2021年3月9日火曜日

「バイデンは不在大統領」か 演説やフル記者会見の"義務"を果たさないバイデン大統領に疑義―【私の論評】トランプは大統領選キャンペーンを継続し、バイデンはホワイトハウスを担当していないようだ(゚д゚)!

 「バイデンは不在大統領」か 演説やフル記者会見の"義務"を果たさないバイデン大統領に疑義



未だ果たされぬ義務「一般教書演説」

バイデン大統領が誕生して50日が過ぎたが、まだその義務を果たしていないことがある。 


連邦の現状と大統領の見解を議会に示す恒例の「一般教書演説」のことだ。

 ただ、その年に就任したばかりの大統領が「連邦の実情」を演説するのはおかしいというので「両院合同会議での演説」と呼ばれるが、実質上は「一般教書演説」と変わりはない。

 その演説を、バイデン大統領はまだ行なっていないし、いつ行うか予定も立っていないのだ。

 合衆国憲法第二章第3条は、大統領の義務として次のように定めている。

「大統領は、随時、連邦議会に対し、連邦の状況に関する情報を提供し、自ら必要かつ適切と考える施策について審議するよう勧告するものとする。(後略)」(アメリカン・センター訳)

「ジョー・バイデンは不在大統領」

ジョージ・ワシントン初代大統領は、それを口頭で議会に伝達したが、その後1913年までは文書の形で議会に送付されてきた。以後議会の上下両院会議で演説されるようになり、ラジオからテレビで国民にも直接伝えられることになった。

 演説は、大統領の政策の基本理念と優先順位を示すもので、大統領が行う演説としては最も重要なものと考えられている。

 慣例的に1月最後の火曜日に行われ、オバマ大統領が2009年2月9日に、トランプ大統領が2017年2月15日に行なったことはあるが、3月まで演説が行われなかったことは過去に例がない。

 ある意味で、バイデン大統領はその義務を果たさないまま政権運営を行なっているとも言えるわけで、そろそろ疑義を唱える声も上がり始めている。 

ジョー・バイデンは新型コロナウイルスの危機に当たって、また経済問題についても、さらに中国対策についても国民に説くべき時に不在大統領になってしまっている」

 保守派のジャーナリストのチャールス・コンチャ氏はフォックス・ニュースでこう批判している。

記者会見も行わないのは「自信がないからか」?

コンチャ氏はまた、バイデン大統領が就任以来質疑応答を伴う本格的な記者会見をしていないことも指摘し「大統領が記者団の質問に耐えられるか、自信がないからではないか」とも皮肉を言っている。 

バイデン大統領は就任式以来大統領令を発出した際や記念行事などで記者の質問に答えることはあったが、いわゆる「フル記者会見」はまだ一度も行ってはいない。

 記者団と対立していたトランプ大統領の場合でも、2月16日にはホワイトハウスのイーストルームに記者団を集めて本格的な記者会見を行なっている。

 これについてホワイトハウスのジェン・サキ報道官は5日の記者会見で「大統領は歴史的危機に対応していて記者会見をする余裕がないが、今月中にフル記者会見ができるよう努力している」と言っているので、そのうちに実現するかもしれない。

 いずれにせよ、8100万票という歴史的な得票に推されて就任したバイデン大統領だが、その得票に応えるだけの義務はまだ果たしていないようだ。 

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎

【私の論評】トランプは大統領選キャンペーンを継続し、バイデンはホワイトハウスを担当していないようだ(゚д゚)!

トランプ氏は、すでに大統領を辞任しているので、「一般教書演説」をすることはできないですし、する必要もないのですか、実質的にそれに近いことをしています。

それは、先日もこのブログで述べたCPACでの演説です。これについては、このフログでも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
ドナルド・トランプがCPAC2021で基調講演―【私の論評】トランプは未だ意気軒昂(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下のこの記事よりごく一部を引用します。
ひさしぶりのトランプ演説ですが、未だ意気軒昂です。今後の展開が楽しみです。今後も既存の政治家の枠を大きくはみ出た行動で、米国政界をリードしていくのは間違いないようです。

これは、議会において行われたものではないので、聴衆の反応をみると、まるでトランプによる大統領選挙キャンペーンのようなものにも見えます。これに比較すると、バイデンはもうすでに退場した人のような有様です。この記事でお約束した、この演説の全文の動画と原文とその翻訳を以下に掲載します。

Speaker 1: (00:00)
USA USA USA USA USA.

Donald Trump: (01:24)
Well, thank you very much. And hello, CPAC. Do you miss me yet? Do you miss me yet? A lot of things going on.

ドナルド・トランプ (01:24)
ありがとうございました そして、こんにちは、CPAC。まだ私がいなくて寂しい?まだ私がいなくて寂しい? 多くのことが起こっている。

Donald Trump: (01:36)
There's so many wonderful friends, conservatives and fellow citizens in this room and all across our country. I stand before you today to declare that the incredible journey we've begun together, we went through a journey like nobody else. There's never been a journey like it. There's never been a journey so successful. We began it together four years ago, and it is far from being over. We've just started.

ドナルド・トランプ (01:36)
この部屋には多くの素晴らしい友人 保守派や仲間の市民がいます そして全国各地にも 私は今日皆さんの前に立って 宣言します 私たちが共に始めた信じられない旅は 他の誰もが経験したことのないような旅をしました こんな旅は初めてです これほど成功した旅はない 私たちは4年前に一緒に始めましたが、まだ終わったわけではありません。私たちはまだ始まったばかりなのです。

スピーカー1: (02:04)
アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ

Donald Trump: (02:11)
Our movement of proud, hardworking, and you know what? This is the hardest working people, hard working American Patriots is just getting started. And in the end we will win. We will win.

ドナルド・トランプ (02:11)
誇りを持って勤勉に働く私たちの運動は 勤勉な働き者、勤勉なアメリカの愛国者たちの動きは始まったばかりです。そして最後には我々は勝つでしょう 私たちは勝つでしょう。

Donald Trump: (02:29)
We've been doing a lot of winning as we gather this week, we're in the middle of a historic struggle for America's future, America's culture, and America's institutions, borders, and most cherished principles. Our security, our prosperity, and our very identity as Americans is at stake, like perhaps at no other time.

ドナルド・トランプ (02:29)
私たちは今週集まったように 勝利を重ねてきました 私たちはアメリカの未来、アメリカの文化、 アメリカの制度、国境、そして最も大切にしてきた原則のための 歴史的な闘争の真っ只中にいます。私たちの安全保障、私たちの繁栄、そしてアメリカ人としての私たちのアイデンティティは危機に瀕しています。

Donald Trump: (02:56)
So no matter how much the Washington establishment and the powerful, special interests may want to silence us, let there be no doubt. We will be victorious. And America will be stronger and greater than ever before.

ドナルド・トランプ (02:56)
だから、ワシントンの組織と強力な特殊利権者がどれだけ我々を黙らせようとも、疑いの余地はありません。我々は勝利するでしょう そして、アメリカはこれまで以上に強く、偉大になるでしょう。

Donald Trump: (03:18)
I want to thank my great friends, Matt and Mercedes Schlep. Matt, thank you. Thank you. Mercedes, thank you very much. And the American Conservative Union for hosting this extraordinary event. They're talking about it all over the world, Matt. I know you don't like that, but that's okay, all over the world.

ドナルド・トランプ (03:18)
私の偉大な友人 マットとメルセデス・シュレップに感謝します マット ありがとう ありがとうございます。メルセデス、ありがとうございました。保守連盟にも感謝します 世界中で話題になってるわ あなたがそれを好きではないのは知っていますが、それは大丈夫です、世界中で。

Donald Trump: (03:39)
I also want to pay my love and respect to the great Rush Limbaugh who is watching closely and smiling down on us. He's watching and he's loving it and he loves Catherine. Catherine, thank you for being here, so great. Thank you Catherine. He loved you, Catherine. I will tell you that. Fantastic. Thank you Catherine very much.

ドナルド・トランプ (03:39)
また、間近で見ていて、私たちを見下ろして微笑んでいる偉大なRush Limbaughにも愛と敬意を表したいと思います。彼は見ていて、彼はそれを愛していて、彼はキャサリンを愛しています。キャサリン、ここにいてくれてありがとう、とても素晴らしい。ありがとうキャサリン。彼はあなたを愛していたのよ、キャサリン。私はあなたにそれを伝えるでしょう。素晴らしいわ。ありがとうキャサリン、非常に多くの。


Donald Trump: (04:15)
To each and every one of you here at CPAC, I am more grateful to you than you will ever know. We're gathered this afternoon to talk about the future of our movement, the future of our party, and the future of our beloved country.
 
For the next four years, the brave Republicans in this room will be at the heart of the effort to oppose the radical Democrats, the fake news media, and their toxic cancel culture. Something new to our ears, cancel culture. And I want you to know that I'm going to continue to fight right by your side. 
We will do what we've done right from the beginning, which is to win. We're not starting new parties. They kept saying, he's going to start a brand new party. We have the Republican party. It's going to unite and be stronger than ever before. I am not starting a new party. That was fake news, fake news.

ドナルド・トランプ (04:15)
CPACに来てくれた皆さん一人一人に感謝しています 今日の午後は運動の未来、党の未来、愛する国の未来について話すために集まっています。
 
これからの4年間、この部屋にいる勇敢な共和党員たちは、急進的な民主党、フェイクニュースメディア、そして彼らの有害なキャンセル文化に対抗するための努力の中心となるでしょう。 
私たちの耳には新しい何か、キャンセル文化。私はこれからも皆さんの側で戦い続けます 最初からやっていたことをやります勝つために。新しい政党は作らない 新党を立ち上げると言っていたが 共和党がある 共和党は団結してこれまで以上に強くなるだろう 私は新党を立ち上げるつもりはない あれはフェイクニュース、フェイクニュースだった。


Donald Trump: (05:22)
No. Wouldn't that be brilliant? Let's start a new party and let's divide our vote so that you can never win. No, we're not interested in that. No we have tremendous, Mr. McLaughlin just gave me numbers that nobody's ever heard of before, more popular than anybody.
 
