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2020年5月16日土曜日

【日本の解き方】コロナ諮問委員会に緊縮経済学者…政権内の力学が変わったのか? 再自粛時の休業補償に反対も―【私の論評】自民党の中の人たちは、小人閑居して不善をなす財務省に徹底的に負荷をかけよ(゚д゚)!

【日本の解き方】コロナ諮問委員会に緊縮経済学者…政権内の力学が変わったのか? 再自粛時の休業補償に反対も

コロナ対策諮問委員会

政府は新型コロナウイルス対策を具申する諮問委員会に経済学者4人を加えると発表した。 委員会は発足当初は医療関係者だけで構成されていたが、自粛の経済への悪影響が懸念されるので、経済学者を入れたというのが、公式の説明だろう。

 自粛による経済への悪影響を分析するなら、経済学者よりシンクタンクのエコノミストのほうが適任だ。新たに加入する経済学者は、そうした試算を行うというより「ストーリーテラー」のようだ。そもそも試算なら、官庁エコノミストでもできるのに、何のために経済学者を加えたのだろうか。

 いずれにせよ、自粛の経済への悪影響を試算した後の政策対応が重要な課題だ。そこには2つの対応パターンがある。

 1つは、自粛は経済に悪影響があるので、自粛を解除し経済活動を再開するというものだ。その場合、再び感染者が増えて公衆衛生上はまずいので、感染症対策を優先するか経済を優先するかという二者択一になる。

 ここでの政府は、公衆衛生政策は行うが景気悪化に対応する政策は行わないという前提だ。景気悪化に対応する政策を行わないのは、財政負担を避けるためには当然という立場だ。これを「財政緊縮派」と呼ぼう。

 もう1つは、休業補償などで政府が所得補填(ほてん)をして悪影響を最小限にとどめることで自粛を継続するというものだ。

 この場合、政府は公衆衛生政策のみならず、経済への悪影響のコストも負担する。そこでは当然、財政負担が生じるが、感染症は戦時状態と同じなのでやむを得ないと考える。

 もっとも、経済の悪化は需要の蒸発による需要ショックなので、デフレ圧力がある。そうしたなかでカネを刷る政策は実質的に財政負担は生じないともいえる。これを「財政積極派」と呼ぶ。

 今回、諮問委員会に加わった経済学者は、ほぼ緊縮派であるので、前記の2つのパターンのうち、財政緊縮派のパターンが提言されると予想できる。

 この時期にこうした人選が行われることについて、筆者は政権内の政策決定力学の変更が背景にあると感じている。

 今国会での2次補正予算編成は必至である。経済苦境はリーマン・ショックを上回り、戦前の大恐慌並みなので、1次補正の真水約25兆円では足りないのは明らかだ。

 ということで、自民党を中心として補正予算の議論がなされている。一方、官邸側は、当初は官邸官僚が主導権を握っていたが、「30万円給付」でミソをつけ、党主導になった。そこで、諮問委員会に、緊縮派の経済学者を送り込んだと筆者は見ている。

 今本当に求められているのは財政積極派の経済学者であるが、その期待に沿うことはなく、官僚側の緊縮財政を代弁するだけに終わりそうだ。

 自粛解除後に流行第2波が来て「再自粛」となった際には休業補償が必要となるが、今回の学者たちは、それに反対するのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】自民党の中の人たちは、小人閑居して不善をなす財務省に徹底的に負荷をかけよ(゚д゚)!

自民・公明の与党両党が12日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加対策を盛り込む第2次補正予算案について、野党側とも協議を進め、今国会での成立を図る方針を確認しました。会期末は6月17日です。

緊急経済対策の第2弾については、いろいろな観測報道が飛び交っていて、総理が数兆円規模での編成を指示したとか、国会は6月17日で閉じて延長はしないと委員長が言ったというような報道などがあります。

ただ、総理が数兆円規模と言ったという報道は、誰かがその思惑からリークしたものをそのまま報じたというというか、元々世論等を操ろうとする観測気球とはそのようなものです。

その思惑とは、誰が補正予算を仕切るかということです。普通であれば、予算なので財務省が仕切るのが通例なのですが、現在は自民党のなかの人の方が世間の状況をより反映できます。

自民党の中の人?

自民党の人は政治家として、現在の状況を肌感覚として、中小の経営者をはじめとする国民の声や、支持者らの大変だという世間の実態を把握しています。そういう人から見て、従来の財務省のパターンでは予算が、足りないのです。

一方で財務省の人は、今回の話だと補正予算にはあまり関わらないので、観測気球をあげ、それをマスコミがそのまま流したというのが真相なのでしょう。

いままでであれば、どちらかというと官邸の方が政策の主導権を握って、党は追認ではないかと一部で批判されているところもありました。しかし、今回のコロナウイルス対策では、そこがひっくり返っているところがあるようです。

官邸主導でコロナ対策をで考えていた時、30万円の給付金話がありました。30万円のときは所得制限をするので、予算規模は4兆円くらいにしかなりません。それがあまりに少ないということで、ひっくり返されてしまいました。

このブログにも以前掲載したように、あれをひっくり返したのは公明党となっていますが、安倍総理個人が「これではまずい」と思ってやったと私は見ています。逆に言うと、官邸でうまく仕切れていないのです。いまは自民党と公明党が中心となって補正予算を考えている状況のようです。

もともと30万円を発案したのは岸田政調会長で、安倍総理が岸田氏に一任すしたところ、全然まとめられないので、下駄を二階さんに預けたと言われています。

実際、あのまま貧困層に絞った30万円の給付金ということになれば、真水も少ない状況で、安倍政権はかなりの批判を浴びることになったでしょう。あそこでひっくり返すことによって、真水をかろうじて増やしました。今回の2次補正は1次補正と同じくらいやらないと経済が持ちません。

1次補正は10万円一律給付を含めたところで、国債の発行額が23兆円くらいになり、だいたいGDPの5%くらいの規模になりました。今回のコロナ禍による経済への打撃は、大恐慌並みなので、本来はGDPの10%以上真水を出さないと話になりません。

まともな経済政策ができないと、1年後くらいに失業者は300万人以上増えるレベルです。失業者が300万人以上増えると、自殺者は1万人ぐらいに増えるので、コロナウイルスの死よりもはるかに多い死者が出ることになります。

昨年は自殺者数は2万人を切ったが、今年はコロナ禍で増える懸念が・・・・

このようなことをどのように防ぐかが、マクロ経済政策のいちばんの基本です。そのようなときは従来型のケインズ型と言われる、真水を投入して有効需要を増やす方法しかありません。それをやるかどうかにポイントが絞られています。大恐慌並みに落ちるとなると、数兆円の補正では間に合うはずはありません。

コロナ感染の防止と経済との兼ね合いを考えると、緊急事態宣言の延ばす期間、自粛を呼びかける際の対象をどうするかという事が重要になってきます。

そこでコロナの諮問委員会のなかに、経済の専門家とされる人が入ることになりました。そのメンバーが12日に報道されました。大阪大学大学院の大竹文雄教授、慶応大学の井深洋子教授、東京財団政策研究所研究主幹の小林慶一郎氏、慶応大学の竹森俊平教授の4人です。

ところが、この4人の経済の専門家は、マクロ経済立場からすると緊縮派ばかりです。補正予算の拡大を抑制しようという側に立つ人が選んだ人事といえます。

この人事の思惑は、予算が膨らむのを防ぎたいということでしょう。しかし、はっきり言うと、諮問委員会も最近休業続きですし、あまり関係ないともいえるでしょう。

もう補正予算は出てしまうでしょう。補正予算が出てしまった場合、経済のことを諮問委員会で議論してもほとんど意味がありません。

今回の第2次補正予算案は、緊縮という省是に拘る財務省などは、抜きにして自民党内ですすめて、財源が足りなければ、マイナス金利の国債を発行させるように財務省にせまり、さらに消費増税もせまり、なんでコロナ禍の時にそんなことまでやるの、というようなことまで実行して、様々な難題を財務省に押し付け、事務・法律事務手続きなどに忙殺させ、財務省の余力を奪う戦術に出るべきと思います。

財務省の岡本薫明事務次官

そもそも、財務省は本質から外れた省益など拘泥するために、忙しがっているだけであり、国民生活の安寧などは無視し、まさにに小人閑居して不善をなすの格言を地で行っているような組織ですから、余計なことを考えられないくらいに徹底的に負荷をかけるくらいが相応しいのです。

そうすれば、自民党の中の人は、今回のコロナ禍による苦しんでいる国民のために、大鉈を振るえるようになります。はっきりいいます。国民の側からすれば、緊縮頭の財務省など、コロナ対策にはいらないのです。

そうして、あわよくば、財務省が負荷に耐えきれなくなって弱音をはけば、財務省を解体して、各省庁の下部組織として編入して、財務省が省益と盲目的に信じている緊縮というDNAを粉砕すれば良いのです。

このようなことが実行できれば、政治主導も夢ではないです。そのときには、日本も本格的に政策提言ができる、シンクタンクを複数設置すると良いと思います。

そうなれば、日本でも官僚が政治に介入するという思い上がりを断ち切り、まともになれるかもしれません。元々官僚とは、マックス・ウェーバーも言うように、決まったことを迅速に実行できるようにするのが本質であり、政治に関与するものではないのです。今回のコロナ禍をきっかけに、官僚は官僚の本分に戻るようにすべきです。

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2020年1月21日火曜日

米国やイランも歓迎なのに…海自中東派遣に反対の野党 韓国外交は板挟みで迷走中 ―【私の論評】中東海自派遣には、いずれの国も反対していない。反対するのは日本の野党のみ(゚д゚)!

