2020年5月16日土曜日

【日本の解き方】コロナ諮問委員会に緊縮経済学者…政権内の力学が変わったのか? 再自粛時の休業補償に反対も―【私の論評】自民党の中の人たちは、小人閑居して不善をなす財務省に徹底的に負荷をかけよ(゚д゚)!

【日本の解き方】コロナ諮問委員会に緊縮経済学者…政権内の力学が変わったのか? 再自粛時の休業補償に反対も

コロナ対策諮問委員会

政府は新型コロナウイルス対策を具申する諮問委員会に経済学者4人を加えると発表した。 委員会は発足当初は医療関係者だけで構成されていたが、自粛の経済への悪影響が懸念されるので、経済学者を入れたというのが、公式の説明だろう。

 自粛による経済への悪影響を分析するなら、経済学者よりシンクタンクのエコノミストのほうが適任だ。新たに加入する経済学者は、そうした試算を行うというより「ストーリーテラー」のようだ。そもそも試算なら、官庁エコノミストでもできるのに、何のために経済学者を加えたのだろうか。

 いずれにせよ、自粛の経済への悪影響を試算した後の政策対応が重要な課題だ。そこには2つの対応パターンがある。

 1つは、自粛は経済に悪影響があるので、自粛を解除し経済活動を再開するというものだ。その場合、再び感染者が増えて公衆衛生上はまずいので、感染症対策を優先するか経済を優先するかという二者択一になる。

 ここでの政府は、公衆衛生政策は行うが景気悪化に対応する政策は行わないという前提だ。景気悪化に対応する政策を行わないのは、財政負担を避けるためには当然という立場だ。これを「財政緊縮派」と呼ぼう。

 もう1つは、休業補償などで政府が所得補填(ほてん)をして悪影響を最小限にとどめることで自粛を継続するというものだ。

 この場合、政府は公衆衛生政策のみならず、経済への悪影響のコストも負担する。そこでは当然、財政負担が生じるが、感染症は戦時状態と同じなのでやむを得ないと考える。

 もっとも、経済の悪化は需要の蒸発による需要ショックなので、デフレ圧力がある。そうしたなかでカネを刷る政策は実質的に財政負担は生じないともいえる。これを「財政積極派」と呼ぶ。

 今回、諮問委員会に加わった経済学者は、ほぼ緊縮派であるので、前記の2つのパターンのうち、財政緊縮派のパターンが提言されると予想できる。

 この時期にこうした人選が行われることについて、筆者は政権内の政策決定力学の変更が背景にあると感じている。

 今国会での2次補正予算編成は必至である。経済苦境はリーマン・ショックを上回り、戦前の大恐慌並みなので、1次補正の真水約25兆円では足りないのは明らかだ。

 ということで、自民党を中心として補正予算の議論がなされている。一方、官邸側は、当初は官邸官僚が主導権を握っていたが、「30万円給付」でミソをつけ、党主導になった。そこで、諮問委員会に、緊縮派の経済学者を送り込んだと筆者は見ている。

 今本当に求められているのは財政積極派の経済学者であるが、その期待に沿うことはなく、官僚側の緊縮財政を代弁するだけに終わりそうだ。

 自粛解除後に流行第2波が来て「再自粛」となった際には休業補償が必要となるが、今回の学者たちは、それに反対するのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】自民党の中の人たちは、小人閑居して不善をなす財務省に徹底的に負荷をかけよ(゚д゚)!

自民・公明の与党両党が12日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加対策を盛り込む第2次補正予算案について、野党側とも協議を進め、今国会での成立を図る方針を確認しました。会期末は6月17日です。

緊急経済対策の第2弾については、いろいろな観測報道が飛び交っていて、総理が数兆円規模での編成を指示したとか、国会は6月17日で閉じて延長はしないと委員長が言ったというような報道などがあります。

ただ、総理が数兆円規模と言ったという報道は、誰かがその思惑からリークしたものをそのまま報じたというというか、元々世論等を操ろうとする観測気球とはそのようなものです。

その思惑とは、誰が補正予算を仕切るかということです。普通であれば、予算なので財務省が仕切るのが通例なのですが、現在は自民党のなかの人の方が世間の状況をより反映できます。

自民党の中の人?

自民党の人は政治家として、現在の状況を肌感覚として、中小の経営者をはじめとする国民の声や、支持者らの大変だという世間の実態を把握しています。そういう人から見て、従来の財務省のパターンでは予算が、足りないのです。

一方で財務省の人は、今回の話だと補正予算にはあまり関わらないので、観測気球をあげ、それをマスコミがそのまま流したというのが真相なのでしょう。

いままでであれば、どちらかというと官邸の方が政策の主導権を握って、党は追認ではないかと一部で批判されているところもありました。しかし、今回のコロナウイルス対策では、そこがひっくり返っているところがあるようです。

官邸主導でコロナ対策をで考えていた時、30万円の給付金話がありました。30万円のときは所得制限をするので、予算規模は4兆円くらいにしかなりません。それがあまりに少ないということで、ひっくり返されてしまいました。

このブログにも以前掲載したように、あれをひっくり返したのは公明党となっていますが、安倍総理個人が「これではまずい」と思ってやったと私は見ています。逆に言うと、官邸でうまく仕切れていないのです。いまは自民党と公明党が中心となって補正予算を考えている状況のようです。

もともと30万円を発案したのは岸田政調会長で、安倍総理が岸田氏に一任すしたところ、全然まとめられないので、下駄を二階さんに預けたと言われています。

実際、あのまま貧困層に絞った30万円の給付金ということになれば、真水も少ない状況で、安倍政権はかなりの批判を浴びることになったでしょう。あそこでひっくり返すことによって、真水をかろうじて増やしました。今回の2次補正は1次補正と同じくらいやらないと経済が持ちません。

1次補正は10万円一律給付を含めたところで、国債の発行額が23兆円くらいになり、だいたいGDPの5%くらいの規模になりました。今回のコロナ禍による経済への打撃は、大恐慌並みなので、本来はGDPの10%以上真水を出さないと話になりません。

まともな経済政策ができないと、1年後くらいに失業者は300万人以上増えるレベルです。失業者が300万人以上増えると、自殺者は1万人ぐらいに増えるので、コロナウイルスの死よりもはるかに多い死者が出ることになります。

昨年は自殺者数は2万人を切ったが、今年はコロナ禍で増える懸念が・・・・

このようなことをどのように防ぐかが、マクロ経済政策のいちばんの基本です。そのようなときは従来型のケインズ型と言われる、真水を投入して有効需要を増やす方法しかありません。それをやるかどうかにポイントが絞られています。大恐慌並みに落ちるとなると、数兆円の補正では間に合うはずはありません。

コロナ感染の防止と経済との兼ね合いを考えると、緊急事態宣言の延ばす期間、自粛を呼びかける際の対象をどうするかという事が重要になってきます。

そこでコロナの諮問委員会のなかに、経済の専門家とされる人が入ることになりました。そのメンバーが12日に報道されました。大阪大学大学院の大竹文雄教授、慶応大学の井深洋子教授、東京財団政策研究所研究主幹の小林慶一郎氏、慶応大学の竹森俊平教授の4人です。

ところが、この4人の経済の専門家は、マクロ経済立場からすると緊縮派ばかりです。補正予算の拡大を抑制しようという側に立つ人が選んだ人事といえます。

この人事の思惑は、予算が膨らむのを防ぎたいということでしょう。しかし、はっきり言うと、諮問委員会も最近休業続きですし、あまり関係ないともいえるでしょう。

もう補正予算は出てしまうでしょう。補正予算が出てしまった場合、経済のことを諮問委員会で議論してもほとんど意味がありません。

今回の第2次補正予算案は、緊縮という省是に拘る財務省などは、抜きにして自民党内ですすめて、財源が足りなければ、マイナス金利の国債を発行させるように財務省にせまり、さらに消費増税もせまり、なんでコロナ禍の時にそんなことまでやるの、というようなことまで実行して、様々な難題を財務省に押し付け、事務・法律事務手続きなどに忙殺させ、財務省の余力を奪う戦術に出るべきと思います。

財務省の岡本薫明事務次官

そもそも、財務省は本質から外れた省益など拘泥するために、忙しがっているだけであり、国民生活の安寧などは無視し、まさにに小人閑居して不善をなすの格言を地で行っているような組織ですから、余計なことを考えられないくらいに徹底的に負荷をかけるくらいが相応しいのです。

そうすれば、自民党の中の人は、今回のコロナ禍による苦しんでいる国民のために、大鉈を振るえるようになります。はっきりいいます。国民の側からすれば、緊縮頭の財務省など、コロナ対策にはいらないのです。

そうして、あわよくば、財務省が負荷に耐えきれなくなって弱音をはけば、財務省を解体して、各省庁の下部組織として編入して、財務省が省益と盲目的に信じている緊縮というDNAを粉砕すれば良いのです。

このようなことが実行できれば、政治主導も夢ではないです。そのときには、日本も本格的に政策提言ができる、シンクタンクを複数設置すると良いと思います。

そうなれば、日本でも官僚が政治に介入するという思い上がりを断ち切り、まともになれるかもしれません。元々官僚とは、マックス・ウェーバーも言うように、決まったことを迅速に実行できるようにするのが本質であり、政治に関与するものではないのです。今回のコロナ禍をきっかけに、官僚は官僚の本分に戻るようにすべきです。

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2020年5月15日金曜日

トランプ大統領、中国との“断交示唆”か!? 軍事的緊張も高まるなか習主席との対話を拒否… 識者「中国を外して大経済圏を作るのでは」 ―【私の論評】トランプ大統領の行動は、民意を反映したもの(゚д゚)!


中国発のコロナ禍に業を煮やしたトランプ米大統領は、習主席に鉄槌を下すのか

 中国発の新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)をめぐり、ドナルド・トランプ米大統領の怒りが、日に日に高まっている。中国の初動対応に不満を示し、習近平国家主席との対話を拒否したのだ。「中国との断交示唆」と報じたメディアもある。「死のウイルス」による世界全体での死者は30万人を超え、米国では最悪の約8万5000人もの犠牲者が出た(=米ジョンズ・ホプキンズ大学、14日集計)。米中の軍事的緊張も高まっているなか、トランプ氏は「対中貿易停止」といった過激策までチラつかせた。


 「今は(習氏と)話したいとは思わない」「中国には非常に失望している。そう断言できる」

 トランプ氏は14日放送の米FOXビジネステレビのインタビューで、こう言い切った。中国の初期対応の遅れが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大につながったとする「対中批判」を一段と強めた。

 これまでも、トランプ氏は「中国に不満だ」「発生源で止めることができた」「これは世界が受けた損害だ」「(損害金請求も)検討している」などと記者会見で語ってきたが、この日はさらに踏み込んだ。

 「感染拡大の報復」として、トランプ氏は「多くの措置を講じることができる」と胸を張ったうえで、「中国との関係を完全に途絶えさせることもできる」と強調した。関係を遮断すれば「5000億ドル(約53兆6000億円)を節約できる」とまで指摘したのだ。

 米中両国は今年1月、「第1段階」の貿易協定に署名した。中国が数値目標をもとに米国から農産物などの輸入を大幅に拡大。米国は通商対立が激化した昨年夏以降、初めて対中制裁関税を一部軽減するものだ。


