2018年11月18日日曜日

来年1月4日の国会召集は妙手 消費増税の最終判断は4月に 7月衆参ダブル選の可能性も―【私の論評】増税すれば、安倍政権はレイムダック化し憲法改正もできず、何も良いことはない(゚д゚)!

来年1月4日の国会召集は妙手 消費増税の最終判断は4月に 7月衆参ダブル選の可能性も


高橋洋一 日本の解き方



国会 衆議院会場

来年の通常国会を1月4日召集とする説が浮上している。消費増税をめぐる判断や憲法改正のスケジュール、参院選と衆院選との同日選の可能性など、来年想定される政治日程を考えてみよう。

 政治の世界は一寸先は闇といわれる。そのとおりなのだが、その中でも予測をするためには、スケジュールがどうなるかを検討するのはイロハのイだ。そこでまず押さえておくのは事前に確定している政治・外交日程と経済指標の発表日である。

 確定している政治日程として、来年1月中に通常国会召集、3月中に来年度予算案成立(見込み)、4月上旬から中旬に統一地方選、5月1日改元、6月中に通常国会会期末、7月中に参院選、7月28日参院の任期満了となっている。

 外交日程は、今年11月末にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議、来年6月末の大阪でのG20首脳会議がある。

 経済指標発表では、来年2月中旬に2018年10~12月期国内総生産(GDP)速報値、来年5月中旬に1~3月期GDP速報値が予定されている。

 来年の最大の政治イベントは7月の参院選だ。この結果いかんでは憲法改正のスケジュールなどは全く無意味になってしまう。そこで、参院選の争点となりうる経済、消費増税の是非に関心がいく。消費増税については、法律上、来年10月から実施が予定されているが、まだ安倍晋三首相が最終決断したわけでない。本コラムでも書いてきたが、今のところ可能性は高くないものの、来年4月に君子豹変(ひょうへん)する可能性なしとはいえない。

 焦点は参院選の投開票日だ。確定しているのは7月28日の任期満了である。公職選挙法では、「議員の任期が終わる日の前30日以内」(32条1項)と、この30日間が国会閉会から23日以内にかかる場合は閉会から「24日以後30日以内」(同2項)だ。

 結論を言おう。国会は150日間開催なので、できるだけ早く通常国会を召集したほうが、延長をしなければ会期末が早くなり、結果として参院選の開催オプションが広がるのだ。国会召集は法律上、1月中なら可能なので、一番早い1月4日にすると参院選は6月28日から7月27日の間、日曜なら6月30日、7月7日、14日、21日で可能になる。

 いずれにしても、国会召集日がいつになるかによって参院選の日程が絞られる。

 国会開催中に首相が衆議院を解散すれば、40日以内で総選挙になるので、衆参ダブル選挙も可能になる。来年の通常国会で予算案以外の法案を出さずに1月に早期召集すれば、参院選日程のオプションが広がる。その場合、7月のどこかで衆参ダブル選もありえる。

 ダブル選挙は、野党の共闘が困難になるので、与党有利といわれている。年内は政府・与党内で来年度予算が作られるが、来年早々から与野党間で国会スケジュールをめぐるつばぜり合いがあるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】増税すれば、安倍政権はレイムダック化し憲法改正もできず、何も良いことはない(゚д゚)!

増税は、まともに考えれば、安倍政権にとっては命取りになることははっきりしています。なぜなら、10%増税を予定通りに来年の10月に実行してしまえば、その後安倍政権の支持率は確実に落ちます。そうなると、国会では改憲派が過半数以上という状況を維持するのは困難になります。

安倍総理

そうなると、残りの任期中には、憲法改正どころか、レームダックになってしまうことになります。安倍総理は念願の憲法改正には、手も足もでなくなってしまいます。

私は、安倍総理がこのような道を選ぶとは思えないのです。安倍総理は、国会て改憲派が半数以上という状況を維持しつつ、何とか憲法改正に道筋をつけたいと考えているはずです。であれば、増税を回避あるいは、延期するのが、もっとも安全策であると考えるはずです。

それに、安倍総理自身は、10%への消費税増税は全く無意味であることをご存知であると考えます。

消費税を増税しても無意味であることは、このブログでも過去に何度も掲載してきました。これについては、過去のブログの記事を参照していただきたいと思います。それはそれとして、経済的な知識などなくても、常識で考えれば増税しても無意味なことは小学生でも簡単に理解できることです。本日はそのことを以下に掲載します。

まずは、以下に1989年と2016年の税収内訳を掲載します。1989年というと、3%の消費税が導入された年です。


2016年は、消費税が8%です。1989年と、2016年を比較すると、消費税の税収はあがっていますが、所得税と法人税は下がり、総税収は54.9兆円と55.5兆円でほぼ同水準です。

消費税の無かった1988年の税収も54兆9000億ですから 消費税を何%上げても総税収は変わらないといえるのではないかと思います。結局総税収上げるなら経済成長するしか無いようです。

以下に、過去の"消費税の「導入」と「増税」の歴史"をチャートにまとめたものをあげておきます。


以下には、消費税を導入してから直近までの税収の推移のグラフを掲載します。


消費税をはじめて導入した1989年には、税収は確かに伸びていますが、消費税を上げる直前の2013に至るまで、1988年の税収を一度も上回っていません。それでも、消費税を8%にした後の、17年、18年には、1988年の税収を若干上回っているようですが、それもごく僅かです。

さらに、先にあげたように、2016年の1989年と総税収はほぼ同等なのですが、所得税、法人税は減って、消費税が増えています。

これは、常識的に考えると、消費税をあげると景気が落ち込み、所得税と、法人税が減少し、税収はあまりかわっていないことを示しています。

これをみただけでも、消費税増税はほとんど意味がないことがわかります。

景気の回復指標としては、値動きが激しい生鮮品とエネルギー価格を抜いた、コアコアCPIの前年同月比が参考になりますが、直近の数字は+0.4%の微弱な上昇を示しています。日銀のインフレターゲットは2%ですので、全く達成できていません。

このようなときに増税すれば、微弱や0.4%の物価上昇など、消費が低迷して、すぐにマイナスになることでしょう。せっかくデフレの重力から抜けかかっている日本経済が、再びデフレ状態に舞い戻ることになります。

せっかく日銀が、マイナス金利政策を導入し、市場から国債を買って金融緩和をしているにもかかわず、これでは景気の回復を政府(財務省)が邪魔をすることになります。

しかも、何らかの規制をするにしても、外国人労働者を受け入れ、さらに増税をするということになれば、日本人はもとより外国人も失業というダブルパンチを見舞うようなものです。

この試みは、結局日本人は無論のこと、まさか一端受け入れた外国人を生活できないなら母国に帰れなどとはいえないでしょうから、外国人の生活保障という形で跳ね返ってくることになります。財務省は、財政と社会保障の一体改革などという看板をあげているにもかかわらず、消費税をあげて生活保障のコストをあげるという全く相矛盾したことになります。

財務省は、消費が下がらない前提で、消費税1%の増税で、税収2.4兆円の増収などというとんでもない計算をしていますが、本当に増税して個人消費がさがならないなどと言い切れるのでしょうか。14年に増税したときは、個人消費が落ち込み、その悪影響はかなり長期わたって続きました。

税収を上げる方法は、税収の式を見ればすぐに理解できます。

税収=名目GDP✕税収弾性値✕税率
税収弾性値=税収の伸び率÷名目成長率

1995年から2013年までの財務省公式税収弾性地平均は4.4です。この式からも、税収をあげるには、税率を1%あげるよりも、名目GDPを1%あげるほうが、4.4%税収が増えることがわかり、はるかに増えることが理解できます。

税収を増やすには、マイルドなインフレによる経済成長にともなう税収アップ以外にはありえません。

どうしても、消費税を10%にあげたいというのなら、会計上は10%ということにして予算を組み、消費税減税法を作れば良いです。そもそも、消費税をあげて皮算用の税収を稼げない場合は、国債を発行することになるわけですから、減税して国債発行するのも同じことです。

インフレターゲット2%を達成するには、現在の8%では達成できないのは、もうわかっているのですから、現在消費税5%、できれば0%にまで減税すべきです。

インフレ率が2%超えてきたら、減税分を減らして8%にして、それでも歯止めが止まらなければ10%にするなどの調整が必要です。

それでも、まだインフレが亢進するというなり、マイナス金利をやめれば良いのです。

それでも、まだ亢進するというなら、今度は日銀が溜め込んだ国債を今度は市中銀行に売り出し、日銀が現金を吸い上げればよいだけの話です。国債の金利もかなり下がっているにもかかわらず、現状はかなり国債は品薄ですし、日銀が国債を売り出せば、入れ食い状態になるのはわかりきっています。

ようするに、ハイパーインフレの心配など全くないということです。

安倍総理には、無意味な消費税増税は、先送りもしくは廃止していただき、そのためには、「消費税先送り」を公約として、来年は衆参同時選挙を行い、大勝利して、経済を立て直し、国民の支持率をさらにあげて、改憲勢力をさら多くして、改憲に成功していただきたいものです。

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2018年11月17日土曜日

米中間選挙 フロリダ州の「清き一票」集計でお粗末な実態―【私の論評】米国では不正選挙はお家芸だが、選挙のない中国よりははるかにまとも(゚д゚)!

