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岡崎研究所
トム・ローガン(Washington Examiner 記者)が、8月22日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に、「中国は欧州連合(EU)の軸を失う危険を冒している。ロシアの軍事演習への人民解放軍(PLA)参加は欧州での怒りに火をつけるべきである」との記事を書いている。
中国は、欧州企業の中国市場へのアクセスを制限したり、ウイグル人へのジェノサイド、香港民主主義の破壊を行ったり、台湾を威嚇したりしている。これらの行為は、中国の外交的傲慢さもあり、欧州を怒らせている。駐仏中国大使は、PLAが台湾に上陸した時には、台湾人は再教育されなければならないと述べた。
人権侵害に不満を示した欧州議会議員に制裁を課すとの中国の決定に対して、欧州議会は怒った。中国は、昨年リトアニアが「台湾」代表処をヴィルニスに開設するのを許した後、リトアニアに圧力をかけた。
PLAのVostok参加は単なる軍事パレードではない。これは戦争で指揮官が効果的に戦闘するための指揮・参謀演習である。
Vostok2020に参加し、中国は、ウクライナで戦争しているロシア軍に支持を与えている。この戦争は国家主権の尊重を脅威にさらし、欧州の安定を脅かしている。
欧州は共産中国は友人ではないことを認識しなければならない。欧州の指導者は中国のVostok冒険主義に怒るべきであり、中国との深い協力を拒否すべきである。
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この論説は、欧中関係が悪化していることを描写した記事であり、珍しいので取り上げた。中国が、ウクライナ戦争の最中に、今年もロシアのVostok演習に参加することについて、欧州に強い反発があることを示している。
中国のウクライナ戦争に対する立場には欧米や日本と相当異なる側面がある。ロシアのウクライナ侵攻後の3月2日のロシア非難国連総会決議に中国は棄権をしたし、西側がロシアに課している経済制裁を「一方的制裁」と非難し、そのうえ、経済制裁の効果を掘り崩すロシアからの石油、ガスの輸入を増やしている。
欧州はどこまで踏み込めるのか
対露武器供与はしていないようであるが、日本の周辺海域や空域での中露共同演習を行っている。このVostok演習も日本に近い東部ロシアで行われる。日本がこういう演習に今の状況で不快感を抱くのは当然であるが、ウクライナ戦争の関係で欧州諸国にもこういう中国のやり方に強い不満があることは想像に難くない。
この論説の筆者は、欧州は怒るべきであるとか、共産中国は友人ではないと認識しなければならないとか言っている。しかし、事実として欧州が怒っているのか、共産中国は友人ではないと考えられているのかについては、事実を指摘したうえでの議論を残念ながら十分にしていない。
欧中関係が今後どう推移するかは世界情勢に大きな影響があるが、日米欧は結束してウクライナ戦争への中国の対応への不満を示していくのが正解であると思われる。中国がロシアを支持し続けることについては、それなりの代償を日米欧は課していくべきであろう。
【私の論評】満面の笑みを浮かべてオホーツク海で、大演習をしたほうがよほど効果的(゚д゚)!
ロシアの国防省は29日、極東での大規模軍事演習「ボストーク2022」について、当初の開始予定の30日から2日間ずらして9月1日から7日まで実施すると発表しました。
ボストーク22に参加するためロシアに到着した人民解放軍 |
前回、2018年の演習はおよそ30万人が参加したとされていますが、今回は5万人以上に縮小しました。
こうした日程変更や規模の縮小は、ウクライナ侵攻の長期化が影響しているとみられます。
演習には中国をはじめ、アルジェリア、インド、ラオス、モンゴル、ニカラグア、シリアのほか、旧ソ連のアルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン等少なくとも13カ国が参加し、北方領土の択捉島なども使用されるとみられます。
国防省によると、今回の演習には140機の軍用機と5000以上の軍事兵器を投入。4年前の演習には軍用機1000機のほか、3万6000台の戦車や装甲車などが投入されていました。
ポーランドに拠点を置くロチャン軍事コンサルタントのディレクター、コンラッド・ムジカ氏は「地上部隊の全戦力がウクライナでの作戦に従事しているため、今回の演習の規模はここ数年で最小になる」と指摘しました。