 だが、中国発の新型コロナウイルスで、米中関係は一変した。

 米政権は現在、「対中制裁関税の強化」などを検討しているとみられるが、トランプ氏は「貿易停止」までチラつかせた。

 これを受け、海外メディアは「トランプ氏、中国のコロナ対応に『心底失望』 断交の可能性も示唆」(ロイター)、「トランプ氏、中国との断交示唆」(AFP)などと報じた。

 11月の大統領選を控え、トランプ氏としては、中国の責任を追及し続けることで、「対応の遅れ」や「景気失速」への批判をかわそうとする思惑もありそうだ。

 ただ、米国民の「対中意識」も悪化している。

 米大手世論調査機関「ハリス・ポール」が4月に行った世論調査で、「新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)について、中国政府に責任があると思いますか」と聞いたところ、「ある」は77%で、「ない」(23%)を大きく上回った。

 中国の軍事的挑発も、トランプ政権をイラつかせているようだ。

 中国海軍の空母「遼寧」を中心とする艦隊は4月11日と28日に初めて、沖縄本島と宮古島間を通過した。中国軍のミサイル駆逐艦や早期警戒機なども3月以降、沖縄や台湾周辺で挑発的行動を見せている。

遼寧

 さらに、中国軍が8月、同国南部・海南島沖の南シナ海で、台湾が実効支配する東沙諸島の奪取を想定した大規模な上陸演習を計画していると、共同通信がスクープした。台湾の蔡英文総統の2期目の就任式を来週20日に控え、中国がさらに挑発行動に出る危険性もある。

 米第7艦隊は13日、米海軍のミサイル駆逐艦「マッキャンベル」が同日、台湾と中国を隔てる台湾海峡を通過したと発表した。米海軍の駆逐艦は先月も2回にわたり台湾海峡を通過している。

 米海軍主催で2年に1回、米ハワイで行われる世界最大規模の多国間海上演習「リムパック(環太平洋合同演習)」は、新型コロナ禍で中止も検討されたが、日本政府の強い働きかけで、8月に実施される。

 貿易停止までチラつかせた、トランプ氏の怒りをどう見るか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「中国が昨年12月時点で、医師から新型コロナウイルスの報告を受けながら、初動対応を誤り、情報を隠蔽し、国外への移動を制限しなかったことは事実だ。今年1月までに中国から40万人以上が米国に移動したという。明らかにウイルスを移された形で、怒らないほうがおかしい」と語った。

 緊張する米中関係は今後、どうなりそうか。

 藤井氏は「中国では『台湾への武力侵攻』を唱える声もあり、米国も抑止行動を求められるなど軍事的な緊張もある。米中は今年1月、第1段階の貿易協定に署名したが、中国はこれを守らないかもしれない。そうなると、米国も貿易上の相互依存を解き、中国をサプライチェーンから外して、先進国を集めた大きな経済グループをつくるのではないか。一方の中国は、一帯一路構想を中心とした比較的小さな経済グループづくりを迫られる」と分析した。

 新型コロナで、世界の枠組みが、大きく変わることになるのか。

【私の論評】トランプ大統領の行動は、民意を反映したもの(゚д゚)!

中国共産党は、世界に謝罪しない限り、米国等の怒りを買い、石器時代に戻ることになるかもしれないと、このブログに掲載したことがあります。

これについては、「そんなことはあり得ない」などと考えた人もいるかもしれませんが、以上の記事をご覧いただければ、あながち誇張ともいえないことがおわかりいただけたと思います。

ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、米国内の死者は11日に8万人を超えました。10年以上にわたった戦闘で、約6万人の米兵が亡くなったベトナム戦争の死者を大きく超え、世界的にも突出しています。もうすでに米中は順戦争状態に入ったと認識しても良いと思います。

米国民の中国に対する反発はかなり強まっています。ある米調査会社の調査結果では、新型コロナの感染拡大に対し中国に責任があると考える米国人が約8割に達したというものもあります。新型コロナの流行拡大には中国の隠蔽体質があるとする見方は米国では強いのです。

現状の米国は新型コロナの感染拡大に歯止めをかけるのに注力している段階ですが、仮に収束に向かえば中国に対して強硬姿勢を求める世論は一段と高まるでしょう。

コロナ禍以前から、米中両国は新時代の覇権を争う「新冷戦」の最中にありました。制裁関税をかけるなどトランプ政権の対中強硬姿勢については国内でも批判がありましたが、新型コロナ感染拡大に伴う反中世論の高まりは、こうした政策を正当化することになります。

中国に対して何らかの「償い」をさせようとする世論の高まりに応じて、収束が見えてくるであろう6月ごろからトランプ大統領も本格的な反中キャンペーンを張るようになるでしょう。現状のトランプ氏の上記の記事でみられる、言動などは、まさにそれを予感させるものです。

それは「新型コロナを『武漢ウイルス』と呼ぶな」と発言し、「中国寄り」というイメージを国民に与えた民主党の大統領候補バイデン氏にとっては打撃となることは目に見えています。

バイデン氏

YouGovの最新世論調査によると、米国人の3分の2以上が、中国政府に少なくとも部分的にパンデミックの責任があるとしています。

世論調査は、共産主義の犠牲者記念財団(The Victims of Communism Memorial Foundation:VOC)が委託したもので、米国人の69パーセントが、中国政府はコロナウイルス拡大に「ある程度」または「とても」責任があるという意見に賛成だということがわかりました。さらに回答者の51パーセントが、中国はウイルスの影響を受けた国に賠償すべきだと回答しており、そのような賠償に反対したのはわずか17パーセントでした。

また米国人は、コロナウイルスのパンデミックを踏まえると、中国に関して歴史的に否定的な意見も示しており、67パーセントは中国を競争相手か敵のどちらかとみなしています。

VOCのマリオン・スミス事務局長は、米国人が、冷戦時代にソビエト連邦に対して抱いていたのと全く同様に中国に対して好ましくない印象を持っていることを示す数字だと述べました。

「米国人は(中国に関する)この新しい現実に気づきつつある。我々は冷戦から教訓を得たはずだ。特に共産党の性質について」とスミス氏はワシントン・フリービーコン紙とのインタビューで語りました。

調査結果は、中国がパンデミックに対する対応に責任を取るべきだという意見に、米国人がますます賛成していることを示しています。ギャラップでは、1978年から中国に関する米国の態度を評価していますが、現在米国人は中国にこれまでで最も否定的な見方をしていることがわかりました。3月にピュー研究所が実施した別の世論調査でも、民主党・共和党両方の大多数で現在、中国に対する評価が最低となっていることがわかっています。

反中国政府で意見が一致する新たな状況から、政策立案者はさらに勢いを増して権威主義国家に対する攻撃的な姿勢を取っています。連邦議員は中国政府に対抗するため、ここ数カ月のうちに一連の法案を発表しており、その中でもトム・コットン上院議員(共和党、アーカンソー州)は、太平洋での米国と同盟国の軍事能力を強化する430億ドルの計画を推進しています。

YouGovの最新世論調査世論調査は5月6日から7日の間に1,382人の成人米国人に対して実施されました。調査はインターネットで行われました。

また調査によると、10人のうち7人の米国人は中国が「罰を受ける」べきだという考えに同意しています。米国人は厳しい罰に賛成ではないですが、およそ10人に4人は「国際的な制裁」を支持しており、33パーセントは中国製品に対する追加関税を支持しています。

また調査では、コロナウイルスが中国政権の否定的評価に大きく貢献したことも判明しており、44パーセントの米国人が、中国政府に対する自分たちの意見はパンデミックの結果としてさらに否定的になったとしています。

スミス氏は、コロナウイルスは永久に効果を持つ―米国の中国に対する意見はパンデミック終了後も回復しないと述べました。

スミス氏は、「米国人は、世界で起きていることが全てわかっていない場合もある。だが、これほど明白なことが我々の生活に全面的な影響を与えたことが判明した時、米国人は実際決然とした態度を取り得る。ある種の(中国との)分断が起こることになり、それは多くの人が起こり得ると考えるよりもっと全面的なものとなるだろう」としています。

世論調査からすると、トランプ氏の行動は、選挙対策もあるでしょうが、そんなことより、民意を重視した行動ということができると思います。

民意を重視しない大統領候補者は、当選が難しくなるのは当然です。トランプ大統領も、バイデン氏もこの民意をくみとり、どのような政策を打ち出すかが、最大のポイントとなってきたのは間違いないようです。

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2020年5月14日木曜日

「コロナ増税」へ不穏な動き… 復興増税の“愚策”繰り返せば日本経済の致命傷に ―【私の論評】消費税減税とともに、復興所得税も廃止して日本の「シバキ倒し文化」を終わらせよ(゚д゚)!

「コロナ増税」へ不穏な動き… 復興増税の“愚策”繰り返せば日本経済の致命傷に 

高橋洋一 日本の解き方


2011年の東日本大震災の際に、復興増税が導入された。そして今回の新型コロナウイルス感染問題でも、財政規律を強調したり、緊急経済対策での国債増発に伴う将来の増税が必要との声があちこちで上がり始めているのが気がかりだ。

 復興増税は復興特別所得税、復興特別法人税、復興特別住民税と3種類ある。所得税は税率2・1%で13年1月から37年12月まで25年間課されている。法人税は税率10%で、12年4月から15年3月まで3年間の予定だったが、1年前倒しで14年3月に廃止された。住民税は府県民税・市町村民税合わせて1000円を14年4月から24年3月までの10年間課されている。

 所得税の税率2・1%は、仮に消費性向90%で消費税に換算すれば2・3%程度なので、消費に与える影響は大きい。具体的にいえば、実質所得が4・6兆円程度減少し、その結果、消費も4兆円程度減少する。

 本コラムで何度も指摘しているが、大災害時の増税はありえない。大災害が100年に一度なら、復興費用は「100年国債」で調達するのが原則である。大災害時の増税は経済学の課税平準化理論にも反するもので、古今東西行われたことがない愚策だ。

 「供給ショック」より、需要の喪失による「需要ショック」が大きい場合、デフレ圧力が高まるので、インフレ目標に達するまで、中央銀行による国債買い入れが可能になる。この状況では、長期国債発行による総需要創出と日銀の買い入れが最善手だ。この場合、政府の実質的な子会社である日銀が国債を保有するので、利払い費や償還負担は事実上発生しない。その結果、財政状況を悪化させることもないので、将来の増税を心配することはない。

 日本大震災の時には、こうしたセオリーが無視され、需要ショックであったにも関わらず、日銀による国債買い入れもなく、本来は不必要であったはずの復興増税が行われた。100年国債も発行されず、事実上25年償還となり、前述のように毎年の負担は大きい。

 財務省は、当時の民主党政権が政権運営に不慣れだったことに乗じて復興増税を盛り込んだ。これをホップとして、ステップで消費税を5%から8%に増税、ジャンプとして10%への税率引き上げを画策し、実際に安倍晋三政権で実行された。

 財務省としては、二匹目のドジョウを狙っているのだろう。コロナ対策で多額の財政支出を強いられるので、財政悪化を理由としてコロナ増税を主張する。その勢いで、消費税率も12%、さらには15%へと、再びホップ・ステップ・ジャンプをもくろんでいるのではないか。

 世界の先進国では、中央銀行による国債の無制限買い入れや、減税、給付金など積極財政政策で一致している。そして、大災害での増税は行われない。

 コロナ・ショックでは需要が蒸発しデフレ圧力が高まっている。そうした時に増税が行われたら、落ち込んだ経済への致命的なダブルパンチとなるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】消費税減税とともに、復興所得税も廃止して日本の「シバキ倒し文化」を終わらせよ(゚д゚)!