米中間選挙 フロリダ州の「清き一票」集計でお粗末な実態

米上院選フロリダ州選挙区は、民主党現職のビル・ネルソン議員(左)と
共和党のリック・スコット候補(右)による接戦となったが・・・・・

 米中間選挙(6日投開票)で大接戦となり上院選と知事選の勝敗が決まっていない南部フロリダ州で16日、上院選の投票結果について手作業の再集計が始まった。近く結果が判明するが、トランプ大統領はすでに共和党候補の勝利を宣言。票の集計をめぐっては選挙管理当局のお粗末な実態も明らかになり、「世界の笑いぐさ」になることへの危機感も出ている。

 フロリダ州では15日まで機械による再集計が実施され、上院選で共和党のスコット州知事が民主党現職のネルソン上院議員を約1万2600票上回った。得票率差は0・15ポイントで手作業の再集計が義務づけられる0・25ポイント以下だった。

 知事選では共和党のデサンティス氏が黒人初の同州知事を目指す民主党のギラム氏を上回った。得票率差が0・41ポイントのため手作業の再集計は実施されないが、ギラム氏は有効票の定義などをめぐり法廷闘争を展開。敗北を認めていない。

 フロリダ州での集計に対する不信感の背景には「清き一票」がずさんに扱われている実態がある。

 FOXニュースによると、登録されたものと違う署名があるため無効になった郵便投票が4千票近くあったが、一般人が集計に当たったため十分に本人確認をできない問題が生じた。また、地元紙によると民主党関係者が有権者にわざと投票締め切り後の間違った郵送投票の期限を伝えたり、郡選管が共和党の地盤からのメールやファクスの投票を受理したりするケースもあるという。

 フロリダ州では僅差となった2000年大統領選でもパンチ式投票用紙の穴の開き具合などが問題となり、再集計をめぐり激しい法廷での闘争に発展した。今回、再集計に関する審理を担当する連邦地裁判事は「選挙のたびに世界の笑いぐさになっているのに、改善されない」と嘆いた。

 トランプ氏は根拠を示さず、民主党がフロリダ州で不正投票していると主張しており、16日にもツイッターで、上院選のフロリダ州での勝利を前提として、「共和党は上院(定数100)で53対47の大勝利になる」と書いた。

 一方、接戦のため勝敗が確定していなかった南部ジョージア州知事選は16日、トランプ氏が支持した共和党のケンプ氏の当選が決まった。史上初の黒人女性知事を目指した民主党のエイブラムス氏がケンプ氏の勝利を認めた。

【私の論評】米国では不正選挙はお家芸だが、危機のときは支配層も干渉できない!選挙のない中国よりはるかにまとも(゚д゚)!

米国人には記憶力はあるのだろうかと、 私は時折疑問に思うことがあります。米国での不正選挙は随分前から明らかになっていました。無論、まだ記憶に新しい、トランプ氏が大統領になったときの選挙でも、不正選挙がありました。にもかかわらず、今回の選挙でも、ブログ冒頭の記事のような有様です。

ここで、大統領選挙を振り返ります。米国大統領となるには、ヒラリー・クリントンには山積する問題があったにもかかわらず、巨大な政治力を有する米国の人口の0.1パーセントを占めるエスタブリッシュメント(支配層)が、ヒラリーを選んだのは事実だったようです。

このエスタブリッシュメントについては、このブログでは過去に何度か掲載したことのある以下の動画をご覧いただくと良く理解できます。この動画は、2015/11/19 に公開されたものです。この時点では、米国の現大統領は当然ヒラリー・クリントンであり、トランプ氏など圏外であり、泡沫候補と考えられてました。



この動画をご覧いただけれは、まずは、米国はいわゆるエスタブリッシュメントといわれる、一般の米国人はもとより、我々日本人などの外国人など全く会う機会もない、ほんの一部の支配層が支配する国であることが良く理解できます。そのエスタブリッシュメントのうちの多数派の中国に対するエンゲージメント派は、いずれ中国は民主化するであろうと見ていたようで、中国は将来的にアメリカにとって自分たちが御せる良い市場になると信じていたようです。

この動画で伊藤貫氏は、米国には親中派のエンゲージメント派と中国反対派のコンテインメント(封じ込め)派が存在しており、アメリカの富の大きな部分を握ってるわずか上位0.1%エスタブリッシュメントの多くがエンゲージメント派であるため、エンゲージメント派が圧倒的に有利であると語っています。

ちなみに、伊藤貫氏のこの動画で語っていることは、軍事面も含めてトランプ大統領登場とともに全く崩れたと言って良いです。

ただし、2015年時点では、伊藤貫氏の見方は正しかったといえます。トランプ大統領登場とともに米国は大きく変わったのです。現在伊藤氏が米国の情勢を語れば、当時とは全く異なったものになると思います。世界情勢は日日変わっているのです。

さて、話を元に戻します。ヒラリーのスタッフ連中は大統領選挙前に、ホワイト・ハウス事務所に引っ越ししているという報道もあったくらいです。投票前に、これだけの確信があることが、事が万事仕組まれていることを示唆していたように思います。

当時は、もしも不正だったように見えた場合には、選挙結果を受け入れないかも知れないという、トランプの条件付き発言に対する批判が注目されていました。マスコミは、すぐさま「米国民主主義の信用を傷つける」とか、「人々の意思を受け入れる米国の伝統に反する」等といって、トランプ候補を激しく非難していました。

何というたわごとだったことでしょう。 不正選挙は、米国のお家芸です。地方、州、連邦、あらゆるレベルでかなり以前から不正選挙が行われていました。シカゴ市長リチャード・J・デイリーが、シカゴ、そして、イリノイ州の票を、ジョン・F・ケネディのために誤魔化したのは有名です。

当時のシカゴ市長リチャード・J・デイリー、いかにも悪徳市長の風貌?

共和党のアメリカ最高裁が、2000年大統領選挙で、フロリダ州投票の再計数を阻止して、アル・ゴア当選をはばんだのも 、もう一つの有名な事例です。出口調査と、密かにプログラムした、紙の記録が残らない電子投票装置による投票数との間の矛盾も有名です。

トランプ氏は大統領選のときには、不正選挙の疑念を持っていました。それは、どのようなものだったのでしょうか。

たとえば、米国の歴史を遡ると黒人公民権運動は、不正選挙と何十年も戦ってきました。不正は様々な手口で行われました。そもそも、公民権運動の頃の黒人は、有権者として、登録されませんでした。登録されたとしても、地域にはわずかな投票所しかありませんでした。

などなど。何十年もの戦いの結果、投票することが彼らにとっていかに困難だったのかを知らない黒人はいませんでした。このような事実があるにもかかわらず、ラジオ局NPRは、ヒラリーに忠実なアンクル・トム(忠実の下僕などに対する米国での蔑称)連中が、トランプが、アメリカの選挙結果の信頼性を中傷したのは、なんと酷いことかと語っていました。

NPRのアナウンサーが、ロシアは、ヒラリーの電子メールをハッキングしたのみならず、無害な電子メールを、有罪な内容にするため書き換えたと示唆していました。

マスコミ、その中でも米国の9割を占める、リベラル・マスコミは、不正選挙が行われる事実を知っており、連中は不正を隠蔽する仕事をすることになっているようなので、連中はトランプや、不正選挙に触れる言説を、やっきになって悪魔化していたのでしょう。

大統領選挙ではヒラリー・クリントンが優勢だと報道されていたが・・・・

多くの人々は、ヒラリーが、大統領選の質問コーナーのやりとりで勝ったという世論調査や、ヒラリーが選挙で先行しているという世論調査を信じ込んでいました。

世論調査会社は、政治団体のために働いていたようです。もし、世論調査会社が好ましからぬ結果を出せば、お客はいなくなってしまいます。望ましい結果は、ヒラリー勝利だったのです。

ヒラリーが先行しているという不正世論調査の狙いは、トランプ支持者の投票に行く気を削ぐことだったのです。

米国では、期日前投票をすべきではないようです。期日前投票の狙いは、米国のエスタブリッシュメントの0.1パーセントが、投票結果がどういうことになるかを知ることです。この情報を利用して、巨大な政治力を有するごく少数の連中が、望んでいる候補者を選出するには、どのように電子投票装置をプログラムすれば良いかを知ることができるのです。

ところが、このような不正行為があったにもかかわらず、実際には、トランプ大統領が誕生してしまいました。さすがのエスタブリッシュメントも、元々富豪であり、自ら選挙運動を資金を自前で用意できる、トランプ氏を自分たちの操り人形するすることはできなかったようです。

誰がオバマを操っているのかを風刺した漫画

トランプ大統領は、元々実業界の人間であり、それまでの大統領とは毛色がかなり異なること、それからトランプ氏は米国の口汚い軍人の口調真似て話しをして、正直者をアピールしているのでしょうが、それを逆手に取ったマスコミは、トランプ氏をまるで「気狂いピエロ」のように報道しましした。

しかし、トランプ大統領が誕生したところをみると、このトランプ氏のアピールは功を奏したのだと思います。実際、米国では一見口汚く、自分の思ったことをズケズケといい放つ人のことを正直者とみなす風潮があります。

米国の多くの国民は、当時0.1%のエスタブリッシュメントに動かされ、ヒラリーに投票したのでしょうが、このエスタブリッシュメントにも動かされない、保守層が米国には少なくとも人口の半分は存在したのでしょう。そうでなければ、トランプ氏誕生の説明がつきません。

選挙でも独自のパフォーマンスを披露したトランプ氏


ただし、このエスタブリッシュメントは、トランプが中国に反発するのを最初は、脅威に感じたのでしょうが、過去の中国のやり方を見て中国に対して疑問を感じ始めていたところに、トランプ氏が中国を批判している内容を精査してみて、トランプ氏の言うことももっともだと認識したようです。

これは、トランプ氏の挙動などから良く理解できます。トランプ氏が中国に対して本格的に対抗心をむき出しに実行動に出たのは、今年からです。昨年は、中国を非難しつつも、エスタブリッシュメントの動向を伺っていたのでしょう。さすがに、トランプ氏もエスタブリッシュメントを敵に回し続けていては、政権運営に支障をきたしたことでしょう。

トランプ大統領が就任直後すぐに、中国に本気で対抗する姿勢をみせていれば、エスタブリッシュメントはこれを脅威に感じて干渉して、できないようにしたかもしれません。しかし、トランプ大統領は、1年くらいをかけて、中国の悪辣さを徹底的に暴いていきました。

これによって、中国の悪辣さは、非民主的とか非法治国家的というだけではなく、政治と経済が分離していないことから、経済分野にも及んでおり、現在のままの体制では、エスタブリッシュメントにとっても決して良いことではないと理解したのでしょう。

だからこそ、現在、トランプ政権の始めた貿易戦争は、すでに貿易戦争を次元を超え、冷戦レベルになり、さらにこの冷戦はトランプ政権の枠を超えて、超党派の議会による「冷戦Ⅱ」の次元にまで高まっています。

こうしたことから、米国の選挙制度は確かに欠陥はあるものの、危機に直面したときは、ある程度まともに機能することが実証されたと思います。

そうして、何よりも、建国以来一度も選挙がなされたこともないような中国のような国とは全く異なることが実証されたと思います。少なくとも、危機の時には、中国にたとえると、国家主席をすぐに失脚させることができるようなものです。

