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2020年6月21日日曜日

自殺者の大幅減は、ウィズコロナ社会の希望だ!―【私の論評】コロナ後の社会は、意識高い系の人々の予測とは異なるものになる!(◎_◎;)

自殺者の大幅減は、ウィズコロナ社会の希望だ!

逆張りで「コロナはチャンス」と主張する人たち


コロナ禍の自粛ムードの中、どうにも気が滅入ったのは、この非常事態の中でもなお、力強くビジネスチャンスについて語る一部の人たちの存在だった。

「この危機をどう乗り越え、どうビジネスチャンスに変えるか。今はピンチだからこそ、逆にチャンスなのです!」

この人は本気で言っているんだろうか……。しばし、めまいに襲われた。

おそらくビジネスマンとして成功している人なのだろう、プロフィールには転社や起業の経歴がカタカナ満載で記されている。

世界中の人たちが自粛を余儀なくされ、それぞれの生き方や、働く意味について見つめ直しているであろうご時世においても、めざとくチャンスを探し、生き馬の目を抜くがごとく行動する、そんな人がきっとビジネスの分野では成功する。

その志向性を否定しようとは思わない。ただ、個人的には絶対に友達になれそうもないし、めまいとともに吐き気がする。

世の中には、頑張って生きたい人と、できれば頑張らずに生きたい人がいる。ひとりの人生の中にも、頑張りたい時期があれば、頑張りたくない時期もある。

メディアに出てくるタイプの人には、頑張って生きることを正しさと疑わない人が多い。だから、声も大きく響く。

でも、できれば頑張らずに生きていきたい人は、メディアに登場せず、声もほとんど聞こえない。だから注目もされず、時に社会の足を引っ張る害悪のような扱いさえ受ける。

「自殺者減少」が示唆するもの

自殺のニュースに目を向けたい。
<厚生労働省自殺対策推進室は5月12日、毎月発表している自殺者統計の4月末結果を発表した。自殺者は1455人と前年同期比で19.8%減少した。過去5年間では最も大きな減少幅だった。>
[Sustainable Japan/5月14日 https://sustainablejapan.jp/2020/05/14/japan-suicide/49463]
先日、今年4月の自殺者数が前年比で約20パーセントも減少したという、厚生労働省の発表が大きな話題になった。前年同月より359人少ない1455人だったという。

減少の理由は簡単に結論を出せるものではなく、1ヶ月のデータで語るのも危険だろうが、メディアには「テレワークや休校によって、出社や登校の人間関係のストレスが減ったことが原因ではないか」とする専門家の意見が多く掲載されている。

このニュースは、もっともっと、大きく論じられるべきだと思う。

たった1ヶ月で自殺者が359人も減った。大変な数である。まだしばらく統計を注視しないと議論しにくいのは確かだろうし、すぐに前年並みに戻る可能性もある。減った分だけ命が救われたわけではなく、自殺という行為が先延ばしになっただけかも知れない。

それでも現実に、多くの会社で出社を命じられなくなり、多くの学校で登校の必要がなくなったら、命を絶つ人間が大幅に減った。これは新型コロナの特効薬が見つかったのと同じくらい、希望のあふれるビッグニュースのはずだ。もし今後、自殺者数が戻ったとしても、なかったことにできるトピックではない。明るいニュースなのだ、これは。

ぼく自身、対人ストレスのつらさはわかっているつもりの側であり、だから、おひとり達人をめざしている。フリーライターをやっているのも、なるべく人と接しないで生きていくため。生涯独身なのも、ひとりぼっちの時間を守るためだ。

外出自粛令のおかげで何百人が自殺をせずに済んだのだとしたら、その表に出ない喜びや安堵の声を少しでも拡大してあげたい。

自殺者の多さは日本という国の闇である。2010年以降は減少傾向にあるとはいえ、2019年の自殺者は2万169人。新型コロナで亡くなった人より、まだ何十倍も多い。

コロナ対策が結果的に自殺対策として功を奏したのだとしたら、これほど喜ばしい副次効果はない。

しかし、世の中の流れを見ていると、この画期的な特効薬発見を重く受け止め、活かそうとしているようには思えない。

出社、登校。したくない人はしなくていい

テレワークを推し進めた会社がある一方、以前と変わらぬ出勤体制を課す会社は多い。学校もやがて平常スタイルに戻ってしまうだろう。

なぜ、今ここで「会社へ来るのがストレスの人は名乗り出てください。なるべく出社しないで済むようにするから」とか、「学校へ来るのがつらかったら休んでいいよ。来なくても勉強できるように授業のスタイルを変えるから」という動きが、この機会にもっと見えてこないのか。

