2022年4月21日木曜日

自公、今国会の補正成立方針で一致 公明幹事長「2.7兆円前後と想定」―【私の論評】今のままだと失業率が半年後には上がる怖さを認識できない岸田首相(゚д゚)!

自公、今国会の補正成立方針で一致 公明幹事長「2.7兆円前後と想定」



自民、公明両党は21日、物価高に伴う総合緊急対策で、2022年度予備費を活用して迅速に対応するとともに補正予算を編成し、今国会に提出・成立を図ることで一致した。自民党の茂木敏充幹事長が明らかにした。公明党の石井啓一幹事長は、補正規模について2.7兆円前後になると国会内で記者団に語った。

今後の災害や新型コロナウイルス感染症の再拡大、原油価格・物価のさらなる高騰で予期しない財政需要に迅速に対応する必要があると判断した。両党の合意を踏まえ、政府は26日に総合緊急対策を公表した上で5月下旬に補正予算案を国会に提出するシナリオを描く。

木原誠二官房副長官は21日午後の記者会見で、与党から補正予算の編成を求める申し入れがあったとした上で、提案も踏まえながら総合緊急対策をとりまとめていく考えを示した。

補正予算では、総合緊急対策で使用する一般予備費5000億円の穴埋めに加え、新型コロナ予備費について「新型コロナウイルス感染症および原油価格・物価高騰対策予備費」と改組し、使途を拡大したうえで5兆円の水準を確保することで合意した。

燃料油価格の激変緩和事業として6月から9月までの事業費1兆円強を計上することでも一致した。

公明党の石井幹事長は岸田文雄首相への報告後、官邸で記者団に「政府として詳細を詰め、補正予算を指示するとの話だった」と述べた。総合緊急対策に関しては26日に公表する意向を示したという。

総合緊急対策では、5月分の原油価格高騰対策として0.3兆円程度を想定。エネルギー・原材料・食料などの安定供給に向け300億円を計上することを求めた。

価格転嫁を念頭に置いた中小企業対策や、生活困窮者への支援策も盛り込み、地方創生臨時交付金の拡充(留保分込みで1兆円程度)や、低所得の子育て世帯を対象に1人あたり5万円を給付するため0.2兆円を支出することで合意した。

【私の論評】今のままだと失業率が半年後には上がる怖さを認識できない岸田首相(゚д゚)!

内閣府は12日、日本経済の需要と供給能力の差を示す国内総生産(GDP)の「需給ギャップ」が2021年10~12月期はマイナス3・1%だったと発表しました。マイナスは9四半期連続。金額に換算すると年間17兆円程度の需要が不足していることになります。


新型コロナウイルスの感染状況が一時的に落ち着いたことで個人消費が持ち直し、7~9月期から0・9ポイント改善した。10~12月期の実質成長率は年率換算の前期比で4・6%と、2四半期ぶりにプラス成長となりました。ただ、需給ギャップが存在するので、これを解消しない限り個人消費が持ち直し続けることはないでしょう。

需給ギャップは政府がデフレ脱却を判断する際に重視する指標の一つです。マイナスの場合、需要が供給を下回っていることを示し、物価が下がりやすくなります。

需給ギャップは、本予算のほかに、臨時で実施する補正予算の目安ともなります。本予算は日本経済を維持するための予算であり、需給ギャップがあれば、それプラスの予算を組む必要があるからです。そのため、17兆円の需給ギャップがあるなら、本来17兆円の補整予算を組むべきです。2.7兆円の補正予算では話にならないわけです。

まずは、17兆円の補正予算を組み、そこからが政治力であり、どこにどのように使えば最も効果が上がるのか腕のみせどころになるわけですが、それにしても需給ギャップに達しないような補正予算では、最初から焼け石に水で、ほとんど期待はできないです。

安倍・菅両政権のときには、両政権が継続中には、結果として需給ギャップに相当する部分を、補正予算として組み様々な経済対策を実施しました。2020年〜2021年の両政権期間中の補正予算を全部あわせるとおおよそ100兆円の補正予算を組みました。

このようなこともあり、さらに日本では雇用調整助成金(米国にはない)という制度もありますから、これらによって、コロナ感染が世界中で蔓延して失業率が増えてい最中、日本では、多くの期間を2%台で推移しました。日本政府の経済対策この時期においては概ね及第だったといえます。なぜなら、このブログても過去に何度か掲載したように、雇用こそ最も重要な指標であり、これが良ければ政府の経済対策は及第といえるからです。


さて、内閣府の需給ギャプの計算は、17兆円としているわけですが、内閣府の見積もり元々は甘いとする人もいます。それは高橋洋一氏です。

高橋氏によると、内閣府は需給ギャップのいちばん上のところを少し低めに見積もっていると指摘しています。内閣府の推計だと、失業が多いところを需給ギャップの一番高いところと見ているようです。簡単に言うと、前は100兆くらいあったけれど、「いまはそれより30兆くらい低いでしょう」という言い方の方が無難なわけです。 

100%の実力を出したら稼げるGDPの額を低く見積もれば、需給ギャップが小さく見えます。しかし逆に言うと、需給ギャップが埋まっても、物価が上がらないという状況になるわけです。 

だから実績値が、内閣府の推計値を上回れば普通、物価が上がるはずなのに、上がらなかったのです。これは想定しているところが低過ぎるとわかります。高橋氏はこれを補正して計算しましたとしています。そうすると現状の需給ギャップは35兆円くらいになるとのことです。

そうなると、補正規模について2.7兆円というの桁違いということがわかります。内閣府の産出した需給ギャップ17兆円にも届かないということになります。

それでも17兆円なら、今回は足りなくても、また次の機会に同程度の補正予算を組めば、いずれ需給ギャップが解消される目処がたつと思います。

しかし、たった2.7兆円ならば、焼け石に水どころか、大きな山のような焼け石にバケツリレーで水をかけるようなものでは、全く効果は期待できません。次の機会に補正を組んだとしても、同程度であれは、これはほとんど効き目がありません。

女子学生のバケツリレー(昭和13年)

このブログでは、つい先日公明党が政府に補正予算を促していることを掲載しましたが、たった2.7兆円の補正というのなら、全く意味がありません。

いまのままだと、半年後くらいには確実に失業率が上がり始めることでしょう。安倍政権が過去最高の長期政権になった大きな原因の一つとなったのは、雇用状況の良さです。過去20年雇用が良くなかった政権はほとんどが短期で終わっています。雇用が悪くなれば、岸田政権の支持率も落ちます。その怖さを岸田総理は全く理解していないようです。お目出度いです。

日本の政治家のほとんどがそうであるように、岸田総理大臣や、公明党は所詮マクロ経済音痴なのは最初からわかりきっていますが、自民党には安倍元総理をはじめ少なくとも数人は、マクロ経済を理解している人がいますから、なんとか岸田総理を説得していただきたいです。

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