そうして今回の中間選挙は、マスコミは民主党の下院奪還に注目するも、トランプ大統領にとってはこれは織り込み済みです。トランプ氏が勝ちたかった上院と州知事選では、共和党が優勢となりました。民主党は下院しか奪還できず、トランプ政権のあら探しを始めるのが関の山というところです。これでは、共和党は勝ったとまではいえませんが、民主党は負けたといえると思います。

ただし、今回の中間選挙で、エスタブリッシュメントがどちらに加勢したのか、あるいは何もしなかったのかは定かではありません。

私はトランプ大統領の誕生は、米国のエスタブリッシュメントの凋落の第一歩なのかもしれないと思っています。

トランプ大統領の誕生は、エスタブリッシュメントの屈服でもあまりす。おそらく、天文学的な数字の資金をもってしても、マスコミによる印象操作をもってしても、ヒラリーを当選させることができなかったのです。さらには、現状でも、彼らはトランプ氏を操り人形にすることはできていないようです。

いつまでも、一握りのエスタブリッシュメントが選挙や、大統領などを操るようなことはすべきではないと思います。それは当然のことです。

財力のある大富豪のエスタブリッシュメントは確かに、強大な財力・権力を背景にあらゆる情報源を持つことができるでしょうが、それにしても、いつも正しい判断ができるとは限りません。実際、中国を増長させてしまったのは、米国のエスタブリッシュメントの判断違いのせいでもあったといえます。

まともな神経をしていれば、多くの情報源があるのですから、少なくと10年前くらいには、中国が自分たちにとっては利益をもたらす相手ではないと判断すべきだったでしょう。その頃そのような判断をしていれば、今日あれほど中国を増長させることはなかったでしょう。

おそらく、トランプ大統領は任期の中で、このエスタブリッシュメントが政治に介入できないような仕組みを政治の中に組み込んでいくのではないかと期待しています。無論、これにはエスタブリッシュメントは必死で反撃しようとするでしょう。結果がどのようになるのか、今から楽しみです。

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中間選挙で有利な状況を無駄にした民主、根強いトランプ支持者の存在 ―【私の論評】米国の対中強硬路線は変わらないどこかさらに強化される(゚д゚)!


2018年11月16日金曜日

米国が本気で進める、米中新冷戦「新マーシャル・プラン」の全貌―【私の論評】日本は中国封じ込めと、北方領土返還の二兎を追い成功すべき(゚д゚)!

米国が本気で進める、米中新冷戦「新マーシャル・プラン」の全貌

北方領土問題とも無関係ではない
ジャーナリスト
長谷川 幸洋

マーシャル・プランを発表するジョージ・C・マーシャル氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ


米ソ冷戦下の「援助計画」に酷似

米国の「中国包囲網」作りが急ピッチで進んでいる。トランプ政権はインド太平洋諸国の社会基盤(インフラ)整備に、最大600億ドル(約6兆8000億円)の支援を決めた。米ソ冷戦下の欧州復興計画(マーシャル・プラン)を思い起こさせる。

支援計画は、来日したペンス副大統領と安倍晋三首相との会談後の記者会見で発表された。会談では、日本が100億ドルを上乗せすることで合意し、支援総額は最大700億ドル(約7兆9000億円)になる。各国の発電所や道路、橋、港湾、トンネルなどの整備に低利融資する。

これはもちろん、中国の経済圏構想「一帯一路」を念頭に置いている。中国は各国のインフラ整備に巨額融資する一方、相手国の返済が苦しくなると、借金のかたに事実上、取り上げてしまうような政策を展開してきた。スリランカのハンバントタ港が典型だ。

ペンス氏はこれを「借金漬け外交」と呼んで、批判してきた。今回の支援計画には、そんな中国による囲い込みをけん制する狙いがある。「自由で開かれたインド太平洋」というキャッチフレーズは、まさにインド太平洋が「中国の縄張り」になるのを防ぐためだ。

この計画を米国がいかに重視しているかは、なにより金額に示されている。ポンペオ国務長官は7月、インド太平洋諸国に総額1億1300万ドルの支援を表明していた(https://jp.reuters.com/article/usa-trade-indian-ocean-china-idJPKBN1KK1W4)。それが、なんと一挙に530倍に膨れ上がった。こう言っては失礼だが、ケチなトランプ政権としては「異例の大盤振る舞い」だ。

支援の枠組みも一新した。 この話をいち早く特ダネとして報じた読売新聞(11月10日付朝刊)によれば、それまで米国の海外支援は国際開発庁(USAID)と海外民間投資公社(OPIC)の二本立てだった。ところが、10月に海外支援を強化するビルド法(BUILD)を成立させ、国際開発金融公社(USIFDC)に一本化した。そのうえで、新公社に600億ドルの支援枠を設けた、という。

10月といえば、ペンス副大統領が中国との対決姿勢を鮮明にする演説をしたのが10月4日である(10月12日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57929)。その後、ペンス氏の来日に合わせて、日本の協力もとりつけたうえで計画を発表した。

ペンス演説から1ヵ月という動きの速さに注目すべきだ。本当の順番は逆で、トランプ政権は水面下で支援の枠組み作りを先行させ、メドが立ったのを確認したうえで、ペンス演説を世界に発信したのかもしれない。それほど、手際の良さが際立っている。

そうとでも考えなければ、わずかな期間で支援額を530倍にするような芸当は難しい。

支援額と発表のタイミングから、私は米ソ冷戦下の欧州復興計画(マーシャル・プラン)を思い出した。1947年6月、当時のマーシャル米国務長官が戦争で荒廃した欧州の復興を目的に発表した大規模援助計画である。

「冷戦のセオリー」通りの展開

米国は1951年6月までに、ドイツやフランス、オランダ、イタリアなど西欧諸国を対象に、総額102億ドルに上る食料や肥料、機械、輸送機器など物資と資金を提供した。マーシャル・プランなくして、西欧の復興はなかったと言っていい。

マーシャル・プランは単なる経済援助ではなかった。チャーチル英首相の「鉄のカーテン演説」(46年)から始まりつつあった「ソ連との冷戦」を戦う仕掛けの一つだった。自由な西欧を早く復興させ、米国とともに東側の共産勢力と対峙するためだ。

クリントン元大統領が1997年のマーシャル・プラン50周年記念式典で明らかにした数字によれば、102億ドルの援助額は現在価値にすると、880億ドルと見積もられている。偶然かもしれないが、今回の700億ドルは当時の援助額にほぼ匹敵する数字である。

チャーチル演説から1年後のマーシャル・プランと、ペンス演説から1カ月後のインド太平洋支援計画というタイミングも、まさに「歴史は繰り返す」実例を目の当たりにしているようだ(チャーチル演説など米ソ冷戦との比較は10月26日公開コラム参照、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58138)。

トランプ政権はあたかも、かつて米国がソ連相手に展開した「冷戦のセオリー」にしたがって、政策を打ち出しているかのように見える。そうだとすれば、これから何が起きるか。

経済援助から始まったマーシャル・プランは、次第にソ連を封じ込める軍事援助の色彩を強めていった。同じように、先の読売記事によれば、今回のインド太平洋支援計画も支援対象を「外交・安全保障政策上の理由から戦略的に選べるしくみとなった」という。

トランプ政権は当分、認めないだろうが、支援計画は次第に「中国封じ込め」の色彩を濃くしていく可能性がある。

ペンス演説は中国との対決姿勢を鮮明に示していたが、トランプ政権は公式には「中国との冷戦」や「封じ込め」の意図を否定している。たとえば、ポンペオ国務長官は11月9日、ワシントンで開いた米中外交・安全保障対話終了後の会見で「米国は中国に対する冷戦や封じ込め政策を求めていない」と語った。

だが、それを額面通りに受け止めるのはナイーブすぎる。私はむしろ、国務長官の口から「冷戦」「封じ込め」という言葉が飛び出したことに驚いた。言葉の上では否定しながら、それが世界の共通理解になりつつあることを暗に認めたも同然だ。

安全保障の世界では、国家の意図を指導者の言葉ではなく、実際の行動で理解するのは常識である。トランプ政権の意図は国務長官の言葉ではなく、中国の「一帯一路」に対抗するインド太平洋諸国への大規模支援計画という行動に示されている。

南シナ海は「中国の縄張り」に

一方、中国はますます強硬になっている。

米国は米中外交・安保対話で南シナ海の人工島に設置したミサイルの撤去を求めたが、中国は応じなかった。2015年9月の米中首脳会談で、習近平国家主席が「軍事化の意図はない」とオバマ大統領に言明した約束を守るようにも求めたが、中国側は「外部からの脅威に対抗する施設も必要だ」と開き直った。

それだけではない。 11月14日付読売新聞によれば、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に対して、南シナ海で外国と軍事演習するときは、事前に中国の承認を求めている。要求は中国とASEANが検討中の南シナ海における行動規範の草案に盛り込まれた、という。

草案が採択されたら、南シナ海で米国や日本とASEAN加盟国の軍事演習は事実上、難しくなる。南シナ海が中国の縄張りになったも同然だ。

米ソ冷戦下では、マーシャル・プランの後、1950年1月から対共産圏輸出統制委員会(COCOM)が活動を始め、東側諸国への軍事技術や戦略物資の輸出が禁止された。

米国は8月、情報漏えいの恐れから国防権限法に基づいて、米政府及び政府と取引のある企業・団体に対して、中国政府と関係が深い通信大手、HuaweiやZTE製品の使用を禁止した。この延長線上で、中国への輸出を規制する「中国版COCOM」の策定も時間の問題ではないか。

以上のような米中のつばぜり合いを目の当たりにしても、日本では、いまだ米中新冷戦を否定し「貿易戦争は妥協の決着が可能」といった楽観論が一部に残っている。おめでたさを通り越して、ピンぼけというほかない。

現実を真正面から見ようとせず、願望混じりの現状認識が日本を誤った方向に導くのだ。

米中新冷戦とロシアの思惑

さて、ここまで書いたところで、北方領土問題についてニュースが飛び込んできた。安倍晋三首相が11月14日、シンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、1956年の「日ソ共同宣言」を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した、という。

日ソ共同宣言には、平和条約を締結した後、歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すと明記されている。したがって、平和条約が結ばれれば、北方4島のうち、少なくとも歯舞、色丹は日本に戻ってくることになる。

ここに来て、日ロ交渉が前進しているのはなぜか。

私は、最大の理由はここでも「米中新冷戦」にある、とみる。11月2日公開コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58279)で指摘したように、ロシアは中国を潜在的なライバルとみている。中国が米国とガチンコ対決に入るなら、ロシアは逆に米国に接近する可能性があるのだ(この点は月刊『WiLL』12月号の連載コラムでも「米中冷戦で何が動くのか」と題して指摘した)。

その延長線上で、ロシア側には日本とも関係改善を図る動機があった。それが、今回の平和条約交渉加速につながっているのではないか。

9月14日公開コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57520)に書いたように、北方領土問題の最大のハードルは「返還された領土に米国が米軍基地を置くかどうか」である。つまり、米国が問題解決の大きな鍵を握っている。

だが、その米国が中国を最大の脅威とみて「戦う資源」を中国に集中させていくなら、北方領土に米軍基地を新設して、わざわざロシアとの新たな火種を作る必要はない。安倍首相もプーチン氏も、そんな安全保障環境の新展開を受けて、交渉加速を合意した可能性が高い。

東アジアはまさに大激動の局面を迎えている。

【私の論評】日本は中国封じ込めと、北方領土返還の二兎を追い成功すべき(゚д゚)!

