2023年6月9日金曜日

フランスの「本物の米国離れ」に中国は大歓喜、アメリカは大激怒している…!―【私の論評】10年経てば、中国の弱体化は誰の目にも明らかに!それまで日米は、他国を繋ぎ止める努力を(゚д゚)!

フランスの「本物の米国離れ」に中国は大歓喜、アメリカは大激怒している…!

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)の東京事務所設置計画に反対しており、「中国を刺激したくない」という理由を挙げています。彼の反対姿勢は、NATOの活動範囲の拡大が大きな過ちになると述べた発言によって明らかにされました。マクロン氏は中国に配慮した発言をすることで物議を醸し、今回の反対も「マクロンの裏切り」第2弾とされています。

 NATOは、米国、カナダ、および欧州の30カ国が安全保障を約束する同盟であり、「攻撃されればすべての加盟国が共同して反撃する」という原則に基づいています。NATOの適用範囲は北大西洋の同盟国に限定されています。

 NATOは中国の脅威に対処するために、東京事務所の設置を検討しており、日本を含むアジア諸国との協力関係を強化する狙いがあります。しかし、マクロン氏は東京事務所の設置が「アジアへのNATO拡大につながる」とみなし、欧州の信頼性を損なう可能性があると主張しています。

 NATOの意思決定は全会一致が原則であり、フランスが反対すると東京事務所設置計画は頓挫する可能性があります。中国はマクロン氏の反対を喜んでおり、他のNATOメンバー国もフランスの立場に共感しているが、米国に逆らうことはできないとしています。

 マクロン氏は中国に配慮する姿勢を見せており、米国との距離を置こうとする姿勢は本物とされています。これに対し、米国ではフランスの地政学的なナイーブさや米国からの欧州への過度な関与に反発する声があります。

米中の対立が激しさを増す中、マクロン氏のような「米国離れ論」が広がっており、これらの意見は今後も強まる可能性があります。

【私の論評】10年経てば、中国の弱体化は誰の目にも明らかに!それまで日米は、他国を繋ぎ止める努力を(゚д゚)!


マクロンがNATO東京事務所開設に反対していることを伝えるロシアメデイア「スプートニク」

フランスは、伝統的に米国と距離を置く傾向があります。それは、以下のような理由によるものです。

フランスと米国は、米独立戦争までさかのぼる長い対立の歴史を持っています。フランスは米国を独立国として認めた最初の国の一つですが、両国は貿易、政治、軍事介入をめぐってしばしば対立してきました。

さらに、フランスと米国は、世界の多くの地域で異なる関心を持っています。例えば、フランスは欧州連合(EU)を強く支持し、米国は自国の国益を重視してきました。

そうして、フランスと米国は、死刑制度、移民、社会福祉など、多くの問題で異なる価値観を持っています。このような違いは、時に両国間の緊張につながることがあります。

以下は、フランスが米国と距離を置いた例です。

2003年、フランスは米国主導のイラク侵攻に反対しました。

2015年、フランスは米国主導のシリア空爆に参加することを拒否しました。

2019年、フランスは米国が主導する欧州でのミサイル防衛計画から離脱しました。

ただし、フランスが常に米国に反対しているわけではないことに注意することが重要です。両国は、テロとの戦いや民主主義の推進など、多くの問題で協力してきました。しかし、フランスと米国の歴史的な対立や利害の違いは、時に緊張や不一致を招くことがあります。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、中国に配慮したと見られる発言を繰り返しているのには、いくつかの理由があるようです。

まずは、経済的利益です。 フランスは中国と大きな経済的結びつきがあります。2021年、中国はフランスにとって、ドイツに次いで2番目に大きな貿易相手国でした。また、フランスは中国で事業を展開する企業を多く抱えています。マクロン氏は、中国と敵対することで、こうした経済的な結びつきが損なわれることを懸念しているのかもしれないです。