中国政府は2019年7月24日、4年ぶりに「新時代における中国国防」(国防白書)を発表し、対外軍事交流のトップに挙げたのが中ロ軍事交流でした。ロシア軍との協力は「世界の安定に重要な意義がある」と明記し、軍事訓練や装備、技術面での連携を深めるとうたっていました。
白書は「中ロ両軍関係は高いレベルのオペレーションを引き続き保持し、両国の新時代における全面的戦略協力パートナーシップを不断に充実させるため、グローバルな戦略的安定にとって重要な意義を持つ」と位置付けています。
具体的には①2012年以来、中ロ両軍は計7次にわたって戦略協議を実施②18年8、9月、中国軍がロシア軍の求めに応じ初めて「ボストーク」(東方)戦略演習に参加しました。③中国軍は19年9月16~21日、ロシア軍の軍事演習「ツェントル2019」に参加―を挙げました。
「ボストーク」演習は元来、仮想敵の中国および日米の両面を想定した演習でした。中国軍の初参加で、中国は「仮想敵」ではなく「友軍」として扱われるようになったことになります。
海上演習も、2014年に「海上連携2014」が東シナ海で実施され、15年には中国艦隊が黒海のロシア海軍基地を訪問しました。16年の「海上連携2016」は南シナ海で実施され、北極版の「氷上シルクロード」注4計画でも、ロシアとの協力を鮮明にしています。
「中ロ同盟」の仮想敵である米国はどう見ているでしょう。「新アメリカ安全保障センター」のアンドレア・ケンドール=テイラーは、「中ロパートナーシップは米国益の脅威か? 手遅れになる前に行動を」で「中ロパートナーシップをどう見るべきか、欧米専門家の間でコンセンサスがないため、ワシントンの政策決定者は中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで議論し続けるリスクを冒している」との問題意識から、幾つかの警告を発している。そのポイントを箇条書きにします。
こうした日程変更や規模の縮小は、ウクライナ侵攻の長期化が影響しているとみられます。
演習には中国をはじめ、アルジェリア、インド、ラオス、モンゴル、ニカラグア、シリアのほか、旧ソ連のアルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン等少なくとも13カ国が参加し、北方領土の択捉島なども使用されるとみられます。
国防省によると、今回の演習には140機の軍用機と5000以上の軍事兵器を投入。4年前の演習には軍用機1000機のほか、3万6000台の戦車や装甲車などが投入されていました。
ロチャン軍事コンサルタントのディレクター、コンラッド・ムジカ氏 本人のツイッターより |
ロシア極東の東部軍管区の部隊の70─80%がウクライナに配備されているため、今回の演習に5万人を投入することも「不可能」とし、1万─1万5000人が妥当な規模になるとの見方を示しました。
規模が縮小されるとはいえ、今回の演習はロシアと中国の軍事的な動きを見極めるため、日本や韓国などが緊密に注視しています。
規模が縮小されるとはいえ、今回の演習はロシアと中国の軍事的な動きを見極めるため、日本や韓国などが緊密に注視しています。
中国国防省報道官も白書の背景説明で「中ロは互いの核心的利益を支持し、実戦を想定した訓練で協力を深める」と強調しました。
白書は「中ロ両軍関係は高いレベルのオペレーションを引き続き保持し、両国の新時代における全面的戦略協力パートナーシップを不断に充実させるため、グローバルな戦略的安定にとって重要な意義を持つ」と位置付けています。
具体的には①2012年以来、中ロ両軍は計7次にわたって戦略協議を実施②18年8、9月、中国軍がロシア軍の求めに応じ初めて「ボストーク」(東方)戦略演習に参加しました。③中国軍は19年9月16~21日、ロシア軍の軍事演習「ツェントル2019」に参加―を挙げました。
「ボストーク」演習は元来、仮想敵の中国および日米の両面を想定した演習でした。中国軍の初参加で、中国は「仮想敵」ではなく「友軍」として扱われるようになったことになります。
「ツェントル」演習は「ロシア南部に侵入したイスラム系テロ組織が独立国家を樹立した」との想定に基づく対テロ合同作戦。人民解放軍の兵員1600人、航空機・ヘリ30機が参加しました。
中ロ軍事協力は、尖閣(中国名 釣魚島)周辺でも行われていまし。16年6月9日、中国フリゲート艦とロシア駆逐艦3隻が、約3時間の間に久場島と大正島の接続水域を航行したのも一例。この時中国側は「接続水域に入った自衛艦を追尾した」と説明しました。