マーシャル・プランというと、中国の「一帯一路」を中国版「マーシャル・プラン」であるとする識者もいます。

これについては、英誌"The Economist"に"Will China’s Belt and Road Initiative outdo the Marshall Plan?"(中国の一帯一路構想は、マーシャル・プランに勝るか?)という記事が参考になります。以下に要約和訳して引用します。
マーシャル・プランと言えば、大規模な資金援助であったかのように思われがちですが、実際には、驚くほど少なかったということを歴史学者は指摘しているようです。資金援助を受けた国(16ヶ国)のGDPの2.5%に満たない額というのですから、確かに、資金援助としては「小さい」としか言い様がないですね。

これに対して、一帯一路構想は、既に締結された契約投資額で既にマーシャル・プランを上回っていて、2017年5月の中国政府主催の会議では、今後5年間の投資額は1500億ドルに達し、中国当局は1兆ドルでも問題ないというスタンスのようであり、金額については、一帯一路構想の圧勝です。

「量」で勝てなかったら、「質」ではどうだ!?という感じで、定性的な比較が始まります。 
金額だけでは一帯一路構想の過大評価につながるのと同時に、マーシャル・プランの貢献度を過小評価することにもなるとして、マーシャルプランの意義を援助金の額ではなく、市場適合的な政策を促進した点にあるとしています。すなわち、米国からの援助金を受け取る条件として、欧州各国の政府は金融の安定性を回復させ、貿易障壁を取り除いたり、また、マーシャルプランによる援助額と同額の自国通貨を積み立てることが義務付けられ、この積立金は米国の承認を得た場合にのみ使用が許されるなど、マクロ経済の安定化や貿易自由化、資本蓄積の推奨など市場経済の導入を促進したわけです。 
これに対して、中国の一帯一路構想が、資金援助国の市場経済化に貢献することはないと言い切ります。というのは、マーシャル・プランの成功要因は、資金配分の役割を市場に任せたところにあり、国家資本主義の中国政府は、国内の経済でさえ市場に任せず、国家統制しているから、同構想の資金を市場に任せないが故に失敗すると結論づけています。
以上のことから、中国の「一帯一路」は、マーシャル・プランとはそもそも異なることがわかります。中国は元々、民主化、政治と経済の分離、法治国家化ができていないわけですから、マーシャル・プランが目指した、マクロ経済の安定化や貿易自由化、資本蓄積の推奨など市場経済の導入の促進などてできないということです。

一方米国の経済支援は、どの程度の範囲でこの資金を提供するかは今のところ、わからないものの、金額自体はマーシャル・プランと同規模のようです。そうして、米国としては支援対象国に対して、マクロ経済の安定化や貿易自由化、資本蓄積の推奨など市場経済の導入の促進をはかるでしょうから、やはりマーシャル・プランとかなり似た性格のものになるでしょう。

エコノミクス誌は、マーシャル・プランの成功要因は、資金配分の役割を市場に任せたところにあるとしています。一方、「一帯一路」は、資金を国家統制し市場に任せないので失敗するとしています。

このブログでは、以前から対外ブロジェクトは、自国よりもかなり大きく経済成長で実行(例えば成長率数%の成熟国が、成長率10%以上の成長国に投資)すると、見返りが大きいのですが、そうでない場合は見返りが小さいということで、現在の中国は経済成長が停滞しているもののある程度の伸びは達成しているのですが、「一帯一路」の当該国はさほど経済成長しているところはないので、「一帯一路」は、失敗するとしてきました。

AIIB当初参加国

いずれにしても、「一帯一路」は失敗するのは最初から、確定と言って良いものと思います。1980年代のソ連のように、中国の労働力がもたらした長期的な繁栄は尽きようとしており、投資によって成長神話を維持しようとしています。「一帯一路」の失敗と米国による対中国「冷戦Ⅱ」により、中国はかつてのソ連のように滅亡へと向かう力の前に倒れてしまうことになるでしょう。

一方、「新マーシャル・プラン」は、マーシャル・プランと同じように、マクロ経済の安定化や貿易自由化、資本蓄積の推奨など市場経済の導入の促進という目的にすれば、成功する確率は高いでしょう。

さらに、日本が100億ドルを上乗せすることで合意し、支援総額は最大700億ドル(約7兆9000億円)になったことも有意義であったと考えます。そもそも、中国の「一帯一路」などの対象地域になる国々は米国に対する反発心が強いです。米国が単独で投資ということになれば、かなり難しいです。

しかし、これに日本が関与し、日本がこれらの国々と米国を橋渡しすれば、かなりやりやすくなるのは間違いないです。

上の記事では、長谷川氏は、
ここに来て、日ロ交渉が前進しているのはなぜか。

私は、最大の理由はここでも「米中新冷戦」にある、とみる。ロシアは中国を潜在的なライバルとみている。中国が米国とガチンコ対決に入るなら、ロシアは逆に米国に接近する可能性があるのだ。その延長線上で、ロシア側には日本とも関係改善を図る動機があった。
としています。

米国の戦略家である、ルトワック氏は従来から、中ロ接近は見せかけにすぎないことを指摘していました。それについては、ブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【西村幸祐氏FB】ルトワックはウクライナ危機でシナとロシアの接近は氷の微笑だと分析する。―【私の論評】東・南シナ海が騒がしくなったのは、ソ連が崩壊したから! 安全保障は統合的な問題であり、能天気な平和主義は支那に一方的に利用されるだけ(゚д゚)!
ルトワック氏
この記事は、2014年5月のものですが、この時点でルトワック氏は簡単にまとめると中ロに関しては、以下のうよな予想をしています。
ロシアは、中国とは仲良くならない。シベリアなどに侵食してくる中国を脅威だとみているからだ。むしろ、ロシアは中国をにらみ、本当は日米と協力を広げたいはずだ。
実際、ロシアは以前からそう考えていたのでしょう。安倍総理も従来から、ロシアを対中国封じ込めの一角に据えたいと考えていたようです。

ここにきて、ペンス副大統領の言う「冷戦Ⅱ」が本格的に始まったわけですから、ロシアとしては日米に急接近したいと考えるのは当然でしょう。米国による制裁の停止や、日本の経済援助など喉から手が出るほど欲しがっていることでしょう。

ロシアは軍事力は未だに強力であり、そのために大国とみられていますが、一方では経済ではいまや韓国よりもわずかに下です。その韓国の経済の規模は東京都と同程度です。これを考えると、最早ロシアは大国ではありません。



北方領土交渉も、日ロの関係だけではなく、中国や米国も考慮しなければならない事項となってきたともいえます。ただし、このような状況になったからこそ、返還交渉が急加速する可能性もでてきたということです。

安倍総理としては、この機会を逃さず、さらなる中国封じ込めと、北方領土返還の両方に成功して頂きたいものです。そうして、これはやりようによっては、成功する見込みは十分にあると思います。

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2018年11月15日木曜日

入管法改正案は廃案にすべし!「外国人労働者を増やしても誰も幸福にはならない」合理的な理由とは―【私の論評】外国人労働者を増やす前に、国内の賃金を上げよ(゚д゚)!


経済評論家 / 上武大学ビジネス情報学部教授
田中秀臣




 外国人労働者の移入拡大を盛り込んだ入管法改正案の審議が本格化している。ここ数年顕在化している「人手不足」への対応を狙ったものであるという。確かに統計をみたかぎりでは、バブル経済の余韻がまだあった1992年以来の「不足感」だ。

 忘れている人や知らない人も多いだろうが、この90年代初めにも外国人労働者の受け入れ拡大が政策課題になっていた。

 私も大学院で、当時、学会の俊英であった故・清野一治氏の論文「国際労働移動と国民経済厚生—静学的影響」(『早稲田政治経済学雑誌』1994年)を、研究会で直接著者から解説を聞き、白熱の論争を教員・学生で行ったことを思い出す。

 清野論文では、外国人労働者の受け入れ国(日本)と送り出し国(諸外国)で、

 1)市場メカニズムが完全ならば労働の移動の結果、両国の賃金は同じになる。このとき受け入れ国(日本)の賃金は低下し雇用は減少する、他方で外国人労働者の賃金は上昇し雇用は増加する。日本の労働者にはメリットはないが、ただし世界全体の経済厚生は大きく改善する。要するに前者の経済厚生上の損失を後者の増加が大きく超えるのである。

 2)市場メカニズムが不完全なケース、例えば日本の雇用環境が閉鎖的であり、または賃金が下方硬直的な場合では、経済厚生は悪化する。具体的なイメージでは、高い賃金や暮らしを目的に海外から外国人労働者がきても日本企業に正規雇用されない、あるいは不況によって日本で失業してしまう場合である。また関連して国内で働く外国人労働者が日本で稼いだお金を母国に送金した場合でも日本の経済的厚生は低下する、

 と清野論文は解説していた。

 清野論文の1)を基本モデル、2)を修正モデルとしておく。

 まず、1)の基本モデルをそのまま日本の現実に適用するのは、かなり疑問だ。そもそも外国人労働者を増やすことで、世界の経済厚生を増やす前に日本の政治家がすべきことがある。それは日本の経済厚生を増やすことだ。具体的には働きたい意欲のある高齢者、女性たちの働く環境の改善である。

 また「失われた20年」に直面し、雇用機会を大きく制限されてしまった30歳代から40代の人たちが、年齢や企業規模に関係なく自由に働き場所を獲得することができることだ。日本の経済厚生は確実に上昇する。日本の働く環境をよくしてから、外国人労働者の受け入れを行えばいい。外国人労働者受け入れ問題についていえば、自国民ファーストは当たり前である。

 実際に、清野氏もまた90年代の外国人労働者問題に直面して議論してきた人たちの現実的な帰結はこのラインだった(参照: 後藤純一「少子高齢化時代における外国人労働者問題」『国際環境の変化と日本経済』)。

 いまの政府の方針はこの成果をまったく顧みていない。

 また政府が5年で最大34万規模の未熟練労働が大幅に拡大しても、他方でAIの進化やオートメーション化の変化によって、これら未熟練労働者が不用になることが今後予想されるのではないだろうか?