たくさんの命が救われるかも知れないという希望の光がせっかく差したのに、なぜ急いで元に戻そうとするのか。経済を動かすか、社会不適合者の命を守るかの二択の話をしているわけではない。どっちも両立できる道だ。

対人ストレスの小さい人は以前同様、会社や学校の枠の中で人と接しながら頑張ればいい。

対人ストレスの大きい人はこの機会に、会社や学校の通常枠から外れても生きていけるような、社会の仕組みの再構築を訴えればいい。そんな生き方を認めてもらえばいい。

ある種の人間にとって、毎日の出社や登校は目の前でマスク無しで咳をされる以上の苦痛であり、それが死を選ぶ理由にもなるのだという現実を、もっと社会全体が受け止めて欲しい。


「会社に来たくなかったら、来なくていいよ」
「学校に行きたくなかったら、行かなくていいよ」
「頑張って生きるのがつらかったら、頑張らずに生きてもいいんだよ」

そう言ってあげるだけで救われる命が1ヶ月に300以上もあるのだとしたら、それを無視して以前と同じ業務形態や登校義務を課すのは、ただのヒトデナシのやることだと思う。ビジネスチャンスに目をギラつかせる人間を、誰もが崇拝しているわけではないのだから。

【私の論評】コロナ後の社会は、意識高い系の人々の予測とは異なるものになる!(◎_◎;)

自殺者数については、このブログでも度々掲載してきました。自殺者は、特に平成年間は3万人台を超えていました。しかし、安倍政権が誕生してから低下傾向にありました。低下傾向は、最近も続いていて、昨年はとうとう2万人台を切りました。

このブログでは、増税や金融引き締めなどの経済政策のまずさがその根底にあることを主張してしてきました。安倍政権では、二度も消費税増税がなされため、財政的には平成時代と同じく、緊縮財政が実施され、財政的には大失敗でした。ただし、金融緩和政策だけは、継続してされました。日本ではあまり理解しない人が多いですが、金融緩和政策は、雇用を改善します。

そのため、安倍政権においては、雇用は改善され続け、人手不足の状況になっていたことは事実です。これが、自殺者を減らず大きな一因になってきたことは事実です。ただ、それだけではないことも事実だと思います。

上の記事にも掲載されていたように、実際4月の統計では、前年同期比で19.8%減少しています。私自身は、昨年10月の消費税増税があり、個人消費が落ちみ、1月〜3月のGDPも落ち込み、それに加えコロナ禍もあったことから、自殺者が増える可能性もあるのではとの懸念を抱いていました。

しかし、その懸念は見事に払拭されました。これは、マクロ的には金融緩和政策が継続されてきたことにもよるでしょうが、そのほかにミクロ的には、テレワークや休校によって、出社や登校の人間関係のストレスが減ったことによるものかもしれません。

だとしたら素晴らしいことだと思います。これは、今後も分析してみないとはっきりはしませんが、それにしてもコロナ後の社会のあり方に大きなヒントを提供しているように思えます。

個人的には、あることを思い出してしまいました。それは、ある図書館司書の方のツイートです。

「学校が死ぬほどつらい子は図書館へいらっしゃい」。夏休みが明けるころに子どもの自殺が増える傾向があることから、神奈川県鎌倉市立の図書館の公式ツイッターが26日、こうつぶやいたのです。

つぶやいたのは、市中央図書館司書の河合真帆さん(44)。9月1日に子どもの自殺が突出して多いとの報道を読み、図書館学を学ぶ中で知ったことを思い出したそうです。

「自殺したくなったら図書館へ」。米国の図書館に貼られていたというポスターの文言です。図書館には問題解決のヒントや人生を支える何かがある。そんなメッセージでした。

利用者の秘密を守るのも、図書館の大事な原則です。子どもは学校に通報されると心配しているかもしれない。だから、「一日いても誰も何も言わないよ」と書き添えました。「一日だらだらしていても、誰も何も言わないから気軽においで。ただぼーっとするだけでもいいと伝えたい」

ツイッターは職員が誰でも書き込むことができ、河合さんは郷土史や観光の話題をこまめにつぶやくようにしているといいます。このつぶやきには、「あの頃の私に聞かせてあげたい」「感動した」などと、多くのコメントが寄せらました。

