2023年6月16日金曜日

社会に禍根残すLGBT法案 公約にないのに成立急いだ背景、米国や公明党への配慮か 女性用浴場に女装した男が侵入する事件も―【私の論評】米国でも、評価の定まっていない法律を導入してしまった日本では必ず一波乱ある(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

LGBT法案成立を日本に求めているエマニュエル駐日米大使

 LGBTなど性的少数者への理解増進を目的とした法案が16日にも成立する見通しだ。

 LGBT法案は、自民党の公約の変遷から見ると、2016年参院選から21年衆院選まで公約に含まれていたが、最近の公約ではその記述がなく、政策集でも記述がトーンダウンしていた。しかし、今年2月に岸田首相が国会提出に向けた準備を指示し、法案が急速に進展した。

 法案成立を急いだ理由としては、岸田首相が取り組みたい政策であり、元首相秘書官の差別的な発言を奇貨として利用したと考えられている。法案成立には米国や公明党への配慮も影響していると言われている。

 法案成立によって社会には様々な影響が生じるだろう。例えば、性的少数者の権利や差別の防止が強化されることで、社会全体の理解と受容が進む可能性がある。しかし、賛否は価値観に依存し、保守層からは反発も予想される。また、逮捕された女性用浴場への男性の侵入事件など、法案成立後の具体的な事例によって、議論が起こるだろう。

 LGBT法案は解散風を後押しし、左派の立憲民主党や共産党なども反対している。これにより内閣不信任案が提起される可能性もあり、解散に繋がるかもしれない。ただし、解散は国民にとって良いこととは限らないとの意見もある。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】米国でも、評価の定まっていない法律を導入してしまった日本では必ず一波乱ある(゚д゚)!

現在米国を含めて世界で巻き起こっているLGBT運動は、左翼運動の一環でもあることは否めないです。

まず、米国においては、LGBTの人々は、保守的または右翼よりもリベラルまたは左翼であると認識する傾向があります。2017年のピュー・リサーチ・センターの調査によると、米国のLGBT成人の72%がリベラルまたは左寄りと認識しているのに対し、保守的または右寄りと認識しているのは24%でした。

LGBTの権利は、しばしば左派の問題とみなされます。左派は一般的に、性的指向や性自認にかかわらず、すべての人々の社会正義と平等を支持する傾向が強いからです。

多くの左翼団体が、LGBTの権利のための戦いの最前線に立ってきました。例えば、全米のLGBT擁護団体であるヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)は、民主党の候補者や活動に対する主要な寄付者です。

LGBT運動は、左派系政府の支援からも恩恵を受けています。例えば、オバマ政権は、ゲイやレズビアンを公言する人の兵役を禁止していた「Don't Ask, Don't Tell」政策を撤廃しました。

注意すべきは、すべてのLGBTが左翼であるわけではなく、すべての左翼がLGBTの権利を支持しているわけでもないことです。しかし、LGBTのアイデンティティと左翼的な政治的見解には強い相関があります。これは、一般的に左派が社会正義やすべての人の平等を支持する傾向が強いためと思われます。

米国のLGBT運動

ただ、社会正義や万人の平等への支持が極端になれば、かえって社会正義を破壊し、人々を分裂させる可能性があります。

自分のアイデンティティが攻撃されていると感じると、人は防衛的になり、変化に対して抵抗するようになります。これは、二極化と分裂の激化につながります。

人々は、自分が不当に扱われていると感じると、暴言を吐いたり、有害な行動をとったりしやすくなります。これは、紛争や暴力の増加につながる可能性があります。

人々は、自分が排除されている、あるいは疎外されていると感じると、孤立や孤独を感じやすくなります。これは、うつ病や不安症などの精神衛生上の問題を引き起こす可能性があります。

これらは、社会正義と平等を極端に支持することで起こりうるマイナスの結果の一部に過ぎないということに注意することが重要です。社会問題に対する意識の向上、差別の減少、社会的結束の向上など、ポジティブな結果も多くあります。しかし、過激主義の潜在的な危険性を認識し、それを回避するための努力をすることは重要です。

これらの主張を裏付ける資料をいくつか紹介します。

"The Psychology of Social Justice and Intergroup Relations." By John T. Jost and Mahzarin R. Banaji.
"The Social Psychology of Inclusion and Exclusion." By Rupert Brown.
"The Handbook of Social Justice." Edited by Ilja J.M. van den Bos and Tom R. Tyler.