That's all of us. It's all of us. Those are great numbers. And I want to thank you very much. Those are incredible numbers. I came here and he was giving me 95%, 97%, 92%. I said, they're great. And I want to thank everybody in this room and everybody all throughout the country, throughout the world, if you want to really know that. Thank you though. Thank you.

ドナルド・トランプ (05:22)
いや、それは素晴らしいことではないでしょうか?新党を立ち上げて票を分けましょうあなたが絶対に勝てないように そんなことには興味はありません マクラフリン氏は誰も聞いたことのない数字を出してくれた誰よりも人気があるんだ。
 
それが私たち全員です 全員だ 素晴らしい数字です とても感謝しています 信じられないような数字です。私はここに来て、彼は私に95%、97%、92%を与えていました。私は「素晴らしい」と言いました この部屋にいる全員に感謝します そして、この部屋にいる全員と 国中、世界中の全員に感謝します もし、あなたが本当にそれを知りたいならば ありがとうございます ありがとうございます。


Donald Trump: (06:02)
We will be united and strong like never before. We will save and strengthen America. And we will fight the onslaught of radicalism, socialism, and indeed it all leads to communism once and for all. That's what it leads to. You'll be hearing more and more about that as we go along. But that's what it leads to. You know that. We all knew that the Biden administration was going to be bad. But none of us even imagined just how bad they would be and how far left they would go. He never talked about this. We would have those wonderful debates. He would never talk about this. We didn't know what the hell he was talking about actually.

ドナルド・トランプ (06:02)
我々はかつてないほど団結して強くなるだろう。我々はアメリカを救い、強化します。そして我々は過激主義の猛攻と戦うでしょう社会主義、そして実際にすべてが共産主義につながります。それはそれが導くものです。そのことについては、もっともっと聞くことになるでしょう。しかし、それはそれが導くものです。分かってるだろ バイデン政権が悪くなるのは分かっていたが だが誰も想像もしていなかった彼らがどれほど悪くなり左翼になるか 彼はそんな話をしなかった 素晴らしい討論会をしたのに 彼はこれについては決して話しませんでした。私たちは、彼が実際に何を話していたのか分からなかったのです。

Donald Trump: (06:48)
His campaign was all lies. Talked about energy, I thought I said, "This guy actually, he's okay with energy." He wasn't okay with energy. He wants to put you all out of business. He's not okay with energy. He wants windmills, the windmills. The windmills that don't work when you need them.
 
Joe Biden has had the most disastrous first month of any president in modern history. That's true. Already the Biden administration has proven that they are anti jobs, anti-family, anti borders, anti energy, anti-women, and anti science. In just one short month, we have gone from America first to America last. You think about it, right? 
America last. There's no better example than the new and horrible crisis on our Southern border. We did such a good job. It was all worked. Nobody's ever seen anything that we did. And now he wants it all to go to hell. When I left office just six weeks ago, we had created the most secure border in us history.

ドナルド・トランプ (06:48)
彼の選挙運動は全て嘘だった エネルギーの話をしていて思ったんだけど "彼は実際にはエネルギーに強いんだ "ってね 彼はエネルギーは大丈夫ではなかった。彼はあなたのビジネスのすべてを排除したいと思っています。彼はエネルギーは大丈夫じゃない 彼は風車を欲しがっている。必要な時に働かない風車だ。
 
バイデンは史上最も悲惨な最初の1ヶ月を過ごしました 確かに すでにバイデン政権は反雇用、反家族、反国境、反エネルギー、反女性、反科学であることを証明しています。わずか1ヶ月でアメリカ第一から最後のアメリカになった 考えてみてください。 
最後のアメリカ 南部国境での新たな恐るべき危機に勝るものはありません。我々は良い仕事をした 全てがうまくいった 誰も我々がしたことを見たことがない そして今、彼はそれを全て地獄に落とすことを望んでいます。私がちょうど6週間前にオフィスを去ったとき、我々は歴史上最も安全な国境を作成していました。

Donald Trump: (08:06)
We had built almost 500 miles of a great border wall that helped us with these numbers because once it's up, they used to say, "A wall doesn't work." Well, you know what I've always said, walls and wheels.
 
Those are two things that will never change. The wall has been amazing. It's been incredible and little sections of it to complete, They don't want to complete it. They don't want to complete little sections in certain little areas. They don't want to complete. But it's had an impact that nobody would have even believed. 
It's amazing considering that the Democrats' number one priority was to make sure that the wall would never, ever get built, would never, ever happen, would never get financed. We got it financed. We ended catch and release, ended asylum fraud, and brought illegal crossings to historic lows. 
When illegal aliens trespass across our borders, they were properly caught, detained and sent back home. And these were some rough customers. I want to tell you some rough customers were entering our country.

ドナルド・トランプ (08:06)
国境の壁を500マイルに渡って 築き上げてきました それがこの数字を支えています なぜなら、壁が完成した後は 「壁は効かない」と言われていたからです。 私がいつも言っていることを知っているだろう。壁と車輪だ それは決して変わらない 壁は素晴らしい 完成させようとしたが 完成させようとしなかった。 特定の小さなエリアの 小さなセクションを完成させたくない。 彼らは完成させたくないんだ。
 
しかし、誰も信じられないほどの影響力を持っています。民主党の第一の優先事項は壁を絶対に作らせないことだったのに、壁は絶対に作らせない、絶対に起こらない、絶対に起こらない、絶対に財源にならない。我々は資金を調達した 私たちはキャッチ&リリースを終了させ、亡命詐欺を終了させ、歴史的な低水準に不法入国をもたらしました。 
不法入国者が国境を越えて不法侵入した時、彼らは適切に捕らえられ、拘留され、帰国させられました。そして、これらは、いくつかの荒い顧客でした。私は、いくつかの荒い客が私たちの国に入ってきていたことをお伝えしたいと思います。

Donald Trump: (09:16)
It took them the new administration only a few weeks to turn this unprecedented accomplishment into self-inflicted humanitarian and national security disaster by recklessly eliminating our border, security measures, controls, all of the things that we put into place.
 
Joe Biden has triggered a massive flood of illegal immigration into our country, the likes of which we have never seen before. They're coming up by the tens of thousands. 
They're all coming to take advantage of the things that he said that's luring everybody to come to America. And we're one country. We can't afford the problems of the world, as much as we'd love to. We'd love to help. But we can't do that. So they're all coming because of promises and foolish words.(動画では、上記演説文最後の、…foolish words. のあたりが 8:48 です。)

ドナルド・トランプ (09:16)
新政権はわずか数週間で、この前代未聞の成果を 自業自得の人道的・国家安全保障上の災害に変えました 無謀にも国境を排除し、安全対策、管理、われわれが設置したすべてを変えたのです。
 
ジョー・バイデンは不法移民の大洪水を引き起こしましたこれまでに見たことのないようなものです 何万人も集まってきています 彼が言ったことを利用して アメリカに来るように誘っています 我々は一つの国だ 世界の問題を抱えている余裕はありません。私たちは助けたいと思っています。しかし、私たちはそれを行うことはできません。だから、約束や愚かな言葉のせいで、みんな来ているのです。

演説の文章は、動画の 8:48 まで。。。・・・and foolish words. (8:48)まで。
この状況をみていると、ジョー・バイデン氏は、副大統領候補になるカマラ・ハリスに大統領職を禅譲する「つなぎの大統領」になってしまうのかとの疑念を抱かざるを得ません。

バイデンとカマラ・ハリス

そうして、これには決して根拠がないわけではありません。77歳のバイデン氏は、今回当選すれば二期目の再選には出馬しないと周辺に漏らしていたと伝えられ、そのためにも副大統領は「すぐにでも大統領職を譲れる人物」を選ぶべきだと考えていたと言われています。

事実、2019年4月末にはオンラインの資金集め集会で次のように語っていました。
「私は“つなぎ”役だと思っています。ピート市長のような人物を政権に入れるための候補者なのです」
ピート市長とは、この時すでに民主党の大統領候補選抜から脱落していたピート・ブティジェッジ氏のことですが、その人選よりも"つなぎ”(transition)と言う言葉が関係者の関心を集めていました。

さらに、ハリス氏を副大統領候補に起用すると支持者に知らせたメールの一文が、バイデン氏の政権禅譲の憶測に拍車をかけることになりました。
「私はカマラ・ハリスがトランプとペンスとの戦いを助け、その後2021年1月以降は、この国を導いてゆく最善の選択だと考えた」
ここは「2021年1月以降は、この国を導いてゆく私を助ける最善の選択」としないと、ハリス副大統領が大統領を差し置いて国を導いて行くことになってしまいます。

歴代の米国大統領の中で自らその職を退いたのは、ウォーターゲート事件で弾劾されて辞任したリチャード・ニクソン第37代大統領だけです。もしバイデン氏が任期中に健康上の理由などで辞任するとなれば、「強制されずに辞任した最初の大統領」ということになります。

バイデン氏には、一期目を全うして二期目に出馬しないという選択肢もあるが、それでは後任者が一から選挙運動を立ち上げなければならないです。後継者がいったん大統領となり再選を図る方が有利だというのだろうが、それではバイデン政権はほぼ3年で終わり、本当に“つなぎ”役の大統領になってしまいます。

ハリス氏起用直前に世論調査会社ラスムッセンが行った調査では、有権者の59%が「もしバイデン氏が当選しても、4年以内に副大統領がとって代わっているだろう」と回答していました。それも共和党支持者だけでなく、民主党支持者も49%がそうなると考えていることを示していました。

バイデンとオバマ

現状では、バラク・オバマ、スーザン・ライス、カマラ・ハリスは、弱体化した大統領に対して過度の影響力を行使する可能性があります。これは、バイデン政権に関連する最も影響力のある人物のほんの一部です。ジョー・バイデンはホワイトハウスを担当していないようです。

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2021年3月8日月曜日

米中経済、第二次冷戦で共倒れ→日本経済「独り勝ち」の可能性 歴史が示す法則 大原浩氏緊急寄稿―【私の論評】日本経済は早期に回復し、それどころか黄金期を迎える(゚д゚)!