 政府は「人手不足」が解消されれば、受け入れを停止するとしている。だが、政府に市場の動向を的確に判断できる能力の保証はない。政府の受け入れ停止の判断はおそらくかなり遅れるか、あるいは政治的怠慢で判断さえされないかもしれない。このとき日本にきた未熟練労働者は、構造的な意味で「失業」に陥るだろう。

 ■ポスト安倍世代の緊縮政策で、外国人労働者は対立と分断の一因に?

 2)の修正モデルから考察してみる。このケースではもともと外国人労働者の移入拡大は、受け入れ側、移動してくる側双方に厳しい状況だ。

 日本の雇用が閉鎖的になるそのもっともありうるケースは、不況だ。

 このケースでは、日本にきたはいいが、職を得ることができないか、あるいは日本の未熟練労働者とパイを食い合う苛烈な競争となる。日本の労働者にも外国人労働者にも明るい未来はない。

 特に不況は緊縮政策によって生まれる。

 現在の安倍政権は積極的な金融緩和政策を採用している。ただし財政政策は、緊縮よりだ。その象徴が来年の消費増税をやめないことにある。ましてやポスト安倍といわれる人たちは、ほとんどが与野党問わず、緊縮政策、財政再建志向の政治家たちである。この増税政治家たちがいまよりも緊縮政策をとれば、日本は長期停滞に戻る可能性が大きい。

 そのときに外国人労働者は日本を経済的にも社会的にも対立と分断の一因になる可能性がある。そのことは、緊縮政策を採用した国々、外国人労働者や移民を増やしていったイギリスやドイツなどの経験をみれば自明である。

 もちろん外国人労働者は「安価な労働」ではない。だが、どうも政府もまたこの「人手不足」を理由に受け入れ拡大を後押ししている経団連などの財界にも、単なる「安価な労働」以外にはみえていない可能性がある。長期停滞の中で、非正規雇用が増えていったが、これも経営者側からみれば「安価な労働」という視点で規制がどんどん緩和していったことを思い出せばいいだろう。いまの改正法案でも派遣形態での外国人労働者の受け入れも認める動きがある。いまは厳格な条件を採用しても、やがてなし崩し的に規制が緩和される可能性が大きい。いまの日本の財界には、日本経済や国益をみたうえでの判断はできない。経済的老害である(参照:田中秀臣『増税亡者を名指しで糺す!』悟空出版近刊)。

 日本の労働者もそして外国人労働者もともに単なる「安価な労働」や都合のいい材料ではない。生身の人なのだ。これを忘れてしまい、ましてや緊縮政策の中で外国人労働者を増やすことは、日本の社会を大きく不安定にしてしまうだろう。改正法案は廃案すべきである。

田中氏のツイッターに掲載されている本人写真
経済評論家 / 上武大学ビジネス情報学部教授

田中秀臣


上武大学ビジネス情報学部教授。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。国土交通省社会資本整備審議会委員、内閣府経済社会総合研究所客員研究員など歴任。 著作『日本経済は復活するか』(編著 藤原書店)、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)、『デフレ不況』(朝日新聞出版)など多数。毎週火曜午前6時から文化放送『おはよう寺ちゃん活動中』レギュラーコメンテーターとして出演中。

https://twitter.com/hidetomitanaka

【私の論評】外国人労働者を増やす前に、国内の賃金を上げよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事て、田中秀臣氏は「そもそも外国人労働者を増やすことで、世界の経済厚生を増やす前に日本の政治家がすべきことがある。それは日本の経済厚生を増やすことだ。具体的には働きたい意欲のある高齢者、女性たちの働く環境の改善である」と主張しています。私もそう思います。

それに、永住資格は認めないで、「技能実習」から「特定技能」に切り替えられる可能性を広げる今回の案では、必要な期間だけ雇って、用がなくなれば帰国を余儀なくされるか、日本で職探しするしかない不安定な立場の外国人労働者だけを増やすことになりかねないです。

それだと、日本での安定した生活を求めて来る人たちの期待を裏切り、「派遣労働者切り」をめぐる昨今の問題を海外にまで拡大してしまうことになりかねないです。日本が自国の都合だけで外国人労働者を使っているという批判が各国から強まり、「国際問題」化することになるでしょう。


外国人労働者を増やす前に、やるべきことがあります。それは、まずは国内の労働者の賃金をあげることです。入管法改正を求める声が、人手不足を理由に産業界から出ていることは気がかりです。産業界が「人手不足」というときには、目先のことだけを考えて「賃上げをしたくない」という本音が見え隠れします。

私自身は、人手不足はマクロ経済にとって良いことであり、この際、企業がため込んだ内部留保を吐き出す番だと思います。つまり、アベノミクスによって企業が儲かってきたのですから、これからは労働者が賃上げで潤っていいはずです。

現状は、賃金をあげられるなら上げるべきです。そうして、上げれば、それが景気が良くなることにつながり、企業の収益がますます良くなるという好循環につながるはずです。このような好循環がおこれば、中小企業もその好循環が巡ってくるはずです。

それと、入管法がどうのこうのという前に、日本は移民が増えつつあります。実際日本の移民の数が増加しています。最新の外国人移住者統計によると、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で、韓国を抜いて4位に上昇したとのことです。


これをもって日本はすでに移民大国などとする識者もいるようです。ただし、これは実数で比較しているので、移民数の当該国の人口との比率でみれば、日本の移民の数はさほどではないのですが、それにしても民主党政権時代から持続して増えているのは事実です。

国家規模の数字がまとまっている2015年時点で、日本への流入者は前年比約5万5千人増の約39万人となり、スペインやカナダよりも多い数字になっていました。ただし、日本の人口は1億2千万人、スペインは4千657万人、カナダは3千671万人です。ちなみに、米国は3億2千570万人です。

人口減と少子高齢化による人手不足を背景に、日本で働く外国人が増え続ける中、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の最新(2015年)の外国人移住者統計で、日本への流入者は前年比約5万5千人増の約39万人となり、実数では前年の5位から韓国を抜いて4位に上昇しました。

この観点からすると、今回は入管法を改正するにしても、外国人労働者を新たに受け入れずに、今まで受け入れてきた留学生アルバイトと技能実習生にきちんとした在留資格を与えて、その後はきっちり管理するというスタンスが望ましいです。

先進国のビザは、就労条件について厳格に定められており、その点、日本のビザではそれが曖昧です。この際、入管法改正によって、先進国並みの在留資格に基づいて就労条件を明記することが必須です。そうして、適切に運用することによって、邦人の雇用が失われないようにしなければならないです。

在留者やその家族の社会保障制度などの適用についても、これまで不適切使用が何度も指摘されてきました。誰からも文句を言われないような制度作りも併せて実施してもらいたいものです。

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2018年11月14日水曜日

【瓦解!習近平の夢】「千人計画」は知的財産泥棒? “超ハイレベル人材”で科学的発展目論むも… 米は違反者摘発へ本腰―【私の論評】トランプ政権の“泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機(゚д゚)!


千人計画」のロゴ 写真はブログ管理人挿入 以下同じ


入獄計画-。反中国共産党の華人らがこう皮肉るのが、2008年12月から実施されてきた「千人計画」である。海外の企業と大学に勤務する研究者や技術者、知的財産と技術保護担当の中国人幹部を対象者に選び、中国の科学的発展に貢献させる“超ハイレベル人材”のことだ。

 今年6月、米国防総省は米下院軍事委員会の公聴会で、「同プログラムの目的は、米国の知的財産を獲得することにある」と警告した。さらに、マイク・ペンス米副大統領は、ハドソン研究所で10月4日に行った長い演説の中で、「中国の安全保障機関が、最先端の軍事計画を含む米国の技術の大規模な窃盗の黒幕」と言及した。

 米連邦捜査局(FBI)は、企業の重要技術情報を個人メールアドレスに転送し、中国企業に提供した容疑で、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の中国人チーフエンジニアを逮捕するなど、次々と「御用」にしている。「千人計画に参加する教員を処罰する」との声明を発表したテキサステック大学が、客員教授に就任予定だった中国人教授の招聘(しょうへい)をキャンセルしたことも公になった。

 中国人研究者の逮捕、解雇が続出するなか、在米学者の間では「FBIは千人計画のリストに基づいて、違反者を摘発している」との話も広がっているという。

 この事態に焦った習近平政権は、「千人計画」の4文字が含まれた情報や名簿をウェブサイトから次々と削除しはじめた。さらに、「千人計画の面接時など、メールを使わず電話とファクスを使用する」「千人計画の文字を伏せるよう」などと、関係者宛てに注意喚起した。

 だが、「千人計画青年項目評審工作小組」の通達を、「国家自然科学基金委員会計画局」が代筆した9月29日付の文書の存在が、台湾の中央通信社(10月5日付)などに暴かれてしまった。

 もはや、「地下計画」と化した千人計画だが、もう一つ、中国では2011年8月から「外専千人計画」も稼働している。米国や日本、ドイツなどから選ばれた超ハイレベル人材のことだ。

写真は在中外国人


 習政権は今後、中国人の超人材の存在を隠蔽しながら、「外専千人計画」に、より力を入れていくのだろうか?

 李克強首相は9月末日、北京の人民大会堂で18年度中国政府友諠賞の外国専門家と、その親族らと面会した際、「外国人専門家と外国人の才能のため、より多くの便宜を提供すべく積極的な措置を取っていく」と語っている。

 だが、「世界一の軍事強国になる」という「中国の夢」に加担することは、すなわち、「日本国民の国家安全保障上の脅威」でしかない。ドナルド・トランプ政権が本腰を入れている“知的財産泥棒狩り”を、われわれは他人事と思っている場合ではない。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)など。

【私の論評】トランプ政権の"泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機(゚д゚)!