皆さんが今でも復興所得税は徴収されています。ただし、所得税と復興所得税は、まとめて所得税とされいるのでわかりにくいところがあります。

以下に、代表取締役Aの所得税を例示します。事例では、所得税だけ引かれていない事前確定届出給与を示しています。

(事前確定届出給与)
1,000,000円
(所得税及び復興特別所得税)
1,000,000円×20.42%=204,200円
(代表取締役Aの口座へ振り込む額)
1,000,000円-204,200円=795,800円

この事例でみるとおわかりになるように、日本の所得税はかなりのものです。

復興財源にはこのように、復興法人税以外にも「復興所得税」などが存在します。所得税については、サラリーマンであれば2013年1月1日から25年間、税額の2.1%分が源泉徴収により天引きされています。

消費税が上がってしまい、コロナ禍に見舞われている現在、消費税減税は叫ばれているものの、何故か家計の負担となる復興所得税に関しては、廃止の声が聞こえて来ません。ところが、復興特別法人税に関しては、1年前倒し廃止 平成25年12月12日に公表された平成26年度税制改正大綱にて、この復興特別法人税は1年前倒しで廃止されました。

法人税は廃止されたのに、所得税はなせ廃止されないのでしょうか。それは、経団連を消費増税の味方につけるために、法人税減税をちらつかせてきたからです。

海外では、法人税減税と消費増税は、関係ありません。各国で法人税減税が行われていますが、そのロジックは、個人の段階で税を捕捉することをきちっとやるため、法人税は二重課税になるため取らないというものです。そのために必要なのが歳入庁や、番号制です。消費税と法人税の引き下げをセットで考える国はありません。

なお、米倉弘昌氏が経団連の会長のとき「消費税を上げて法人税を下げるのは企業優遇との批判にも「企業業績が高まれば雇用も上がり賃金水準も上がってくる」と話していました。

私自身は、コロナ禍に対応するために、消費税を減税すべきという声は、聞こえてくるものの、復興所得税を廃止せよという声が聞こえてこないのは本当に奇異だと思います。

本来ならば、復興所得税は廃止した上で、消費税も0%にすべきです。これは、実務的には税率変更時の手続きと同様であり、すでに事業者、税理士、税務署職員共に全て経験済みで大きな負担は発生せず、かつ、その効果は全ての国民が享受することができるものです。

何より逆進性の強い消費税は、経済的に弱い立場にある人には大きなインパクトがあります。復興所得税廃止もさらにインパクトがあります。

現在のコロナウイルスでのさらなる景気の落ち込みを踏みとどめるためには、復興所得税は0に、消費税率もゼロにする以外に道はないです。財源は、国債で賄えば良いです。

国債が将来世代のつけになるというのは、このブログでも述べてきたように、ラーナーの法則でも明らかなように、ここ日本では全くのフェイクです。

アバ・ラーナー

やはり、昨日このブログにも掲載したように、日本は財務省を頂点に、政府も企業も「シバキ倒し文化」が根付いてしまい、国民はどこまでも「シバキ倒す」のが正しいと信じて疑わなくなってしまったのでしょうか。

高橋洋一氏は、上の記事で、「大災害時の増税は経済学の課税平準化理論にも反するもの」としていますが、それはどういうことかといえば、大災害時の復興などを増税で賄うなどということは、大災害を被った世代だけが、大災害時の復興などのへの負担を被るということであり、それはあまりに不公平だということです。

これを100年債などで賄えば、大災害字の復興などの負担を大災害を被った世代だけではなく、将来世代も応分に被るということで平等になるのです。これを、財務省等は将来世代へのつけなどとしていますが、そんなことはありません。なぜなら、復興などで新たに設置するインフラなどは、当然のことながら、現在世代だけではなく将来世代も恩恵にあずかることができるからです。

そうして、何よりも、大災害などで大損害を受けた世代が、さらにその損害を全部被るということになれば、それこそ、経済が破綻してしまいかねません。そうなれば、将来世代もその破綻の悪影響を被るわけで、とんでもないことになってしまいます。


復興税を廃止するのは、造作もないことです。消費税を0%にすることも実務的には税率変更時の手続きと同様であり、すでに事業者、税理士、税務署職員共に全て経験済みで大きな負担は発生せず、かつ、その効果は全ての国民が享受することができるものです。

政府特に財務省にとっては、大変かもしれませんが、そのようなことは財務省が努力すれば良いだけの話です。財務省などシバキまくって、法的事務的手続きを無理ややらせて、根をあげたら、そこで財務省を廃止して、複数に分割して他の省の下部組織に組み入れてしまえば良いです。


長年国民を「シバキ倒してきた」のですから、今度は自分たちが「シバキ倒される」のは当然のことです。政治家、国民などで寄ってたかって「シバいてシバいてシバキ倒す」べきです。そうしないと、本当は頭が悪いのにエリート意識だけ高い彼らは「シバキ倒し」の本当の苦しさを理解することはできないです。

なぜそんなに減税に拘るかといえば、何より逆進性の強い消費税は、経済的に弱い立場にある人には大きなインパクトがあるからです。

私は、現在のコロナウイルスでのさらなる景気の落ち込みを回避するためには、消費税率をゼロにするか、大幅減税する以外に道はないと考えています。財源は、このブログでも掲載してきたように、国債で十分まかなえるどころか、ゼロやマイナス金利の現状では、その分政府が儲けることができます。復興所得税を廃止しても、復興は国債で十分まかなえます。

というか、財務官僚がもっと頭が良ければ、国債のマイナス金利を利用して、金を儲けて、儲けたことをわからないようにして、特別会計に組み込むなどの芸当など簡単にできるはずですが、そんなこともできないほどに、省益というか、いずれ省益を損ねることになるのは明々白々な増税に凝り固まり、本当に頭が悪くなつてしまったようです。

現在、財務省は鉄壁のようにみえます。しかし、かつての中国がそうみえましたが、現在では長年の綻びが露呈しているように、財務省も鉄壁ではないはずです。まともな政治家や、国民が結集して、財務省の綻びをえぐり出し、徹底的に「シバキ倒して」できれば、崩潰させるべきです。そうでないと、日本の「シバキ倒し文化」はいつまでも続くことになります。

当面世界的には、中国との対峙、国内的には財務省との対峙が日本にとって最重要課題になると思います。

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2020年5月13日水曜日

「昭和恐慌」に学ぶコロナ対策 金融緩和と積極財政が有効、リーマンの失敗繰り返すな! ―【私の論評】コロナ禍を奇貨として、日本は「シバキ倒し」社会から「まともな社会」に移行すべき(゚д゚)!

スペイン風蔓延時にマスクをする当時の女子学生たち

 いまから約100年前、スペイン風邪や関東大震災、昭和恐慌に見舞われた日本はどのように抜け出したのか。今回のコロナ・ショックからの脱出を目指すうえでどのような点を参考にすべきだろうのか。

 昭和恐慌は、1930年から31年にかけて起こった戦前日本の最も深刻な恐慌で、第一次世界大戦による戦時バブルの崩壊を契機としている。20年代、世界の主要国は金本位制へ復帰していたが、今ではその結果として20年代末期から世界大恐慌が起こったと分析されている。

 このような状況下、29年7月に成立した立憲民政党の濱口雄幸内閣は、金解禁・緊縮財政と軍縮促進を掲げた。このマクロ経済政策を今の言葉で言えば、金融引き締め政策と緊縮財政政策だ。濱口雄幸内閣の事情は、城山三郎著『男子の本懐』に書かれているので、ご存じの方も多いだろう。

 この本では、濱口首相は東京駅で銃撃され、非業の死を遂げた英雄として描かれている。その大前提として、立派な経済政策を遂行したとの評価があり、その信念を男の美学として「男子の本懐」としている。

 筆者は40年前、当時の大蔵省に入省したが、新人研修でこの本の感想文を書かされた。筆者以外の同僚は、信念に基づき命をかけてまで打ち込むことは素晴らしいというものだった。

 しかし筆者は、金解禁つまり金本位制への復帰をなぜ行ったのかが理解できなかった。そのため、正しいかどうかわからない政策に命をかけるのはいかがなものかという感想文を書いた。当時、金本位制に復帰することは金融引き締めであり、緊縮財政とセットで国民を「シバキ上げ」る政策は、失業を増加させマクロ経済運営で問題だったはずだからだ。

 これがユニークな感想だったため、筆者は同僚の前で大蔵省の先輩教官に面罵された。この教官はその後、事務次官になった。さすが緊縮策の権化の財務省ならでの人事だ。

 史実としては、この金融引き締めと緊縮財政政策は政変によって終わった。31年12月、立憲政友会の犬養毅内閣となったが、高橋是清蔵相はただちに金輸出を再禁止し金本位制から離脱、積極財政に転じた。積極財政では日銀引受を伴い、同時に金融緩和も実施され、民政党政権が行ってきたデフレ政策を180度転換した「リフレ」政策となった。その結果、先進国の中でも、恐慌から比較的早く脱出した。

 昭和恐慌は、世界恐慌とともに需要ショックによって引き起こされた。それは、日銀引受を伴う金融緩和と積極財政が最も有効な処方箋だ。

 コロナ・ショックも、世界的なサプライチェーンの寸断という供給ショックもあるが、人の移動制限の伴うビジネス停止により一気に需要が喪失する需要ショックの面が強く、昭和恐慌と同様の経済対策が必要だ。

 今回のコロナ・ショックは12年前のリーマン・ショックを上回るかもしれない。当時は金融緩和と積極財政が不十分だったが、今度こそ昭和恐慌を模範例とすべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】コロナ禍を奇貨として、日本は「シバキ倒し社会」から「まともな社会」に移行すべき(゚д゚)!