 米中経済、第二次冷戦で共倒れ→日本経済「独り勝ち」の可能性 歴史が示す法則 大原浩氏緊急寄稿

習主席


 「ジョー・バイデン政権下で米国経済に暗雲が立ち込め始めている」。そう指摘するのは国際投資アナリストの大原浩氏だ。大原氏は緊急寄稿で、「第二次冷戦」で米中経済が共倒れするリスクがあるなか、これまで未曽有の危機や世界の冷戦下で復活してきた日本経済が「独り勝ち」する可能性を指摘する。

 米国のダウ工業株30種平均は、1990年代前半の数千ドルから3万ドル台まで基本的に上昇を続けてきた。最大の恩恵を受けたのが1993年以降の民主党のビル・クリントン、共和党のジョージ・ブッシュ、民主党のバラク・オバマの各政権だ。3人は党派を超えて、経済成長の果実をもぎ取る「金権政治」が特徴だと筆者は考える。

 果実の種は、実は1981~89年のロナルド・レーガン政権時代にまかれたものだ。71年の「金・ドル交換停止」(ニクソン・ショック)は、米国の衰えを如実に示した。ベトナム戦争の後遺症もあってボロボロになった米国に「自由主義」と「自信」を取り戻し、経済活性化の荒療治を行ったのがレーガン大統領だった。現在では、90年代以降の米国の発展はレーガン政権の基本施策のおかげというのが共通認識になっている。

 その後の約四半世紀で生じたひずみの是正を求めた米国民の意思として2016年に当選したのがドナルド・トランプ大統領だった。「トランプ減税」などで米国経済を支えたが、4年後にバイデン氏が大統領に就任したのが厄災だといえる。


 日経平均は1989年に4万円に迫った後は下げ続け、2009年3月には7054円を記録した。しかし、12年の安倍晋三政権の誕生とともに再び上昇し始め、単純なポイントの比較でダウの3万ドル近辺に迫る3万円を一時回復した。

 1990年代後半にダウが日経平均を上回ったのはその後を暗示していた。拙著『勝ち組投資家は5年単位でマネーを動かす』(PHP研究所)を参照してほしい。


 日本の発展は50年の朝鮮戦争で冷戦に突入した時にスタートし、89年のベルリンの壁崩壊、91年のソ連崩壊など冷戦終結とともにバブル崩壊した。米中冷戦の現在は追い風かもしれない。日本は欧米による植民地化の危機を「明治維新」で乗り切った後、日清・日露戦争に勝利して世界の強国の仲間入りをした。第二次世界大戦で無条件降伏したが、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまで呼ばれる経済大国に上り詰めた。

 日本の大発展は「未曽有の危機」に立ち向かうところから始まる。米中冷戦やコロナ禍は、日本の「黄金時代復活ののろし」なのかもしれない。

 習近平政権も経済は青息吐息で、バイデン政権と共倒れになることもありうる。かつての冷戦時代と同じように「日本独り勝ち」になる可能性が十分あるのではないか。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】日本経済は早期に回復し、それどころかいずれ黄金期を迎える(゚д゚)!

最近の経済統計をふりかえってみます。内閣府が発表した2020年10月から12月までの国内総生産(GDP)は2期連続のプラスとなる一方、2020年1年間では前年と比べマイナス4.8%と、リーマンショック翌年の2009年以来、11年ぶりのマイナスとなりました。

10~12月期は前の3ヵ月と比べると実質でプラス3.0%ということになっています。ただ、4~6月期のマイナスが響いたというところはあります。 それにしても、ずいぶん回復して来たと思います。10~12月期は2%くらいだという予想が多かったので、そういう意味では予想以上でした。



Go To キャンペーンを実施したので、飲食などが伸びたことが影響したのだと思います。私自身は、当初はGoToキャンペーンについては、懐疑的だったのですが、実際に実施した後の統計ではかなり筋の良い対策でした。さらに、GoToによる日本新の国内移動は、全体の1%にも満たないとされています。全体ではマイナス4.8%でしたが、リーマンショック後のマイナス5.7%よりは少ないです。

それと、経済統計を見るときには、日本だけでなく、米国やEUも一緒に見るべきです。中国の統計は、もともと出鱈目ですから、これは見るとかえって現実がわからなくなります。それと、 全部の数字が揃ったので、10~12月期で比べると1年前(2019年)と比べて同期がどうだったかを見るのがいちばんみやすいです。

そのような見方をすると、日本は1年前の10~12月期と比べて、2020年の10~12月期のGDPはほぼ同じでマイナス1%程度です。

同じような見方をすると、米国はマイナス2.5%です。ヨーロッパはマイナス5%です。日本がいちばん回復しています。それは財政出動の規模によって、説明できてしまいます。

そういう意味では、日本政府はかなり努力したといえます。コロナの感染率なども、米国やEUと比較すると格段に良いです。経済も良いし、コロナ対策の効果も方も良いといえます。

2020年1年間では、米国はマイナス3.5%で、ドイツがマイナス5%てす。イギリスはマイナス9.9%と10%近くになっていることを考えると、日本のマイナス4.8%はかなり踏みとどまった方であるとえます。 

そうして、回復もいちばん早いし、コロナ対策と経済を合わせて2つの成績で見ると、日本は先進国のなかで断トツの上位です。 


10~12月期で比較すると、2019年の10~12月は消費増税の直後だったということもあります。 直後だったので、増税で落ちたわけですからその分だけ回復がいいとも言えます。しかし、総じて見ると、増税などとは関係なく悪くはないです。 

あれだけ断続的に感染が拡大して、経済が止まっていたことを考えると「よくやった」といえます。 しかも、大規模な財政出動をして増税が必要ない現状からいうと、増税等もともと必要なかったと言い切れます。当初は補正予算が大きすぎるなどと、マスコミから批判されましたが、現状の日本の経済をみれば、正しかったことが証明されたともいえます。

一方で、株価が相当上がっていて、3万円台を回復しました。緊急事態宣言が出た少し前に、底値では株価が2万円を割った時期がありました。そこから考えると1.5倍くらいになっているということになります。 これは、30年ぶりのことです。 株価はなぜ上がるのかと言えば、半年後以降の先を見ているからです。半年後以降になれば、コロナがかなり収束して落ち着くだろうと市場はみているわけです。

コロナがある程度収束すれは、いままでコロナ禍によって需要がなかった飲食や旅行はかなり伸びるだろうと予想しているのです。 

2021年の後半は相当経済が回復するという読みがあるから、株が上がるわけです。現状の株価は、「バイアンドホールド」と言って、持っているだけで儲かるというレベルです。

2021年後半から経済が上昇して行くということを考えると、諸外国ではそれと共にインフレ率が上がるのではないかと言われていますが、 日本はまだそこまで上がっていないので。逆に言うと、まだ財政出動の余地があるということです。

インフレ率が上がらなければ、中央銀行が国債を買っても何も問題はありません。そういう意味では、インフレ率がもう少し上がった方が良いといえます、逆に言うと、それは「財政出動の余地がある」と捉えられます。

日本では、平成年間においてはそのほとんどの期間を日本政府は増税などはじめ、緊縮財政ばかりしてきました。日銀は、金融引締ばかりしてきました。そのため、日本は深刻なデフレに見舞わてきました。このデフレ傾向は未だに十分解消されていません。

そのため、現状でさえ物価目標2%は未だ一度も達成されていません。まさに、日本はまだまだ大型財政出動をしても、さらなる量的金融緩和をしても、しばらくはインフレになる可能性はありません。

EUも米国においても、コロナ禍以前から、財政出動、金融緩和を続けてきました。今回のコロナ禍の経済対策で、財政出動を継続し続ければ、日本よりも早い時期に、インフレになる可能性が高いです。中国においては、以前もこのブログに掲載したように、国際金融のトリレンマによって、金融緩和ができない状況です。コロナ禍によって雇用が激減しているときに、金融緩和ができないわけですから、なんというか、問題外なわけです。

そうなると、米国・EUもいずれ、日本よりはずっと早い時期にインフレ率が高まり、大規模な財政出動ができなくなる可能性が高く、中国は雇用改善のための、金融緩和すらできないという状況ですから、コロナ禍後の回復は日本が一番早く、その後にも様々好条件が重なれば、日本は黄金時代を迎えることになります。

ただ唯一の危惧は、平成年間にみられたように、頭の悪い財務省がやる必要のない増税などの緊縮財政をしてみたり、日銀が金融引締に走るなどという馬鹿マネを繰り返した場合には、また日本はデフレになり、回復も遅れることになりかねません。

実際リーマンショックの時は、世界の他の国々が金融緩和に走ったにも限らず、日銀だけはそうではなく、そのため日本は深刻なデフレと円高に見舞われました。そうして、その後日本だけが、回復が遅れ一人負けの状況になりました。

ただし、平成年間とは違うことがあります。それは、以前のこのブログに掲載したように、まずは新聞が今後10年で消滅しますし、テレビ局もかなり収益が減って、両メディアとも財務省のスポークスマン的役割ができなくなるということがあります。これでは、無知蒙昧ともいえる大増税攻勢、大金融引き締め攻勢も半減します。


それに、この10年にわたり、日本の数少ないまともな経済学者らは、役たたずの無駄飯食いの日本の主流の東大を頂点とする経済学者らの間違いを指摘し続けてきました。それに伴い、私のブログのようなブログ等がそれらの主張をとりあげ、財務省・日銀の間違いを何度も掲載してきました。SNSでもそのようなことをする人も増えてきました。

そのようなことから、今後日本が、過去の平成年間のように、財政政策や金融政策を間違い続けるということは、考えにくくなってきました。これが、過去10年間の成果ともいえます。

そういうことを考えると、日本経済は間違いなく回復し、それどころか、黄金期を迎えることになる可能性は大きいといえます。





2021年3月7日日曜日

海警法「国際法に合致」 対日関係重視、対話解決訴え―中国・王毅外相―【私の論評】日本の潜水艦隊は、今日も海中の最前線で戦い、日本を中国から守っている(゚д゚)!