これらの情報源は、社会正義と過激主義というテーマで行われた研究のほんの一例に過ぎないということに注意することが重要です。引用できる研究はもっとたくさんありますが、これらの資料は、社会正義への極端な支持がもたらす潜在的な悪影響について、わかりやすく概要を提供しています。

さて、下の写真は6月14日ホワイトハウスのLGBTプライドイベントでのものです。左が女性、右が男性で、左の傷跡を見てください。これが本当に、LGBT運動全体が望み、祝福するものなのでしょうか?これが本当に子供たちの模範となるべき人たちなのでしょうか?

米ホワイトハウスは13日、LGBTなど性的少数者の権利擁護を呼びかける「プライド月間」のイベントで活動家が上半身裸の動画(下写真)を撮影し、公開したのは不適切だとして、この人物を今後は招待しないと明らかにしています。

活動家はローズ・モントーヤら。ホワイトハウスが10日開いたイベントで上半身裸になって両胸を手で包んで揺らす動画をソーシャルメディア上で公開しました。バイデン大統領夫妻と会話する姿も投稿していました。

モントーヤはツイッターで「わいせつなことをする意図は全くなかった」とし、性的少数者の権利擁護を祝う「喜び」を表現しようとしただけだと弁明しました。


さて、米国では、連邦政府レベルでは日本の「LGBT理解増進法」に相当する法律はありません。州レベルでは、LGBT法を定めてい州もあれば、反LGBT法を定めている州もあります。

ここでは、米国でLGBT関連の州レベルでの法律をあげます。

LGBTに配慮した法律
  • 差別禁止法: 住宅、雇用、公共施設などにおいて、性的指向や性自認に基づく差別を禁止する法律です。2023年3月現在、29の州とコロンビア特別区が性的指向と性自認を含む差別禁止法を制定しています。
  • 同性婚の実現 2015年、米連邦最高裁は「オベルゲフェル対ホッジス裁判」において、米国憲法修正第14条のデュープロセス条項および平等保護条項により、同性カップルに結婚する基本的権利が保証されるとの判決を下した。2023年3月現在、50州すべてで同性婚が合法化されています。
  • 養子縁組: 全50州で同性カップルの養子縁組が認められています。
  • 健康管理: 50州すべてで、同性カップルがパートナーのために医療上の決定を下すことが認められています。
反LGBT法
  • 信教の自由に関する法律: 企業や個人が宗教上の信念に基づいてLGBTの人々へのサービスを拒否することを認める法律です。2023年3月現在、19の州で宗教の自由に関する法律が制定されており、LGBTの人々への差別に利用される可能性もあると指摘されています。
信教の自由に関する法律の成立には、賛否両論があります。宗教者の権利を守るために必要だと考える人もいます。また、LGBTやその他の少数派を差別するための手段であると考える人もいます。信教の自由に関する法律をめぐる議論は、今後もずっと続くと思われます。

米国憲法修正第1条は、信教の自由の権利を保証しています。この権利は、政府からの干渉を受けずに、自由に宗教を実践する権利を含むと、裁判所によって解釈されてきました。

20世紀初頭、最高裁判所は、宗教の自由には、自分の宗教的信念に反する政府主催の活動への参加を拒否する権利も含まれるとの判決を下しました。この判決は、宗教家が兵役や納税を拒否し、特定の政府プログラムに参加する権利を正当化するために使われたこともありました。
  • コンバージョンセラピー(転換療法): これは、人の性的指向や性自認を変えようとする有害な行為です。2023年3月現在、20の州とコロンビア特別区が未成年者への転換療法を禁止しています。
http://en.wikipedia.org/wiki/2004_Kentucky_Amendment_1

反LGBT法に関しては、日本ではあまり紹介されないので、その他具体的な事例をあげます。

2022年3月、フロリダ州で「Don't Say Gay」法案とも呼ばれるHB1557が可決されました。この法案は、幼稚園から3年生までの性的指向と性自認に関する指導を禁止しています。また、自分の子どもが法律に違反してこれらのテーマについて教えられていると考える場合、保護者が学区を訴えることもできるようになります。

この法案は、LGBTQの擁護者や教育関係者から、LGBTQの生徒や家族に害を及ぼすと批判されています。彼らは、この法案が学校内に恐怖と不安の風潮を作り出し、LGBTQの生徒が必要なサポートを受けることをより困難にすると主張しています。

