2023年6月23日金曜日

中国の「地方政府債務」再考―【私の論評】もう一つの中国の大問題、国際金融のトリレンマを克服すれば、中国の改革が始まるかもしれない(゚д゚)!

中国の「地方政府債務」再考

上海の目抜き通り AI生成

 中国の地方政府の債務は、2022年末時点で37.07兆元(約734兆3600億円)に達し、過去最高を記録しました。これは、中国のGDPの約25%に相当する金額です。地方政府の債務は、インフラ整備や公共事業の資金調達のために借り入れられたもので、そのほとんどが国有企業や金融機関からの借入です。地方政府の債務は、中国の経済成長を支える一方で、財政赤字の拡大や金融システムのリスク要因となっています。

 中国政府は、地方政府の債務を削減するために、財政支援や債務再編などの対策を講じていますが、効果は限定的です。地方政府の債務は、中国経済の大きなリスク要因であり、今後も注視が必要です。

以下は、中国の地方政府の債務に関する主なポイントです。
  • 中国の地方政府の債務は、2022年末時点で37.07兆元(約734兆3600億円)に達し、過去最高を記録した。
  • 地方政府の債務は、インフラ整備や公共事業の資金調達のために借り入れられたもので、そのほとんどが国有企業や金融機関からの借入である。
  • 地方政府の債務は、中国の経済成長を支える一方で、財政赤字の拡大や金融システムのリスク要因となっている。
  • 中国政府は、地方政府の債務を削減するために、財政支援や債務再編などの対策を講じているが、効果は限定的である。
  • 地方政府の債務は、中国経済の大きなリスク要因であり、今後も注視が必要である。
この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】もう一つの中国の大問題、国際金融のトリレンマを克服すれば、中国の改革が始まるかもしれない(゚д゚)!

中国人のツイッターで引用されていた日経の記事

中国で地方政府の借入が増えた要因はいくつかあります。それらは以下の通りです。

中央政府による財政分権政策:1990年代、中国政府は地方政府への財政権限の分散を開始しました。これにより、地方政府は自らの財政をよりコントロールできるようになりましたが、同時に地方政府は歳入を増やす必要に迫られました。地方政府が歳入を増やす方法のひとつに、借金があります。

インフラ整備のための資金調達の必要性:中国は近年、インフラ整備に多額の投資を行っています。そのため、地方政府がこれらのプロジェクトの資金を借り入れるため、地方政府の借入金が急増しました。

地方政府の歳入が減少していること:近年、経済成長の鈍化や租税回避行為の増加など、さまざまな要因で地方政府の歳入が減少しています。このため、地方自治体は歳入の不足を補うために、より多くの借金をせざるを得なくなっています。

国有企業(SOEs) :国有企業(SOE)は、地方政府が資金を借りる際によく利用されます。これは、国有企業が信用を得ることができ、地方政府よりもリスクが低いと見なされるためです。

金融機関:金融機関も地方政府に資金を貸し出します。これは、地方政府が安全な投資先とみなされるためです。

中国における地方政府の借り入れの増加は、多くの危機を生み出しています。以下にそれを列挙します。

金融危機のリスク:地方政府が借金を返せなくなった場合、金融危機につながる可能性があります。

経済成長の低下:地方政府の債務が増加すると、経済成長の低下につながる可能性があります。これは、地方自治体がインフラ整備などの支出を削減せざるを得なくなる可能性があるためです。

格差の拡大:地方政府の債務の増加は、不平等の増加につながる可能性があります。債務返済の負担が貧困層や中産階級に及ぶ可能性が高いからです。

近年、中国政府は債務負担を軽減しようとする措置を講じています。これらの措置は以下の通りです。

地方政府が債券を発行できるようにする:これにより、地方自治体はより持続可能な方法で資金を調達することができるようになります。

地方自治体の債務について、より多くの情報を開示する :これにより、透明性と説明責任を向上させることができます。

インフラプロジェクトの数を減らす :これにより、地方自治体の借金の必要性を減らすことができます。

中国政府が地方政府の債務負担を減らすことに成功するかどうかは、まだまったく見通しが効かない状況です。


中国のインフラ開発投資は、地方政府のインフラ開発計画で予測することができます。現在のインフラ計画は昨年対比で減っており、昨年の積み残しを消化した後は減速基調に入る可能性が高いでしょう。

中国の地方政府が財政破綻した場合、中国経済に大きな影響を与えることになります。地方政府がインフラ整備などの支出を削減せざるを得なくなり、経済成長の低下につながる可能性が高いです。また、中国政府の債務返済能力に対する投資家の信頼が失われ、金融危機に発展する可能性もあります。