米国やイランも歓迎なのに…海自中東派遣に反対の野党 韓国外交は板挟みで迷走中 
高橋洋一 日本の解き方

中東に派遣された海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」

 海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機が中東に派遣された。その意義と、中東情勢において日本の果たす役割について考えてみたい。

 イラン沖のホルムズ海峡は、狭いところが33キロしかない世界海上交通の要衝だ。特に日本にとっては、この海峡が封鎖されると、石油の輸入の大半が絶たれてしまう。

 経済産業省の「石油統計」によれば、日本の原油輸入元として、2018年時点でサウジアラビア(38・0%)、アラブ首長国連邦(25・4%)、カタール(8・1%)、クウェート(7・6%)と上位4カ国で約計79%を占める。欧米の中東依存度が2割程度であるのと比べても比重が大きい。日本の1次エネルギー国内供給の4割は石油であり、その8割がホルムズ海峡に依存しているので、同海峡は日本のエネルギーの生命線といってもいいだろう。

 現在、米国とイランの間で一触即発の緊張関係が続いている。もし万が一ホルムズ海峡で有事になると、日本経済への打撃は他の欧米諸国の比でない。

 日本のタンカーはホルムズ海峡を日々通過しているが、その安全が確保されない場合、どのように対処すべきか。

 ロジカルには、(1)自衛隊の単独派遣(2)他国との協力(3)静観-である。このうち、(2)の他国との協力では、米主導の欧米の有志連合への参加以外の選択肢は今のところない。

 一部の野党は、(1)にも(2)にも反対なので、結果として(3)の静観ということになる。かつて一部の野党は、「石油が日本に入らなくてもたいしたことはない」と豪語していたが、論外だ。国内の石油備蓄は200日分以上もあるので、備蓄がある限りは日本経済はなんとか持ちこたえるが、それがなくなると苦境に陥るのは、過去の石油危機をみればわかることだ。

海自中東派遣に反対の立憲民主党枝野代表

 筆者は、あるべき対応として、(3)は論外として、本コラムで(1)を勧めてきた。日本の米国とイランに対する立ち位置を考えたときに、(2)の有志連合では対イランとの関係でまずいからだ。安倍晋三政権は常識的な判断として(1)を選択した。

 この方針は、米国にもイランにも支持されている。今回、安倍首相は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーンを歴訪した。中東での平和外交であり、タイミングは絶妙だ。しかも、その成果として、(1)について、これらの諸国の賛同を取り付けた。

 一方、韓国外交はこの問題で迷走している。当初は有志連合への参加方針だったが、イランから恫喝(どうかつ)され、米国からは有志連合への早期参加を催促され板挟みになった。日本は早い段階で(1)を決めたのと好対照だ。

 今回の安倍首相の中東歴訪は、オマーン国王死去にも重なり、弔問外交にもなった。喪に服するという意味で中東には一時的に紛争が起きにくい状況なので、この好機に日本主導で中東和平ができるかもしれない。これは、米国とイランの両方にパイプを持っている安倍政権しかできないことだ。まさに正念場である。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中東海自派遣には、いずれの国も反対していない。反対するのは日本の野党のみ(゚д゚)!

私は野党がなぜ、海自中東派遣に反対するのか全く理解できません。そもそも、民間のタンカーが危険な地区に行くのは問題がなくて、海自がその地区に行くことは反対というのは理解できません。

中東に派遣された海自のP3C哨戒機

たとえば、武装した敵に包囲されていて、それでも日々に必要な水を包囲した敵の近くの水場まで汲みに行くのに、主婦や子供などに水を汲みにいけというのでしょうか。まともな感覚であれば、もし身近に軍人や、警察などがいれば、それらに行かせるか、あるいは水汲みをする人たちの警護に当たらせるのではないでしょうか。

自衛隊を中東派遣すると「イスラムに嫌われる」などと報道されていますが、あれは全くの欺瞞です。中東の産油国にとっても海路の安全確保は極めて重要です。

タンカーがミサイル攻撃されるとか、海賊に襲われることはあってはならないということで、日本と産油国の利害は一致しています。そもそも、日本を敵視するイスラムとは誰のことなのでしょう。IS、アルカイダ、それとも海賊なのでしょうか。

日本はテロリストや海賊のご機嫌を取るために、自衛隊を派遣しない方が良いというのでしょうか。彼らは自衛隊を派遣しようとしまいと日本を敵視しています。自衛隊を派遣すると中東諸国に嫌われるという発言はいろんな意味でまともではありません。

それにしても、安倍総理がこのタイミングで中東歴訪したことは良いことでした。サウジアラビア、UAE、オマーンに行って皆さんと同じように海路の安全確保が大事だと考え、自衛隊を派遣しますと直接伝え、相手からも同意を得た上で海自を中東に派遣したのです。

サウジアラビア・ウラー近郊でムハンマド皇太子(左)の歓迎を受け握手する安倍首相=1月12日

一方、上の記事では韓国外交はこの問題で迷走しているとしていますが、韓国もとうとう中東に艦艇を派遣することを決めました。

韓国政府は21日、中東・ホルムズ海峡への独自の海軍部隊派遣を決めたと発表しました。海賊から韓国船を保護する目的でソマリア沖・アデン湾へ既に派遣されている部隊の活動範囲を一時的に拡大します。米国が求めていたホルムズ海峡の安全確保を目指す有志連合には参加せず、必要に応じて協力するとしています。

米韓間では最近、北朝鮮への韓国人の個人観光を進めたい韓国と難色を示す米国との溝が深まっています。文在寅政権としては、米側の派兵要請に応じることで懸案を減らしたい考えとみられますが、支持層が反発する可能性もあります。

いずれにせよ、韓国ですら派遣を決めたのです。日本の一部の野党は、これをどう捉えるのでしょうか。

海上自衛隊の護衛艦による警護を希望する船舶は約2600隻にのぼるといいます。これは、アデン湾を航行する日本関係船舶の年間隻数にほぼ匹敵するそうです。

海賊発生件数が多発した2010(平成22)年には、219件の襲撃があり49隻が乗っ取られ、1181人が人質にされました。ニュースとしてしばしば取り上げられ、翌2011年にピークに達し237件も発生しました。

しかし、2012年には80件弱となり、2013、2014年はひと桁、2015年には遂にゼロになったことからも劇的に状況が改善しました。

世界各国が手を携え、軍艦や自衛艦などを派遣し根気強く洋上の監視を行い、海賊という共通の脅威に対抗した結果がもたらしたものです。

今回の派遣は海賊対処に加えて日本関係船舶の安全航行のためで、ジブチ基地沖のアデン湾からアラビア海北部、そしてホルムズ海峡(含まない)に繋がるオマーン湾まで、正しく日本列島に匹敵する広範囲に及びます。

国家存立の基本であるエネルギーは、輸入先や資源の多様化が叫ばれて久しいですが、原油の中東依存は1970年代の石油危機時よりも増大し88%にも達しています。

北海道では、昨年ブラックアウトがあつたばかりですが、石油がなくなれば、あのようなことも起こりえます。北海道では2、3日のことですみましたが、長期にわたってあのような事態が起これば、大変なことになります。それこそ、死人がでかねません。

他方で、ドナルド・トランプ大統領は、米国はエネルギーを他国に依存する必要がなくなったと宣言しました。

このことからは、米国の中東関与も逐次縮小が予測され、日本は自らエネルギー安全確保の必要性に迫られることになりました。

このことからも、自衛隊の活動の礎をしっかり確立することが直近の課題であり、現行憲法範囲内でもできることはすべて行うという姿勢も重要ですが、将来的には憲法の見直しが不可欠です。

その意味で、野党の自衛隊の安全のため、中東への派遣は中止すべきという提言はあまりに近視眼的なものであり、とうてい日本の安全保証をまともに考えているとは思えません。

私には、彼らは倒閣のため、国民の安全を犠牲にしているとしか思えません。

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2018年9月2日日曜日

種子法廃止に反対している人たちが、誤解しているかもしれないことむしろメリットのほうが多い可能性も―【私の論評】4月に種子法が廃止されて以来何も不都合は起こっていないし、起こるはずもない(゚д゚)!。

種子法廃止に反対している人たちが、誤解しているかもしれないことむしろメリットのほうが多い可能性も

ドクターZ

奨励品種はなくらならい

今年4月に廃止された種子法(主要農作物種子法)が、'19年の参院選に影響するのではないかと、にわかに話題になっている。

種子法は1952年、戦後の食糧の安定供給を図るために制定された8条からなる比較的短い法律だ。米・麦・大豆の3種類を対象に、奨励品種の選定や原種の生産に都道府県が責任を持つことが定められた法律である。

これが廃止されると、海外から遺伝子組み換えの種子が流入し、海外に日本の食が乗っ取られるとして、一部の農家からは強い批判がある。ひいては与党支持にも影響が出るのではとされているのだが、政府としては種子法が「役割を終えた」ものとして廃止を決めたわけで、今後はどうなっていくのか。

種子法廃止に反対しているのは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に猛反対していた層とほぼ一致するが、農協などの農業関係者のなかでは冷静な見方をする向きも多い。

まず、彼らが懸念する遺伝子組み換えの種子については、厚労省管轄の食品衛生法の問題で、同法による安全性審査で規制されている。なお種子法が廃止されても、食品衛生法の規制は変わりない。


また、いろいろな食物の種子ビジネスに外資が入ってくるという理屈も不明瞭で、種子法に指定された3種だけでなく、対象外の野菜などの種子でも日本のメーカーのシェアは大きい。

種子法の「奨励品種」とは、たとえば「あきたこまち」のような都道府県でブランド化された作物になるが、たしかに地方としてはこの指定がなくなれば困るかもしれない。だが、じつは種子法廃止とともに、各地方自治体では、種子法と同様な条例や要綱を作った。これで、各地方自治体において奨励品種がなくなることは避けられたのだ。

種子法では、国が地方自治体に奨励品種の義務を課していたが、これからは地方自治体が独自に行うとしている。要するに、奨励品種は、国(中央政府)の仕事から地方自治体(地方政府)の仕事に変わっただけであり、やる主体が政府であることは変わりない。

昔よりも作物の生産量に差が広がった大都市と農業県では、農業への取り組み方が違うのは当たり前のことだ。国主体では、たとえば米の減反など、非効率的な政策しか取ることができないため、むしろ農業従事者のためには種子法廃止のメリットは大きいはずだ。

では、なぜ一部の人が反対するのか。しかも、種子法の廃止だけを強調し、同じ内容の各地方自治体の条例が同時に制定されていることを言わないのは、あまりにバランスを欠いている。

その理由としては、やはり一部でTPP反対論を引きずっている人がいるからだろう。

このときも日本の農業は外資に乗っ取られるとしてきたが、アメリカが抜けたことで枠組みは大きく変わり、反対論者の説得力は失われた。そのタイミングで種子法廃止が俎上に載り、TPPのときとまったく同じ絵を描いたのだ。

だが、これまで述べてきたように、日本の農業を守る枠組みはきちんと維持される。事が事だけに早とちりしている人も多いかもしれないが、正しく事情を理解しておけばその間違いに気づくはずだ。

【私の論評】4月に種子法が廃止されて以来何も不都合は起こっていないし、起こるはずもない(゚д゚)!