世界恐慌、日本では昭和恐慌がなぜ起こったのかは、謎でした。しかし、1990年代の研究によって今では明らかになっています。その答えとは、デフレです。米国をはじめ、世界中の政府が財政政策では緊縮政策、金融政策では引き締め政策をとったため、デフレに陥ったというのが、真相でした。

日本では、高橋是清による積極財政政策、金融緩和政策により、世界で一番はやく、教皇から脱出しました。米国が恐慌から完全に脱却できたのは、第二次世界大戦に入ってからしばらくしてからでした。

大蔵大臣として有能だった高橋是清だが、なぜか今の日本では高く評価されない

これらは、歴史研究から明々白々なのですが、なぜか日本では、高橋是清の業績が正しく理解されず、未だに不況になれば、緊縮財政をして、金融引締をすべきと思っている官僚や政治家が存在することには驚かされます。

挙げ句の果に、財務省では濱口雄幸氏を英雄視するのですから、さもありなんです。ほんらいであれば、恐慌の歴史研究の内容からすれば、濱口氏は、デフレを深刻化させた、無能宰相として、無能のそしりを受けるのが当然です。

財務省では英雄視させる総理大臣としては無能だった濱口雄幸氏

このような反省が真摯になされていないためか、今でも消費税増税等で、国民を「シバキ上げ」る政策は公然と継承されています。日本では、官僚も政治家も国民「シバキ上げ」が大好きです。

日本人はよほど「シバキ上げ」が大好きなようです。根性論で戦争を押し進め、国民を弱肉強食の戦地に送り込み、前代未聞の損害を与えた「軍官僚の暴走」の過去を反省したほうが良いと思います。

日本は「一億・総シバキ上げ社会」です。まず失われた30年。技術革新による人手余りで、徐々に労働環境が悪化しているのに、財務省は緊縮財政で国民をしばき。日銀はデフレを放置どころか金融引締で国民をしばき、企業は低賃金・長時間ブラック労働で労働者をシバキ倒しました。

仕事が減っているというのに、「所得の低下と失業は自己責任だー、社会(マクロ)に責任を転嫁するなー」と叩きまくる奴らが大量に発生して多くの国民をシバキ倒しました。特に若者に対するシバキは異常ともいえました。

新聞マスコミが総出で「消費税の増税と社会保障の削減をしろ」とシバキ倒し、労働者の政党であるはずの民主党(当時)が消費税の増税法案を強行して、止めを刺しました。

近頃、金融緩和でようやく人手不足になってきたと思ったら、人材派遣会社が賃金をピンはねでシバキ。新聞マスコミは人手不足だと大騒ぎするのですが、企業は消費税の増税が先に見えているから、安易に正社員を増やすより派遣を増やして様子を見るのは当然といえば当然です。

マスコミは、企業の過剰な留保を攻め立てましたが、実際にコロナ禍のようなことが起こってみれば、政府の保証などあてにならず、内部留保をしていた企業は余裕を持ってこれに対処できますが、そうでない企業は倒産し、従業員は露頭に迷うことになっています。

ただし、企業も、もしさらに不況になれば、派遣切りで、労働者を「シバキ倒す」気満々です。同一労働、同一賃金等の施策がとられたとしても、首を切られしまえば、元の木阿弥です。

マスコミ御用学者一体で、そんな茶番を繰り広げる一方で、政府は一億総活躍と称して、老若男女すべてを労働に刈り出すど根性政策にまい進しています。

そんなことより、普通の就労者が普通に仕事をしつつも、普通に生きていける、その中で少しでも努力すれば、その分報われるのが当たり前の社会にするのが本来のあり方のはずです。

まるで、今の政府、その中でもあたかも大きな政治集団のごとく振る舞う財務省は何としても働かなければ、国民に一円も与えないと思っているかのようです。女性が働かなくても子育てできる「所得保障社会」を実現するのではなく、女性を働かせるための政策を推進。女性を労働に駆り立てるために、新聞マスコミがイクメンなどとはやし立てる有様です。


すばらしき、一億・総「シバキ上げ」社会。日本では、何のために科学技術が進歩してるのでしょか、お答えください。

答えは、「シバキ拷問装置」を高度化するためとでもしておきます。

この「シバキ上げ」思想は完璧に間違っています。企業同士が、互いに「シバキ上げ」切磋琢磨して、次々とイノベーションを成し遂げ、社会を発展させていくというのならともかく、本来政府の役割は、企業同士が正々堂々と、不正な手段に訴えることなく互いに「シバキ上げ」競争するためのインフラを築くのが仕事のはずです。

しかし、いつの間にか日本では、政府や日銀が、国民や労働者を直接「シバキ倒す」のが仕事になってしまったようです。だからこそ、平成年間のほとんどの期間、日本はデフレでした。

令和年間はそのようなことにすべきではありません。コロナ禍は、多くの人命を失い大変なのですが、大きく社会を変える契機にもなり得るはずです。これを奇貨として、日本は「シバキ倒し社会」から「まともな社会」に移行できるようにすべきです。そのためには、直近では消費税減税は、必要不可欠です。

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2020年5月12日火曜日

コロナ禍に動く中国の“軍事謀略” 米中対立激化、台湾排除…国内で権力闘争も 河添恵子氏が緊急寄稿 ―【私の論評】尖閣問題は、単なる領土問題ではなく、コロナ後の世界新秩序における日本の地位を決める(゚д゚)!


米中貿易戦争

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)が続くなか、世界保健機関(WHO)の年次総会が18日、開催される。ドナルド・トランプ米政権は、世界全体で28万人以上もの死者(米ジョンズ・ホプキンズ大学、10日集計)が出ている「死のウイルス」をめぐり、習近平国家主席率いる中国とWHOの責任を厳しく追及する構えだ。加えて、日本と米国、欧州は「世界の人々の命と健康を守るため」にも、感染拡大を封じ込めた台湾(中華民国)のオブザーバー参加を支持するが、中国は強硬に反対している。激化する「米中の対立」と「中国の軍事的挑発」「中国国内の権力闘争」とは。ノンフィクション作家の河添恵子氏が緊急寄稿第13弾で迫った。


 「WHO総会や国連関係の会議に、台湾のオブザーバー参加を支援するよう、すべての国に訴える。WHOのテドロス・アダノム事務局長に対し、台湾を年次総会に招待するよう要請した」

 マイク・ポンペオ米国務長官は6日、記者会見でこう語った。

 台湾は「中華台北」の名義で、2009~16年にWHO総会に招かれたが、蔡英文総統が就任した翌年(17年)からは、中国の反対で参加できていない。寄付の申し出すら拒絶されている。

マイク・ポンペオ長官

 香港出身のマーガレット・チャン氏が事務局長時代の11年5月には、WHOが内部文書で台湾を「中国台湾省」と表記したため、台湾はWHOに正式抗議した(=AFPなどが報道)。

 新型コロナ禍のなか、WHO総会は18日、テレビ会議方式で開催される。ポンペオ氏は、この会議に「世界一の防疫先進国」である台湾の参加を支持するよう、世界各国に呼び掛けるとともに、「中国ベッタリ」と揶揄(やゆ)されるテドロス氏を牽制(けんせい)したのだ。

 これに対し、中国で台湾政策を担う国務院(政府)台湾事務弁公室の馬暁光報道官は7日、「最近、民進党と台湾独立を企てる分離主義勢力は、新型コロナウイルスの流行に便乗して、WHOの問題への台湾の関与を誇大宣伝し、『1つの中国』の原則に挑戦している」と反発した。

 だが、米国側は一歩も引かない。

 米国の上下両院外交委員会の幹部らは8日、日本を含む55カ国の政府に書簡を送った。書簡には、「われわれは貴国政府に対し、米国とその他の国のように、台湾を排除する中国の『国際組織外での行為』を終わらせるよう要請する」という一文が含まれていた。

 台湾外交部の欧江安報道官は9日、米国への深い謝意を示したが、「国際組織外での行為」とは、一体何を示すのか?

 最近では、欧州・チェコの有力政治家の身に起きた悲劇が、世界に報じられたばかりだ。

 台湾訪問を2月に予定していたヤロスラフ・クベラ上院議長が1月20日、心臓発作で急逝した。クベラ氏の未亡人と娘は、国営テレビの番組に出演し、「夫は中国政府に脅迫されていて、そのストレスが急死の引き金になった」と衝撃的な告白をした。

 クベラ氏急死と中国の関係については、ロイター(日本語版)も2月19日、「中国がチェコ企業への報復示唆、高官の台湾訪問巡り」とのタイトルで報じている。

 在チェコ中国大使館が1月10日付で、チェコ大統領府に送った書簡には、「中国に経済的利益を持つチェコ企業はクベラ議長の台湾訪問の代償を払わなければならなくなるだろう」と記されていたという。ロイターが書簡を確認したというが、公然とした脅迫というしかない。

 世界各国が、新型コロナウイルスのパンデミックで危機的状況にあるななか、中国人民解放軍は“戦闘モード”にあるといえる。

 同軍東部戦区は、国家安全教育日の4月15日、公式アカウント「人民前線」に、「幻想を捨て、戦闘を準備せよ」とのメッセージを掲載した。東部戦区の任務は「台湾有事」「日本有事」に備えることとされる。

 この直前の4月10日から11日にかけて、中国海軍の空母「遼寧」を中心とする艦隊が東シナ海を航行した後、沖縄本島と宮古島間を通過した。3月以降、中国軍のミサイル駆逐艦や早期警戒機などが、沖縄や台湾周辺で挑発的行動を見せている。空母「遼寧」の艦隊は4月28日、沖縄本島と宮古島間を通過して東シナ海に向かった。

 ■中国は“内戦外戦”状態

 習主席はこれまでも、「(台湾)統一のために、武力行使も放棄しない」と公言してきた。

 中国軍の不穏な動きを受けてか、米太平洋空軍は4月29日、台湾を含む19カ国の空軍参謀総長や指揮官とテレビ会談を行った。

 台湾の蔡総統は今年1月15日、英BBCのインタビューを受け、「中国の圧力」と「戦争リスク」について、次のように語っている。

 「戦争がいつ起きるか、その可能性は排除できない。だから臨戦態勢で有事に備えなければならない」「軍事的な準備に加え、より重要なことは国際的な支援を得る必要がある」「台湾政府としては、北京を挑発して事態を悪化させたり、北京に攻撃の口実をつくらせないよう、挑発しない態度を貫いている」

 新型コロナウイルスをめぐり、世界から「台湾は防疫模範国」と称賛されたことで、中国を刺激したとすれば、皮肉だ。

 ただ、習氏は共産党内部の“戦闘”にも明け暮れている。

 4月の孫力軍公安部副部長の逮捕に続き、3日には孟建柱元公安部長と、北京・上海の公安部幹部数十人の逮捕が報じられた。孫氏と孟氏は、習氏と対立する江沢民一派の超大物だった。

 中国は、内憂外患どころか“内戦外戦”状態とも言えそうだ。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。

【私の論評】尖閣問題は、単なる領土問題ではなく、コロナ後の世界新秩序における日本の地位を決める(゚д゚)!

