2022年9月16日金曜日

同盟国のカザフスタン元首相がプーチン政権を批判―【私の論評】米中露の中央アジアでの覇権争いを理解しなければ、中央アジアの動きや、ウクライナとの関連を理解できない(゚д゚)!

同盟国のカザフスタン元首相がプーチン政権を批判

カザフスタンのアケジャン・カジェゲリディン元首相

 ロシアのウクライナ侵攻を巡り、ロシアの同盟国である中央アジアのカザフスタンの元首相がプーチン政権を批判し、ソ連崩壊を繰り返すことになると警告しました。

 カザフスタンのアケジャン・カジェゲリディン元首相は、ドイツメディアのインタビューに答え、ロシアのウクライナ侵攻を巡るロシア側の主張を「理解できない要求」だと批判しました。

 また、ロシア国内で中央政府に対する地方の不満が高まっていて、ソ連邦崩壊時と同じ状況に陥っているとし、ロシアが連邦制を維持できず政治的に分裂する可能性があると指摘しました。

 カザフスタンは、石油や天然ガスなど豊富な資源を有していて、ロシアにとって重要な同盟国です。

 先月には、カザフスタンだけでなくキルギス、タジキスタンもアメリカなどと共同軍事演習をするなど、中央アジアの国々のロシア離れが進んでいます。

【私の論評】米中露の中央アジアでの覇権争いを理解しなければ、中央アジアの動きや、ウクライナとの関連を理解できない(゚д゚)!

カザフスタンについては、今年の1月トカエフ大統領は11日、抗議デモを鎮圧するため先週派遣を要請したロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の部隊が2日後に撤退を開始すると表明したことをこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
カザフ、ロシア主導部隊が2日後に撤退開始 新首相選出―【私の論評】中露ともにカザフの安定を望む本当の理由はこれだ(゚д゚)!
カザフスタン トカエフ大統領

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より結論部分を引用します。
中露としては、大統領がトカエフだろうが、誰だろうが、とにかく安定していて欲しいというのが本音でしょう。トカエフ政権が崩壊するようなことでもあれば、力の真空が生まれます。そこに乗じて米国が暗躍し、中露の両方に国境を接するカザフスタンに親米政権でも樹立されNATO軍が進駐することにでもなれば、それこそ中露にとって最大の悪夢です。

米国にとっては、アフガニスタンでの失地を大きく回復することになります。失地回復どころか、アフガニスタンは現状では、中国とは一部国境を接していますが、ロシアは国境を接しているわけではないのですが、カザフスタンは両国と長い国境線をはさんで隣接しています。

中露にとっては、かつての米国にとってのキューバ危機のように、裏庭に米軍基地ができあがることになります。それ以上かもしれません。冷戦中にカナダやメキシコに、親中露政権が樹立され、中露軍基地ができるような感じだと思います。そこに長距離ミサイル等を多数配備されることになれば、中露は戦略を根底から見直さなければならなくなります。ロシアはウクライナどころではなくなります。中国は海洋進出どころでなくなるかもしれません。
カザフスタン情勢は、プーチンや習近平にとって、鬼門ともいって良いような、恐るべき地政学上の脅威です。
バイデン氏が副大統領だった2013年11月、ウクライナのヤヌコーヴィチ大統領が率いる親露政権を転覆させようと、当時のバイデン副大統領やヌーランド国務次官補などマイダン革命を起こし、遂にヤヌコーヴィチをウクライナから追い出すことに成功しました。

こうして2014年6月に、バイデン氏は、米国の傀儡政権であるようなポロシェンコ政権を樹立させました。ただ、米国も予想していなかったようですが、ポロシェンコ政権はあまりに腐敗が酷すぎ、結局その後コメディアンであるゼレンスキーにとって変わられたのです。

ウクライナ大統領選におけるポロシェンコ(左)とゼレンスキー(右)

そうして、バイデンの画策というか、大括りでいえばオバマ政権の画策は、実はこれに留まりませんでした。その中の一つに、2015年11月に設立された「C5+1」があります。

これは米国が、プーチンが自らの「縄張り」と考える「中央アジア5ヵ国」に入り込んで、「5ヵ国」に支援をして、米国寄りにしていこうという目論見に基づき設立されたもので、「中央アジア5ヵ国+米国」外相会談を意味します。

バイデンとしてはウクライナをコントロールできるようにしたことだけでは不安を感じたのでしょう。プーチンの周りにはCSTOという軍事同盟もあるので、「中央アジア5ヵ国」を切り崩しておかないと不安だという思いがあったにちがいないです。


米シンクタンク、戦争研究所は今月15日の戦況分析で、ロシアがウクライナ侵攻に伴い旧ソ連諸国の基地に駐留する部隊を動員したことで、同諸国でロシアの影響力が弱まり、地域情勢が不安定化している可能性を指摘しました。

ウクライナ侵攻後に中央アジアのタジキスタンとキルギスの国境での軍事衝突や、アルメニアとアゼルバイジャンとの間で係争地ナゴルノカラバフを巡る争いが再燃しています。

戦争研究所は欧米メディアを引用し、タジキスタンのロシア軍基地からは約1500人がウクライナに派遣され、さらに600人が動員される予定としました。

米中露は、元々中央アジアで熾烈な争いをしていたのです。そうして、カザフスタンは中央アジアでは人口は最大であり、経済も一人あたりGDPでは1万ドルを少し超えたロシアよりは、低い9千ドル台にすぎないのですが、それにしても国全体では中央アジアで一番経済規模が大きいです。この国の動きは、中央アジア諸国に大きな影響を与えることになります。

現状では、プーチンはウクライナ戦争で手一杯ですし、ウクライナ戦争の本当の相手は、米国であることは十分に承知しているでしょう。最近もこのブログで示したように、こうした米国の存在がなければ、プーチンと習近平は、ユーラシア大陸の覇権を巡って戦うことになるでしょうが、今はそれどころではありません。

プーチンは、中央アジア5ヵ国の心が「バイデン」になびきさえしなければ、習近平にどんなことでも譲歩しようと考えているに違いありません。

日本では、米国の野心である、中央アジアでの「C5+1」のことがあまり報道されておらず、中央アジアの今日の動きや、ウクライナとの関連がが理解されていないようです。

これを理解しないと中央アジアの国々のロシア離れがなぜ進んでいるのか、その本質は理解できないです。なんの背景も説明せずに、カザフスタンの元首相がプーチン批判をしたことや、旧ソ連諸国の基地に駐留する部隊を動員したことで、同諸国でロシアの影響力が弱まり、地域情勢が不安定化ことだけを個別に報道したとしても、ほとんど無意味です。

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