日本の食の安全を脅かす種子法廃止がなぜ問題にならないのか、なぜ話題にならないのかと疑念を抱いている方がいます。答えは簡単です。問題では無いからです。なにか陰謀があるからだ、などと言っている人いますが、そんなことはありません。

何の問題も無い些末な事を針小棒大に煽って、アジって自らのビジネスにしている輩が居る。ただそれだけのことです。

 以下にその例をあげます。
日本の農業をぶっ壊す種子法廃止、なぜほとんど話題にならない?
田中優 (MONEY VOICEより 2018年2月25日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
ならば「安全な種から育てた食品を選ぼう」と思ったとしても、主要農産物の種を守ってきた「主要農作物種子法」が2018年の今年から廃止されて、種は入手が困難になっていく。種は遺伝子組み換えのものに入れ替わり、それから育てた作物しか選べなくなる。
一見すると私たちに関係なさそうな「主要農産物種子法の廃止」が、私たちの選択の余地をなくし、健康を維持できない可能性が高まるのだ。
この記事の内容は、本当に酷いです。冒頭からデマ全開です。種子法が廃止されても種が遺伝子組み換えのものに入れ替わる事はありません。

種子法は元々別に遺伝子組換え作物を規制しているわけではないので、種子法が廃止されたからといって、種が遺伝子組換えのものに替わる事はないです。

 国内での遺伝子組換え作物の栽培は、特別に許可され隔離された圃場での実験栽培だけです。現在承認されているのはトウモロコシ、ダイズ、セイヨウナタネ、ワタ、パパイヤ、アルファルファ、テンサイ、バラ、カーネーション9作物だけです。また、商業栽培が行われているのはバラのみです。

 これもTPPのISD条項で訴えられて、外国から種子無秩序にがはいってくることになるような、主張をしている人を見かけますが、ISDは他国の法律を変える事はできませんし、もともとあった法律で規制されているのに外国企業が日本に乗り込んできて損をしたなどとして、訴えるなどということはできないですし、仮に訴えたとしても完全に非があるのは企業側なので、100%企業側が負けます。

また、上記の記事中では自閉症の増加とラウンドアップの普及に相関性があるから、ラウンドアップの成分、グリホサートに自閉症の原因があるに違いないとしていますが、なぜか記事では途中でネオニコチノイド系殺虫剤の話になっています・・・)グリホサートと自閉症に因果関係があるかどうかについては、色々調べてみましたが、それを裏付ける様な研究や論文をありませんでした。


ラウンドアップ

それに、遺伝的な要因が強いというとする論文はありますが、近年自閉症が増加している原因についてはまだ科学的にはっきりと解明されていません。

それをグリホサートの増加と相関があるから因果関係もあるはずだと結論付けるのは乱暴すぎるのではないかと思います。

このやり方ならば、自閉症増加と同時期に増えたものはなんでも因果関係があると結論付けてもいいと言うことになってしまいます。

 また、グリホサートはあまりに性能的に優れた除草剤であるため、現在グリホサートの代替となる除草剤が存在しません。

グリホサートを使用すると不耕起での栽培が可能になるので、農業生産性が大きく向上し、且つ土壌が流出しないため周囲の河川汚染のリスクが減るという報告があります。

この様な状況で、下手にグリホサートを規制すると、農家は他の毒性が強く、環境に負荷を与えやすい除草剤を使うことになってしまうため、意味がないどころかかえって事態の悪化を招きかねません。これでは本末転倒です。

そういった背景もあり、EUではグリホサート規制の声が大きかったものの、使用許可期限を5年間延長する決定が下されました。代わるものが無いのですから仕方がありません。グリホサートなしでは農業生産性が著しく低下しますので、農作物価格の高騰を招く可能性が大です。

 ネオニコチノイド系の殺虫剤も然りです。今の農業はネオニコチノイド系の殺虫剤前提で成り立っていますので、規制されたら別の有害な有機リン系の殺虫剤を使わざるを得なくなり、周辺の生態系に与える影響は必然的に大きくなりかねません。また、農業生産コストを増大させて農作物の価格は高騰するでしょう。

 では、農薬不使用の有機栽培をやればいいじゃないかという意見もあろうかと思いますが、農薬不使用で農作物を栽培するのはかなり困難です。
さらに、農薬が防ぐのは虫だけではありません。有毒なカビや病気も予防します。

自閉症誘発というハザードがある(この記事では完全なこじつけですけど)から廃止しろ
と言うのはかなり乱暴な議論で、きちんと経済利便性や、リスクを評価して総合的な判断を下さなければならないでしょう。

「危険性又は有害性(ハザード)」と「リスク」の違いとは ライオンは固有の危険性をもっているのでハザードにあたりますが、左の図はライオンのそばに人がいないので、ライオンに襲われる危険性はありません。 ... 「危険性・有害性(ハザード)」とリスクを明確に区別して理解をする必要があります。



車は交通死亡者を増やすハザードがあるからといって車の生産や利用が規制されないことと同じです。車がなければ現在の生活が成り立たないのと同様に、今の農業は農薬がなければ成立しないものになっています。

 農薬無しでできないことはないのですが、農作物価格の高騰は覚悟しなければなりません。日本はまだ先進国だから大丈夫かもしれませんが、途上国の貧しい人たちの中では餓死してしまう者が増えるかもしれません。

 何やら、話が飛んでしまったかのような印象をうけますが、上で引用した記事は元々は、種子法廃止の話だったはずです。グリホサートとネオニコチノイド系の殺虫剤とか、種子法とは種子法とは、一切関係ないはずです。

 ホームセンターいくとわかりますが、グリホサート系除草剤、殺虫剤など、大量に売られてます。それにJAが積極的にラウンドアップの拡販普及に力を入れています。本当に害があれば、そんなことをするはずもないです。

このような主張をする記事に煽られる必要はありません。一番はっきりしていることは、すでに4月に種子法が廃止されていますが、具体的に何か不都合が起こったでしょうか。

種子法廃止に反対する人々は、まともなエビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)をあげてほしいです。エビデンスなしに、不安を煽るのはやめるべきです。

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2018年9月1日土曜日

防護服姿の子供立像「サン・チャイルド」撤去へ 福島市民アンケート7割が反対 市長「設置は困難」―【私の論評】反原発・自然エネルギー推進の主張は自由!だがそのため何でも利用する姿勢は許されなくなった(゚д゚)!

防護服姿の子供立像「サン・チャイルド」撤去へ 福島市民アンケート7割が反対 市長「設置は困難」

福島駅近くの教育施設「こむこむ」に展示されたサン・チャイルド=福島市で

 福島市が設置した防護服姿の子供立像「サン・チャイルド」に「原発事故の風評被害を助長する」などの批判が相次いだ問題で、同市の木幡浩市長は28日、会見し、像を撤去すると発表した。

 市長は、これまで「像を見て福島が危ないと受け取る人はいない」などと反論してきたが、市民向けアンケート結果は7割近くが反対・否定的で、「賛否分かれる作品を設置し続けることは困難」と語った。

 像は現代美術家ヤノベケンジさんが東日本大震災を機に制作。高さ6・2メートルで胸の空間放射線量計を模したカウンターには「000」と表示、原子力災害のない世界や希望を表した。

 だがJR福島駅近くの市の教育施設に設置されると、「福島が防護服の必要な街であるかのような誤解を与える」「線量がゼロにならないと安全ではないということか」などと批判が相次いだ。

 アンケートは18日から27日まで行われ、110人から集計。内訳は設置に「反対もしくは移設を」が75人で、存続派22人を大きく上回った。賛否不明の「その他」が11人。このほか、市のホームページなどに届いたメールなども、7割が否定的だった。

 これに対し同市長は「愛称募集には小学生199人が応募しており、賛否は拮抗(きっこう)している」としたが、「不快な思いをされた方々には、心からお詫び申し上げます」と語り、近く像を解体し、美術館など別の展示場所が見つかるまで市で保管する。展示費用は、解体も含め約260万円となる見込み。

 また、市長は展示を決める中で議会にはかるなど市民に向けた合意形成を欠いた点を改めて謝罪し、市長給与の減額措置を講じる意向を表明した。

【私の論評】反原発・自然エネルギー推進の主張は自由!だがそのため何でも利用する姿勢は許されなくなった(゚д゚)!