当時のこのツイートを読んだ私は、感動して「何と慈愛に満ちたツイートなのだろう」というコメントとともに、これをリツイートしたのを覚えています。

確かに、どうしても学校や、会社に行きたくない人が、行かなくても勉強できたら、仕事ができれば、素晴らしいことです。

コロナ後の社会は、意外とこのような変化をするかもしれません。ビジネスチャンスに目をギラつかせる人間が、社会の変化を正しく捉えているとは限りません。実際、中国からのインバウンドに目をぎらつかせいた人間の大失敗は、この度のコロナ禍により失敗出会ったことが明らかになったと思います。

私自身は、中国のインバウンドにばかり頼ることの危険性を従来から指摘してきました。中国はコロナ禍に限らず、元々カントリーリスクの高い国でしたし、昨年あたりでも、インバウンドよりも、日本国内では日本人の旅行客のほうがインバウドよりも、日本人旅行者のほうがはるかに多く消費をしていたという事実があります。

日本の観光地を良くしたいなら、まずは日本人の観光客を満足させるようにすべきであるというのが私の持論です。日本人の旅行客が大満足し、何度も訪れるようにすることが、日本の観光地の使命だと思います。その上で、外国の方々が多くいらしていただけるのであれば、それはありがたく受け入れれば良いのです。

それにして、コロナ禍でも、目をぎらつかせて、ビジネスを語る方々のいうように、コロナ後にパラダイムシフトは起こらないと思います。

それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
コロナ後の世界、「スペインかぜ」後に酷似する予感―【私の論評】社会は緩慢に変わるが、今こそ真の意味でのリーダーシップが必要とされる時代に(゚д゚)!

         1918年、ワシントンD.C.のウォルター・リード病院で
         インフルエンザ患者の脈を取る看護婦

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
コロナの後に世界は変わるのでしょうか。結論から言うと、劇的に社会が変わっていく、いわゆるパラダイムシフトは私は、起こらないと思います。

それどころか、人々が思ったいいる以上に元の社会に戻ろうとすると私は考えています。

それはなぜかというと、それが多くの人々のとって一番ラクだからです。社会は変化を求めているようですが、実際に、自分自身を変えていこうと思っている人がどれくらいいるでしょうか。

何か新しい取り組みを始めようと思っている人はそんなに多くはないのではないかと思います。変化を強要されているところは、致し方なく取り組んでいるのが現状だと思います。

コロナの終息後でも私自身も含めて多くの一般的な人たちの考え方は変わらないでしょう。

これを変えようと思う人はかなり意識が高いと思います。意識が高いという言い方は褒めているわけではなく、流行りにのっている部分もかなりあると思うのです。そういう意味です。これは、いわゆる意識高い系の方々には耳が痛いのではないかと思います。ただし、意識高い系とは、本当に意識が高い人という意味ではありません。そうではなく、意識が高いふりをしている人と言ってもよいかもしれません。

つまり、ほとんどの人にとってソーシャルディスタンスを継続させていったり、テレワークなどのデジタルな暮らし方にシフトしていくことは大変なことだと思います。何しろ、今でも家庭でのWIFI普及率は、思いの他低いことをある調査で知り、驚いたばかりです。あるいは、携帯電話は使用しているものの、パソコンの使用率も思いの他低いです。そのため、急激に社会が変化していくパラダイムシフトはおこらないと思います。

では、社会は元どおりになっていくのでしょうか。私自身は、変わらないところがあるように、変わるところがあるとも思っています。それはどこかと言うと、苦しんでも変えざると得ないという人たち。つまり主に経営者達の考え方です。私は、どちらかというとこちらに属しているのでよく分かります。
この内容、少し矛盾していると思われる方もいるかもしれません。しかし、矛盾しているわけではありません。私自身も含めて、多くの人は元の社会に戻るのが楽なのですが、経営者いうか、リーダー的立場の人は、自ら属する組織を変える責務を持つということです。

そうして、リーダーとはいっても、カリスマ性や部署間の調整をすることなどではなく真のリーダージップを発揮しなくてはないらなということです。そうして、リーダーシップの本質をこの記事では掲載しました。関心のある方は、この部分も是非読んでください。

そうして、この傾向はさらに続くということもこのブログで主張しました。その記事のリンクを掲載します。
自給自足型経済で“V字回復”日本の黄金時代到来へ! 高い衛生観念でコロナ感染・死者数抑え込みにも成功―【私の論評】今後も続く人手不足が、日本を根底から変える。普通の人が普通に努力すれば応分に報いられる時代がやってくる(゚д゚)!
     日本は強制力のない自粛要請でも感染拡大を
     抑え込んだ=5月9日、東京・原宿の竹下通り
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、中国で製造していたものを、ある程度日本で製造するようにすれば、過去の日本が自給自足型の経済で成功していように、令和日本は黄金期を迎えることを主張しました。