千人計画など実際にどのようにして、リクルートするのか興味のあるところです。そうして、このリクルートは米国のみならず、日本も含む世界中の先進技術を有する国々で実施されているのだろうと思います。

さて、このルクルートに関して、米ジャーナリスト、ギャレット・グラフ(Garrett M.Graff)氏はこのほど、ビジネス誌「WIRED」に"China's 5 Steps for Recruiting Spies"寄稿しました。

ギャレット・グラフ(Garrett M.Graff)氏

グラフ氏は中国工作員のスパイ活動に警戒し、中国情報機関のスパイにされないよう呼び掛けた。同氏は過去20年間、中国のスパイ活動は、広範囲におよび強い破壊力があり、国家の安全にとって最大の脅威だと繰り返して警告してきました。

米司法省は10月30日、中国情報機関・国家安全省の幹部とハッカー10人を訴追しました。司法省は、中国工作員が米航空企業から商業機密を盗もうとし、さまざまな策略を企てたと指摘しました。

9月以降、中国の産業スパイが訴追されたのは今回で3回目。10月上旬に、複数の米航空宇宙企業から企業機密を盗んだとして、ベルギーから身柄を引き渡された中国工作員の徐彦君(Yanjun Xu、音訳)氏を逮捕・訴追した。徐被告は中国江蘇省国家安全庁第6局副処長(次官)で、GEアビエーション社のジェッドエンジン技術者を中国側の商業スパイにスカウトしました。

いっぽう、グラフ氏は過去の事例を分析し、中国情報機関が欧米人をスパイにスカウトする際、5つのステップがあると指摘しています。

ステップ1:ターゲットを定める

正式な接触の前、「スポッター(spotter)」と呼ばれる中国の調査員が、ターゲットについて調査・評価を行います。そして、その結果を情報機関の幹部に提出します。幹部らは、正式なスカウトに値するかを再評価します。スポッターの多くは、シンクタンク、大学、企業幹部であり、スカウトに直接関与していません。

前述の徐延君氏の案件では、元中国人留学生の紀超群氏が徐氏の「スポッター」を務め、ターゲットとなりうる人物を物色していました。

徐延君
紀氏は中国の情報機関に対して、少なくとも中国系研究者8人の情報を提供しました。米政府によると、8人のうち、7人は国防事業の下請け企業の現役社員、または定年退職者だったといいます。

ステップ2:評価

ターゲットになった米技術者をスパイ活動に駆り立てるため、さまざまな手段で動機づけをします。金品の供与、イデオロギーの宣伝、脅迫、またはスパイ生活のスリル感を味わせるなどなど。

中国当局は、中国人をスカウトする場合、脅迫や愛国心の利用などの手段を多用しています。欧米人に対しては、金品の提供が多いです。

米連邦捜査局(FBI)は今年6月、国防情報を中国に渡そうとしたユタ州に住む米国人の男性を逮捕しました。米国防情報局(DIA)の官僚だった男性は定年退職後、多額な債務を抱え生活が困窮していました。2014年以降、中国国家安全省の職員2人が男性に接触してきました。

15年中国を訪れた男性に対して、2人は今後「毎年30万ドル(約3384万円)の顧問料を支払う」と約諾しました。男性は17年まで、米国内で国防関連の会議に参加し、写真を撮影したり情報をメモしたりしました。また、以前の同僚に連絡するなど、人脈構築を試みました。

ステップ3:発展

中国の工作員はターゲットとなった欧米人に、直ちに祖国への反逆を求めることはありません。まず気づかれないように良好な関係づくりに腐心します。米中央情報局(CIA)ブレナン前長官は、「(スパイになった米国人が)気づいた時点ですでに時遅し」とその手口は巧妙だと述べました。

2001年中国に留学し、その後中国上海に移り住んだバージニア州出身の大学生、グレン・シュライバー(Glenn Shriver)氏は04年、諸外国の貿易白書の作成スタッフを募集する新聞広告を見て、応募しました。広告を掲載した中国人が、シュライバー氏に120ドル(約1万3537円)の論文作成費を支給し、同時に2人の男性を紹介した。学生と2人の男性は親しくなるにつれ、男性らは学生に対して、米への帰国、米の国務省またはCIAでの就職を薦めました。

グレン・シュライバー(Glenn Shriver)

中国の情報機関は大学生に採用試験の参加費として、3万ドル(約338万円)を与えました。大学生は2回採用試験を受けたが、2回とも失敗しました。2007年、CIAの秘密プロジェクトの採用試験にも応募しました。中国情報機関はその際、学生に4万ドル(約451万円)を渡しました。

大学生はその後、逮捕された。米諜報当局は大学生をモデルにした啓発ビデオを作成した。海外に留学している米国人学生に対して、中国人工作員からの誘惑に警戒を高めるよう呼び掛けました。

ステップ4:スカウト

ターゲットとなる人に対して、中国情報部員は時にストレートにスパイ行為の強要を切り出します。2017月2月、CIA元幹部のケビン・マロリー(Kevin Mallory)氏がソーシャルメディアのリンクトインで、中国の上海社会科学院の職員と自称する人物からリクエストを受け取りました。

FBIは、中国国家安全省は、中国社会科学院と連携して活動していると指摘しました。社会科学院の職員と名乗る中国の工作員は多く存在するといいます。

マロリー氏はその後、電話を通じてこの上海社会科学院の職員と連絡を取り、17年4月に中国で2回面会しました。そこで、マロリー氏は特別な電話機を受け取り、安全なメッセージ機能を使って中国の「顧客」に連絡する方法を教えられました。マロリー氏は中国の対米政策白書の作成に2回協力しました。

ステップ5:処理

スパイとその指令役(handler)の連絡方法は以前の直接会うことから、現在暗号化された通信機器の利用に変わりました。

FBIは今年1月、中国情報機関の指示を受けて米国内でスパイ行為を繰り返していたとして、CIA元職員の李振成(英語名、Jerry Chun Shing Lee)氏を逮捕・起訴しました。

CIA元職員の李振成(英語名、Jerry Chun Shing Lee)氏

起訴状によると、2010年4月李氏は中国の工作員2人に会いました。工作員は李氏に金品の供与を約束し、その見返りとしてCIAに関する情報の提供を求め、「密かに連絡するために、李氏に複数の電子メールアドレスを提供しました」

李氏のノートパソコンに、CIAのオフィスの住所や1件の機密諜報計画の実施場所などの資料が保存されていました。李氏は、この情報を娘名義のメールアカウントから中国側に送信しました。

グラフ氏によると、FRIが李氏のカバンなどを捜査した際、李氏のシステム手帳から手書きの機密情報を見つけました。米情報機関職員らが会議で言及した諜報計画、計画関係者の電話番号、米側情報部員の実名とCIAの秘密施設などが含まれていました。

以上のような手口で、中国は日本でも同じようなことをしていると考えられます。日本は残念ながらスパイ防止法がないので、スパイ行為そのものではスパイを逮捕できません。スパイ行為に絡んで、何か犯罪をすれば、その犯罪に関して逮捕はできます。

このような状況では、中国のやりたい放題で、日本の技術が盗まれてしまうでしょう。しかし、私達はこれを見過ごすべきではないです。

これに関して、日本が日本の情報を中国に盗まれるというだけて、日本が不利益を被るだけと考える人がいるかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。

日本と米国は同盟関係にあります。だから、日本には米国の情報もかなり蓄積しています。これが、中国に盗まれるということもあります。これは、明らかに米国にとって大きな不利益です。

さらに、米国の技術ではなくても、日本の技術が中国に盗まれ、「中国製造2025」に大きく寄与することになれば、これも米国は自国にとって不利益とみなすことでしょう。

このように、日本経由で中国に米国の不利益になる形で、情報が漏れれば、米国は黙っていないでしょう。それこそ、日本に対して制裁を課すということにもなりかねません。

トランプ政権の“知的財産泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機なのです。

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2018年11月13日火曜日

中国の「微笑外交」の裏に隠された“意図”―【私の論評】微笑に騙されない安倍総理は「自由で開かれたインド太平洋」構想を着実に進める(゚д゚)!

中国の「微笑外交」の裏に隠された“意図”

岡崎研究所

安倍総理は、10月25日から26日にかけて中国を訪問、習近平国家主席および李克強首相との首脳会談に臨んだほか、日中財界のトップも多数参加した「第三国市場協力フォーラム」や北京大学での学生との交流に参加するなどした。



日中首脳会談等で合意した主要点、日本側が主張した注目点をごく掻い摘んで紹介すると、次の通り。

・第三国民間経済協力を推進(上記「第三国市場協力フォーラム」もその一環)、日中イノベーション協力対話を新たに創設。日本側は、開放性、透明性、経済性、対象国の財政の健全性の4つを条件に、質の高いインフラ事業に限り日中の企業間協力を支援(「第三国市場協力フォーラム」における安倍総理のスピーチ)。

・通貨スワップ協定(互いの通貨が不足した日中の金融機関に対して同通貨を供給する)の締結・発効。

・日本産食品の輸入規制の緩和に向けて積極的に検討。

・RCEPの早期妥結及び日中韓FTAの交渉加速化を目指す。WTO改革を推進する。

・WTOをはじめとする多角的自由貿易体制を一貫して重視する日本の立場を説明すると同時に、補助金や知的財産権を含む問題について中国側が更なる改善を図っていくことが重要である旨指摘。

・「東シナ海の安定なくして真の関係改善なし」との日本側の問題意識を伝達。

・本年5月に合意した防衛当局間の海空連絡メカニズムの初の年次会合の年内開催で一致。日中海上捜索・救助(SAR)協定に署名。

・東シナ海における資源共同開発に関する「2008年合意」について、実施に向けた交渉の早期再開を目指す。

・安倍総理から、米国との同盟関係を外交安全保障の基軸としつつ,アジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献するとの日本の立場について説明。

・朝鮮半島の非核化に向けて、関連安保理決議の完全な履行の重要性を改めて確認。拉致問題に関する日本の立場につき、中国側は理解し支持する。

参考:外務省ホームページ

日中間で意思疎通を密にするということ自体は良いことである。安倍総理は「日中間の対話は常にオープンである」と言ってきた。今回の首脳会談は、それを実行に移したものであり、国際社会に対し日本がいたずらに対決姿勢を望んでいるわけではないことを示すことができた。日本の外交力強化に資することが期待される。