8月3日、JR福島駅前にモニュメントが設置されました。現代美術家として知られるヤノベケンジ氏が2011年に、東日本大震災をきっかけに制作した、「サン・チャイルド」と呼ばれる全高6.2mにもなる巨大な子供の像です。

その容貌は、ブログ冒頭の写真のように、黄色い放射能防護服を着た子供がヘルメットを脱いで左手に抱え、顔に傷を負い、絆創膏を貼りながらも、空を見上げて立っているというものです。胸には「000」と表示されたガイガー・カウンター(放射線測定器)が表現されています。
この像のメッセージは明らかです。「放射能をゼロにして初めて子供が健康になる」という主張です。右手にもっているのは、太陽光発電がエネルギー問題を解決するという意味です。ガイガー・カウンターがゼロになることはありえないですが、作者は「原子力災害や核がゼロになった世界を象徴的に」示したと弁解しています。

「放射能ゼロ」も表現の自由の範囲内であり、彫刻家を非科学的だと糾弾してもしょうがないです。この像は2012年に福島空港に設置されたましたが、そのときは批判は出ませんでした。

しかし、今回は、この像が設置されると、様々な批判と議論が起こりました。
国内のメディアの他、英国BBCが 「福島市がJR福島駅付近に設置した防護服姿の少年像に、住民らが怒りの反応を示している。2011年に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故以来、同市が未だに放射能に汚染されたままだとの印象を与えるとの声もある」と報じ、同国のガーディアンやデイリー・メール、シンガポールのストレイツ・タイムズや香港のSCMP、中国新華社通信などの海外メディアまでもが報道する事態となっています(https://www.bbc.com/japanese/45192561)。
その後、福島市長はブログ冒頭の記事の通り、撤去することを決めています。また、「サン・チャイルド」の作者である、ヤノ氏も以下のような声明を出しています。
ヤノベ氏が発表したコメント全文。公式サイトよりキャプチャ。

ヤノベ氏は撤去について、
「大変残念ではありますが、こむこむ館前に置き続けることで、苦しむ市民の方々がおられるならば撤去し、展示を取りやめた方がよいという結論に至りました。また、これ以上、市内外の人々を巻き込み、対立が生まれることは避けたいと思いました」
と胸中を語りました。「サン・チャイルド」は震災後、福島に通う中で着想したと明かし、「人類共通の大きな課題の解決に向けて、すべての人々を勇気付けたいと思いました」と説明しました。今回の批判については、
「展示する場所、時期、方法などによって受け止められ方は変わりますので細心の注意を払うべきでした」
と振り返えりました。今後、市民と対話する機会を設けたいと希望しています。

「サン・チャイルド」は東日本大震災をきっかけに、2011年からヤノベ氏が複数制作している。このうちの1体が2016年、同作品の10分の1スケール像と共に、「ふくしま自然エネルギー基金」に寄贈されたものです。

ふくしま自然エネルギー基金 代表理事 佐藤弥右衛門
以下に「ふくしま自然エネルギー基金」の代表理事、佐藤弥右衛門氏の略歴を掲載しておきます。
1951年、福島県喜多方市で200年以上続く造り酒屋・大和川酒造店の長男として生まれる。東京農業大学短期醸造科卒業後、大和川酒造店入社。2013年8月、会津電力を設立し社長に就任。現在、全国ご当地エネルギー協会・代表理事も務める。
佐藤氏は自然エネルギーの推進派であるようです。サイトをみてみると、2016年の設立記念シンポジュウムにおいては、反原発派で元総理の小泉純一郎氏が講演をしており、元官僚の古賀茂明氏らの講演も予定されています。
市の担当者によると、同基金から福島市に「寄贈したい」という声があったのは今年に入ってからだといいます。市へは、像の所有者である「ふくしま自然エネルギー基金」ではなく「ふくしま未来研究会」から寄贈されました。別団体からの寄贈になった理由は「詳しい経緯は不明」だと言います。

「ふくしま未来研究会」理事の佐藤勝三氏は、元佐藤工業会長です。佐藤工業は、 福島駅前再開発や除染・再エネ関連公共工事の地元土建最大手、談合での逮捕や指名停止もありりました。元福島県知事・佐藤善一郎の親族でもあります。

この「ふくしま未来研究会」は、地域活性化関連事業のほかに、再生エネルギー関連事業も実施しています。

設置場所がこむこむ前になったのは福島市の判断です。市西部にある「四季の里」や「十六沼公園」なども候補に挙がったのですが、「子どもたちに復興のシンボルとして見てもらいたい」という市の意向で決まりました。

像の設置に伴い、福島市は除幕式や組み立て費など合計133万円を負担しました。撤去には同程度かかる見通しです。撤去後は、分解した後、市が保管する予定になっています。その上で木幡市長は、今回の問題の責任を取り、自らの給与を減額する意向を示しました。


上部の骨組みがむき出しになった福島第原発の建屋

ご存じのように、2011年3月11日の東日本大震災に伴って、東電福島第一原発事故が発生しました。

事故当初には正確な被害状況が判らなかったこともあり、大きな混乱が生じました。たとえば福島市でも、空間の放射線量が一時20μSv/h を上回りましたが、「通常の○×倍の放射線量!」「放射能がくる」 といった、不安と恐怖を煽るヒステリックな言説が大量に飛び交った一方で、その数値が具体的にどういう意味を持ち、どの程度のリスクになるのか、それを冷静に伝えようとする声はかき消されてしまいました。

そのような状況を招いた要因の一つとして、原発や「放射能」そのものが、事故前から極めて政治的、かつ社会的なインパクトが強い存在であったことが挙げられます。

一部の人にとって原発は「核兵器と同じ放射性物質を燃料とする、原爆や戦争を想起させるもの」であるとともに「『権力』から押し付けられるものの象徴」でした。

福島はまたたく間に、激しい政治的対立やイデオロギー闘争の主戦場となりました。その中で、福島が「権力者の犠牲となった悲劇の地『フクシマ』」であり続けることや、「不幸なフクシマの真実」を喧伝することを、好都合とする人々さえ現れました。

結論を言えば、この事故で放射線被曝そのものを原因とした健康被害は起こりませんでした。福島に暮らす人々が実際に被曝した量は、内部・外部ともに世界の平均的な値と比べても高くなく、世界中で核実験が行われていた1960年代の日本人の平均的な被曝量よりもずっと小さいということが、国内外や官民問わず、さまざまな実測調査からすでに明らかになっています。

中には、福島の高校生らによる地道な実測調査もありました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
被ばく量「国内外で差はない」 福島高生、英学術誌に論文―【私の論評】発言するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!
 

この記事は、2015年11月28日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

本県(ブログ管理人注:福島県)など国内とフランス、ポーランド、ベラルーシ各国の高校生の外部被ばく線量を比較研究してきた福島高スーパーサイエンス部は、被ばく線量について「ほとんど差はない」と結論づけ、論文にまとめた。論文は27日、英国の学術専門誌「ジャーナル・オブ・レディオロジカル・プロテクション」(写真下:表紙)に掲載される。


この福島高校の生徒らによる放射能の測定関するニュースは、2015年の4月にNHKで報道されていました。その内容はNHKのサイトに掲載されていましたが、現在では削除されています。この記事にはその内容を掲載しました。その内容を以下に引用させていただきます。
福島の高校生たちが、原発事故があった福島県内と県外の各地、それに海外で暮らす人の被ばく線量を測定し、比較する調査を行いました。
それぞれの場所で日常生活での被ばく線量に大きな差はみられなかったということで、高校生たちは「科学的なデータを多くの人に知ってもらいたい」としています。
調査を行ったのは、県立福島高校スーパーサイエンス部の生徒5人で、海外の学生から「福島で暮らして大丈夫なのか」と尋ねられたことをきっかけに始めました。 
生徒たちは去年6月から11月にかけて、原発事故の避難区域を除く、いわき市や郡山市など県内の6つの地点と、神奈川県や兵庫県、岐阜県など県外の6つの地点、それにフランスやポーランド、ベラルーシの海外の3つの国で、そこに暮らす高校生などにそれぞれ線量計を2週間、携帯してもらって、被ばく線量を測定しました。 
得られたデータをもとに年間の被ばく線量を推計したところ、その値が、真ん中となる「中央値」の人は、福島県内が、0.63から0.97ミリシーベルト、県外は0.55から0.87ミリシーベルト、それに海外では0.51から1.1ミリシーベルトでした。
放射線は、原発事故で拡散された放射性物質によるものだけでなく宇宙や地表から放出されているものもあり、こうした自然由来の放射線は地質の差など地域によって異なっています。 
生徒たちは「いまの福島で暮らしていて、国内のほかの地域や海外に比べて、とりわけ被ばく線量が高いわけではないことが確認できた」としています。 
生徒たちは、先月下旬、フランスで開かれた高校生の国際会議で調査の結果を公表したほか、今後海外の生徒を福島に招いて、現状をみてもらうツアーも計画しているということです。 
調査を行った3年生の小野寺悠さん(17)は、「科学的なデータを多くの人に知ってもらうとともに、自分でも福島の放射線量をどう受け止めたらいいか考え続けていきたい」と話していました。 
そうして、この記事での私の結論は以下のようなものです。
いずれにせよ、何か発言したり行動するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行えと、声を大にして言いたいです。 
そうして、こうした若者にさらに大きな機会を与える社会にしていきたいものです。 
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
この私の信念は、今でも変わりません。これからも一生変わり続けることはないでしょう。

このブログの記事は、かなりインパクトがあったとみえて、多く人に読まれたようです。そうして、おそらく反原発派の方からと思しきコメントが寄せられました。下にそのままその内容を掲載します。
内部被ばくを理解していないあなたのような情報弱者が原子力推進派にとってはものすごく美味しいわけです。
このコメントに対して私は以下のような返答をしました。
内部被ばくの危険を煽る人もいますが、これを信用するなら私達は世界標準の放射線治療を受けることは不可能になります。
このコメントは、もっと詳細で長いものなのですが、簡単にいうと、癌の治療などで、放射性物質を飲み込み癌細胞に取り込ませ、癌を退治するのですが、もし内部被ばくが危険なものなら、そもそもこうした治療は最初から成り立たないことになります。

そもそも、治験時に相当危険な治療とされて、治療法として許可されないでしょう。ところが、実際にはこのような治療方法が用いられているわけですから、原発反対派の方々がよく言うほどの危険性はないことがわかります。そんなに危険であれば、この治療で内部被曝による死亡者がかなりでていることになります

詳細をご覧になりたい方は、このブログ記事の一番下のほうにある、コメント欄をご覧になってください。

原発事故から4年もたって、しかも私のような第三者が、掲載したブログにまでこのような人を小馬鹿にするようなコメントを平気でする反原発派の方がいるということですから、福島に向けられた誤解や、プロパガンダなどは凄まじいものがあったのは想像に難くありません。