習近平は、なぜここまで、台湾に執着するのでしょうか。それには、それなりの理由があります。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米軍コロナ禍、その隙に台湾を恫喝する中国の卑劣さ―【私の論評】東アジアで失敗続きの中国は、今後軍事的挑発をエスカレートし、台湾武力奪取の可能性大(゚д゚)!
台湾海峡を通過中の米海軍イージス駆逐艦「バリー」(写真:米海軍)
以下に、この記事から一部を引用します。
中国としては、台湾が中国ウイルス封じ込めに失敗していれば、中国がイタリアなどのEU諸国に対して実施している、マスクや医療機器の提供や、医療チームの派遣などで微笑外交を台湾に対しても実行したことでしょう。 

これにより、中国は今年1月の台湾総統選での蔡英文氏の再選により、失った台湾での失地回復を行うことができたかもしれません。 
そうして、中国ウイルスが終息した後には、甚大な被害を受けた台湾に対して、莫大な経済的援助をすることになったと思います。 
そうなると、台湾独立派が台頭した台湾を馬英九政権時代のように、親中派を増やすことができたかもしれません。
考えてみると、中国は昨年11月には、香港区議会議員選挙で親中派が敗北しています。今年1月には、台湾選挙で蔡英文総統が再選されています。いわば連敗続きでした。 
中国ウイルスに関しては、韓国は当初は対策に失敗しましたが、最近では収束に向かっています。日本も、感染者が増えつつはありますが、それでも死者は相対的に少なく、中国や米国、EU諸国に比較すれば、中国ウイルス封じ込めには成功しています。 
香港の対応も素早いものでこれも封じ込めに成功しています。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。 
中国官僚のごまかしをよく知っている香港人が、2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓をしっかりと心に刻み、徹底的な対策をしたことも効果的でした。 
中国は、中国ウイルスで、台湾、香港、日本がかなり痛めつけられていれば、得意の微笑外交で、台湾、香港、日本に対して存在感を高めることができたかもしれません。 
しかし、台湾は世界的にみても、最高水準で中国ウイルスの封じ込めに独力で成功し、独立国としての意地をみせました。 
今の中国が、台湾統一のためにできることといえば、軍事的な脅威をみせつけて、存在感を強調することです。
 ・・・・・・・一部略・・・・・・・・・ 
本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

ウイルスの封じ込めと、台湾統一に成功すれば、これは、習近平が成し遂げた大偉業ということになります。今まで、際立った業績のが一切なかった習近平にとって大きな手柄となり、習近平体制が定着することになります。
この記事では、中国の台湾武力奪取について掲載しましたが、いきなり台湾ということになれば、国際社会はこれを絶対に許さないと思います。しかし、その前段階として、中国による 東シナ海実効支配というシナリオは十分にあり得るものになったと考えます。

東シナ海は、太平洋西部にある縁海であり、北は対馬海峡を通じ日本海と接し、東は南西諸島を挟んで太平洋(フィリピン海)に接します。南南西に台湾海峡を通じ、南シナ海と結ばれているほか、北西は黄海に接している。大規模河川として長江が流入しています。


海域の中央部には島嶼は無いですが、北辺から東を経て南辺にかけて周囲に島弧があります。主な島嶼として、北から済州島、九州、南西諸島、台湾となっています。ユーラシア大陸縁辺部には舟山群島などの小島嶼があります。

海底はほとんどがユーラシア大陸から続く大陸棚で、深度200mより浅いですが、東部は沖縄トラフであり深度約2,000mと深くなっています。海流としては黒潮およびその分流の対馬海流が流れています。

日本と中国の間では尖閣諸島問題のほか東シナ海ガス田問題に絡んで経済水域の設定に争いがあります。また、韓国と中国の間でも蘇岩礁にからみ争いがあります。

この地域の海域のほとんどを中国は実効支配した後に、尖閣諸島や台湾付近の海域を徐々に封鎖するなどの実効支配し、最終的には両方とも奪取するつもりであるとみておくべきでしょう。

東シナ海も日本のニュースでは殆ど報じられなくなってしまいましたが、中国は着実に東シナ海を狙っています。ここでの接続水域への中国公船の侵入が頻繁になっています。侵入という言い方は接続水域への場合はちょっと微妙ですが。

それから領海内への侵入、これも向こうからの言い方で敢えて言うと着実に繰り返し、頻度を少しずつ上げ、かつ船の数を増やして来ています。この問題を私たちは、南シナ海から東シナ海に連なる中国の海洋進出として厳しく捉え直すべきです。

尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に侵入した中国海警局の船が日本漁船を追尾した問題で、中国外務省の趙立堅報道官は11日、海上保安庁の巡視船が現場で漁船の安全を確保したことについて「違法な妨害を行った」と非難し、「日本は釣魚島(尖閣諸島の中国側名称)の問題において新たな騒ぎを起こさないよう希望する」と述べて責任を日本側に転嫁しました。

中国外務省の趙立堅報道官

趙氏は、外交ルートを通じて日本側に「厳正な申し入れ」を行ったことを明らかにした上で「中日両国は力を集中して(新型コロナウイルスの)感染症と戦うべきだ」と発言しました。

趙氏は「中国の領海で違法操業」している日本漁船を発見した中国海警局の船が「法に基づいて追尾・監視」したと主張。「釣魚島の海域を巡航することは中国側の固有の権利だ」と強調しました。

これについて菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「全く受け入れることはできない」としたうえで、「現場海域で警告を繰り返し行うとともに、外交ルートでも厳重に抗議し、日本漁船への接近と追尾を直ちにやめて、速やかにわが国の領海から退去するよう強く求めるなど、冷静にきぜんと対応した」と述べました。

そして「政府としては、わが国の領土、領海、領空は、断固として守り抜く方針のもとで、引き続き緊張感を持って情報収集に努めつつ、尖閣諸島周辺の警戒監視に万全を期していきたい」と強調しました。

衛藤沖縄・北方担当大臣は、閣議のあとの記者会見で「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も明らかにわが国固有の領土であり、国内外でわが国の立場に正確な理解が浸透するよう発信強化に努めたい。中国の態度は大変遺憾であり、日本ももっとはっきりと対処を行わなければならない時がきていると認識している」と述べました。

南シナ海においては、中国は新型コロナウイルスの混乱に乗じて軍事要塞化の動きを加速しており、米軍はこれを牽制するため「航行の自由作戦(度を超した海洋権益を主張していると判断した国の海域を対象に米軍の艦船等を派遣する作戦)」を展開しています。さらに米軍は中国側の神経を逆なでするかのように台湾との軍事面の連携を強化しており、一触触発の状態にあると言っても過言ではありません。

米国は、新型コロナウイルスによるパンデミックを通じて、中国に対する政策を根本的に変えざるを得ないと確信したのは間違いないところです。

トランプ大統領の中国攻撃は、日々エスカレートしています。また、マーク・エスパー国防長官は、コロナ危機発生後の2020年2月の下院軍事委員会公聴会で、「米国にとって中国こそが軍事面、防衛面で最大の挑戦者として対峙する相手だ」と断言しました。

そのエスパー国防長官の下で現在、中国を睨んだ米軍の再編・態勢見直しが急ピッチで進められています。

その内容はまだ公表されていないが、エルブリッジ・コルビー元米国防次官補代理とA・ウェス・ミッチェル元米国務次官補は共同で、ウォールストリート・ジャーナル(2020年5月8日付)に「中国封じ込めに向けた困難な道」のタイトルで、その方向性を示唆する次のような記事を寄稿しています。
 ロシアの脅威には、欧州の同盟国、すなわち北大西洋条約機構(NATO)が自らの防衛をいま以上に自分たちの力で担う形で安全を確保させ、中東では、「より軽く、より小さく、より低コストの米軍事プレゼンスを特徴とするような経済的戦力を保持する戦略」へと移行する。そのうえで、インド太平洋地域において、より強力な米軍事力を展開し中国を抑止する。(要約)
すなわち、パンデミック後の米国の大戦略は、中国がもたらす脅威の中心部分への対応を優先するべきとし、そのため、他の地域では関与の度合いを弱めたり、デタント(緊張緩和)の機会を求めて調整したりする必要があることを意味しています。

そして、米戦略の焦点であるインド太平洋地域では、日本、オーストラリア、台湾、インド、ベトナムのような国々が持っている対中防衛能力を基盤とした国防戦略(2018NDS)で説明されているような信頼できる前方防衛が必要であり、米国とその同盟国は、中国と対峙せずして自国の利益を守ることはできないと強調しています。

いうなれば、「中国封じ込め」です。

欧米諸国は、中国を封じ込めるためにはいま代償を払うか、それとも後から払わされるかのどちらかしかないことを認識せねばならないと問いかけ、いま代償を払うなら、より負担が軽く済む可能性が高いと指摘しています。

同時に米国は、自国の重要な産業、人工知能(AI)や国防の供給網に蓄積された脆弱性に対処することで、経済面で中国に依存する度合いを減らさなくてはならないとし、経済的切り離しの強化を求めています。

また、中国が国際ルールの適用を回避する形で、自国市場参入の条件を他国に押しつけることを可能にしてきたことに対し、歴史的な対抗勢力連合を再形成し、中国の強大な力を制御、抑制する必要性を指摘しています。

今後の最大のテーマは、対中安全保障です。。

コロナ危機以降、米中関係の悪化は決定的となり、米国は中国を主敵としたインド太平洋重視戦略に大きく舵を切ります。

この際、米国とその同盟国は、中国と対峙せずして自国の安全や利益を守ることはできないのであり、わが国は、中国との経済関係が深いことを理由に、米国と中国の間を渡り歩くコウモリ的振る舞いや鵺(ぬえ)的態度は許されません。

日本には、米国との同盟を堅持する一貫性した姿勢が求められ、その難しい課題を克服する努力を始めなければならない。

日本としては、この米国の動きに歩調を合わせるしかありません。中国と運命共同体になることはできません。選択の余地などありません。習近平の日本への国賓待遇での招待など、早々に反故にすべきです。

また、憲法改正と法律の改正も行い、尖閣水域から中国の艦艇を海自を使って排除できるうにすべきです。コロナ危機を単なる伝染病の流行などとみるべきではありません。中国や米国の動きをみていれば、これは過去の世界大戦と同レベルで、コロナ後の世界秩序を変えていくのは間違いありません。

中国は、中国独自のコロナ後世界秩序をつくるべく、躍起になっています。米国も、そうさせじと、コロナ後の世界秩序をつくるべく躍起になっています。日本もそのことを忘れるべきではありません。

忘れてしまえば、今回の新たなコロナ後の世界秩序の作成に乗り遅れ、第二次世界大戦後の世界秩序づくりに参加できず、第二次世界大戦後から今日までのように、独立国でありながら、独立国でないような地位に甘んずることになりかねません。

今や尖閣は、単なる領土問題ではなく、今後のコロナ後の世界の新秩序に向けての、日本にとっての大きな分水嶺の一つになるのです。尖閣一つ自力で解決できないようでは、世界の新秩序における地位は低下するだけです。米国も、これを日本の試金石とみているでしょう。

逆に、日本が尖閣問題を自力で解決できるようになれば、コロナ後の世界で米国とともに、リーダー的な地位を獲得することも可能になります。そのほうが、米国にとっても世界の新たな秩序を安定維持しやすくなります。

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2020年5月11日月曜日

先行き不透明なプーチンの任期延長―【私の論評】今こそ、北方領土を取り戻す最大の好機、日本は過去の過ちを繰り返すな(゚д゚)!


