘が並んでいる。公的部門の正味資産の合計額は101兆ドル(約1京1000兆円)に上り、合計国内総生産(GDP)の219%に相当する。一方、公的債務の合計は同94%であり、資産はその倍以上あるということになる。 
巨額の借金を抱える日本の場合、負債額はGDPの283%に相当するが、その半分以上を日本銀行を含めた政府機関が抱えている。他の資産も考慮に入れて試算すると、日本の「純資産」はほぼプラスマイナスゼロになると、IMFは指摘している。

IMF Fical Motitor 2018に掲載されたグラフ

日本は負債は大きいものの、政府が保有する資産もかなり大きいものであるのと、保有している資産は現金もしくは現金にすぐ換金できるものが7割以上を占めるほか、他の資産も優良資産です。ということは、この資産も勘定にいれると、日本が借金まみれというのは真っ赤な嘘です。

なぜこのような真っ赤な嘘をつくかといえば、財務省が省益だけを追求して、とにかく金をためこみ、それを作配して、財務官僚が引退後の天下り先で、ウルトラリッチ生活をするために真っ赤な嘘をついているのです。だから、負債ばかり大げさに言い立てているのです。

さらに、ごうつくばりの財務官僚は、さらに作配できる金の量を増やしたくて、本当は必要のない10%増税も必要だといいつのつているのというわけです。

では、中国は本当は債務があるのにないかのようにいつわるのはなぜかといえば、それは、天文学的債務があるとわかれば、海外からいずれとんでもないことなると判断され、海外にお金(ドル)が中国から外国逃げていってしまう(キャピタル・フライト)からです。だから、債務がないようにみせかけているのですが、キャピタル・フライトはどんどん加速するばかりです。

キャピタル・フライトがおきると、中央・地方を問わず、幹部の官僚らが、不正蓄財ができなくなります。それどころか、彼らにとって、蓄財装置である、中央政府や地方政府がなくなってしまいます。だからこそ、血眼になって負債を隠すのです。

ただし、彼らにとって中央政府や地方政府が蓄財装置の役割を果たさなくなったら、意外と簡単に政権の維持などあきらめて、さっさと海外に逃亡するかもしれません。

これでは、いずれは中国の金融は破綻するのは目に見えています。日本も、中国も共通しているのは、官僚が自分の都合で、国の財政などを好き勝手に動かし、情報操作までするということです。

ちなみに、中国の場合は、習近平も含めて、いわゆる政治家と思われているような人間もすべて官僚です。なぜなら、中国には選挙制度がないからです。

中国にも公務員試験があります。この試験は難関であり、まずはこの試験に合格しないと、中国では幹部にはなれません。ある程度の幹部になり、さらに上になるためには、人事によります。さらに、トップに上り詰めるためには、人民大会での指名によります。習近平が主席になったのも指名によるものです。主席以外の他の幹部も指名によります。

言葉の厳密な意味で、中国には日本をはじめとする先進国のように、選挙で選ばれる政治家は一人も存在しません。全部官僚です。

日本では、財務官僚が必死で、資産を隠し、中国では中央の官僚が、必死で債務を隠しているのです。官僚はろくなことをしないという点で、日中ともに共通があるといえるかもしれません。

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2018年10月17日水曜日

消費税率10%引き上げで…デフレ脱却頓挫 増税見送りの「ウルトラC」まだある!? ―【私の論評】安倍総理は憲法改正も、デフレ完全脱却もやり遂げる(゚д゚)!

消費税率10%引き上げで…デフレ脱却頓挫 増税見送りの「ウルトラC」まだある!? 

予定通りか再延期か…どうなる「消費増税」

8%への増税時には駆け込み需要と反動減が生じた

 安倍晋三首相が来年10月に消費税率を予定通り10%に引き上げる意向を表明した。増税は法律に明記されているため既定路線ではあるが、過去の増税では消費低迷や景気腰折れを招いた。10%への増税を実施すれば安倍政権悲願のデフレ脱却も頓挫しかねない。専門家は、来年4月以降、増税見送りの「ウルトラC」があり得るとみる。

 安倍首相は15日午後の臨時閣議の席上、消費税率引き上げの意向を表明、増税に備えた景気対策の具体化を関係閣僚に指示した。対策の柱は、中小小売店でクレジットカードなどキャッシュレス決済で買い物をした消費者を対象に、購入額の2%分をポイント還元する制度が有力。飲食料品などの軽減税率についても準備を急ぐよう指示する方針だ。

 安倍政権は14年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた際には5兆5000億円の経済対策を講じたが、景気は大きく後退し、デフレ脱却も遠のいた。このため10%への再増税はこれまで2度にわたり見送ってきた経緯がある。

2018年10月16日火曜日

欧州の驚くほど直截的な中国への警戒感と批判―【私の論評】我が国も中国共産党独裁政権が推進する経済活動に対して警戒を緩めてはならない(゚д゚)!