この高校生たちの観察結果からも、 その他の報告書においても、福島の放射線被爆量は国内の他地域や海外に比較してとりわけ高いということはないのです。

一方で、避難に伴う生活環境の変化による健康状態の悪化や、震災関連死は増えました。避難を巡る考え方の違いを発端とした離婚が起こったケースもあります。もちろん、中には避難によって安心感や安定が得られた方もいらっしゃるでしょうが、少なくともデータの上では、無理に避難することは、もとの生活圏に留まるよりも総じてリスクが高かったといえるのです。

ただし、これはあくまでも結果論です。震災発生当時、多くの人が明日をも知れない大きな不安に包まれていました。それから必死で学び、悩み、沢山の決断を繰り返す中で、県民は多かれ少なかれ傷付いてきました。

重く苦しい2011年当時の空気感から7年以上の時間と苦難を越え、福島では平穏な日常を取り戻す住民が増えてきましたが、そこに至るまでの道のりや、震災の記憶が大きな痛みとして心に刻まれている人も少なくありません。

そんなある日、大勢の人たちが平穏な日常を暮らす福島駅前に突然現れたのが、2011年からやってきた「サン・チャイルド」でした。

2011年の作品ですから、その頃の感覚が強く表現されているのは当然のことです。作者であるヤノベ氏に悪意があったとは、少なくとも私は全く捉えていません。

しかし、人々が日常的な通勤や通学、ショッピングに訪れる福島駅前の、しかも子ども達のための施設の入り口に、突如として現れた6.2mの巨大な「2011年からの使者」に向けられたのは、歓迎の声ばかりではありませんでした。

像が着ている防護服が、「防護服が必要なほど、福島は汚染されていた」「市民は過去、大量の被曝をした(=将来、健康に影響が出るに違いない)」という誤ったイメージを喚起しかねない点も指摘されています。

福島市では、実際には防護服が必要となったことは一度もありませんでした。現在では、廃炉作業が進む福島第一原子力発電所の作業員ですら、防護服を着て作業するエリアは極めて限定的です。

つまり「サン・チャイルド」で表現されている、「2011年に想像された未来」よりも、「現実に訪れた未来」の放射線被害はずっと小さかったのです。

むしろ、実際に住民たちに苦難をもたらしたのは、自らのイデオロギーやビジネスのために「放射線被曝での健康被害に苦しむフクシマ」を望む人々による、偏見・差別、言いがかりや嫌がらせなどの二次被害だったとも言えます。

日常空間に防護服を着て乗り込んできたのは、一部の政治家や、住民への嫌がらせとデマ拡散を繰り返してきた人々ばかりだったことも、指摘しておきましょう。

「警戒地域」を防護服姿で視察する当時の政権与党民主党の岡田幹事長

国民新党の亀井静香代表は2011年5月10日午後、党本部で自民党の大島理森副総裁と会談していますが、大島氏によると、亀井氏は民主党の岡田克也幹事長が先に福島第1原発から半径20キロ圏内の警戒区域を視察したことに触れ、「自分だけ防護服を着て、相手が防護服なしで会う姿にあぜんとした。心の通い合う政治をやらなければ駄目だ」と批判しています。枝野氏なども含めて民主党の政治家は、当時このような視察をしていました。当時、作業服姿で現地を訪問していた、天皇陛下とは対照的でした。 

このような経験があったために、今回の「サン・チャイルド」に対しても、設置に至る経緯の不透明さと説明不足もあいまって「なぜいま、どのような目的で持ち込まれたのか」「ツイッターなどSNS上の発言も含めて、県内外でどういう人たちが、どのような反応をしたり関わったりしているのか」など、その背後関係や経緯に対して、多くの住民から不安と警戒のまなざしが向けられてしまったのも無理はありません。

放射能は悪ではありません。自然放射線をゼロにすることはできないですし、する必要もありません。福島第一原発事故でも、放射能による死者は出ていません。今これを否定する人はいないですが、事故の当時、民主党政権は「年間1ミリシーベルト」という非科学的な安全基準を出し、これを根拠に過剰避難や莫大な損害賠償請求が発生しました。

反原発という主張をしたり、自然エネルギー活用を主張したりすること自体は自由ですが、その主張を通すために、虚偽の情報を流したりすることなど到底許されることではありません。さらに、今回のようにアートを自分たちの意図を通したり、強化したりするたに利用することも、多くの福島市民から拒否されて、撤去さざるをえなくなったのです。

このように、放射能をめぐる迷信が変わってきたことは歓迎すべきですが、デマを流した人々が復興を妨げた罪は大きいです。ヤノベ氏は謝罪のコメントを出したのですが、今度は反原発派がデマを撤回して謝罪するべきです。

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2017年9月27日水曜日

日銀総裁の財政発言は不適切 片岡氏の「反対」に納得、現状の金融緩和では力不足 ―【私の論評】マネジメントの原則からも片岡氏の行動は正しい(゚д゚)!

日銀総裁の財政発言は不適切 片岡氏の「反対」に納得、現状の金融緩和では力不足 

片岡剛司氏
日銀は審議委員に片岡剛士氏らが入り、新体制となった。9月20、21日に開いた金融政策決定会合ではさっそく金融政策の現状維持に「不十分」として反対した。

 片岡氏は「資本・労働市場に過大な供給余力が残存しているため、現在のイールドカーブのもとでの金融緩和効果は2019年度ごろに2%の物価上昇率を達成するには不十分」と指摘した。この行動に、金融関係者からは驚きの声が上がったというが、筆者には片岡氏が言いたいことがよくわかる。

 筆者は、本コラムにおいて、これ以上下げられない構造失業率を「2%台半ば」と指摘してきた。実は、片岡氏も似たような推計をしていると聞いたことがある。金融政策のセオリーは、実際の失業率が構造失業率に低下するまで金融緩和を実施するというものだ。

 もちろん、半年から1年後の失業率を想定しながら、実際のオペレーションを考えるわけだが、今のままの金融緩和では、あと1年で構造失業率にまで達しそうにない。インフレ率の上昇は、失業率が構造失業率に達した後、賃金上昇とともに起こるので、2年後のインフレ目標2%は難しいということになる。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が資産縮小に動き出したので、日銀は今の緩和ペースでも円安になる可能性はあるが、本来の目標である雇用やインフレ率の改善のためには、それで満足してはいけない。

 先日の本コラムで、構造失業率2%台半ば、インフレ目標2%を達成するためには、過去のGDPギャップから推計して、有効需要で25兆円必要だと書いた。当面は補正予算もなく、2年後の19年10月には消費増税が確実視されている中、財政の観点からも有効需要の押し上げがないと思われるため、とても今の金融緩和だけでは力不足であろう。こうした標準的な経済分析からみれば、片岡氏の反対は納得できるものだ。

 日銀はもっと失業率の話をしないと、世界標準からずれてしまう。片岡氏には、日銀は労働環境を重視すべきだと主張してもらいたい。

 そうした意味で、黒田東彦(はるひこ)総裁が、「財政規律は非常に重要だ」と強調し、暗に積極財政を否定していることは理解できない。

 本コラムの読者であれば、日銀を含めた統合政府で考えると、日本には財政問題がほとんどないということを理解しているだろう。しかし、財務省出身の黒田氏は頑として認めようとしない。その一方で消費増税をすべきだと、日銀総裁としては越権ともいえる発言をしたこともある。

 今回の財政規律発言では、「十分関心を持って見ている」との表現で、かろうじて越権発言になっていないが、財政に関する発言は日銀総裁としては注意すべきだろう。むしろ、政府と日銀が共有しているインフレ目標の達成の観点から、財政政策と金融政策は同時発動すべきである。

 金融緩和しつつ、財政緊縮というのは、現在のマクロ経済政策としては適切ではない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】マネジメントの原則からも片岡氏の行動は正しい(゚д゚)!

本日は、まずはブログ冒頭の記事にもあるイールドカーブについて説明します。これについては、このブログでは過去においては、一度も解説していませんでしので、本日解説することにしました。

イールドカーブとは縦軸を「債券の利回り」、横軸を「債券の残存期間(満期日までの期間)」として、長期・短期債券の金利を結んだ曲線のことで、ある時点の市場における平均的な債券利回りと残存期間の関係を表していると言えます。通常は「流動性プレミアム仮説」に基づき残存期間が長くなればなるほど金利が高くなるため、右上がりの曲線になります(順イールド)。

逆に、イールドカーブが右下がりの曲線になる場合(逆イールド)は、投資家が将来において景気が減退することに連動して金利が低下すると予測していることを意味し、景気が減退していく傾向があると考えられます。


また、イールドカーブの急な傾き(イールドカーブのスティーブ化)は、将来の景気が上昇していく傾向があると考えられ、市場の投資家が将来において金利が上昇していくと予測していることを意味します。

逆に、イールドカーブの曲線がなだらか(緩やかな傾斜)の場合(イールドカーブのフラット化)、将来の景気が減退していく傾向があると考えられ、市場の投資家が将来において金利が低下していくと予測していることを意味します。

イールドカーブにより将来の景気動向、金融政策などがある程度予測できると言われています。まず景気動向についてですが、一般的には景気が将来的に上昇していくような状況では、イールドカーブのスティーブ化の現象、つまりイールドカーブの傾きが急になることが多いと言われています。

逆に、景気が将来的に減退していくような状況又は先行きが不透明な状況では、イールドカーブのフラット化の現象、つまりイールドカーブの曲線が緩やかな傾斜となることが多いと言われています。また、逆イールドは、景気減退の予兆と見ることもできます。
次に、金融政策との関係ですが、一般的に中央銀行の金融政策が引き締めの傾向にあるときには、逆イールドになる可能性が高いと言われています。この様なことからイールドカーブは景気動向や金融政策を予測するための指標としても利用されることがあります。
次に、イールドカーブ・コントロールについて解説します。
イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)は、2016年9月の日銀金融政策決定会合で日銀が新たに導入した政策枠組み「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の柱のひとつです。
2016年1月から始めた短期金利のマイナス金利政策に加え、10年物国債の金利が概ねゼロ%程度で推移するように買入れを行うことで短期から長期までの金利全体の動きをコントロールすることです。
日銀は指定する利回りで国債買入れを行う指値オペレーションを新たに導入するとともに、固定金利の資金供給オペレーションの期間を1年から10年に延長することによりイールドカーブ・コントロールを推進しています。