日中関係の改善は、中国側により多くの動機がある。第一は、米中貿易摩擦であるが、その他にも、国内経済の停滞傾向にあり、一帯一路が思うように進展せず、北朝鮮問題等も抱え、対外関係の新たな展開を図るために日中関係の見直しが有利と考えたのであろう。

合意内容の中では、第三国における民間経済協力と知的財産の問題に特に注目したい。

上述の通り、開放性、透明性、経済性、対象国の財政の健全性の4つを条件に協力する用意があるとしている。これらは、まさに一帯一路をはじめとする中国の経済戦略が抱える問題点である。日中が協力することで中国によるインフラ投資が国際水準を満たすようになれば結構であるが、協力が限定的なものにとどまるとしても、問題提起をしていくことは良いことである。

中国による知的財産侵害の問題については、安倍総理は率直に指摘をした。米中貿易摩擦の一つの大きな要因は知的財産である。米中間での動きも睨みつつ、それを背景に日中交渉を進めて行くことが期待される。

今回の日中首脳会談では「競争から協調へ」ということが謳われ、日中関係の改善、友好ムードが指摘されたが、最も重要なのは、戦略的背景、地政学的構造である。この点、中国側の「微笑外交」の裏に、日米の離間の意図が隠されていることを忘れるべきではない。例えば、Global Times(共産党の機関紙人民日報系の環球時報の英語版)は、10月25日付け社説‘Internal factor promotes China-Japan ties’で「日本の対中政策が米国の影響から脱することができるかどうかが日本の外交的独立の試金石となる」と書き、同26日付け社説‘Unraveling thorny knot of China-Japan ties worth doing’では「米国は日中関係に戦略的に負の影響を与えてきた」「長期的には日本は米国との関係で厄介ごとが増えるだろう。米軍の日本駐留は、日本の主権を大いに損ねてきた」などと書いている。日中関係推進に当たっては、米国との連携を密にして動くことが最重要である。今回は、10月16日に谷内国家安全保障局長が訪米し、ボルトン国家安全保障補佐官に事前説明を行っている。

中国が地域を「支配」し、世界中で自由、人権、民主主義や法の支配などに基づかない影響力を行使しようとしている状況に変化がない以上、日中関係も根本的な改善には向かうことはないと見るべきであろう。

【私の論評】微笑に騙されない安倍総理は「自由で開かれたインド太平洋」構想を着実に進める(゚д゚)!

このブログに過去に何度か掲載してきたように、中国が民主化、経済の政治の分離、法治国家化を進めようとする意志がない以上、日中関係には根本的な改善はあり得ないとみるべきです。

そうして、実際安倍総理は、そのように中国をみているようです。

本日安倍晋三首相は午前、首相官邸でペンス米副大統領と会談しました。終了後、首相は「北朝鮮の完全な非核化に向け、国連安保理決議の完全な履行が必要だとの認識で一致した」と表明。2人は拉致問題の早期解決に向けた連携の強化でも一致しました。日米が目指す「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進に向けた連携を確認する共同声明を発表しました。


共同記者発表で、首相は「ペンス氏との緊密な調整は日米同盟の強固な絆を示すものだ。自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、インフラやエネルギー分野で緊密に連携していく」と説明。ペンス氏も「ここまで強かった日米同盟はかつてない。日米は自由で開かれたインド太平洋地域を現実のものとするビジョンを共有している」と応じました。

首相は年明けにも始まる日米間の新たな通商交渉に関し、「双方の利益となるように日米間の貿易や投資を拡大し、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現する」と述べました。

米中間選挙では、与党・共和党が下院で過半数を失い、トランプ政権が通商問題でさらなる強硬姿勢をとることが懸念されています。こうした現状も踏まえ、日本政府は「強固な日米同盟」を内外に発信したい考えです。

ペンス氏はトランプ大統領の名代として、シンガポールで開く東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議への出席を前に来日しました。首相との会談に先立ち、麻生太郎副総理兼財務相とも会談しました。

今回の会談で最重要はやはり「自由で開かれたインド太平洋」構想の再確認のようです。安倍総理がこの構想を打ち出してから2年で、この構想が着実に形になりつつあります。


日本、米国、インド、オーストラリアの4カ国は11月13日に、シンガポールで開催予定の第13回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議を控え、インド太平洋地域における海洋安全保障と経済開発プロジェクトを推進させる構えです。

安倍首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想は、地域インフラ発展における4カ国の協力構想の創設戦略のことです。同海域における中国進出を念頭にしており、各国安全保障政策のみならず軍事戦略にも影響しています。

この構想は日本の安倍総理が言い出したということで、かなり円滑に推進されるようになりました。これが、米国が言い出した場合は、インドやASEAN諸国は米国に対する反発も多いので、うまくはいかなかったでしょう。

日本がこれらの国々と、米国とをうまく橋渡しをすることにより、この構想は着実に前進しています。そのため、トランプ政権も安倍政権には一目置き、頼りにしているところがあります。


さて、マイク・ペンス米副大統領は11月10日、米アラスカで記者団に対して、インド太平洋地域における中国共産党政府によるプレゼンス(存在感)が高まる中、米国がインド太平洋地域で最大600億ドル(約6兆8千億円)のインフラ整備支援を行う計画があると述べました。

ホワイトハウスによると、トランプ大統領はASEANおよびアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の出席を見送り、ペンス副大統領が代理出席します。

ペンス副大統領は11日に、インド太平洋地域に対する米国のコミットメント(かかわりあい)は「かつてないほど強い」と述べ、大統領の首脳会議の欠席はアジア軽視では「全くない」と強調しました。

インド紙タイムズ・オブ・インディアによると、米国の国防総省上級幹部はインド太平洋司令部が4カ国と協調的な安全保障の枠組みを構築することに積極的だといいます。

同紙によると米国防総省高官は、南シナ海の南沙諸島の軍事拠点化を進める中国について、「排他的で独占的な」政権が「強引な戦略で国際的なルールを破壊しようとしている」と批判しました。

インドは日米のインド太平洋戦略の軍事発展化に慎重な姿勢を示しています。インド国務院アリス・ウェルス高官は同紙に対し「4カ国は互恵的な計画として協力する構想を共有する。海上安全保障の促進のみならず、海洋分野の開発や経済プロジェクトも含まれる」と述べました。

しかし、ウェルス高官は「避けられない事態に応じて」軍事戦略への進展は排除しませんでした。

米国とインドは毎年2カ国軍事演習を行っています。来年はベンガル湾で水陸両用訓練を行う予定。日本とインドは11月1日から2週間、インド北部ミゾラムで初めてとなる二国間軍事訓練「ダーマ・ガーディアン2018」を行っています。

11月9日、ワシントンで行われた米中外交安全保障対話で、米国は中国に対して、南シナ海に設置されたミサイルシステムを撤去するよう直接要求しました。国務省は声明で、インド太平洋において「いかなる国も脅迫や恫喝で問題を解決するべきではないとの考えを確認した」と述べました。

ポンペオ米国務長官は米中対話後の記者会見で、「中国の南シナ海での活動と軍事拠点化に引き続き注意を払う。また、過去に中国が締結した条件を履行するよう促していく」と述べました。

読売新聞10日付によると、同紙が入手したというASEAN議長声明草案には、中国を念頭に「緊張を高め、平和を損ないかねない」単独行動を批判する文言を入れる方向で調整しているとされています。

ASEAN議長声明草案には、中国を批判する文言が入るか入らないかは今のところはわかりませんが、それがどうなろうとも、日本、米国、インド、オーストラリアの4カ国は「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進し、インド・太平洋地域から中国の覇権を葬り去るでしょう。

米国は、現在対中国「冷戦Ⅱ」を実行しています。これは、中国が体制を変えるか、体制を変えないならば、他国に影響力を行使できない程に経済力を削ぎ落とすまで、続けられます。

その一方で、日米印壕は、「自由で開かれたインド太平洋」を維持するため、中国が現在以上の暴虐を防ぐ役割を協同で担うことになります。

「冷戦Ⅱ」の画像検索結果
ペンス副大統領は「冷戦Ⅱ」という言葉を発した

米国の「冷戦Ⅱ」は、少なくとも10年、長ければ20以上継続され、必ず結論はでます。

中国が体制を変えれば、中国がつくった南シナ海の環礁の埋立地を自ら撤去し、中国が自力で元の環礁に戻すことになるでしょう。

中国により軍事基地化された南シナ海の環礁ファイアリクロス(2017年12月14日CSIS公表)
中国が体制を変えなかったとしたら、経済がかなり弱体化し他国への影響力を失い、南シナ海の中国の埋立地はそれを維持するだけでも莫大な経費がかかり、中国にとっても無意味になります。

しかし、その時になっても維持していれば、日米壕印の連合国が南シナ海の埋立地を海上封鎖し、埋立地の軍事基地を無効化した後に、上陸し中国軍の武装解除をし、その後に埋立地を破壊し元の環礁に戻すことなるでしょう。このようなことをしても、その時には、中国は力を失い、なすがままにされるしかなくなっているはずです。そもそも、環礁を元に戻すだけの経済力もないかもしれません。

いずれにせよ、20数年後くらいには中国の覇権は南シナ海から排除され、埋立地は元の環礁に戻ることになるでしょう。

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2018年11月12日月曜日

米、韓国へ“制裁”秒読み…北の“番犬”文政権の「制裁破り」にトランプ氏激怒―【私の論評】日台は、中国から離れる政策を実施つつ、国内経済浮揚の両方を同時に実行しなければならない(゚д゚)!