欧州の驚くほど直截的な中国への警戒感と批判

岡崎研究所

仏警察、中国企業所有のワイン醸造所10軒を差し押さえ 脱税などの容疑。写真はフランス
南西部ボルドー近郊のブドウ畑、フランスでも中国に対する警戒感が高まっている。
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

9月12日、欧州議会は「対中関係報告書」を採択、EU中国関係は、人権、法の支配、公正な競争の尊重の上に成り立つべきことなどを強調、中国の一帯一路等を通じた欧州の戦略的インフラへの投資にも警戒感を表している。欧州議会のプレスリリースに従って、ごくあらましを紹介すると、次の通り。

 EU対中関係報告書は、中国がEUの戦略的パートナーであり、さらなる協力の大きな余地があることを認めるが、課題がある。欧州議会は、EU加盟国が結束して、中国の影響力に対抗できるよう、中国の政策に対し結束を強めることを求める。

 人権、法の支配、公正な競争は、EUの対中関与の中核であるべきだ。中国における、人権活動家、弁護士、ジャーナリスト、その他一般市民に対する嫌がらせや逮捕を非難する。中国が外国人ジャーナリストの立ち入りを拒否したり制限する姿勢を強化させるなどしていることは大変懸念すべきことである。

 「一帯一路」を通じた欧州の戦略的インフラへの中国の投資の取り組みは、自由貿易を妨げ、中国企業を優位にしている。こうした投資は、銀行、エネルギー部門、その他のサプライチェーンをコントロールしようとする、中国の戦略の一環である。中国には透明性を改善し、環境的・社会的基準を守るよう求める。 

 世界で25の最も人気のあるウェブサイトのうち8つが中国によりブロックされている。現在進んでいる中国によるインターネットの自由への弾圧、大規模なサイバー空間監視を非難し、法的強制力のある私権の保護を導入するよう求める。

出典:‘Chinese investment in EU infrastructure: MEPs urge EU countries to act together’(European Parliament, September 12, 2018)
http://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20180906IPR12110/chinese-invstment-in-eu-infrastructure-meps-urge-eu-countries-to-act-together

 この報告書は欧州議会で、賛成530、反対53、棄権55の圧倒的多数で採択されたという。一読して分かる通り、驚くほど直截的な中国への警戒感と批判の表明である。欧州においても、中国の影響力の増大、それが自由、人権、法の支配、公正な競争などと言った西側が立脚してきた価値を損ね得ることを的確に認識しつつあることの証左であると言えるだろう。オランダ出身の欧州議会議員バス・ベルダー氏は「EUと中国との強固な関係の原則は、市場アクセスから報道の自由に至るあらゆる分野における相互主義である。相互主義が相互信頼を強化し、EUと中国との間の強固な戦略的パートナーシップを作ることになる」と述べている。

2016年台湾軍のカレンダーより、4月の人物は空軍司令部所属の方稜溶中尉

 報告書では、台湾についても以下のような注目すべき記述がある。欧州において台湾に対する関心も高まっていることが分かる。

・一方に権威主義を強める一党独裁国家、もう一方に多党の民主国家が存在することは、両岸関係のエスカレーションを高める危険がある。

・2015年の対中関係報告書ではEUと台湾との2国間投資協定の交渉開始を求めているが、遺憾なことにまだ始まっていない。

・EUと加盟国は、中国の台湾に対する軍事的挑発をやめるよう最大限求めるべきだ。両岸のあらゆる紛争は国際法に則り解決されるべきだ。中国が台湾海峡上空で新たな航空ルートを一方的に開始する決定をしたことに懸念を表明する。中台間の公式対話の復活を勧奨。台湾のWHO,ICAO(国際民間航空機関)等の国際機関への参加を支持し続ける。台湾が国際機関から排除されることはEUの利益にならない。

 台湾は最近、考え方を同じくする国々が連帯して中国に対抗することを外交政策の基本に据えている。欧州の上記のような姿勢は、台湾にとっても心強いであろうし(台湾政府は欧州議会に感謝を表明している)、民主主義陣営全体にとってもプラスとなろう。

【私の論評】我が国も中国共産党独裁政権が推進する経済活動に対して警戒を緩めてはならない(゚д゚)!

このブログでは、「ぶったるみドイツ」という表現で、EUの盟主であるドイツが、中国と自由貿易を進めようとしたり、国防では主力戦闘機のユーロファイターが数機しか稼働しなくなったとか、Uボートに至っては一隻も稼働しなくなったこと等を厳しく批判してきました。

このようなことは、他の国でもおうおうにしてあることなのかもしれません。日本でも、同じ自民党の中でさえ、中国に対して警戒感を露わにする政治家が存在する一方、あいかわらず親中派・媚中派の政治家も存在します。

ドイツも同じで、一方ではぶったるんでいるように見えるのですが、もう一方ではそうではないドイツの姿があります。

ドイツ政府は欧州連合(EU)域外の企業がドイツ企業に投資する場合、従来は出資比率が25%に達した場合、政府が介入できる規制を実施してきましたが、その出資比率を15%を超える場合に政府が介入できるように、規制を更に強化する方向で草案作りに入っているといます。ドイツ日刊紙ヴェルトが8月7日報じました。ズバリ、中国企業のドイツ企業買収を阻止する対策です。