コロナ禍以前には、人手不足状況だったわけですから、今後日本の経済が回復し、中国で製造していたものを日本でも製造するようになれば、当然の事ながら、さらに人手不足となり、日本は経済的に発展するだけではなく、社会構造も良い方に変わっていくであろうと予測したわけです。

このような変化に気づかず、既存の路線で単にIT化が進んだり、社会的距離を重視する社会になると思うような人には、次の社会など予想できないでしょう。

今後の社会は人手不足があたり前になるのですから、人を単なる人と見るのではなく、個性のある個々人であることに想いが至らないような人は、社会の変化を見通すことなどできないでしょう。

今後の社会は、パラダイムシフトが起こるではなく、やれば良いに決まっているし、既にできることで、できていないことなどがどんどん実施されるようになっていくと思います。

その良い事例が、テレワークやオンライン授業です。さらに、いわゆる「いじめ」もなくす努力がなされていくでしょう。

EUの人々に日米でいう「いじめ,Bullying」とは何なのだと質問を受ける事がよくあります。いろいろ説明するのですが、なかなか理解してもらえません。

国が違っても、彼らのほとんどは「それは犯罪です」と言います。確かに、「いじめ」とは、学校や職場という閉鎖空間で行われているだけであって、その本質は軽い重いはあっても、全て「犯罪」です。

「犯罪」には犯罪に対する対処法が適用されて当然です。ドイツは、日本と全く異なる対象がなされています。例えば、高校の教師は、学校の外、例えば、町の通りで自分の教え子がタバコを吸っていたとしても、それを注意する必要はないそうです。学校の外では親が子供に対する責任を持っているからです。

また、「いじめ」などを執拗に繰り返す子供には、校長が家庭に向けて注意をうながす手紙を書くそうです。その手紙が三通になった場合は、その対象となった子供は自動的に退学になるそうです。

非常にシンプルです。何回も退学になるような子供は終いには、いずれの学校にも行けなくなるそうです。

日本では、学校や職場が場合によっては、まるで治外法権のようになっている場合もあるあります。これは早急に是正しなければならないです。また、米国では暴力が異常なレベルにまでなっています。

日米共に、もっとシンプルな方法で「いじめ」を根絶する必要がありますが、これも今後進めやすくなると思います。

これらのことは、基本的に人手不足であるほうが、変えやすくなります。そもそも、人を大事に扱おうとしない学校や職場には人が集まらなくなります。

こういうことを言うと、「いやAIが出てきて、人を駆逐するようになる」と言う人も居るかもしれません。いわゆるシンギュラリティーが起こって、機械が全部人にとって変わるなどと・・・・・。

そんなことはないことがラッダイト運動でもう私たちは、学んだのではありませんか。そうして、シンギュラリティー信奉者には、こう言いたいです。

「あなたは実際にAIのプログラムを書いたことがありますか?」と。少なくとも私は書いたことがあります。ただし、大昔のことですから、その当時は、今ではあまり使われてない言語で、ほんの初歩的なものでした。人で言えば、赤ちゃんが呟くようなものですが、それでもプログラムはプログラムです。今でも、原理的には変わりません。

ラッダイト運動で機械を打ち壊した労働者たちは、機械が発達した社会は、自分たちの時代の社会とあまり変わりないと考えていました。

しかし、機械やコンピューターが発展した現代は、その頃の社会とは全く異なります。

これからの社会は、中国などの特殊な社会は除き、今とは全く異なる社会となるでしょう。そこでは、今よりも、はるかに個々人のニーズやウォンツが満たされる社会となるでしょう。

そのような社会においては、無限の様々な新しいニーズが生じてくるはずです。その新しい新しいニーズに応えるためには、人間の思考は欠かせません。無論、その模索にもAIは大活躍することになるでしょうが、それにしても肝心要のところは人間が考えます。AIはその補佐をするにすぎません。

既存のニーズには、AIが最適な解を出すでしょう。しかし、新たなニーズに対する解は、人間が模索するしかないのです。模索して、プログラミング化できれば、後は、コンピュータと機械がそれを迅速に満たすことになるでしょう。

そうして、新しいニーズはその時代でもいくらでも出てくるのです。その時代には、自殺者の大幅減は、ウィズコロナ社会の希望かもしれないと気がつくような感性を持った人が、様々な分野で活躍するようになっていると思います。

コロナ禍で目をギラつかせて、「ビジネス、ビジネス」というような人は時代遅れになっているでしょう。本当に心の底から人のために役に立ちたい、人々の暮らしを良い方向に導いていきたいと考える人の時代になるでしょう。

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2020年5月12日火曜日

コロナ禍に動く中国の“軍事謀略” 米中対立激化、台湾排除…国内で権力闘争も 河添恵子氏が緊急寄稿 ―【私の論評】尖閣問題は、単なる領土問題ではなく、コロナ後の世界新秩序における日本の地位を決める(゚д゚)!