 海警法「国際法に合致」 対日関係重視、対話解決訴え―中国・王毅外相


 中国の王毅外相は7日の記者会見で、沖縄県・尖閣諸島周辺で頻繁に活動する海警局の武器使用権限を定めた海警法に関し「特定の国を対象にしたものではなく、完全に国際法に合致する」として、正当性を訴えた。一方で、王氏は日中関係を重視し懸案を対話で解決していく方針を強調した。

 海警法が2月に施行された後、日本では海警局による武器使用への懸念が高まっている。これに対し、王氏は「武力によらず、海上の紛争を友好的に話し合いで処理することが中国政府の一貫した立場だ」と主張した。


 王氏は「中日関係の改善は両国民だけでなく地域の平和と安定にプラスだ」と指摘。「あらゆる問題について双方は対話を通じて理解を深め、信頼を築くことができる」と語った。


 また、今夏の東京五輪・パラリンピック、来年の北京冬季五輪・パラリンピックに関し「双方は互いに支持し、友好を深める機会とするべきだ」と述べた。習近平国家主席の訪日への言及はなかった。


【私の論評】日本の潜水艦隊は、今日も海中の最前線で戦い、日本を中国から守っている(゚д゚)!


岸防衛相は26日の閣議後の記者会見で、中国の海上保安機関・海警局などの船が沖縄県の尖閣諸島に上陸する目的で島に接近した場合、「凶悪な罪」だと認定し、自衛隊が、相手を負傷させる可能性のある「危害射撃」を行える場合があるとの見解を示しました。 

危害射撃の法的根拠として、岸氏は警察官職務執行法7条を挙げました。具体的にどのような場合に認められるかは、「海警の船舶がどのような行動をとるかによって変わってくる。個別の状況に応じて判断する」と述べるにとどめました。

海警船の領海侵入などには、海上保安庁が対処できない場合に限り、防衛相が海上警備行動を発令して自衛隊が対応に当たります。

海上警備行動で自衛隊に認められる武器の使用基準は、警職法7条などが準用されます。同条項は正当防衛と緊急避難のほか、3年の懲役・禁錮以上の「凶悪な罪」の現行犯を制圧する場合などに限り、危害射撃を認めています。

先月25日の自民党の国防部会などの合同会議で、政府側は海上保安庁の海上保安官が、「凶悪な罪」を理由に海警船などへ危害射撃できる場合があるとの法解釈を示していました。加藤官房長官は26日の記者会見で、海保による危害射撃が認められるケースについて、「非常に精緻せいちな整理をしなければならない」と述べました。

警職法に基づく武器の使用は国内法の執行などに必要な範囲での実力行使であり、外国からの武力攻撃に対する自衛権に基づく武力行使とは区別されています。

以上は、あくまで、尖閣諸島付近においての小競り合いを想定した発言だと思います。

しかし、本格的な戦闘になった場合はどうなるのでしょうか。その場合にも、日本は備えをしていて、中国海軍といえどもそれを簡単に打破することはできません。

尖閣を含む南西方面などで、海自は今日も中国潜水艦との熾烈な戦いを繰り広げています。日本の海自だけでありません。東、南シナ海の周辺国では今、潜水艦を巡る争いが激化しているのです。日米中国は無論のこと、他国の潜水艦も加わり、争いが激化しているのです。無論、争いとはいっても、本当に魚雷などで打ち合っているという意味ではありません。情報収集をしたり、互いに相手を牽制しあったりなどをしているということです。

たとえば、日米の潜水艦隊は、すでに中国の空母何度も模擬訓練で撃沈しています。無論、中国海軍の探索を乗り切った上で、何度も模擬訓練で撃沈しているのです。もちろん、中国の潜水艦に対しても何度も模擬訓練で撃沈していることでしょう。

潜水艦乗組員たちが、今日も海中の最前線で戦い、日本を守っている

このブログにも掲載したように、12月3日には、台湾で初の国産潜水艦の着工式典が開催された。第二次世界大戦時建造の米国製潜水艦では中国潜水艦には太刀打ちできないためです。また、南シナ海で中国の相次ぐ人工島建設に困っているフィリピンは、フランスから潜水艦を導入する可能性が高まりました。このブログでも掲載したように、台湾が日本の潜水艦に迫る潜水艦を製造できれば、今後数十年間にわたり中国の侵入を阻止できます。

そうして海自は昨年10月14日、最新型3000tの潜水艦のたいげい型潜水艦1番艦「たいげい」を、三菱重工業神戸造船所で進水させました。

「大きな鯨=大鯨(たいげい)」に由来するこの最新型潜水艦は、そうりゅう型11番艦『おうりゅう』から採用された蓄電と放電の効率がよいリチウムイオン電池と、シュノーケルによる吸排気で発電できる新システムにより長期潜水行動が可能になりました。さらに、敵艦を探知するためのセンサー(ソナーシステム)が新開発により開口拡大し、探知能力が格段に向上しています。

特筆すべきは、このたいげいから、艦内の男女の動線が整理され、女性隊員が安心して乗艦できるようになったことです。

また、そうりゅう型から採用されたX舵の採用で水中での運動性が高まり、海底に着底する時でも舵が痛むことがありません。X舵と十字舵で大きく違うのは操作性で、少ない操作で細かな動きが出来ます。

南西諸島東側の西太平洋には最深部7000mの海溝がありますが、西側の尖閣諸島のある東シナ海の平均深度は180mです。海自潜水艦隊の主戦場である浅海の東シナ海に、そうりゅう型潜水艦は最適です。

呉基地に出動待機する最新鋭X型舵が特徴的なそうりゅう型潜水艦。AIP式で長期の潜水行動が可能。左から三番目がリチウムイオン電池搭載の11番艦おうりゅう

日本は戦略兵器を持っていませんが、潜水艦は唯一、戦略兵器に近い性格の装備です。潜水艦は実は最強の海軍兵器で、究極のステルス艦です。特に日本の潜水艦は、ステルス性に関しては、世界一です。

探知は難しく、魚雷一発で空母、揚陸艦などの艦艇を無能化できます。そのため、敵艦隊はその海域に潜水艦が一隻でもいると入って来ません。その海域にいるかいないかをあやふやにするのが、海自潜水艦部隊のコンセプトです。そうして、このコンセプトは、対中国において、最も効果があります。なぜなら、中国の対潜哨戒能力は、日米に比較してかなり劣っているからです。

これは陸戦ならば、凄腕の狙撃手が一個歩兵大隊を足止めできるのと似ています。狙撃手であり、忍者であり、切り札となるのが海自の潜水艦隊です。有事のとき、日本の潜水艦隊がどう戦うのかをシミュレーションしてみます。

偵察衛星、無線傍受、サイバー情報戦、その他等で得たインテリジェンス情報から、中国海軍が尖閣奪取必至と判断され、中国沿岸基地では海軍の出動準備がなされたとの情報が入ったとします。

南西諸島各港に前方配備されたFFM2くまのクラスが、数隻全力で尖閣北方海域に出撃。そこで、左舷後方ハッチから機雷をばら撒くと、今度は全速で南下し、掃海母艦と合流。海自のFFM艦隊と掃海母艦が尖閣付近に機雷原を作り、南西諸島各海峡を機雷封鎖します。

空母いずもとイージス艦まやの機動艦隊が南西諸島東側海域に入ったとき、そうりゅう型潜水艦、たいげい型潜水艦は青島、上海の軍港と南西諸島の間に潜んで、中国空母艦隊を牽制します。

現在、中国空母は対潜哨戒機を持たず、艦載機J15も対潜爆弾を持っていません。護衛しているフリゲート艦たちの対潜能力も低いので、中国空母近くに海自潜水艦が行ければ、確実に撃沈できます。

海上自衛隊は長年、ソ連潜水艦と戦って来て、その対潜哨戒能力のレベルは恐ろしいほど高いです。その経験を対中潜水艦戦に投入していますから、浅海に潜む音の大きい中国潜水艦はそうりゅう型搭載の18式魚雷で撃沈できます。

クリックすると拡大します

上の写真は、呉基地に集合した海自の主力艦です。手前の潜水艦2隻が、そうりゅう型しょうりゅう(左)、そうりゅう型おうりゅう(右)。後方左の艦番号179が最新鋭イージス艦まや。おうりゅうの右上にマストが見えるのが、将来F35Bを搭載する空母いずも型かが。写真右の艦番号229が、FFMに移行する旧型艦のあぶくま型護衛艦あぶくま。もしここにFFM2くまのがいれば、尖閣有事の際に出撃する海自艦隊の全艦艇となります。

現在、海自の方が中国より戦闘力はかなり高いです。海中戦は日本のほうが有利です。そこに18式新魚雷を搭載した、たいげい型が投入されれば盤石です。

これに対して中国海軍は六隻の093型潜水艦に静粛性を高めた改造を施し、さらに現在、新型潜水艦095型を建造中です。この両型は原子力潜水艦であるため、構造上はどうしてもある程度騒音が出るため、ステルス性では劣ります。