外国投資の出資比率に対する政府介入の強化に乗り出したアルトマイヤ経済相

ドイツでは2016年、中国の「美的集団」がアウグスブルクで1898年に創設された産業用ロボットメーカー、クーカ社(Kuka)を買収して話題を呼びました。それ以降、ドイツ政府は昨年、EU域外企業のドイツ企業への出資比率を25%としたのですが、今回はさらに規制を強化しました。ペーター・アルトマイヤ経済相は今年4月26日、出資比率の引き下げを既に示唆していました。

ドイツ政府はそれだけ中国企業の活動を恐れ出してきたわけです。ヴェルト紙によると、アルトマイヤ経済相は、防衛関連企業や重要なインフラ、ITセキュリティーなど市民の安全に関わる技術への投資については、将来をしっかりと見極める必要があると警告を発しています。ズバリ、中国企業のスパイ活動です。ドイツの先端科学技術を企業の買収を通じて習得するやり方です。

中国企業の欧州市場進出への懸念はドイツだけではないです。例えば、スイスでも同様の懸念が聞かれだしました。スイス・インフォ(8月14日)によると、ドリス・ロイトハルト通信相は、スイス紙(同13日)とのインタビューで、中国企業がスイスの「戦略的に敏感な」企業を買収する可能性について懸念を表明し、「ドイツが行ったように、我々も中国企業による企業買い漁りの対応策を議論しなければならない」と強調し、「スイスにとって戦略的に重要な企業の場合は、スイス競争委員会はそれぞれのケースを検討し、また所有権の大部分をスイスが所有すべきだ」と述べています。

ドリス・ロイトハルト通信相

ちなみに、2016年には中国化工集団(Chem China)が農薬大手シンジェンタを433億ドル(436億スイスフラン)で買収しています。

ドイツのシンクタンク、メルカートア中国問題研究所とベルリンのグローバル・パブリック政策研究所(GPPi)は今年1月5日、欧州での中国の影響に関する最新報告書を発表しましたが、その中で「欧州でのロシアの影響はフェイクニュース止まりだが、中国の場合、急速に発展する国民経済を背景に欧州政治の意思決定機関に直接食い込んできた」と指摘し、「中国は欧州の戸を叩くだけではなく、既に入り、EUの政策決定を操作してきた」と警告を発しています。

海外の中国メディア「大紀元」(8月19日)は米セキュリティ会社サイバーセキュリティ会社ファイア・アイ(Fire Eye)の報告を報じ、「中国共産党政府は世界規模の経済圏構想「一帯一路」を利用して、スパイ活動を拡大させている。諜報はプロジェクト建設地域のみならず、海外現地の中国の電子商取引プラットフォームや孔子学院を通じて、情報収集や世論操作が行われている」と指摘しています。(「米大学で『孔子学院』閉鎖の動き」2018年4月13日参考)。

ジグマ―ル・ガブリエル氏(当時外相)は2月17日、独南部バイエルン州のミュンヘンで開催された安全保障会議(MSC)で中国の習近平国家主席が推進する「一帯一路」(One Belt, One Road)構想に言及し、「民主主義、自由の精神とは一致しない。西側諸国はそれに代わる選択肢を構築する必要がある」と述べ、「新シルクロードはマルコポーロの感傷的な思いではなく、中国の国益に奉仕する包括的なシステム開発に寄与するものだ。もはや、単なる経済的エリアの問題ではない。欧米の価値体系、社会モデルと対抗する包括的システムを構築してきている。そのシステムは自由、民主主義、人権を土台とはしていない」と明確に指摘しています「独外相、中国の『一帯一路』を批判」2018年3月4日参考)。

ジグマ―ル・ガブリエル氏(当時外相)

習主席は昨年秋の共産党大会で権力基盤を一層強化し、シルクロード経済圏構想「一帯一路」などで覇権主義的な動きを強めてきたましたが、ここにきて反習近平派の巻き返しを受け、党内の権力基盤が揺れ出しているという情報が流れてきています。

一方日本はといえば、中国の地方政府幹部による「日本詣で」が再び増えています。日本企業の誘致を目的に幹部級が来日する投資説明会が相次いでおり、日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると2018年度は17年度の2倍程度に増える見込みです。日中関係が悪化した時期に急減したのですが、外交関係の改善が徐々に進んでいることが背景にあります。

なぜ中国が日本との外交関係を最近改善してきたかといえば、それは明らかです。米国をはじめとして、EU諸国も中国に警戒を強めてきたからです。中国としては、外資が逃げ出していく中、日本企業を騙して沈もうとする舟に誘い込む魂胆です。甘い言葉に乗せられて一旦入ってしまったら、それこそ地獄の始まりです。

我が国も中国共産党独裁政権が推進する経済活動に対して警戒を緩めてはならないです。

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2018年10月15日月曜日

米国防総省アドバイザー「体制変革まで米中対立続く」―【私の論評】米国は中共の中国統治の正当性を完璧に覆す(゚д゚)!