米中貿易戦争

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)が続くなか、世界保健機関(WHO)の年次総会が18日、開催される。ドナルド・トランプ米政権は、世界全体で28万人以上もの死者(米ジョンズ・ホプキンズ大学、10日集計)が出ている「死のウイルス」をめぐり、習近平国家主席率いる中国とWHOの責任を厳しく追及する構えだ。加えて、日本と米国、欧州は「世界の人々の命と健康を守るため」にも、感染拡大を封じ込めた台湾(中華民国)のオブザーバー参加を支持するが、中国は強硬に反対している。激化する「米中の対立」と「中国の軍事的挑発」「中国国内の権力闘争」とは。ノンフィクション作家の河添恵子氏が緊急寄稿第13弾で迫った。


 「WHO総会や国連関係の会議に、台湾のオブザーバー参加を支援するよう、すべての国に訴える。WHOのテドロス・アダノム事務局長に対し、台湾を年次総会に招待するよう要請した」

 マイク・ポンペオ米国務長官は6日、記者会見でこう語った。

 台湾は「中華台北」の名義で、2009~16年にWHO総会に招かれたが、蔡英文総統が就任した翌年(17年)からは、中国の反対で参加できていない。寄付の申し出すら拒絶されている。

マイク・ポンペオ長官

 香港出身のマーガレット・チャン氏が事務局長時代の11年5月には、WHOが内部文書で台湾を「中国台湾省」と表記したため、台湾はWHOに正式抗議した(=AFPなどが報道)。

 新型コロナ禍のなか、WHO総会は18日、テレビ会議方式で開催される。ポンペオ氏は、この会議に「世界一の防疫先進国」である台湾の参加を支持するよう、世界各国に呼び掛けるとともに、「中国ベッタリ」と揶揄(やゆ)されるテドロス氏を牽制(けんせい)したのだ。

 これに対し、中国で台湾政策を担う国務院(政府)台湾事務弁公室の馬暁光報道官は7日、「最近、民進党と台湾独立を企てる分離主義勢力は、新型コロナウイルスの流行に便乗して、WHOの問題への台湾の関与を誇大宣伝し、『1つの中国』の原則に挑戦している」と反発した。

 だが、米国側は一歩も引かない。

 米国の上下両院外交委員会の幹部らは8日、日本を含む55カ国の政府に書簡を送った。書簡には、「われわれは貴国政府に対し、米国とその他の国のように、台湾を排除する中国の『国際組織外での行為』を終わらせるよう要請する」という一文が含まれていた。

 台湾外交部の欧江安報道官は9日、米国への深い謝意を示したが、「国際組織外での行為」とは、一体何を示すのか?

 最近では、欧州・チェコの有力政治家の身に起きた悲劇が、世界に報じられたばかりだ。

 台湾訪問を2月に予定していたヤロスラフ・クベラ上院議長が1月20日、心臓発作で急逝した。クベラ氏の未亡人と娘は、国営テレビの番組に出演し、「夫は中国政府に脅迫されていて、そのストレスが急死の引き金になった」と衝撃的な告白をした。

 クベラ氏急死と中国の関係については、ロイター(日本語版)も2月19日、「中国がチェコ企業への報復示唆、高官の台湾訪問巡り」とのタイトルで報じている。

 在チェコ中国大使館が1月10日付で、チェコ大統領府に送った書簡には、「中国に経済的利益を持つチェコ企業はクベラ議長の台湾訪問の代償を払わなければならなくなるだろう」と記されていたという。ロイターが書簡を確認したというが、公然とした脅迫というしかない。

 世界各国が、新型コロナウイルスのパンデミックで危機的状況にあるななか、中国人民解放軍は“戦闘モード”にあるといえる。

 同軍東部戦区は、国家安全教育日の4月15日、公式アカウント「人民前線」に、「幻想を捨て、戦闘を準備せよ」とのメッセージを掲載した。東部戦区の任務は「台湾有事」「日本有事」に備えることとされる。