岡崎研究所

 ロシアでは3月に、プーチンの大統領任期を2024年から後12年間延長する憲法改正案が議会で可決されている。プーチンはそれを憲法の規定に従って国民投票にかけなければならない。この国民投票は本年4月22日に行われる予定であったが、新型コロナウイルス感染者が増えている状況の中で、プーチンは国民投票を延期する決定をした。いつ行うかは決まっていない。


 憲法改正案が国民投票で承認されるためには、投票率が50%以上、かつ、賛成票が投票の50%以上である必要がある。ロシア国民が、このプーチン任期を延長するための投票に行き、投票率50%を超えられるか、投票者の50%が賛成票を投じるか、予断を許さないように思われる。

 これについて、ロシアの民主活動家ウラジーミル・カラムーザがワシントン・ポストに4月14日付で‘Vladimir Putin has a popularity problem — and the Kremlin knows it’(プーチンは人気の問題を抱えており、かつクレムリンはそのことを知っている)と題する論説を寄稿しており、参考になる。カラムーザは、プーチンの任期延長、大統領の年齢制限についての最近のレバダ社による世論調査の結果を紹介している。それによれば、プーチンの任期延長については、賛成48%、反対47%、大統領の年齢上限については58%が「元首は70歳より高齢であるべきではない」と回答した由である。カラムーザは、権威主義国家では世論調査で政権寄りの結果が出る傾向にある、いわゆる「権威主義バイアス」がある中でこういう結果が出たことは驚きである、と指摘する。

 カラムーザは、さらに、ロシア政府は正規の国民投票ではなく超法規的な「人民投票」を目指しているようだが、問題はその後で、ロシアの社会の大部分は、プーチンが任期延長はないと繰り返し約束したにもかかわらず任期を延長しようとしていることを信頼の裏切りとみなしているとして、プーチンの前途が明るくないことを示唆している。

 カラムーザはロシアの民主化を願望している人であり、ネムツォフ関係財団に関与している人であるので、上記の分析は、彼の希望的観測である可能性があるが、彼の言うような結果になる可能性も十分にあるように思われる。

 ロシアの経済は、原油価格の低下で苦境にあることに加え、新型コロナウイルス感染拡大によってさらに下押しされることはほぼ確実である。サウジアラビアとロシアが減産合意に失敗した後、原油価格が急激に下がり、サウジもロシアも苦境に陥り、減産合意に改めて合意したが、新型コロナウイルスで世界経済は不況入りしており、需要が減産以上に減っている。プーチンが最初減産を拒否したのは間違いであったと言える。経済困難は国民の不満につながり、プーチンの人気は当然下降する。

 プーチンは2024年から12年間大統領に留まることを目指しているが、そうなると引退時には83歳になる。ロシアでは男性の平均寿命が70歳にもならない中で、83歳というのは大変な高齢者との印象がロシア人にはあるだろう。

 投票率、開票の操作などは当然予測できるが、プーチン政権が今後も盤石であるとの前提で対応することは難しいと思われる。

【私の論評】今こそ、北方領土を取り戻す最大の好機、日本は過去の過ちを繰り返すな(゚д゚)!

ロシアのプーチン大統領が2000年5月に最初に就任してから20年が過ぎました。

ソ連崩壊後の混乱が続くロシアを引き継いで時に強引な手法で安定を回復させ、異例の長期政権を敷いてきました。

ところが今や、強権の弊害が際立ちます。プーチン氏自身が提起した憲法改正を巡る政治劇はその象徴に見えます。

ロシア議会の上下両院は3月、2040年で大統領任期が切れるプーチン氏が1月に提案した憲法改正をきっかけに、任期をさらに2期12年延ばし、最長で36年まで大統領職にとどまれる改正案を採択しました。

改憲が実現すれば、現在通算4期目のプーチン氏の5選へ道を開き、旧ソ連の独裁者スターリンの約30年をしのぐ長期支配が可能になります。

当初は任期切れ後、改憲案で権限を強化する国家評議会議長や上下両院の議長に就き、院政を敷く狙いとみられていました。

しかし、下院での論議で「私はカモメ」で有名な女性宇宙飛行士テレシコワ議員が、現職を含む大統領経験者はこれまでの任期数を問わずに大統領選に出馬できるとする条文の追加を突如提案しました。

ソ連初の女性宇宙飛行士テレシコワ

これを受けて、プーチン氏は急きょ下院で演説。憲法裁が合法と認め、4月の全国投票で国民の承認が得られれば修正案に問題はないとの立場を示しました。

4月に予定されていた全国投票は新型コロナウイルスの感染拡大で中止されましたが、ロシアメディアによると、テレシコワ、プーチン両氏の演説は通算5選に道を開くために政権中枢が筋書きを描いた政治劇といいます。

プーチン氏には、自らの「レームダック(死に体)化」を防ぎ、権威を維持しつつ後継体制づくりを進めたい思惑があるとみられるますが、どうなるでしょうか。

ソ連崩壊後は米欧と同じ民主国家を目指しましたが、再び対決する世界観に回帰したロシアは「力による現状変更」でクリミア半島を併合し、米欧は経済制裁を科しました。

政権長期化で人気に陰りも見え、新型ウイルスの感染拡大が止まらず、それに伴う原油価格低下による経済低迷という難題も横たわります。

感染者は膨らみ続け、首相ら政権幹部も含まれます。輸出の6割を占める石油や天然ガスなどエネルギー部門は、原油安で経済の打撃は深刻です。

経済が停滞し、内政・外交とも不安定化しかねない状況です。国内から政権への不満が噴出し、政権基盤が揺らぐ恐れもあります。

懸念されるのは、新憲法案の北方領土交渉への影響です。「ロシア領の割譲禁止」という条文が盛り込まれています。クリミアを念頭に置いたのでしょうが、北方領土の不法占拠の正当化に利用されないか心配です。

北方領土問題が解決するチャンスは過去に1度だけありました。それは旧ソ連のゴルバチョフ政権の末期、91年12月のソ連崩壊の直前でした。

当時、ソ連の経済状態は最悪で、ゴルバチョフ大統領は北朝鮮の猛反発を押し切り、韓国との国交正常化に踏み切りました。両国の国交正常化は1990年3月、世界経済国際関係研究所(IMEMO)の招待でモスクワを訪れた金永三民自党代表最高委員(当時)とゴルバチョフ氏の会談が実現し、国交樹立に向けた新たな局面を迎えました。そうして、同年9月、両国は共同声明に署名し、国交を結んだのです。

       1990年 12月 14日に韓国のノテウ (廬泰愚) (前列左)大統領ソ連
                               ゴルバチョフ大統領(前列右)の間でかわされた共同宣言の調印式

どうしても、韓国マネーが欲しかったからです。このようなことからも、日本もジャパンマネーの力を上手く利用して、北方領土を取り戻せる可能性が十分ありました。

実際、91年4月にゴルバチョフが来日し、もしかすると4島が日本に返ってくるのではないかとの機運が高まったのは間違いありません。

しかし、ゴルバチョフサイドからソ連崩壊の予兆を伝えられていたにも拘(かかわ)らず、私もそうでしたが、外務省も眉唾ものとして信じることをせず、交渉の準備を怠ってしまったのです。

私自身は、当時ドラッカー氏が「20世紀中に、必ずソ連は崩潰すると」いくつかの根拠を示しながら、主張していましたが、この時にはソ連は必ず崩潰すると信じていました。ところが、それを周りの人に話してみても、だれもそれは「あり得ない」と語っていたことを思いだします。

そんななかでも、ゴルバチョフが北方領土で譲る気配を見せたことに、敏感に反応した日本の政治家がいました。当時の自民党幹事長、小沢一郎氏です。機を見るに敏なところまでは良かったのですが、ところが、91年の1月と3月、小沢氏は通産省(当時)ルートでソ連と交渉した際に、280億ドルとも言われる金額を提示。

小沢一郎氏

露骨に金で島を買いたいという態度を示し、札束でゴルバチョフの頬を叩くようなことをしました。ソ連崩壊の危機に直面し、弱体化していたとはいえ、向こうにも面子があります。さすがに、あまりに直截的な日本の交渉姿勢にゴルバチョフもムカッときたのでしょう。話は流れてしまいました。

国内政局だけでなく、外交の場においても、壊し屋が「本領」を発揮していたのです。

それにしても、小沢氏以外の政治家がこれを強力にすすめなかったのは、かえすがえすも残念です。

先日もこのブログで述べたように、北方領土交渉の先行きがかなり見通せるようになった現在、安倍晋三首相はプーチン氏と対話を重ね、領土問題解決の機運を一層確実にできるよう、明確なメッセージを送り続けなければならないです。

ロシアの経済は、原油価格の低下で苦境にあることに加え、新型コロナウイルス感染拡大によってさらに下押しされることはほぼ確実です。

これは、従来なら本格的な戦争、それも総力戦でもなければ、あり得なかったことです。これは、間違いなく、日本に残された最後のチャンスです。

現在は、ロシアが中国からの属国的地位から決別して、独自の道を歩み、民主化をすすめ、日米欧などの国々とともに、中国の体制を変えるまたとないチャンスです。

米国が中国に対して、中共幹部の資産の凍結などをするような制裁に出るか、出るようそぶりでもみせれば、この動きは一挙に加速化します。もしそうなれば、習近平は中共幹部全員の敵になります。

日本は、このチャンスを過去のように逃すべきではありません。

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2020年5月10日日曜日

中国はWHOにコロナウイルス隠蔽の協力を求めた、と独情報機関が結論―【私の論評】コロナ禍を奇貨に日本は、侵略されかねない隣人がいることを前提として非常時の対策を練り直せ(゚д゚)!

中国はWHOにコロナウイルス隠蔽の協力を求めた、と独情報機関が結論

<引用元:デイリー・コーラー 2020.5.9

中国の習近平主席は自ら、コロナウイルス発生に関する重大情報の公開を遅らせるようWHOに求めた、とドイツ情報機関は結論付けた。

独シュピーゲル誌によると、習はWHOのテドロス事務局長と1月21日に面談し、ヒト・ヒト感染に関する情報を伏せ、世界的パンデミックの宣言を遅らせるよう求めた。中国はパンデミックに経済的な責任を負うべき、という意見が高まる中でのニュースだ。

1月21日に面談したWHOのテドロス事務局長(左)と、習近平

「BND(ドイツ連邦情報局)が下した裁決は厳しいものだ。ウイルスとの戦いにおける北京の情報政策において、6週間とまではいかなくても少なくとも4週間が失われたとしている」とシュピーゲルは報じた。

独情報機関による進展は、同様に中国のコロナウイルス対応を調査する米国政治家の注目を集めた。

「我々はまだこの報道の確認作業中だ。だがもし事実であると分かれば、テドロス事務局長が中国共産党の隠蔽で彼らと共謀したことを示す一層の証拠となり、WHOのトップには不適格ということになる」と、テキサス州の共和党下院議員で、下院中国タスクフォース委員長を務めるマイケル・マコールは本紙に語った。

BNDは連邦情報局を意味するドイツ語の頭文字だ。3月初めに発表されたある研究によると、4週間から6週間の追加準備期間があれば、世界的なパンデミックを完全に回避できた可能性がある。サウサンプトン大学の研究者は、中国がわずか3週間だけ早く行動を起こして情報を公表していれば、感染拡大を95パーセントは縮小できていたことを発見した。

米情報機関は同様に、中国が武漢や他の場所でのコロナウイルス発生において感染者数と死者数の両方を改ざんしたという結論を3月中旬までに出した。

中国政府の公式集計では、武漢での死者数をおよそ3,500人としているが、本当の数字は4万人であることを示す証拠がある

ドナルド・トランプ大統領の政権は、中国のパンデミック対応を痛烈に批判しており、「認識しながら」コロナウイルス拡大の一因となっていたことが分れば、処罰を受けるべきだとしている。

ホワイトハウスは本紙からのコメントの要求に直ちに回答しなかった。

【私の論評】コロナ禍を奇貨に日本は、侵略されかねない隣人がいることを前提として非常時の対策を練り直せ(゚д゚)!