米国防総省アドバイザー「体制変革まで米中対立続く」

エドワード・ルトワック氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 米国防総省のアドバイザーなどを務め、戦略論研究で知られるエドワード・ルトワック氏が来日し、毎日新聞のインタビューに応じた。貿易や知的財産権などを巡る米中対立について「長期間に及ぶことになる。対立は中国共産党政権が崩壊するまで続くだろう」と語った。

 米政界における親中派はもはや「壊滅状態」と指摘。現在は軍需産業や外交ロビーに加え、シリコンバレーなどのハイテク企業も対中圧力を求めるようになり、米政府の「締め付けが始まっている」と強調した。

 トランプ政権の発足直後、ハイテク産業は「自分たちのビジネスに干渉しないでくれという姿勢だった」が、中国による知的財産権の侵害事案が相次ぎ、現在は「ワシントンに来て、助けが必要だと要請するようになっている」という。

 米中両国が核兵器保有国であることから「米中が軍事衝突する可能性はない」とも強調。ただ、その結果、かえって対立は長引き、共産党支配が終わる「レジーム・チェンジ(体制変革)」まで収束しないと予測した。一方で「日米ともに中国とビジネスを続ける意欲を持っているという意味で、米ソ冷戦とは異なる」と指摘した。

 米政府による「締め付け」の一例として、最近、ワシントンを訪問した中国政権に近い中国人有識者が、出国間際の空港で米連邦捜査局(FBI)の捜査員に呼び止められ、誰とどこで会ったかすべて申告するよう求められた事案があったことを明かした。ルトワック氏は「米ソ冷戦もこうした締め付けから始まった」と指摘した。【古本陽荘】
【私の論評】米国は中共の中国統治の正当性を完璧に覆す(゚д゚)!

ルトワック氏は、インタビューで以下のようなことも述べています。

「(米中間の)貿易摩擦はビジネスの問題ではない。中国が支配する世界、中国に牛耳られた経済の中で生きていくのか、それとも複数の極がある世界で生きていくのか、という問題だ」(朝刊解説面より)
「地政学の時代には対決は戦争によって終わったが、米中対決は主に地経学の戦略によって争われている」「米国や日本の企業をチェックなしに中国企業に買わせたり、先端技術を盗むことを許したりすることは終わりにしなければならない」(解説面より)
ルトワック氏の米中冷戦に関する予測は、私のものと同じです。私の予測は、このブログに何度か掲載してきました。その内容を以下に簡単にまとめます。主に2つのシナリオか考えられます。

1.まずは、中国国内は、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が行わていないので、中国が構造改革をしてこれらをある程度成し遂げるまで、米中冷戦は続きます。

ただし、中国が構造改革をして、これらに取り組んだ場合、中国共産党は中国統治の正当性を失い崩壊します。中国共産党による中国統治の正当性はもともと、脆弱なのですが、そこに民主化、政治と経済の分離を、法治国家化を行ってしまえば、ますます中国人民は、中国共産党の1党支配による統治の正当性に疑問を抱くようになり、これが体制変革に結びつくことになります。

この場合、冷戦は少なくとも10年〜20年は続くことでしょう。
7月1日、香港中心部で民主化を求めデモ行進する市民ら

2.中国共産党としては、構造改革を忌避するかもしれません。そうなると、米中冷戦はさらに長期戦となり、中国経済はかなり弱体化しますが、それでも米国は中国の体制が変わらない限り、対中国冷戦をやめることはなく、最終的には中国が、経済的に弱体化し、他国に対して影響力をほとんど失うことになります。

中国は図体だけが大きい、アジアの凡庸な独裁国の一つに成り果てます。これには、20年〜30年かかることでしょう。

さらには、上記の2つのシナリオが混合したものになることも考えられます。あるいは、いずれからの段階で中国がいくつかに分裂するといことも十分に考えられます。

いずれにしても、かつての米ソ冷戦がソビエト連邦の崩壊で終わったように、米中冷戦も長期にわたり続き、いずれ何らかの形で中共が崩壊し、体制転換がなされることになるでしょう。

ソ連時代の戦車工場の廃墟

ソ連は中国に比較すると人口は現在でも1億4千万人あまりであり、あの広大な領土からすると、かなり少ないことがあげられます。中国の人口は、現在13億人を超えます。中国のほうが遥かに人口が多く、人口密度が高いです。中国が経済発展すれば、巨大市場ができあがる可能性が大です。

だからこそ、ルトワック氏が語るように、「日米ともに中国とビジネスを続ける意欲を持っているという意味で、米ソ冷戦とは異なる」のです。

中国が構造変革をして、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を成し遂げれば、中国全土に中間層が多く輩出して、これら中間層が自由に社会経済活度を活発化し、かなり豊かになることでしょう。

現在の中国はいくら経済発展したとはいえ、人口が多いからGDPが世界第二位の経済などとしていますが、その実国民一人あたりのGDPは未だ米国や日本には遠く及びません。まだまだ、大きな伸びしろがあるのです。

だからこそ、米国としては中国が経済発展すれば、先進国と同じような体制になると信じていたのですが、その期待は過去数十年にわたり裏切られ続けてきたのです。だからこそ、トランプ政権は体制返還を促すため米中冷戦を開始したのです。

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2018年10月14日日曜日

コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論―【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つべき(゚д゚)!

コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論

ロイター: Peter Thal Larsen

Peter Thal Larsen

企業を分析する際に、負債だけをみる人は真剣な投資家とは言えないだろう。しかし、こと国の分析となると、その国の富よりも債務にばかり着目するファンドマネジャーは多い。

国際通貨基金(IMF)は、国家財務の資産側にもスポットライトを当てることで、バランスを取り戻そうと努めている。

IMFが10日公表した世界経済生産の61%を占める31カ国の財政モニター報告書には、驚くべき指摘が並んでいる。公的部門の正味資産の合計額は101兆ドル(約1京1000兆円)に上り、合計国内総生産(GDP)の219%に相当する。一方、公的債務の合計は同94%であり、資産はその倍以上あるということになる。

巨額の借金を抱える日本の場合、負債額はGDPの283%に相当するが、その半分以上を日本銀行を含めた政府機関が抱えている。他の資産も考慮に入れて試算すると、日本の「純資産」はほぼプラスマイナスゼロになると、IMFは指摘している。

IMF Fical Motitor 2018に掲載されたグラフ

一方で、財政黒字を誇るドイツの場合、純資産はマイナスだ。

こうした分析は、完璧にはほど遠い。根拠となっているデータは統一性に欠ける。そして、資産と負債の全体像を把握しようとする中で、公的年金制度の将来的なコストや、地下に眠る自然資源の価値などについては、大胆な推計を用いることになる。また、国有企業や資産は簡単には売却できない。

だがそれでも、国の富をより明確に把握することは、いくつかのポジティブな効果をもたらす。1つには、純資産を増大させる公共投資と、借金で財源を作った補助金の区別が明確になる。また、よりよく資産を管理するよう国に圧力が加わる。

IMFがモニターした31カ国の資産利益率は、2010─16年において平均1.9%だった。これに加えて、GDPの3%程度の利益を搾り出すことができれば、先進国が徴収する法人税と同程度の歳入を手にすることになる。

こうした説明責任に対する政治的な消極姿勢が、公共資産に関する公式データの不備を招いているのだろう。

たがその中でも、一部の国は自ら範を示しつつある。ニュージーランドは、6月までの1年間で純資産が1300億ニュージーランドドル(約9兆4000億円)に達し、GDP比で45%と前年の40%から増加したと発表した。

IMFに背中を押され、他の国も、近くバランスシートの資産側について、より詳細な情報を投資家に提供し始めるのではないだろうか。

【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つしかない(゚д゚)!

つい一昨日このブログではかなりIMFを批判しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
IMF「対日4条協議」の内幕 財務省が言わせる「日本は消費増税すべきだ」 ―【私の論評】愚かなIMFを緊縮財政に利用する屑組織財務省は解体すべき(゚д゚)!
IMFのラガルド専務理事(右)と会談する麻生太郎財務相(左)=4日、財務省

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では「IMFは1990年代から2000年代にかけて緊縮一辺倒であったことを12年に間違いだったと認めていた」ことを掲載しました。要するに、経済が悪化した国々が過去にIMFの融資を求めたのですが、そのときにIMFは財政均衡を重視して、それらの国々に緊縮財政をすることを条件に融資をしたのです。

その結果どういうことになったかといえば、IMFから融資を受けた国々すべてが、経済の悪化を是正することができずとんでもないことになったのです。

ところが、財務省はIMFの名前で自らの見解を述べることで外圧として利用できるので、最近の4条協議で、IMFが「日本は消費増税すべきだ」という意見を述べているのですが、まず財務省がそう言わせていると思って間違いないのです。

本来ならば、IMFはこうした財務省の悪巧みを見破って正しいコンサルティングをすべきなのに、財務省に唯々諾々と従い、財務省の言うとおりの「日本は増税すべき」などというとんでもないコンサルティングの結果を公表しているのです。酷いの一言につきます。この点では、絶対にIMFの馬鹿さ加減を許容することはできません。

それとは打って変わって、今回のIMFの報告書はまともな内容です。以下にそのリンク先を掲載しておきます。

 https://www.imf.org/en/Publications/FM/Issues/2018/10/04/fiscal-monitor-october-2018 …

この報告書では、中央銀行(日本では日銀)などを含んだ広義の政府部門のバランスシートでは日本はほとんど純債務はありません。さらに、最近の日本では日銀が市場からかなり国債を買い取っています。