海中での行動期間は原潜だけあって、海自のそうりゅう型、たいげい型をはるかに上回っています。とはいいながら、新型の「そうりゅう」型潜水艦からは、鉛蓄電池とAIPを設置している空間に大型のリチウムイオン電池を積むことで、それまで最大2週間程度だった潜航期間が「格段に伸びる」とされています。リチュウムイオン電池は鉛電池に比べ蓄電量が2.5倍あり、高速航行に適しています。

それに、原潜といえども、乗組員は人間ですから、いくら長期間潜航できるし、水や空気は海水から原子力のエネルギーで精製できるとはいいながら、食料は補給しなければならないのと、乗組員は適切な期間をおいて交代しなければなりませんし、定期的に艦もメンテナンスが必要です。

そうなると、原潜といえども定期的にいずれかの港に寄港しなければならないため、原子力のえるルギーが無尽蔵ともいえるほどに、長期間使えるということ自体は、あまりメリットはなくなってきました。

中国海軍は、これまで優位だった海自潜水艦戦略に迫ろうとはしています。ただ、日本の潜水艦や対戦能力が中国を上回っている状況今後数十年にわたって、覆すことは不可能です。

最新潜水艦「たいげいに」は、海自で初の女性潜水艦乗員5名が乗船する予定です。大和撫子が日本の海を守るのです。

昨年10月29日海上自衛隊呉基地にて、実習訓練を終え、女性の潜水艦の乗組員が初めて誕生

こうした備えがあれば、中国が本格的に軍事力を行使して、尖閣を奪取しようとしても不可能です。具体的にいえば、尖閣に人民解放軍や民兵が上陸したとしても、尖閣付近に日本が機雷を敷設し、近くの海域に潜水艦が潜み、尖閣諸島を包囲してしまえば、中国軍は補給ができなくなり、陸上部隊はお手上げになるだけです。

航空機による補給も考えられますが、中国の戦闘機はステルス性に劣るため、これもすぐに撃ち落とすことができるので、輸送機を援護することもできません。

そのようなことを知っているからこそ、中国は「海警法」などを作り、王毅外相は、これを「国際法に合法」であるなどと吠えまくり、中国国内向けのプロパガンダをしているとともに、日本がその圧力に負けることを期待しているのでしょうが、それは無理筋というものです。そうして、そのことは日本でもあまり知られておらず、あたかも日本が劣勢であるかのように認識されています。

日本は上で述べたように中国に対する備えをしているのですが、潜水艦の行動は昔からいずれの国においても隠密にするのが普通ですから、この情報があまり一般には普及していないので、国民からみると、政府は尖閣に対して無為無策のようにみえるだけです。

ただし、確かに外交面では自民党には二階氏のように親中派、媚中派の政治家も多いので、ことさら中国との対立を避ける傾向があるのも事実です。そのため、外交面では、中国に対して及び腰にもみえますし、ウイグル人弾圧等に対してもはっきりと、人権侵害であると非難することはしていません。これは、政府も改めていくべきでしょう。それと、日本が中国に対して強力な潜水艦隊を持っていることも、国民にわかりやすくアピールしていくべきでしょう。

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2021年3月6日土曜日

事実上の“中国包囲網”、QUAD首脳会合開催へ 識者「G7より先行して対中路線を先導できる」日本は存在感が求められる局面―【私の論評】日本がクアッド関係国の軍事的危険を、無視するようなことがあってはならない(゚д゚)!

 事実上の“中国包囲網”、QUAD首脳会合開催へ 識者「G7より先行して対中路線を先導できる」 日本は存在感が求められる局面

クアッド4首脳、菅、バイデン、モリソン、モディ

 中国の軍事的覇権拡大に対峙(たいじ)する、戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」を構成する、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国は、今月中旬にも初の首脳会合をオンラインで開催する方向で調整に入った。複数の政府関係者が明らかにした。「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進や、新型コロナウイルスのワクチン普及に向けた協力などを話し合う見通しだ。日本にとっては存在感が求められる局面だ。


 首脳会合には、菅義偉首相や、ジョー・バイデン米大統領、スコット・モリソン豪首相、ナレンドラ・モディ印首相が出席する予定。

 クアッドは、ドナルド・トランプ前政権時の2019年に初の外相会合を開催し、中国を「唯一の競争相手」と位置付けるバイデン政権も4カ国連携を重視している。今年2月には電話で外相会合を行い、中国の力による一方的な現状変更の試みに強く反対する方針で一致した。

 首脳会合が3月になったのは、対中政策で協調する日米豪3カ国と、やや距離を置くインドとの間で調整に時間がかかったためとみられる。

 中国では5日、第13期全国人民代表大会(全人代)が開幕した。習近平政権は「外部勢力からの干渉を断固として防ぐ」として、香港での「民主派排除」につながる選挙制度見直しを進める見込みだ。

 新疆ウイグル自治区での人権弾圧をめぐっても、李克強首相は欧米からの批判を突っぱね、「中華民族共同体意識を確立し、宗教が社会主義社会に適用するよう導く」と強調するなど、強硬姿勢が目立つ。

 中国は2035年までに「軍の現代化」を実現し、今世紀半ばに「世界一流の軍隊」とする目標を定めており、国防費を膨張させている。

 このタイミングでの首脳会合には、どのような意味があるのか。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「重要なポイントは、6月のG7サミット(先進7カ国首脳会議)などに先行して会合が行われることだ。対中国の国際協調路線を先導することができる。中国の名前を出さないまでも、『自由で開かれたインド太平洋』などについて方針を一致させたい。地政学的に最も中国の影響を受けやすい日本も、存在感が求められる重要な局面だ」と分析している。

【私の論評】日本がクアッド関係国の軍事的危機を、無視するようなことがあってはならない(゚д゚)!

今回の、クアッド首脳会談が注目されるのは、やはり初の首脳会談だからでしょう。それ以外であれば、いままでも何度か開催されてきました。先月十八日にも、 「QUAD(クアッド)」の外相会合はオンラインで開催されました。

習近平主席は2015年12月31日、中国建国以来、最大規模となる軍改革の断行を発表しました。これは毛沢東や訒小平でさえ手を付けなかった解放軍の大改革です。

習近平主席が唱える「中国の夢」つまり「中華民族の偉大なる復興」の実現にとって、解放軍は不可欠な存在です。

とくに台湾の併合は中国の夢の核心部分であり、それを実現することにより実績をつけて、毛沢東や鄧小平を超える指導者になることが習近平主席の野望です。

解放軍改革は、2015年12月31日から2020年末までの5か年をかけて実施されてきました。

「中華民族の偉大なる復興」の達成年度は2049年(中国建国100周年の年)であり、この年までに「社会主義現代化強国」を達成し、軍事的には「世界一流の軍隊」の建設を目指しています。

その前段階として2020年までに「解放軍の機械化と情報化」を達成し、2035年までに「国防と解放軍の現代化」を実現すると宣言しています。

解放軍改革によって一挙に米軍に匹敵する実力がある解放軍になるわけではありません。この解放軍改革は、2020年、2035年、2049年という目標年に向かう3段階発展戦略の第1段階として捉えることができます。

「中華民族の偉大なる復興の道筋」


こうした、中国の軍事・経済的影響力拡大に対抗するために安倍晋三前首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想に、ドナルド・トランプ前米大統領が共感して発足した協議体がクアッドなのです。最初に構想したのは、安倍前総理なのです。

このロードマップをみてみると、昨年までには、第二列島線までを確保することになっていますが、現実には台湾・尖閣諸島を含む第一列島線も確保できていません。一方、ロケット軍の創設などには取り組んでいます。一言でいうと、陸上国である中国は、海洋においての試みはロードマップどおりにはいっていません。

そうして、陸上国である中国なのですが、先日もこのブログに掲載したように、中国と小競り合いが続いていたカシミール地方でインドが中国軍を押し返しました。

クアッドは、ジョー・バイデン米政権での継承が懸念されていたのですが、1月28日の日米首脳電話会談で、バイデン大統領は菅義偉首相に継承を伝えていました。同月29日には、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、中国への厳然とした対応を強調し、クアッドによる協力が「インド太平洋地域における米政策の基礎となる」と述べていました。4カ国の外相会合はバイデン政権発足後初となりました。

このブログにも以前掲載したように、クアッドには、英国の参加の可能性が浮上しています。英国政府は、香港問題やウイグル族へのジェノサイドをめぐって中国への対抗姿勢を鮮明にしています。英国は、日本が主導する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を正式申請し、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする部隊を日本の南西諸島周辺に長期派遣することを予定しています。

英空母「クイーン・エリザベス」

ドイツのクランプカレンバウアー国防相は昨年12月12日までに、時事通信の書面インタビューに応じ、日本やオーストラリアなどインド太平洋諸国との連帯を示すため、独連邦軍のフリゲート艦1隻を近くインド太平洋地域に派遣すると表明しました。また、中国の南シナ海での領有権主張に強い警戒感を示し、自衛隊やインド太平洋諸国の軍隊と共同訓練を行う可能性にも言及しました。

先月19日、フランスのパルリ国防相は仏紙フィガロとのインタビューで、フランス海軍の原子力潜水艦エムロードを南シナ海に潜航させたことを強調しました。フランスは仏領ポリネシアやニューカレドニア等を太平洋に保有しており、その排他的経済水域に中国が進出していることに懸念を有しています。

中国が南シナ海で行っているような国際法違反を野放しにすれば、いずれは太平洋の自国領土にも波及する可能性があることから、今回の原子力潜水艦派遣に踏み切ったものと考えられます。同20日には九州西方で仏フリゲート艦プレリアルと海自、米海軍が共同訓練を行いました。

英空母部隊の東アジア来航時、これにドイツ海軍のみならずフランス海軍も加わったら、英仏独というNATO主要海軍国が揃い踏みすることになり、クアッドとの共同訓練で中国に対しては強烈なメッセージを発することができる。