このブログで以前から掲載しているように、現在中国は国際金融のトリレンマにより独立した金融政策が実施できない状況になっています。これは、政府による危機管理をより困難にします。中央銀行は金利や量的緩和などの金融政策ツールを使って、経済を刺激したり、インフレを防いだりすることができなくなります。そうなれば、金融崩壊による被害を抑えることがより難しくなります。

地方政府の財政破綻が中国経済に与える影響は、破綻の規模や展開のスピード、政府の対応など、さまざまな要因によって異なるでしょう。しかし、そのような破綻が中国経済に大きな負の影響を与えることは明らかです。

ここでは、中国の地方政府の財政破綻が中国経済に与える具体的な影響について掲載します。

経済成長率の低下 経済成長の低下:中国では、地方政府が多額の支出を担っている。地方政府が破綻した場合、この支出は減少し、経済成長の低下につながります。

失業率の上昇: 地方政府は、中国の雇用の大部分を担っています。もし地方政府が崩壊すれば、失業率の上昇につながります。

個人消費の減少: 中国の財政が不安定になれば、消費者は支出を減らすでしょう。そうなれば、経済成長はさらに鈍化することになります。

インフレ率の上昇: 政府は地方政府を救済するために大規模な金融緩和策を余儀なくされるかもしれません。これはマネーストックを増加させ、インフレを引き起こすでしょう。

金融危機: 地方政府の財政破綻が中国政府の信頼失墜につながれば、金融危機が引き起こされる可能性があります。これは、中国経済に大きな悪影響を及ぼすでしょう。

中国政府は、地方政府の財政破綻に伴うリスクを認識しています。近年、政府は地方政府の債務負担を軽減しようとする措置を講じています。しかし、これらの措置が破綻を防ぐのに十分であるかどうかは、まだわかりません。

何と言っても、中国人民銀行が独立した金融政策を実施できないことが痛いです。これを改善するには、このブログにも何回か掲載したように、人民元を固定相場制から変動相場制に移行すれば、国際金融のトリレンマから逃れ、独立した金融政策ができるようになります。

中国が人民元を固定相場制から変動相場制に移行させない理由はいくつかあります。

資本流出のリスク:人民元が変動すると、投資家が人民元を売却して他の通貨を購入するリスクがある。その結果、人民元が急落し、中国の輸出企業に打撃を与える可能性があります。

輸出競争力の維持の必要性:中国の輸出志向の経済は、安定した為替レートに依存しています。もし人民元が変動すれば、中国の輸出品が割高になり、輸出の伸びを阻害する可能性があります。

インフレ抑制の欲求:中国政府は、インフレを抑制したいという強い願望を持っています。為替レートが変動すれば、マネーストックをコントロールできなくなるため、政府がインフレをコントロールすることが難しくなります。

金融の安定を維持する必要性:変動相場制は、政府が通貨市場を管理することが難しくなるため、金融の不安定化を招く恐れがあります。

中国政府は、変動相場制の利点を認識しています。しかし、政府は変動相場制のリスクがメリットを上回ると考えているようです。その結果、政府は近い将来、人民元を固定相場制から変動相場制に移行させる可能性は低いです。

上記の理由に加えて、中国が変動相場制に移行することを妨げている政治的な考慮もあります。例えば、中国政府は、変動相場制を導入すると、国内外への資本の流入流出をコントロールすることが難しくなることを懸念している可能性があります。これは、政府が経済成長を管理し、社会の安定を維持する能力に影響を与える可能性があります。

結局のところ、変動相場制に移行するかどうかの判断は、複雑なものではあります。中国政府が決断を下す前に考慮しなければならない要素はいくつもあります。しかし、独立した金融政策が実施できなければ、結局、金融だけではなく財政もコントロールできなくなります。

そうなれば、中央政府は何もコントロールできなくなり、ただ漂流するしかなくなります。そうして、経済が落ち込み、数十年前の毛沢東時代の水準に戻ることになりかねません。

日本を始めとする、西側諸国も、固定相場制から変動相場制に移行を決断しなければならい時がありました。様々な問題がありつつも、将来のことを考え移行したのです。中国もまさにそのときです。変動相場制に移行すれば、様々な問題がおこることが考えれますが、それをせずに毛沢東時代の経済に戻るのとどちらが良いかという習近平による選択の問題になります。


変動相場制に移行するためには、それだけではなく様々な改革をしなければならなくなります。中国の改革は、意外とこうしたところから始まるかもしれません。

しかし、今までのように固定相場制を維持するなら、中国経済はいずれ毛沢東時代の水準に戻り、中国は図体が大きいだけの他国に影響力を及ぼせないアジアの凡庸な専制国家の一つに成り果てることなるでしょう。

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