 この直前の4月10日から11日にかけて、中国海軍の空母「遼寧」を中心とする艦隊が東シナ海を航行した後、沖縄本島と宮古島間を通過した。3月以降、中国軍のミサイル駆逐艦や早期警戒機などが、沖縄や台湾周辺で挑発的行動を見せている。空母「遼寧」の艦隊は4月28日、沖縄本島と宮古島間を通過して東シナ海に向かった。

 ■中国は“内戦外戦”状態

 習主席はこれまでも、「(台湾)統一のために、武力行使も放棄しない」と公言してきた。

 中国軍の不穏な動きを受けてか、米太平洋空軍は4月29日、台湾を含む19カ国の空軍参謀総長や指揮官とテレビ会談を行った。

 台湾の蔡総統は今年1月15日、英BBCのインタビューを受け、「中国の圧力」と「戦争リスク」について、次のように語っている。

 「戦争がいつ起きるか、その可能性は排除できない。だから臨戦態勢で有事に備えなければならない」「軍事的な準備に加え、より重要なことは国際的な支援を得る必要がある」「台湾政府としては、北京を挑発して事態を悪化させたり、北京に攻撃の口実をつくらせないよう、挑発しない態度を貫いている」

 新型コロナウイルスをめぐり、世界から「台湾は防疫模範国」と称賛されたことで、中国を刺激したとすれば、皮肉だ。

 ただ、習氏は共産党内部の“戦闘”にも明け暮れている。

 4月の孫力軍公安部副部長の逮捕に続き、3日には孟建柱元公安部長と、北京・上海の公安部幹部数十人の逮捕が報じられた。孫氏と孟氏は、習氏と対立する江沢民一派の超大物だった。

 中国は、内憂外患どころか“内戦外戦”状態とも言えそうだ。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。

【私の論評】尖閣問題は、単なる領土問題ではなく、コロナ後の世界新秩序における日本の地位を決める(゚д゚)!

習近平は、なぜここまで、台湾に執着するのでしょうか。それには、それなりの理由があります。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米軍コロナ禍、その隙に台湾を恫喝する中国の卑劣さ―【私の論評】東アジアで失敗続きの中国は、今後軍事的挑発をエスカレートし、台湾武力奪取の可能性大(゚д゚)!
台湾海峡を通過中の米海軍イージス駆逐艦「バリー」(写真:米海軍)
以下に、この記事から一部を引用します。
中国としては、台湾が中国ウイルス封じ込めに失敗していれば、中国がイタリアなどのEU諸国に対して実施している、マスクや医療機器の提供や、医療チームの派遣などで微笑外交を台湾に対しても実行したことでしょう。 

これにより、中国は今年1月の台湾総統選での蔡英文氏の再選により、失った台湾での失地回復を行うことができたかもしれません。 
そうして、中国ウイルスが終息した後には、甚大な被害を受けた台湾に対して、莫大な経済的援助をすることになったと思います。 
そうなると、台湾独立派が台頭した台湾を馬英九政権時代のように、親中派を増やすことができたかもしれません。
考えてみると、中国は昨年11月には、香港区議会議員選挙で親中派が敗北しています。今年1月には、台湾選挙で蔡英文総統が再選されています。いわば連敗続きでした。 
中国ウイルスに関しては、韓国は当初は対策に失敗しましたが、最近では収束に向かっています。日本も、感染者が増えつつはありますが、それでも死者は相対的に少なく、中国や米国、EU諸国に比較すれば、中国ウイルス封じ込めには成功しています。 
香港の対応も素早いものでこれも封じ込めに成功しています。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。 
中国官僚のごまかしをよく知っている香港人が、2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓をしっかりと心に刻み、徹底的な対策をしたことも効果的でした。 
中国は、中国ウイルスで、台湾、香港、日本がかなり痛めつけられていれば、得意の微笑外交で、台湾、香港、日本に対して存在感を高めることができたかもしれません。 
しかし、台湾は世界的にみても、最高水準で中国ウイルスの封じ込めに独力で成功し、独立国としての意地をみせました。 
今の中国が、台湾統一のためにできることといえば、軍事的な脅威をみせつけて、存在感を強調することです。
 ・・・・・・・一部略・・・・・・・・・ 
本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