以下に日本国債の7月時点(7月31日)でのイールドカーブを掲載します。これは、財務省の金利データから作成したものです。

250日営業日前と比べるとイールドカーブが立ってきています。ただ、直近数か月は落ち着いているようです。10年物金利は概ね0から0.1%程度の間で収まっているようです。日銀のイールドカーブコントロールが効いてはいると思われます。

250営業日前と比べると明らかに水準が変わっていることがわかります。特に長期金利が上がっています。もっとも上がったといってもその差は1%にも満たない数字です。ただ、250営業日前は20年以上先の金利がほぼ同じでフラット化しており、何やら異常な感じがしますね。それから比べると現在はだいぶ正常な形に近づいているのかもしれません。あくまで形だけで、金利水準は大幅に低いのでしょう。

内閣府の資料によると日本の潜在成長率は0.8%とのこと。このままインフレが進まないと仮定すると、低成長の経済では資金需要が増えるとは考えられず、必然的に金利は高くならず、日本は低金利のままです。

いずれにせよ、イールドカーブはフラット化の傾向がみられ、特に250営業日前に関してはかなりフラット化しています。ということは、将来の景気が減退していく傾向があると考えられ、市場の投資家が将来において金利が低下していくと予測している可能性があることを意味します。

このようなイールドカーブをもとに、片岡剛司氏は「資本・労働市場に過大な供給余力が残存しているため、現在のイールドカーブのもとでの金融緩和効果は2019年度ごろに2%の物価上昇率を達成するには不十分」と指摘したのです。

この状況では、やはり片岡氏の指摘するように、構造失業率を「2%台半ば」になるまで、追加の金融緩和を続ける必要がありそうです。

この必要性に関しては、高橋洋一氏の記事をもとに、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍内閣内閣が問われる「20兆円財政出動」で物価目標2%達成―【私の論評】今国債を刷らずして、一体いつ刷るというのか?

この記事では、高橋洋一氏の記事をもとに、日銀は追加金融緩和を行い、構造的失業率が安定的に2.7%程度にすべきであることを掲載しました。

さらには、日銀の大規模な国債買い入れによる金融緩和が続く中、今後は国債需要が強まる四半期末ごとにレポ市場での需給逼迫(ひっぱく)が強まる可能性があります。日銀は短国の買い入れを減らして流通量を増やしていますが、それでも国債が足りなかったことも掲載しました。

そうしてて、このような状況では、本来は国がこの状況に対応するため、国債を刷り増すべきであると主張しました。政府(財務省)が本来すべき仕事をしなかったため、日銀の金融緩和に支障がでてくる可能性がでてきたのは間違いないです。

以上のように、「資本・労働市場に過大な供給余力が残存しているため、現在のイールドカーブのもとでの金融緩和効果は2019年度ごろに2%の物価上昇率を達成するには不十分」と指摘したことは十分根拠があり、正しいものと思います。

わこの行動に、金融関係者からは驚きの声が上がったといいいますが、片岡氏の行動は正しかったと思います。

このブログでは、最近政治や経済の話でも、意図して、意識して、マネジメントの原理原則にからめてお話をするようにしています。

このマネジメントの原理原則からしても、今回の片岡氏の行動は正しいです。

経営学の大家ドラッカー氏は、意思決定について以下のように述べています。
マネジメントの行なう意思決定は全会一致によってなしうるものではない。対立する意見が衝突し、異なる見解が対話し、いくつかの判断のなかから選択が行われて初めてなしうる。したがって意思決定における第一の原則は、意見の対立を見ないときには決定を行わないことである。(『エッセンシャル版マネジメント』)
20世紀最高の経営者GMのアルフレッド・スローンは、反対意見が出ない案については、検討不十分として結論を出させなかったといいます。

意見の対立を促すには理由があります。一見もっともらしいが間違っている案や、不完全な案にだまされなくするためです。頭脳と感性を刺激し、すばらしい案を生み出すためです。

常に代案を手にするためでもあります。行なった意思決定が実行の段階で間違いであることや、不完全であることが明らかになったとき、途方に暮れたりしないためです。

そもそも戦略にかかわる問題については、ある案だけが正しく、ほかの案は間違っているなどと考えてはならないのです。そのようなことは、ありえないとすべきです。もちろん自分が正しく、他人が間違っていると考えてもならなのです。なぜ意見が違うのかを常に考えなければならないのです。さらには、誰が正しい、誰が間違いという観点で論議をしても、不毛です。何が正しい、何が正しいを問わなければならないのです。
明らかに間違った結論に達している者がいても、それは、なにか自分と違う現実を見、自分と違う問題に関心を持っているからに違いないと考えなければならない。(『マネジメント』)
ドラッカー氏は以下のようなことも語っています。
決定においては何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協が必要になるからこそ、最初から誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならない。(『経営者の条件』)
片岡氏1人だけが、 金融政策の現状維持に「不十分」として反対することは、確かに何が受け入れられやすいかという観点からは、一見あまり良いことのようにはみえません。

しかし、最初から全員に受け入れられやすい意見など述べていては、いずれ妥協するにしても、まともな妥協ができる可能性は薄くなります。

ドラッカーは次のようにも述べています。
頭のよい人、しかも責任感のある人は、せっかくの意思決定も実行されなければ意味がないと思う。そのため、最初から落としどころとしての妥協を考える。(『経営者の条件』)
片岡氏以外の日銀審議員は、最初から落としどころとしての妥協を考えた結果、金融緩和の現状維持の道を選んだのだと思います。

そうして、ドラッカーは、妥協について以下のように述べています。
妥協には2つの種類がある。1つは古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」、1つはソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」との認識に基づく。前者では半分は必要条件を満足させる。パンの目的は食用であり、半切れのパンは食用となる。半分の赤ん坊では妥協にもならない。(『経営者の条件』)
最初から落としどころとしての妥協を考えていては、それこそ妥協するにしても、半分の赤ん坊しか得られないような妥協になってしまうおそれがあります。片岡氏はこのようなことは避けたかったのでしょう。

ドラッカーは、次のようにも語っています。
何が受け入れられやすいかからスタートしても得るところはない。それどころか、妥協の過程において大切なことを犠牲にし、正しい答えはもちろん、成果に結びつく可能性のある答を得る望みさえ失う。(『経営者の条件』)
片岡氏が反対しなければ、日銀の金融政策はこのようなことに陥る可能性が非常に高くなってしまったことでしょう。

様々な妥協を重ねていけば、いずれ日銀も、白川日銀総裁以前の日銀に戻ってしまい、何ら成果あげられない組織になってしまうかもしれません。

そのようなことは絶対に防がなければなりません。だかこそ、今回の片岡氏の行動は、賞賛に値するものだと思います。

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2017年6月2日金曜日

民進党正気か…特区廃止案提出へ 規制改革に反対鮮明、次は天下りあっせん禁止廃止か―【私の論評】安倍総理への憎悪だけが党を纏める唯一の手段になった民進党(゚д゚)!

民進党正気か…特区廃止案提出へ 規制改革に反対鮮明、次は天下りあっせん禁止廃止か

写真はブログ管理人挿入 以下同じ
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐり、民進党は5月31日、国家戦略特区を廃止する法案を提出する方針を固めた。特区の適用を停止し、政府に施行後2年以内に特区廃止を含めて検討するように義務づけるという。来週にも参院に提出するというが、識者からは「規制改革に反対するのか」などの指摘も出ている。

 民進党の桜井充参院議員が同31日、「加計学園疑惑調査チーム」の会合で明らかにした。民進党は最近、加計学園をめぐる「文書」や、文部科学省の前川喜平前事務次官の爆弾発言などを取り上げ、一部メディアと歩調を合わせて安倍政権を追及中で、さらに対決姿勢を強める方針のようだ。

 そもそも、国家戦略特区は「岩盤規制」を打破し、産業の国際競争力を高めるため、2013年12月に整備された。地方の活性化も狙う。

 これに対し、民進党の玉木雄一郎幹事長代理は「極めて恣意(しい)的な規制緩和」と断じた。廃止法案という対案を出すことで、「批判に明け暮れている」というイメージを払拭したいとの思いも見え隠れする。

 ちなみに、玉木氏は獣医学部新設に反対していた「日本獣医師会」の政治団体「日本獣医師政治連盟」から100万円の政治献金を受けていた。

 民進党綱領には「既得権や癒着の構造と闘う、国民とともに進む改革政党」とあるが、法案提出は、この“立派な綱領”に反するのではないか。

 嘉悦大教授の高橋洋一教授は「特区廃止法案を出すのが事実であれば、『民進党=規制改革に反対』というスタンスが明確になる。特区廃止は、規制緩和による新規参入を認めないということであり、官庁の許認可が重要になってくる。つまり、『天下り容認』と表裏一体だ。旧民主党政権では、天下りあっせん禁止の運用を骨抜きにしたこともある。論理的に考えると、次に天下りあっせん禁止を廃止する法案を出してもおかしくない」と話している。

【私の論評】安倍総理への憎悪だけが党を纏める唯一の手段になった民進党(゚д゚)!