1月21日の習近平とテドロスの面談については、当初から「習近平がコロナウイルス発生に関する重大情報の公開を遅らせるようWHOに求めた」のではないかという疑惑がありました。

今回は、BNDが実際そうであったと、結論付けたわけです。今後もこのような調査は、米国をはじめあらゆる世界の国々の情報機関が調査を継続し、同じような結論達すると考えられます。

そうなるとどうなるかといえば、WHOのような国際機関を中国が意のままに動かせることが明らかになったのですから、世界はグローバリズム一辺倒というか、グローバリズム=善という単純な考えは、間違いであり、ナショナリズム的な考え方が、強くなっていくことが予想できます。

「ナショナリズム」というものを定義することは、われわれの想像以上になかなか難しいことのようです。アーネスト・ゲルナーはナショナリズムを「実際のところ近代世界でしか優勢とならない特定の社会条件の下でのみ普及し支配的となる愛国主義」と述べています(『民族とナショナリズム』岩波書店)。エリ・ケドゥーリーは「ナショナリズムは19世紀初頭にヨーロッパで作り出された教義である」と述べました(『ナショナリズム』学文社)。

ナショナリズムとは何かということについては、「自分たち国民、民族を重視する考え」ということの他は、多くの議論があり、なかなかその本質をつかまえることはできないようです。

ナショナリズムは、自給自足が基本の農耕社会から、現代のような産業社会へと移行するうえで必然的に産まれたもの、と考えているのがゲルナーという人です。産業社会の進展は市場を広げ、閉鎖的な「むら」からできていた「くに」を、国民による1つの「国民国家」に変えていきました。

国家の産業を発展させるためには、文化、特に言語の統一が必要です。話し言葉がばらばらでは効率性はあがりませんからね。なかにはイギリスのようにわりと自然に統一されていった国もありましたが、日本のように「富国強兵」「殖産産業」をスローガンに、国家をあげて中央集権的な教育を行い、文化・言語の統一を行っていった国も少なくありませんでした。

こういうなかでナショナリズムが育まれていったというのがゲルナーの基本的な考えです。実際、ナショナリズムによって国民の団結、教育の発達が生まれ、産業化が進んだ例は、日本をはじめ多くの国であることでした。

『五箇条の御誓文』(明治元年3月14日に明治天皇が天地神明に誓約する形式で、公卿や諸侯などに
 示した明治政府の基本方針には、天皇を中心とする国民国家を目指すことが示されている

50年間で2度の世界大戦を経験した欧米諸国を中心に、現代世界の軸足はナショナリズムから、脱ナショナリズム、すなわち「トランス・ナショナリズム」へと移行しつつあるといわれました。

その象徴がEU(欧州連合)です。13の国で共通の通貨・ユーロが流通していますが、近代国家にとって通貨はネーションを象徴するものの1つだったはずです。そういった意味でEUはネーションを越えたトランス・ナショナリズム、あるいは「スープラ・ナショナリズム(超国家主義)」を体現しています。
しかし、この状況は変わりつつありました。イギリスのEU脱退や、米国でトランプ氏による「米国第一主義」の標榜などでした。そうして、現状では、コロナ感染がさらに、ナショナリズムに拍車をかけつつあります。

ここで、最近の興味深い記事を掲載させていただきます。その記事では、米国の戦略家、ルトワック氏が、新型コロナはいわば「真実を暴くウイルス」であり、EUが機能しないこと、イタリアの無秩序ぶり、中国は虚言の国であることも暴き白日の下にさらしたとしています。

ルトワック氏は、コロナ危機が「世界の真実」を暴いたとし、国際秩序は多国間枠組みの機能不全を受け、「国民国家の責任」が増す時代に回帰すると予言しています。その記事のリンクを以下に掲載します。

エドワード・ルトワック

【コロナ 知は語る】多国間協調が機能不全 国民国家の責任増す-エドワード・ルトワック氏 - 産経ニュース

2020.5.9
 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は第二次世界大戦以来の危機と形容される。世界はどこへ向かうのか。戦略論研究の世界的権威として知られる米歴史学者のエドワード・ルトワック氏は危機が「世界の真実」を暴いたとし、国際秩序は多国間枠組みの機能不全を受け、「国民国家の責任」が増す時代に回帰すると予言した。 
 --新型コロナが世界に与えた地政学上の影響は 
 「第一は、欧州における(政治的な流れの)断絶だ。欧州連合(EU)は欧州諸国間の戦争を予防するために設立されたが、EUが直面した初の戦争並みの不慮の事態である新型コロナへの対応に失敗した。共有された医療情報や共通の医療戦略は存在せず、被害の少ない国が被害の多い国を助けるなどの相互支援もあまりなかった」 
 「EUの連携した外交政策も皆無だった。例えばイタリアは中国からの支援を喜んで受け入れた。他方、ドイツやスウェーデン、オランダなど他の欧州諸国は中国の支援を拒絶した。融合を目指したEUは役割を見失った。今後は英国に続き、多くの加盟国が静かに脱退していくはずだ」 
 「米中関係は悪化の一途をたどり続けるという意味で一貫している。わずか十数年前、米国は『パンダ・ハガー』(媚中派)に席巻されていた。違っていたのは国防総省だけだ。風潮は変わりつつあるが、新型コロナが人々の対中意識の変化を加速させるだろう。誰もがウイルスが中国由来であり、中国当局が対応を誤ったことを知っているからだ」 
 --米中による「大国間競争」はどうなる 
 「トランプ米政権に有利に働くだろう。これは、米国の(自由民主主義的な)政治制度と中国を統治する(共産党独裁)体制とのせめぎ合いだが、中国の同盟国はパキスタンとイランの2カ国だけ。イタリアも中国に征服された。イタリアは歴史上、間違った側について、後から態度を変えることで有名だ」
 「一方、他の国々は中国に背を向け、米国に付いている。ラーブ英外相が4月16日、『対中関係を全面的に見直すべきだ』と語っているのが良い例だ。中国の習近平国家主席は、ウイルスなど全ての事態への対処には独裁制が適していると主張して強権手法を正当化する。さらには世界を率いる指導者になる用意があるとの立場を示すが、世界各地で拒絶されている」 
 --製造業のサプライチェーン(調達・供給網)への影響は 
 「日本政府は企業が中国の拠点を国内に回帰させるか、第三国に移転させるのを後押しする費用として総額2435憶円を緊急経済対策に盛り込んだ。他国の企業も、自国政府の支援の有無とは無関係に、中国との縁を完全に切りたい思惑から脱出を進めている。中国の実業界も同様だ。彼らは資産をニューヨークに移そうと血眼になっている」 
 --国際機関や多国間枠組みの役割はどうなる 
 新型コロナはいわば「真実を暴くウイルス」だ。EUが機能しないことを暴き、多数の死者を出したイタリアの無秩序ぶりを暴いた。中国は虚言の国であることも白日の下にさらした。日本については『日本は中国とは違うから安全』といった意識が間違っていたことを思い知らせた」 
 「新型コロナ危機を受けて起きているのは、グローバル化の揺り戻しとしての『脱グローバル化』だ。グローバル化は国際機関の台頭と連動してきた。EUや世界保健機関(WHO)などの機能不全が明白となったことで、世界はグローバル化や多国間枠組みから後退し、国民国家が責任をもって自国民を守る方向に回帰するだろう」 
<中略>

 「グローバル化が独裁制と親和性が高いのは、国際機関が非民主的だからでもある。EUとは選挙で選ばれた各国政府の権限を欧州委員会に移管するものだ。欧州中央銀行(ECB)の運営も非民主的だ。欧州諸国の民主体制が弱体化したのも、各国の権力が(EUという)非民主的な体制に移されたせいだ。グローバル化が民主主義に何ら寄与しなかった以上、脱グローバル化によって民主主義が損なわれることはない」(聞き手 ワシントン=黒瀬悦成)
中国の習近平国家主席は、ウイルスなど全ての事態への対処には独裁制が適していると主張して強権手法を正当化しました。さらには世界を率いる指導者になる用意があるとの立場を示したのですが、世界各地で拒絶されています。

日本でもマスクや医療用品、自動車部品、トイレなどの住宅建築用品などの中国への依存度の高さが露呈し、安全への危惧が高まり、脱中国・チャイナプラスワン、国内回帰が検討され始め政府の支援策も出されています。

いずれにせよ、これらの動きは、脱グローバル化、ナショナリズムへの回帰への前兆です。国民国家の安全保障は、国家存亡に関わる産業を支えるための最低限の製造供給能力を推し量って非常時への備えをすることから始まります。

ところが、日本では多くの財務官僚等のエリートや企業経営者の頭の中身が、この未曾有の惨禍でも未だに平時の思考のままです。コロナ禍で判ったことは、真の非常時には自国のみで生き抜いていくリソースと能力=技術力を平時から備える計画立案であることです。

産業界においては欧米風の「MBA」を崇めてその言説に囚われ、日経ビジネス電子版の「逆・タイムマシン経営論」で指摘されているような「トラップ」が我国の優位性をことごとく踏み潰してきました。

米国MBA卒のエリートらが80年代から盛んに主張し、必ず推奨したアウトソーシング戦略は、多くの大企業経営者が無思考的に採用してしまいました。エンロン問題で破綻したアーサー・アンダーセン(AA)は、自社生産は止めて外注への転換一点張りでした。自社の内製技術ノウハウ、サプライチェーン保全など、無視されました。

AAのにとっては、商品は中身の優劣ではなくマーケティングでしかありませんでした。BCP(事業継続計画=Business Continuity Plan)は生産を複数・多国にして凌げば良いという論理でした。

今回のコロナ禍で中国が露骨に示した西側諸国に対する「潰し戦略」はかなり前から行われていました。その一例としてマグネシウム産業をあげます。

マグネシウムは精錬に高度な技術を要するのですが軽量かつ他の金属の改質に重要な元素なので、航空宇宙を始めとした国防先端産業用部品から日常生活にわたり重要です。

日本マグネシウム協会(2017)まとめでは、マグネシウムインゴット生産の85%が中国、以下、米国6%、ロシア5%、イスラエル2%です。



1980年以前は日本を含めた西側諸国とソ連で生産されていたのですが、中国はコピペ工場で市場価格より30%安い価格、実質ダンピングで市場供給を開始しました。

当然、西側諸国メーカーは赤字になり淘汰されました。米露イスラエルは市場価格に見合わないにもかかわらず、国防上の理由から各1社ずつ保有しています。

我国ではマグネシウム合金を大量に製造しているのですが、インゴット95%と大量の合金を中国から輸入しています。この輸入品が無いと自動車も作れません。

更に、肥料に添加するマグネシウム塩類、食品加工用(例えばニガリ)、薬品、難燃剤など、マグネシウムは生活の隅々まで入り込んでいる元素です。

つまり、中国と対峙しようとすると、武器弾薬から豆腐カニカマに至るまで製造できなくなるのです。「マスクが足らない」どころの騒ぎでは済まないのです。戦う前から負けなのです。

コロナ禍以前から鳩山元総理大臣の様に中国と東アジア経済共同体を目指す人々が多数います。友好善隣は絶え間ない努力が必要であることは自明です。

しかし、首に縄をかけられた状態で対等の外交などありえないです。だから、彼らは矛盾しています。中国共産党との友好的関係を保ちたいなら、まず、国家の安全保障の足枷となる材料と技術のサプライチェーンの再構築を検討すべきなのです。

日経新聞を始めとする経済関係論議ではコロナ禍後の世界経済について種々意見が喧しくなってきました。多くは株価を議論しますが、平時の感覚でコロナ禍以前の世界秩序に戻ることを考えているようです。

しかし、株価ではなく本当の国家の足腰強さは重要物資を自前で供給できることに依存します。コロナ禍後に向けて小手先のBCP(事業継続計画)を体裁よく作るのではなく、前例踏襲を止めて、侵略されかねない隣人がいることを前提として非常時の対策を練り直すことが必要です。

以上はマグネシュウム産業についてですが、日本は自力でできるものまで、価格が安い等の理由だけで、中国に安易に依存している産業が他にも多くあります。これらについては、自国で生産するのか、あるいは信頼できる同盟国から輸入するかを検討すべきです。

現在の世界は、ナショナリズムが強まっていますが、一度グローバリズムの良さを知った世界は、完璧にナショナリズムにもどる ことはないと思います。同じルールで貿易ができる国々同士では、これからも自由貿易を続けていくでしょう。

ただし、先進国は従来のように安易にルールを守れそうもない体制の国々まで、同じルールで貿易をしようとする従来のグローバリズムに戻ることはないでしょう。

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2020年5月9日土曜日

新型コロナ、日本人の低死亡率に新仮説…すでに“集団免疫”が確立されている!? 識者「入国制限の遅れが結果的に奏功か」―【私の論評】日本がクラスター対策で成功している背景には、他国にはない日本ならではの事情が(゚д゚)!