次に、フランスは、安全保障問題で中国と協力してきた長い歴史があります。例えば、両国はテロ対策や核不拡散で連携してきました。マクロン氏は、他の問題で中国により融和的なアプローチを取ることを意味しても、この協力関係を維持することが重要であると考えているのかもしれないです。

最後に地政学的な利益もあります。 フランスは、ヨーロッパとアフリカの主要国であります。マクロン氏は、これらの地域におけるフランスの利益を守るために、中国との良好な関係を維持することが重要であると考えるかもしれないです。

ただし、マクロン氏は、人権や知的財産の窃盗など、多くの問題で中国に批判的であることにも留意する必要があります。しかし、他の西側諸国の首脳に比べれば、一般的に中国に対してより融和的なアプローチをとってきました。

一部の人々は、マクロンの中国寄りの発言を批判し、中国に媚びへつらう姿勢が強すぎると主張しています。また、中国との付き合い方について現実的なアプローチをとっていると主張し、マクロンを擁護する人もいます。

マクロンの中国政策が長期的にどのような影響を及ぼすかについては、時期尚早と言わざるを得ないです。しかし、マクロンがフランスと中国の関係を形成する上で重要な役割を担っていることは明らかです。

確かに、「米国離れ」説が広がっているようではあります。それを裏付けるような左寄りの情報源もあります。

ガーディアン紙 "米中間の緊張が高まる中、欧州は独自の「戦略的自律性」の構築を目指す" (2023年3月8日)

ガーディアン紙 記事は、米中関係に懸念を示す欧州の高官を多数紹介しています。例えば、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、米国と中国のいずれとも「同盟の誘惑に負けない」ために、EUは「自らの主権を築く」必要があると述べています。

ニューヨーク・タイムズ紙 "ヨーロッパは中国の経済的影響力に対抗するために動く" (2023年2月25日)

ニューヨーク・タイムズ紙 記事は、EUが今後5年間で国防費を20%増加させる計画であることを伝えています。また、EUは独自の軍事指揮統制システムの開発を計画している。

フォーリン・ポリシー 「新冷戦は欧州を自国軍建設に駆り立てている」(2023年1月26日付)

フォーリン・ポリシー 記事は、米中貿易戦争が欧州諸国に "米国との経済関係の再考 "を迫っていると論じています。また、記事は、米国のアフガニスタンからの撤退が "米国の力の限界を浮き彫りにした "と論じています。

これらの記事はいずれも、欧州諸国が米国への依存を減らし、中国など他の国とのより強い関係を築こうとしている証拠を挙げています。この背景には、米中貿易戦争、米国のアフガニスタンからの撤退、米国の力の低下という認識など、さまざまな要因があります。

「米国離れ」論に批判がないわけではありません。新たな冷戦を招きかねない危険で無謀な行動であるという意見もあります。また、米国がもはや支配的でない世界において、欧州が自国の利益を守るために必要なことだとする意見もあります。

「米国離れ」理論が成功するかどうかは、時間が経ってみなければわからないです。しかし、欧州の外交政策において、その傾向が強まっていることは確かなようです。

これらは、"米国離れ "論が広がっていることを裏付ける証拠のほんの一例に過ぎないです。この傾向が続くかどうかはまだわからないですが、欧州の外交政策に大きな進展があることは確かなようです。

このような背景があるからこそ、マクロン氏は、「米国離れ論」を主張したのでしょう。

ただ、考えてみると、米国は現在でも唯一の超大国です。中国は、以前このブログでも示したように、国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策ができない状況になっています。雇用の改善な、景気の回復のために、金融緩和(利下げや、量的緩和)を実行すれば、超インフレに見舞われたり、資本の海外逃避が加速したりするため、なかなか実行できません。

これは日本のマスコミはほとんど報道しませんが、国際金融などを熟知したまともなエコノミストなら誰でも知っている厳然たる事実です。

これを解消するには、人民元の変動相場制への移行などの構造改革をすべきなのですが、習近平にはまったくその気はないようです。彼にとっては、中国経済よりも、中国を中国共産党が統治することのほうが重要なようです。