平成13年には、海江田民主党(現民進党)が賛成し、本会議場での賛成討議で安倍総理にエールを送っていた国家戦略特区を廃止しようとは、民進党もとうとう切羽詰まってきたようです。

このブログでは、海江田氏が代表だった頃の民主党にも批判をしましたが、それにしても、現在の民進党から比較すれば、随分まともだったように思います。

当時の民主党(現民進党)代表 海江田万里氏
国家戦略特区に関しては、このブログでも以前とりあげたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ねじれ解消後の今国会は与党内の「産業政策」派vs.「規制緩和」派を反映する産業競争力強化法案と国家戦略特区法案の行方に注目せよ―【私の論評】官僚主導の産業政策で成功したためしは、一度もない成功したのは引き伸ばし戦略のみ\(◎o◎)/!
アベノミクス効果!? 2%目標パッドつき トリンプ「“ブラノミクス”
ブラ」 三本の矢で女性の自信浮揚 (2013/05/09) の記事画像
この記事は、2013年10月23日のものです。結局この年に国家戦略法案が決まったわけですが、これは良かったと思います。この記事にもあるように官僚による「産業政策」は過去にほとんど成功したためしはありません。

官僚による「産業政策」が成功したのは、日本ではいわゆる「ひきのばし戦術」だけであり、官僚が積極的に関与したものは全部失敗です。この記事からそれについて掲載した部分を以下に引用します。
日本の官僚は、自ら積極的に主導して産業政策を実施した場合は、必ず失敗してきたか、やってもやらなくても同じという結果でしたが、ドラッカー氏の語るように、先送り戦略では二度も大成功しています。
明治初期の農民
その一つが、全近代的な農業人口の都市部への流入です。これに関しては、これへの対応が重要であることが叫ばれたにも関わらず、官僚は何もせず、結局何もせずにおいたことが大成功を収めました。 
その次が、前近代的な流通システムの改革です。これに関しては、流通業界は全容は誰も知らず、暗黒大陸といわれていた時期もあり改革が叫ばれましたが、官僚は結局ここでも何もせず、ダイエーやイトーヨーカドーのような流通の革新者が現れ、それらが、次々と革新を起きない、改革が進みました。現在の日本の流通業界は、革新され、諸外国と比較しても遜色のない程度になっています。これは、最近のコンビニの活躍を見ても、皆さんにも良くご理解いただけるものと思います。
戦前の米商人
そもそも、官僚が産業政策を主導するなどという考えは、高橋洋一氏も上で述べられているように、欧米にはその概念はありません。もともと、産業とは政府が直接関わって、実施すべきものではなく、あくまで、インフラの整備に徹し、その上で実際に動いて、産業を振興していくのは、民間企業の役割であるという考え方です。
インフラの整備は政府の重要な仕事、しかしその上で実際に活動するのは民間企業
インフラといった場合、道路、空港、港湾、ライフラインなどがありますが、その他にも、たとえば、法律の制定、それこそ、規制の撤廃、逆に規制の強化なども含まれます。また、このようなことは、民間企業がなかなかできるものではなく、政府が実施すべきものです。しかし政府がそのインフラの上で展開される事業に直接関わってしまっては、共産主義と同じで失敗するだけてす。 
このような観点からしても、上で述べている高橋洋一氏の主張は正しいです。政府が産業政策の主導権を握るようであれば、大失敗するだけです。規制緩和などのインフラ整備に徹するなら、成功する可能性は高まります。 
この記事にも述べているように、官僚が「産業政策」を立案して実行して成功したことは日本は無論のこと、古今東西ありません。それが成功するというのなら、共産主義も成功したはずです。しかし、皆さんご存知のように共産主義はことごとく失敗しました。

その意味では、官僚による産業政策ではなく、規制緩和の一環である、国家戦略特区法案がこの時点で成立したことは良かったことだと思います。

国家戦略特区は簡単に言うと、「これまで変えたくても変えられなかった、時代遅れだったり陳腐化してしまっている制度を、一部の地域で実験的に変えてみようよ」というものです。



そうして、「国家戦略特区」の最高責任者は総理大臣です。特区による規制緩和は、いろんな省庁の持っている、既得権益や制度に穴を開けていくことになるので、総理の権限が必要になってくるのです。

その総理の「無意味な規制に穴を開ける」という意志をくんで、省庁に対して「頑張って規制を緩和しよう」というのは、職務範囲から逸脱することではないですし、むしろ頑張ってやらないとできないことです。

「国家戦略特区」は、この国に溢れる意味のない規制を改革する、唯一と言って良い武器です。にもかかわららず、意味不明な加計学園問題によって抑制されて、改革の武器を失ってしまうのは、国益を失うことと同義です。

我が国には無意味で陳腐化した制度が溢れています。その制度も、当初は意味がありましたし、善意にもとづいて制定され、それを制定する際の熱い想いがありました。

しかし、時をたつにつれて意味は失われ、新しいものが生まれることを阻む岩盤のような障壁になってしまいました。

特区制度は、「そもそもこの規制は何のために存在するのか」と改めて問える道具なのです。そして、「もう意味ない。じゃあ、こうしてみようよ」と実験ができる道筋なのです。さらに、 「この地域でうまくいったのだから、全国に広げようよ」と言うことが可能になる制度なのです。

特区は東京圏を中心に、愛知県や関西圏など、全国約10カ所が指定されています。以下に特区にしてされている地域を示す地図を掲載します。



この特区で認定されている事業は240にも及びます。例えば沖縄県の国家戦略特区は、高度医療提供事業の推進となっています。当然、これに基づいた施設(豊見城中央病院に新規の病床18床を整備)がある訳ですが、これに伴う医療ツーリズムが企画されており、特区廃止ということになれば、患者に「でていけ」と言うことになりかねません。

確かに、特区制度がその地域で機能しなくなった時にこれを廃止する手順が定められていない点には疑問を感じる。それに、特区がやたらと増えてしまうと、法規制そのもの実効性が問われる事になりかねず、慎重な運用が求められるのは事実です。外資誘致を積極的に行うという考えにも、危機感を覚えるところもありますが、かといって、こうした実験的な運用はスピード感が重要であるので、手続に5年も10年もかかっていては話にならないです。

こうした事を考え合わせると、民進党の法案の中身が未だ明瞭ではないので、議論できない状況ではあるものの、改正ということではなく、特区案廃止案ということなので、今の段階でも、常軌を逸しているとしかいいようがありません。

それにしても、この民進党の特区廃止案提出のきつかけにもなった、前川前文部次官の会見ですが、この会見を含めて、マスコミの報道も異様です。

前川氏は、文科省の天下り調査報告に59回も名前を連ねています。それを「正義の味方」であるかのように、報道すること自体が異様です。あの会見には、当然のことながら、前川氏自身の私憤、私怨が含まれていると解釈すべきであり、マスコミもそれを報道すべきでした。この報告書は、以下のリンクからご覧いただくことができます。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/04/19/1382987_04.pdf …

普段は、官僚の天下りに厳しいマスコミであるにもかかわらず、天下り帝王ともいうべき前川氏には異様な優しさです。本当なら、天下り斡旋を組織ぐるみでしていた事務次官は懲戒解雇・退職金8000万円なしでも不思議でありません。格別の温情で、依願退職扱いにした政府側も、前川氏に激怒するのは当然だと思います。

私憤、私怨を制御できなかった前川前文科次官?
形式的には、依願退職であったとしても、少なくとも退職金は自主返納させるべきと本来ならマスコミはこれを批判すべきです。本当に、マスコミは節操がないです。

それと、国家戦略特区などの規制緩和と天下りの関係についてもマスコミは一切報道しません。特に、規制緩和派は天下りに厳しく、規制擁護派は天下り容認ということを報道しません。前川氏は後者の典型例です。今週週刊誌が前川氏は勇気ある告白者と報道しましたが、前川氏はコテコテの天下り推進論者です。これは、従来の週刊誌主張と真逆です。メディアは本当に節操がないです。

そうして、民進党は、まるで韓国の反日活動が日本への憎悪だけが、国を纏める唯一の手段であるかのように、安倍総理への憎悪だけが党を纏める唯一の手段になってしまったようです。過去との矛盾がある事に疑問を持たず、誰も反対せず、戦略特区に指定され喜んでいる地方自治体や地域住民、地道に努力に努力を重ねている事業家など、その全てを敵に回す覚悟があるのでしょうか。次の選挙が楽しみです。

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2017年4月22日土曜日

テロ等準備罪の実態と必要性 反対派の印象操作には要注意、懸念払拭へ十分な国会審議を―【私の論評】頓珍漢な理由で反対する反対派は国民に愛想を尽かされる(゚д゚)!



テロ等準備罪をめぐっては、野党やマスコミなどから懸念の声が出ている。法案の審議も遅れているが、法律の必要性や審議の行方を考えてみたい。

 正式な法律名称は、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部等を改正する法律案」である。

 これに反対する人たちは、「共謀罪」と称している。筆者は、名称はどうでもいいと思っているが、なぜか政府も「共謀罪」とは言いたくないようだ。

 共謀罪というのは、米法のコンスピラシー(Conspiracy)などのように海外では普通に見られる概念である。そもそも今回の法案が必要とされる理由として、国際組織犯罪防止条約を批准するためというものがある。国際条約では「共謀罪」を要件としているので、今回の法内容は、海外から見れば「共謀罪」になっているのは間違いない。

 ただ、反対する人たちが「共謀罪」と言うのは印象操作である。戦前の治安維持法の思想禁止を連想させるほか、過去2回の法案(提案はいずれも小泉純一郎政権)が廃案になっていることから、今回も悪法と言いたいのだろう。

 もちろん、今回の法案は、「思想」ではなく「準備行為」を処罰対象にしており、戦前の治安維持法とはまったく異なる。また、過去の法案と比べても、対象が限定されているのも大きな違いだ。

 法案については、制定(改正)理由とそれを達成するための手段という2つの側面から評価される。今回の場合、制定理由は、国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約)の批准のためだ。日本は、この条約を2000年12月に署名し、03年5月に国会承認しているが、まだ批准していない。

 過去における政府提案では、当時の民主党は修正案を出しているので、制定理由は納得しているはずだ。ところが、最近、国際組織犯罪防止条約の批准にあたり、共謀罪は必要ではないとの意見が、反対派から出ている。その根拠は孫引きの国連のガイドラインであるが、原典の条約をみれば必要である。

 また、反対派は条約締結のために共謀罪立法を行った国としては、ノルウェーとブルガリアの2カ国しかないというが、これは「新たに」立法した国という意味である。締結国では既に国内法が準備されているのが実態だ。

 次に、達成手段である。日本の刑法は、「犯罪の実行に着手」することを構成要件としており、準備行為では種々の議論が出てくる。法案作成技術からみれば、抽象的に抜け穴がないように書かざるを得ないので、過剰規制だと受け止められる部分も少なくない。

 この点について、反対派は適用される団体や組織の定義などで拡大解釈されると批判する。そうした懸念はあるので、懸念を払拭するために、国会審議をまずはしっかり行う必要がある。その上で、冤罪(えんざい)を防ぐために捜査の可視化、親告罪化の一部適用などを行うべきだ。そうした国会らしい審議ができるかが問われている。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】頓珍漢な理由で反対する反対派は国民に愛想を尽かされる(゚д゚)!