新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真
(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 日本の新型コロナウイルス対策は「PCR検査が少ない」「自粛措置が甘い」などの批判もあり、厚労省は8日、感染の有無を調べるPCR検査や治療に向けた相談・受診の目安を見直し、公表した。ただ、欧米諸国に比べて、日本の死者数や死亡率がケタ違いに少ないのは厳然たる事実である。この謎について、京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と、吉備国際大学(岡山県)の高橋淳教授らの研究グループが「日本ではすでに新型コロナウイルスに対する集団免疫が確立されている」という仮説を発表して注目されている。感染力や毒性の異なる3つの型のウイルス(S型とK型、G型)の拡散時期が重症化に影響したといい、日本は入国制限が遅れたことが結果的に奏功したというのだ。

 「2週間後はニューヨークのようになる」など悲観的な予測もあった東京都、そして日本の新型コロナ感染だが、別表のように現時点ではニューヨークにもロンドンにもなっていない。中国や韓国、表にはないが台湾など東アジアが総じて欧米よりも死者数や死亡率が抑えられている。


 理由を解き明かすには、新型コロナウイルスの型を押さえておく必要がある。中国の研究チームが古い「S型」と感染力の強い「L型」に分けたことは知られている。

 研究プラットホームサイト「Cambridge Open Engage」で発表した京大の研究チームは、新型コロナウイルスに感染した場合、インフルエンザに感染しないという「ウイルス干渉」に着目。インフルエンザの流行カーブの分析で、通常では感知されない「S型」と「K型」の新型コロナウイルス感染の検出に成功した。「S型やK型は感知されないまま世界に拡大した。S型は昨年10~12月の時点で広がり、K型が日本に侵入したピークは今年1月13日の週」だという。やや遅れて中国・武漢発の「G型」と、上海で変異して欧米に広がったG型が拡散した。

 集団感染が最初に深刻化した武漢市が封鎖されたのは1月23日。その後の各国の対応が命運を分けた。イタリアは2月1日、中国との直行便を停止。米国は同2日、14日以内に中国に滞在した外国人の入国を認めない措置を実施した。

 これに対し、日本が発行済み査証(ビザ)の効力を停止し、全面的な入国制限を強化したのは3月9日だった。旧正月「春節」を含む昨年11月~今年2月末の間に184万人以上の中国人が来日したとの推計もある。

 ここで集団免疫獲得に大きな役割を果たしたのがK型だった。上久保氏はこう解説する。

 「日本では3月9日までの期間にK型が広がり、集団免疫を獲得することができた。一方、早い段階で入国制限を実施した欧米ではK型の流行を防いでしまった」

 欧米では、中国との往来が多いイタリアなどで入国制限前にS型が広まっていたところに、感染力や毒性が強いG型が入ってきたという。


 上久保氏は「S型へのTリンパ球の細胞性免疫にはウイルス感染を予防する能力がないが、K型への細胞性免疫には感染予防能力がある」とし、「S型やK型に対する抗体にはウイルスを中和し消失させる作用がなく、逆に細胞への侵入を助長する働き(ADE=抗体依存性増強)がある」と語る。

 専門的な解説だが、結論として「S型に対する抗体によるADE」と、「K型へのTリンパ球細胞性免疫による感染予防が起こらなかったこと」の組み合わせで欧米では重症化が進んだという。

 日本で4月に入って感染者数が急増したことについても説明がつくと上久保氏は語る。「3月20~22日の3連休などで油断した時期に欧米からG型が侵入し、4月上旬までの第2波を生んだと考えられる」

 現状の日本の感染者数は減少傾向だが、課題も残る。「病院内で隔離されている患者には集団免疫が成立していないため、院内感染の懸念がある。また、高齢者や妊婦などは、K型に感染しても感染予防免疫ができにくい場合がある」

 さらに「無症候性の多い新型コロナウイルス感染症では、間違ったカットオフ値(陰性と陽性を分ける境)で開発された免疫抗体キットでは正しい結果が出ない」と警鐘を鳴らす。

 上久保氏は「日本の入国制限の遅れを問題視する声もあったが、結果的には早期に制限をかけず、ワクチンと同様の働きをする弱いウイルスを入れておく期間も必要だったといえる」と総括した。

【私の論評】日本がクラスター対策で成功している背景には、他国にはない日本ならではの事情が(゚д゚)!

冒頭の記事の仮設は、非常に興味深いものです。ただし、矛盾も感じます。感染者数の少ない、死亡者数とも少ない韓国はMersのときの反省もあって、比較的早い時期に海外からの渡航を制限しました。

さらに、上の記事にはなぜか例示されていませんが、日本よりも感染者数や死者数が少ない、台湾でも早い時期に海外からの渡航を禁止していました。

ただし、韓国も台湾もかなり中国とは関係が深く、仮に日本よりも早い時期に、海外からの渡航を禁止したとしても、かなり中国などからの感染者がすでに国内に入り込んでおり、免疫を獲得していた可能性もあります。

このあたりは、今後さらに研究をすすめて、明らかにしてほしいところです。

それにしても、一つ言えることは、まずは人口100万人あたりの感染者数や死者数等をみたうえで、評価しないと、客観的に日本の感染者数や死者が多いのか、判断などできないということです。

日本国内でも、都道府県別の感染者数や、死者数をみるときでも、10万人あたりの感染者数や死者数等をみないと客観的に比較などできないのは当然のことです。

日本のマスコミ、特にワイドショーなどでは、最初から100万人あたりとか、10万人あたりの見方をせずに、単に実数だけで、多くのコメンテーターが「ああでもない、こうでもない」と当て推量を言い合うというような展開で、いたずらに脅威を煽るような結果になっていました。

挙げ句の果に、「イタリアを見習え」「韓国を見習え」「ドイツを見習え」などと語っていたコメンテーターもおり、まさに噴飯ものの状況が日々続いていました。

このようなコメンテーターらの発言などは問題外として、やはり、日本のコロナ感染者数と死亡者数が少ないことは、やはり何か原因があるものと考えられます。

私としては、それについてはこのブログですでに述べてきたとは思うのですが、体系的に述べてはいなかったので、一つの仮設として再度はっきりさせておきたいと思います。

まず考えられるのは、日本社会の特徴です。例えば、近年は高齢者が「高齢者のみの世帯」で生活している率が高く、若い世代との接触を遮断するのが容易だということです。

例えば、日本の高齢者入居施設の場合は2月の早い段階から家族を含めた入所者以外の訪問を停止して厳格な管理をし、大規模感染は起きていません。また、大家族が比較的残っている地方は人口密度が低く、反対に人口密集地域では2世帯、3世帯の同居は少なくなっていることが理由として上げられます。

他にも、公衆衛生の概念が浸透しているとか、手洗いの習慣、マスク着用など生活様式の特徴も理由になりそうです。漠然と説得力を感じるストーリーですが、例えば同じように高齢者の命を奪う季節性のインフルエンザの場合は、例えばアメリカで毎年1万5000人前後の死亡者を出している一方で、日本は3,000から5,000の死亡者数で推移しています。しかし、米国の人口は約3億人、日本は1億2千万にですから、あまり有意な差異はありません。

そうなると、社会の特異性だけでは説明できません。その他、死亡者数の隠蔽とか、PCR検査数が少ないなどというのは単なるフェイクにすぎません。(これについては、過去の記事などを参照していただくものとしてここでは、詳細の説明はしません)

であれば、日本と外国で差異が最も顕著なのは何かといえば、やはりクラスター対策です。

この戦略は、3月19日の専門者会議以降、関係者が徐々に説明を始めていますが、要するにSARSを制圧したのと同じ手法で、感染の連鎖を潰していく作戦です。

PCR検査の投入方法も、限りある検査キットを感染者とその濃厚接触者に集中させ、クラスターを抑え込むことを優先して決めているようですし、例えば「ダイヤモンド・プリンセス」下船者については、100%クラスターの発生は抑止されたという説明もされています。

さらに、日本ではCTの普及率が世界1であることも奏功していると思います。コロナ感染者の中にはほとんど自覚症状のない人がいて、咳の症状すらない人もいます。しかし、そういう人の中には肺の異常がみられる人もいます。そういう人の場合でも、CT検査をすると肺に異常がみつかることがあるそうです。

とにかく、CT検査をすると、コロナであろうかなかろうが、肺炎なのかそうでないのか、肺炎だとして、重篤なのか、軽症なのかもすぐにわかります。肺に異常が見られた人で、症状が重い人、これから重くなりそうな人は、PCR検査を優先的に実行するとか、入院させるということが、医師の判断でかなり迅速にできます。


だからこそ、日本ではクラスターを抑え込むことができたともいえると思います。これは、CTが普及しており、総合病院ては大体設置してあるどころか、診療所レベルの小さな医療施設でも設置している場合もある日本だから、可能だったのです。

CTの普及率が日本よりも相対的に少なく、精度の低いPCR検査自体に頼らなければならない他の国と日本の根本的違いです。

そうだとしても、仮に今後「感染経路の見えない」形で、多数の感染者が発生し、クラスターを抑え込むことができなくなる可能性は残っています。専門家会議の言う「オーバーシュート」とはそうした事態であり、これを恐れて警戒を強めようという趣旨は理解できます。

仮にこの仮設が相当程度にあたっているにしても、専門家委員会が声高にそれを誇るのではなく、警戒を促しているというのは正しい姿勢だと思います。

今後、日本や、台湾などの感染者数が低い理由は、本格的に研究を進めていくべきと思います。

なお、中国の場合は、死者数が少ないことにはなっていますが、中国は1月にコロナの統計のとりかたを3回も変えたという事実があることと、その後もコロナ感染者でも症状が出ていない人は、コロナ感染者数に含めないなどの措置をとっていることから、全く信用ができず、疫学的調査には信頼にたるデータを得られる可能性は低いです。

韓国・ソウルの朴元淳市長は9日、市庁で記者会見し、市内繁華街・梨泰院のクラブを訪れた後、新型コロナウイルスへの感染が発覚した20代男性に関連し、同日正午時点で計40人の感染が確認されたと発表しました。感染封じ込めが期待されてきた韓国は、再び増加に転じた感染者数を前に緊迫感が漂っています。

メルケル首相が6日、新型コロナウイルスに絡む規制の大幅緩和を打ち出したドイツ各地で、クラスター(感染者集団)発生が確認されています。どこまで規制を緩和するかは14州と2特別市ごとに決めるが、難しい地域も生まれそうです。

まだまだ、予断を許さない状況であることは間違いないようです。

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