法案の支持者は、幼い頃に性的なコンテンツにさらされることから子どもたちを守るために必要なことだと述べています。このような話題について、いつ、どのように子どもに話すかを決めるのは親であるべきだと主張しています。

この法案は現在、法廷で争われています。

その他、米国における反LGBT法の例をいくつか紹介します。

テネシー州のHB 1184は、トランスジェンダーの選手が、自分の性自認に沿ったチームで競技することを禁止するものです。

アイダホ州のSB1309は、医師が宗教的または道徳的な異議に基づき、LGBTQ患者への治療を拒否することを可能にするものです。

アーカンソー州のHB 1570は、トランスジェンダーの青少年に対するジェンダーアファメーションケアを禁止するものです。

これらの法律は、近年米国で提案または可決された多くの反LGBT法のほんの一例にすぎません。これらの法律が作られた理由はさまざまです。LGBTの人々の権利を守りたいという動機のものもあれば、過激なLGBT運動を避ける動機のものもあります。

ここで、誤解を避けるために、一つ付け加えておきます。LGBTの人々にも当然人権はあります。しかし、私はそれは一般的に人権ということで捉えられるものであるべきと考えます。それには、日本をはじめ米国でも、EU諸国も、憲法や法律に定めがあります。

LGBTの人々に特定して、法律を定めることは、そうではない人を差別することにつながりかねません。それがひいては、LGBTの人たちを差別することにもつながりかねません。

人権侵害を防ぐために、法律を定めるなら、特定の人や集団を対象にしたものではなく、当該国の国民全体を対象にすべきです。それは、男に関する法律、女に関する法律を定めてしまえば、ことさら男女差別を助長することになりかねないのと同じです。これは、中国における、人民と国民の違いをみてもわかることです。

周恩来首相はよりは、「人民と国民には区別がある。人民は労働者階級、農民階級、反動階級から目覚めた一部の愛国民主分子である」としています。そして、人民に含まれない人たちについては「中国の一国民ではあるので当面、彼らには人民の権利を享受させないが、国民の義務は遵守させなければならない」と説明しています。

国民の権利を守ることは当然のことであり、その対象は男限定でも、女限定でもなく、LGBT限定であってはならないと思います。全国民を対象であるべきなのです。そのため私は、LGBTの権利を守ることと、いわゆるLGBT運動とを混同すべきではないと考えています。ただ、Tについては医学的にも証明されていないので、なんともいえません。

ただ、そのような人が存在するとすれば、犯罪者で無い限りは、その人の人権も認めるべきでしょう。無論T特有の人権を認めるというのではなく、国民として、多くの人が守られている権利を認め、人権を尊重するという意味におて、認めるのは当然のことと思います。そうして、権利が認められるなら、義務も応分に果たさなければならないことは、いうまでもありません。

米国の反LGBT運動

さて、2024年の大統領選挙の結果が、米国におけるLGBT運動の未来に大きな影響を与える可能性が高いです。民主党は長い間、LGBTの権利を支持してきた歴史がありますが、共和党はもっと複雑な記録を持っています。近年、共和党はLGBT運動に対する危機感を強めており、共和党が支配する州議会ではLGBT運動を否定する法律が可決されることもあります。

近年、反LGBTの法律を可決する州が増えているのは事実です。LGBTの権利を擁護する全米の団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」によると、2022年に州議会に提出された反LGBTの法案は245件にのぼります。このうち、75の法案が法制化されました。これは、ヒューマン・ライツ・キャンペーンが2010年にこのデータの追跡を開始して以来、単年度に提出・成立した反LGBT法案の数としては最多となります。

しかし、反LGBT法に対する反対運動も活発化しています。近年、反LGBT法を支持する企業や個人に対する抗議やボイコット運動が行われています。また、これらの法律に対する法的な異議申し立てが行われています。

最終的に裁判所がこれらの法律のいくつかを打ち消す可能性もあります。しかし、共和党が議会を支配する州では、これらの法律が引き続き新たなに制定される可能性もあります。

米国におけるLGBT運動の将来は不確実です。2024年の大統領選挙の結果や、LGBTの人々やそのアライの継続的な活動によってかなり左右されるでしょう。

米国においては、LGBT運動の将来は不確実であるにもかかわらず、日本では、慎重な議論もされないまま、国レベルでの「LGBT理解増進法」が制定されてしまったのです。

米国では、評価の定まっていない法律を導入してしまったのですから、これは日本でも一波乱ありそうです。

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