ウイルスの封じ込めと、台湾統一に成功すれば、これは、習近平が成し遂げた大偉業ということになります。今まで、際立った業績のが一切なかった習近平にとって大きな手柄となり、習近平体制が定着することになります。
この記事では、中国の台湾武力奪取について掲載しましたが、いきなり台湾ということになれば、国際社会はこれを絶対に許さないと思います。しかし、その前段階として、中国による 東シナ海実効支配というシナリオは十分にあり得るものになったと考えます。

東シナ海は、太平洋西部にある縁海であり、北は対馬海峡を通じ日本海と接し、東は南西諸島を挟んで太平洋(フィリピン海)に接します。南南西に台湾海峡を通じ、南シナ海と結ばれているほか、北西は黄海に接している。大規模河川として長江が流入しています。


海域の中央部には島嶼は無いですが、北辺から東を経て南辺にかけて周囲に島弧があります。主な島嶼として、北から済州島、九州、南西諸島、台湾となっています。ユーラシア大陸縁辺部には舟山群島などの小島嶼があります。

海底はほとんどがユーラシア大陸から続く大陸棚で、深度200mより浅いですが、東部は沖縄トラフであり深度約2,000mと深くなっています。海流としては黒潮およびその分流の対馬海流が流れています。

日本と中国の間では尖閣諸島問題のほか東シナ海ガス田問題に絡んで経済水域の設定に争いがあります。また、韓国と中国の間でも蘇岩礁にからみ争いがあります。

この地域の海域のほとんどを中国は実効支配した後に、尖閣諸島や台湾付近の海域を徐々に封鎖するなどの実効支配し、最終的には両方とも奪取するつもりであるとみておくべきでしょう。

東シナ海も日本のニュースでは殆ど報じられなくなってしまいましたが、中国は着実に東シナ海を狙っています。ここでの接続水域への中国公船の侵入が頻繁になっています。侵入という言い方は接続水域への場合はちょっと微妙ですが。

それから領海内への侵入、これも向こうからの言い方で敢えて言うと着実に繰り返し、頻度を少しずつ上げ、かつ船の数を増やして来ています。この問題を私たちは、南シナ海から東シナ海に連なる中国の海洋進出として厳しく捉え直すべきです。

尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に侵入した中国海警局の船が日本漁船を追尾した問題で、中国外務省の趙立堅報道官は11日、海上保安庁の巡視船が現場で漁船の安全を確保したことについて「違法な妨害を行った」と非難し、「日本は釣魚島(尖閣諸島の中国側名称)の問題において新たな騒ぎを起こさないよう希望する」と述べて責任を日本側に転嫁しました。

中国外務省の趙立堅報道官

趙氏は、外交ルートを通じて日本側に「厳正な申し入れ」を行ったことを明らかにした上で「中日両国は力を集中して(新型コロナウイルスの)感染症と戦うべきだ」と発言しました。

趙氏は「中国の領海で違法操業」している日本漁船を発見した中国海警局の船が「法に基づいて追尾・監視」したと主張。「釣魚島の海域を巡航することは中国側の固有の権利だ」と強調しました。

これについて菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「全く受け入れることはできない」としたうえで、「現場海域で警告を繰り返し行うとともに、外交ルートでも厳重に抗議し、日本漁船への接近と追尾を直ちにやめて、速やかにわが国の領海から退去するよう強く求めるなど、冷静にきぜんと対応した」と述べました。

そして「政府としては、わが国の領土、領海、領空は、断固として守り抜く方針のもとで、引き続き緊張感を持って情報収集に努めつつ、尖閣諸島周辺の警戒監視に万全を期していきたい」と強調しました。

衛藤沖縄・北方担当大臣は、閣議のあとの記者会見で「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も明らかにわが国固有の領土であり、国内外でわが国の立場に正確な理解が浸透するよう発信強化に努めたい。中国の態度は大変遺憾であり、日本ももっとはっきりと対処を行わなければならない時がきていると認識している」と述べました。

南シナ海においては、中国は新型コロナウイルスの混乱に乗じて軍事要塞化の動きを加速しており、米軍はこれを牽制するため「航行の自由作戦(度を超した海洋権益を主張していると判断した国の海域を対象に米軍の艦船等を派遣する作戦)」を展開しています。さらに米軍は中国側の神経を逆なでするかのように台湾との軍事面の連携を強化しており、一触触発の状態にあると言っても過言ではありません。

米国は、新型コロナウイルスによるパンデミックを通じて、中国に対する政策を根本的に変えざるを得ないと確信したのは間違いないところです。

トランプ大統領の中国攻撃は、日々エスカレートしています。また、マーク・エスパー国防長官は、コロナ危機発生後の2020年2月の下院軍事委員会公聴会で、「米国にとって中国こそが軍事面、防衛面で最大の挑戦者として対峙する相手だ」と断言しました。