米、韓国へ“制裁”秒読み…北の“番犬”文政権の「制裁破り」にトランプ氏激怒

5月には日中韓ビジネス・サミットを開いた安倍晋三首相(中央)と
中国の李克強首相(右)、韓国の文在寅大統領

 米国との貿易戦争に苦しむ中国。いわゆる「元徴用工」をめぐる反日・異常判決を出した韓国は、露骨に北朝鮮寄りの姿勢を見せる。中韓両国と関係のある日本企業も危険な立場となりかねないと警告するのが国際投資アナリストの大原浩氏だ。寄稿で大原氏は、「自由」や「民主主義」とかけ離れている中国や、米国の制裁対象となれば経済の混乱が不可避の韓国との取引を考え直すべきだと訴える。

 トランプ米大統領は、米国が旧ソ連との間で結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄する意向を表明した。これによって、米中貿易戦争と呼ばれていたものが、世界を巻き込む「第二次冷戦」の始まりであることが確定した。

 そもそも、1989年のベルリンの壁崩壊、91年のソ連邦の崩壊の後、世界中のだれもが共産主義の崩壊によって東西冷戦は終了したと思った。鎖国状態の共産主義国家群が「鉄(竹)のカーテン」を開けて自由主義経済圏と交流すれば、いずれ共産主義は消滅し、それらの国々にも「自由」と「民主主義」が広がると思ったのである。

 ところが、その考えは甘かった。中国を典型的例として、共産主義国家の大半(悪の帝国)は、西側の「自由市場」に参加してメリットを最大限に享受したにもかかわらず、国内の専制的支配に変化はなかった。それどころか、経済的に豊かになったことで、独裁政権が国民への締め付けを強化する事態すら招いた。

 こうしたなかで米中貿易戦争が勃発したのは、決してトランプ氏の気まぐれではない。日本企業だけではなく、中国に進出した米国企業も、無理やり先端技術を提供させられたり、当然認可されるべき申請を保留にされたりするなど数々の嫌がらせを受けてきた。

 しかし、被害企業は共産主義中国という巨大な相手とけんかできず、泣き寝入りしてきた。トランプ氏は、それらの企業の「声なき声」を代弁したに過ぎない。

 現在、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は悪の帝国の一画である北朝鮮の番犬になり下がり、制裁破りともとられかねない言動を繰り返している。トランプ氏は北朝鮮を手なずけようとしているが、「しつけ」をしている最中に、横からエサを放り投げられたら激怒するのも当然だ。韓国の銀行や企業に対して米国が制裁を発動する日も近いのではないだろうか。

 もちろん、そうなれば韓国経済は混乱するし、韓国企業と取引をする日本企業も危険な立場に立たされる。

 さらに大きな問題が「悪の帝国」の本丸である共産主義中国である。中国には相当数の日本企業が進出したり、取引を行ったりしている。しかし、共産主義中国がいまも人権無視の蛮行を続けていることが誰の目にも明らかにされつつある。

 サウジアラビア政府が関与した記者殺害事件では、体を切り刻むなどの残酷な手口で世界中の国々から激しい非難を受け、サウジからファンドに出資を受けているソフトバンクグループは窮地に立たされている。

 しかし、ウイグルでの中国政府の行いは、それとは比較にならないほど大規模で悪辣(あくらつ)である。

 今でこそナチス・ドイツは繰り返し批判されているが、第二次世界大戦が始まるまでは米国などの企業は好意的だった。米国を代表する企業のトップもヒトラーから勲章を受けていた。後に勲章を返還したため事なきを得たが、そうでなければその企業は存在できなかったかもしれない。

1938年、デトロイト駐在のドイツ領事(右)がヘンリー・フォード(中央)に
「ドイツ大鷲十字章」を贈り、ヒトラーの謝辞を伝えた

 これまでマスコミでもてはやされてきた中国だが、日本企業としては、取引を即刻中止するのが正しい「危機管理」であり、「コンプライアンス(法令順守)」ではないだろうか。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】日台は、中国から離れる政策を実施つつ国内経済浮揚の両方を同時に実行しなければならない(゚д゚)!

日本企業は、日中友好にぬか喜びしているようですが、台湾は政府ぐるみで中国から離れる政策をとりつつあります。本日は、現在の日本とは対照的な、台湾の状況を掲載します。

中国国内はすでに数年前から、経済成長の鈍化、債務急増問題、信用バブル、人民元安など様々な経済問題に直面していました。これらが主因で、現在中国からの資本流出が加速していました。それを阻止するために、中国当局は近年個人や企業に対して流出規制を強化しました。

ペンス副大統領は、中国に対して最後通牒とも受け取れる演説を行い、米国による「対中国冷戦Ⅱ」は中国の体制が抜本的変わるか、体制を変えないなら、経済的にかなり弱体化させ他国への影響をそぎ取るまで続けられることになりました。

そのような中、台湾企業ははここ数年中国から離れる、努力をしています。台湾金融監督当局である金融監督管理委員会の最新統計によると、昨年1~3月期に約9社の台湾企業が中国本土から撤退し、過去最多となりました。この傾向は、米国が対中国貿易戦争を開始してからますます顕著になっています。

多くの台湾企業が中国本土に進出しているのですが、その収益に占める本国送金比率は12%で、帳簿価値の5.4%にとどまります。主因は中国当局の資本流出規制だというのです。

1970後半~80年代にかけて改革開放に転換した中国当局には、資金が必要でした。このため、当局は台湾企業や香港企業を「外資企業」として積極的に誘致しました。「現在の中国経済発展には、台湾企業と香港企業が大きく貢献しました。しかし、いったん中国本土に入った台湾と香港の資本は中国からでることができないようです。

実は台湾などの多くの経営者たちは、中国当局が資金流出制限を強化しているため、資金を台湾や香港に送金ができなくなっていると知っています。台湾企業が大陸中国の本土で、投資等を通じて儲けがあったとしても、その収益をどうしても台湾送金できず、結局大陸中国本土に再投資するしかないようです。

1980~90年代、数多くの台湾企業などの進出で、当時中国の資金および技術の不足が解決されました。当局はその後、さらに欧米諸国との間で「手厚い」貿易協定を結び、中国経済がより大きく拡大しました。この結果、中国当局にとって、リーマンショックまで資金問題は存在しませんでした。

ではなぜ、台湾企業などの資金を中国国内に留まらせたのでしょうか。これは、中国当局の本質に関係があるようです。個人の資産を認めず、他人の財産を奪ってきた中国共産党は、もちろん台湾企業の資本を手に握りたいとの政治的な狙いがあったのでしょう。

中国共産党は政権を奪ってから今現在まで、数々の政治運動を起こし、「暴力」と「恐怖」で国民に対して圧制を敷いてきました。

とはいいながら、長期的に政権を維持していくには暴力だけではダメだと当局は心得ているようです。そのため、中国当局は経済成長を通して、国民に当局は『偉大』だと思い込ませ、中国共産党統治の当地の正当性を強調してきたのです。

そのため、中国当局は長年経済指標をねつ造してきました。この偽装された経済データで作り上げられた虚偽である「世界第2位の経済体(実体はドイツ以下ともされている)」に、多くの海外企業が引き付けられました。

しかし、外資企業が中国本土でビジネス展開を始めると、海外への送金を制限して、人民元を海外の本国通貨に自由に両替させないことで、資金が本国に戻ることを阻止しました。

また、当局は中国企業が外資企業の製品を模倣し、知的財産権を侵害するのを黙認し外資企業の技術を盗んできました。このように、当局が入手した外資企業の資金と技術を用いて、国有大手企業を扶養し大きく育ててきたのです。

現在中国経済は不動産バブル、株価大暴落、元安、企業や政府の債務急増問題など多くの難題に直面しており、ねつ造された「経済の繁栄」はまもなく消えます。最近の米国による対中国「冷戦Ⅱ」は、それを加速することでしょう。そうして、多くの投資家が「中国リスク」を認識し、中国市場から続々と撤退しています。

一部の台湾経営者の中で、中国本土と台湾は密な関係かあることから、中国経済が崩壊すれば、台湾経済も大きな打撃を受けると危惧しています。

中国当局は台湾政府に対して、長年経済に台湾企業を通じて圧力をかけてきました。しかし、台湾国民と政府は今その危機感を強めています。いわゆる台湾政府による「新南向政策」(投資先を中国本土から東南アジアにシフトする)で、台湾政府は中国経済に依存する現状を打破しようとしています。

「新南向政策」を示す台湾のチャート

今すぐにはその政策の効果が目に見えないとしても、中国経済への依存を断ち、中国共産党政権からの指図を受けないために、この政策を堅持していく必要があります。

このように、台湾は中国から離れる政策を政府が音頭をとりつつ、民間企業が協力して行っています。日本も、この台湾の姿勢を見習うべきです。

今年11月24日、台湾では統一地方選挙(「九合一」)が行われます。投票まで100日を切ったとあって、メディアの報道も熱を帯びています。

ただその反面、気になるのが、肝心な台湾の有権者の政治への関心が一向に高まっていないことです。その理由は、有権者の“政治離れ”に歯止めがかからないからです。

中国との関係で政策が対立する台湾では、台湾独立の受け皿となる与党・民主進歩党(民進党)と大陸との統一を掲げる国民党という二大政党の対立の構造が定着しています。

互いに象徴するカラーを定め、民進党の緑に対して国民党が青。有権者の選択はずっと、緑か青かという単純なものでした。

民主進歩党(左)のシンボル・カラーは緑、国民党(右)のそれは青

しかし、ここにきて顕著になりつつあるのが緑にも青にも「ノー」という空気です。いわゆる「無色」勢力の伸長と呼ばれる傾向です。

いったいなぜこんなことになったのでしょうか。

日本では、台湾の選挙といえば、緑か青のどちらが勝ったかで、台湾の人々の対中国観をはかろうとするのですが、対外政策が選挙の中心に来るケースは極めて稀で、実際はそうではないことの方が多いです。

では、人々は何を気にしているのかといえば、当然のこと自分たちの生活の改善です。

その意味で蔡英文総統が誕生した当初には、民進党政権に大きな期待が寄せられました。

だが、結果的に民進党は人々の期待に応えられなかったといってもよいでしょう。

そうして、その理由は、蔡英文政権がマクロ政策を重視していないからです。積極的な金融緩和策、財政出動などで、台湾経済に協力にテコ入れするなどの政策は行わず、もっぱら「新南向政策」ばかりでは、国民の生活は改善されません。

ここは、金融政策で雇用を画期的に改善した日本の安倍政権を見習っていただきたいものです。

ただし、日本の安倍政権も、来年10月から消費税増税を実施する予定です。もし、これを実行してしまえば、せっかくの金融緩和策で改善された雇用等がまた後ずさりすることになります。

日本も台湾も、中国から離れる政策を実施つつ、国内経済を浮揚するという両方を実行しなければならないのです。両政府とも、どちらが欠けても、うまくはいかないでしょう。

日本は、国内経済が良くなりさえすれば日本企業もその対応に追われ、危険な中国ビジネスへの関心は薄れることでしょう。

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