2022年4月14日木曜日

一刻も早い補正予算編成と果断な実行「強く求める」=公明党提言案―【私の論評】岸田政権が長期政権になれば、ウクライナショックよりも、岸田ショックのほうが、より深刻な事態をまねきかねない(゚д゚)!

一刻も早い補正予算編成と果断な実行「強く求める」=公明党提言案


公明党が近く岸田文雄首相に申し入れる物価高対策の提言案が判明した。日本経済と国民生活を断じて守るため、「政府は一刻も早く補正予算を編成し、必要な対策を果断に実行するよう強く求める」と明記。ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除も併せて求め、地方税収の減収分は国が補填すべきとしている。

提言では、ウクライナ情勢の動向によっては「日本経済が戦後最大の危機に陥りかねない」との危機感を示し、政府に速やかな対応を求める。予見しがたい支出に迅速かつ柔軟に対応できるよう、「予備費のさらなる積み増しを行うこと」も明記する。

焦点となるトリガー条項発動では、自民、公明、国民民主3党で立ち上げた原油価格高騰・トリガー条項についての検討チームでの検討結果をもとに「凍結解除すること」としている。トリガー発動に伴う地方税収の減収分については「国が補填する」とした。ロイターが提言案を確認した。

激変緩和事業に関しては、元売り事業者に対する補助金上限を大幅に引き上げるとともに、「ガソリン・軽油・灯油・重油の4油種に舗装用アスファルトや航空機ジェット燃料も対象に加えたうえで延長すること」を求める。

石炭や魚介類などの調達コストの増大を念頭に、ロシアに対する経済制裁の影響を受ける事業者を支援するための基金創設も盛り込み、「新たな経済対策に向けた緊急提言」として、今夕首相に申し入れる。

【私の論評】岸田政権が長期政権になれば、ウクライナショックよりも、岸田ショックのほうが、より深刻な事態をまねきかねない(゚д゚)!

公明党はあいかわらず、マクロ経済音痴のようですが、そうではあっても、ウクライナ情勢いかんでは、とんでもないことになりそうだという勘は正しい、というか普通の感覚の人なら、そうなります。

にもかかわらず、岸田総理は補正予算を組もうとしません、これは、普通の感覚ではありません。

普通の感覚の人なら、どのくらいの規模にするかは別問題として、もしものときのために、ある程度の補整予算を組むことを考えるでしょう。日本経済の規模や、現在日本がおかれている様々な危機を考えた場合、本予算予備費5兆円ですむと考えるのは、これは経済理論がどうのこうのというより、素人より始末に悪いです。

ただ、公明党も現在の日本の経済の状況を明らかにわかっていないようなので、以下にその概観を掲載します。

日本銀行が4月12日に発表した3月の国内企業物価指数は112.0と、前年同月比9.5%の上昇でした。プラスは13ヵ月連続。指数の水準は1982年12月以来、39年3ヵ月ぶりの高さとなりました。


これを見て、物価が上昇すると、報道されていますが、それは違います。上のグラフをみてもわかるように、消費者物価指数はほとんど上がっていません。

これは、なぜかといえば、総供給が総需要を上回っているので価格には転嫁できないからです。 国内企業物価とは、仕入れ段階の話なので、商品に転嫁できるかどうかは、それぞれの商品の需要に依存します。

品目の需要というのは、すべて足し算をして、また供給についても足し算をして、総需要・総供給を計算するのですが、実は総供給の方がまだ数%大きいのです。ということは総需要があまり大きくないので、転嫁できない業種が多くなることを意味しています。

ここ数年テレビなどで、低価格でおいしくて、良心的な老舗が原材料の高騰で閉店せざるを得なくなったというニュースをみることがありますが、そのようなとき多くの人は、値上げすれば良いのにと単純に思ってしまうかもしれませんが、簡単には値上げできないのです。

なぜかといえば、インフレ状況なら値上げしても、需要が落ちることはないのですが、総供給が総需要を上回っている状況では、値上げしてしまえば、需要がおちてしまうことが予想されるからです。

確かにコストプッシュインフレのよう状況にはなっています。ただし、どこまで転嫁できるのかということは、その製品にどのくらい需要があるのかによります。需要がないのに価格を上げてしまったら、より売れなくなってしまいますので、転嫁することができないのです。

現在のような状況では企業経営は厳しくなります。総需要と総供給の差を表すGDPギャップという数字があります。

本当はそれに相当するぐらいの補正予算を打つべきなのですが、岸田政権にはそのような動きもないです。

当面は予備費での対応となり、最大5兆円です。先ほどのGDPギャップは30兆円以上あると思いますので、補正予算を打たないとなると全然足りません。


13日の各紙経済面などでも、ガソリンのトリガー条項の撤廃を行わず補助金のみという、「かなり期待外れだ」と報道しています。

個別価格が上がっているときは、個別にかかる税金を下げるべきです、ガソリン価格はその典型です。さらに、消費税の軽減税率を行うのが定石なのですが、それをしないということなれば需給ギャップは放置されたままになります。経済理論から予測できるのは、おそらく企業活動が低調になり、その結果として半年後くらいに失業率が高まります。

このような状況ですから、6月初旬までに補正予算の議論をするべきです。政府は相変わらず賃上げ要請をしていますが、GDPギャップが存在する間は、雇用対策をいくらやっても効かないです。それが埋まらない限り、雇用は増えません。現在は雇用調整助成金で失業率を抑えているところがありますが、これから半年ぐらいの間にそれも効かなくなり失業率が上がることになるでしょう。