日銀は日本政府の下部組織ですから、この国債は債務とはなりません。日本政府と日銀の統合(統合政府といいます)したBSでは、統合政府ベースでは、借金がないどころか、財政は黒字です。

こんなことを言うとまた、愚かな人々が「そんな馬鹿な」などと言い出すかもしれませんが、こんな一見理解しがたいことになるのは、過去の日本があまりにも長い間(20年以上)金融引締めを実行してきたからです。こんな、異常な状況は古今東西にみられません。

政府の資産と負債の両方を見るとという見方は比較的最近多くの政府で実施されるようになったので、IMFは先の報告書のような比較分析ができるようになりました。

統合政府ベースのBSは、それを作成している国は、まだ少ないです。そのうち、多くの政府が真の自国の財政などを分析するために作成しはじめたなら、IMFの報告書にも統合ベースのBSが掲載されることになるでしょう。

日本の純資産はプラマイゼロである、すなわち政府の借金はゼロであること示すブログ冒頭のロイターのビーター・サル・ラーセン(Peter Thal Larsen)ような記事はなぜか日本のマスコミでは、ほとんど報道されません。これと同じことは、日本ではいわゆるリフレ派という人々が20年くらい前から言ってきたことです。

このブログでも、ブログを創設したばかりの頃(2007年)から、掲載したきたことです。このIMFレポートは財務省の影響がほぼないので、こういう情報を日本のマスコミは報道すべきですが、財務省に忖度しているか、文字やグラフ読めないかのいずれかなのか、ほとんど報道されません。

さて、上の記事を読んだとしても、記事の中で「そして、資産と負債の全体像を把握しようとする中で、公的年金制度の将来的なコストや、地下に眠る自然資源の価値などについては、大胆な推計を用いることになる。また、国有企業や資産は簡単には売却できない」という部分を過大に受けとめる人も多いのではないでしょうか。

それこそ、日本政府の資産を昔の銀行の不良資産のように考え、「日本の資産は不良資産ばかりで、すぐに売ることもできないから、結局は日本は借金まみれなのだ」などと思い込むのは、勝手にしても、それをまともに確かめることもせずドヤ顔で周り吹聴する馬鹿で愚かな人や悪意に満ちた人も多いです。

実は日本政府の資産の7割以上が、現金または現金と同等ですぐに現金に換金できるものです。さらに他の資産も不良資産ではありません。かなり売りやすいものばかりです。現金にすぐに換金できるもののわかりやすい代表例としては、日本国国債があげられます。

日本国債は金利が非常に低いことはご存知でしょう。しかも、日銀が金融緩和のため市中銀行等からかなり買い取っているので、市場ではかなり不足しています。だから、日本政府が有する国債など販売すれば、すぐに入れ食い状態になります。

このような状態なら新規で国債を刷っても入れ食い状態になるのは明らかですが、緊縮を旨とする財務省はそんなことは絶対にしようとはしません。震災復興のときは、国債ではなく、復興税で賄うなどという、常軌を逸した、非常識を実行しました。このままだと、いずれ日銀の金融緩和にも支障をきたすかもしれません。

ブログ冒頭の記事では、「企業を分析する際に、負債だけをみる人は真剣な投資家とは言えないだろう。しかし、こと国の分析となると、その国の富よりも債務にばかり着目するファンドマネジャーは多い」としています。

全くその通りです。国の富よりも債務ばかりに着目するような、ファンドマネジャーは長い目で見れば、成果をあげられず、敗退するしかないのでないでしょう。

このような理屈は何もファンドマネジャーでなくても、まともな常識を持っていればすぐに理解できるはずです。例えば、遺産相続です。

遺産相続の時に、負債だけみて、負債が膨大にあるから、相続放棄するなどという人がいるでしょうか。細かいことはさておき、大局的には負債だけでなく、資産もみて、負債よりも資産の方が大きいとみれば、相続し、負債のほうが資産よりも大きければ、相続放棄をするというのが当たり前です。

しかし、財務省はこのような常識もないようです。私は財務官僚は優秀であると聴いていたのですが、彼らは負債ばかり強調して、資産のことはいわずに、しかもそれを前提として消費税増税をすべきだと言います。

最初は省益だけを追求しているため、悪意でそのようなことを言っているのかとも思っていましたたが、近年の財務省の数々の幼稚な不祥事などみているとあまりに社会常識に欠けているようにみえ、どうみても頭が悪いようにしか見えません。

東大を卒業して、難しい試験に合格して、将来を嘱望されて財務省に入るまでは、確かに彼らは世間一般よりも頭が良いのかもしれませんが、財務省に入ってからは財務官僚の慣行などに従っているうちに、社会常識すら破ってしまうように頭が悪くなっているのかもしれません。

特に、周りの他の官庁や、マスコミ、識者などが彼らにちやほやして、国民生活や経済に全く関係ないところで、いろいろ忖度をするので、自らを成長させる機会を失い、頭も財務省に入ってから月日を経るごとに悪くなってしまったのかもしれません。