クアッドが、英国が加わった「QUINTET(クインテット=5人組)」に発展すれば、自由社会の対中抑止力は格段に増すでしょう。日本は、英国と米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5カ国が、安全保障上の機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」への参加も望まれています。この両方を日本は何としても、実現すべきです。

自由社会の連携が進み、日本が一定の位置を占めているのも、安倍前政権での安全保障改革で国際的信用度が高まったことが大きいです。国内では猛烈な批判にさらされましたが、特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の限定行使を可能にしなければ、クアッドもファイブ・アイズへの参加もあり得ません。安倍政権は大きな戦略を描き、自由社会結束の基礎をつくったといえます。

クアッドの立役者 安倍前総理

今後は、新・日英同盟の締結やクアッドの同盟化も必要となるでしょう。そのためには、国内体制の整備が不可欠です。自衛隊が海上保安庁と同様に領海侵入などに対処できる「領域警備法」整備は言うまでもありません。さらに、現在限定的な集団的自衛権をさらに拡張することも必要不可欠です。

クアッドの関係国が、軍事的危険にさらされているときに、日本が限定的な集団自衛権しか行使できないとして、関係国の危険を無視するようなことがあってはならないからです。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」するとして、自国防衛の主体性を放棄している現行憲法の改正が欠かせないことも再認識すべきです。

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2021年3月5日金曜日

米国民の約9割「中国は敵か競争相手」 全米調査―【私の論評】既存タイプの政治家バイデンはトランプのように中国との対峙を最優先にすることなく、結局何もできなくなる可能性が高い(゚д゚)!

 米国民の約9割「中国は敵か競争相手」 全米調査

米国と中国の国旗

 米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターは4日、米国にとって中国は「敵」または「競争相手」であるとする回答が計89%に上る一方、「パートナー」と位置付けたのは9%だったとする全米世論調査の結果を発表した。

 また、中国への感情を寒暖で表現した場合、悪感情を意味する「冷たい」が2018年の46%から67%に増加。このうち「非常に冷たい」は23%から47%に上昇したとし、この3年間で米国民の対中感情が急激に悪化していることが浮き彫りとなった。

 中国と「敵」としたのは全体の34%で、保守派の共和党支持者に限れば64%に上った。リベラル派の民主党支持者も71%が中国を「競争相手」であると答えており、中国への警戒感が超党派で高まっていることも分かった。

 バイデン大統領の対中政策については53%が「信頼できる」と答え、「信頼できない」の46%を上回った。ただ、「信頼できる」は民主党支持者で83%に達した一方、共和党支持者では19%にとどまった。

 また、「中国は市民の権利を尊重していない」との回答は90%に上ったほか、70%が「(中国との)経済関係が悪化しても人権問題(の改善要求)を優先すべきだ」と答えた。

 米中関係での深刻な懸案としては「中国からのサイバー攻撃」(91%)との回答が最も多かった。このうち「非常に深刻」と答えたのは65%で、前年に比べ7ポイント増加した。

 続いて「中国の軍事力増強」86%、「対中貿易赤字」85%、「雇用喪失」「中国の人権政策」「中国の技術発展」とも84%-などの順となった。

 調査は2月1~7日、2596人を対象にオンライン形式で実施された。

【私の論評】既存タイプの政治家バイデンはトランプのように中国との対峙を最優先にすることなく、結局何もできなくなる可能性が高い(゚д゚)!

この調査の詳細は、ピュー・リサーチ・センターのサイトからご覧いただけます。そこから、以下に調査をまとめたグラフを以下に掲載します。


ピュー研究所の最新世論調査によると、外交政策問題の中で米国人はジョー・バイデン大統領の中国に取り組む能力に最も不信を示しています。

67パーセントの回答者がバイデンは米国同盟国との関係を向上できると考えている一方で、バイデンの中国への取り組みに信頼を示したのはわずか53パーセントでした。世論調査は米国人の外交政策に関する意見における傾向をより大きく調査したものですが、それによるとバイデンの中国政策に対する信頼はテロリズムと国際貿易を含む他の外交政策の中で最下位となっています。

また回答者は中国に対して史上最低の好感度を報告した。調査対象の約90パーセントは中国を「競争相手または敵」と見なしており、70パーセントはたとえ米国の北京との経済関係を損なうことになったとしても、中国の人権侵害に対するより厳しい取り組みを支持しています。中国に対する「冷たい感情」も2018年から21パーセント増加しました。

中国が主導したサイバー攻撃と中国の人権問題が「非常に深刻」とした回答者は共に20年から7%ポイント増え、それぞれ65%と50%になりました。

中国によって米国で雇用が失われたことが非常に深刻な問題とした回答者は前年から6%ポイント増の53%。中国の軍事力が拡大していることが非常に深刻な問題とした回答者も過半数の52%でした。

中国の新型コロナウイルスの対応が不十分だったとする回答者は54%。ただ、米国の対応が不十分だったとの回答者はそれを超える58%でした。

対照的に、同盟国との関係改善など、バイデン氏が外交問題で総じてプラスの結果を出すと予想するとした回答は6割に上りました。

バイデン氏の対中政策に関して懐疑的な見方がくすぶる背景には、中国の習近平国家主席に対する深い不信感もあります。ピュー・リサーチ・センターの調査では、習氏が国際問題に関して正しい行動を取るとの回答は15%にとどまりました。

バイデンと習近平

しかし米国人が北京の競争相手をどう見ているかには党派間で隔たりがあります。共和党の50パーセント以上が中国を「敵」と見なしている一方、民主党ではわずか20パーセントが同じ見方をしています。

この党派間の隔たりはバイデン政権の中国政策実施に影響を及ぼす可能性があります。バイデン政権はウイグルジェノサイド宣言のように中国に関するトランプ政権の政策の一部を続けていますが、バイデンはトランプ政権のよりタカ派の方策の一部を実行するには至っていません。

2月にバイデンは米国の大学と中国が支援する孔子学院の間でさらなる情報公開を義務付ける保留中だったトランプ大統領令を取り消しました。重要な移行、外交、そして防衛の立場に就くバイデン任命者と候補者の中には中国に共感する見方を示したことのある人物もおり、中国の支援する団体と緊密なつながりを獲得している場合もあります。

先週公表のギャラップ調査では、中国に対して否定的な見解を持つ米国民の割合が79%に上り、調査を開始した1979年以来で最悪の水準となりました。中国よりも悪かったのはイランと北朝鮮だけでした。

4日の初の外交演説で、トランプ前政権が決めたドイツ駐留米軍の削減計画の凍結を発表しました。演説で「重大な競争相手」と位置づけた中国や、ロシアの脅威に対抗するため、欧州や日本など同盟国との連携を強めるとしています。


「米国は戻ってきた。外交を再び対外政策の中心に据える」。バイデン氏は4日、国務省で初めて実施した外交演説で強調しました。

まず示したのは、米国第一を掲げたトランプ氏の外交政策の転換です。バイデン氏は「米国の外交政策や安全保障の優先課題に適合させるため、オースティン国防長官が米軍の世界的な態勢を検証する」と述べ、3分の2に縮小する予定だった駐独米軍再編を検証が終わるまで見合わせると明らかにしました。

駐独米軍の削減は2020年夏、トランプ前政権がドイツとの調整も経ずに決めた経緯があります。ドイツが国防費を十分に負担していないと判断したためで、北大西洋条約機構(NATO)などからはロシアの脅威が増すなかでの一方的な決定に不満の声があがっていました。

オースティン氏は声明で「米軍の態勢見直しに際しては、同盟国や友好国と相談する」とトランプ前大統領との違いを明確にした。駐独米軍の削減計画の凍結はバイデン氏が掲げる同盟国重視の一環といえます。

バイデン政権でアフガニスタンの米軍撤収期限の延期論が浮上しているのも同じ文脈です。アフガンに駐留するNATO加盟国と足並みをそろえ、現地の治安安定に取り組むべきだとの声があります。トランプ氏は海外の米軍縮小という選挙公約の実現を優先し、反政府武装勢力タリバンとの合意に基づく5月の撤収に前のめりでした。

歴代米政権は安全保障環境に応じて米軍再編に取り組んできました。ブッシュ(第43代)政権は米同時テロに直面したことで旧ソ連との冷戦を想定した陸軍中心の態勢を見直し、機動性を重んじる非対称のテロとの戦いに軸足を置く米軍のトランスフォーメーション(変革)に動きました。

オバマ政権はアジア太平洋へのリバランス(再均衡)を提唱し、中東や欧州からオーストラリアなどへの配置転換を志向しました。ただ、過激派組織「イスラム国」などテロとの戦いに終止符を打つことができず、構想は道半ばに終わりました。

トランプ前政権は軍備予算を拡張する一方で、日本、韓国には駐留米軍の撤収をちらつかせながら負担増を迫ったこともあります。その交渉は決着せず、バイデン政権に持ち越しました。バイデン氏は最大の競争相手である中国の抑止に向けてどう米軍を配置するのが適切かを探ることになります。

欧州はアジアの安全保障に関与を強めています。ドイツはフリゲート艦の日本派遣の検討を進め、英国は空母クイーン・エリザベスをインド太平洋に送ります。南シナ海への海洋進出など中国の動きが念頭にあるのは明らかです。

バイデン氏は4日の演説で、トランプ氏が重視した中国の人権問題も取り上げました。中国の人権弾圧を明示して「攻撃的な行動に対抗する」と宣言しました。

NATOはバイデン政権発足後で初めてとなる国防理事会を17、18両日にオンラインで開きます。アフガンでの対テロ作戦、NATOが伝統的な脅威に据えるロシアに加え、中国への対処を協議する。トランプ前政権できしんだ同盟再構築に向け、具体的な第一歩となります。

以上、バイデン氏の政策などについても触れてきましたが、ここで気になるのは、バイデン氏は既存のタイプの政治家であり、やはり何かといえば、あれもこれもという総合的対策になる傾向があるということです。