一方、中国中央テレビは「日本は中ロ軍艦による『共同行動』を認めようとせず、政府発表でも中ロ軍艦が『同じ時間帯』に同じ海域に出現したとしか述べていない」と指摘。その理由として、安倍政権がプーチンと平和条約交渉を進めたいため「中ロ共同行動」を認めたくないからだ」と解説してみせました。
海上演習も、2014年に「海上連携2014」が東シナ海で実施され、15年には中国艦隊が黒海のロシア海軍基地を訪問しました。16年の「海上連携2016」は南シナ海で実施され、北極版の「氷上シルクロード」注4計画でも、ロシアとの協力を鮮明にしています。
「中ロ同盟」の仮想敵である米国はどう見ているでしょう。「新アメリカ安全保障センター」のアンドレア・ケンドール=テイラーは、「中ロパートナーシップは米国益の脅威か? 手遅れになる前に行動を」で「中ロパートナーシップをどう見るべきか、欧米専門家の間でコンセンサスがないため、ワシントンの政策決定者は中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで議論し続けるリスクを冒している」との問題意識から、幾つかの警告を発している。そのポイントを箇条書きにします。
1、 中ロはあらゆる領域で協力関係を強化している。軍事、投資、交通、宇宙航行、軍事転用可能な敏感な技術開発分野での連携・協力強化は、将来にわたって継続。このため論文は「どちらかの行動が、もう一方の行動を増幅させる」と、危機感を募らせ「中ロを離間させる戦略が必要」と説いています。
2、 両国の政治体制と、指導者に権力を集中する権威主義も共通
3、 中国の「一帯一路」とロシアの「ユーラシア経済連合」は連結。
4、 冷戦期とは異なり、中国が同盟のシニアパートナーになる
5、 両国が、南シナ海とウクライナで同時に連携行動をとったり、サイバー攻撃や情報戦で協力したりすれば、アメリカは効果的に対応できない―などを挙げている。
「新アメリカ安全保障センター」のアンドレア・ケンドール=テイラー |
露国防省の発表によると、ボストーク22の一環として、1日にはハバロフスク地方などで、複数の戦闘機による迎撃訓練を実施した。今後、日本海とオホーツク海で露軍太平洋艦隊などの艦艇50隻以上が参加し、対空・対艦を想定した砲撃、潜水艦の探索などの演習を実施するとしていました。
日本海では、中国海軍と共同でシーレーン(海上交通路)と経済水域の防衛訓練を行うとも強調しました。演習場には国後、択捉島も含まれており、日本政府は北方4島を除外するよう申し入れていました。
本来、中国に対して最も大きな怒りをぶつけるべきは、日本のはずです。
このような最中、安倍元総理大臣は、暗殺され、現在の日本の政局は、安倍元総理の国葬を巡る論戦と、旧統一教会の問題一色です。このようなことで良いのでしょうか。国葬に関しては、中露の行動を牽制する場ともなりえます。それを、何よりも安倍元総理は望んでいると思います。
本来であれば、日本が主導して、オホーツク海で、日米英豪などの大演習を行い、それもできれば、北海道の一部を北方領土にみたたて、日米英豪などで、北方領土奪還上陸作戦大演習など行うべきです。日米英も潜水艦隊を派遣して、中露の艦艇に見立てた艦艇を潜水艦で撃沈するなどすべきです。
特に、日米英は、ASW(対潜水艦戦争)では中露に対して格段に勝っていますから、日米英と中露が海戦になった場合、中露には全く勝ち目がないことを誇示すべきでしょう。
さらに、北方領土に近いところで、潜水艦による島嶼封鎖演習を実施し、中露が台湾や、北方領土に軍隊を送り、そこを占拠しようにも、潜水艦で包囲されてしまえば、補給が絶たれ、お手上げになることを実証してみせるなどのこともすべきです。日本が得意の機雷敷設も併用すれば、かなり実践的な演習になります。
中露の心胆を寒からしめる訓練をすべきと思います。それだけに及ばず、それぞれの国の国民にこうした演習の意味合いを周知すべきと思います。
中国に対する対抗策として、ロシアに対して融和的な行動をしていた安倍総理ですが、 ロシアがウクライナに侵攻した直後には以下のようなツイートをしていました。
ロシアによるウクライナへの侵攻は、戦後私たちがつくってきた国際秩序に対する深刻な挑戦であり、断じて許すわけにはいきません。G7と連携し直ちに対抗処置を取らなければなりません。https://t.co/mEFvkq9iEp
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) February 25, 2022
安倍元総理の遺志を継ぐという意味でも、日本は中露のボストーク22に対抗する大演習の音頭をとり実行すべきです。
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