先のIMFの報告書には、各国の財政政策の姿勢がより積極的なのか、あるいより緊縮的なのかの分析まであります。以下の図のFISCOは、1に近いほど景気の悪化に順応して財政政策を機動させているかということを示しています。狭義の政府部門のGDP債務比率によって財政政策の機動性が拘束されてるとも読めます。これは、財務省病の根源である、財務省忖度指数ともいえるかもしれません。


やはり、ここまで常識に欠ける財務省は解体して、複数の他官庁の下部組織にして、そのDNAを絶つというのが、日本にとっては一番良いことかもしれません。

中途半端に解体すると、彼らはゾンビのように復活し、他官庁を植民しまた緊縮病を日本中に撒き散らすことになります。

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2018年10月13日土曜日

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【田村秀男のお金は知っている】相次ぐ謎の要人拘束は習主席の悪あがき? 米との貿易戦争で窮地に追い込まれた中国

范氷氷(ファン・ビンビン) 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 中国では要人の行方不明、拘束、さらには引退劇が相次いでいる。謎だらけのようだが、拙論は米中貿易戦争で追い込まれた習近平政権の悪あがきだとみる。

 ここ数カ月間で行方をくらましていた多くの要人のうち、何人かの消息が最近判明した。注目度ナンバーワンが、人気女優の范氷氷(ファン・ビンビン)氏(37)で、今月3日、脱税などの罪を認め、追徴金など8億8300万元(約146億円)を支払うことで赦免された。

 中国のネット情報によれば、彼女は北京市内などに保有する約40軒の超豪華マンションを売却して支払いに充当する。「カネで刑務所行きを免れるとは許せない」との批判がネットで渦巻いている。

 中国政府は7日、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の孟宏偉総裁の身柄を拘束していると発表した。中国の公安省(警察)次官でもある孟氏は、ICPO本部があるフランスのリヨンから中国に向けて9月25日に出発した後、行方不明となっていた(10月8日付の英BBCニュースから)。

孟宏偉氏

 フランス・リヨンに本部のあるICPOのトップを拘束するという異常ぶりに、世界があぜんとしているが、習政権にはそんな国際的反響などに構っていられない事情がある。

 孟氏は隠然とした影響力を持つ江沢民元党総書記・国家主席派に属するといわれる。習氏が追及する党長老たちの巨額資金の対外持ち出しに関与していると疑われたのだろう。

 9月10日頃には、ネット・ビジネスで大規模な流通革命を起こした中国を代表する民営企業、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)氏が来年9月に会長を退任するという衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。巨万の富を築いた本人は後継者も指名し、あとは大学教授として後進の育成にあたると言い、もっともらしいが、真に受けてはいけない。馬氏もまた、巨額の金融資産を海外でも築き上げている。

Forbes氏の表紙を飾った馬雲氏
 
 女優の范氏の資産も中国国内の超豪華マンションだけというはずはない。海外に莫大(ばくだい)な資産を配置しているに違いない。

 范氏、馬氏に限らず、中国の大富豪、実力者たちがよく使う資産逃避ルートは必ずといってよいほど、香港経由である。香港こそはICPOによるマネーロンダリング(資金洗浄)の最大の監視ポイントである。孟氏がその職権を利用して、要人たちの資金逃れを手助けしていたと習政権が疑っているかもしれない。このシナリオからすれば、孟氏を拘束する目的はただ一つ、中国からの資金逃避ルートを暴き、遮断することだろう。

 習政権はトランプ米政権による貿易制裁を受け、苦境にさらされている。株価の急落に歯止めがかからないばかりではない。制裁関税に伴う輸出競争力減を補うために人民元安が不可避だが、資本逃避が加速する。それを止める最後の手段は何か。答えは上記の「事件」にあるはずだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】要人拘束でドルを吐き出させるも限界!金融戦争では中国に微塵も勝ち目なし(゚д゚)!

米中貿易戦争悪化に伴い人民元相場が急落しました。その原因はキャピタルフライトであると予想され、これに対応する形で中国当局は国有銀行に通貨防衛のための為替介入をさせました。

「貿易戦争悪化」→「中国の輸出の冷え込み」→「企業業績悪化」→「株価下落→海外投資家の離脱」→「人民元売りドル買い」という負の連鎖が起きているわけです。

また、これに連動する形での国内勢の動きもあるのでしょう。中国政府は2015年の中国株式バブル崩壊以降、外貨規制を強化し、国内からのドルの持ち出しを厳しく規制しました。

個人の両替規制を年間5万元(83万円程度)に制限し、破ったものに対して制裁を課すようにしました。企業に対しても、基本届け出制にして、500万ドル以上の取引に関しては、より厳しい審査を課すことにしました。

これにより、一旦は収まったかに見えた人民元に対する不安が、再び市場を襲っているのです。中国の対外債務は1兆7,106億ドル(2017年末)、それに対して外貨準備高が3兆1106億ドル(2018年5月末)。