そもそもこの国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約 がいかなるものか、ということですが、これについては、詳細は外務省のホームページをご覧いただくものとして、簡単にまとめると、以下のようなものです。
組織的な犯罪集団への参加・共謀や犯罪収益の洗浄(マネー・ローンダリング)・司法妨害・腐敗(公務員による汚職)等の処罰、およびそれらへの対処措置などについて定める国際条約
2016年10月現在、署名国は147、締約国は187です。是が非でも、わが国でも加入すべきです。

なぜ日本が加盟できてないのか?という点については、法務省:組織的な犯罪の共謀罪に関するQ&A で法務省によって説明が加えられています。
この条約は、国際組織犯罪対策上、共謀罪などの犯罪化(注)を条約加入の条件としています。しかし,我が国の現行法上の罰則には組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為を処罰する罪がない。
とあります。では、ここで加盟条件となっている第五条を見てみますと、以下のようになっています。
締約国は、次の一方又は双方の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。 
物質的利益を得ることに関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの 
組織的な犯罪集団の目的等を認識しながら、組織的な犯罪集団の犯罪活動等に積極的に参加する個人の行為 
締約国は、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し、若しくは援助し又はこれについて相談することを犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
という事であり、確かに共謀罪の制定を要求しているのです。つまり、条約を素直に読めば、政府答弁である我が国には共謀罪がないから加入できないというのは正しいです。


一方で、日弁連は反対の立場を取っており、これは以下のサイトにまとめられています。
日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)
詳細はこのサイトをご覧いただくものとして、日弁連は、共謀罪が国内法の法体系を変えると主張しています。さらに、「新たな共謀罪立法なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准することはできます」というスタンスを取っています。

日弁連は共謀罪を成立させずとも加入国が認めれば加入できると主張しています。

しかし、新たな共謀罪立法を行ったことが確認された国はノルウェーとブルガリアの2カ国しかないなどとしていますが、これはブログ冒頭の高橋洋一氏が指摘しているように、「新たに」立法した国という意味です。締結国では既に国内法が準備されていたというのが実態です。

アメリカ合衆国は、州法では極めて限定された共謀罪しか定めていない場合があるとして国連越境組織犯罪防止条約について州での立法の必要がないようにするため、留保を行っています。

セントクリストファー・ネーヴィスは、越境性を要件とした共謀罪を制定して、留保なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准しています。

弁護士会館ビル
ここで日弁連の主張が理解できないのは、共謀罪の成立なく日弁連の提案する国内法の解釈のみを訴えて加入できている国はあるのか否かという事です。日弁連が本当に我々を納得させたいのであれば、共謀罪の存在無くして現存の国内法のみで加入できた例を示し、道筋を提案すべきでしょう。

現状では187の締約国が日本の加入を認めていないのは共謀罪がないからであって、同時に日弁連の唱える国内法の解釈では締約出来ていないという現実があります。

「国際組織犯罪防止条約」に加入してない日本でやりたい放題であろう組織犯罪を一つ想像してみましょう。犯罪収益の洗浄(マネー・ローンダリング)を犯罪化することが共謀罪の一つの要点になります。

資金洗浄といえば、外国為替証拠金取引(FX)をめぐる金融商品取引法違反容疑で大阪府警に逮捕された静岡県の貿易会社代表(41)の顧客向け口座が、北朝鮮の兵器密輸の資金洗浄(マネーロンダリング)に使われていた疑いがあることが2014年8月7日、公安関係者への産経新聞の取材で分かっています。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記直轄の工作機関が運用していたとみられています。国際社会が懸念を深める北朝鮮の資金洗浄の一端が浮かび上がった形となりました。


北朝鮮との武器取引は国連の制裁対象で、資金の流れに対する欧米の監視も強いです。北朝鮮は中東やアフリカ諸国、テロ組織との取引で得た資金を、英独や中国、マカオなどいくつもの口座に小分けし、管理・運用しているとされています。日本の個人投資家の口座はマークされる可能性が低く、洗浄ルートの一つに選ばれたようです。

こうした犯罪が、口座の不正操作などの既存の法律に抵触してなくて立件できずに見逃してしまう事がなくなる事が期待できるなら共謀罪の成立は、素晴らしい事だと思います。逆に、共謀罪がないので、このようなことも見過ごされている可能性も大きいということです。

上の事例など、あくまで金融商品取引法違反容疑で逮捕されたということであり、マネーロンダリングで逮捕されているわけではありません。共謀罪が成立すれば、こうした北朝鮮絡みのマネーロンダリングでも逮捕できることになります。

しかし、良く考えてみると、日本でこのような法律がなかったばかり、日本が北朝鮮による資金の稼ぎどころになったのと同時に資金洗浄の場ともなり北朝鮮の核やミサイル開発の資金を提供先になっていた可能性が多いにあります。

もし、共謀罪が他国と同じように日本にも昔からあれば、このようなことは防ぐことができたかもしれません。そうなっていれば、北朝鮮の核やミサイルの開発がかなり遅れた可能性もあります。

以上のようなことから、日弁連の主張はほとんど根拠がないということが理解できます。

テロ等準備罪(共謀罪)に関しては、日弁連以外にも反対意見がありますが、その全部が根拠が薄弱であり、納得のいくものではありません。

それに関しては、以前にもこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

北朝鮮ミサイル発射「失敗」への不安 「不安定な武力ほど危ないものはない」―【私の論評】核ミサイルがすべて破壊されても北は核攻撃できる(゚д゚)!

北朝鮮の「労働新聞」に掲載された弾道ミサイル発射の模様
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(パレルモ条約)は、そもそもテロ等準備罪のようにテロを対象としたものではないので、テロ等準備罪には反対などいう、全く理解しがたいことを反対派が主張していることを掲載しました。その部分のみを以下に引用します。
リベラル・左派、左翼の連中は、テロ等準備罪には真っ向から反対です。しかし、彼らは北朝鮮による原発テロ攻撃の阻止に関して、絶対に反対なのてじょうか。 
これに関しては、メディアや野党が悪質な印象操作を行っています。彼らは、パレルモ条約は 「テロを対象としたものではない」から、テロを対象とするのテロ等準備罪はおかしいなどとの奇妙な論理を用いて、テロ等準備罪に反対しています。 
 しかし、パレルモ条約は「テロだけを対象としたものではない」ものであり、当然 テロも対象になります。 パレルモ条約とは、当然のことながら、テロも含めて「一定刑以上の重要犯罪の合意」を取り締まるという条約であり、187か国締結(残り10か国程度)しているものです。そうして、残り10 カ国程度のうちの一国が日本なのです。 
パレルモ条約がテロ集団を対象としないという解釈はフェイク
今国会 においては、2003年に署名はしたものの条件を整えられず批准できないパレルモ条約について、 その条件を整えるために政府はテロ準備罪を提出したわけです、そうしてこれは最低条件であるとしているわけです。 
テロであるないに関わらず、「重大な犯罪を行うことの合意」がパレルモ条約の内容であり、目的を限定したものではないのです。 パレルモ条約はテロを対象としていないとするもっともらしい発言は事実ではないのです。 
にもかかわらず、民進党などの野党もこれに対してまでどこまでも反対するのでしょうか。しかし、この緊急事態が目の前に存在するわけですから、百歩譲って北朝鮮によるテロ攻撃の可能性に絞り、当面の北朝鮮の脅威が去るまでの時限立法という形でも良いから賛成するということはできないものなのでしょうか。
このような反対派は、 パレルモ条約は「テロだけを対象としたものではない」ものであるということを「テロを対象にしたものではない」と勝手に解釈を変えて反対しているのです。何というか、これでは国語力の問題であり、反対派には国語力検定でも受けて自分たちの国語力のなさを補っていただきたいと思います。

それから、当然なから民進党も反対のための反対をこれから国会で行なおうとしていようです。それについても、このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【テロ等準備罪】カレー作ったら毒殺準備?…民進が「追及リスト」でイメージ戦略―【私の論評】民進党ブーメラン発売開始しました(笑)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとしして、この記事では、共謀罪の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の審議入りを控え、民進党が追及姿勢を際立たせ始め、金田勝年法相らが国会答弁で明言を避けたとする内容をまとめた40項目の「追及リスト」を作成し、国会論戦で問いただす姿勢をアピールしていることを掲載しました。

このリストというのがあまりにも馬鹿馬鹿しいないようなので、詳細はここでは説明しません。ただし、以下にそのリストやらの一部を掲載します。


この内容、はっきりいえば、民進党は有権者を馬鹿にしているのかと罵倒を浴びせたくなるないようです。

さらに、反対派に共通する反対の理由を以下に述べます。それは、テロ等準備罪を拡大解釈すると「一般人」にもあてはまるのではないかという論法です。

テロ準等備罪 が「一般人」もその対象になるのかという議論 そもそも論として「一般人」の定義があまりにも曖昧です。このようなことで反対する反対派や、国会で質問する議員に対しては、「一般人」の定義を確認すれば済むことだと思います。 

もともとは一般人だった人が、テロリストやテロ団体を支援した時点で一般人とは言えない テロ支援者となります。

また、日本赤軍や過激派への支援をしている人が「一般人」だといえるのかといえば、言えるはずもありません。 その人が過激派などを支援している以外は、一般的な生活を営んでいたとしても、テロ支援者であるということでとても、一般人などとは言えません。欠結局、反対派による「一般人」の定義が曖昧であるだけです。

北朝鮮の工作員による、マネーロンダリングやテロなどが、現実のものになりうる現在では、このような主張をしても説得力がほとんどありません。

野党などが、また2015年当時の集団的自衛権行使を含む安保法制に対して、この法律が通れば戦争になるという論法で大反対をしたようなやり口で、テロ等準備罪に反対したとしても、全く説得力がなく、多くの有権者ももう騙されることはないでしょう。

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