トランプ氏の場合は、どちらかというと中国と対峙することを最優先にしていて、その他は従属的な要素と考えているようでした。そうして、それは、大統領になってから現実をみてそのような考えてに変わっていったと思います。北朝鮮の問題もそうです。トランプ氏は中国の問題が片付けば、北朝鮮の問題も片付くと考えていたようです。

この文脈で考えると、ロシアの脅威も従属的にみていたのだと思います。なにしろ、現在のロシアはGDPは日本の1/5です。人口は、1億4千万人です。これではロシアのできることは限られます。いくら頑張っても、できるのは、クリミア併合くらいであり、その以上のことはできません。ドイツ駐留米軍の削減計画もうなずけるところがあります。ドイツに多数の駐留軍を配置するくらいなら、中国との対峙にまわしたほうが、コストパフォーマンスは高いと考えたのでしょう。

現在のロシアは単独でNATOと対峙することもできません。米国抜きのNATOとでも戦えば、負けるでしょう。そうはいいながら、ロシアはソ連の核兵器や軍事技術の継承者ですから、侮ることはできないのですが、中国の脅威から比較すれば、さほどではありません。

中国は、一人あたりのGDPは先進国と比較すると及ぶべくもないのですが、人口が14億人もあり、国全体の経済では世界第二の大国になりました。世界にはこれを超える国は米国だけです。それを考えると、トランプ氏が中東への関与を縮小しようとしたのも理解できます。

中東といえば、従来は石油の産地ということで、米国にとっも重要な地域ですが、現在の米国は産油国となり、中東の価値は相対的に低下しています。私自身は、トランプ政権末期の中東和平の実現は、無論中国との対峙を最優先に考えてのことだと思います。

これを考えると、トランプ氏が中国問題を最優先するのは当然といえば、当然です。そうして、トランプ氏はバイデン氏とは異なり実業家です。実業家の特性として、物事に優先順位をつけて、会社を経営します。優れた経営者程のそのような傾向が強いです。

なぜそうなるかといえば、いかに大きな企業であっても、ヒト・モノ・カネ・情報・時間など使える資源は有限だからです。あれもこれもと、同時に実行すると、結局何もできなくなり、会社は衰退します。

しかし、その時々で3年から5年で、最優先の問題・課題を解決していくと、うまくいくことが多いのです。これは、企業でマネジメントをしている方なら、多くの人が経験していると思います。優先事項が5つくらいあったとして、その最上位項目を片付けると、ほとんどの場合、上位三項目くらいは自動的に解決するか、そこまでいかなくても、わずかの手間で解消できることが多いです。物事に優先順位をつけなくても、民間企業のように倒産することのない政治家や官僚との大きな違いです。

トランプ氏は大統領になって、超大国米国ですら、使える資源は有限であり、政治家や官僚の得意とする総合的対策をしていては、絶対にうまくはいかないと考えるようになり、中国との対峙を最優先に考えるようになったのでしょう。

もちろん、国でも企業でも、最優先事項だけ実施するというわけにはいかず、他のことも予算をつけて実行していかなくてはならないです。しかし、優先順位をつけなければ、何も成就しません。これは、戦時体制を考えればわかります。特に総力戦などの場合、あれもこれもと考えていれば、戦争に確実に負けます。負けてしまえば、本末転倒です。まずは、戦争に勝つことを最優先にしなければなりません。

あれもこれもという傾向は、党派にかかわらず、オバマ政権、ブッシュ政権、クリントン政権など過去の政権をみていてもそういうところがありました。トランプ政権だけが、例外だったと思います。バイデン氏もこのことに早く気づき、中国との対峙を最優先にすべきです。

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2021年3月4日木曜日

インドはどうやって中国軍の「侵入」を撃退したのか―【私の論評】中国撃退の背景にチベット人特殊部隊!日本も尖閣に侵入した中国軍を撃退できる(゚д゚)!

 インドはどうやって中国軍の「侵入」を撃退したのか

Did India Just Win?

ハーシュ・パント(英キングズ・カレッジ・ロンドン国際関係学教授)、ヨゲシュ・ジョシ(国立シンガポール大学南アジア研究所研究員)

中国との国境紛争が生じている地域で補給物資を運ぶインド軍の車両

<小競り合いが続いていたカシミール地方でインドが中国軍を押し返した戦術と戦略>

インドと中国は2月10日、過去50年間で最大の衝突が生じていた国境紛争で、一部地域からの撤退を開始した。

実効支配線を挟んだにらみ合いは続いているが、今回問題となったインド北東部、ラダック地方のパンゴン湖周辺では、両軍が装甲車などを撤収する様子が衛星写真などで確認された。インドと中国は、領有権争いのある地域を「緩衝地帯」とも呼んでいる。

この結果にインドは大喜びしているに違いない。実効支配線を侵害してインド側に入り込んできた中国軍を、事実上追い返したのだから。

今回の衝突が始まったのは2020年5月のこと。中国軍が実効支配線をまたいでインド側に侵入し、インド軍のパトロール活動を妨害するとともに、野営地や集落を設置したのだ。それは地理的にも規模的にも、局地的とか限定的と呼ぶレベルを超えていた。

 中国軍6万人が集結

世界が新型コロナウイルス感染症への対応に追われている間に、中国は実効支配線付近に6万人ともいわれる兵力を集めて、インド側に圧力をかけ始めた。

これは1962年の中印国境紛争後に辛うじて維持されてきた均衡を脅かしただけではない。両国軍はパンゴン湖の北に位置するガルワン渓谷で実際に衝突して、インド兵20人が犠牲になったのだ。

インドのナレンドラ・モディ首相にとっては、メンツをつぶされた格好にもなった。17年にブータン西部のドクラム高地で、やはり中国が実効支配線を越えてブータン側に侵入し、応援に駆け付けたインド軍と衝突したとき、モディは中国の習近平(シー・チンピン)国家主席に直接対話を申し入れる「大人の対応」をしていたからだ。

中国がコロナ禍のどさくさに紛れて実効支配線を越えて、本来インド領とされていた地域の領有権を既成事実化するつもりだったとすれば、ガルワン渓谷での衝突は致命的なミスとなった。インドは中国のゴリ押しを受け入れるどころか、断固立ち向かう決意を固くしたからだ。

インドは経済力、外交力、軍事力を駆使して反撃に出た。まず、インド国内の中国企業にターゲットを定めた。

インドは原材料や完成品の輸入で中国に大きく依存しているが、中国も巨大なインド市場に依存している。そこでモディ政権は、インド国内で中国製アプリの使用を禁止し、中国国有企業によるインフラ投資参加に待ったをかけた。次世代通信規格5Gのインフラ事業から華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を排除する可能性も示唆した。

外交面でインドは欧米との連携を深める戦略を取った。昨年10月には、アメリカと衛星情報の共有などで合意したほか、インド洋で行われる日米印の合同軍事演習にオーストラリアを招いた。さらに海軍の駆逐艦1隻を南シナ海に派遣して、この海域の領有権争いで中国に対抗する陣営を応援する姿勢を示した。

軍事面では、ラダック地方の軍備を大幅に強化した。陸軍をほぼ3師団配置したほか、空軍もミグ29戦闘機、スホイ30攻撃機、ミラージュ2000戦闘機など最新鋭機を配置した。海軍は、対潜哨戒機ポセイドンを、ヒマラヤ地方の哨戒活動に派遣した。

 中国の意表を突いたインド軍

そうまでしても、中国の侵攻に待ったをかけるのは容易ではなかっただろう。全体として見れば、インドの軍備は中国のそれを大幅に下回るし、中国経済はインドとのデカップリング(切り離し)を許容できるだけの規模がある。

ではなぜ、中国は今回、事実上の撤退に同意したのか。それはインドが限定的だが独創的な兵力によって、ラダック地方の戦術的現実を変えたからだ。具体的には、インド軍は高地を支配して、より低地にいた中国の意表を突いた。

例えば昨年8月末、インド軍はヒマラヤ山脈と並行して走るカイラス山脈の重要地点を確保した。ここからなら、パンゴン湖の北岸と南岸の中国の拠点が丸見えだ。また、インド軍は同湖北岸の高地にも拠点を築いた。この戦術に中国軍は驚いた。そこにとどまっていては、想定を大きく上回る損害を被りかねない。

だから9月初め、上海協力機構(SCO)外相会議のためにモスクワを訪れていた中国の王毅(ワン・イー)外相は、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相と2国間協議に応じたのだ。そこから4回にわたる軍高官級会議が開かれ、インドはこの問題に(取りあえず)片を付けることに成功したのだ。

だが、中印関係の根本的な問題が消えたわけではない。中国の影響力拡大と、定期的な実効支配線侵害は、今後もインドにとって最大の戦略的課題であり続けるだろう。このためインドは、対外戦略の3つの見直しを進めている。

第1に、軍の重点配備地域を北西部から北東部にシフトさせた。これまでインドが最も警戒してきた相手はパキスタンだったが、今後は中国になるだろう。既に陸・空・海軍の再編は始まっている。

 「中国の孤立化」を急げ

第2に、中国との経済的デカップリングは今後も迅速に進むだろう。もちろんインドが譲歩しなければならない場面もいくつかあるだろうが、両国経済の軌道が異なる方向を向き始めたことは、今や明白だ。

日米豪印のいわゆるクアッドは、中国のパワーの源泉が自由主義経済の国々との経済的な相互依存関係であることに気付きつつある。従って中国を軍事的に抑止するためには、中国を経済的に孤立させる必要がある。これは短中期的にはクアッド諸国に痛みをもたらすだろうが、長期的には中国の痛みのほうが大きくなるだろう。

第3に、インドは引き続き、欧米諸国との協調路線を強化するだろう。これまでは、物質的および地位的な便益をるためにアメリカに追随していたが、今は、生き残りのためにアメリカと歩調を合わせる必要がある。インドが中国に対抗するテクノロジーや資金、武器を確保するためには、アメリカをはじめとするクアッドが必要不可欠だからだ。

パンゴン湖周辺からの中印両軍の撤退は、ひとまず両国間に緊張緩和をもたらしているが、根本問題が解決したわけではない。中国の軍事的台頭と領土拡張志向を考えると、今後も定期的な武力衝突は避けられないだろう。

インドが中国の弱いものいじめに立ち向かうためには、真に有効な軍事的抑止法を手に入れる必要がある。インド政府はそのために、これまでにない努力をする決意のようだ。このことは中印関係だけでなく、インド太平洋地域全体の地政学をも、新たな段階に移行させるだろう。

【私の論評】中国撃退の背景にチベット人特殊作戦部隊!日本も尖閣に侵入した中国軍を撃退できる(゚д゚)!