そのエスパー国防長官の下で現在、中国を睨んだ米軍の再編・態勢見直しが急ピッチで進められています。

その内容はまだ公表されていないが、エルブリッジ・コルビー元米国防次官補代理とA・ウェス・ミッチェル元米国務次官補は共同で、ウォールストリート・ジャーナル(2020年5月8日付)に「中国封じ込めに向けた困難な道」のタイトルで、その方向性を示唆する次のような記事を寄稿しています。
 ロシアの脅威には、欧州の同盟国、すなわち北大西洋条約機構(NATO)が自らの防衛をいま以上に自分たちの力で担う形で安全を確保させ、中東では、「より軽く、より小さく、より低コストの米軍事プレゼンスを特徴とするような経済的戦力を保持する戦略」へと移行する。そのうえで、インド太平洋地域において、より強力な米軍事力を展開し中国を抑止する。(要約)
すなわち、パンデミック後の米国の大戦略は、中国がもたらす脅威の中心部分への対応を優先するべきとし、そのため、他の地域では関与の度合いを弱めたり、デタント(緊張緩和)の機会を求めて調整したりする必要があることを意味しています。

そして、米戦略の焦点であるインド太平洋地域では、日本、オーストラリア、台湾、インド、ベトナムのような国々が持っている対中防衛能力を基盤とした国防戦略(2018NDS)で説明されているような信頼できる前方防衛が必要であり、米国とその同盟国は、中国と対峙せずして自国の利益を守ることはできないと強調しています。

いうなれば、「中国封じ込め」です。

欧米諸国は、中国を封じ込めるためにはいま代償を払うか、それとも後から払わされるかのどちらかしかないことを認識せねばならないと問いかけ、いま代償を払うなら、より負担が軽く済む可能性が高いと指摘しています。

同時に米国は、自国の重要な産業、人工知能(AI)や国防の供給網に蓄積された脆弱性に対処することで、経済面で中国に依存する度合いを減らさなくてはならないとし、経済的切り離しの強化を求めています。

また、中国が国際ルールの適用を回避する形で、自国市場参入の条件を他国に押しつけることを可能にしてきたことに対し、歴史的な対抗勢力連合を再形成し、中国の強大な力を制御、抑制する必要性を指摘しています。

今後の最大のテーマは、対中安全保障です。。

コロナ危機以降、米中関係の悪化は決定的となり、米国は中国を主敵としたインド太平洋重視戦略に大きく舵を切ります。

この際、米国とその同盟国は、中国と対峙せずして自国の安全や利益を守ることはできないのであり、わが国は、中国との経済関係が深いことを理由に、米国と中国の間を渡り歩くコウモリ的振る舞いや鵺(ぬえ)的態度は許されません。

日本には、米国との同盟を堅持する一貫性した姿勢が求められ、その難しい課題を克服する努力を始めなければならない。

日本としては、この米国の動きに歩調を合わせるしかありません。中国と運命共同体になることはできません。選択の余地などありません。習近平の日本への国賓待遇での招待など、早々に反故にすべきです。

また、憲法改正と法律の改正も行い、尖閣水域から中国の艦艇を海自を使って排除できるうにすべきです。コロナ危機を単なる伝染病の流行などとみるべきではありません。中国や米国の動きをみていれば、これは過去の世界大戦と同レベルで、コロナ後の世界秩序を変えていくのは間違いありません。

中国は、中国独自のコロナ後世界秩序をつくるべく、躍起になっています。米国も、そうさせじと、コロナ後の世界秩序をつくるべく躍起になっています。日本もそのことを忘れるべきではありません。

忘れてしまえば、今回の新たなコロナ後の世界秩序の作成に乗り遅れ、第二次世界大戦後の世界秩序づくりに参加できず、第二次世界大戦後から今日までのように、独立国でありながら、独立国でないような地位に甘んずることになりかねません。

今や尖閣は、単なる領土問題ではなく、今後のコロナ後の世界の新秩序に向けての、日本にとっての大きな分水嶺の一つになるのです。尖閣一つ自力で解決できないようでは、世界の新秩序における地位は低下するだけです。米国も、これを日本の試金石とみているでしょう。

逆に、日本が尖閣問題を自力で解決できるようになれば、コロナ後の世界で米国とともに、リーダー的な地位を獲得することも可能になります。そのほうが、米国にとっても世界の新たな秩序を安定維持しやすくなります。

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