現在は、国会はそれほど忙しいわけではないので、6月頭まで補正予算の議論はできますし、いまからやれば選挙にも間に合います。

現在国会で重要法案とされているのは経済安全保障の関連法案で、これは衆院を通過しましたし、あとは「こども家庭庁」の設置に関わる基本法です。予算委員会は何も審議はしていないようです。

現在国会を開いているので、経済対策として、補正予算を通すのが最も簡単で良い政策です。補正予算をつくるのも、それほど時間がかかるわけではありません。

コロナ禍による景気の落ち込みから立ち直る前に、ウクライナ情勢で大変になってしまったところを穴埋めすれば良いだけですから、難しくもないし、あまり反対されることもないでしょう。官僚であれ、政治家であれ、マスコミも、今このタイミングで反対すれば、その根拠を問われることになるでしょうが、それを理詰めで説明できるような人は誰もいないでしょう。むりやりすれば、かなりの批判を浴びることになるでしょう。

財源も、先に述べたように、現在はインフレではないので、国債を大量発行して、それを日銀が買いとったとしても、それで将来世代のつけになるということもないですし、インフレが加速するということもないです。むしろ、今はデフレ傾向なので、100兆円くらい国債を擦り増し、日銀が買い取ったとしても何の支障もないどころか、そうしたほうが日本経済には良い結果をもたらします。

そもそもマクロ経済音痴の公明党から、一刻も早い補正予算編成と果断な実行「強く求める」と要求されるのですから、岸田首相も終わっています。

安倍政権や、菅政権では、公明党からは補正予算の額が大きすぎるなどの批判を受けたことはありますが、補正予算をすみやかに組めなどと要求されたことはありません。

このようありさまですから市場関係者が多く視聴する日経CNBCが同チャンネルの視聴者を対象に行った調査で、「あなたは、岸田政権を支持しますか?」という質問に対して、「はい」という回答がたったの3%しかありませんでした(調査期間は2022年1月27日~1月31日)。

金融所得への課税強化を言い出して、すぐに棚上げにしたり、新しい資本主義などと得体の知れないことを言い出し、もともと市場関係者からは嫌われていましたが、それにしても3%とは驚きです。これは、ほほどすべての人が岸田総理を支持せず、市場関係者の中では一部の風変わりな人だけが支持しているということです。

公明党の要請によって、岸田政権が補正予算を組めば良いのですが、そうしなかった場合や、公明党ですら満足できない水準の補正予算だった場合、選挙協力が不調に終わることも考えられます。そうなった場合、自民党候補が予想以上に落選した場合に何が起こるでしょうか。

野党の体たらくをみていると、さすがに、衆参の「ねじれ」が起こるほどに負けないでしょうが、岸田政権は弱体化することになります。完敗ではなくほどほどの負けは、安倍晋三氏、麻生太郎氏、菅義偉氏、二階俊博氏といった、「岸田政権の主流ではない政治的実力者たち」にとって好都合でしょう。

加えて、注目できるのは、公明党にとっても、同党の協力がなければ自民党が選挙で苦労することを示すことは、自分たちの価値をつり上げて、政治的影響力を増す効果があるでしょう。

仮に、参院選の敗北などで岸田政権が弱体化したときに、自民党内で「政局」は起こる可能性は十分にあると思います。とにかく、あまりにポンコツな岸田首相にははやく辞めていただきたいです。

岸田政権を短期政権で終了させて、次は岸田氏よりポンコツではない次は無難な人物を総理にし、まともな経済政策、外交をできるようにしていただきたいです。

私は、安倍首相や、菅首相の時には、是々非々で批判をしたこともありますが、辞めたほうが良いなどと批判したことは一度もありませんでした。ましてや、「お灸をすえて」政権交代すれば良いなどと語ったこともありません。

あの民主党による政権交代で日本がどのようなことになったかを思えば、現在でも「お灸をすえて」自民党を下野させるようなことはすべきではないと思います。現状の野党をみていると、残念ながらそう考えざるを得ません。

安保法案に反対し、国会議事堂正面の道路を埋め尽くし廃案を訴えるデモ参加者 =2015年8月30日

やはり、まともな首相のもとに自民党政権が安定政権となり、安倍政権のときにそうであったように、たとえ政権維持のためには良くないことでも、敢えて様々な必要不可欠な改革をしていくのが王道だと思います。

残念ながら、今の野党にはそのような力はありません。現在でもまかり間違って政権交代がおこれば、かつての民主党のように何もきめられず漂流するか、政権の座を守るのが精一杯ということになるでしょう。それに乗じて、官僚たちが蠢き、財務省は増税、日銀は金融引締をして、その他の官僚も鉄のトライアングルを活用して自分たちの利権をあさり、日本はまた、失われた30年を繰り返すことになりかねません。

ただ、今の自民党は、岸田氏という稀に見るポンコツが首相という状態です。まともな自民党有志の皆さんは、なんとか岸田政権を短期政権で終わらせて下さい。

岸田総理は、経済で出身派閥の宏池会がせっかく掲げた「所得倍増政策」は無視し、新しい資本主義なることばはあげたものの、その中身を具体的に明らかにすることもなく、結局経済政策では何もせず、エネルギー、食糧政策でも何もせず、外交、安保では米国に要請されたこと以外は何もせず、特に重要なことでは、ひたすら「緊張感をもって注視していく」「検討します」というばかりです。

まかりまちがって、岸田政権が長期政権になれば、日本ではウクライナショックよりも、岸田ショックのほうが、より深刻な事態をまねきかねません。

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