外貨準備とは、自国通貨売りなどに備え、外貨が不足したときに使う保険のようなもので、これがなくなると、通貨危機が発生します。そのため、対外債務に合わせた額が必要とされます。中国の場合、表面的な数字だけを見れば、対外債務の2倍近い外貨準備があるので、全く問題がないように見えます。

ところが、実は中国の場合、外貨準備の質がわからず、実際に使える額が全く見えないのです。日本の場合、外貨準備のほぼすべてが米国債で構成され、保有者は政府と日銀であるため、全額を為替介入などに利用することができます。

それに対して、中国の場合、米国債は1,2兆ドル程度しかなく、国有銀行保有分が含まれています。基本的に、外貨準備というのは外貨をいくら持っているかであり、それが借金であろうとも外貨である限り、外貨準備にカウントされます。中国の場合は、国有銀行保有分の多くが海外からの借り入れが原資であると思われ、信用不安の際には一気に失われる可能性があります。

実は、下のグラフご覧いただくと、おわかりになるように、中国の外貨準備の減少は2017年初頭に底を打っています。しかし、外貨準備のトレンドは2014年後半以降は下向きであり、対外負債は増加し続けています。


対外負債は2017年9月時点で外貨準備高の1.6倍、そうして対外負債の一部が外貨準備高に流用されているのです。

つまり、中国という国は外部からの借金なしには(対外負債を増加させなければ)、習近平の目論見どおりに国を回すことができない状況になっていました。

ちなみに、中国の対外債務1兆7106億ドルの内、1兆ドル程度が短期の債務とされており、一気に返さなくてはいけなくなる可能性もあるのです。そして、中国の外貨準備の内、米国債は1兆2000億ドル程度(米国財務省)しかなく、ドルだけで見ればその差額は2000億ドル程度しかないのです。実際には他国資産をドルに換えることができるので、それ以上の規模になるのですが、その中身が全くわからないのです。

そして、最近の通貨防衛の介入も非常にイレギュラーな形で行われました。それは中央銀行ではなく、国有銀行がNDF市場(ドル建てデリバティブ)でドル先物を買い、ほぼ同額を現物市場に流す形で行われたのです。

これは中央銀行が自由に使える外貨準備を持っていないことの傍証であるといえます。そして、これを続ける限り、外貨準備が失われ続け、通貨危機のリスクは上がってゆくことになります。

為替介入でも、自国通貨売り外貨買いの介入(通貨安)であれば、自国通貨は自由に手に入るため、何の問題もないですが、通貨防衛のための介入は、他国の通貨を必要とするため限界があります。

人民元とドルの場合は、上の円を元とみたてて理解してください

さらに、為替介入で自国通貨高をするにしても、自国内で自国通貨を際限なしに多くすれば、インフレになるので、いつまでも続けることはできません。そのため、通貨戦争なる概念は本当は虚構です。いくら自国の通過防衛をしたとしても、それでハイパーインフレにでもなってしまえば、本末転倒です。

そして、中国がこの状況から抜け出すには、基礎的条件の改善(対米貿易の拡大など)や通貨スワップによる他国の通貨保証が必要になるわけですが、現在の米中の状況からすれば非常に厳しいです。

それ以外の方法としては、人民元を完全に自由化し、為替介入をせず、人民元を温存するという方法がありますが、この場合、人民元は暴落し、外貨建て債務を持つ企業などの破綻と輸入品の高騰によるインフレと国内の混乱が待っているでしょう。

しかし、国が破たんするよりはその方が痛みは少ないのでしょう。米中貿易戦争、次のステージは金融戦争であり、これは米国が圧倒的に有利な戦いです。

このような状況ですから、習近平としては現在国内にあるドルは一銭たりとも海外に逃避させたくはないですし、海外に逃避したドルも一銭でも自分たちの手元に呼び返したいのです。

だからこそ、ドルを海外に逃避させた人物やさせそうな人物はすぐにでも身柄を拘束して、ドルを吐き出させて自分たち中共のものにするという悪あがきにでた のです。今後も、要人の身柄拘束は続くでしょう。ただし、それにも限界はあります。

これが、基軸通貨国であれば、金がなくなれば、お金を刷り増せば良いだけの話ですが、中国は、米国のお金ドルを勝手に刷り増すことはできないです。為替介入や、一対一路などの海外でのプロジェクトを実行するためにはドルは必要不可欠です。

それに、国際的な元の信用は、中国が米国債権やドルそのものを大量に抱えていたから、創造されてきたのであって、ドルなし中国の人民元は、このままだと紙切れになるおそれもあります。

この状況では、中国がいくら頑張ったとしても、米国には金融戦争では勝つことはできないことは最初からわかりきっています。巷では貿易戦争で騒いでいますが、貿易戦争自体は米中にとって、あまり悪影響はなく、中国が米国に屈するにはいたらないでしょう。

ただし、金融戦争になれば話が違ってきます。ドルを自分で必要なだけ刷り増すことができるし米国は世界の金融を握っているといっても過言ではありません。米国のほうが圧倒的に有利です。中国は屈する以外に道はありません。

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