インドが中国軍を退けた事実は、日本や台湾など中国の脅威にさらされている国々にとっては、実効支配線を侵害してインド側に入り込んできた中国軍を、事実上追い返したことは、久々の朗報だと思います。インドができることを日本や台湾だけができないということはないはずです。

インドがカシミール地方でインドが中国軍を押し返した戦略と戦術は、外交面でインドは欧米との連携を深める戦略をとったこと、中国軍の意表をついた戦術採用したこと、クアッドにインドが加入しているという事実ということに集約されそうです。

これは、日本にも多いに参考になります。外交面では、日本はインドと同じかそれ以上に従来から、欧米と連携を深めています。

中国軍の意表をついた戦術は日本もとれます。これは、後で述べます。最後のクワッドに関しては、もともと安倍総理がこれを提案したものです。

中国軍の意表をついた戦術に関しては、上の記事では、以下のように記述しています。
インドが限定的だが独創的な兵力によって、ラダック地方の戦術的現実を変えたからだ。具体的には、インド軍は高地を支配して、より低地にいた中国の意表を突いた。

例えば昨年8月末、インド軍はヒマラヤ山脈と並行して走るカイラス山脈の重要地点を確保した。ここからなら、パンゴン湖の北岸と南岸の中国の拠点が丸見えだ。また、インド軍は同湖北岸の高地にも拠点を築いた。この戦術に中国軍は驚いた。そこにとどまっていては、想定を大きく上回る損害を被りかねない。

これに関しては、あまり報道はされていませんが、インドに在住しているチベット人の活躍があったものみられます。

昨年8月末、インドと中国の緊張関係は、ヒマラヤ山脈の高地での兵士の戦闘につながったことが確認されています。

戦闘は、インドのラダック地方パンゴン湖周辺の係争中の実効支配線沿いで起こり、500人以上の兵士が関与して約3時間続いたと報告されています。

インドは、中国の侵略に対応したものだとし、数日後には特殊作戦部隊がステルス作戦で中国の野営地を押収したと述べました。

この事件は、同じ地域で同様の衝突が起き、インド人兵士20人と中国軍の兵士(人数は不明)が死亡してから2カ月以上が経過した後に起きました。死傷者の数字はまだ報告されていないですが、インド人兵士1人が地雷原に入って死亡し、1人が負傷したといいます。

それらの兵士はチベット人で構成されるインドの秘密部隊、特別フロンティア部隊(SFF)の一員でした。この件をきっかけに、この秘密部隊は注目を浴びることになりました。創設から約60年を経た今、この部隊のメンバーをはじめとする多くのインド在住チベット人が悲願とする「中国への挑戦」を始めています。



SFFは、インド軍ではビカス大隊として知られている部隊で、1962年のインドと中国の国境紛争の際に設立されました。この戦争に敗れたインドは、高地での偵察や打撃作戦が可能な専門の山岳部隊の必要性を痛感したのです。

最良の兵士候補はインドに大勢いるチベット難民でした。その多くは1959年にチベット蜂起に失敗した後、彼らの指導者であるダライ・ラマとともにインドに逃れてきた人々でした。

難民たちは高地に慣れており、中国共産主義勢力との戦いに意欲を燃やしていました。何人かは蜂起に加わった軍人で、何人かは以前にCIAによってゲリラ戦の訓練を受けていました。この部隊は、インドの国内情報機関である情報局によって創設され、その後、インドの対外情報機関である調査分析部隊に引き継がれました。

当初は「エスタブリッシュメント 22」と呼ばれていたましたが、1967年にSFFと改名されました。CIAは1970年代初頭まで訓練や装備の援助を行っていました。彼らは献身的な山岳部隊であり、ヒマラヤの厳しい気候の中でのパトロールと戦闘の達人でした。

SFFは1962年の中国と戦争時にはまだ創設されておらず、創設の主な理由は中国と対峙することでしたが、これまでそれを行う立場に置かれたことはほとんどありませんでした。インド人が中国への対抗に情熱を燃やしている隊員が緊張状態をエスカレートさせるのではないかと危惧したのかもしれません。

しかし、SFFは何度も戦場で活躍してきました。1971年のインド・パキスタン戦争では、バングラデシュ(当時の東パキスタン)のパキスタン軍の背後に 3000人の隊員が降下して要所を制圧し、パキスタン兵がミャンマーに退却するのを防ぎました。この戦闘では50人の隊員が死亡、190人が負傷しました。

彼らは 「ブルースター作戦」でシーク教徒の反乱軍と戦い、1984年にサイアヘン氷河をインドが制圧するのを助け、1999年にもカルギル戦争で戦いました。

SFFの特殊部隊はまた、CIAが中国の核兵器開発計画を監視するのを秘密裏に支援し、中国との国境沿いに最新の監視装置を設置し、維持するのをサポートしました

SFFの初代司令官の息子で、SFFとともに戦った退役軍人であるグルディップ・シン・ウバン(Gurdip Singh Uban)氏は最近、彼らを「大胆不敵だ」と評し、「決して躊躇しない」と語りました

SFFはインドの内閣官房の管轄下にあり、インド軍の一部ではありません。この部隊の兵力は3000人から5000人と推定されています。

グルカ兵として知られているインド人やネパール人の戦士もSFFには存在しますが、部隊の記章はチベットの旗に見られるのと同じ雪獅子であり、そのアイデンティティは明らかにチベットであるといえます。

その起源と任務のため、この部隊は秘密にされてきました。インド当局は、8月の戦闘で死亡した軍歴33年間の古参兵テンジン・ニーマ(Tenzin Nyima)の家族に、彼の任務について話さないよう求めました。

テンジン・ニーマ氏

しかし、ある出来事によって、この部隊は注目を集めました。その部隊が8月下旬に中国の野営地を攻撃したとき、インド在住のチベット人がインドと中国が大規模な軍事力増強を行っている国境地帯に向かうSFFの兵士を温かく見送る様子を撮影したビデオが公開されたのです。

このことは、SFFとインドのチベット人コミュニティ全体が、彼らが受けるに値する認知と注目を得ることへの期待につながっています。それはまた、宿敵に立ち向かう機会を得て、インドに住む一部のチベット人の感情をかき立てたのです。

ある元SFF兵士は最近、サウスチャイナ・モーニング・ポストに対し、「ほとんどのチベット人がこの部隊に参加するのは、これが中国と戦う唯一の方法だからだ」と語っています。

さて、SFFの話が長くなってしまいましたが、中国軍の意表をついた戦術は日本もとれるという話に戻ります。

それは、このブログの読者なら、もうご存知でしょう。無論日本の静寂性(ステルス性)に優れた、潜水艦隊を用いることです。

以前にもこのブログに掲載したように、中国海軍の対潜哨戒能力はかなり低いので、日本の潜水艦の行動を確認することはできません。一方、中国の潜水艦は静寂性が劣っているどころか、騒音がするので、日本の海自の対潜哨戒能力は世界トップ水準です。

日本の世界トップレベル対潜哨戒能力の象徴でもあるP1哨戒機

この優位性を活用すれば、特殊作戦部隊(SFF)がステルス作戦で中国の野営地を押収したようなことが、日本側には容易にできてしまいます。

さらに、日本は当然のことながら、東シナ海の海域に関しては隅々まで知っていますし、中国の潜水艦はじめとする艦艇の音紋を把握しており、中国海軍がどのような行動をしているかを熟知しています。

さらに、東シナ海や尖閣諸島付近の海底についても熟知しています。これは、SFFの兵士たちが、高地を熟知しているのと同じです。どこに潜水艦を潜めておけば、効果的なのかを熟知しているのです。

これらの情報と、日本の潜水艦のステルス性を活用すれば、SFFが実行したように、中国海軍に対して、様々なステルス作戦を実行できます。

このようなことを前提として、以前もこのブログに掲載したように、たとえ中国海軍や民兵が尖閣諸島に上陸したとしても、日本の潜水艦隊で尖閣諸島を包囲し、近づく中国の補給船や航空機などを威嚇するか、最悪撃沈、撃墜するということをすれば、尖閣諸島に上陸した部隊は補給が受けられずお手上げになり投降するしかなくなります。

尖閣諸島に近づく艦艇も、すぐに撃沈されてしまいます。おそらく、日本の潜水艦隊が、尖閣諸島を包囲した段階で、そこにとどまっていては、想定を大きく上回る損害を被りかねないと判断し、SFF等が実効支配線を侵害してインド側に入り込んできた中国軍が撤退したように、尖閣に上陸した中国軍も撤退するのではないでしょうか。撤退しなければ、中国は多くの艦艇・航空機を失うことになります。

なにやら、最近は保守派でも、中国の軍事力が圧倒的に強いので、尖閣は危ないと煽りまくる人もいますが、それだけだと中国に利することなりかねず、バランスを欠くと思います。中国の脅威を訴えるのは良いことだとは思うのですが、それだけではなく上で述べたような文脈のような情報も同時に提供してしかるべきと思います。

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