中国人民銀行行長「周小川」

そうなると、中国は今後経済的には衰える一方であり、従来言われていたように、中国が米国のGDPを追い越す日は来ないとみるべきでしょう。独立した金融緩和ができなければ、かつての日本が官僚の誤謬により、金融政策を誤りとんでもない状態(GDPがほとんどのびなかったり、賃金が30年間あがらかったこと)になったのと同じような状態になるはずです。

しかも、誤謬については日本では安倍元総理の登場によって、正されたのですが、中国では独立した金融緩和ができないのですから、誤謬よりさらの始末が悪く、これは変えようがありません。

中国がコロナから完璧に立ち直ったとしても、また成長軌道に乗ることはありません。無論、中国が変動相場制に移行するなどの大胆な変革をすれば、別ですが、中国共産党はそれはできないでしょう。習近平は、そのようなことより、中共と自らの統治の正当性を強化することに血道を上げています。中国経済よりも、そちらのほうが優先順位がはるかに高いように見えます。

今後世界で唯一超大国になれるかもしれない国は、インドだけです。ただ、そのインドも、さすがに超大国になるまでの道のりは長くて、今後数十年は要するでしょう。ただ、数十年たってさえ超大国になれるかどうかはわかりません。しかし、いずれ人口だけではなく、経済でも軍事力でも中国を上回るようになる可能性は高いです。

そうなると、当面は超大国は米国一国ということになります。中国は、10年後以降には、誰の目からみても、国力が衰え、世界の主要なプレイヤーで居続けることはできないでしょう。

ただ、今後10年間は、それはなかなか見えず、中国がまた成長軌道に戻ると、幻想を持ち続ける人も多いことでしょう。そのため「米国離れ」が進展する可能性もあります。さらに、中国は10年後に弱体化が誰の目にもはっきりするのは目に見えているので、この10年のうちに大きな冒険に打ってでる可能性は否定できません。

これに関しては、米国下院の「中国委員会」委員長のマイクギャラガー氏もそのような主張をしています。

マイク・ギャラガー氏

米国として、この10年間をなんとかそのようにならないように、多くの国々を繋ぎ止めていく努力が求められるでしょうし、日本も協力していくべきです。

中国の猛威も10年で収まるとみるべきです。先程述べたように、この10年内に中国が大冒険に打って出たとすれば、多くの国が大きな被害を被るかもしれません。無論これは絶対に避けるべきです。ただ、そうなったとしても、中国の衰退は構造的なものであり、中国は確実に衰えていきます。中国共産党の大冒険は、それを早めるだけです。それは、現在のロシアをみれば理解できます。

10年といえば、長いようですが、過ぎ去ってみればそれほど長くもないと思います。10年後には、中国とロシアがかなり衰えたことを前提に新たな世界秩序が生まれることになるでしょう。日米はこのことを、いまから世界中の国々に啓蒙していくべきと思います。

ロシアに関しては、日米欧とも、ここ数年は別にして、5年から10年の長期では、確実に敗戦するとみています。

10年後以降には、中国は数十年前の中国のようになり、ほとんど世界に影響力を及ばす事ができない国になる可能性は高いです。この国がかつて、GDPで米国を追い越すと思われたいたとはとても思えないような国になるでしょう。

中国の体制が変わった場合は、支援しても良いかもしれませんが、現体制のままであれば、支援はすべきではないでしょう。なぜなら、支援すれば、また同じことの繰り返しになるからです。

民主化、政治と経済の分離、法の支配を追求しない中国は、たとえ統治者が誰に変わろうと、現在と変わりがなく、支援を受けて経済を回復すれば、同じことを繰り返すだけです。日本も、かつてのようにODAで中国を助けるなどのことはすべきではありません。

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